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JP3846966B2 - 炭化水素油の水素化脱金属触媒およびこれを用いる炭化水素油の水素化脱金属方法 - Google Patents
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JP3846966B2 - 炭化水素油の水素化脱金属触媒およびこれを用いる炭化水素油の水素化脱金属方法 - Google Patents

炭化水素油の水素化脱金属触媒およびこれを用いる炭化水素油の水素化脱金属方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、炭化水素油の水素化脱金属触媒およびこの触媒を用いる炭化水素油の水素化脱金属方法に関し、さらに詳しくは炭化水素油特に重質油を水素化処理する場合において、長期間に亘り連続運転を実施することができる水素化脱金属触媒およびこの触媒を用いる炭化水素油の水素化脱金属方法に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
原油を常圧蒸留あるいは減圧蒸留することによって得られる石油系蒸留残渣油、タールサンド油等の高沸点炭化水素油類は多量の金属分、硫黄化合物、窒素化合物等の夾雑物を含んでおり、各種燃料あるいは化学工業原料に供するため、今日、最も一般的な精製法として水素化処理法が適用されている。
【0003】
とくに、近年は、原料油の重質化が急速に進行する傾向にあり、それにともない、従来における脱硫、脱窒素、軽質化に加え、脱金属に係る技術的問題の解消の必要性が高まっている。
【0004】
重質油の水素化処理法におけるプロセス技術上の問題のひとつは、高度脱硫率の達成とともに、夾雑物としての金属成分の除去、ならびに、金属の触媒上への析出にともなう触媒性能への影響をどのように軽減するかということである。
【0005】
一般的に、原料中に含まれる有機金属化合物等の金属成分は、硫黄化合物あるいは窒素化合物の場合と異なり、反応の進行にともなって、触媒上に金属硫化物などの状態で、未反応部分を除いて、実質的にすべて析出し、運転期間を通じて反応系外に排出されないという特異な現象を有し、その結果触媒性能の低下ならびに触媒層の閉塞による反応器内における圧力損失上昇の問題が生じている。
【0006】
また、重質油の水素化処理プロセスにおいては、不可避の副反応ともいうべき炭化水素の分解反応による炭素質物質(以下、カーボンまたは炭素ということがある)の析出を伴う。
【0007】
これらの析出物質は、粒状触媒を充填して構成される固定床反応器における圧力損失上昇(以下、△P上昇ということがある)の主要因を成すものである。
一般的に、重質油の水素化処理プロセスにおいては、反応器に充填する触媒は、一連続運転期間中、全充填層にわたって有効に機能するものとして、種類(たとえば、活性金属種、担持量等)や充填量が決定されるが、実際の運転においては、予定通油量以前に急速な△Pの上昇を発生し、運転不能に至ることを経験している。
【0008】
すなわち、原料油と触媒の組み合わせが適切である限り、直脱第1塔(脱金属反応塔)の△P上昇の前に、後段脱硫触媒の活性が予定通りのスケジュールで低下し、運転を終了するが、この場合における予定外の脱硫触媒失活の原因は運転後期に脱金属触媒層の能力が低下し、原料油中の重金属分が脱硫触媒に加速的に沈積するためである。また、運転後期には、脱金属触媒および脱硫触媒の性能低下に伴って、触媒層の温度を高くして触媒性能の低下を補償するが、高温化とともに触媒上でのコーキングも顕著となり、これも脱硫触媒劣化の一因である。このように、運転後期には急速に触媒の劣化と触媒層の閉塞傾向が進展するが、この直前に予定の運転を終了するのが上手な直脱装置の運転管理である。この場合に、脱金属触媒層の後段は脱金属能力を残しているが、脱金属触媒層全体として性能が不足するために、運転停止を避けられない。この対策として脱金属触媒層の触媒量を増強することが考えられるが、この場合にも脱金属触媒層入り口部の最上段触媒層の閉塞問題は解決できないので、結局脱金属触媒層全体としての脱金属能力を大幅に残しながらも(触媒増強のため)、圧損上昇のために実質的に運転期間を延長できない。
【0009】
本発明者等は直脱実装置の使用済み触媒の観察結果と実験室における脱金属反応試験より触媒層における反応メカニズムについて検討したところ、触媒上で次の現象が存在していることを認めた。
【0010】
すなわち脱金属触媒の使用初期においてはモリブテン等活性金属種の存在する触媒粒子内で脱金属が優先的に進行し、重質油中のバナジウム、ニッケル等の重質油夾雑金属類は触媒粒子内に析出し保持される。
【0011】
脱金属処理時間が経過して、触媒粒子内にバナジウム等が多量に蓄積されてくると、触媒粒子中の活性金属(以下モリブデンで代表)は次第に触媒粒子表面層へ移動して濃縮層を形成し、さらには触媒粒子外層にもモリブデン層が形成される様になる。この触媒粒子外層に存在するモリブデンは触媒活性を持ち、重質油中のバナジウム、ニッケル、鉄を触媒粒子外層に固定させる作用を示す。
さらに、脱金属処理時間が経過した場合には、モリブデン、バナジウム、ニッケル、硫黄、鉄、炭素前駆体等で構成される触媒粒子外層は拡大し、この層に存在する金属類の触媒作用により脱金属触媒粒子間隙全てを埋めるようになる。この時、脱金属触媒層は触媒粒子間隙部を含めて触媒層全空間が固体析出物で充填され、急激に触媒層圧損が増加し、直脱装置が運転不能になる。
【0012】
重質油の水素化脱金属法における触媒層の△P上昇に関する問題の解決は、従来から当該技術分野における永年のテーマの一つであり、たとえば、
米国特許第4,510,263号では、反応器に充填する触媒として、球体あるいは柱状成型物からなる触媒に比較して、△P上昇の少ないシリンダー状成型物(cylindrical extrudate)の内壁に、十字状等の断面を有する梁翼あるいはリブ(vane or rib)を設ける事により機械的強度の改善と活性面の拡大を図っている。これに対し、
特開昭63−194732号では、閉塞ならびに活性低下問題の解消法として、活性金属成分の触媒担体内での濃度分布を、触媒担体の切断面において、その中心と外表面の間で最大となるように規定することにより、触媒外表面における反応を抑え、当該領域における反応を選択的に優先させることにより、外表面における析出量を少なくしようとしている。
また、特開平2−305891号では、触媒の担体粒子の表面を、比表面積が1m2/g以下で、細孔直径10μ以上に構成することにより、触媒外表面での活性点を少なくするとともに、細孔内における反応を優先させ、同時に、析出する物質に対する収容容積を拡大することにより、触媒体積の膨張を抑え、閉塞問題の解消を図っている。
【0013】
しかしながら、本発明者等は上記公報に記載された発明を含む従来技術について鋭意検討したところ、今後、ますます重質化に向かおうとしている原料油事情ならびにプロセス装置の長期連続運転による経済性向上を望む要望に対し、充分な対応が出来ないことを認めた。
たとえば、米国特許第4,510,263号に記載された触媒では、水素化脱金属法において、反応流体に対し比較的大きい流路を与えることが可能と考えられるが、恒久的解決法ということはできない。
【0014】
かくして、本発明者等は、以上の観点に基づき、水素化脱金属法を将来における原料油の重質化ならびにプロセスの長期連続運転化へのニーズに対応すべく、本発明をなすに至ったものである。
【0015】
【発明の目的】
本発明は、上記のような研究に基づいてなされたものであって、炭化水素油特に重質油を水素化処理する際に、触媒粒子間への重金属等の析出を防止することにより、触媒層の閉塞を防止し、触媒同士の空間を維持して差圧上昇を防止し、長期間に亘って連続的に重質油を水素化脱金属することができ、さらに触媒同士の固着を防止することにより、運転終了後の触媒抜き出しを容易にする炭化水素油の水素化脱金属触媒およびこの触媒を用いる炭化水素油の水素化脱金属方法を提供することを目的としている。
【0016】
【発明の概要】
本発明に係る炭化水素油の水素化脱金属触媒は、
担体と、この担体に担持された触媒成分とからなり、
触媒内部に反応流体が流通する反応流路を有するとともに、実質的に脱金属機能を有さない不活性物質からなる被覆層を触媒表面の少なくとも一部に有することを特徴としている。
【0017】
上記触媒は、反応流路として単一の貫通孔を有するシリンダー状体、複数の貫通孔を有するシリンダー状体、複数の貫通孔を有するハニカム構造体であることが好ましく、これら反応流路の相当直径が1〜10mmであることが好ましい。
【0018】
本発明では、柱状触媒の柱体胴部表面上に前記被覆層が設けられていてもよく柱体胴部表面と端部表面とに設けられていてもよい。
被覆層の比表面積は10m2/g以下であることが好ましい。
【0019】
上記のような被覆層は、反応流体を実質的に透過させず、それによって反応流体と触媒活性点とを接触させないような緻密層である。このような被覆層を形成する不活性物質としては、ガラス、不活性セラミックスまたは反応条件下で不活性な金属が挙げられる。
【0020】
ガラスとしては、低温焼結ガラス類、半田ガラス類または釉薬が好ましい。
不活性セラミックスとしては、α−アルミナ、不活性シリカ、コーディエライト、ムライトまたは石英などが挙げられる。
【0021】
また反応条件下で不活性な金属としては、アルミニウム、ステンレス鋼などが挙げられる。
上記のような触媒は、固定床充填用触媒として好適である。
【0022】
本発明に係る炭化水素油の水素化脱金属方法は、上記のような水素化脱金属触媒の存在下に、炭化水素油を水素化処理することを特徴としている。
本発明では、炭化水素油の水素化処理を固定床式で行なうことが好ましく、さらに炭化水素油と水素化脱金属触媒との接触における最上流初期触媒層(最上流充填触媒層)に、上記の水素化脱金属触媒を用いることが好ましい。
【0023】
この発明は、触媒を肉眼的な視野でみる場合での形状を決定する外表面(触媒表面)の少なくとも一部を水素化脱金属反応に対して不活性かまたは反応流体の活性点への接触を妨げる物質で被覆するので、本質的に金属およびカーボンの析出しない面を確保するとともに、その面を介して反応流体の流路を形成するものである。
【0024】
【発明の具体的説明】
以下本発明に係る炭化水素油の水素化脱金属触媒およびこの触媒を用いる炭化水素油の水素化脱金属方法について具体的に説明する。
【0025】
水素化脱金属触媒
本発明に係る水素化脱金属触媒は、担体と、この担体に担持された触媒成分(触媒活性成分)とからなり、該触媒内部に反応流体が流通する反応流路を有するとともに、触媒表面の少なくとも一部に実質的に脱金属機能を有さない不活性物質からなり、かつ反応流体を実質的に透過させない被覆層を有している。このような被覆層は、反応流体と触媒活性点との接触を妨げる。
【0026】
本発明では、水素化触媒を形成する担体として公知のアルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、チタニア、マグネシア、シリカ−マグネシアなどの担体を特に限定することなく用いることができる。
これら担体の比表面積(BET法)は50m2/g以上、好ましくは100〜300m2/gである。
【0027】
担体に担持される触媒成分としては、水素化触媒として公知の触媒成分を広く用いることができ、たとえばモリブデン、タングステン、クロムなどの第VIB族金属あるいはニッケル、コバルトなどの第VIII族金属の酸化物または硫化物を用いることができる。
【0028】
本発明では、担体に単一触媒成分を担持させてもよく、2種以上組み合わせて担持させてもよいが、これらのうちでもモリブデンと、ニッケルおよび/またはコバルトとを組み合わせて担持させることが好ましい。
上記のような触媒成分は、酸化物として、第VIB族金属は5〜30重量%の量で、第VIII族金属は1〜10重量%の量で担持されていることが好ましい。
【0029】
上記のような触媒成分は、従来公知の方法で触媒に担持させることができ、たとえば担体(成形体)に触媒成分水溶液を含浸させる含浸法、未成形触媒原料と触媒成分あるいは触媒成分水溶液とを混練して押出して成形する混練−押出成形法、担体(成形体)に触媒成分をコーティングするコーティング法などにより担持させることができる。
【0030】
上記のような担体と、担体に担持された触媒成分とからなる水素化脱金属触媒は、触媒の内部に反応流体が流通する単一または複数の反応流路を有し、この流路表面で脱金属反応が生起しうるように形成されていれば、その形状は何ら限定されない。たとえば柱状で、断面が円形、星型、方形、三角、六角、八角などの角状などであることが好ましい。
触媒の大きさも特に限定されず、成形可能であって、反応塔内で使用できるものであればよい。
【0031】
上記反応流路は両端面に連通している孔であれば、貫通孔であっても、あるいはフィルター型などの不定形孔であってもよいが、圧損失または成形性の面から貫通孔であることが好ましい。
【0032】
この反応流路(流通孔)の相当直径(断面積×4/断面の外周長)は、1〜10mm程度であることが好ましい。このような径を有していると、炭化水素油が気相、液相にかかわらず充分に流通できるとともに接触反応面を確保することができ、強度も充分確保することができる。
【0033】
なお相当直径が1mm未満であると炭化水素油の流通量が少なくなり、一方10mmを超えて大きくなると接触反応面が少なくなる。
このような反応流路を有する触媒としては、具体的に単一の貫通孔を有するシリンダー状体(ラシヒリング)、複数の貫通孔を有するシリンダー状体、複数の貫通孔を有するハニカム構造体などが挙げられる。
【0034】
これらのうちでも複数の貫通孔を有する柱状触媒であることが好ましい。
この触媒は、40%程度以上の開孔率を有していることが好ましい。
上記のように本発明に係る水素化脱金属触媒は、内部に大きな空隙を有しているので、金属析出物および炭素質析出物等がこの空隙に蓄積される。
【0035】
本発明では、上記のような触媒の触媒表面の少なくとも一部に実質的に脱金属機能を有さない不活性物質からなり、反応流体を実質的に透過させない被覆層が設けられている。なおこのような触媒では、触媒内部の反応流路表面には被覆層は設けられず、反応流路表面には反応面(反応流体との接触面)が形成されている。
【0036】
このような被覆層は、反応流体(炭化水素油)を実質的に透過させない層であり、一般的に反応流体を実質的に透過させないことによって反応流体と触媒活性点とを接触させないような緻密層である。この被覆層は、反応流体を透過させずに反応流体と活性点との接触を妨げるか、あるいは触媒成分が触媒表面に拡散することを阻止することができ、これによって被覆層が設けられた触媒表面上での炭化水素油の脱金属反応あるいは炭素質析出反応を阻止し、触媒粒子間に金属や炭素質物質を蓄積させることなく触媒間隙を維持し、触媒層中の炭化水素油の流れを維持するものである。
【0037】
本明細書において、「反応流体を実質的に透過させない」被覆層とは、反応流体を全く透過させない被覆層、あるいは極く少量反応流体を透過させるが、この被覆層が設けられた部分で金属、炭素質などが析出して触媒同士が固着しないような被覆層を意味している。
【0038】
具体的に被覆層は、比表面積が小さくかつ実質的に細孔がなく、触媒成分および反応流体(炭化水素油)から析出する金属成分を保持しにくく、かつ触媒内部に担持された触媒成分が被覆層の表面に滲出するのを阻止し、さらに炭化水素油を透過させない材質からなることが好ましい。
【0039】
より具体的には、被覆層の比表面積は10m2/g以下、好ましくは1m2/g以下であることがよく、10m2/gより大きくなると上記の金属成分の非保持特性、触媒成分の滲出阻止特性、反応流体の透過阻止性などが低下してくる。
【0040】
被覆層を形成する材料としては、上記のような目的を達成することができれば反応不活性な材料を特に限定することなく用いることができるが、たとえばガラス、不活性セラミックスまたは反応条件下で不活性な金属などを用いることができる。
【0041】
ガラスとしては、釉薬、ナトリウム−ホウ素系、鉛−ホウ素系、ケイ素−ホウ素系などの低温焼結ガラス類、亜鉛−ホウ素系、鉛−ケイ素系などの半田ガラス類を用いることができ、不活性セラミックスの例としては、α-アルミナ、不活性シリカ、コーディエライト、ムライト、石英などを用いることができる。反応条件下で不活性な金属(合金も含む)としては、アルミニウム、ステンレス鋼などを用いることができる。
これらを2種以上組合わせて用いることもでき、たとえば低温焼結ガラス類と不活性セラミックスとを組合わせて用いることができる。
【0042】
このように触媒表面の少なくとも一部に被覆層を有する触媒例を図1〜7に示す。なお以下に示す図面において、担体3には触媒成分が担持されている。
図1に示す触媒1は、単一貫通孔4を有するラシヒリング状担体3の胴部(円縁部)外周表面の全面に被覆層2が設けられた構造を有している。
【0043】
図2に示す触媒1は、複数の貫通孔4を有するシリンダー状担体3の胴部外周表面全面に被覆層2が設けられた構造を有している。
図3に示す触媒1は、複数の貫通孔4を有する柱状担体3の胴部外周表面の一部に被覆層2が設けられた構造を有している。
【0044】
図4に示す触媒1は、複数の貫通孔4を有する柱状担体3の胴部外周表面の全面に被覆層2が設けられた構造を有している。
図5に示す触媒1は、複数の貫通孔4を有する柱状担体3の胴部外周表面の一部に被覆層2が設けられた構造を有している。
【0045】
図6に示す触媒1は、複数の貫通孔4を有するとともに胴部に突起3aを有するシリンダー状担体3の胴部突起3a表面に被覆層2が設けられた構造を有している。
図7に示す触媒1は、複数の貫通孔4を有するハニカム担体3の胴部外周表面の全面に被覆層2が設けられた構造を有している。
【0046】
上記のうちでも、図2〜図7に示されるような複数の貫通孔4を有する柱状触媒が好ましい。
なお本発明では、触媒および被覆層はこれら図に示される形状に何ら限定されるものではない。
【0047】
上記のような被覆層は触媒表面の少なくとも一部に形成することができれば形成方法は特に限定されず、上記のような各材料に適した方法によって形成される。たとえば触媒表面の一部あるいは全面に、釉薬または不活性セラミックスのゾルあるいはスラリーを吹き付け、刷毛塗りするか、あるいは被覆層を形成したい部分のみをゾルあるいはスラリーに浸漬して、次いで焼成することによって触媒表面の一部あるいは全面に被覆層を形成することができる。このように浸漬法により被覆層を形成する際には、たとえば柱状触媒の胴部に被覆層を形成する場合には、端面をマスキングしてゾルあるいはスラリー中に浸漬してもよく、あるいはゾルあるいはスラリー浅液または液膜に柱体胴部を接触させてもよい。押出成形品はこれらの過程で所望の大きさに切断する。
【0048】
上記のようにガラスまたは不活性セラミックスを用いて形成される被覆層は、炭化水素油の水素化処理温度以上の温度で焼成されるが、反応面の比表面積を最大に維持し活性成分を失活させないという観点から、通常450〜700℃の温度で焼成することが好ましい。
【0049】
また触媒表面に金属被覆層を形成する際には、溶射法あるいは溶融接着法などを利用することができる。
なお被覆層を形成する前に触媒成分を担持させておくことができるが、予め被覆層が形成されていても該被覆層上には触媒成分が担持されにくいので被覆層が形成された担体に触媒成分を担持させることもできる。
上記のように被覆層を形成するに先立って、触媒成分が担持された触媒を乾燥、予備焼成してもよい。
【0050】
本発明に係る水素化脱金属触媒は、触媒表面に実質的に脱金属機能を有さない不活性物質からなり、反応流体を実質的に透過させない被覆層を有しているが、触媒内部には反応流路を有しており触媒は充分な反応活性を示す。
このような触媒表面に形成される被覆層は、触媒表面上での全面的な炭化水素油の反応を阻止して触媒の閉塞を防止することができるように触媒表面の少なくとも一部に形成されればよく、柱体触媒の胴部外周表面上または端部表面上に設けられるが、胴部および端部の両方すなわち触媒表面全面が被覆されていてもよい。通常は、被覆層は触媒胴部表面上に設けられる。具体的に触媒表面積の30〜100%好ましくは30〜98%を被覆することができる。
【0051】
このように被覆率100%(好ましくは98%)で触媒表面のほぼ全面を被覆すると、当該面上での金属等の析出が大きく制限されるので、この面を介して反応流体の流路として比較的大きいスペースを維持確保することができ、差圧上昇の問題を軽減し易い。
なお被覆率が30%より少ないと触媒の閉塞を充分に防止することが困難になる。
【0052】
本発明では、被覆層の厚み、密度、被覆形状などは特に限定されるものではないが、被覆層の厚みは0.1μm〜1mm程度であることが望ましい。
上記のような触媒は、反応塔に充填した際に崩壊しない程度の強度を有していることが必要である。
【0053】
炭化水素油の水素化脱金属方法
本発明に係る炭化水素油の水素化脱金属方法は、上記のような水素化脱金属触媒を用いて炭化水素油を水素化処理する。
【0054】
本発明で処理される炭化水素油は、たとえば石油系蒸留残油(常圧、減圧)、減圧軽油、分解油、脱歴残油、石炭液化油、タールサンド油、シェールオイル油、天然ビチュ−メンなどの重質油類および原油である。
【0055】
炭化水素油の水素化処理は、上記のような本発明に係る水素化脱金属触媒を用いる以外は従来公知の方法を特に限定することなく適用して実施することができる。
【0056】
固定床式で実施する場合に特に本発明の効果を発現することができる。反応塔は、単段式でも多段式でもよい。
【0057】
触媒は水素化処理装置内にランダムに充填すればよいが、サイズの大きい柱状触媒は、端面を反応流体の流れ方向に向けて整列配置させることができる。
水素化脱金属処理は、
温度 200〜550℃
圧力 50〜300kg/cm2
水素循環量 500〜2000Nm3/kl油
通油量 LHSV 0.1〜20hr-1
の条件下に行なうことが望ましい。
【0058】
本発明では、炭化水素油の水素化脱金属反応を上記のような水素化脱金属触媒のみを用いて行なってもよく、また従来の触媒(被覆層が設けられていない触媒)と併用してもよい。
【0059】
従来の触媒と併用する際には、反応塔全域において均一な混合状態で用いてもよいが、図8に示すように炭化水素油と水素化脱金属触媒との接触における最上流触媒層に本発明に係る水素化脱金属触媒を用いて行なうことことが好ましい。
【0060】
図8において、反応塔10上部から導入された反応流体11は、まず反応塔内前段で本発明に係る水素化脱金属触媒12と接触した後、後段で従来の触媒13と接触し、水素化処理され反応塔底部から14として抜き出される。
【0061】
また図9に示すように、本発明に係る水素化脱金属触媒12を用いた反応塔20を、従来公知の触媒13を用いた反応塔10の上流に付設し、予め反応塔20で反応流体11を水素化脱金属反応させた後、反応流体11を反応塔10で水素化処理してもよい。
【0062】
このように本発明に係る水素化脱金属触媒を、反応流体と水素化触媒との接触初期に使用すると、前段触媒層が閉塞しにくいので、差圧の発生が軽減され、装置全体の触媒寿命を長期化することができる。
【0063】
【実施例】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0064】
【実施例1】
触媒の調製
下記のように触媒を調製した。
1.担体アルミナ原料
擬ベーマイト構造アルミナ(LaRoche Industries INC.(LA, USA)製 Versal 250 Alumina)
2.成型(車輪型)
上記アルミナ原料に水を加えて充分混練した後、図2に示すような形状の触媒が得られるような金型を装着した押出成型機で成型した。
【0065】
得られたアルミナ成型品は150℃、空気中で乾燥後、600℃で1時間焼成して円筒車輪状成型アルミナ担体とした。
【0066】
円筒車輪状成型アルミナ担体の形状
平均外径 8mm
平均長さ 9mm
リブ 6本
円縁部平均厚み 1mm
リブ部平均厚み 1mm
3.活性成分の含浸
(3-1) 純水1000重量部にモリブデン酸アンモニウム(片山化学製試薬特 級)258重量部を少量ずつ溶かした。得られた溶液に硝酸ニッケル(片山化学製試薬特級)170重量部を少量ずつ溶かした。この際、必要に応じてアンモニア水を添加して溶液のpHを10に保った。得られた溶液を含浸用溶液とした。
【0067】
(3-2) 上記で得られた含浸用溶液に成型アルミナ担体330gを浸し、活性金属成分含浸のために室温減圧下10分間保持した。その後、アルミナ担体を速やかに含浸用溶液から取り出し、150℃空気下で乾燥し、活性成分を含浸させたアルミナ担体を得た。
4.被覆層の形成
(4-1) 被覆層形成用スラリーの調製
純水100重量部に鉛−ケイ素系ガラスよりなるフリット(釉薬)100重量部を加えてボールミルで粉砕混合し、これに純水30重量部にポリビニルアルコール(重合度1100)3重量部を溶かした溶液を加えて被覆層形成用スラリーを得た。
【0068】
フリット組成
PbO 62重量%
SiO2 23重量%
23 9重量%
その他 6重量%
(4-2) (3-2) で得られた乾燥アルミナ担体の円筒側面全域に、上記で得たスラリーを薄く刷毛塗り塗布し、150℃、2時間空気乾燥することにより、図2に示すように胴部表面全面に被覆層を有する含浸アルミナ担体を得た。
【0069】
(4-3) 上記(4-2)で得た被覆層を形成した含浸アルミナ担体を、600℃で30分間焼成して被覆層を有するNi−Mo−アルミナ触媒を得た。
触媒平均組成
MoO3 12.9重量%
NiO 3.1重量%
Al23担体 74.0重量%
フリット 10.0重量%
触媒反応試験
1.試験装置
固定床高圧流通式反応試験装置
水素および原料油は下降流
触媒は不規則充填
反応管加熱方式はサンドバス方式
2.反応条件
反応圧力 150kg/cm2
反応温度 410℃
水素/原料油比 700Nl/l
LHSV 0.5hr-1
3.反応原料:中東系減圧残渣油
比重(15℃) 1.02
粘度(100℃) 23cSt
コンラドソン炭素 20.0重量%
アスファルテン 7.6重量%
Ni+V 174wtppm
硫黄 3.8重量%
4.反応試験方法
反応管中の触媒を水素流通下150℃で乾燥した後、1重量%のジメチルジスルフィドを含む重質軽油を水素と共に反応管に供給し、15℃/時間で250℃まで反応管を昇温して触媒を予備硫化した。その後、供給油を原料減圧残渣油に切り換えた後に、反応管温度を1℃/時間で410℃まで昇温し、これを保持した。なお水素化脱金属処理された減圧残渣油中の残存金属濃度は蛍光X線分析法で測定した。
【0070】
反応試験結果として、脱メタル率の経時変化を図10に、固定床触媒層圧力損失比(PT/PO)の経時変化を図11に示す。
T 反応開始後T時間における触媒層圧力損失〔kg/cm2
O 反応開始後1000時間経過時の触媒層圧力損失〔kg/cm2
【0071】
【比較例1】
実施例1において、含浸済み乾燥アルミナ担体を500℃空気下で30分間焼成して、Ni−Mo−アルミナ触媒を得た。
【0072】
触媒平均組成
MoO3 14.3重量%
NiO 3.5重量%
Al23 82.2重量%
実施例1と同様に試験した結果を、図10、図11に示す。
【0073】
【実施例2】
実施例1の触媒の調製 (4-2)において、被覆層を図3に示すように胴部の半面に設けた以外は、実施例1と同様にして被覆層を有する触媒を得た。
【0074】
得られた触媒を下記に示す。
触媒平均組成
MoO3 13.6重量%
NiO 3.3重量%
Al23担体 78.0重量%
フリット 5.1重量%
上記で得られた触媒を用いた以外は実施例1と同様にして触媒反応試験した。
【0075】
脱メタル率の経時変化を図12に、固定床触媒層圧力損失比(PT/PO)の経時変化を図13に示す。図12および図13中には、前記比較例1の結果も示す。
【0076】
【実施例3】
実施例1で得られた被覆層を有する触媒(車輪型触媒図2参照)と、被覆層を設けなかった比較例1と同様の触媒(車輪型触媒)とを混合して、同一の反応管に充填して、実施例1と同様の条件で485時間の反応試験を実施した。
反応試験後の被覆層を有する触媒について、金属蓄積状態をX線マイクロアナライザーで分析した。車輪型触媒の外周円縁部半径方向(1mm厚さ)に蓄積金属濃度分布を示す。
図14にバナジウム蓄積濃度分布(相対濃度)を、図16に鉄蓄積濃度分布(相対濃度)を示す。
【0077】
【比較例2】
実施例3において、反応試験後の被覆層を有さない触媒について実施例3と同様に測定したバナジウム蓄積濃度分布(相対濃度)を図15に示す。
【0078】
上記のような実施例3および比較例2の結果、実施例3の触媒(被覆層を有する触媒)では、図14に示すようにフリットを被覆していない円縁部内部(反応流路側)には高濃度のバナジウム蓄積が認められたが、円縁部外周のフリット被覆部およびその内部にはバナジウムの蓄積は認められず、フリットによる不活性化の効果が確認された。また図16に示すようにフリットを被覆していない円縁部内部側には多量の鉄蓄積層が形成されているのに対して、フリットコーティングした円縁部外表面には鉄の蓄積は僅かであり、フリットは外表面不活性化効果を示した。
一方フリットコーティングをしていない比較例2の触媒では、図15に示すように触媒円縁部の内外表面にも高濃度のバナジウムが蓄積していた。
【0079】
【発明の効果】
本発明に係る炭化水素油の水素化脱金属触媒は、重質油などの炭化水素油の水素化脱金属処理時に閉塞抑制効果により触媒層圧損上昇を防止できる。これにより、閉塞部以下の触媒が充分な活性を有し、健全な状態を保っているのに運転を停止せざるを得ないという従来の欠点を改良し、脱金属触媒層全域に重質油中の夾雑重金属類を高濃度に析出させることができる。また重質油中の夾雑重金属類の触媒表面への析出を阻止し、析出を触媒の内部構造部分に集中させることができるため、使用後の触媒粒子の固着が起きず、その抜き出し作業が容易になり、同時に抜き出し時間が短縮される。
【0080】
さらに従来型脱金属触媒では閉塞防止の観点より、モリブデン等の活性成分の濃度をより低めにして、触媒活性を抑えるのが通常であったが、本発明においては、上記の方法により反応流体の流路を確保することができるので、担体に担持する活性成分濃度を高くすることができるというメリットがある。このため、被覆層にともなう活性面の減少する部分があっても、最終的には、単位触媒量当りの脱硫、脱窒素活性ならびに脱金属機能を、在来型触媒を充填した場合における機能もしくはそれ以上の処理能力を充分に確保し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 胴部全面に被覆層を有するラシヒリング状水素化脱金属触媒を示す斜視図である。
【図2】 複数の貫通孔を有し、胴部全面に被覆層を有するシリンダー状水素化脱金属触媒を示す斜視図である。
【図3】 複数の貫通孔を有し、胴部の一部に被覆層を有するシリンダー状水素化脱金属触媒を示す斜視図である。
【図4】 複数の貫通孔を有し、胴部全面に被覆層を有するシリンダー状水素化脱金属触媒の他例を示す斜視図である。
【図5】 複数の貫通孔を有し、胴部の一部に被覆層を有するシリンダー状水素化脱金属触媒の他例を示す斜視図である。
【図6】 複数の貫通孔を有し、胴部の一部に被覆層を有するシリンダー状水素化脱金属触媒の他例を示す斜視図である。
【図7】 胴部全面に被覆層を有するハニカム構造触媒を示す斜視図である。
【図8】 本発明に係る炭化水素油の水素化脱金属方法の好ましい態様を示すプロセス図である。
【図9】 本発明に係る炭化水素油の水素化脱金属方法の好ましい態様を示す他のプロセス図である。
【図10】 脱メタル率の経時変化を示す。
【図11】 固定床触媒層圧力損失比(PT/PO)の経時変化を示す。
【図12】 脱メタル率の経時変化を示す。
【図13】 固定床触媒層圧力損失比(PT/PO)の経時変化を示す。
【図14】 実施例3の結果(バナジウム蓄積相対濃度)を示す。
【図15】 比較例2の結果(バナジウム蓄積相対濃度)を示す。
【図16】 実施例3の結果(鉄蓄積相対濃度)を示す。
【符号の説明】
1 … 触媒
2 … 触媒表面の一部に形成された被覆層
3 … 触媒成分が担持された担体
3a… 突起部
4 … 貫通孔
10 … 反応塔
11 … 反応流体
12 … 本発明に係る水素化脱金属触媒
13 … 従来の触媒(被覆層が設けられていない触媒)
14 … 水素化処理物
20 … 本発明に係る水素化脱金属触媒を用いた反応塔

Claims (17)

  1. 担体と、この担体に担持された触媒成分とからなり、
    触媒内部に反応流体が流通する反応流路を有するとともに、触媒表面の少なくとも一部に実質的に脱金属機能を有さない不活性物質からなり、反応流体を実質的に透過させない被覆層を有することを特徴とする炭化水素油の水素化脱金属触媒。
  2. 触媒が反応流路として単一の貫通孔を有するシリンダー状体であることを特徴とする請求項1に記載の炭化水素油の水素化脱金属触媒。
  3. 触媒が反応流路として複数の貫通孔を有するシリンダー状体であることを特徴とする請求項1に記載の炭化水素油の水素化脱金属触媒。
  4. 触媒が反応流路として複数の貫通孔を有するハニカム構造体であることを特徴とする請求項1に記載の炭化水素油の水素化脱金属触媒。
  5. 反応流路の相当直径が1〜10mmであることを特徴とする請求項1〜4に記載の炭化水素油の水素化脱金属触媒。
  6. 触媒が柱状体であって、前記被覆層が柱体胴部表面上に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の炭化水素油の水素化脱金属触媒。
  7. 前記被覆層が端部表面上に設けられていることを特徴とする請求項6に記載の炭化水素油の水素化脱金属触媒。
  8. 前記被覆層の比表面積が10m2/g以下であることを特徴とする請求項1に記載の炭化水素油の水素化脱金属触媒。
  9. 前記被覆層が、反応流体を実質的に透過させず、それによって反応流体と触媒活性点とを接触させないような緻密層であることを特徴とする請求項1に記載の炭化水素油の水素化脱金属触媒。
  10. 前記被覆層を形成する不活性物質が、ガラス、不活性セラミックスおよび反応条件下で不活性な金属から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の炭化水素油の水素化脱金属触媒。
  11. 前記ガラスが、低温焼結ガラス類、半田ガラス類および釉薬から選ばれることを特徴する請求項10に記載の炭化水素油の水素化脱金属触媒。
  12. 前記不活性セラミックスが、α−アルミナ、不活性シリカ、コーディエライト、ムライトおよび石英から選ばれることを特徴する請求項10に記載の炭化水素油の水素化脱金属触媒。
  13. 前記反応条件下で不活性な金属が、アルミニウムおよびステンレス鋼から選ばれることを特徴とする請求項10に記載の炭化水素油の水素化脱金属触媒。
  14. 水素化脱金属触媒が固定床充填用触媒であることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の炭化水素油の水素化脱金属触媒。
  15. 請求項1〜13のいずれかに記載の炭化水素油の水素化脱金属触媒の存在下に、炭化水素油を水素化処理することを特徴とする炭化水素油の水素化脱金属方法。
  16. 固定床式で行なうことを特徴とする請求項15に記載の炭化水素油の水素化脱金属方法。
  17. 炭化水素油と水素化脱金属触媒との接触における最上流触媒層に、請求項1〜13のいずれかに記載の水素化脱金属触媒を用いることを特徴とする請求項16に記載の炭化水素油の水素化脱金属方法。
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