JP3846922B2 - 屋外用架橋ポリエチレン絶縁電線 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、製造時の耐変形性ならびに使用時の可撓性および耐トラッキング性に優れた被覆絶縁体を有する屋外用架橋ポリエチレン絶縁電線に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、電線・ケーブルの絶縁材料に使用される架橋ポリエチレンの架橋方式としては、過酸化物架橋、電子線照射架橋およびシラン架橋が知られている。このうち過酸化物架橋は、導体上に架橋可能なポリエチレン組成物を絶縁体として押出被覆し、押出機の後段に設けた架橋管内に連続的に通し、高温高圧の水蒸気により加熱して樹脂組成物を架橋する方法である。また電子線照射架橋は、押出機の後段に、過酸化物架橋方式で用いられる架橋管の代わりに、電子線照射機を設け、電子線を照射して樹脂組成物を架橋する方法である。これらの方法では、押出機に続けて架橋管および冷却管、または電子線照射機を配置するため、設備が大規模かつ高価になる。
【0003】
これに対して、シラン架橋は基本的には一般の押出設備で十分対応可能な方法であり、過酸化物架橋または電子線照射架橋のような大きな設備を必要とせず、これらの方法に比較してかなり扱いやすい方法であるといえる。このシラン架橋には、いわゆるモノシルプロセスおよびサイオプラスプロセスの2つの方法が知られている。前者のモノシルプロセスはポリエチレンへの有機シラン化合物のグラフト反応工程と押出被覆工程を連続的に行う方法であり、同一組成物を用いて連続生産する場合に適している。後者のサイオプラスプロセスはグラフト反応工程と押出被覆工程とを別々に行う方法であり、使用可能な組成物の種類が幅広く、しかも小規模な設備で実施可能であるという利点がある。
【0004】
ここで、シラン架橋における架橋反応は樹脂組成物をシラノール縮合触媒の存在下に水にさらすことによって行なわれる(例えば、特公昭48−1711号公報、特開昭49−134751号公報など)。この架橋反応は、大気中に存在する微量な水分によっても十分に進行するという特徴を有するため、押出被覆工程後に自然放置するだけでもよい。しかし、自然放置して架橋させると長時間を要する。そこで、処理時間を短縮するためには、導体上にシラン架橋可能なポリエチレン組成物を押出被覆した後に70〜90℃の温水バスに1〜15時間程度浸漬して架橋する方法を採ることもある。いずれにしても、シラン架橋方式では、架橋処理前の樹脂組成物はポリエチレンの特性を強く保持しているため、架橋工程で加わる熱や、巻張力と自重から加わる応力によって絶縁体が変形しやすい。
【0005】
また、屋外用途の架橋ポリエチレン絶縁電線は、着雪防止の機能を付与するために長手方向に沿って連続的に少なくとも一条の突起体(ヒレ)を設けた構造のものが多い(例えば特公昭58−11045号公報、特開昭62−211806号公報など)。このような構造の屋外用シラン架橋ポリエチレン電線では架橋反応時に突起体が変形しやすい。特に夏場などにおいてドラム巻で放置して架橋を進行させる場合、その突起体が変形することが多い。また、温水処理により架橋させる場合には、突起体が所定の形状を維持できずに倒れたり崩れるという問題がある。このような変形が生じると、外観不良をもたらすとともに突起体が本来発揮すべき着雪防止機能を損なうことがある。さらに、屋外用架橋ポリエチレン絶縁電線は、屋外という使用環境に耐え得るために高度な耐候性や耐トラッキング性などの高い品質が要求される。しかし、突起体が変形して寸法ズレを起こすと、その個所に塩分を含む水分や各種電解質などが溜まって耐トラッキング性を低下させる原因となる。
【0006】
これらの種々の問題点が生じるのは、上述したように架橋がまだ十分に進行していない被覆絶縁体に対して熱や応力が働くためである。そこで、巻張力や自重による応力を極力抑えることが考えられるが、応力を極端に抑えようとすると逆に生産性が低下したり、巻崩れなどによる傷が生じて外観を損ねることになる。また、架橋工程での熱に起因する変形を抑えるためには、樹脂組成物中に耐熱変形性に優れた高密度のポリオレフィンを配合することが考えられるが、この場合かえって電線としての可撓性が損なわれ、著しく取り扱いにくくなる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、架橋工程時の耐変形性を改善して突起体の寸法不良などを防止し、さらには使用時の可撓性および耐トラッキング性に優れた屋外用架橋ポリエチレン絶縁電線を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の屋外用架橋ポリエチレン絶縁電線は、直鎖状低密度ポリエチレン100〜40重量%および高圧法低密度ポリエチレン0〜60重量%からなりこれらの混和物の密度が0.915〜0.932であるポリオレフィンと、有機シラン化合物と、有機過酸化物と、シラノール縮合触媒と、カーボンブラックとを混和してなる樹脂組成物、または前記ポリオレフィンに有機過酸化物の存在下で有機シラン化合物を反応させて得られるシラン変性ポリオレフィンと、シラノール縮合触媒と、カーボンブラックとを混和してなる樹脂組成物を、導体上に押出被覆し架橋して絶縁体を形成したことを特徴とするものである。
【0009】
本発明において、前記ポリオレフィンは直鎖状低密度ポリエチレン80〜40重量%および高圧法低密度ポリエチレン20〜60重量%からなるものであることが好ましい。また、樹脂組成物には、さらにフッ化ビニリデン系材料またはシリコーン系材料を含有させてもよい。また、樹脂組成物を導体上に押出被覆し架橋して形成される絶縁体には、通常、長手方向に沿って連続的に形成された少なくとも1条の突起体が形成される。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。まず、本発明の屋外用架橋ポリエチレン絶縁電線に用いられる樹脂組成物を構成する成分について説明する。
本発明においては、樹脂成分として直鎖状低密度ポリエチレンおよび高圧法低密度ポリエチレンからなるポリオレフィンが用いられる。ここで、直鎖状低密度ポリエチレンとは、エチレンと、ブテン−1、ペンテン−1など炭素数4以上のα−オレフィンとの共重合体を意味する。このポリオレフィンは、直鎖状低密度ポリエチレン100〜40重量%と高圧法低密度ポリエチレンを0〜60重量%とを配合したものである。直鎖状低密度ポリエチレンと高圧法低密度ポリエチレンとの配合量が上記のように規定されたポリオレフィンを用いると、架橋時における変形が抑制され、特に構造上設けられる突起体の倒れや崩れが改善できる。さらに、架橋工程の初期に発生する突起体の倒れや崩れをほぼ完全に防止するためには、直鎖状低密度ポリエチレン80〜40重量%および高圧法低密度ポリエチレン20〜60重量%からなるポリオレフィンを用いることがより好ましい。これは以下のような理由による。すなわち、直鎖状低密度ポリエチレンが80重量%より多く、高圧法低密度ポリエチレンが20重量%より少ない場合には、熱変形耐性が良好になるものの、架橋速度が遅くなる。逆に、直鎖状低密度ポリエチレンが40重量%より少なく、高圧法低密度ポリエチレンが60重量%より多くなると、架橋速度は速くなるものの、熱変形耐性が劣化して突起体の崩れが生じることがある。また、直鎖状低密度ポリエチレンと高圧法低密度ポリエチレンとの混和物の密度は0.915〜0.932の範囲であることが要求される。これは、密度が0.915より小さいと絶縁体としての強度が低下し、逆に0.932を超えると絶縁電線としての可撓性を著しく損なうためである。
【0011】
なお、前記混和物のための直鎖状低密度ポリエチレンおよび高圧法低密度ポリエチレンとしては、それぞれ密度0.915〜0.935および0.915〜0.928のものを用いることができる。
【0012】
有機シラン化合物は、後述する有機過酸化物の存在下で前記ポリオレフィンと反応するものであり、一般式:RR’SiY2 (式中、Rは例えばビニル基、アリル基などの不飽和炭化水素基またはアルコキシル基、Yはメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基に代表されるアルコキシル基などの加水分解可能な有機基、R’はRまたはYと同様の置換基である。)で表される。より具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどが挙げられる。有機シラン化合物の配合量はポリオレフィンに対して0.5〜10重量%であることが好ましい。これは、0.5重量%未満では十分にシラン架橋が進行せず、逆に10重量%を超えるとポリオレフィンにグラフトされない過剰の有機シラン化合物が残るため発泡が生じる。
【0013】
有機過酸化物としては、ジクミルペルオキシドなどが挙げられる。有機過酸化物の配合量はポリオレフィンに対して0.05〜1.0重量%であることが好ましい。
【0014】
シラノール縮合触媒としては、ジブチル錫ジラウレートやジオクチル錫ジラウレートなどが挙げられる。シラノール縮合触媒の配合量はポリオレフィンに対して0.05〜1.0重量%であることが好ましい。
【0015】
カーボンブラックとしては、高度な耐候性を付与するために、粒子径が15〜50nmのファーネスブラックなどを用いることが好ましい。カーボンブラックの配合量はポリオレフィンに対して0.5〜5重量%であることが好ましい。
【0016】
これらの成分のほかに、押出加工性や絶縁体としての一般的な特性を改善するために、必要に応じて滑剤、老化防止剤、銅害防止剤、紫外線吸収剤、着色剤などの添加剤を添加してもよい。
【0017】
このうち滑剤としては、長期にわたって押出安定性を確保するために一般的に使用される脂肪族アミドや脂肪族金属塩が挙げられる。また、滑剤としてフッ化ビニリデン系材料またはシリコーン系材料を添加してもよい。フッ化ビニリデン系材料としては、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン−四フッ化エチレン共重合体などが挙げられる。シリコーン系材料としては、シリコーンオイル、シリコーンレジンやシリコーンエラストマーを微粒子化したものなどが挙げられる。特に、フッ化ビニリデン系材料またはシリコーン系材料を添加した場合、驚くべきことに、得られる絶縁体には塩分を含む水分などが付着しにくくなり、耐トラッキング性を向上させる効果がある。フッ化ビニリデン系材料およびシリコーン系材料のうちでは耐トラッキング性を向上させる効果は前者の方が著しいので好ましい。このように耐トラッキング性を向上できる理由は必ずしも明らかになっているわけではないが、これらの添加剤はシラン架橋ポリエチレン相との適度な相溶性を有することから、表面への塩分を含む水分などの付着を有効に防止できるためであると推定される。これらの材料の配合量は、ポリオレフィンに対して150〜2000ppmであることが好ましい。150ppm未満では滑剤としての効果が得られず、逆に2000ppmを超えると絶縁体の物性を低下させる傾向がある。
【0018】
なお、上述したシラノール縮合触媒およびその他の添加剤は、マスターバッチの形で添加することもできる。
本発明における樹脂組成物は、その構成成分であるポリオレフィン、有機シラン化合物、有機過酸化物をシラノール縮合触媒、カーボンブラックなどのその他の成分とともに混合して用いる場合のほかに、予め前記ポリオレフィンに有機過酸化物の存在下で有機シラン化合物を反応させて得られるシラン変性ポリオレフィンと、前記のその他の成分とを混合して用いることもできる。
【0019】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
原料成分として以下の材料を用意した。
直鎖状低密度ポリエチレン(1):昭和電工(株)製、商品名B105FF、メルトインデックス(MI)=0.8、コモノマーはブテン−1。
直鎖状低密度ポリエチレン(2):昭和電工(株)製、商品名A220FF、MI=2.0、コモノマーはブテン−1。
直鎖状低密度ポリエチレン(3):三菱化学(株)製、商品名UF840、MI=1.5、コモノマーはブテン−1。
高圧法低密度ポリエチレン(1):昭和電工(株)製、商品名DF01S、MI=3.0。
高圧法低密度ポリエチレン(2):日本ユニカー(株)製、商品名NUC9060、MI=1.2
有機シラン化合物として、ビニルトリメトキシシラン。
有機過酸化物として、ジクミルパーオキサイド。
酸化防止剤として、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チバガイギー(株)製、商品名イルガノックス1010。
シラノール縮合触媒として、ジブチル錫ジラウレート。
フッ化ビニリデン系材料として、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン系共重合体:昭和電工・デュポン(株)製、商品名バイトンM、またはポリフッ化ビニリデン:三菱化学(株)製、商品名KYNAR460。
シリコーン系材料として、シリコーン微粒子:トーレ・ダウコーニング・シリコーン(株)製、商品名トレフィルE500。
カーボンブラック:三菱化学(株)製、カーボンブラック#30。
【0020】
これらの材料を表1〜表3に示す配合割合(重量%で表示)で配合し、実施例1〜14および比較例1、2の混和物を得た。L/D=30、D=65φの押出機を用い、押出機各部の温度をC1=150℃、C2=200℃、C3=200℃、C4=200℃、ダイス=200℃、ヘッド=200℃に設定し、スクリュー回転数60rpmの条件で、各混和物をホッパーから投入し、22mm2 の導体上に2.0mm厚の肉厚の絶縁体を押出被覆してドラム巻きとし、約3000mの絶縁電線を製造した。このときの電線構造は長手方向に2条の突起体を連続的に設けた構造とした。
【0021】
架橋処理は、(1)夏場を想定した40℃の雰囲気中、および(2)70℃の温水バス中、という2つの条件でそれぞれ行った。そして、一定時間経過後にドラムの胴面側に位置する絶縁電線の一部の外観を観察して、突起体のつぶれの有無を調べた。また、十分な架橋処理を施した後、JIS C3005に準拠して2000回噴霧したときの電線表面の漏洩電流を測定し、耐トラッキング性を評価した。これらの結果を表1〜3に併記する。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
【表3】
【0025】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、架橋工程時の耐変形性を改善して突起体の寸法不良などを防止し、さらには使用時の可撓性および耐トラッキング性に優れた屋外用架橋ポリエチレン絶縁電線を提供できる。
Claims (4)
- 直鎖状低密度ポリエチレン100〜40重量%および高圧法低密度ポリエチレン0〜60重量%からなりこれらの混和物の密度が0.915〜0.932であるポリオレフィンと、有機シラン化合物と、有機過酸化物と、シラノール縮合触媒と、カーボンブラックとを混和してなる樹脂組成物、または前記ポリオレフィンに有機過酸化物の存在下で有機シラン化合物を反応させて得られるシラン変性ポリオレフィンと、シラノール縮合触媒と、カーボンブラックとを混和してなる樹脂組成物を、導体上に押出被覆し架橋して絶縁体を形成したことを特徴とする屋外用架橋ポリエチレン絶縁電線。
- 前記ポリオレフィンが、直鎖状低密度ポリエチレン80〜40重量%および高圧法低密度ポリエチレン20〜60重量%からなることを特徴とする請求項1記載の屋外用架橋ポリエチレン絶縁電線。
- 前記樹脂組成物が、さらにフッ化ビニリデン系材料またはシリコーン系材料を含有することを特徴とする請求項1または2記載の屋外用架橋ポリエチレン絶縁電線。
- 前記絶縁体が、長手方向に沿って連続的に形成された少なくとも1条の突起体を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の屋外用架橋ポリエチレン絶縁電線。
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