JP3842011B2 - 光記録用発光媒体および光記録装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
近年のインターネット等の高速・広域通信網による情報配信量の爆発的な増大や、コンピュータソフトの規模や処理データ量の飛躍的増大などにより、これらの情報を記録する光記録装置の大容量化が強く求められている。また、種々の電子機器の小型化が進み、衛星や移動体(モバイル、ウェアラブル)通信機器等への搭載も可能な小型軽量の大容量記憶装置のニーズが高まっている。これらを背景にして、要求される記録容量は短期間に桁違いに増大しており、1m2当たり1550テラビット〔1平方インチ当り1テラ(1012:T)ビット〕以上(以下テラビット級と言う)の超高密度の実現が切望されており、その利用範囲と市場規模は非常に大きい(参考資料:光産業技術振興協会編、「光産業ロードマップ」)。
本発明は、このテラビット級の超高記録面密度を有する光記録用発光媒体およびそれを用いた光記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、記録装置は磁性記録材料の磁化の方向の差異を記録単位とした磁気記録方式が主に用いられてきた。これには記録媒体と信号検出機構が一体化したハードディスクや、記録媒体を信号検出機構と分離して持ち運べるフロッピディスクなどが広く利用されている。また、最近では、記録材料にレーザ光をレンズで集光・照射し、そのとき生じる記録材料の光学特性の差異を記録単位として記録・再生する光記録方式も発展が著しい。光記録方式の例としてはコンパクトディスク(CD)やデジタルビデオディスク(DVD)、あるいは光磁気ディスク(MOディスク)等が広く普及している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
テラビット級の記録面密度では記録単位(ピット)のサイズを20ナノメートル(nm)以下のレベル(nm=10−9)と極めて小さくしなければならない(以下、本文ではこのようなナノメータサイズのピットをナノピットと呼ぶことにする)。従来から使用されている磁気記録方式には、長手磁気記録方式と垂直磁気記録方式がある。
【0004】
現在、実用化されている長手磁気記録方式では、ピットサイズがnmレベルになると磁区の反転を保持できなくなる物理的限界がある。これにより磁気記録方式の記録面密度は20ギガ(109:G)ビット程度が限界とされ、磁気記録方式によるテラビット級記録装置の実現は困難である。さらに高い面記録密度が期待される垂直磁化方式は、長年研究が行われているものの実用化のめどは立っていない。また、レンズで絞ったレーザ光を用いる従来の光記録方式では、光の回折限界により光照射範囲を光の波長の半分(サブミクロンレベル)以下にできないため面記録密度は10Gビット程度が限界とされ、やはりナノピットを必要とするテラビット級記録装置に適用することができない。
【0005】
近年、光の波長よりも小さな寸法の開口を持つプローブからにじみ出て光の波長より小さい領域に局在する光(これを近接場光と呼ぶ)を用いて高密度の光記録装置を実現しようとする研究がなされている。ただし、近接場光そのものでナノピットを励起しようとすると、プローブ内で熱として損失する光の割合が非常に大きくなり、実用的に記録・再生が可能な強度の光を開口寸法がナノピットサイズ程度の微小開口から照射しようとすると、プローブが発熱で破損する問題がある。そのため、ナノピットへ効率良く発光用励起パワーを注入するために、先鋭化した導電材料(導電プローブ)の先端から放出された電流を用いる方法が提案された。この方法では、電流は媒体内のナノメータサイズの領域にほとんど損失せずに注入できる。しかし、従来の技術では光メモリとして十分な発光強度を得るには発光媒体の材料や構造が必ずしも最適ではなく、テラビット級の超高記録面密度の光記録装置を実現するには、さらに高効率の発光媒体を実現することが課題となっていた。
【0006】
本発明の課題は、上記従来技術における問題点を解消するために、光励起手段としてサブミクロンレベルの回折限界を有する光ではなく、ナノメータサイズの微小領域に効率的にパワーを注入できる電流を用い、さらに、この電流によって微小領域から発生する光を効率的に集光する構成を用いることにより、テラビット級の超高記録面密度を有する光記録用発光媒体およびそれを用いた光記録装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記本発明の課題を解決するために、特許請求の範囲に記載のような構成とするものである。すなわち、
本発明は請求項1に記載のように、外部からの励起により光を発生する光記録用発光媒体であって、該光記録用発光媒体は電子に対する一対の障壁層と、これらの障壁層に挟まれた電子閉じ込め層とによって少なくとも構成され、上記発光媒体の障壁層の内、電子閉じ込め層の下側に設置された障壁層は、電子に対する障壁効果に比べ、正孔に対する障壁効果が小さい構造の光記録用発光媒体とするものである。
【0009】
また、請求項2に記載のように、請求項1に記載の光記録用発光媒体において、上記発光媒体の電子閉じ込め層はAl組成比が0.4以下のAlGaAsよりなり、該閉じ込め層の下側に設置された障壁層はAlAsよりなり、上記AlGaAsよりなる閉じ込め層と、該閉じ込め層の下側のAlAs障壁層との間でAl濃度が連続的に変化する構造の光記録用発光媒体とするものである。
【0010】
また、請求項3に記載のように、請求項1に記載の光記録用発光媒体において、上記発光媒体の障壁層の内、電子閉じ込め層の表面側に設置された障壁層はInGaP化合物よりなり、該障壁層の厚みが5nmないし20nmの範囲の光記録用発光媒体とするものである。
【0011】
また、請求項4に記載のように、請求項1に記載の光記録用発光媒体において、上記発光媒体の障壁層の内、電子閉じ込め層の表面側に設置された障壁層はInGaP化合物よりなり、該障壁層の厚みが8nmないし15nmの範囲の光記録用発光媒体とするものである。
【0012】
また、請求項5に記載のように、請求項1に記載の光記録用発光媒体において、上記発光媒体の電子閉じ込め層の中に、該電子閉じ込め層の部分のバンドギャップよりも小さく、かつ、層の厚みが電子波長よりも小さい電子閉じ込め層の部分を包含した構造の光記録用発光媒体とするものである。
【0013】
また、請求項6に記載のように、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の光記録用発光媒体において、該光記録用発光媒体は、面内で記録単位のサイズよりも微小な互いに電流の移動を制限するナノメートルサイズの微小区画に細分化され、該微小区画は電流により光を発生する信号光発生領域と信号光を発生しない信号光非発生領域よりなり、該発光媒体は少なくとも表面に保護層を有し、基板により保持してなる構造の光記録用発光媒体とするものである。
【0014】
また、請求項7に記載のように、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の光記録用発光媒体において、上記基板の上に光を反射する材料を設けるか、もしくは光を反射する形状に構成した光記録用発光媒体とするものである。
【0015】
また、請求項8に記載のように、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の光記録用発光媒体において、上記基板の上に電極層を設けるか、もしくは導電性を有する基板を用いた光記録用発光媒体とするものである。
【0016】
また、請求項9に記載のように、請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の光記録用発光媒体と、該発光媒体中のナノメータサイズの領域を励起して光を生じせしめる、導電性と光透過性を有する導電集光プローブとを少なくとも備えた光記録装置であって、上記発光媒体と導電集光プローブは両者間に電流が流れる範囲の距離に保持されるか、もしくは両者が接触した状態で保持され、上記導電集光プローブの先端と上記発光媒体との間に電流を流し、それによって生じる発光を導電集光プローブにより集光する構造の光記録装置とするものである。
【0017】
また、請求項10に記載のように、請求項9において、上記導電集光プローブと上記発光媒体との距離は、電流がトンネル効果により到達できる距離に保持され、該発光媒体で発光を生じせしめる電流はトンネル効果によって流れた電流を用いる構造の光記録装置とするものである。
【0018】
また、請求項11に記載のように、請求項9において、上記導電集光プローブと上記発光媒体とが接触し、該発光媒体で発光を生じせしめる電流は、上記接触を通して流れた電流を用いる構造の光記録装置とするものである。
【0019】
なお、ここで言う下側とは、電流注入方向に対して電子閉じ込め層の下側を意味し、表面側とは電流注入の方向に対して電子閉じ込め層の上側を意味する。
【0020】
本発明は、先端を先鋭化したプローブから光記録用発光媒体の微小領域へ電流あるいは光を供給し、それにより生じる発光を上記プローブあるいはその他の手段で集光し、集光された光を信号に使用する光記録装置であって、プローブから注入された電流あるいは光を微小領域に集中させて発光・検出効率を高める光記録用発光媒体を用いることにより、テラビット級の超高記録面密度を有する光記録装置を提供するものである。
【0021】
すなわち、外部からの励起により光を発生する光記録用発光媒体と、該発光媒体中のナノメータサイズの領域を励起して光を生じせしめる手段と、該発光を検出する手段を有する光記録装置において、該発光媒体は電子に対する一対の障壁層と、これらの障壁層に挟まれた電子閉じ込め層から構成される光記録用発光媒体を用いるものである。
【0022】
本発明は、上記請求項に記載のような材料および構造を有する光記録用発光媒体を採用したことにより、ナノメートルサイズのピットから十分な強度の読み出し光を生成せしめることができ、かつ、テラビット級の高記録面密度を有する光記録装置を実現できる効果がある。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態の構成は、光記録用発光媒体についての基本的な実施の形態1と、その応用例(実施の形態2〜4)からなる。光記録装置については、ハードディスクのように、記録媒体とプローブが一体化した構成のものと、フロッピディスクや光磁気(MO)ディスクのように記録媒体を可搬とするものがあるが、本発明はいずれの構成にも適用可能である。
【0024】
〈実施の形態1〉
まず、本発明の実施の形態1について、図1および図2を用いて説明する。図1において、1は導電集光プローブ、2は光ファイバ、3は透明導電膜、4は光記録用発光媒体、5は表面保護層(または上部障壁層)、6は光記録用発光材料、6aは信号光を発生する信号光発生領域でピットと呼ぶ、6bは信号光を発生しない信号光非発生領域であり、隣接するピット間の仕切りおよび6aと反転した信号情報を有する領域である。7は電極層、8は光反射層、9は基板、10は光検出器、11は信号処理回路、12は注入電流、13は検出光、14は近接場光、15はバイアス電源、20はプローブと媒体表面間のギャップ(間隙)を示す。また、図2において、16は正孔である。17は上部障壁層であり、表面保護層の機能を兼ねる場合もある。18は井戸層であり、19は底部障壁層、20はプローブと媒体表面間のギャップである。
【0025】
導電集光プローブ1は、例えば、先端をナノメータサイズまで先鋭化した光ファイバ2の表面に、透明導電膜3を被覆した構造となっている。透明導電膜3の材料の一例としては、導電性と透明性が優れた酸化インジウムや酸化亜鉛、あるいはダイアモンドライクカーボンや金属の極薄膜などがある。プローブ先端は、導電性と透明性を有し、上記発光媒体4にトンネル電流を注入すると同時に、該発光媒体4からの光を集光する。なお、電流注入は導電プローブで行い、集光は別に設置した集光光学素子(例えばレンズや反射鏡)で行う構成でも良い。
【0026】
光記録用発光媒体4は基板9の表面に、底部障壁層19、井戸層18、上部障壁層17の順で膜構造を形成する。また、必要に応じて基板9と底部障壁層19との間に光反射層8、あるいは電極層7(基板が絶縁性の場合)、光記録用発光材料6、および上部障壁層17(または表面保護層5)を順に形成したものである。なお、基板9および光反射層8が十分な導電性を有する場合には、これらが電極層として機能するので電極層7は不要となる。
【0027】
本実施の形態では、底部障壁層19にAlAs、井戸層(閉じ込め層)18に、直接遷移材料であるAlxGa1−xAs(ただし、x<0.4)、上部障壁層17にInGaP化合物を用いた場合について述べる。なお、閉じ込め層(井戸層18)では、Alを含まないGaAsのみでも良い。
【0028】
光記録用発光材料6は、電流の注入により発光する材料であり、例えば、直接遷移型半導体であるAlGaAs、GaN、InP、ZnO等や、微小粒界を有するSi微粒子、フラーレン、あるいはAlq(アルミニウムキノリン)等の有機高分子がある。
【0029】
なお、図3に、図2示した発光媒体の構造をエネルギーバンドで示す。図3において、1は導電集光プローブ、20はプローブと媒体表面間のギャップ、4は光記録用発光媒体、7は電極層、9は基板、17は上部障壁層、18は井戸層(電子閉じ込め層)、19は底部障壁層、で、注入電流12は、検出光13となって、導電集光プローブ1に、矢印の方向に流れ、また、正孔16は矢印の方向にながれ、井戸層18の電子と再結合することにより再結合発光する。井戸層18で閉じ込められた電子は、基板9や媒体表面に散逸せず空間的に狭い井戸層18内に集中するので強い発光が生じる。
プローブの先端を光記録用発光媒体の表面近傍のトンネル電流が流れる距離まで接近させる。トンネル電流が流れる距離はプローブと媒体との間に印加されたバイアス電圧に依存するが、通常はナノメータレベルである。また、プローブを発光媒体と接触させてもよい。なおこのときは、トンネル電流よりも大きな電流を媒体に注入することができるが、プローブや媒体の損耗を防止するために、プローブの媒体への接触圧力を一定に保持する手段や、プローブと媒体との摩擦を軽減する手段を付加する。トンネル電流が流れる距離か接触した状態を保持しつつ、記録媒体上のプローブの位置を相対的に移動させる。プローブと媒体表面との間に、プローブから放射された電流が媒体の上部障壁層を超えるエネルギーを持つようにバイアス電圧を印加する。プローブからの電流は上部障壁層のポテンシャルを超えて透過し、井戸層に到達する。注入された電子は、井戸層内でエネルギーを失い、エネルギーバンドの底へ緩和する。井戸層内でエネルギー緩和した電子は底部障壁層を超えることができず、基板へ拡散することはない。一方、井戸層内を媒体表面側に向かう電子は、同様に上部障壁層によって反射され表面へ拡散することはない。このようにして、いったん井戸層内に注入された電子、あるはこの電子によって新たに閉じ込め層内で生じた電子は井戸層内に閉じ込められる。井戸層では電子と正孔が再結合する際に発光するよう材料を設定してあるので、閉じ込められた電子は速やかに再結合発光する。電子が基板や媒体表面に散逸せず空間的に狭い井戸層内に集中するので強い発光強度が得られる。
【0030】
〈実施の形態2〉
本実施の形態では、図4に示す構造の光記録用発光媒体と、図5に示すエネルギーバンド構造を有する発光媒体について説明する。図4において、1は導電集光プローブ、20はプローブと媒体表面間のギャップ、4は光記録用発光媒体、7は電極層、9は基板、12は注入電流、13は検出光、16は正孔、17は上部障壁層、18は井戸層(電子閉じ込め層)、19は底部障壁層、19-1は底部障壁層のポテンシャル傾斜領域である。また、図5において、注入電流12は、井戸層18を通り、検出光13となって、導電集光プローブ1の方向に流れる。正孔16は井戸層18の方向にながれ、井戸層18に閉じ込められている電子と再結合することにより再結合発光する。井戸層18で閉じ込められた電子は、基板9や媒体表面に散逸せず空間的に狭い井戸層18内に集中するので強い発光が生じる。
【0031】
本実施の形態では、底部障壁層19として、伝導帯のバンド構造が上に凸となり、荷電子帯のバンド構造が平坦となる構造を用いた場合について述べる。このバンド構造は、底部障壁層19の上下両側にポテンシャルが連続的に変化する領域である底部障壁層のポテンシャル傾斜領域19-1を形成することにより得られる。このバンド構造により、井戸層18は電子に対しては閉じ込め効果が効き、正孔16に対しては閉じ込め効果がない状態となっている。そのため、井戸層18内には、電子(注入電流12)は効率良く閉じ込められる一方、正孔が効率的に基板9側から井戸層18内に供給されるので、電子は井戸層18内で正孔16の数に制限されることなく再結合できる。そのため再結合に伴う発光をいっそう高強度にすることができる。
【0032】
〈実施の形態3〉
本実施の形態では、上部障壁層17の機能およびその厚みについて説明する。上記実施の形態1〜2(図2、4)で例示した光記録用発光媒体4に形成する上部障壁層17は、閉じ込め層(井戸層18)内の電子が媒体表面に拡散することを阻止する働きをする。上部障壁層が薄い場合、励起するために打ち込まれた電子は、初期エネルギーを失わず、弾道的に上部障壁層を通過し高い割合で井戸層に入るが、いったん井戸層に入った電子はトンネル効果により逆に媒体表面に透過しやすくなる。媒体表面に出た電子は、表面準位等を通して発光を伴わずに正孔と再結合して失われる。そのため発光効率は低下する。
【0033】
逆に、上部障壁層が厚い場合、井戸層内の電子は上部障壁層を透過して表面に散逸することはほとんど無くなるが、厚くなり過ぎると、注入した電子が上部障壁層を通過中に弾性散乱で方向が変ったり、非弾性散乱により伝導帯の底までエネルギー緩和する割合が増える。上部障壁層の伝導帯の底ヘエネルギー緩和した電子は上部障壁層中を拡散し、閉じ込め層側と媒体表面側に分流する。
【0034】
そのため、閉じ込め層に注入される電子の数自体が少なくなり、閉じ込め層での再結合発光強度が低下する。また、上部障壁層が厚くなると、集光探針と発光源である閉じ込め層との距離が大きくなるために、集光探針に入る光量が低下し、集光量が低下する。これらの傾向から、上部障壁層の厚みには最適値が存在する。 具体的な実施の形態として、上部障壁層がInGaPで形成された場合について述べると、上部障壁層の厚みが増えるにしたがって井戸層からの発光強度が増加し約9〜10nmの時に受光強度は最大となる。上部障壁層の厚みがそれ以上に増えると、逆に検出光量が急に減って行くことが実験的に得られた。実際に発光媒体を作製する上での余裕を考慮すれば、上部障壁層の厚みは5〜20nmの範囲が好ましく、5nm未満では発光が急激に低下し、また20nmを超えると検出光量が減少するので好ましくない。高発光強度が得られる、より好ましい範囲は、おおよそ8〜15nmの範囲である。
【0035】
〈実施の形態4〉
本実施の形態では、図6に示す構造の光記録用発光媒体について、図7に示すバンド構造を有する発光媒体について説明する。図6において、1は導電集光プローブ、20はプローブと媒体表面間のギャップ、4は光記録用発光媒体、7は電極層、9は基板、12は注入電流、13は検出光、16は正孔、17は上部障壁層、18は井戸層(電子閉じ込め層)、18-1は第2井戸層(量子井戸層)、19は底部障壁層、19-1は底部障壁層のポテンシャル傾斜領域である。また、図7において、注入電流12は、第2井戸層18-1を通って、検出光13となり、導電集光プローブ1の方向に流れ、また、正孔16は第2井戸層18-1の方向に流れ、第2井戸層18-1に閉じ込められている電子と再結合することにより再結合発光する。
【0036】
本実施の形態では、井戸層18の内部に、電子サイズよりも厚みが薄く、かつ隣接する領域よりもエネルギー準位が小さい第2井戸層(量子井戸層)18-1と、該量子井戸層よりも厚く、かつバンドギャップが大きい層の二つの部分(上記実施の形態における井戸層18に相当)とにより構成される発光媒体について説明する。
【0037】
この構造では、注入された電子はいったん井戸層18に入るが、その中の量子井戸層(第2井戸層18-1)の方がエネルギー準位が高いので、井戸層18内の電子は速やかに量子井戸層内に集積する。この量子井戸層には面内にピットサイズよりも小さなサイズで、わずかな厚みの揺らぎがある。この揺らぎは電子が面内方向へ拡散する妨げとなり電子を面内方向で閉じ込める働きをする。また、量子井戸層に閉じ込められた電子は密度が高くなるので発光効率が高まる。したがって、本実施の形態によれば、発光媒体に注入された電子を広い範囲で井戸層に捕獲し、さらに量子井戸層に密集させることにより、発光効率を著しく高めることができる効果がある。
【0038】
以上の実施の形態の説明では、電子を注入する場合について述べてきたが、正孔を注入する場合でも、電子と正孔を読み替えることにより同様に適用できる。また、近接場光などの光を注入して発光媒体を励起する場合には、発光再結合する電子−正孔対が光により井戸層内で直接生成されたものであることと、電子注入のときに電子が上部障壁層で分流して井戸層へ入る割合が低下することが、光が上部障壁層で吸収されて井戸層を励起する割合が減少することに対応することを考慮すれば、本発明は光励起の場合にも同様に適用することができる。
【0039】
【発明の効果】
本発明の光記録用発光媒体および光記録装置によれば、発光媒体のナノメータサイズの微小領域に発光に寄与するキャリアを効率的に集中させることのできる材料および構造の発光媒体を用いているので、効果的な発光・受光を実現したテラビット級の超高密度の光記録装置を達成できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1で例示した光記録用発光媒体を用いた光記録装置の構造を示す模式図。
【図2】本発明の実施の形態1で例示した発光媒体の構造を示す模式図。
【図3】本発明の実施の形態1の図2で示した発光媒体のエネルギーバンド構造を示す図。
【図4】本発明の実施の形態2で例示した発光媒体の構造を示す模式図。
【図5】本発明の実施の形態2の図4で示した発光媒体のエネルギーバンド構造を示す図。
【図6】本発明の実施の形態4で例示した発光媒体の構造を示す模式図。
【図7】本発明の実施の形態4の図6で示した発光媒体のエネルギーバンド構造を示す図。
【符号の説明】
1…導電集光プローブ
2…光ファイバ
3…透明導電膜
4…光記録用発光媒体
5…表面保護層(または上部障壁層)
6…発光材料
6a…信号光発生領域(記録単位:ピット)
6b…信号光非発生領域
7…電極層
8…光反射層
9…基板
10…光検出器
11…信号処理回路
12…注入電流
13…検出光
14…近接場光
15…バイアス電源
16…正孔
17…上部障壁層
18…井戸層(電子閉じ込め層)
18-1…第2井戸層(量子井戸層)
19…底部障壁層
19-1…底部障壁層のポテンシャル傾斜領域
20…プローブと媒体表面間のギャップ
Claims (11)
- 外部からの励起により光を発生する光記録用発光媒体であって、該光記録用発光媒体は電子に対する一対の障壁層と、これらの障壁層に挟まれた電子閉じ込め層とによって少なくとも構成され、
上記発光媒体の障壁層の内、電子閉じ込め層の下側に設置された障壁層は、電子に対する障壁効果に比べ、正孔に対する障壁効果が小さいことを特徴とする光記録用発光媒体。 - 請求項1に記載の光記録用発光媒体において、上記発光媒体の電子閉じ込め層はAl組成比が0.4以下のAlGaAsよりなり、該閉じ込め層の下側に設置された障壁層はAlAsよりなり、上記AlGaAsよりなる閉じ込め層と、該閉じ込め層の下側のAlAs障壁層との間でAl濃度が連続的に変化してなることを特徴とする光記録用発光媒体。
- 請求項1に記載の光記録用発光媒体において、上記発光媒体の障壁層の内、電子閉じ込め層の表面側に設置された障壁層はInGaP化合物よりなり、該障壁層の厚みが5nmないし20nmの範囲であることを特徴とする光記録用発光媒体。
- 請求項1に記載の光記録用発光媒体において、上記発光媒体の障壁層の内、電子閉じ込め層の表面側に設置された障壁層はInGaP化合物よりなり、該障壁層の厚みが8nmないし15nmの範囲であることを特徴とする光記録用発光媒体。
- 請求項1に記載の光記録用発光媒体において、上記発光媒体の電子閉じ込め層の中に、該電子閉じ込め層の部分のバンドギャップよりも小さく、かつ、層の厚みが電子波長よりも小さい電子閉じ込め層の部分を包含してなることを特徴とする光記録用発光媒体。
- 請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の光記録用発光媒体において、該光記録用発光媒体は、面内で記録単位のサイズよりも微小な互いに電流の移動を制限するナノメートルサイズの微小区画に細分化され、該微小区画は電流により光を発生する信号光発生領域と信号光を発生しない信号光非発生領域よりなり、該発光媒体は少なくとも表面に保護層を有し、基板により保持してなることを特徴とする光記録用発光媒体。
- 請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の光記録用発光媒体において、 上記基板の上に光を反射する材料を設けるか、もしくは光を反射する形状に構成してなることを特徴とする光記録用発光媒体。
- 請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の光記録用発光媒体において、上記基板の上に電極層を設けるか、もしくは導電性を有する基板を用いることを特徴とする光記録用発光媒体。
- 請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の光記録用発光媒体と、該発光媒体中のナノメータサイズの領域を励起して光を生じせしめる、導電性と光透過性を有する導電集光プローブとを少なくとも備えた光記録装置であって、上記発光媒体と導電集光プローブは両者間に電流が流れる範囲の距離に保持されるか、もしくは両者が接触した状態で保持され、上記導電集光プローブの先端と上記発光媒体との間に電流を流し、それによって生じる発光を導電集光プローブにより集光してなることを特徴とする光記録装置。
- 請求項9において、上記導電集光プローブと上記発光媒体との距離は、電流がトンネル効果により到達できる距離に保持され、該発光媒体で発光を生じせしめる電流はトンネル効果によって流れた電流であることを特徴とする光記録装置。
- 請求項9において、上記導電集光プローブと上記発光媒体とが接触し、該発光媒体で発光を生じせしめる電流は、上記接触を通して流れた電流であることを特徴とする光記録装置。
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Publications (2)
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