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JP3814166B2 - 高窒素含有ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ - Google Patents
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高窒素含有ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高窒素含有ステンレス鋼の溶接に使用され、溶接金属性能が良好で全姿勢溶接性に優れた高窒素含有ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
SUS304N1、SUS304N2、SUS316LN、SUS317LN、SUS317J4L、SUS329J3Lのような高窒素含有ステンレス鋼は、優れた耐食性を有し、特に耐局部腐食性に優れ、さらに、優れた強度特性をも有する。したがって、化学プラント機器や油井管、発電所煙突のライニング材、腐食環境の厳しい屋根材等の耐食材料、また、建築構造物や自動車または車両、船舶等の構造材として用いられている。
【0003】
近年、さらに様々な種類の窒素含有ステンレス鋼が開発されているが、溶接材料もこれに適合した良好な溶着金属特性とより高い溶接作業性が求められている。このような状況の中で特に高能率に溶接でき、溶接作業性が比較的良好でビード外観が良好になるフラックス入りワイヤが多く使用されるようになっている。しかし、通常のSUS304やSUS316のような窒素を多く含有しないステンレス鋼の溶接に用いるステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤのスラグ系をベースとしたフラックス入りワイヤを用いて高窒素含有ステンレス鋼を溶接した場合、ブローホールやピットなどの溶接欠陥が発生したり、溶接直後にスラグが飛散したり、スラグの一部が溶接ビードに焼き付いて残るという問題がある。さらに、立向、上向等の姿勢溶接では溶接が困難であり、高い溶接技量を必要とする。ビード形状は中凸状の形状となる傾向であり、ビード形状を良好にするために溶接電流を下げるか、手直しの工程を追加する必要がある。これらは溶接作業能率を著しく低下させる。
【0004】
高窒素含有ステンレス鋼溶接用のフラックス入りワイヤは、例えば特許第3017059号公報にTiO2とSiO2、Al23、金属弗化物を規定し、さらにZrO2、金属炭酸塩、Nb、V含有量を規制して、耐食性および溶接作業性を良好にした技術の記載がある。しかし、このフラックス入りワイヤでは、下向姿勢においては溶接可能であるが、立向、上向等の姿勢溶接での対策がとられていない。
【0005】
また、TiO2とSiO2、Al23、金属弗化物を規定し、さらにZrO2、金属炭酸塩、Nb、V含有量を規制して、耐食性および溶接作業性を良好にしたフラックス入りワイヤが特許第3017063号公報に開示されている。しかし、このフラックス入りワイヤでは鋼板の窒素含有量が0.12質量%程度までの溶接には適用可能であっても、0.12質量%を超えるとスラグの剥離性が不十分で、スラグ除去に時間がかかり、作業能率を著しく低下させるばかりか、スラグ除去が完全に行われないと多パス溶接においてスラグ巻き込み欠陥発生の可能性も高くなる。そこで、溶接金属性能が良好で、特に全姿勢での溶接作業性に優れた高窒素含有ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤの開発が強く要望されていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高窒素含有ステンレス鋼の全姿勢溶接において、アークが安定し、スパッタ発生量が少なく、さらにビード形状、溶融スラグによる溶融金属の被包性(以下、スラグ被包性という。)およびスラグ剥離性が優れ、かつ溶接金属性能が良好な高窒素含有ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、ワイヤ全質量に対して質量%で
TiO:3.4〜9.9%、SiO:0.2〜2.5%、Al0.04%以下、金属弗化物のF換算値:0.04〜0.5%、Al /金属弗化物のF換算値:0.35以下、金属Tiおよび、またはTi合金のTi換算値:0.08〜0.44%を含有し、かつスラグ剤成分の合計がワイヤ全質量の5.3〜11.4%であるフラックスをステンレス鋼外皮内に充填してなることを特徴とする高窒素含有ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤである。
【0009】
さらに、充填フラックスの充填率はワイヤ全質量の18〜26%であることを特徴とする高窒素含有ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤにある。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の高窒素含有ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤの各成分組成およびその含有量の限定理由について説明する。
【0011】
TiO2は、アークを安定にし、スラグ被包性およびスラグ剥離性を良好にする。さらに、スラグの凝固を早め、立向および上向溶接中に溶融金属の垂れを防ぎビード形状を良好にする効果がある。TiO2が3.4質量%(以下、%という。)未満ではアークが不安定となり、スラグ被包性およびスラグ剥離性が悪く、また、立向および上向溶接で溶融金属が垂れてビード形状が不良となる。9.9%を超えるとスラグの流動性が低下し、鋼材と溶接ビードのなじみが不良となり、アンダーカットが発生し、さらに中凸状のビード形状となる。また、スパッタ発生量が増加するばかりか、スラグ巻込み欠陥が発生しやすくなる。TiO2としては、ルチール、チタンスラグ、イルミナイト、チタン酸カリ、チタン酸ソーダ等が使用できる。
【0012】
SiO2は、スラグの流動性調整に必要で、スラグ被包性およびスラグ剥離性を良好にし、ビード形状を良化させる成分であるが、SiO2が0.2%未満ではスラグの流動性が悪くビードの止端にスラグが食い込み、ビード形状が不良となる。2.5%を超えると、スラグが流れやすくなり、立向および上向溶接で溶融金属が垂れて全姿勢溶接が困難となり、ビード形状が不良となる。さらに、アーク吹付けが強くなりアンダーカットが発生する。また、スラグが焼付きスラグ剥離性が低下する。SiO2としては、硅砂、硅石の他、カリ長石等が使用できる。
【0013】
Alは過度に含有されると鋼板中または溶接金属中の炭素、窒素、硫黄と化合物を形成し、固いスラグを生成する。特に窒素と化合物を形成したスラグはスラグが焼付きスラグ剥離性が低下するので、Al0.04%以下とする。
【0014】
金属弗化物は、スラグ融点の調整として必要で、スラグ被包性およびスラグ剥離性を良好とし、ビード形状を良好とする成分であるが、F換算値で0.04%未満ではスラグ被包性およびスラグ剥離性が劣化する。しかし、0.5%を超えるとスラグの融点が著しく低下し、立向および上向溶接で溶融金属が垂れて全姿勢溶接が困難となり、ビード形状が不良となる。また、弗素ガス発生に伴いヒュームが多量に発生する。金属弗化物はNaF、LiF、CaF2、AlF3、K2ZrF6、K2SiF6等が使用でき、いずれの金属弗化物を使用しても同様な効果が得られる。
【0015】
さらに、Al23および金属弗化物のF換算値をそれぞれ[Al23]、[F]とした時、[Al23]/[F]で求められる値を0.35以下にすることによって極めて良好なスラグ剥離性となる。[Al23]/[F]が0.35を超えるとスラグ剥離性が低下する。
【0016】
金属TiおよびTi合金はその殆どがアーク中で酸化反応しTiO2となりスラグとして作用するが、本来スラグ形成剤として使用しているTiO2の融点が1840℃であるのに対し、金属Tiで1660℃、Fe−Tiで1317℃と融点が低いため早い時点でスラグ化し、凝固も早期に始まり溶融金属の垂れを防止する。したがって、立向および上向溶接を容易にする。また、スラグの流動性を調整してスラグ被包性およびスラグ剥離性を良好にし、ビード形状を良好にする成分であるが、金属Tiおよび、またはTi合金のTi換算値で0.08%未満では効果なく立向および上向溶接中の溶融金属が垂れて、ビード形状が不良となり、溶接が困難となる。
【0017】
しかしながら、金属Tiおよび、またはTi合金を多量に含有した場合、二相ステンレス鋼の溶着金属の伸びが低下する傾向が認められた。図1に二相ステンレス鋼用フラックス入りワイヤを用いて溶接した溶着金属の伸びと溶着金属中の水素量の関係を示す。溶着金属のフェライト量が25%を超える二相ステンレス鋼では、溶着金属中に多量の水素を含有すると水素脆化を起こし、図1に示すように、溶着金属の引張試験において伸びが著しく低下する。図2に二相ステンレス鋼用フラックス入りワイヤを用いて溶接した溶着金属中の水素量とワイヤ中のTi換算値の関係を示す。図2に示すように、ワイヤ中のTi換算値が多くなると、溶着金属中の水素量も増加する。これは、Tiが水素の拡散を妨げ、固定しているためである。したがって、延性確保には溶着金属中の水素量を極力多くならないようにすることが必要であり、そのためにはワイヤ中の金属TiおよびTi合金量を制限する必要がある。したがって、ワイヤ中の金属Tiおよび、またはTi合金をTi換算値で上限を0.44%以下とする。Ti源としては金属Ti、Fe−Ti等が使用できる。
【0018】
フラックス中のスラグ剤成分は、スラグ被包性およびスラグ剥離性を良好にし、ビード形状を良好にする。スラグ剤成分の合計が5.3%未満では、立向および上向溶接において溶融金属の保持が十分できず、溶接が困難でビード形状が不良となる。さらにスラグ被包性およびスラグ剥離性が不十分となり、スラグが焼付きスラグ剥離性が低下する。スラグ剤成分の合計が11.4%を超えるとスパッタが増加するとともにスラグ量過剰となりスラグ巻込み欠陥が発生する。なお、本発明におけるスラグ剤成分とは、酸化物、弗化物等の非金属成分の他、不純物としてのP、S等を意味するものである。
【0019】
ステンレス鋼外皮へのフラックス充填率が18%未満では、外皮の肉厚が厚く、溶滴が肥大化しスパッタが増加する。26%を超えると逆に外皮の肉厚が薄く、伸線加工中に断線が多発し、著しく生産能率を低下させる。
【0020】
また、充填フラックスは溶接する高窒素含有ステンレス鋼板成分によって合金成分を調整する。調整剤としてNi、Cr、Mn、Mo、Cu、Si、Fe、Al、Mg、Nb、V、ステンレス粉、窒化金属等を用いる。さらに原材料粒度、フラックス成分、充填方法等に応じて固着剤によって造粒して用いることもあるが、その場合には固着剤からもたらされる成分、例えば水ガラスの場合では、SiO2、Na2O、K2O等が増加することをあらかじめ考慮するように原料の配合を行う必要がある。
【0021】
なお、本発明のフラックス入りワイヤとは、図3(a)〜(d)にその例を示すような断面形状のワイヤで、オーステナイト系のステンレス鋼のパイプあるいは帯鋼から成る外皮1に、充填フラックス2を被包したもので、図3(a)に示すような継ぎ目3のないもの、あるいは図3(b)〜(d)の如く継ぎ目(合わせ目)3を有するものでもよい。
【0022】
【実施例】
表1に示す外皮成分のパイプ(A)および帯鋼(B〜D)を用い、表2および表3に示すフラックスをワイヤ全質量に対する充填率を変えて、ワイヤ径1.2mmのフラックス入りワイヤを製造した。なお、外皮にパイプを用いる場合は所定の充填率にフラックスが入る径まで管引きした後、フラックスを充填した。表2および表3においてワイヤNo.1〜14が本発明例のフラックス入りワイヤ、No.15〜27が比較例である。
【0023】
まず、フラックス入りワイヤ製造時の伸線で断線したものは製造を中止した。
【0024】
溶接作業性評価は、表1に示す成分の鋼板(E〜I)をT字型に組み立て、電流170A(DCEP)、電圧24V、シールドガスは100%CO2:20リットル/minの溶接条件で立向上進溶接を行い、アーク状態、スパッタ発生量、スラグ被包性、スラグ剥離性およびビード形状の確認をして、実用上良好な場合は○、実用上問題がある場合は×とした。また、溶接ビードを溶接線方向と平行に破断し、その溶接金属部のスラグ巻込み欠陥の有無を確認した。さらに溶接作業性がすべて良好でスラグ巻き込み欠陥のなかったものは、JIS Z 3323に準じた溶着金属試験を行い、JIS Z 3111 A1号丸棒引張試験片試験片を採取して引張試験を実施した。なお、各溶接金属の性能評価は、表5に示すように鋼板の種類毎に目標値を設定した。
【0025】
それらの結果を表4にまとめて示す。
【0026】
表4中、本発明例であるNo.1〜は、TiO、SiO、Al、金属弗化物のF換算値、金属TiおよびTi合金のTi換算値およびスラグ剤成分の合計が適正量のフラックスをステンレス鋼外皮に適正量充填されているので、製造時の伸線で断線することなく生産でき、アーク状態、スパッタ発生量、スラグ被包性、スラグ剥離性およびビード形状等の溶接作業性に優れ、溶着金属の引張試験においても良好で、極めて満足な結果であった。
【0027】
比較例中ワイヤNo.5は、TiO量が多いのでスパッタが多発し、スラグの流動性が劣化、鋼板と溶接ビードのなじみが不良となり、アンダーカットが発生し、さらに中凸状のビード形状となり溶接作業性が不良となった。また、スラグ巻き込みの欠陥も発生した。
【0028】
ワイヤNo.6は、TiO量が少ないのでアーク状態が不安定となり、スラグ被包性およびスラグ剥離性が劣化した。さらに、溶融金属が垂れてビード形状が不良となった。
【0029】
ワイヤNo.7は、SiO量が多いのでスラグが流れ、溶融金属が垂れてビード形状が不良となった。さらに、アーク吹付けが強くなり鋼板を掘り、アンダーカットが発生した。また、スラグが焼付き、スラグ剥離性が劣化した。
【0030】
ワイヤNo.8は、SiO量が少ないのでスラグ流動性が悪く、ビードの止端にスラグが食い込み、ビード形状が不良となった。
【0031】
ワイヤNo.9は、Alが多いので鋼板または溶接金属中の窒素と化合物を形成し、固いスラグとなり、スラグが焼付きスラグの剥離性が劣化した。
【0032】
ワイヤNo.10は、金属弗化物のF換算値が多いので弗素ガス発生量が過剰となり溶接ヒュームの発生量が多くなった。また、スラグの融点が下がり、溶融金属が垂れてビード形状が不良となった。
【0033】
ワイヤNo.11は、金属弗化物のF換算値が少ないのでスラグが溶接金属に均一に被包せず、スラグが焼付きスラグ剥離性が劣化した。
【0034】
ワイヤNo.12は、スラグ剤成分の合計が多いのでスパッタが増加し、また、スラグ巻き込みの欠陥も発生した。
【0035】
ワイヤNo.13は、スラグ剤成分の合計が少ないので、溶融金属の保持が十分できず、溶接が困難で、ビード形状も不良となった。さらにスラグの被包性が不十分となり、スラグが焼きスラグ剥離性が劣化した。また、フラックス充填率が低いので溶滴が肥大化し移行が円滑に行われず、スパッタが増加した。
【0036】
ワイヤNo.14は、[Al]/[F]が高いので、Alと金属弗化物(F換算値)のバランスが崩れ、スラグ剥離性が劣化した。
【0037】
ワイヤNo.15は、金属Tiおよび合金Tiの換算値が多いので溶接作業性は良好であるが、溶着金属の引張試験において伸びが目標である20%以上を満足しなかった。
【0038】
ワイヤNo.16は、Ti合金のTi換算値が少ないのでスラグ凝固が遅く溶融金属が垂れて溶接が困難で、ビード形状も不良となった。
【0039】
ワイヤNo.17は、フラックス充填率が高すぎて製造時の伸線で断線が多発したので製造を中止した。
【0040】
【表1】
Figure 0003814166
【0041】
【表2】
Figure 0003814166
【0042】
【表3】
Figure 0003814166
【0043】
【表4】
Figure 0003814166
【0044】
【表5】
Figure 0003814166
【0045】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明の高窒素含有ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤは、生産性が良好で、窒素含有量が0.12%を超えるような高窒素含有ステンレス鋼の溶接において、機械的性能を満足しつつ、アーク状態、スパッタ発生量、スラグ被包性およびスラグ剥離性等の全姿勢溶接作業性に優れた高窒素含有ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤとして有益である。
【図面の簡単な説明】
【図1】二相ステンレス鋼用フラックス入りワイヤを用いて溶接した溶着金属の伸びと溶着金属中の水素量の関係を示す図である。
【図2】二相ステンレス鋼用フラックス入りワイヤを用いて溶接した溶着金属中の水素量とワイヤ中のTi(Ti換算値)量の関係を示す図である。
【図3】フラックス入りワイヤの断面図である。
【符号の説明】
1 外皮
2 充填フラックス
3 継ぎ目

Claims (2)

  1. ワイヤ全質量に対して質量%で
    TiO:3.4〜9.9%、
    SiO:0.2〜2.5%、
    Al0.04%以下、
    金属弗化物のF換算値:0.04〜0.5%、
    Al /金属弗化物のF換算値:0.35以下、
    金属Tiおよび、またはTi合金のTi換算値:0.08〜0.44%を含有し、かつスラグ剤成分の合計がワイヤ全質量の5.3〜11.4%であるフラックスをステンレス鋼外皮内に充填してなることを特徴とする高窒素含有ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ。
  2. 充填フラックスの充填率はワイヤ全質量の18〜26%であることを特徴とする請求項1記載の高窒素含有ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ。
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