JP3851369B2 - マルチウェル骨細胞培養装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、健康および病気のときの骨細胞の機能を分析するのに有用である、たとえば破骨細胞および造骨細胞の活性のような骨細胞活性の評価に用いる複数ウェル(マルチウェル)骨細胞培養装置の開発に関する。かかる骨細胞活性の評価は、人間における骨粗鬆症、または線維性骨炎のような骨疾患の判断に有効であり、また、骨細胞の活性を変化させる効果を有する新規な薬剤を同定するにも有効であり、更に、骨疾患の治療方法を開発することを可能にするものである。
【0002】
【従来の技術】
骨は、無機または鉱物相、有機マトリックス相、水から構成されている複合鉱化系である。無機鉱物相は結晶性リン酸カルシウムで構成されているが、有機マトリックス相は殆どコラーゲンとその他の非コラーゲン性蛋白とから成る。骨の石灰化は、有機相と無機相との緻密な結合に依存し、その結果鉱化した組織が作られる。
【0003】
骨増殖の過程は構造的および機械的ストレスに対抗できるように制御されている。骨の形成、維持、吸収の過程に関与する細胞は造骨細胞(osteoblast)、骨細胞(osteocyte)、破骨細胞(osteoclast)である。造骨細胞は骨の有機マトリックスである類骨(osteoid)を合成し、この類骨はリン酸カルシウム結晶の成長とコラーゲンの集積後石灰化された状態となる。骨細胞は骨無機質と細胞外体液との間のカルシウムとリン酸の流れを制御する。破骨細胞は骨を吸収する機能があり、骨再造形の過程を継続する上で必須である。骨の形成と吸収の自然のバランスが崩れると様々な骨障害が起こる。破骨細胞活性の増加は、骨粗しょう症、線維性骨炎、ページェット病にみられるような骨密度の低下が特徴的な骨疾患を来すことが証明されている。これらの疾患はすべて骨吸収増加の結果である。
【0004】
骨細胞機能の制御に関与しているメカニズムを理解するために、骨細胞(bone cell)の正常機能と、さまざまな骨疾患におけるこの活性の混乱の程度も測定できることが重要である。そうすれば異常な骨細胞活性を正常水準内に取り戻すことを目的とする薬剤を同定することができるようになるだろう。
【0005】
単離した破骨細胞の活性を生体外(in vitro)で直接観察する方法がいくつかの研究グループによって開発されている。骨髄細胞群から単離された破骨細胞は、マッコウクジラぞうげ質(Boyde ら、Brit. Dent. J. 156, 216, 1984)または骨(Chambersら、J. Cell Sci. 66, 383, 1984)などの自然物質の薄い切片上で培養された。後者の研究グループは、この吸収活性は単核食細胞群のその他の細胞にはないことを証明することができた(ChambersおよびHorton、Calcif Tissue Int. 36, 556, 1984)。破骨細胞系統の研究にこれらとは別の細胞培養法を利用しようという最近の試みも、やはり皮質薄片を利用することに頼っており(Amano ら、および Kerbyら、J. Bone & Min. Res. 7(3))、その吸収活性の定量は、さまざまな深度の吸収ピット面積の二次元分析、または吸収容積の立体マッピングに基づいて行われている。このような方法を用いて、比較的厚い下層の吸収を評価するならば、精度はせいぜい50%ほどである。そのうえこれらの分析方法は非常に時間もかかり、非常に専門的な装置と訓練が必要である。さらに、骨またはぞうげ質薄片の調製とその後の検査は、破骨細胞活性の測定法として容易でもなく実用的でもない。
【0006】
破骨細胞培養のための基層として、人工的なリン酸カルシウム配合物を用いることもこれまでほとんど成功しなかった。Jones ら(Anat. Embryol 170, 247, 1984)は、破骨細胞は合成アパタイトを生体外で吸収すると報告したが、この観察所見を裏付ける実験的証拠は提示できなかった。Shimizuら(Bone and Mineral 6, 261, 1989)は、単離した破骨細胞は失活させた骨表面のみ吸収し、合成カルシウムヒドロキシアパタイトは吸収しないと報告している。これらの成績は、機能的破骨細胞は生体外で培養が困難であることを示唆しているものと思われる。
【0007】
こうした理由のため、骨の細胞を培養し、その活性を測定するために使用されている現在の公知の方法は、有意義でかつ統計的な分析を行うための、一貫したまたは信頼性の高い基準データを提供することはできないと考えられる。このため、こうした方法は、正常な健康状態および/または病気の状態にて、骨細胞の機能を評価するための広範囲な検査には適していない。また、これらの方法は、疾患の診断検査にも適していない。
【0008】
一般的な組織培養のために開発された培養装置も、骨細胞の培養には、不適当である。米国特許第3,726,764号には、直接基部上で組織を培養するための密封可能な側壁開閉口を有し、その後に検査しかつ貯蔵するための微生物チャンバ装置が記載されている。米国特許第3,745,091号には、組織培養に使用するため、ガスケットにより基部に接着させた受け入れ部を有する生物学的反応チャンバ装置が記載されている。これら何れの装置も破骨細胞および造骨細胞の双方の培養および活性評価に適しているわけでなく、また、適応し得るように改変できない。
【0009】
当該出願人の国際公開されたPCT出願第WO94/26872号公報には、リン酸カルシウム系の薄い膜で被覆されたディスクが記載されており、このディスクは、個々の密封ウェル内に入れられ、骨細胞をその上で培養する。この装置は、活性な骨細胞を培養するには満足し得るが、特に個々のディスクの洗浄および分析の点で多くの取り扱いを必要とする。また、骨細胞のディスクから移動の問題があるだけでなく、また、各ディスク上に存在する膜の被覆がウェル毎に異なるという問題もある。この装置は、骨細胞の活性を定量的に評価しその骨細胞疾患を診断することを目的とする大規模な検査システムには適していない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、骨細胞活性を評価するために使用される、新規で改良された骨細胞培養装置を提供するものである。この骨細胞培養装置の開発は、活性な骨細胞を培養し骨細胞の活性の信頼性の高い評価をするときに、いままで経験されていた問題点を解決するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、骨細胞の活性を定量的におよび/または定性的に評価するための新規なマルチウェル骨細胞培養装置が提供される。
【0012】
本発明の第一の形態によれば、全般に平坦な基部と、該基部は骨細胞の培養に適したリン酸カルシウム材の焼結薄膜を少なくともその片面に有しており、上記基部の上記膜被覆上には端部開放のマルチチャンバユニットが配置されており、上記マルチチャンバユニットを上記膜被覆に対して密封する手段とを含み、上記マルチチャンバユニットは上記膜被覆に対して密封されて、個々の収容ウェルを形成しており、骨細胞の活性を定量的におよび/または定性的に評価するのに使用されるマルチウェル骨細胞培養装置が提供される。
【0013】
本発明の第二の形態によれば、骨細胞の活性を測定する分析方法が提供され、上記分析方法は、本発明の第一の形態によるマルチウェル骨細胞培養装置を提供する段階と、所定量の骨細胞を上記培養装置のウェルの少なくとも一つに植え付ける段階と、上記細胞を適当な培地内で培養する段階と、個々の試料間で膜被覆の内部または膜被覆上における変化を検出するため、上記基部上の膜成分の顕微鏡検査法および/または走査を行う段階とを含む。
【0014】
本発明の第三の形態によれば、骨細胞の活性に対する薬剤/化学物質の効果を測定する薬剤の検査分析法が提供され、上記分析検定方法は、本発明の第一の形態によるマルチウェル骨細胞培養装置を提供する段階と、所定量の骨細胞を上記装置のウェルの少なくとも二つに植え付ける段階と、上記細胞を適当な培地内で培養する段階と、上記装置の上記ウェルの少なくとも一つに薬剤/化学物質を添加する段階と、対照試料および処理された試料との間で、膜被覆の内部または膜被覆上における変化を検出するため、上記基部の膜成分を顕微鏡観察しおよび/または走査する段階とを含む。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1には、本発明のマルチウェル骨細胞培養装置が示され、該培養装置は、全体として参照番号10で示す。本発明の好適な実施例によれば、マルチウェル骨細胞培養装置10は、平坦な基部12を備えており、基部12上にリン酸カルシウム材の薄膜被覆14を有し、該薄膜被覆は、基部の片面16に露出片を残す。この任意に露出された表面16は、適当な識別標識、またはラベルを取り付けて標識することができる。マルチチャンバユニット18は、この被覆14の上に置かれる。マルチチャンバユニット18は、それ自体、端部が開放した複数の円筒体18aから成る。適当な密封装置20を有する各円筒体18aの底部分18bは、図8に関して以下により詳細に説明する。該密封装置20は、マルチチャンバユニット18を膜被覆14に密封する。該密封装置20は、マルチチャンバユニットを膜に密封する適当なシーラントを有する。マルチチャンバユニットの全体を覆うことのできる蓋22が設けられている。
【0016】
本発明の好適な実施例は、特徴的な研磨、縁部の斜角、平坦さおよび両面の並行性を有する溶融石英から成る平坦な基部12を提供する。しかし、適当なリン酸カルシウム膜14で均一に被覆することが可能な、生体適合性のある任意の材料であり、ガンマ放射線、またはエチレンオキサイド処理のような滅菌過程および燒結過程の双方に耐え得ることができ、機械的支持体としてその機能を保ち、またその構造の一体性を劣化させたり、喪失するものでなければ、また、この装置に使用できることが技術に熟練している者には理解される。構造的一体性は、材料の組成に固有の物理的特性であると考えられる。これには、金属、ポリマー、またはセラミック材料の使用を含む。ガラスを使用してもよいのは、短時間、ガラス表面を極めて高温度まで加熱する表面焼結装置を使用して、膜材料を燒結し、要求されるタイプの膜14を提供するのに必要な程度の焼結を実現する場合である。
【0017】
本発明の装置の膜成分14は、でこぼこした表面、再現性のある化学的特性を有しており、また輸送に耐えるのに十分な機械的強度を有する。純粋または実質的に純粋なカルシウムヒドロオキシアパタイトを提供するものは、膜14を形成するときに選択するリン酸カルシウム材であると考えられるが、カルシウムヒドロオキシアパタイト、およびα−リン酸三カルシウムを含むリン酸カルシウム材の混合物を使用すれば、最大の吸収性が得られることを我々は確認している。この形態は、例えば、光の透過を許容する薄膜を提供する本発明のその他の形態と共に、本発明に従い装置10の膜14の成分上で培養されている骨細胞の機能的特性の評価を目的とする診断方法の実施を可能にするものである。
【0018】
膜14の厚さは、0.1μmより厚いことが理想的であり、それは、膜14の厚さが0.1μmより薄いと、分散するボイドの発生なしに膜14で均一に覆うことが難しいからである。この厚さは、1μmより厚ければより好ましい。膜14は、当該出願人の国際公開されたPCT出願の第WO94/26872号公報に詳細に記載された各種の技術を使用して、平坦な基部12に付与することができる。図2に示した好適な実施例は、浸漬方法である。この浸漬方法において、基部12は、該基部12と同一寸法の外周を画成する平坦な縁部26aを有する真空パッド26を備える浸漬投入装置24により保持されている。該パッド26は、真空圧を付与し得るように管28と連通した中央孔を有する。パッドの下方の真空吸引が基部12を浸漬投入装置24に確実に保持する。これは、リン酸カルシウムのゾル・ゲル混合液32が入った容器30に浸漬する間に、膜14が基部12の裏側を被覆することを防止する。図3には、片面に膜14が均一に被覆された基部12が示してある。該基部12は、被覆されているが、該基部12の片面に任意に露出した面16の薄片を残し、識別のために標識、または、ラベルを貼り得る。
【0019】
図4に示すように、基部12の上におけるリン酸カルシウム膜14の焼結は、1,000°Cの温度またはその他の所望の焼結温度まで加熱した加熱炉34内で行われる。該基部12は、その温度で最高1時間まで焼結され、その後に加熱炉34内で冷却されて、最終的に取り出される。図5は、焼結後、基部12は平坦のままであり、その構造的一体性を保つことを示す。即ち、基部12は、焼結工程中分解することなく、機械的支持体として機能する。均一な薄い焼結膜14の被覆が基部12に残る。
【0020】
本発明の基部成分12は、図6に示したように矢印21の方向に向けて配置されたマルチチャンバユニット18を備えている。該基部は、個々の16個の円筒状ユニット18aを有するマルチチャンバユニット18を受け入れ得るような寸法にしてある。しかし、基部12は、マルチチャンバユニット18をその上に密封可能である、各種寸法および形状にて作成することが可能である。その制限となるのは、リン酸カルシウム材14を均一に被覆することのできる基部12の面積である。
【0021】
同様に、図6に示したマルチチャンバユニット18は、個々の16個の円筒状ユニット18aから成っているが、この円筒状ユニットの数は変更可能である。平坦な基部に密封した円筒状ユニット18aの数は、膜14の均一な被覆を有する基部12の寸法に依存して、単一のチャンバ18aのみを有する場合から多分96個以上のチャンバを有する場合まで可能である。本発明に従い大形のチャンバを一つ設ける場合、長期にわたって骨細胞の培養を評価し得るよう膜を広く提供し、これにより、その広い膜の全体に大量の骨細胞を成長させることができる。特に16個のチャンバ18aを有するマルチチャンバユニット18を使用することが好ましく、それは、この数のチャンバであれば、標準寸法の市販の培養プレート・ホルダに取り付けることが可能であるからである。また、一台の装置10に使用することのできるチャンバ18aの数の上限値は、底部の密封装置20からシーラント34を注入して漏洩防止シールを形成し得る性能によって制限される。該マルチ・チャンバ・ユニット18は、ポリスチレンでできたものが好ましい。しかし、滅菌処理することができ、薄膜被覆14と化学的に適合可能であり、また、生体適合性があり、しかも、基部密封装置20を収容する独特の形状に製造することのできる限り、任意の同様の材料を使用できることが理解されよう。また、個々のチャンバ18aは、図示したものよりも外周を小さくしまたは大きくすることが可能であることも理解される。その結果、個々に製造した別個のウェル58の寸法(容積)および/または幾何学的配置も異なることになる。
【0022】
図7に示すように、マルチチャンバユニット18は、基部12の上に配置されており、密封装置20中に中空のチャンバ(通路)42と連通する注入口40を有している。該注入口40は、シーラント36の供給源に取り付けられたノズル46を受け入れる。該注入口40は、隣接する円筒状チャンバ18aの内壁48、50の間に配置され、また、該注入口は、円形の開口部52に配置され、該円形の開口部は、密封装置20の開放した通路42内に設けられている。シーラント36が入ったときに、スロット(穴)49a、49bが、チャンバ42内の空気を除去する通気口として機能する。該マルチチャンバユニット18は、加圧状態でシーラント36の注入に耐えるために基部12にクランプ止めされている。このクランプは解除可能である。シーラント36が注入されると、該シーラントは、密封装置20の通路42を通って流れる。円筒状ユニット18aの断面図は、通路42を示し、二つの等しい長さの対向する壁48a、48bと、円筒状ユニット18aの底部18bに相互に接続する上方壁48cとからなり、該通路42は膜14に対して平坦に位置する。これにより、独立ウェル58が形成される。
【0023】
図8に示すように、チャンバは、その両端に円形の開口部38a、38bを有する円筒状である。しかし、これらのチャンバ18aは、任意の所望の形状に製造して構わない。各円筒状ユニット18aの底部に配置された密封装置20は、壁48a、48b、48cにより画定された連続的な開放通路42を備えており、該通路は、各円筒状ユニット18aの基部の全体を通じて連続的な回路網を形成する。また、隔離部分44が存在しており、その側部44a、44b、44c、44dの各々は、円筒状ユニット18aに接続して、相互に保持する働きをする。該隔離部分44は、また、密封装置20の相互に接続した通路42の全体にシーラント36が流れるのを助ける。
【0024】
本発明の装置10に使用される好適なシーラント36はシリコンである。シリコンは長年にわたり、細胞培養の目的に合った生体適合性を有するものとして使用されている。シリコンは、さまざまな圧力下にてマルチチャンバユニット18の通路42内に容易に注入される。図8に示すように、シリコン36は、円筒状ユニット18aの密封装置20の通路42を通って流れ、硬化時に、連続的なシールを形成する。
【0025】
図9には、シーラント36が通路42を充填する状態が示してあり、該通路42は、円筒状ユニット18aの底部48aを有する内壁54と、L字形の外壁部分48b、48cとにより画定され、膜14に平らに着座する。図10に示すように、シリコンは、通常、でこぼこした膜14の表面内に自由に流動し、膜構造または組成に影響を与えずに、膜14と円筒状ユニット18aの内壁48aとの間に接合部を形成する。
【0026】
対照実験によると、シリコン36は、封入されており、個々の収容ウェル58内に滲み出さないことがわかる。該シリコンは確実な接合部を形成し、この接合部も骨細胞がウェル間の移動を許容しない。このことは、当該出願人の国際公開された上記PCT出願に勝る特に有利な点である。シリコン36は、一旦硬化したならば、滅菌処理可能でもある。シーラント36は、微多孔質の薄膜14の被覆に優先的に接着し、要求通りシールを完全な状態に保つ一方で、マルチウェル装置の取り外しを容易にする。図11に示すように、硬化したシリコン36は、膜の表面から単一のユニット60として除去することができる。上述のシリコンの特性と同様の特性を有する材料であれば、シリコンに代えてこの装置のシーラント36として使用可能できることは、技術に熟練した人たちには理解されよう。
【0027】
また、本発明では、装置10のウェルを覆うように、緩く取り付けた蓋22も提供する。該蓋22は、緩く取り付けられて、細胞培養実験に必要とされるならば、気体を交換することを可能にする。該蓋22は、滅菌処理に耐え得る材料である透明なポリスチレンで製造されることが好ましい。しかし、同様の材料なら使用できることが、技術に熟練した人たちにはわかるであろう。該蓋22は、蓋をすべき対応するマルチチャンバユニットの寸法および形状に依存して、さまざまの寸法および形状で製造することができる。図1に示した好適な実施例は、個々の16個の円筒状ユニット18aから成るマルチチャンバユニット18に取り付けられる平坦な上部22aを有する蓋22である。該蓋の上部22aは平坦であり、その側部22bは、マルチチャンバユニット18の深さの半分を覆うのに十分な深さまで伸びている。このため、蓋22は容易に滑り落ちることがない。また、蓋22がマルチウェルユニット10の上に正確に配置されたことを示すため、蓋22は一つの長手方向側部22bに形成された切欠き22cをも有している。
【0028】
本発明の装置は組み立てが極めて簡単であり、一般的な実験用装置およびその技術があれば使用可能である。該装置は、骨細胞の活性の定量的分析に適しており、また、安価に製造できるが、通常程度の取り扱いに耐え得るのに十分丈夫である。本発明のマルチウェル骨細胞培養装置は、人間、または動物の破骨細胞の何れかの吸収活性を検査するため、または造骨細胞による新たな骨マトリックスの合成を検査するための分析試験としての使用に適するよう再現可能な方法で製造できる。該装置は、骨細胞疾患の有無について診断試験として使用することができる。骨細胞の活性は、薬剤、またはその他の生物学的に活性な物質で治療した後に、または機械的、化学的或いは物理的な環境の変化の後に骨細胞活性を評価することも可能である。更に、骨疾患を治療する化合物を、骨細胞の活性に対するそれらの作用に基づいて提供するため、骨細胞の活性および疾患の広範囲の検査および診断、並びに臨床的な薬剤検査過程にて、本装置は経済的に使用できる。
【0029】
各々の場合に、単核または多核形態の何れにおいても、破骨細胞が活性状態で生存し、膜の人工的なリン酸カルシウムを吸収し得ると考えられる培養状態とすることができる。同様に、造骨細胞による良好な培養が行われる状態を保つことも可能である。
【0030】
該装置は、単細胞のような前駆体細胞を破骨細胞に分化する過程を研究し、その吸収活性を監視するためにも利用可能である。
【0031】
直接的にあるいは間接的に破骨細胞の吸収活性に影響を及ぼす、薬剤ような化学剤の培養媒体で細胞への封入の結果または疾患の進行の何れかとして、該装置は、破骨細胞の吸収活性を測定吸収の活性度の変化を監視するために使用することができる。同様に、該装置は、正常および疾患状態のときおよび/または造骨細胞活性に影響を及ぼす薬剤が存在するときに、造骨細胞の活性を評価するために使用することができる。また、この装置において変更を加えた膜上における骨細胞の活性の挙動を評価することも可能である。例えば、有機分子および/または生物的作用のある分子を膜に組み込み、または膜に付与して、破骨細胞および造骨細胞のような培養した骨細胞に対してかかる分子が与える効果を判断することもできる。
【0032】
該装置は、破骨細胞の吸収活性または造骨細胞の合成活性を定量化する手段として使用することも可能である。かかる活性の分析は、連続的なリアルタイムの監視、時間的間隔を置いた監視、または終了時点で判断する監視の形態が採用可能である。破骨細胞活性/造骨細胞活性を確立する段階は、骨細胞(動物またはヒトの何れか)が特定の条件下で装置のウェル内で培養される点で上記の監視方法の各々に共通である。その培養期間は、数時間から数日にわたり(最適な時間は、細胞の種および培養方法に依存する)、その期間中、破骨細胞活性/造骨細胞活性の程度を連続的に監視して、または定期的に監視して、または継続的に監視せずに、単に終了時点で判断するようにしてもよい。
【0033】
破骨細胞の活性の幾つかの異なる分析技術を独立してまたは組み合わせて採用することができる。その各技術の前提は、培養中の破骨細胞の細胞によりリン酸カルシウムの薄膜面が吸収される程度を定量化することである。吸収が為されたことを検出に関して、また、各種の検出技術があることを考慮すれば、本発明の薄膜成分により、リン酸カルシウム材の物理的消失を検出できる。物理的消失は、直接的にまたは間接的に検出できる。造骨細胞の活性は、テトラサイクリンを標識として使用する蛍光分析、簡単な密度測定法または放射性標識法により分析することができる。
【0034】
生じている面を最終時点で光学的に評価する一例は、各チャンバにより画成された膜の顕微鏡検査法および/または走査を行う段階を含む。かかる顕微鏡検査法および/または走査段階は、各培養ウェルから培地を取り出す段階と、膜面から全ての細胞を取り出す段階とを含むことができる。マルチチャンバユニットを取り出し、その後に、膜から硬化したシーラントを剥離する。その結果、膜被覆された基部のみが残り、該基部において、個々のウェル領域内でリン酸カルシウム材の吸収、または有機骨マトリックスの分泌が生じる。多数の試料領域を有する単一の基部を残して、マルチウェル骨細胞培養装置を簡単に取り外すことができることは、その他の公知の骨細胞培養方法よりも極めて有利である。その理由は、多数の試料の分析および取り扱いが遥かに容易であり、また、大規模な試料の分析により適しているからである。チャンバを取り出すための各種の処理を行う前に、またはその処理後に、膜で被覆した基部は、光学顕微鏡検査法、透過型電子顕微鏡法を使用して分析され、自動画像分析法により走査され、または密度測定を受ける。そして、膜構造および/または組成は定量的におよび/または定性的に分析される。特定の分析技術、および吸収されたリン酸カルシウム材の定量化方法の詳細および記述は、当該出願人の国際公開されたPCT出願の第WO94/26872号公報に記載されている。
【0035】
上述の技術は、分析方法の効率を高めるため自動化してもよい。その自動化の程度は、培養技術から破骨細胞および/または造骨細胞活性の分析にまで含めることが可能である。加えて、かかる自動化は、得られるデータを統計的に分析し得るように、コンピュータ利用によるデータベースと接続可能な形態とすることもできる。
【0036】
更に、任意の時点で多数の試料を評価し得るように、膜で被覆した幾つかの基部を同時に評価することも可能である。
【0037】
破骨細胞の包括的な評価のためには、標準化された細胞培養の露出方法が必要とされる。この最終的な分析には、表面が自由に評価され得るように全ての細胞材料を除去する必要がある。このとき、所定の比較実験にて露出時間は、固定されるため、本発明の装置で生じる吸収の程度は、破骨細胞により除去される膜と、培地に露出される膜全体との比率として表すことができる。この膜は薄いため、除去される材料の量は、形成されるボイドの平面面積と関係付けることができる。三次元的な吸収を二次元的に正確に評価する方法は、吸収程度を評価するために必要とされる技術を非常に簡略化する。一方、従来の骨スライス片を評価する方法では、深さが一定でない複雑で不規則な三次元的吸収窩を測定しなければならない。本発明の装置を使用すれば、吸収程度が大きいことは、膜内にしばしば相互に連結される、大きなボイドとして表れ、そのボイドは、特徴的な有機質の境界輪郭(ホタテ貝状のもの)を有する。一方、吸収程度が小さいことは、膜に稀にピンホールが形成され、局部的に小斑点の形状となることで表れる。造骨細胞により膜上に骨状物質が蓄積することは、膜表面の隆起として表れる。
【0038】
【発明の効果】
本発明によるマルチウェル骨細胞培養装置は、骨細胞の機能特性の研究および理解を著しく進歩させるものである。本発明により提供される装置は、同一の装置内だけでなく別個の装置同士に含まれたそれぞれのウェル間で、膜組成物が均一である骨細胞の培養を可能にする。このことは、均一で一貫した評価を行うことを可能にし、優れた、統計的に重要なデータを与える。該膜は、リン酸カルシウム材の吸収だけでなく、膜上における新たな骨マトリックスの発生を検出することを可能にするものである。
【0039】
本発明の顕著な利点は、幾つかの試料を同時に保持することのできる単一の支持基層上にリン酸カルシウム材の薄い膜を提供することであり、同一の膜表面を使用して造骨細胞および破骨細胞を同時に培養することを含む。例えば、三つの隣接するウェルにおいて、それぞれ、破骨細胞、造骨細胞および適当な対照細胞の培養を行うことができる。このようにして、同様の条件下にある造骨細胞と破骨細胞の機能の生理学的に重要な比較をすることが可能となる。
【0040】
本明細書に記載した装置は、骨細胞が膜の表面から移動するのを防止する。全体として、このマルチウェル骨細胞培養装置は、取り扱いおよび操作が容易であり、また、骨細胞の活性を制御し骨細胞疾患を治療する上で重要であり、薬剤の同定およびその効果に必須である、異常な骨細胞の活性の大規模な検査および診断を経済的に行い得る。
【0041】
本発明の好適な実施例について詳細に説明したが、本発明の技術的思想から逸脱せずに、さまざまの形態が可能であることは、技術に熟練した人たちには理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【図1】マルチウェル骨細胞培養装置の平面図である。
【図2】平坦な基部の一表面を被覆するための浸漬過程を示す図である。
【図3】図2にて被覆した基部を示す図である。
【図4】被覆した基部を加熱炉内で焼結する過程を示す図である。
【図5】上部に均一に焼結された膜被覆を有する基部の平面図である。
【図6】端部が開放したチャンバユニットの被覆基部上への配置を図示し、シーラントを注入するノズルの位置も示す図である。
【図7】マルチウェル骨細胞培養装置の線5−5に沿った断面図である。
【図8】中空端部のマルチチャンバユニットの底面図である。
【図9】膜被覆した基部上に密封されたチャンバの拡大断面図である。
【図10】膜被覆の微多孔質構造上に流動するシーラントを示す図7の拡大断面図である。
【図11】膜被覆した基部からシールの除去を示す図である。
【符号の説明】
10 マルチウェル骨細胞培養装置
12 基部
14 リン酸カルシウム膜
16 基部の片面
18 マルチチャンバユニット
18a 円筒状ユニット
18b 円筒状ユニットの底部分
20 密封装置
22 蓋
22a 蓋の平坦な上部
22b 蓋の側部
22c 蓋の切欠き
24 浸漬投入装置
26 真空パッド
26a 真空パッドの平坦な縁部
28 真空パッドの管
30 容器
32 ゾル・ゲル混合液
34 加熱炉
36 シーラント/シリコン
38a 円筒状チャンバの開口部
38b 円筒状チャンバの開口部
40 注入口
42 密封装置の通路
44 隔離部分
44a 隔離部分の側部
44b 隔離部分の側部
44c 隔離部分の側部
46 ノズル
48 円筒状チャンバの内壁
48a 円筒状チャンバの内壁底部
48b L字形の外壁部分
48c L字形の外壁部分
49a スロット(穴)
49b スロット(穴)
50 円筒状チャンバの内壁
52 開口部
54 円筒状チャンバの内壁
58 収容ウェル
60 単一のユニット(硬化したシリコン)
Claims (8)
- 骨細胞の培養のためにリン酸カルシウム材のでこぼこした表面、再現性のある化学的特性を有する均一な厚みの焼結薄膜をその片面に有する、石英材料の平坦な基部を備えた、
骨細胞の活性を定量的におよび/または定性的に評価するのに使用されるマルチウェル骨細胞培養装置であって、
該装置を覆う透明な蓋を備え、
前記基部の膜被覆上には端部開放のマルチチャンバユニットを有し、
前記マルチチャンバユニットは、共通の側壁で連結された隣接する個々の円筒状チャンバを含み、
前記チャンバの底部が前記膜に対して平たく置かれ、
前記チャンバの底部が、膜表面へ結合し漏洩防止シールを形成し、かつ培養骨細胞のチャンバ間の移動を防止するシーラントを収容する中空の連続的なチャンバを有し、
前記マルチチャンバユニットが、前記膜上の特定の領域を占める膜被覆した基部上に個々のウェルを形成し、
前記膜成分は、異なるウェル間で均一であって、各ウェルの骨細胞活性の容易かつ正確な比較を手助けする
マルチウェル骨細胞培養装置。 - 前記焼結膜を積層した基部が、ガンマ放射線、またはエチレンオキサイド処理から選択される滅菌方法に耐え、その構造的一体性を保持する請求項1に記載のマルチウェル骨細胞培養装置。
- 前記マルチチャンバユニットは、ポリスチレンのような生体適合性、膜適合性、および滅菌性を有するプラスチックである請求項1または請求項2に記載のマルチウェル骨細胞培養装置。
- 請求項1に記載の培養装置を提供する段階と、
前記装置の少なくとも一つのウェルに、所定量の骨細胞を植え付ける段階と、前記細胞を適当な培地内で培養する段階と、
前記基部上の膜成分の顕微鏡検査および/または走査を行い、個々の試料間の膜被覆内部または膜被覆上における変化を検出する段階と
を含む、骨細胞の活性を測定する分析方法。 - 前記顕微鏡検査および/または走査を行う段階が、
前記マルチチャンバユニットを除去するステップ、
前記シールを除去するステップ、および/または
残った細胞を除去するステップからなる
追加のステップを含む請求項4に記載の分析方法。 - 骨細胞活性を測定する定量的側面を決定するための診断用の請求項4に記載の分析方法。
- 請求項1に記載の培養装置を提供する段階と、
前記装置の少なくとも二つのウェルに、所定量の骨細胞を植え付ける段階と、
前記細胞を適当な培地内で培養する段階と、
前記装置の前記ウェルの少なくとも一つに薬剤/化学物質を添加する段階と、 前記基部上の膜成分の顕微鏡検査および/または走査を行い、対照試料と処理した試料間の膜被覆内部または該膜被覆上における変化を検出する段階とを含む骨細胞の活性に対する薬剤/化学物質の効果を測定するための薬剤の検査分析法。 - 前記顕微鏡検査および/または走査を行う段階が、
前記マルチチャンバユニットを除去するステップ、
前記シールを除去するステップ、および
残った細胞を除去するステップからなる
追加のステップを含む請求項7に記載の薬剤の検査分析法。
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