JP3824599B2 - 薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法ならびに磁気記録装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、少なくとも記録用の誘導型磁気変換素子を備えた薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法ならびにこの薄膜磁気ヘッドを搭載した磁気記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、例えばハードディスクなどの磁気記録媒体(以下、単に「記録媒体」という。)の面記録密度の向上に伴い、薄膜磁気ヘッドの性能向上が求められている。薄膜磁気ヘッドの記録方式としては、例えば、信号磁界の向きを記録媒体の面内方向(長手方向)にする長手記録方式や、信号磁界の向きを記録媒体の面に対して直交する方向にする垂直記録方式が知られている。現在のところは長手記録方式が広く利用されているが、面記録密度の向上に伴う市場動向を考慮すれば、今後は長手記録方式に代わり垂直記録方式が有望視されるものと想定される。なぜなら、垂直記録方式では、高い線記録密度を確保可能な上、記録済みの記録媒体が熱揺らぎの影響を受けにくいという利点が得られるからである。
【0003】
垂直記録方式の薄膜磁気ヘッドの主要部は、例えば、磁束を発生させる薄膜コイルと、この薄膜コイルにおいて発生した磁束を外部に放出して記録処理を実行する主磁極層と、この主磁極層から放出されて記録媒体を磁化した磁束を環流させるリターンヨーク層(環流磁極層)とを含んで構成されている。この種の薄膜磁気ヘッドとしては、例えば、主磁極層のトレーリング側(媒体流出側)にリターンヨーク層が配設されたものがいくつか知られている(例えば、特許文献1〜3参照。)。これらの薄膜磁気ヘッドでは、主磁極層から磁束が放出された際に、その主磁極層のトレーリング側の端縁近傍から放出された磁束のうちの周囲への広がり成分がリターンヨーク層に流れ込むため、結果として磁束の広がりが抑制される。したがって、リターンヨーク層を備えていないものと比較して、記録媒体対向面(エアベアリング面)近傍における記録磁界勾配が急峻になり、結果としてSN(Signal to Noise )比が改善されるという利点が得られる。
【0004】
その一方で、従来の垂直記録方式の薄膜磁気ヘッドでは、不要な磁束によって記録媒体の記録情報を消去してしまったり、上書きしてしまうなどの問題が生じていた。図33および図34は、いずれも再生ヘッド部110Aおよび記録ヘッド部110Bとを備えた従来の薄膜磁気ヘッド110の断面構成を示している。薄膜コイル122は、リターンヨーク層128と主磁極層124との接続部を中心として、積層面に平行な同一平面(XY平面)内に巻回されたスパイラル構造をなしており、主磁極層124に磁束を発生させるようになっている。図33は、主磁極層124から放出された磁束130が、主磁極層124から見て再生ヘッド部110Aとは反対側(すなわち、トレーリング側)に設けられたリターンヨーク層128へ還流するように構成されたものである。一方、図34は、主磁極層124から放出された磁束130が、主磁極層124から見て再生ヘッド部110Aの側(リーディング側とも呼ばれる)に設けられたリターンヨーク層128へ還流するように構成されたものである。図33および図34に示したように、いずれの場合も、主磁極層124から放出され、記録媒体としての磁気ディスク102を通過したのちリターンヨーク層128に流入する戻り磁束130Rが、リターンヨーク層128に集中してしまう。このため、戻り磁束130Rが、本来、記録媒体への書き込みに寄与すべきでない不要な磁束となり、上記したような意図しない記録情報の消去や上書きなどの問題を引き起こす場合もあった。この問題に対処するものとして、トレーリング側およびリーディング側の双方にリターンヨーク層を配設するようにした薄膜磁気ヘッドが開示されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0005】
【特許文献1】
米国特許第4656546号明細書
【特許文献2】
特開平05−325137号公報
【特許文献3】
特開平06−236526号公報
【特許文献4】
特許第3368247号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、垂直記録方式の薄膜磁気ヘッドの普及を図るためには、さらなる記録密度の向上が求められる。したがって、さらに強力な記録磁界を発生させる必要がある。しかしながら、スパイラル構造の薄膜コイルを有する従来の垂直記録方式の薄膜磁気ヘッドでは、薄膜コイルによって生じる磁束を十分に効率よく利用することが難しく、記録電流に対する記録磁界が低いので、さらなる高記録密度化に対応するには、情報記録動作時により大きな記録電流を流さなければならなかった。ところが、駆動回路に流すことの可能な電流値には限度があり、また、大電流を流した場合には薄膜磁気ヘッド自体の発熱およびそれに伴う膨張などのおそれがあり、磁気記録デバイスとしての信頼性に欠けていた。このため、より低い記録電流であっても安定した記録動作を実現可能な薄膜磁気ヘッドが望まれている。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、さらなる高記録密度化に対応しつつ、安定した記録特性を確保することが可能な薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法ならびにこの薄膜磁気ヘッドを備えた磁気記録装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る薄膜磁気ヘッドは、所定の媒体進行方向に移動する記録媒体に対向する記録媒体対向面から離れる方向に延在する主磁極層と、記録媒体対向面と直交する軸を中心とし、主磁極層の周囲をヘリカル状に巻回するように構成された薄膜コイルと、絶縁層を介して主磁極層および薄膜コイルを挟んで互いに対向するように構成され、主磁極層から放出されて記録媒体を磁化した磁束を環流させる第1および第2の環流磁極層とを備えるようにしたものである。
第1の還流磁極層は、主磁極層の媒体進行方向における媒体流入側に、記録媒体対向面から遠い側の第1の接続領域において主磁極層と連結されるように配設されている。第2の環流磁極層は、主磁極層の媒体進行方向における媒体流出側に、記録媒体対向面に近い側においてギャップ層を介して主磁極層と対向すると共に記録媒体対向面から遠い側の第2の接続領域において主磁極層と連結されるように配設されており、かつ、記録媒体対向面から絶縁層における記録媒体対向面に最も近い側の位置まで延在する第1の部分と、この第1の部分と連結されると共に第2の接続領域にかけて延在して主磁極層と連結された第2の部分とを含んで構成されている。
さらに、記録媒体対向面に直交し、かつ媒体進行方向を含む面内において、薄膜コイルの媒体流出側の断面のうち最も記録媒体に近い断面よりも、薄膜コイルの媒体流入側の断面のうち最も前記記録媒体に近い断面のほうが記録媒体対向面から遠い側に位置するように構成されている。
ここで、「ヘリカル状に巻回する」とは、記録媒体対向面に平行な投影面において記録媒体対向面とほぼ直交する主磁極層の周囲を巻回すると共に、膜面に平行な面内において渦を巻くようなスパイラル状に巻回する状態とは異なり、記録媒体対向面に直交する中心軸方向の成分を有し、その中心軸方向に沿って延在している状態を示す。
【0009】
本発明に係る磁気記録装置は、記録媒体と、この記録媒体に磁気的に情報を記録する薄膜磁気ヘッドとを有し、薄膜磁気ヘッドが、所定の媒体進行方向に移動する記録媒体に対向する記録媒体対向面から離れる方向に延在する主磁極層と、記録媒体対向面と直交する軸を中心とし、主磁極層の周囲をヘリカル状に巻回するように構成された薄膜コイルと、絶縁層を介して主磁極層および薄膜コイルを挟んで互いに対向するように構成され、主磁極層から放出されて記録媒体を磁化した磁束を環流させる第1および第2の環流磁極層とを備えるようにしたものである。
第1の還流磁極層は、主磁極層の媒体進行方向における媒体流入側に、記録媒体対向面から遠い側の第1の接続領域において主磁極層と連結されるように配設されている。第2の環流磁極層は、主磁極層の媒体進行方向における媒体流出側に、記録媒体対向面に近い側においてギャップ層を介して主磁極層と対向すると共に記録媒体対向面から遠い側の第2の接続領域において主磁極層と連結されるように配設されており、かつ、記録媒体対向面から絶縁層における記録媒体対向面に最も近い側の位置まで延在する第1の部分と、この第1の部分と連結されると共に第2の接続領域にかけて延在して主磁極層と連結された第2の部分とを含んで構成されている。
さらに、記録媒体対向面に直交し、かつ媒体進行方向を含む面内において、薄膜コイルの媒体流出側の断面のうち最も記録媒体に近い断面よりも、薄膜コイルの媒体流入側の断面のうち最も前記記録媒体に近い断面のほうが記録媒体対向面から遠い側に位置するように構成されている。
【0010】
本発明に係る薄膜磁気ヘッドまたは磁気記録装置では、ヘリカル状に巻回する薄膜コイルを用いるので、スパイラル状に巻回する薄膜コイルを用いた場合と異なり、薄膜コイルと主磁極層との距離を薄膜コイルのほぼ全域に亘って短くすることができる。このため、このヘリカル状の薄膜コイルに電流を流すことによって、スパイラル状の薄膜コイルを用いた場合よりも効率的に主磁極層を通過する磁束が形成される。さらに、主磁極層から流出した磁束が、絶縁層を介して主磁極層および薄膜コイルを挟んで互いに対向するように構成された第1および第2の環流磁極層に分岐して流れるので、還流磁束の集中が緩和される。
しかも、第2の環流磁極層が、主磁極層の媒体進行方向における媒体流出側に、記録媒体対向面に近い側においてギャップ層を介して主磁極層と対向すると共に記録媒体対向面から遠い側の第2の接続領域において主磁極層と連結されるように配設されており、かつ、記録媒体対向面から絶縁層における記録媒体対向面に最も近い側の位置まで延在する第1の部分と、この第1の部分と連結されると共に第2の接続領域にかけて延在して主磁極層と連結された第2の部分とを含んで構成されるようにしたので、第1の部分がシールド層として機能する。すなわち、薄膜コイルのうちの、主磁極層の媒体進行方向における媒体流出側に設けられた部分と、記録媒体とが磁気的に隔てられることとなる。
さらに、記録媒体対向面に直交し、かつ媒体進行方向を含む面内において、薄膜コイルの媒体流出側の断面のうち最も記録媒体に近い断面よりも、薄膜コイルの媒体流入側の断面のうち最も前記記録媒体に近い断面のほうが記録媒体対向面から遠い側に位置するように構成したので、薄膜コイルに流れる電流によって発生する還流磁束が記録媒体に対して直接及んでしまうのを抑制することができる。
【0011】
本発明に係る薄膜磁気ヘッドでは、さらに、主磁極層が、記録媒体をその表面と直交する方向に磁化させるための磁束を放出するように構成されていることが望ましい。
【0012】
本発明に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法は、所定の媒体進行方向に移動する記録媒体に対向する記録媒体対向面から離れる方向に延在する主磁極層と、記録媒体対向面と直交する軸を中心とし、主磁極層の周囲をヘリカル状に巻回するように構成された薄膜コイルと、主磁極層および薄膜コイルを挟んで互いに対向するように構成され、主磁極層から放出されて記録媒体を磁化した磁束を環流させる第1および第2の環流磁極層とを備えた薄膜磁気ヘッドを製造するための方法であって、下部ヨーク層と、下部ヨーク層上における記録媒体対向面から遠い側となる第1の接続領域に立設する接続層とを含むように第1の還流磁極層を形成する工程と、第1の還流磁極層における第1の接続領域以外の領域を覆うように第1の絶縁層を選択的に形成する工程と、第1の絶縁層の上に、記録媒体のトラック幅に対応するトラック幅方向に沿って帯状に延在する複数の第1のコイル部材を、記録媒体対向面から離れる方向に沿って配列するように形成する工程と、複数の第1のコイル部材における各々の両端部分とそれぞれ連結して積層方向に伸びる複数の中間コイル部材を形成すると共に第1のコイル部材および中間コイル部材の周囲を充填するように第2の絶縁層を形成する工程と、複数の第1のコイル部材に対応する領域に第2の絶縁層を挟んで位置すると共に接続層と接することにより第1の還流磁極層と磁気的に連結し、かつ、トラック幅方向に沿った幅が中間コイル部材の間隔よりも小さくなるように主磁極層を選択的に形成する工程と、主磁極層の上にギャップ層を形成したのち、主磁極層およびギャップ層を挟んで第1のコイル部材とは反対側に、中間コイル部材と連結すると共に第1のコイル部材の全てよりも記録媒体対向面に近い側に少なくとも1つが位置するように第2のコイル部材を複数形成することにより、薄膜コイルの形成を完了する工程と、第2のコイル部材を覆うように第3の絶縁層を形成すると共に、ギャップ層を介して主磁極層と対向しつつ記録媒体対向面から第3の絶縁層における記録媒体対向面に最も近い側の位置まで延在する第1の部分と、この第1の部分と連結しつつ記録媒体対向面から遠い側となる第2の接続領域にかけて延在して主磁極層と連結する第2の部分とを含むように第2の還流磁極層を形成する工程とを含むようにしたものである。
【0013】
本発明に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法では、ヘリカル状に巻回する薄膜コイルに電流を流すことにより、スパイラル状に巻回するコイルを用いた場合よりも効率的に主磁極層を通過する磁束が形成されると共に、主磁極層から流出された磁束が第1および第2の還流磁極層に分流されて還流磁束の集中が緩和される薄膜磁気ヘッドを製造することができる。
その上、第2の還流磁極層を、記録媒体対向面に近い側においてギャップ層を介して主磁極層と対向すると共に記録媒体対向面から遠い側となる第2の接続領域において主磁極層と連結させるように形成し、さらに、記録媒体対向面から第3の絶縁層における記録媒体対向面に最も近い側の位置まで延在する第1の部分と、この第1の部分と連結されると共に第2の接続領域にかけて延在して主磁極層と連結された第2の部分とを含むように形成するようにしたので、第1の部分によって、薄膜コイルのうちの、主磁極層の媒体進行方向における媒体流出側に設けられた部分と、記録媒体とが磁気的に隔てられた薄膜磁気ヘッドが得られる。
さらに、薄膜コイルを形成するにあたって、第1のコイル部材の全てよりも記録媒体対向面に近い側に少なくとも1つが位置するように複数の第2のコイル部材を形成するようにしたので、薄膜コイルに流れる電流によって発生する還流磁束が記録媒体に対して直接及んでしまうのを抑制することができる。
本発明に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法では、特に、中間コイル部材を形成する工程において、中間コイル部材と、接続層とを同時に形成することが望ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
まず、図1および図2を参照して、本発明の一実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドを搭載した磁気記録装置の構成について説明する。図1は、磁気記録装置の内部構成を表す斜視図であり、図2は、磁気記録装置の要部であるヘッドスライダの外観を拡大して示した斜視図である。
【0016】
この磁気記録装置は、図1に示したように、例えば、筐体1の内部に情報が記録されることとなる記録媒体としての複数の磁気ディスク2と、各磁気ディスク2に対応して配設され、先端にヘッドスライダ3が取り付けられた複数のアーム4とを備えている。磁気ディスク2は、筐体1に固定されたスピンドルモータ5を中心として回転可能となっている。アーム4は、動力源としての駆動部6に接続されており、筐体1に固定された固定軸7を中心として、ベアリング8を介して旋回可能となっている。なお、図1では、例えば、固定軸7を中心として複数のアーム4が一体として旋回するモデルを示している。
【0017】
ヘッドスライダ3は、図2に示したように、アーム4の旋回時における空気抵抗を減少させるために凹凸構造が形成されたほぼ直方体状の基体11と、この基体11のうち、磁気ディスク2に対向する記録媒体対向面11A(以下、エアベアリング面11Aという。)と直交する一側面(図2における手前側の面)に配設された垂直記録方式の薄膜磁気ヘッド10とを有している。なお、図2では、エンベアリング面11A側の凹凸構造を視認できるようにするため、図1に示した状態とは上下を反転させた状態を示している。
【0018】
次に、図3ないし図5を参照して、薄膜磁気ヘッド10の構成について説明する。図3は薄膜磁気ヘッド10の断面構成を表しており、(A)はエアベアリング面11Aに平行な断面構成を示し、(B)はエアベアリング面11Aに垂直な断面構成を示している。図4は図3に示した薄膜磁気ヘッド10の主要部をIV矢視方向から眺めた平面構成を表し、図5は図3に示した薄膜磁気ヘッド10の主要部の斜視構成を表している。なお、図3の断面構成は、図4に示したIII−III切断線の矢視方向に対応している。また、図3に示した上向きの矢印Mは、薄膜磁気ヘッド10に対して磁気ディスク2(図3では示さず)が相対的に進行する方向、すなわち磁気ディスク2の進行方向(媒体進行方向)を示している。
【0019】
以下の説明では、図3〜図5の各図中におけるX軸方向の距離を「幅」、Y軸方向の距離を「長さ」、Z軸方向の距離を「厚さまたは高さ」と表記する。また、Y軸方向のうちのエアベアリング面11Aに近い側を「前側または前方」、その反対側を「後側または後方」と表記するものとする。これらの表記内容は、後述する図6以降においても同様とする。
【0020】
この薄膜磁気ヘッド10は、例えば、記録・再生の双方の機能を実行可能な複合型ヘッドであり、図3に示したように、例えばアルティック(Al2 O3 ・TiC)などのセラミック材料により構成された基体11上に、例えば酸化アルミニウム(Al2O3 )などの非磁性絶縁材料により構成された絶縁層12と、磁気抵抗効果(MR;Magneto-resistive )を利用して再生処理を実行する再生ヘッド部10Aと、例えばAl2O3などの非磁性絶縁材料により構成された分離層17と、垂直記録方式の記録処理を実行する単磁極型の記録ヘッド部10Bと、例えばAl2O3などの非磁性絶縁材料により構成されたオーバーコート層29とがこの順に積層された構成を有している。
【0021】
再生ヘッド部10Aは、例えば、下部シールド層13と、シールドギャップ膜14と、上部シールド層15とがこの順に積層された構成を有している。シールドギャップ膜14には、エアベアリング面11Aに一端面が露出するように、再生素子としてのMR素子16が埋設されている。
【0022】
下部シールド層13および上部シールド層15は,例えば、いずれもニッケル鉄合金(NiFe(例えばNi:80重量%,Fe:20重量%);以下、単に「パーマロイ(商品名)」という。)などの磁性材料により構成されており、それらの厚さは約1.0μm〜2.0μmである。シールドギャップ膜14は、MR素子16を周囲から電気的に分離するものであり、例えばAl2O3などの非磁性絶縁材料により構成されている。MR素子16は、例えば、巨大磁気抵抗効果(GMR;Giant Magneto-resistive )またはトンネル磁気抵抗効果(TMR;Tunneling Magneto-resistive )などを利用して再生処理を実行するものである。
【0023】
記録ヘッド部10Bは、主磁極層24と、絶縁層21,23,26B,27およびギャップ層26Aによって周囲から絶縁されると共に、磁気ディスク2と直交する軸を中心とし、主磁極層24の周囲をヘリカル状に巻回するように構成されたヘリカルコイル22と、主磁極層24およびヘリカルコイル22を挟んで互いに対向するように構成され、主磁極層24から放出されて磁気ディスク2を磁化した磁束を環流させる下部リターンヨーク層18および上部リターンヨーク層28とを有している。ここで、ヘリカルコイル22が、本発明の「薄膜コイル」の一具体例に対応し、下部リターンヨーク層18および上部リターンヨーク層28が、それぞれ本発明の「第1の還流磁極層」および「第2の還流磁極層」の一具体例に対応する。
【0024】
ヘリカルコイル22は、銅(Cu)などの高導電性材料により構成され、両端部が図示しない電極に接続されており、書込動作時に電流が流れるようになっている。ヘリカルコイル22を流れる電流により、磁束が生じる。ヘリカルコイル22は、リーディング側の複数のコイル部材22Aとトレーリング側の複数のコイル部材22Cとがそれぞれコイル部材22Bを介して順に連結し、1本の連続体として構成されている。さらに、ヘリカルコイル22のトレーリング側の断面のうち最も磁気ディスク2に近い断面よりも、ヘリカルコイル22のリーディング側の断面のうち最も磁気ディスク2に近い断面のほうがエアベアリング面11Aから遠い側に位置するように構成されている。すなわち、コイル部材22Aの最前端位置22AFがコイル部材22Cの最前端位置22CFよりも遠い側に位置するようになっている。ここで、コイル部材22Aが本発明の「第1のコイル部材」に対応する一具体例であり、コイル部材22Bが本発明の「中間コイル部材」に対応する一具体例であり、さらにコイル部材22Cが本発明の「第2のコイル部材」に対応する一具体例である。また、ここで言うところの「連結」とは、単に接触しているだけでなく、接触した上で電気的導通が可能な状態にあることを意味している。
【0025】
主磁極層24は、ヘリカルコイル22において発生した磁束を収容し、その磁束を磁気ディスク2に向けて放出するものである。主磁極層24は、エアベアリング面11Aからこの面と離れる方向に延在しており、このエアベアリング面11Aから記録トラック幅を規定する一定幅W1をもって延在する先端部24Aと、この先端部24Aの後方に連結され、先端部24Aの幅W1よりも大きな幅W2(W2>W1)を有する後端部24Bとを含んで構成されている。先端部24Aの幅W1は、例えば約0.2μm以下である。後端部24Bの幅は、例えば、後方において一定幅W2を有し、かつ前方において先端部24Aに近づくにしたがって漸次縮小するようになっている。この主磁極層24の幅が先端部24Aから後端部24Bへ拡がる位置は、薄膜磁気ヘッド10の記録性能を決定する重要な因子のうちの1つである「フレアポイントFP」である。この主磁極層24は、例えば、2.4T(テスラ)の飽和磁束密度を有する磁性材料、具体的には鉄コバルト合金(FeCo)系や鉄コバルトニッケル合金(FeCoNi)系の磁性材料により構成されており、その厚さは約0.2μm〜0.3μmである。さらに、主磁極層24は、この主磁極層24の磁気ボリューム(磁束収容量)を確保するための補助的な磁束の収容部分として機能する補助磁極層を備えるようにしてもよい。ここで、ヘリカルコイル22は、後端部24Bの周囲のみを巻回するように構成されている。
【0026】
ギャップ層26Aは、エアベアリング面11A近傍において主磁極層24と上部リターンヨーク層28との間に磁気的なギャップを設けるためのものである。このギャップ層26Aは、例えば、Al2O3などの非磁性絶縁材料により構成されており、その厚さは約0.2μm以下である。
【0027】
絶縁層21,23,26B,27は、ヘリカルコイル22を周囲から電気的に分離するためのものである。絶縁層21,23,26Bは、例えば、Al2 O3 などの非磁性絶縁材料により構成されている。絶縁層27は、例えば、加熱されることにより流動性を示すフォトレジスト(感光性樹脂)やスピンオングラス(SOG)などにより構成されており、その表面が丸みを帯びた斜面を有している。この絶縁層27の最前端の位置は、薄膜磁気ヘッド10の記録性能を決定する重要な因子のうちの1つである「スロートハイトゼロ位置TP」である。このスロートハイトゼロ位置TPとエアベアリング面11Aとの間の距離は「スロートハイトTH」であり、約0.3μm以下である。
【0028】
下部および上部リターンヨーク層18,28は、主磁極層24から放出されて磁気ディスク2を磁化した磁束を環流させるためのものである。下部リターンヨーク層18は、例えば、下部ヨーク部18Aとバックヨーク部18Bとからなり、主磁極層24のリーディング側(媒体流入側)に、エアベアリング面11Aに近い側において下部ヨーク部18Aが絶縁層21,23を介して主磁極層24と対向すると共に、エアベアリング面11Aから遠い側の第1の接続領域としてのバックギャップ21BGにおいてバックヨーク部18Bが主磁極層24と連結されるように配設されている。一方、上部リターンヨーク層28は、主磁極層24のトレーリング側(媒体流出側)に、エアベアリング面11Aに近い側においてギャップ層26Aを介して主磁極層24と対向すると共にエアベアリング面11Aから遠い側の第2の接続領域としてのバックギャップ26BGにおいて主磁極層24と連結されるように配設されている。より詳細には、上部リターンヨーク層28は、エアベアリング面11Aから絶縁層27の最前端位置(すなわち、スロートハイトゼロ位置TP)まで延在する第1の部分としてのTH規定部28Aと、このTH規定部28Aと連結されると共にバックギャップ26BGにかけて延在して主磁極層24と連結された第2の部分としての上部ヨーク部28Bとからなる複合構造を有している。TH規定部28Aは、エアベアリング面11Aと、少なくともヘリカルコイル22のうちのエアベアリング面11Aに最も近い部分を含むコイル部材22Cとを隔てるように設けられ、磁気的にシールドするシールド機能を有している。ここで言うシールド機能とは、ヘリカルコイル22を流れる電流によって生じる磁束が主磁極層24に流入せずに磁気ディスク2を磁化してしまうことを抑制する機能に加え、主磁極層24のエアベアリング面11A側から流出する還流磁束30のうちの不要な広がり成分を、磁気ディスク2に到達する前に吸入してしまう機能をも意味する。
【0029】
下部および上部リターンヨーク層18,28は、例えば、エアベアリング面11Aからバックギャップ21BG,26BGにかけて延在して磁気的に連結した構造を有し、パーマロイや鉄コバルトニッケル合金(FeCoNi)などの磁性材料により構成されている。下部リターンヨーク層18および上部ヨーク部28Bは、いずれも、例えば矩形状の平面形状を有しており、TH規定部28Aは、例えば、図4に示したように、フレアポイントFPから後方へ向けて漸次広がる斜面をなす主磁極層24に対応するような平面形状を有している。
【0030】
上記した「トレーリング側(媒体流出側)」とは、媒体進行方向M(図3参照)に向かって進行する磁気ディスク2の移動状態を1つの流れと見た場合に、その流れの流出する側をいい、ここでは厚さ方向(Z軸方向)における上側をいう。これに対して、「リーディング側(媒体流入側)」とは、流れの流入する側をいい、ここでは厚さ方向における下側をいう。
【0031】
次に、図6を参照して、薄膜磁気ヘッド10の動作について説明する。
【0032】
図6に示したように、この薄膜磁気ヘッド10では、情報の記録時において、図示しない外部回路を通じて記録ヘッド部10Bのヘリカルコイル22に電流が流れると、そのヘリカルコイル22において還流磁束30が発生する。このとき発生した還流磁束30は主磁極層24に収容されたのち、その内部を後端部24Bから先端部24Aに流れる。この際、主磁極層24内を流れる磁束は、その主磁極層24の幅の減少(W2→W1)に伴い、フレアポイントFPにおいて絞り込まれて集束するため、先端部24Aのうちのトレーリング側部分に磁束が集中する。この磁束が先端部24Aから外部に放出されると、磁気ディスク2の表面と直交する方向(Y方向)に記録磁界が発生し、この記録磁界により磁気ディスク2が垂直方向に磁化されるため、磁気ディスク2に磁気的に情報が記録される。さらに、磁気ディスク2を磁化した還流磁束30は、戻り磁束30Rとして下部および上部リターンヨーク層18,28に環流される。
【0033】
この薄膜磁気ヘッド10では、磁気ディスク2と直交する軸を中心とし、主磁極層24の周囲をヘリカル状に巻回するように構成されたヘリカルコイル22により、例えば、図33または図34に示したようなスパイラル状の薄膜コイル122に比べ、次のような利点がある。すなわち、スパイラル状の薄膜コイル122では、内部を流れる電流によって生じる磁束の成分のうち、主磁極層124に流入する割合が比較的低いので非効率的であるが、ヘリカル状に巻回するヘリカルコイル22ではほとんどの磁束成分が主磁極層24に流入するので還流磁束30を効率よく形成できる。その上、図33または図34に示したようなスパイラル形状の薄膜コイル122に比べ、ヘリカルコイル22はコイル長(全長)を短くすることができるので、コイル自体の電気抵抗値を下げることができる。また、主磁極層24から流出した還流磁束30が磁気ディスク2を通過したのち下部および上部リターンヨーク層18,28に分流して流入するので、下部および上部リターンヨーク層18,28におけるエアベアリング面11A側の端面近傍での戻り磁束30Rの集中を緩和することができる。
【0034】
さらに、エアベアリング面11Aから絶縁層27の最前端位置(スロートハイトゼロ位置TP)まで延在するTH規定部28Aを設けるようにしたので、磁気ディスク2に対するシールド効果を高めることができる。例えば、図32に示した比較例としての薄膜磁気ヘッド210のように、コイル部材22Aのうちの最前端位置22AFが、コイル部材22Cのうちの最前端位置22CFよりもエアベアリング面11Aに近い位置となるようにした場合には、ヘリカルコイル22を流れる電流によって発生した磁束が主磁極層24に流入せずに直に磁気ディスク2を磁化したりすることにより、意図しないトラックの書込や消去などの動作をしてしまうおそれがある。これに対し、本実施の形態の薄膜磁気ヘッド10によれば、TH規定部28Aがコイル部材22Cと磁気ディスク2との間のシールド層として機能すると共に、コイル部材22Aのうちの最前端位置22AFが、コイル部材22Cのうちの最前端位置22CFよりもエアベアリング面11Aに遠い位置となるので、上記のような意図しないトラックの書込や消去などの動作を抑制することができる。このため、ヘリカルコイル22を磁気ディスク2により接近させた場合であっても比較的安定した書込動作を行うことが可能となる。
【0035】
一方、再生時においては、再生ヘッド部10AのMR素子16にセンス電流が流れると、磁気ディスク2からの再生用の信号磁界に応じてMR素子16の抵抗値が変化する。そして、この抵抗変化がセンス電流の変化として検出されるため、磁気ディスク2に記録されている情報が磁気的に読み出される。
【0036】
次に、図7〜図18を参照して、図3〜図5に示した薄膜磁気ヘッドを製造する方法について説明する。図7〜図18は薄膜磁気ヘッド10の製造工程を説明するため断面図または平面図である。
【0037】
以下では、まず、薄膜磁気ヘッド全体の製造工程の概略について説明したのち、薄膜磁気ヘッド10の主要部(ここでは、記録ヘッド部10B)の形成工程について詳細に説明する。なお、薄膜磁気ヘッド10の一連の構成要素の材質、寸法および構造的特徴等については既に詳述したので、その説明を随時省略するものとする。
【0038】
この薄膜磁気ヘッド10は、主に、めっき処理やスパッタリングなどの成膜技術、フォトリソグラフィ技術などのパターニング技術、ならびにドライエッチングなどのエッチング技術等を含む既存の薄膜プロセスを利用して、各構成要素を順次形成して積層させることにより製造される。すなわち、まず、基体11上に絶縁層12を形成したのち、この絶縁層12上に、下部シールド層13と、MR素子16を埋設したシールドギャップ膜14と、上部シールド層15とをこの順に積層させることにより、再生ヘッド部10Aを形成する。続いて、再生ヘッド部10A上に分離層17を形成したのち、この分離層17上に、主磁極層24と、絶縁層21,23,26B,27に埋設され、主磁極層24を中心として巻回し、主磁極層24の延在する方向に沿って延在するように構成されたヘリカルコイル22と、主磁極層24およびヘリカルコイル22を挟んで互いに対向するように構成された下部リターンヨーク層18および上部リターンヨーク層28とを有する記録ヘッド部10Bを形成する。最後に、記録ヘッド部10B上にオーバーコート層29を形成したのち、機械加工や研磨加工を利用してエアベアリング面11Aを形成することにより、薄膜磁気ヘッドが完成する。
【0039】
記録ヘッド部10Bを形成する際には、分離層17を形成したのち、まず、図7に示したように、分離層17上に、例えばめっき処理を使用して、後工程においてエアベアリング面11Aとなる位置(図3参照)を含むように鉄コバルト合金(FeCo)系、鉄ニッケル合金(NiFe)系または鉄コバルトニッケル合金(FeCoNi)系の磁性材料よりなる下部ヨーク部18Aを選択的に形成する。続いて、例えばスパッタリングを使用して、下部ヨーク部18Aおよびその周辺の分離層17を覆うように、Al2O3よりなる前駆絶縁層(図示せず)を形成する。
【0040】
続いて、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing )法を使用して、少なくとも下部ヨーク部18Aが露出するまで前駆絶縁層を研磨して平坦化することにより、図8に示したように、下部ヨーク部18Aの周囲を埋め込むように絶縁層19を形成する。
【0041】
続いて、図9に示したように、下部ヨーク部18Aおよび絶縁層19の上における、のちにバックヨーク部18Bを形成することとなるバックギャップ21BG以外の領域にAl2O3よりなる絶縁層21を選択的に形成したのち、下部ヨーク部18Aの形成領域における絶縁層21の上に、トラック幅方向(X方向)に帯状に延在する複数のコイル部材22Aを、例えばめっき処理を使用して、エアベアリング面11Aから離れる方向(Y方向)に沿って配列するように形成する。図9(A)に示したように、コイル部材22Aは例えば短冊形状を有し、互いに平行かつ等間隔となるように配設されている。さらに、複数のコイル部材22Aおよび絶縁層21の一部を覆うように選択的にフォトレジスト膜を形成したのち、焼成することにより絶縁層23Aを形成する。ここでは、コイル部分22Aの各々の両端部と、バックギャップ21BGとを絶縁層23Aによって覆わずに残すようにする。なお、図9(A)が積層面内に沿った平面構成を表し、図9(B)が図9(A)に示したIX(B)−IX(B)切断線における矢視方向の断面構成を表す。以降、図10ないし図14も同様である。
【0042】
続いて、フォトレジスト層(図示せず)を、コイル部分22Aの各々の両端部とバックギャップ21BGとを残すように選択的に形成したのち、例えばめっき法により、図10に示したように、コイル部分22Aの各々の両端部とそれぞれ連結して積層方向に伸びる複数のコイル部材22Bの一部をなす柱状部材22BLと、バックギャップ21BGにおいて下部ヨーク層18Aと連結する接続層としてのバックヨーク部18Bとを同時に形成する。さらに、全面に亘って、例えばAl2O3よりなる前駆絶縁層23BZを形成する。こののち、例えばCMP法により、少なくともバックヨーク部18Bが露出し、かつコイル部材22Aおよび絶縁層23Aが露出しない程度に前駆絶縁層23BZを研磨して平坦化することにより、図11に示したように、バックヨーク部18Bの周囲を埋め込むように絶縁層23(23A,23B)を形成する。これにより、下部リターンヨーク層18の形成が一応完了する。
【0043】
次に、図12に示したように、絶縁層23、バックヨーク部18Bおよび柱状部材22BLのそれぞれの上面を含む平坦面上に主磁極層24を選択的に形成する。この主磁極層24を形成する際には、例えばめっき処理により、下部ヨーク部18Aと同種の磁性材料を用いて形成し、前方から順に先端部24Aと後端部24Bとを含むようにし、後端部24Bのうちの最もエアベアリング面11Aから遠い部分(バックギャップ21BGに相当する部分)をバックヨーク部18Bと磁気的に連結するようにする。この際、トラック幅方向(X方向)に沿った後端部24Bの一定幅W2は、コイル部材22Aの(X方向の)幅よりも小さくなるようにする。さらに、主磁極層24の形成と同時に、これと同じ厚みを有する柱状部材22BUを柱状部材22BLの上に形成することにより、コイル部材22Bを完成させる。ここで便宜的に、コイル部材22Bのうち、各コイル部材22Aの一方の端部に形成されるものをコイル部材22B1と呼び、主磁極層24を挟んで反対側の端部に形成されるものをコイル部材22B2と呼ぶこととする。
【0044】
主磁極層24およびコイル部材22Bを形成したのち、図13に示したように、例えばスパッタリングを使用して、主磁極層24およびその周辺の絶縁層23を覆うように、Al2O3よりなるギャップ26Aを形成する。ここでは、主磁極層24の上におけるギャップ層26Aの厚みが約0.2μm以下の厚さとなるようにするのが望ましい。こののち、さらに、ギャップ層26Aの上の、後端部24Bに対応する領域部分に絶縁層26Bを形成する。ギャップ層26Aおよび絶縁層26Bを形成する際には、コイル部分22Bとバックギャップ26BGとを覆わないようにする。
【0045】
ギャップ層26Aおよび絶縁層26Bを形成したのち、図14に示したように、隣り合うコイル部材22Aにおけるコイル部材22B1とコイル部材22B2とを交互に連結するようにコイル部材22Cを形成する。これにより、主磁極層24を中心として巻回し、主磁極層24の延在する方向(Y方向)に沿って延在するように連結された、コイル部材22Aとコイル部材22Bとコイル部材22Cとからなる一本の連続体としてのヘリカルコイル22の形成が一応完了する。なお、ヘリカルコイル22の両端部は、図示しない駆動回路に接続される。
【0046】
続いて、図15に示したように、例えばめっき処理やスパッタリングを使用して、最終的にスロートハイトTHが約0.3μm以下となるようにTH規定部28Aをギャップ層26A上に選択的に形成したのち、例えばフォトリソグラフィ技術を使用して、コイル部材22Cおよびその周辺のギャップ層26Aを覆うように、フォトレジスト膜27Fを選択的に形成する。次いで、フォトレジスト膜27Fを焼成することにより、図16に示したように、絶縁層27を形成する。この焼成によりフォトレジスト膜27Fが流動するため、前方部分がTH規定部28Aの後端面に隣接したまま、後方部分が丸みを帯びた斜面を有するように絶縁層27が形成される。最後に、例えばめっき処理やスパッタリングを使用して、絶縁層27およびその周辺を覆うように、パーマロイや鉄コバルトニッケル合金(FeCoNi)よりなる上部ヨーク部28Bを選択的に形成することにより、上部リターンヨーク層28を完成させる。この上部リターンヨーク層28を形成する際には、前方においてギャップ層26Aを介して主磁極層24と対向するTH規定部28Aと連結されるようにすると共に後方においてバックギャップ26BGを通じて主磁極層24と連結されるようにする。これにより、記録ヘッド部10Bの形成が完了する。なお、上記ではヘリカルコイル22の形成を完了したのちにTH規定部28Aを形成するようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、TH規定部28Aを形成したのちにコイル部材22Cを形成してヘリカルコイル22を完成するようにしてもよい。
【0047】
以上のように、本実施の形態によれば、磁気ディスク2と直交する軸を中心とし、主磁極層24の周囲をヘリカル状に巻回するように構成されたヘリカルコイル22により、主磁極層24を通過する還流磁束30を効率よく形成することができる。その上、図33または図34に示したようなスパイラル形状の薄膜コイル122に比べ、ヘリカルコイル22はコイル長(全長)を短くすることができるので、コイル自体の電気抵抗値を下げることができる。その結果、記録時におけるヘリカルコイル22の発熱を低減でき、薄膜磁気ヘッドの熱による膨張(サーマルプルトリュージョン)を抑制し、安定した記録(書込)動作を確保することができる。また、主磁極層24から流出した還流磁束30が磁気ディスク2を通過したのち下部および上部リターンヨーク層18,28に分流して円滑に流入するので、下部および上部リターンヨーク層18,28におけるエアベアリング面11A側の端面近傍での戻り磁束30Rの集中が緩和され、意図しない記録情報の消去や上書きといった問題を回避することができる。
【0048】
さらに、コイル部材22Aのうちの最前端位置22AFが、コイル部材22Cのうちの最前端位置22CFよりもエアベアリング面11Aに遠い位置としたので、意図しないトラックの書込や消去などの動作を容易に抑制することができる。特に、エアベアリング面11Aから絶縁層27の最前端位置(スロートハイトゼロ位置TP)まで延在するTH規定部28Aを設けるようにしたので、磁気ディスク2に対するシールド効果が高まり、より確実に不要な書込を回避することができる。このため、より安定した書込動作を行うことが可能となる。また、TH規定部28Aの後端面の位置に基づいてスロートハイトゼロ位置TPを規定するようにしたことにより、スロートハイトTHをより精密に制御し、記録特性のぶれを防止することができる。すなわち、TH規定部28Aを利用せずに、焼成後の絶縁層27の成形位置に基づいてスロートハイトゼロ位置TPを規定するようにした場合には、例えば、焼成条件のずれ等に起因してフォトレジスト膜27Fが流動しすぎると、絶縁層27の最前端位置が所望の位置よりも前方にシフトするため、結果としてスロートハイトTHが設計値よりも短くなる可能性がある。これに対して、TH規定部28Aを利用して絶縁層27の最前端位置が規定される本実施の形態の場合には、絶縁層27がTH規定部28Aに隣接している限り、スロートハイトゼロ位置TPが常にTH規定部28Aの後端面の位置で規定されるため、結果としてスロートハイトTHを精密に制御することが可能になる。したがって、スロートハイトTHに基づく記録特性のぶれが防止されるのである。
【0049】
<変形例>
次に、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法における変形例について説明する。
【0050】
上記実施の形態では、記録ヘッド部10Bを形成する際に、下部ヨーク部18Aと連結するバックヨーク部18Bと、中間コイル部材22Bとを同時に形成するようにしたが、以下のように形成することもできる。以下、図17ないし図26を参照して、変形例としての薄膜磁気ヘッドの製造方法のうち、上記実施の形態と異なる記録ヘッド部10Bの形成工程についてのみ詳細に説明する。
【0051】
まず、図17に示したように、分離層17上に、例えばめっき処理を使用して、後工程においてエアベアリング面11Aとなる位置(図3参照)を含むように鉄コバルト合金(FeCo)系、鉄ニッケル合金(NiFe)系または鉄コバルトニッケル合金(FeCoNi)系の磁性材料よりなる下部ヨーク部18Aを選択的に形成する。続いて、例えばスパッタリングを使用して、下部ヨーク部18Aおよびその周辺の分離層17を覆うように、Al2O3よりなる前駆絶縁層(図示せず)を形成する。
【0052】
続いて、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing )法を使用して、少なくとも下部ヨーク部18Aが露出するまで前駆絶縁層を研磨して平坦化することにより、図18に示したように、下部ヨーク部18Aの周囲を埋め込むように絶縁層19を形成する。こののち、下部ヨーク部18Aの平坦面上に、例えばめっき処理により、下部ヨーク部18Aと同種の磁性材料よりなるバックヨーク部18Bを選択的に形成する。これにより、下部リターンヨーク層18の形成が一応完了する。
【0053】
続いて、図19に示したように、全面に亘ってAl2O3よりなる前駆絶縁層21Zを形成したのち、バックヨーク部18Bの形成領域を除く下部ヨーク部18Aの形成領域における前駆絶縁層21Zの上に、トラック幅方向に帯状に延在する複数のコイル部材22Aを、例えばめっき処理を使用して、エアベアリング面11Aから離れる方向に沿って配列するように形成する。さらに、複数のコイル部材22Aおよび前駆絶縁層21Zを覆うように、全面に亘ってAl2O3よりなる前駆絶縁層23Zを形成する。こののち、例えばCMP法を使用して、少なくともバックヨーク部18Bが露出し、かつコイル部材22Aが露出しない程度に前駆絶縁層23Z,21Zを研磨して平坦化することにより、図20および図21に示したように、バックヨーク部18Bの周囲を埋め込むように絶縁層21,23を形成する。図21は、図20に対応し、XXI矢視方向から眺めた平面図である。図21に示したように、コイル部材22Aは短冊形状を有し、互いに平行かつ等間隔となるように配設されている。
【0054】
次に、図22に示したように、絶縁層21,23およびバックヨーク部18Bからなる平坦面上に主磁極層24を選択的に形成する。この主磁極層24を形成する際には、例えばめっき処理により、下部ヨーク部18Aと同種の磁性材料を用いて形成し、前方から順に先端部24Aと後端部24Bとを含むようにし、後端部24Bのうちの最もエアベアリング面11Aから遠い部分(バックギャップ21BGに相当する部分)をバックヨーク部18Bと磁気的に連結するようにする。この際、トラック幅方向(X方向)に沿った後端部24Bの一定幅W2は、コイル部材22Aの(X方向の)幅よりも小さくなるようにする。主磁極層24を形成したのち、図23に示したように、例えばスパッタリングを使用して、主磁極層24およびその周辺の絶縁層21,23を覆うように、Al2O3よりなる前駆絶縁層25Zを形成する。
【0055】
続いて、例えばCMP法を使用して、少なくとも主磁極層24が露出するまで前駆絶縁層25Zを研磨して平坦化することにより、図24に示したように、主磁極層24の周囲を埋め込むように絶縁層25を形成する。続いて、主磁極層24および絶縁層25により構成された平坦面上に、例えばスパッタリングを使用して、約0.2μm以下の厚さとなるようにギャップ層26Aを形成する。こののち、さらに、ギャップ層26Aの上に絶縁層26Bを、複数のコイル部材22Aにおける各々の両端部分を覆わないように選択的に形成する。ギャップ層26Aおよび絶縁層26Bを形成する際には、いずれもバックギャップ26BGを覆わないようにする。
【0056】
ギャップ層26Aおよび絶縁層26Bを形成したのち、図25に示したように、複数のコイル部材22Aにおける各々の両端部分とそれぞれ連結してZ方向(積層方向)に伸びる複数のコイル部材22Bを形成する。具体的には、各コイル部材22Aの両端部分に対応する領域におけるギャップ層26Aおよび絶縁層23を、積層方向にイオンビームエッチング等により除去することによりスルーホールを形成したのち、めっき処理などによってコイル部材22Aと同種の材料をスルーホールに埋め込むことによりコイル部材22Bを形成する。ここで便宜的に、コイル部材22Bのうち、各コイル部材22Aの一方の端部に形成されるものをコイル部材22B1と呼び、主磁極層24を挟んで反対側の端部に形成されるものをコイル部材22B2と呼ぶこととする。
【0057】
コイル部材22Bを形成したのち、図26に示したように、隣り合うコイル部材22Aにおけるコイル部材22B1とコイル部材22B2とを交互に連結するようにコイル部材22Cを形成する。これにより、主磁極層24の周囲を巻回し、主磁極層24の延在する方向(Y方向)に沿って延在するように連結された、コイル部材22Aとコイル部材22Bとコイル部材22Cとからなる一本の連続体としてのヘリカルコイル22の形成が一応完了する。なお、ヘリカルコイル22の両端部は、図示しない駆動回路に接続される。
【0058】
続いて、図27に示したように、例えばめっき処理やスパッタリングを使用して、最終的にスロートハイトTHが約0.3μm以下となるようにTH規定部28Aをギャップ層26A上に選択的に形成したのち、例えばフォトリソグラフィ技術を使用して、コイル部材22Cおよびその周辺のギャップ層26Aを覆うように、フォトレジスト膜27Fを選択的に形成する。次いで、フォトレジスト膜27Fを焼成することにより、図28に示したように、絶縁層27を形成する。この焼成によりフォトレジスト膜27Fが流動するため、前方部分がTH規定部28Aの後端面に隣接したまま、後方部分が丸みを帯びた斜面を有するように絶縁層27が形成される。最後に、例えばめっき処理やスパッタリングを使用して、絶縁層27およびその周辺を覆うように、パーマロイや鉄コバルトニッケル合金(FeCoNi)よりなる上部ヨーク部28Bを選択的に形成することにより、上部リターンヨーク層28を完成させる。この上部リターンヨーク層28を形成する際には、前方においてギャップ層26Aを介して主磁極層24と対向するTH規定部28Aと連結されるようにすると共に後方においてバックギャップ26BGを通じて主磁極層24と連結されるようにする。これにより、記録ヘッド部10Bの形成が完了する。なお、本変形例では、ヘリカルコイル22の形成を完了したのちにTH規定部28Aを形成するようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、TH規定部28Aを形成したのちにコイル部材22Cを形成してヘリカルコイル22を完成するようにしてもよい。
【0059】
以上のように、本変形例においても、上記実施の形態に係る薄膜磁気ヘッド10の記録ヘッド部10Bを形成することができる。
【0060】
【実施例】
次に、本発明に関する実施例について説明する。上記実施の形態における薄膜磁気ヘッド10の諸特性を、図34に示した従来の薄膜磁気ヘッド110と共に調べたところ、以下のことが確認された。
【0061】
まず、薄膜磁気ヘッド10,110の再生磁界強度の記録位置依存性を調べたところ、図29(A)および図29(B)に示した結果が得られた。図29(A)が薄膜磁気ヘッド10の結果を表し、図29(B)が薄膜磁気ヘッド110の結果を表す。いずれも、図中の「横軸」は磁気ディスク2,102に設けられた同一トラック上の記録位置を示し、「縦軸」は比較のために規格化した再生磁界強度(任意単位)を示している。横軸の「0」位置がトラック幅方向(X方向)における薄膜磁気ヘッド10,110の中心位置、すなわち、主磁極層24の先端部24Aにおける中心位置に相当する。
【0062】
図29(A)および図29(B)に示した結果から判るように、図29(A)においては横軸「0」位置にのみ鋭いピークが現れているのに対し、図29(B)では横軸「0」位置の両隣にも小さなピークが現れている。このことから、従来の薄膜磁気ヘッド110を用いて記録をおこなった磁気ディスク102では、本来、記録されるべきトラック以外の箇所に情報が記録されてしまっているのに対し、本発明の薄膜磁気ヘッド10を用いて記録をおこなった磁気ディスク2では、本来、記録されるべきトラックにのみ情報の記録がなされていることが確認できた。
【0063】
続いて、薄膜磁気ヘッド10,110のオーバーライト特性の電流依存性を調べたところ、図30に示した結果が得られた。実線で示した曲線L10が薄膜磁気ヘッド10の結果であり、破線で示した曲線L110が薄膜磁気ヘッド110の結果である。図30において、「横軸」は書込動作時にヘリカルコイル22(または薄膜コイル122)の内部を流す電流値を示し、一方の「縦軸」はオーバーライト特性(dB)を示している。
【0064】
図30に示した結果から判るように、オーバーライト特性は、本発明の薄膜磁気ヘッド10のほうが、従来の薄膜磁気ヘッド110と比較して、書込電流領域の全般に亘って良好な数値を示した。すなわち、ヘリカルコイル22を用いた本発明の薄膜磁気ヘッド10は、より低い書込電流であっても効率よく還流磁界30を形成することが可能であることが確認できた。
【0065】
以上の点をまとめると、本発明の薄膜磁気ヘッドは、従来に比べ、より高い記録効率を確保しつつ、意図しない記録情報の消去や上書きといった問題を引き起こすことなく、高い信頼性を確保できることがわかった。
【0066】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されず、種々の変形が可能である。具体的には、例えば、上記実施の形態および実施例では、本発明を単磁極型ヘッドに適用する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、リング型ヘッドに適用してもよい。また、上記実施の形態では、本発明を複合型薄膜磁気ヘッドに適用する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、書き込み用の誘導型磁気変換素子を有する記録専用の薄膜磁気ヘッドや、記録・再生兼用の誘導型磁気変換素子を有する薄膜磁気ヘッドにも適用可能である。もちろん、本発明を、書き込み用の素子および読み出し用の素子の積層順序を逆転させた構造の薄膜磁気ヘッドについても適用可能である。
【0067】
さらに、また、上記実施の形態および実施例では、第2の還流磁極層(上部リターンヨーク層28)が、別体からなる第1の部分(TH規定部28A)と第2の部分(上部ヨーク部28B)とが連結されて構成されるようにしたが、図31に示したように、一体物として構成されるようにしてもよい。但し、図31に示した薄膜磁気ヘッドの場合には、第2の還流磁極層の一部の領域であるシールド領域28Sが、薄膜コイルで生じた磁束が直に記録媒体を励磁しないよう、磁気的に遮蔽する機能を有することとなる。
【0068】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の薄膜磁気ヘッドまたは磁気記録装置によれば、所定の媒体進行方向に移動する記録媒体に対向する記録媒体対向面から離れる方向に延在する主磁極層と、記録媒体対向面と直交する軸を中心とし、主磁極層の周囲をヘリカル状に巻回するように構成された薄膜コイルと、絶縁層を介して主磁極層および薄膜コイルを挟んで互いに対向するように構成され、主磁極層から放出されて記録媒体を磁化した磁束を環流させる第1および第2の環流磁極層とを備えるようにしたので、薄膜コイルに電流を流すことにより、従来のスパイラル状の薄膜コイルを備えた場合と比べ、より効率的に主磁極層を通過する磁束を形成することができると共に、主磁極層から流出された磁束を第1および第2の還流磁極層に分流させて還流磁束の集中を緩和することができる。このため、さらなる高記録密度化に対応しつつ、意図しない記録情報の消去や上書きといった問題を回避し、安定した記録特性を確保することができる。
【0069】
特に、第2の還流磁極層が、記録媒体対向面から絶縁層における記録媒体対向面に最も近い側の位置まで延在する第1の部分と、第1の部分と連結されると共に、第2の接続領域にかけて延在して主磁極層と連結された第2の部分とを含むように構成したので、薄膜磁気ヘッドの記録性能を決定する重要な因子のうちの1つであるスロートハイトをより精密に制御し、記録特性のぶれを防止しつつ、薄膜コイルが発生した還流磁束が直に記録媒体に及んで磁化してしまうのを抑制することができ、より確実に不要な書込を回避することができる。
【0070】
さらに、記録媒体対向面に直交し、かつ媒体進行方向を含む面内において、薄膜コイルの媒体流出側の断面のうち最も記録媒体に近い断面よりも、薄膜コイルの媒体流入側の断面のうち最も前記記録媒体に近い断面のほうが記録媒体対向面から遠い側に位置するように構成したので、薄膜コイルが発生した還流磁束が直に記録媒体に及んで磁化してしまうのを抑制することができ、より容易に不要な書込を回避することができる。
【0071】
本発明の薄膜磁気ヘッドの製造方法によれば、所定の媒体進行方向に移動する記録媒体に対向する記録媒体対向面から離れる方向に延在する主磁極層と、記録媒体対向面と直交する軸を中心とし、主磁極層の周囲をヘリカル状に巻回するように構成された薄膜コイルと、主磁極層および薄膜コイルを挟んで互いに対向するように構成され、主磁極層から放出されて記録媒体を磁化した磁束を環流させる第1および第2の環流磁極層とを備えた薄膜磁気ヘッドを製造するにあたり、下部ヨーク層と、この下部ヨーク層上における記録媒体対向面から遠い側となる第1の接続領域に立設する接続層とを含むように第1の還流磁極層を形成する工程と、この第1の還流磁極層の上に、第1の絶縁層を介して、記録媒体のトラック幅に対応するトラック幅方向に沿って帯状に延在する複数の第1のコイル部材を、記録媒体対向面から離れる方向に沿って配列するように形成する工程と、複数の第1のコイル部材における各々の両端部分とそれぞれ連結して積層方向に伸びる複数の中間コイル部材を形成すると共に第1のコイル部材および中間コイル部材の周囲を充填するように第2の絶縁層を形成する工程と、複数の第1のコイル部材に対応する領域に第2の絶縁層を挟んで位置すると共に接続層と接することにより第1の還流磁極層と磁気的に連結し、かつ、トラック幅方向に沿った幅が中間コイル部材の間隔よりも小さくなるように主磁極層を選択的に形成する工程と、主磁極層の上にギャップ層を形成したのち、主磁極層およびギャップ層を挟んで第1のコイル部材とは反対側に、中間コイル部材と連結するように第2のコイル部材を形成することにより、薄膜コイルの形成を完了する工程と、第2のコイル部材の上に、第3の絶縁層を介して、第2の還流磁極層を形成する工程とを含むようにしたので、ヘリカル状に巻回する薄膜コイルに電流を流すことにより、スパイラル状に巻回するコイルを用いた場合よりも効率的に主磁極層を通過する磁束が形成されると共に、主磁極層から流出された磁束が第1および第2の還流磁極層に分流されて還流磁束の集中が緩和される薄膜磁気ヘッドを製造することができる。
その上、第2の還流磁極層を、記録媒体対向面に近い側においてギャップ層を介して主磁極層と対向すると共に記録媒体対向面から遠い側となる第2の接続領域において主磁極層と連結させるように形成し、さらに、記録媒体対向面から絶縁層における記録媒体対向面に最も近い側の位置まで延在する第1の部分と、この第1の部分と連結されると共に第2の接続領域にかけて延在して主磁極層と連結された第2の部分とを含むように形成するようにしたので、スロートハイトをより精密に制御し、記録特性のぶれを防止しつつ、薄膜コイルが発生した磁束が主磁極層を経由することなく直接、記録媒体に及んで磁化してしまうのを抑制することができる。
さらに、薄膜コイルを形成するにあたって、第1のコイル部材の全てよりも記録媒体対向面に近い側に少なくとも1つが位置するように複数の第2のコイル部材を形成するようにしたので、薄膜コイルに流れる電流によって発生する還流磁束が記録媒体に対して直接及んで磁化してしまうのを抑制することができ、より容易に不要な書込を回避することができる。
したがって、さらなる高記録密度化に対応しつつ、意図しない記録情報の消去や上書きといった問題を回避し、安定した記録特性を確保可能な薄膜磁気ヘッドを得ることができる。
【0072】
特に、中間コイル部材を形成する工程において、中間コイル部材と、接続層とを同時に形成するようにした場合には工程を簡略化することができるので、上記のような、さらなる高記録密度化に対応しつつ、安定した記録特性を確保可能な薄膜磁気ヘッドを容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る磁気記録装置の内部構成を表す斜視図である。
【図2】図1に示した磁気記録装置におけるヘッドスライダの外観構成を表す斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの断面構成を表す断面図である。
【図4】図3に示した薄膜磁気ヘッドの主要部の平面構成を表す平面図である。
【図5】図3に示した薄膜磁気ヘッドの主要部の斜視構成を表す斜視図である。
【図6】図3に示した薄膜磁気ヘッドにおける書込動作を説明するための断面図である。
【図7】図3〜図5に示した薄膜磁気ヘッドを製造する工程における一工程を説明するための断面図である。
【図8】図7に続く工程を説明するための断面図である。
【図9】図8に続く工程を説明するための断面図である。
【図10】図9に続く工程を説明するための断面図である。
【図11】図10に続く工程を説明するための断面図である。
【図12】図11に続く工程を説明するための断面図である。
【図13】図12に続く工程を説明するための断面図である。
【図14】図13に続く工程を説明するための断面図である。
【図15】図14に続く工程を説明するための断面図である。
【図16】図15に続く工程を説明するための断面図である。
【図17】図3〜図5に示した薄膜磁気ヘッドを製造する工程の変形例における一工程を説明するための断面図である。
【図18】図17に続く工程を説明するための断面図である。
【図19】図18に続く工程を説明するための断面図である。
【図20】図19に続く工程を説明するための断面図である。
【図21】図20に続く工程を説明するための断面図である。
【図22】図21に続く工程を説明するための断面図である。
【図23】図22に続く工程を説明するための断面図である。
【図24】図23に続く工程を説明するための断面図である。
【図25】図24に続く工程を説明するための断面図である。
【図26】図25に続く工程を説明するための断面図である。
【図27】図26に続く工程を説明するための断面図である。
【図28】図27に続く工程を説明するための断面図である。
【図29】再生磁界強度の記録位置依存性を表す図である。
【図30】オーバーライト特性の記録電流依存性を表す図である。
【図31】図3に示した薄膜磁気ヘッドの変形例における断面構成を表す断面図である。
【図32】比較例としての薄膜磁気ヘッドの断面構成を表す断面図である。
【図33】従来の薄膜磁気ヘッドの断面構成を表す断面図である。
【図34】従来の他の薄膜磁気ヘッドの断面構成を表す断面図である。
【符号の説明】
1…筐体、2…磁気ディスク、3…ヘッドスライダ、10…薄膜磁気ヘッド、10A…再生ヘッド部、10B…記録ヘッド部、11…基体、11A…エアベアリング面、12,19,21,23,25,26B,27…絶縁層、13…下部シールド層、14…シールドギャップ膜、15…上部シールド層、16…MR素子、17…分離層、18…下部リターンヨーク層、18A…下部ヨーク部、18B…バックヨーク部、22…ヘリカルコイル、24…主磁極層、24A…先端部、24B…後端部、26A…ギャップ層、27…フォトレジスト層、28…上部リターンヨーク層、28A…TH規定部、28B…上部ヨーク部、29…オーバーコート層、30…還流磁束、30R…戻り磁束、FP…フレアポイント、NH…ネックハイト、TH…スロートハイト、TP…スロートハイトゼロ位置。
Claims (5)
- 所定の媒体進行方向に移動する記録媒体に対向する記録媒体対向面から離れる方向に延在する主磁極層と、
前記記録媒体対向面と直交する軸を中心とし、前記主磁極層の周囲をヘリカル状に巻回するように構成された薄膜コイルと、
絶縁層を介して前記主磁極層および前記薄膜コイルを挟んで互いに対向するように構成され、前記主磁極層から放出されて前記記録媒体を磁化した磁束を環流させる第1および第2の環流磁極層と
を備え、
前記第1の還流磁極層は、前記主磁極層の前記媒体進行方向における媒体流入側に、前記記録媒体対向面から遠い側の第1の接続領域において前記主磁極層と連結されるように配設されており、
前記第2の環流磁極層は、前記主磁極層の前記媒体進行方向における媒体流出側に、前記記録媒体対向面に近い側においてギャップ層を介して前記主磁極層と対向すると共に前記記録媒体対向面から遠い側の第2の接続領域において前記主磁極層と連結されるように配設されており、かつ、前記記録媒体対向面から前記絶縁層における前記記録媒体対向面に最も近い側の位置まで延在する第1の部分と、この第1の部分と連結されると共に前記第2の接続領域にかけて延在して前記主磁極層と連結された第2の部分とを含んで構成されており、
前記記録媒体対向面に直交し、かつ前記媒体進行方向を含む面内において、前記薄膜コイルの前記媒体流出側の断面のうち最も前記記録媒体に近い断面よりも、前記薄膜コイルの前記媒体流入側の断面のうち最も前記記録媒体に近い断面のほうが前記記録媒体対向面から遠い側に位置するように構成されている
ことを特徴とする薄膜磁気ヘッド。 - 前記主磁極層が、前記記録媒体をその表面と直交する方向に磁化させるための磁束を放出するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の薄膜磁気ヘッド。 - 所定の媒体進行方向に移動する記録媒体に対向する記録媒体対向面から離れる方向に延在する主磁極層と、前記記録媒体対向面と直交する軸を中心とし、前記主磁極層の周囲をヘリカル状に巻回するように構成された薄膜コイルと、前記主磁極層および前記薄膜コイルを挟んで互いに対向するように構成され、前記主磁極層から放出されて前記記録媒体を磁化した磁束を環流させる第1および第2の環流磁極層とを備えた薄膜磁気ヘッドを製造するための方法であって、
下部ヨーク層と、前記下部ヨーク層上における前記記録媒体対向面から遠い側となる第1の接続領域に立設する接続層とを含むように前記第1の還流磁極層を形成する工程と、
前記第1の還流磁極層における前記第1の接続領域以外の領域を覆うように第1の絶縁層を選択的に形成する工程と、
前記第1の絶縁層の上に、前記記録媒体のトラック幅に対応するトラック幅方向に沿って帯状に延在する複数の第1のコイル部材を、前記記録媒体対向面から離れる方向に沿って配列するように形成する工程と、
前記複数の第1のコイル部材における各々の両端部分とそれぞれ連結して積層方向に伸びる複数の中間コイル部材を形成すると共に前記第1のコイル部材および中間コイル部材の周囲を充填するように第2の絶縁層を形成する工程と、
前記複数の第1のコイル部材に対応する領域に前記第2の絶縁層を挟んで位置すると共に前記接続層と接することにより前記第1の還流磁極層と磁気的に連結し、かつ、前記トラック幅方向に沿った幅が前記中間コイル部材の間隔よりも小さくなるように前記主磁極層を選択的に形成する工程と、
前記主磁極層の上にギャップ層を形成したのち、前記主磁極層およびギャップ層を挟んで前記第1のコイル部材とは反対側に、前記中間コイル部材と連結すると共に前記第1のコイル部材の全てよりも前記記録媒体対向面に近い側に少なくとも1つが位置するように第2のコイル部材を複数形成することにより、前記薄膜コイルの形成を完了する工程と、
前記第2のコイル部材を覆うように第3の絶縁層を形成すると共に、前記ギャップ層を介して前記主磁極層と対向しつつ前記記録媒体対向面から前記第3の絶縁層における前記記録媒体対向面に最も近い側の位置まで延在する第1の部分と、この第1の部分と連結しつつ前記記録媒体対向面から遠い側となる第2の接続領域にかけて延在して前記主磁極層と連結する第2の部分とを含むように前記第2の還流磁極層を形成する工程と
を含む
ことを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造方法。 - 前記中間コイル部材と、前記接続層とを同時に形成する
ことを特徴とする請求項3に記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。 - 記録媒体と、この記録媒体に磁気的に情報を記録する薄膜磁気ヘッドとを有し、
前記薄膜磁気ヘッドが、所定の媒体進行方向に移動する記録媒体に対向する記録媒体対向面から離れる方向に延在する主磁極層と、
前記記録媒体対向面と直交する軸を中心とし、前記主磁極層の周囲をヘリカル状に巻回するように構成された薄膜コイルと、
絶縁層を介して前記主磁極層および前記薄膜コイルを挟んで互いに対向するように構成され、前記主磁極層から放出されて前記記録媒体を磁化した磁束を環流させる第1および第2の環流磁極層と
を備え、
前記第1の還流磁極層は、前記主磁極層の前記媒体進行方向における媒体流入側に、前記記録媒体対向面から遠い側の第1の接続領域において前記主磁極層と連結されるように配設されており、
前記第2の環流磁極層は、前記主磁極層の前記媒体進行方向における媒体流出側に、前記記録媒体対向面に近い側においてギャップ層を介して前記主磁極層と対向すると共に前記記録媒体対向面から遠い側の第2の接続領域において前記主磁極層と連結されるように配設されており、かつ、前記記録媒体対向面から前記絶縁層における前記記録媒体対向面に最も近い側の位置まで延在する第1の部分と、この第1の部分と連結されると共に前記第2の接続領域にかけて延在して前記主磁極層と連結された第2の部分とを含んで構成されており、
前記記録媒体対向面に直交し、かつ前記媒体進行方向を含む面内において、前記薄膜コイルの前記媒体流出側の断面のうち最も前記記録媒体に近い断面よりも、前記薄膜コイルの前記媒体流入側の断面のうち最も前記記録媒体に近い断面のほうが前記記録媒体対向面から遠い側に位置するように構成されている
ことを特徴とする磁気記録装置。
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