JP3818600B2 - 自動変速機付車両の制動制御装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、自動変速機付車両の制動制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動変速機の変速時(例えばアップシフト時)の変速ショックは、該自動変速機内の摩擦係合要素(クラッチあるいはブレーキ)が係合することにより、自動変速機の入力側と出力側の回転速度比(ギヤ比)が瞬時に切換えられ、出力軸トルクが変動することによって発生する。
【0003】
変速時の出力軸トルクは、摩擦係合要素が係合する際の伝達トルク(の時間変化)に依存して変化する。摩擦係合要素の伝達トルクは、主に該摩擦係合要素を係合させる際の油圧に依存して決定される。従って、係合油圧を低目に調整すれば、該摩擦係合要素での伝達トルクの絶対値、あるいはその変化を小さくできるため、変速ショックも低減できるが、その分係合完了までの時間、即ち変速時間が長くかかるため(滑っている時間が長くなるため)、摩擦係合要素の耐久性は低下する。
【0004】
逆に、係合油圧を高目に設定すれば、該摩擦係合要素での伝達トルクも大きくなるため変速ショックは大きくなるが、短時間で係合が完了するようになることから耐久性は向上する。
【0005】
このような点に鑑み、変速時の変速ショックを低減する1つの方法として、従来、出力軸トルクの変化態様を直接的に規定している係合油圧を、変速の進行度合に応じて時間的に調圧制御し、例えば(変速時間自体は長くならないようにしながら)出力軸トルクの変動に体感上気になるようなピークやディップができるだけ生じないようにするという方法が提案されている。
【0006】
この方法は、比較的有効な方法ではあるが、変速の進行度合に応じて係合油圧を応答性良く制御するためのリニアソレノイドバルブ及びその駆動回路、変速の進行度合をチェックするセンサ(タイマでは十分な精度が期待できない)等が必要となり、システムが高価となってしまうという問題がある。
【0007】
ところで、一般にアクセルが踏み込まれ、エンジンの発生トルクが高いときは、係合油圧が同一のままだと変速時間が長くなって摩擦係合要素の耐久性が低下するため、この係合油圧はスロッル開度が大きくエンジンの発生トルクが高いときは高目に調圧されるように構成されている。
【0008】
そこで、この点に着目した変速ショックを低減するもう1つの方法として、例えば特開昭59−97350号公報等において、変速中にエンジンの発生トルク自体を低くするようにしたものが提案されている。上述した説明で明らかなように、もし油圧制御装置(において発生される係合油圧)が同一ならば、たとえエンジントルクを低減しても変速時間が短縮されるだけで(耐久性が向上するだけで)変速ショックを低減することはできない。
【0009】
しかしながら、エンジントルクが低減されるのを見越して、油圧制御装置(において発生される係合油圧)が予め低目に調圧されるように設計変更すれば、これにより変速ショックを低減することが可能となる。油圧を低目に調圧しても、エンジンの発生トルクが低減されるため、変速時間は短くてすみ、摩擦係合要素の耐久性は確保される。
【0010】
しかしながら、変速時にエンジントルクを低減するというこの方法は、当該エンジントルクの低減に見合った油圧制御装置の開発や設計変更が必要であり、又エンジントルクの低減はいつでもできる訳ではないという問題があった。例えば冷間時にエンジントルクを低減しようとすると失火の虞れがでてくる。又、エンジントルクの低減を遅角制御によって実現している場合には、後燃えが増えることによって排気系の温度が上昇し易くなり、従って該排気系の温度があまり高くなり過ぎると触媒を保護するためにやはりそれ以上の点火遅角ができなくなってしまうこともある。
【0011】
このように、エンジントルクの低減が何らかの原因で実行できないような場合に変速時のエンジントルクの低減をただ単に中止すると、油圧制御装置の方は、前述したように(エンジントルクが低減されることを前提として)予め低い油圧で係合するように設計されているため、係合時間(変速時間)が非常に長くなり、耐久性が著しく損われる。
【0012】
従って、現状では、コストや摩擦係合要素の耐久性に関する問題も含めた上で、変速ショックを低減する唯一無二の方法というのは未だ確定されていないというのが実情である。
【0013】
なお、特開平2−200540号公報においては、何らかの原因で変速時のエンジントルクの低減ができないときには、これによって変速ショックの低減ができなくなるため、代わりに、制動装置を作動させ駆動輪を制動するようにするという技術が提案されている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特開平2−200540号公報に開示された技術は、『エンジントルクを低減するときは、(変速ショックの心配がないため)油圧は「高目」に調圧しておくが、エンジントルクの低減が実行不可能のときは、油圧を「高目にするのを中止する(即ち油圧を低目に調圧する)」と共に、制動装置を作動させる』と言及しており、基本的な技術思想の説明に疑問な内容が散見され、又具体的にどのように制動力を付与する等の開示が全くなかったため、実車に採用する際に有効な技術を提供したと言える内容のものではなかった。
【0015】
本発明は、変速ショックを低減するための技術に関する上述したような実情に鑑みてなされたものであって、(エンジンのトルク低減とは関係なく)比較的低コストで変速時のショックを確実に低減することができる自動変速機付車両の制動制御装置を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、図1にその要旨を示すように、自動変速機と、運転者のブレーキ操作とは独立して駆動輪に制動力を付与可能な手段とを備えた自動変速機付車両の制動制御装置において、自動変速機の変速のイナーシャ相開始に関係した所定時期を検出する手段と、変速の種類を検出する手段と、エンジン要求出力を検出する手段と、車両の実加速度を検出する手段と、変速の進行度合を検出する手段と、前記変速の進行度合、変速の種類、及びエンジン要求出力に応じて目標加速度を設定する手段と、変速時の車両の加速度の変化態様を所望の態様に制御し得る変速時制動力を設定する手段と、実加速度と目標加速度の差により前記変速時制動力をリアルタイムで補正する手段と、を備え、前記駆動輪に、前記所定の時期から、前記変速時制動力を付与することにより、上記課題を解決したものである。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記変速の種類の検出には、少なくとも当該変速がアップシフトか否かの検出を含み、且つ、更に前記変速の進行度合を検出する手段が高速段摩擦係合要素の油圧値の検出手段であり、アップシフトのときには、前記目標加速度を、変速の種類、エンジン要求出力のほか、前記高速段摩擦係合要素の油圧値に応じて設定することにより、同じく上記課題を解決したものである。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記目標加速度を、変速開始前の実加速度にも依存して設定することにより、同じく上記課題を解決したものである。
【0019】
請求項4に記載の発明は、自動変速機と、運転者のブレーキ操作とは独立して駆動輪に制動力を付与可能な手段とを備えた自動変速機付車両の制動制御装置において、自動変速機の変速のイナーシャ相開始に関係した所定時期を検出する手段と、変速の種類を検出する手段と、エンジン要求出力を検出する手段と、前記変速の種類及びエンジン要求出力に応じて、変速時の車両の加速度の変化態様を所望の態様に制御し得る変速時制動力を設定する手段と、車両の実加速度を検出する手段と、変速の進行度合の検出手段及び高速段摩擦係合要素の油圧値の検出手段のうち少なくとも1つを備え、前記変速の種類の検出には、少なくとも当該変速がアップシフトか否かの検出を含み、アップシフトのときには、前記変速時制動力を、変速の種類、エンジン要求出力のほか、変速の進行度合及び高速段摩擦係合要素の油圧値のうち、少なくとも一方に応じて設定し、前記変速の種類がパワーオフアップシフト時で且つ実加速度が負であった時には前記駆動輪に、前記所定の時期から、前記変速時制動力を付与するが、前記変速の種類がパワーオフアップシフト時で且つ実加速度が正であった時は前記変速時制動力を付与しないことにより、同じく上記課題を解決したものである。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、更に、自動変速機の実出力軸トルクを検出する手段と、前記変速の種類及びエンジンの要求出力に応じて目標出力軸トルクを設定する手段と、実出力軸トルクと目標出力軸トルクの差に依存して、前記変速時制動力を補正する手段と、を備えることにより、同じく上記課題を解決したものである。
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、更に、前記変速の種類及びエンジン要求出力に応じて目標加速度を設定する手段と、実加速度と目標加速度の差により前記変速時制動力を補正する手段と、を備えることにより、同じく上記課題を解決したものである。
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、前記目標加速度を、変速開始前の実加速度にも応じて設定することにより、同じく上記課題を解決したものである。
【0021】
【作用】
本発明においては、自動変速機が変速過程にあったときに駆動輪に制動力を付与することにより変速ショックを低減することとした。この場合エンジントルクの低減制御とは必ずしも関連付けられる必要はなく、又、この制動力は、車両の加速度変化の態様が所望の態様となるように、変速の種類及びエンジン要求出力に応じて設定される。
【0022】
ここで、変速の種類とは、アップシフトかダウンシフトかの区別、アクセルが踏み込まれた状態での変速か解放された状態での変速かの区別、あるいは第何速段から第何速段への変速か等の区別等を指す。
【0023】
又、エンジン要求出力は、運転者がエンジンに対して要求する発生トルクを指し、具体的には、アクセルペダルの開度、スロットル開度、エンジンの吸入空気量、吸気管負圧、燃料噴射量、あるいはこれらとエンジン回転速度との関係等から求めることができる。
【0024】
なお、「車両の加速度が所望の態様となるようにする」ということは「自動変速機の特定のメンバの回転加速度が所望の態様となるようにする」ということと同義に考えてよい。又、自動変速機の「出力軸トルクが所望の態様となるようにする」ということとも、この場合は同義と考えてよい。車両の加速度、自動変速機の特定のメンバの回転加速度、及び自動変速機の出力軸トルクはいずれも同様な変化特性を示すためである。
【0025】
本発明の場合、油圧制御装置において発生する係合油圧自体は基本的には全く変更しない。即ち、本発明は、あくまで基本的には自動変速機内の油圧制御装置を全く変更することなく変速ショックを低減することを意図したものである。
【0026】
尤も、本発明は、(エンジントルクを低減させる制御機構を全く有していない車両においても適用可能であるが)既に公知となっている変速時のエンジントルクの低減技術を併用することを妨げるものではない。但し、この場合、エンジントルクが低減されるときには摩擦係合要素の係合油圧は「低目」に調圧され、何らかの原因でエンジントルクの低減がなされないときにはこの「低目」に調圧する制御が中止され、通常通りの係合油圧に調圧される。この傾向は、前述した特開平2−200540号公報で開示された技術とは全く逆の方向となる。
【0027】
なお、アップシフトのときには、前記変速時制動力を、変速の種類、エンジン要求出力のほか、変速の進行度合、あるいは高速段摩擦係合要素の油圧値にも依存して設定するようにすると、該高速段摩擦係合要素の係合付近での車両駆動力(出力軸トルク)の増加を確実に防止でき、より滑らかな変速を達成することができる。
【0028】
又、自動変速機の実出力軸トルクを検出すると共に、変速の種類及びエンジンの要求出力に応じて目標出力軸トルクを設定し、この差に応じて制動力を補正するようにすると、エンジントルクや自動変速機の効率、ブレーキパッドとブレーキディスク間の摩擦係数等の製品のばらつき等の如何に拘らず変速ショックを確実に低減できるようになる。
【0029】
なお、実出力軸トルクと目標出力トルクとの差に依存して変速時制動力を補正する代わりに、車両の実加速度を検出すると共に、変速の種類及びエンジンの要求出力に応じて目標加速度を設定し、この実加速度と目標加速度との差により変速時制動力を補正するようにしても同様の作用が得られる。
【0030】
この場合目標加速度を、変速の種類、エンジン要求出力に加え、変速開始前の実加速度にも依存して設定するようにすると、路面勾配の影響を効果的に取除くことができるようになる。
【0031】
【実施例】
以下図面に基づいて本発明の実施例を詳細に説明する。
【0032】
図2において、符号10がブレーキペダル、12がブースタ、14がマスターシリンダ、16がリザーバ、18がトラクションコントロール用のポンプ(TRCポンプ)、20がマスターシリンダカットソレノイドバルブ、22がリザーバカットソレノイドバルブ、24、26がアンチロックブレーキシステム用のポンプ(ABSポンプ)、28、30、32、34が3位置ソレノイドバルブ、36がフロントホイールシリンダ、38がリヤホイールシリンダである。
【0033】
この車両は後輪駆動車であるため、本発明に係る変速時制動力の付与は後輪にのみ作用している前記トラクションコントロール用のポンプ(TRCポンプ)18を用いた経路によって実現される。このTRCポンプ18は、トラクションコントロールコンピュータ(TRC ECU)80からの指令によって駆動される図示せぬ電動ポンプにより駆動される。通常はオフとされ、オンとされた時にリザーバ16からオイルを汲み上げリヤホイールシリンダ38側の油路72側に吐出する。
【0034】
前記マスターシリンダカットソレノイドバルブ20は、リヤホイールシリンダ油路71を、TRCポンプ吐出油路72又はブレーキペダルの踏み力に応じた油圧が発生されるマスターシリンダ油路73のいずれかに選択的に連結(切換える)バルブである。オフにてリヤホイールシリンダ油路71とマスターシリンダ油路73とが連通され(図2の位置)、オンにてリヤホイールシリンダ油路71とTRCポンプ吐出油路72とが連通するように設定されている。
【0035】
前記リザーバカットソレノイドバルブ22は、リヤホイールシリンダ38側の油路74とリザーバ16との連通・非連通を切り換えるバルブで、オフにて非連通(図2の位置)、オンにて連通されるバルブである。
【0036】
前記3位置ソレノイドバルブ28、30、32、34のうち、符号32、34で示された3位置ソレノイドバルブが本発明の実施に係る後輪制動用の3位置ソレノイドバルブに相当している。
【0037】
即ち、この3位置ソレノイドバルブ32、34は、▲1▼リヤホイールシリンダ38側の油路75、76とマスターシリンダカットソレノイドバルブ20側の油路71とを連通することによるブレーキ油圧の増圧、▲2▼リヤホイールシリンダ38側の油路75、76とリザーバカットソレノイドバルブ22側の油路74とを連通させることによるブレーキ油圧の減少、▲3▼いずれとも非連通にすることによるブレーキ油圧の保持、の3位置を切り換えるバルブである。この3位置ソレノイドバルブ32、34は、後述する付与すべき変速時制動力に応じたパターン出力(増圧t1(ms)、減圧t2(ms))にて駆動され、その結果、リヤホイールシリンダ38のブレーキ油圧が該パターン出力の履歴(積分)にて決定される。なお、オフにて増圧位置とされる。
【0038】
この任意の制動力を付与することのできる制動制御回路Sの基本的なハード構成自体は既に公知のものであるため、ここではこの程度の説明に止どめる。なお、図2の符号40はプロポーショナルバルブ、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62はチェック弁、64、66はリザーバである。
【0039】
図3に示されるように、自動変速機コントロールコンピュータ(ECT ECU)82には、エンジン回転数センサ90からのエンジン回転数信号、運転者のシフトレバーの操作位置センサ91からのレンジ位置信号、フットブレーキスイッチ92からのフットブレーキ信号、スロットルセンサ93からのスロットル開度信号、出力軸回転数センサ94からの出力軸回転数(車速)信号等が入力されており、又、トラクションコントロールコンピュータ(TRC ECU)80には、駆動輪の車輪速度センサ97からの信号がそれぞれ入力されている。
【0040】
なお、自動変速機コントロールコンピュータ(ECT ECU)82は、スロットル開度及び車速に依存して適切な変速段を判断しているため、当然に変速の種類を自判することができる。又、この自動変速機コントロールコンピュータ82は後述する方法により、出力軸回転数の情報から車両の加速度を演算によって求めている。
【0041】
次に、図4に示す制御フローに基づいてこの実施例の作用を説明する。
【0042】
まず、この制御フローにおいて用いられているフラグF1〜F4の意味から説明する。
【0043】
フラグF1は、他の変速段へのソレノイド出力(変速指令)が検出されたときに1とされるフラグである。即ち本発明に係る変速時制動力を付与する制御に入ったときに1、抜けたときに0とされるフラグである。
【0044】
フラグF2は、当該変速がアップシフトであったときに1、ダウンシフトであったときには0とされるフラグである。
【0045】
フラグF3は、当該変速がパワーオン(アクセルが踏み込まれた状態)で実行される変速であったときに1、パワーオフ(アクセルが解放された状態)で実行される変速であったときに0とされるフラグである。
【0046】
フラグF4は、パワーオンダウンシフトが実行される際、制動力を付与するタイマがカウント中であるときに1、そうでないときに0とされるフラグである。
【0047】
以下制御フローを具体的に説明していく。
【0048】
ステップ102では、フラグF1が1であるか否か、即ち本変速時制動制御が既に実行中であるか否かが判断される。多くの場合は非実行中であるため、ステップ104に流れ、ここで他の変速段へのソレノイド出力、即ち新たな変速指令が出されたか否かが判断される。変速指令が検出されないときは、ステップ106に進んでフラグF1が0とされ、更にステップ122でフラグF4が0とされた後ステップ124にブレーキオフ(非制動)の要求が出されリターンされる。
【0049】
やがて自動変速機において何等かの変速指令が出されると、ステップ104でYESの判断がなされ、ステップ108に進んでフラグF1が1にセットされる。次いでステップ110で当該変速がアップシフトであるか否かが判定され、アップシフトであったときにはステップ112でフラグF2が1にセットされる。又、ダウンシフトであったときにはステップ114に進んでフラグF2が0にセットされる。
【0050】
ステップ116では、当該変速がパワーオンの状態で行われた変速であるか否かが判断される。パワーオンの状態で実行される変速であったときにはステップ118でフラグF3が1にセットされる。パワーオフの状態で実行される変速であったときにはステップ120でフラグF3が0にセットされる。
【0051】
変速指令が検出された最初のフローでは、このように当該変速がどのような変速であるかが確認された後は、ステップ122でフラグF4が0にセットされた後、ステップ124でブレーキオフの要求がなされ、取り敢えずリターンされる。
【0052】
しかしながら、次にこのフローがスタートされたときにはフラグF1が1にセットされているため、ステップ102でYESの判断が出され、ステップ130側へと進む。ステップ130、132、134では、変速の種類に応じたフローの振り分けが実行される。
【0053】
その結果、当該変速がパワーオンアップシフトであったときには、ステップ136に進み、エンジン回転速度Ne が自動変速機の出力軸回転速度No に低速段(変速前の変速段)側のギヤ比i Lを乗じた値から所定値N1を引いた値よりも小さくなったか否かを判定することにより、実質的な変速が開始したか否か(イナーシャ相が開始したか否か)が判定される。イナーシャ相が開始されるまではステップ152に進んでその時の実加速度が変速前の実加速度G1として定義された上でステップ122、124を経てリターンされる。
【0054】
やがてイナーシャ相が開始されたと判断されると、ステップ138に進んでエンジン回転速度Neが出力軸回転速度No に高速段(変速後の変速段)側のギヤ比i Hを乗じた値から定数N2を足した値よりも小さくなったか否かが判定される。当初は、未だ小さくなったとは判定されないため、ステップ140に進み、スロットル開度TAによる要求ブレーキトルクの初期値Tboと、変速前実加速度G1及び変速進行度合いによる目標加速度G2のマップ検索が行われ、ステップ142で目標加速度G2と実加速度G3の差によるブレーキトルクの補正が、式Tb =K(目標加速度G2−実加速度G3)+Tboに基づいてリアルタイムで行われ、この演算結果に基づいてステップ144でブレーキオン(制動力付与)の要求が出される。
【0055】
この場合、目標加速度は図5の破線で示されるような特性となるようにリアルタイムで定められる。
【0056】
なお、この実施例では、車両の実加速度Gの検出を出力軸回転数センサ(車速センサ)94の信号から演算によって行うようにしている。加速度の演算は、距離一定での演算方法と時間一定での演算方法とがあり、共にそれ自体は公知の演算方法であるため、ここでは距離一定での演算方法について簡単に説明するに止どめる。
【0057】
図6に示されるように、まず、出力軸回転数センサ94の入力パルス周期(時間)TGSP2Dの最新n パルス分の総和TGSP2SN、n パルス前のn パルス分の総和TGSP2SPを求める。次いで、最新n パルス分の総和TGSP2SNとn パルス前のn パルス分の総和TGSP2SPより車速SPDN、SPDPをそれぞれ(1)式に基づいて求める。
【0058】
SPDN(P)=(n /TGSP2SN(P)・np)×(2πr /i diff)…(1)
【0059】
ここで、npは出力軸1回転当りのセンサ94の検出パルス数、i diffは、デファレンシャルにおけるギヤ比、r はタイヤ動荷重半径である。
【0060】
車両の加速度Gは、時間TGSP2D間の車速の変化として近似して求めることができる。即ち、G=(SPDN−SPDP)/TGSP2SNとして求めることができる。
【0061】
一方、変速の種類がパワーオフアップシフトであったときは、ステップ134からステップ150へと進んで来る。ここでは、まずエンジン回転速度Ne が出力軸回転速度No に低速段(変速前の変速段)側のギヤ比率i Lを乗じた値から所定値N1を引いた値よりも小さくなった否かを判断することによって実質的な変速の開始(イナーシャ相の開始)が判定される。イナーシャ相が未だ開始されないうちは、ステップ152に進んでその時の実加速度が変速前の実加速度G1として定義された上でステップ122、124を経てリターンされる。やがて、イナーシャ相が開始されたと判断されると、ステップ154に進んで変速前の実加速度G1が負であるか否かが判断される。もしこれが零又は正であったときは、パワーオフで且つ実加速度が正であることから、降坂路を走行中であると判定できるため、ステップ106、122、124を経てリターンされ、変速時の制動力制御は特に実行されない。それは、アクセル全閉で降坂路を加速走行中の場合は、パワーオフアップシフトが実行されてもほとんど変速ショックが発生しないためである。
【0062】
これに対し、変速前の実加速度G1が負であると判定された時は、ステップ156に進んでエンジン回転速度Neが出力軸回転速度No に高速段(変速後の変速段)側のギヤ比i Hより定数N2を足した値よりも小さくなったか否かを判定することにより、変速の終了付近が検出される。未だ変速の終了付近に達しないと判定されたときは、ステップ158に進んで要求ブレーキトルクの初期値Tb ′と変速前の実加速度G1による目標加速度G4のマップが検索がなされる。又、ステップ160では、目標加速度G4と実加速度G3との差によるブレーキトルクの補正が式Tb =K(目標加速度G4−実加速度G3)+Tb ′に基づいてリアルタイムで行なわれ、ステップ144で当該演算結果に基づいたブレーキオン(制動力付与)の要求が出される。
【0063】
変速の種類がパワーオンダウンシフトであった時には、ステップ132からステップ170へと進んでくる。ステップ170ではフラグF4が1であるか否かが判定される。当初は0に設定されているため、ステップ172に進み、ここでエンジン回転速度Ne が出力軸回転速度No に低速段(変速後の変速段)側のギヤ比i Lを乗じた値から定数N3を引いた値より大きくなったか否かを判定することにより、パワーオンダウンシフトの実質的な変速の終了付近が検出される。
【0064】
当初はこの判定がNOとなるため、ステップ122、124を介してそのままリターンされるが、やがて変速の終了付近に至ったと判定されると、ステップ174に進んでフラグF4が1にセットされると共に、ステップ176でタイマT2 がリセットされカウントアップが開始される。ステップ178では、当該タイマT2 が所定値 t3 より小さいか否かが判定され、小さいと判断されるうちはステップ180に進んでスロットル開度TAによる要求ブレーキトルクの演算処理ルーチンが実行され、この演算結果に基づいてステップ144でブレーキオン(制動力付与)の要求が出される。
【0065】
ステップ174で一度フラグF4が1にセットされると、次回以降のフローではステップ170での判断がYESとなるため、直接的にステップ178に進み、タイマT2 が所定値 t3 より小さいか否かが判断される。やがて、このタイマT2 が所定値 t3 より大きくなったと判断されると、ステップ106、122、124を介してリターンされ、当該パワーオンダウンシフト時における制動力制御が終了される。
【0066】
なお、変速の種類がパワーオフダウンシフトであった時には、ステップ132からステップ190に進み、ここでフラグF1が0にリセットされ、ステップ124を介してそのままリターンされるようになっている。即ち、変速の種類がパワーオフダウンシフトの時は、特に制動力制御は実行されない。これは、パワーオフダウンシフトの時には変速ショックがほとんど問題とならないためである。
【0067】
なお、上記実施例においては、車両の実加速度G3、あるいはG4と目標加速度G1との差に基づいて制動力をリアルタイムでフィードバック補正するようにしていたが、これを実出力軸トルクと目標出力軸トルクとの差に基づいてフィードバック補正する構成としてもよい。
【0068】
なお、この制御フローが実行される時の自動変速機の変速指令と制動制御装置の各機器のオンオフのタイムチャートは図7に示されるようになる。
【0069】
本発明は、基本的には変速時のエンジントルク制御とは独立して(無関係に)実行し得るものであるが、前述したように、本発明と変速時のエンジントルク制御とを併用することは可能である。この場合、具体的には、パワーオンアップシフトの場合は図4のステップ138でNOの判断がなされたときパワーオフダウンシフトの場合は、ステップ156でNOの判断がなされたときにそれぞれステップ140、142、あるいはステップ158、160とそれぞれ平行してエンジントルクダウンを実行するとよい。又、パワーオンダウンシフトの場合は、ステップ178でYESの判断がなされた時に、ステップ180の処理と平行してエンジントルクダウンを実行するようにするとよい。
【0070】
エンジントルクダウンが実行されるときは自動変速機の油圧制御装置が低めに調圧されるようにする。その結果、変速時間を長くすることなく(摩擦係合要素の耐久性を低下させることなく)一層の変速ショック低減を実現することができる。
【0071】
なお、本発明では、リニアソレノイドを用いた変速時のリアルタイムでの係合圧制御を併用してもよいのは言うまでもない。
【0072】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明のよれば、自動変速機の油圧制御系を特に変更することなく、又、例えば冷間時に実行できなくなるというような制約を受けること無く、常に変速ショックを低減することができるようになるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の要旨を示すブロック図
【図2】本発明が適用される車両の制動制御装置の構成を示す概略図
【図3】各種センサの入力状態を示すブロック図
【図4】上記実施例において実行される制御フローを示す流れ図
【図5】車両の目標加速度(出力軸トルク)の特性を示す線図
【図6】車速センサから実加速度を演算する方法を説明するための線図
【図7】自動変速機の変速指令と制動制御装置の各機器のオン、オフを示したタイムチャート
【符号の説明】
10…ブレーキペダル
14…マスターシリンダ
16…リザーバ
18…TRCポンプ
20…マスターシリンダカットソレノイドバルブ
22…リザーバカットソレノイドバルブ
24、26…ABSポンプ
28、30、32、34…3位置ソレノイドバルブ
36…フロントホイールシリンダ
38…リヤホイールシリンダ(駆動輪のホイールシリンダ)
Claims (7)
- 自動変速機と、運転者のブレーキ操作とは独立して駆動輪に制動力を付与可能な手段とを備えた自動変速機付車両の制動制御装置において、
自動変速機の変速のイナーシャ相開始に関係した所定時期を検出する手段と、
変速の種類を検出する手段と、
エンジン要求出力を検出する手段と、
車両の実加速度を検出する手段と、
変速の進行度合を検出する手段と、
前記変速の進行度合、変速の種類、及びエンジン要求出力に応じて目標加速度を設定する手段と、
変速時の車両の加速度の変化態様を所望の態様に制御し得る変速時制動力を設定する手段と、
実加速度と目標加速度の差により前記変速時制動力をリアルタイムで補正する手段と、を備え、
前記駆動輪に、前記所定の時期から、前記変速時制動力を付与することを特徴とする自動変速機付車両の制動制御装置。 - 請求項1において、
前記変速の種類の検出には、少なくとも当該変速がアップシフトか否かの検出を含み、且つ、更に
前記変速の進行度合を検出する手段が、高速段摩擦係合要素の油圧値の検出手段であり、
アップシフトのときには、前記目標加速度を、変速の種類、エンジン要求出力のほか、前記高速段摩擦係合要素の油圧値に応じて設定する
ことを特徴とする自動変速機付車両の制動制御装置。 - 請求項1又は2において、
前記目標加速度を、変速開始前の実加速度にも依存して設定することを特徴とする自動変速機付車両の制動制御装置。 - 自動変速機と、運転者のブレーキ操作とは独立して駆動輪に制動力を付与可能な手段とを備えた自動変速機付車両の制動制御装置において、
自動変速機の変速のイナーシャ相開始に関係した所定時期を検出する手段と、
変速の種類を検出する手段と、
エンジン要求出力を検出する手段と、
前記変速の種類及びエンジン要求出力に応じて、変速時の車両の加速度の変化態様を所望の態様に制御し得る変速時制動力を設定する手段と、
車両の実加速度を検出する手段と、
変速の進行度合の検出手段及び高速段摩擦係合要素の油圧値の検出手段のうち少なくとも1つを備え、
前記変速の種類の検出には、少なくとも当該変速がアップシフトか否かの検出を含み、
アップシフトのときには、前記変速時制動力を、変速の種類、エンジン要求出力のほか、変速の進行度合及び高速段摩擦係合要素の油圧値のうち、少なくとも一方に応じて設定し、
前記変速の種類がパワーオフアップシフト時で且つ実加速度が負であった時には前記駆動輪に、前記所定の時期から、前記変速時制動力を付与するが、前記変速の種類がパワーオフアップシフト時で且つ実加速度が正であった時は前記変速時制動力を付与しない
ことを特徴とする自動変速機付車両の制動制御装置。 - 請求項4において、更に、
自動変速機の実出力軸トルクを検出する手段と、
前記変速の種類及びエンジンの要求出力に応じて目標出力軸トルクを設定する手段と、
実出力軸トルクと、目標出力軸トルクの差に依存して、前記変速時制動力を補正する手段と、
を備えたことを特徴とする自動変速機付車両の制動制御装置。 - 請求項4において、更に、
前記変速の種類及びエンジン要求出力に応じて目標加速度を設定する手段と、
実加速度と目標加速度の差により前記変速時制動力を補正する手段と、
を備えたことを特徴とする自動変速機付車両の制動制御装置。 - 請求項6において、
前記目標加速度を、変速開始前の実加速度にも応じて設定することを特徴とする自動変速機付車両の制動制御装置。
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-
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