JP3829458B2 - 建築物への制震装置の取り付け方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、粘性剪断抵抗を利用して振動を減衰させる制震装置を建築物の上下梁間、上下床間等の上下水平部材間に取り付ける方法に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
最近では、地震による建物の損壊を防止するために、建物全体を免震装置によって支持して、地震の振動を建物に伝達させないようにする方法、建物の各階の壁等に制震装置を組み込んで、地震の振動による建物の振動を減衰させる方法等が提案されている。
【0003】
後者において、制震装置として、粘性剪断抵抗を利用して振動を減衰させる制震装置を用いる場合、制震装置自体が、幅広の大きな鋼製の抵抗板と、この抵抗板を収容した鋼製の大型の容器とからなるため、通常、制震装置の組み立ては予め工場などで行われて、この予め組み立てられた制震装置が建築現場に搬入されるが、建築現場に搬入された後は、一旦、その地組みヤードで制震装置が上本梁等に地組され、その後、制震装置が組み付けられた上本梁がクレーン等により吊り上げられて節柱間に配されるような工法が採用されている。
【0004】
ところで、建築現場の敷地面積に対して建築物の占有面積が同程度であると、敷地内に地組みヤードを設けることが困難であって、したがって、上記のように地組みヤードで制震装置を上本梁等に地組みするような工程を採用することができない。
【0005】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、建築現場の敷地内に地組みヤードを設けることが困難であっても、制震装置を節柱間等に配して、上下水平部材間に取り付けることができる簡便な方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
粘性体を収容するための容器と、この容器と隙間をもって配されると共に、容器内の粘性体に一部が埋没される抵抗板とを具備した制震装置を建築物の下水平部材と上水平部材との間に取り付ける本発明の建築物への制震装置の取り付け方法は、容器から抵抗板が分離しないように容器に抵抗板が仮止めされた制震装置を、予め配設された下水平部材上に載置して、その容器側において下水平部材に少なくとも横方向に関しては不動となるように仮止めする第一の工程と、この仮止め後、抵抗板から上方に離れて上水平部材を配設し、この配設した上水平部材に抵抗板を上方向に関しては可動である一方、横方向に関しては不動となるように仮止めする第二の工程と、この仮止め後、制震装置を上水平部材に向かって上昇させて、上昇後、抵抗板を上水平部材に固定する第三の工程と、その後、抵抗板の容器への仮止めを解除して容器を下降させて、下降後、容器を下水平部材に固定する第四の工程とを具備してなる。
【0007】
本発明の好ましい例では、第一の工程では、制震装置を、予め形成された下水平部材上に、スペーサを介して載置し、第三の工程では、スペーサにより形成された下水平部材の上面と容器の下面との間の隙間を用いて制震装置を上昇させるようにする。この場合、隙間に爪ジャッキ等を介装して制震装置を上昇させると、作業性がよくなり好ましい。
【0008】
本発明の他の好ましい例では、第一の工程では、上方向に関しても不動となるように制震装置を下水平部材に仮止めし、第三の工程では、制震装置の下水平部材への上方向に関して不動となる仮止めを解除して、制震装置を上水平部材に向かって上昇させるようにする。このように第一の工程で上方向に関しても不動となるように制震装置を下水平部材に仮止めすると、制震装置を下水平部材にしっかりと仮止めするができ、直ちに制震装置を上下水平部材に固定できない場合等において、安全性を確保することができる。
【0009】
本発明の他の好ましい例では、第一の工程及び第二の工程の少なくとも一方の工程での仮止めを、ボルト−ナットの組み合わせを用いて行い、また、第三の工程及び第四の工程の少なくとも一方の工程での固定を、同じくボルト−ナットの組み合わせを用いて行うようにし、更には、第一の工程及び第二の工程の少なくとも一方の工程での仮止めを、ボルト−ナットの組み合わせを用いて行い、第三の工程及び第四の工程の少なくとも一方の工程での固定を、仮止めにおいて用いたボルト−ナットの組み合わせを用いて行うようにする。このように仮止め、固定をボルト−ナットの組み合わせを用いて行うと、ボルト−ナットの締め付け、締め付け解除により、仮止め、仮止め解除、固定を簡単に行うことができ、作業性を極めて向上させることができる。
【0010】
本発明の更に他の好ましい例では、第一の工程以前に又は第四の工程以前若しくは第四の工程の後に、容器内に粘性体を充填するようにする。第一の工程以前に容器内に粘性体を充填する場合、工場でこれを行ってもよいが、若干のスペースがある場合には、建築現場でこれを行ってもよく、このように第一の工程以前に容器内に粘性体を充填すると、充填作業を困難なく行うことができ、充填作業の容易化の観点から好ましい。第四の工程以前若しくは第四の工程の後に、容器内に粘性体を充填する場合には、搬送中の粘性体の漏出又は雨水の容器内への侵入による粘性体の漏出の虞を少なくし得、この粘性体の漏出防止の観点から好ましい。
【0011】
更に本発明の制震装置は、上記の方法に用いるためのものであって、粘性体を収容するための容器と、この容器と隙間をもって配されると共に、容器内の粘性体に一部が埋没される抵抗板とを具備している。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に本発明及びその実施の形態を、図に示す好ましい実施例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら実施例に何等限定されないのである。
【0013】
【実施例】
図1から図3において、本例の制震装置1は、粘性体2を収容するための容器3と、容器3と隙間をもって配されていると共に、容器3内の粘性体2に一部が埋没される抵抗板4とを具備している。
【0014】
粘性体2は、ポリイソブチレン系のもの等からなり、容器3と、容器3内に配された抵抗板4との間の隙間に充填される。
【0015】
鋼製の箱状の容器3は、互いに対向する広幅の側板11及び12と、互いに対向する狭幅の側板13及び14と、底板15とを、溶接等により互いに固着して一体的に具備しており、側板13及び14の上部並びに底板15のフランジ部には、ボルト挿通用の貫通孔16及び17が形成されている。
【0016】
鋼製の抵抗板4は、板状の本体21と、フランジ板22と、複数の補強リブ23とを、溶接等により互いに固着して一体的に具備しており、フランジ板22には、複数のボルト挿通用の貫通孔24が形成されている。抵抗板4において、複数枚の板状の本体21を、その広幅面が互いに隙間をもって対面するようにして、フランジ板22に固着してもよく、この場合、本体21間の各隙間に、これら本体21と同じく隙間をもって介挿される板を底板15に更に固着して、容器3を形成してもよい。
【0017】
制震装置1は、容器3に対する抵抗板4の水平方向Hの相対移動で、容器3の側板11及び12の夫々の内面とこれに対面する抵抗板4の広幅側面の夫々との間の隙間に介在した粘性体2を粘性剪断させて、これによって生じる粘性剪断抵抗により、容器3に対する抵抗板4の水平方向Hの相対移動エネルギ、したがって、地震エネルギを減衰させるようになっている。
【0018】
以上のような制震装置1を建築物に取り付けるに際しては、まず、図4に示すように、コンクリート等を打設して床スラブ31を形成すると共に、床スラブ31上に、下水平部材としてのH型鋼等の鋼製の部材からなる下本梁32を敷設し、下本梁32上に、必要個数の鋼製のキャンバー(スペーサ)33を載置する。キャンバー33の厚みの一例としては、14mmから16mm程度を挙げることができるが、これに限定されない。下本梁32の上板部34には、貫通孔17に対応して、ボルト挿通用の貫通孔35を敷設前又は敷設後に形成する。
【0019】
次に、容器3から抵抗板4が分離しないように容器3に抵抗板4が仮止め治具36(図5参照)により仮止めされた制震装置1を、建築現場にトラック等により搬入する。仮止め治具36は、一方では、溶接等により抵抗板4に仮止めされ、他方では、貫通孔16に挿通されたボルト37及びこれに螺合したナットにより容器3に仮止めされて、これにより、容器3から抵抗板4が分離しないようにしている。なお、貫通孔16にねじ切りを施し、ナットを用いることなしに、ボルト37を側板13及び14に螺合させてもよく、このようにすると、仮止め治具36の容器3への仮止め、仮止め解除を簡単に行うことができ、作業性の観点から好ましい。
【0020】
トラック等に載置された制震装置1のフランジ板22に、貫通孔24及びナット41を介してロープ係止具42(図5参照)を取り付け、ロープ係止具42にロープ43を引っかけて、ロープ43を介してクレーン等により制震装置1を持ち上げて、図5に示すように、予め配設された下本梁32上にキャンバー33を介して載置する。なお、ロープ係止具42は、建築現場で取り付けることなしに、予め工場で取り付けておいてもよく、また、ロープ係止具42を用いることなしに、貫通孔24に直接ロープ43を係止してもよい。
【0021】
次に、図6に示すように、貫通孔17及び35に仮止め用の若干長いボルト45を挿通して、ボルト45をナット46に螺合して仮締めし、こうして、制震装置1を、ボルト45−ナット46の組み合わせを用いて、その容器3側において下本梁32に、横方向H及び縦方向Vに関して不動となるように仮止めし、以下の取り付け工程中に制震装置1を転倒させないようにする。なお、この場合、縦方向Vに関しては可動となるように仮止めしてもよい。
【0022】
この仮止め後、ロープ係止具42及びロープ43を取り外して、次に、図7に示すように、制震装置1の両横に、コンクリート等を打設して又はH型鋼等の鋼製の部材を用いて節柱51及び52を立設する。なお、節柱51及び52は、制震装置1を下本梁32に仮止めする前、すなわち、下本梁32の敷設と共に又は下本梁32の敷設前若しくは敷設後に、立設してもよい。更に、節柱51及び52を橋絡して且つフランジ板22の上面53から上方に離れて上水平部材としてのH型鋼等の鋼製の部材からなる上本梁54を配設する。
【0023】
上記の配設前に準備する上本梁54としては、図示のように長短の二本のH型鋼等の鋼製の部材を互いに溶接等の手段で固着したもの又は一本のH型鋼等の鋼製の部材であってもよい。節柱51及び52への上本梁54の両端の固着は、溶接、アンカーボルト打ち込み等の公知の手段を用いて行われる。上面53と上本梁54のフランジ板55の下面56との間の隙間の距離としては、4mmから6mmを一例として挙げることができる。
【0024】
上本梁54の配設後、図8に示すように、貫通孔24に対応して上本梁54のフランジ板55に予め形成された貫通孔57とフランジ板22の貫通孔24とに、本締め用(最終固定用)のボルト58を挿通して、これにナット59を螺合させて、上本梁54に抵抗板4をそのフランジ板22において仮止めして、こうして、ボルト58とナット59との組み合わせにより上本梁54に抵抗板4を上方向Vに関しては可動である一方、横方向Hに関しては不動となるように仮止めする。
【0025】
この仮止め後、図9に示すように、ボルト45を緩めて、制震装置1の下本梁32への上方向に関しての不動となる仮止めを解除して、制震装置1を持ち上げ(上昇)可能にする。なお、この場合、ボルト45のナット46への螺合を解除することなしに、ボルト45を貫通孔17及び35に挿通したままとするのが好ましい。
【0026】
その後、図10に示すように、キャンバー33により形成された上板部34の上面61と底板15の下面62との間の隙間の両側部の夫々に、爪ジャッキ63の爪部64を夫々挿着して、爪ジャッキ63を作動させて、フランジ板22の上面53がフランジ板55の下面56に当接するまで、制震装置1全体を上本梁54のフランジ板55の下面56に向かって上昇させる。このようにキャンバー33により形成された隙間を用いて爪ジャッキ63により制震装置1を上昇させる代わりに、メガネレンチ等を用いてボルト58又はナット59を回転させ、これにより制震装置1を上昇させてもよい。制震装置1の上昇後、図11に示すように、ボルト58−ナット59を本締めして抵抗板4を上本梁54に固定(本固定)する。
【0027】
その後、図12に示すように、キャンバー33を隙間から除去した後に、爪ジャッキ63を逆に作動させて、爪部64を隙間から除去する。更に、ボルト37を緩めて仮止め治具36を介する抵抗板4の容器3への仮止めを解除して、容器3をその自重で、その底板15の下面62が下本梁32の上板部34の上面61に当接するまで下降させると共に、仮止め治具36の溶接等による抵抗板4への仮止めを溶断等により解除して、仮止め治具36を抵抗板4から除去する。ここで、容器3の下降は、ボルト45により案内されて行われる。
【0028】
容器3の下降後、ボルト45を除去して、図13に示すように、本締め用のボルト65を貫通孔17及び35に挿通して、ボルト65−ナット46を本締めして、容器3を下本梁32に固定(本固定)する。これにより、制震装置1の下本梁32と上本梁54との間への取り付けが完了する。
【0029】
以上の取り付け方法では、搬入トラックから直接に制震装置1を取り付けることができ、建築現場の地組みヤードで上本梁54に制震装置1を地組みする必要がなく、したがって、建築現場の敷地内に地組みヤードを設けることが困難であっても、制震装置1を節柱51及び52間等に配して、簡単に上下本梁54及び32間に取り付けることができる。
【0030】
以上の取り付け方法を上階の節柱51及び52間において同様に用いることにより、制震装置1を上階の上下本梁間にも簡単に取り付けることができる。
【0031】
なお、容器3内への粘性体2の充填は、上下本梁54及び32間に固定(本固定)された制震装置1に対して行ってもよく、これに代えて、予め工場で行ってもよく、更には、例えば、容器3をその自重で下降させる直前又は制震装置1を上下本梁54及び32間に固定(本固定)する直前に行ってもよい。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、建築現場の敷地内に地組みヤードを設けることが困難であっても、制震装置を節柱間等に配して、上下水平部材間に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による方法により取り付けられる制震装置の好ましい一実施例の斜視図である。
【図2】図1に示す例の正面断面図である。
【図3】図1に示す例の側面断面図である。
【図4】本発明の方法の好ましい一実施例の一工程の説明図である。
【図5】本発明の方法の好ましい一実施例の他の一工程の説明図である。
【図6】本発明の方法の好ましい一実施例の更に他の一工程の説明図である。
【図7】本発明の方法の好ましい一実施例の更に他の一工程の説明図である。
【図8】本発明の方法の好ましい一実施例の更に他の一工程の説明図である。
【図9】本発明の方法の好ましい一実施例の更に他の一工程の説明図である。
【図10】本発明の方法の好ましい一実施例の更に他の一工程の説明図である。
【図11】本発明の方法の好ましい一実施例の更に他の一工程の説明図である。
【図12】本発明の方法の好ましい一実施例の更に他の一工程の説明図である。
【図13】本発明の方法の好ましい一実施例の更に他の一工程の説明図である。
【符号の説明】
1 制震装置
2 粘性体
3 容器
4 抵抗板
32 下本梁
54 上本梁
Claims (7)
- 粘性体を収容するための容器と、この容器と隙間をもって配されると共に、容器内の粘性体に一部が埋没される抵抗板とを具備した制震装置を建築物の下水平部材と上水平部材との間に取り付ける方法であって、
容器から抵抗板が分離しないように容器に抵抗板が仮止めされた制震装置を、予め配設された下水平部材上に載置して、その容器側において下水平部材に少なくとも横方向に関しては不動となるように仮止めする第一の工程と、
この仮止め後、抵抗板から上方に離れて上水平部材を配設し、この配設した上水平部材に抵抗板を上方向に関しては可動である一方、横方向に関しては不動となるように仮止めする第二の工程と、
この仮止め後、制震装置を上水平部材に向かって上昇させて、上昇後、抵抗板を上水平部材に固定する第三の工程と、
その後、抵抗板の容器への仮止めを解除して容器を下降させて、下降後、容器を下水平部材に固定する第四の工程と、
を具備した建築物への制震装置の取り付け方法。 - 第一の工程では、制震装置を、予め形成された下水平部材上に、スペーサを介して載置し、第三の工程では、スペーサにより形成された下水平部材の上面と容器の下面との間の隙間を用いて制震装置を上昇させる請求項1に記載の建築物への制震装置の取り付け方法。
- 第一の工程では、上方向に関しても不動となるように制震装置を下水平部材に仮止めし、第三の工程では、制震装置の下水平部材への上方向に関して不動となる仮止めを解除して、制震装置を上水平部材に向かって上昇させる請求項1又は2に記載の建築物への制震装置の取り付け方法。
- 第一の工程及び第二の工程の少なくとも一方の工程での仮止めを、ボルト−ナットの組み合わせを用いて行う請求項1から3のいずれか一項に記載の建築物への制震装置の取り付け方法。
- 第三の工程及び第四の工程の少なくとも一方の工程での固定を、ボルト−ナットの組み合わせを用いて行う請求項1から4のいずれか一項に記載の建築物への制震装置の取り付け方法。
- 第一の工程及び第二の工程の少なくとも一方の工程での仮止めを、ボルト−ナットの組み合わせを用いて行い、第三の工程及び第四の工程の少なくとも一方の工程での固定を、仮止めにおいて用いたボルト−ナットの組み合わせを用いて行う請求項5に記載の建築物への制震装置の取り付け方法。
- 第一の工程以前に又は第四の工程以前若しくは第四の工程の後に、容器内に粘性体を充填する請求項1から6のいずれか一項に記載の建築物への制震装置の取り付け方法。
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