JP3852407B2 - 含液成形多孔体 - Google Patents
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Description
本発明は、含液成形多孔体、特に、ポリテトラフルオロエチレンからなる繊維を利用した含液成形多孔体に関する。
背景技術
従来の軸受として、互いに摺動または転動する部材の間に生じる摩擦を低減するために、これらの部材の間にグリースを介在させたものがある。この軸受では、グリースの潤滑作用により各部材間の摩擦が低減されるが、グリースには増粘剤が添加されているため、冬場等の低温時には粘度が高くなる。このため、軸受の始動抵抗が大きくなり動作不良が起きる場合がある。逆に、グリースの滴点を超える温度では、グリースの粘凋さが失われて軸受から漏洩してしまう。また、グリースの各部材に対する表面洗浄機能は油に比べ劣る。
【0001】
この他の軸受として、グリースの代わりに油を用いたものがあるが、この場合は、グリースに比べ粘度が低いために軸受から漏洩しやすく、油の補給のための給油機構等を設ける必要があり、装置が大がかりになる。
【0002】
さらに他の軸受として、金属に比べ摩擦係数の低い樹脂を用いたものがあるが、低負荷領域においては機能的に優れているものの、負荷が大きくなると発熱して変形劣化を生じる。
【0003】
樹脂を利用した軸受として、樹脂からなる多孔体に油を含浸させてなる軸受または軸受用部材により潤滑作用を得る技術が既に提案されている。
【0004】
この種の軸受として、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂から多孔体を形成したものがあるが、これらの軸受は、高温度雰囲気下では部分的に融解して変形してしまい、軸受として機能し得なくなる場合がある。
【0005】
また、樹脂を利用した他の軸受として、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFE)等のフッ素樹脂に加圧、加熱等を施して得られる多孔体に油を含浸させたものがある。この軸受は、耐熱性、耐薬品性に優れるが、玉軸受、ボールねじ等の、転動体を有する軸受として使用された場合は、転動体の荷重が局部的に軸受にかかるため、荷重に耐えきれずに変形、損傷等する場合がある。
【0006】
このような強度不足が生じる理由の1つとして、以下のことが本発明者らの研究により明らかにされた。すなわち、この軸受の製造において出発原料となる樹脂の形態は粉末または粒子状であるため、これに加圧、加熱等を施すことにより形成される空孔は多孔体中に均一に分散して形成されてしまう。このような多孔体では、密度分布に変化がないために、前述の局部的な荷重に対し弱くなる。
【0007】
そして、このような点に鑑みて、原料となる樹脂の形態を特定の形状に加工するとともに、さらに、このような樹脂の原料に適当な加圧、加熱等の手段を施すことにより、従来の軸受に比べ強度が改善されたものが得られることが本発明者らの研究により見出された。
【0008】
本発明の目的は、外部からの荷重に対する強度が向上されるとともにフッ素樹脂の特性を併せ持つ含液成形多孔体を提供することにある。
発明の開示
請求項1に記載の含液成形多孔体は、成形多孔体と、液剤とを備えている。成形多孔体は、PTFEからなる多数の繊維を含むウェブを加圧加熱成形することにより得られ、繊維同士が熱融着され、多数の空孔を有する。液剤は多数の空孔に含浸される。
【0009】
この含液成形多孔体では、ウェブは、加圧加熱成形されることにより、PTFE繊維同士が熱融着して繊維間に存在する空隙が押し潰されて多数の細かい空孔が形成される。そして、多数の空孔に、潤滑剤、洗浄剤等の各種液剤が含浸されている。また、ウェブは、加圧加熱成形により繊維密度が高い状態で融着されるため、機械的強度が増している。さらに、PTFE繊維は、その製造過程で延伸加工されており、クリープ特性にも優れている特徴を持つ。
【0010】
このような含液成形多孔体を、例えば含油軸受または軸受用部材として使用した場合は、転動体や摺動体からの荷重に対する強度が向上されるとともに、空孔に含浸された潤滑油により各部材間に生じる摩擦を低減することができる。そして、ここでは、フッ素樹脂からなる繊維を含む多孔体が用いられているため、250℃程度の高温度雰囲気下でも溶融変形を起こさず、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂からなる従来の含油多孔体に比べ幅広い温度範囲での使用が可能となる。また、従来の樹脂製含油多孔体に比べ低摩擦の含液成形多孔体が得られる。
【0011】
また、この含液成形多孔体を、例えば玉軸受の鋼球等を保持するリテーナとして使用する場合、成形多孔体に防錆剤を含浸させた場合は、各部材の錆を防止できるとともに、軸受内の汚染物を成形多孔体に付着してなる自己清浄効果が得られる。したがって、ここでは、軸受摺動面上の錆、摩耗粉等が多孔体に取り込まれることにより、軸受の機能不良を抑えることができる。
【0012】
さらに、成形多孔体に薬剤を含浸させて、この薬剤を他の部材に対し供給するための塗布部材として使用した場合は、向上された機械的強度とフッ素樹脂の耐薬品性とにより、塗布される部材に対し摺動させながら薬剤の塗布を行うことができる。
【0013】
請求項2に記載の含液成形多孔体は、請求項1の含液成形多孔体において、成形多孔体は、ガラス繊維からなる基材をさらに有している。ウェブは、基材の表面に交絡により基材と結合して積層されている。
【0014】
この含液成形多孔体では、ウェブと基材とは交絡により結合しているが、加圧加熱成形によりウェブと基材との間に溶融変形が生じ、両者がより強固に結合している。この結果、この成形多孔体では、ウェブのみからなる成形多孔体とは異なる特性を有するようになる。
【0015】
ここでは、このような特性を有するに至った含液成形多孔体をより広い用途に用いることができる。
【0016】
請求項3に記載の含液成形多孔体は、請求項1または2の含液成形多孔体において、ウェブは、PTFEを除くフッ素樹脂からなる繊維をさらに含んでいる。PTFEからなる繊維とPTFEを除くフッ素樹脂からなる繊維とは混紡されている。
【0017】
フッ素樹脂は、融点が高く摩擦係数が低いため、高温度下で使用する軸受または軸受用部品の材質として適している。
【0018】
そこで、この含液成形多孔体では、特に、PTFE繊維と、このPTFE繊維と同様の性質を有する他のフッ素樹脂繊維とを混紡することにより、フッ素樹脂の優れた特性を有する含液成形多孔体が得られるようにしている。
【0019】
請求項4に記載の含液成形多孔体は、請求項1または2の含液成形多孔体において、ウェブは、PTFEを除くフッ素樹脂の粒子をさらに含んでいる。PTFEからなる繊維とフッ素樹脂の粒子とは溶融により接着している。
【0020】
ここでは、PTFEよりも低い溶融温度のフッ素樹脂で、PTFE繊維同士をその溶融温度以下で融着させることにより、フッ素樹脂の優れた特性を有する、より低比重の含液成形多孔体を得ることとしている。
【0021】
請求項5に記載の含液成形多孔体は、請求項1から4のいずれかの含液成形多孔体において、成形多孔体は密度が不均一である。
【0022】
従来の含油多孔体は、原料となる樹脂の形態が粉末であるものを加熱したり、樹脂繊維を単に圧縮させたりする方法により成形されていたため、空孔は多孔体中に概ね均一に分散したものであった。
【0023】
しかし、このような多孔体を軸受等として用いた場合、転動体等からの荷重を受けると、多孔体には局部的に強い力が作用することとなるため、軸受の荷重を受けない部分に比べ、変形、損傷を受けやすい状態にある。
【0024】
本発明者らは、このような点に鑑みて研究を重ねた結果、PTFE繊維を含むウェブを原料として多孔体を成形することにより、特定の部分が他の部分と異なる密度を有する多孔体が得られることを見出した。
【0025】
そこで、ここでは、成形多孔体を密度が不均一になるよう成形したものを対象とし、これにより、局部的な強い荷重を受けても耐え得るようになっている。 また、このような構成により、荷重を受ける部分は高密度に、防錆・潤滑油等を供給させる部分は低密度になるよう成形する等して、所望の機能を備えるよう含液成形多孔体を設計することができる。
【0026】
請求項6に記載の含液成形多孔体は、請求項1から5のいずれかの含液成形多孔体において、液剤は防錆・潤滑剤である。
【0027】
本発明の含液成形多孔体を、例えば軸受等に用いた場合は、潤滑油を含浸させた場合は防錆作用と潤滑作用が得られる。また、防錆・潤滑油を含浸させた成形多孔体は、他の部材に防錆・潤滑油を塗布するため塗布材料等としても利用できる。
【0028】
ここでは、特に、防錆・潤滑油を含浸させたものを対象とし、強度が向上されかつフッ素樹脂の特性を備えた軸受等を得ることとしている。
発明を実施するための最良の形態
[含液成形多孔体]
図1に本発明の一実施形態が採用された含液成形多孔体1を示す。
【0029】
含液成形多孔体1は、成形多孔体3と、液剤とを含んでいる。
【0030】
成形多孔体3は、PTFEからなる繊維(ステープルファイバー)が多数集合してなるウェブ5を有している。ウェブ5に用いられるステープルファイバーとしては、テトラフルオロエチレン(以下、TFE)を乳化重合して得られる水性分散体をエマルジョン紡糸工程、焼成工程を経て得られたもの、PTFEフィルムを焼成工程、延伸工程、擦過工程等を経て得たもの、またはPTFEフィルムを焼成工程、延伸工程、スプリット工程、裁断工程等を経て得たもの等が挙げられる。
【0031】
また、ステープルファイバーは、分枝、ループ等を有するものが交絡性、耐脱毛性に優れるため、これらが生じるような製法により得られるのが好ましい。このため、PTFEフィルムから焼成工程、延伸工程、高速で回転する針刃ロールによる擦過、解繊工程等を経て得られるものが好ましい。
【0032】
ウェブ5は、ステープルファイバーの他に、PTFE以外のフッ素樹脂からなる繊維をさらに含んでいてもよい。この場合、ステープルファイバーとフッ素樹脂からなる繊維とは混紡されるのが好ましい。また、ウェブ5は、PTFE以外のフッ素樹脂の粒子をさらに含んでいてもよい。この場合、ステープルファイバーとフッ素樹脂粒子とは溶融により互いに付着しているのが好ましい。例えば、PTFEの融点と異なる融点を有するフッ素樹脂を、ステープルファイバーの集合体(PTFEウェブ)に部分的に含浸させ、低圧下で加熱してウェブと樹脂との融着を行うことにより、単一種のフッ素樹脂繊維から成形する場合に比べより密度の低い多孔体を得ることができる。
【0033】
また、ウェブ5は、ステープルファイバーの他に、無機繊維をさらに含んでいてもよい。この場合、ステープルファイバーと無機繊維とは混紡されるのが好ましい。なお、上述のPTFE以外のフッ素樹脂繊維,フッ素樹脂粒子及び無機繊維はそれぞれ、単体でウェブ5に含まれてもよく、組み合わせてウェブ5に含まれてもよい。
【0034】
PTFEウェブは、単に積層されただけの状態では繊維間に空隙が存在しているが、加圧加熱成形が施されることにより、繊維密度が高くなった状態で繊維同士が部分的に熱融着されて、ウェブ5中の空隙は押し潰されて、部分的に連続した多数の細かい空孔が形成される。ここでの加圧加熱成形は、繊維密度が増して十分な強度、形態安定性が得られる程度にかつ多数の空孔が潰れない程度の条件で行われる。
【0035】
このように構成されたウェブ5では、ウェブを構成する短繊維がウェブ平面に概略積層された状態にある。これにより、ウェブ5を加圧加熱成形する場合、内部の短繊維は、加圧方向には密度変化する分移動するが、これと垂直な方向には動きにくい性質を有している。このため、ウェブ5に対し、例えば垂直方向から荷重を与えた場合、樹脂の粉末の集合体に同様な力を与えた場合とは異なり、荷重の大きさに応じて垂直方向(ウェブ5の厚み方向)に繊維密度が変化するようになる。
【0036】
このようなウェブの性質により、本発明の成形多孔体3は、加圧加熱成形の際に、繊維密度が均一または不均一のいずれにもなるよう成形することが可能である。例えば、成形多孔体3は、軸受または軸受用部品のように局部的に受ける荷重が大きい部材として用いられるよう成形するために、荷重を受ける部分を高密度に成形し、他の部分は潤滑作用を得るに十分な量の潤滑油を含浸できるよう低密度に成形することが可能である。
【0037】
また、成形多孔体3は、図2に示すように、ガラス繊維、不織布等の繊維や、金属製の多孔体からなる基材7をさらに有していてもよい。ここでは、ウェブ5は、基材7の表面に交絡により基材7と結合して積層されている。交絡の方法としては、ウォータージェットニードル、ニードルパンチ等の周知の方法が用いられる。基材7は1またはそれ以上の層から構成されうる。基材が複数の層からなる場合、ウェブ5と接する層は、ガラス繊維、不織布等の繊維や、金属製の多孔体等の、ウェブ5が交絡により結合可能な層である。他の層は、特に限定されるものではない。例えば、他の層として液剤を透過させない層を選択することにより、ウェブ5に含浸させた液剤の漏れを防止できる。基材7を構成する複数の層を結合させる方法は特に限定されるものではなく、例えば、その材質等に適した接着剤の使用等が挙げられる。
【0038】
液剤は、成形多孔体3の空孔に含浸される液体であり、含液成形多孔体1の用途に応じた機能を有するものが適宜用いられる。例えば、含液成形多孔体1が軸受等の構成部材として用いられる場合は、液剤として、潤滑油、洗浄剤、防錆油等を用いることができる。具体的には、シリコンオイル、フッ素オイル、エステル油等の合成油や鉱油が挙げられる。これらの潤滑油には、焼き付き防止のために、通常の極圧添加剤が添加されてもよい。
【0039】
また、含液成形多孔体1が、例えば種々の液状の薬剤を所定の対象物に塗布するための塗布部材として用いられる場合は、液剤として、潤滑油、塗料、溶剤、接着剤、表面処理剤等を用いることができる。
【0040】
これらの液剤は、単独で用いてもよく、互いに悪影響を及ぼさない程度で併用してもよい。
【0041】
[直動軸受・ボールねじ用軸受の含油スペーサ]
ここでは、上述の含液成形多孔体1を、直動軸受やボールねじの軸受部分の含油スペーサ21として用いる場合について説明する。
【0042】
図3に、含油スペーサ21の製造工程を簡単に示す。
【0043】
この含油スペーサ21を製造する場合は、まず、フッ素樹脂フィルムから解繊により得られたウェブを所定の厚みに積層する。次に、この積層体29を、凸状部26aを有する2つのヒータ26により上下両側から狭持するよう押圧することにより、加圧加熱成形を行う。得られた成形多孔体(スペーサ)23に、潤滑油を含浸させて含油スペーサ21を得る。
【0044】
従来のように樹脂の粉末に圧縮成形を施す技術では、上述のような凸状部分を有する金型により成形を行った場合、金型で押圧される際に、樹脂粉末は、凸状部分の先端部と外縁部とでの成形圧が等しくなるように、金型内を移動する。このため、密度変化のついた成形多孔体23を得にくく、また、溶融時に収縮変形して破損する場合がある。
【0045】
しかし、この含油スペーサ21の成形では、各ウェブは、概ね同一平面方向を向いて積層されているため、溶融温度付近において、厚み方向には収縮しにくく主に水平方向に収縮する。これにより、積層体29は、ヒータ26の凸状部26aの先端部に当接される部分は、繊維密度が高くなり、この高密度の状態で繊維同士の融着が促進される。この結果、この部分の密度は他の部分の密度より大きくなり、スペーサ23の機械的強度が増大する。
【0046】
このように含油スペーサ21の作製に繊維形状であるウェブを用いることで、例えば、軸受の鋼球から荷重による変形を抑えたい部分に対しては高密度に、また、外縁部は潤滑油を十分に含浸できるよう低密度に成形し、強度が向上されかつ十分な潤滑作用が得られる含油スペーサ21を得ることができる。また、ウェブを用いて含油スペーサ21を作製することで、成形時の収縮割れ等を抑えることができる。
【0047】
さらに、この含油スペーサ21では、潤滑油に増粘剤を添加せずに済むため、軸受の回転抵抗等が低減され、特に低温時の始動抵抗の低減を図ることができる。また、この含有スペーサ21は、耐熱性に優れたPTFEウェブを含んでいるため、250℃程度の高温度雰囲気下での使用にも耐えられる。
【0048】
[玉軸受の含油リテーナ]
ここでは、含液成形多孔体1を、玉軸受の含油リテーナ31として用いる場合について説明する。
【0049】
図4及び図5に、含油リテーナ31を備えた玉軸受30の断面図を示す。
【0050】
この含油リテーナ31を製造する場合は、まず、フッ素樹脂フィルムから解繊により得られた繊維からなるウェブを、円筒形状に成形してフェルト状の円筒状積層体を得る。次に、この円筒状積層体を、加圧下で融点前後の温度まで加熱してウェブを収縮させ所定の強度を有する円筒状多孔体を得る。この円筒状多孔体を軸方向に所定間隔ごとに切り出し円環状多孔体を得る。そして、この円環状多孔体に、円周方向の等間隔位置に放射状に延びる、鋼球32の保持孔34を形成するリテーナ3を得る。最後に、このリテーナ33に潤滑油を含浸させて含油リテーナ31を得る。なお、ここでは、リテーナ33の強度を高めるために、フッ素樹脂に無機繊維を混紡してなるウェブを使用してもよい。
【0051】
この含油リテーナ31では、上述の含油スペーサ21と同様の作用効果が得られるが、特に、隣接する鋼球32の間に配置されることで軸受30の作動により発生する運転音を低減することができ、また、鋼球32同士が接触することがないため、摺動抵抗の低減を図ることもできる。
【0052】
さらに、ここでは、軸受30内に塵埃物質が発生した場合、軸受30の作動により塵埃物質がリテーナ31に捕集されるため、軸受30の自己清浄効果が得られる。
【0053】
[フラットケージの含油ニードルローラ保持部材]
ここでは、含液成形多孔体1を、フラットケージにおけるニードルローラ等の転動体を保持するための含油保持部材41として用いる場合について説明する。
【0054】
図6及び図7に、含油保持部材41を備えたフラットケージ40を示す。
【0055】
この含油保持部材41は、上述の含油スペーサ21及び含油リテーナ31と同様に、フッ素樹脂のウェブに加圧加熱成形を施すことにより得ることができるが、ここでは、成形の際にニードルローラ42を保持するための保持孔44を設けてフラットケージ保持部材43を得る。そして、フラットケージ保持部材43に潤滑油を含浸させて含油保持部材41を得る。なお、この含油保持部材41では、強度を持たせるために、金属製の多孔板を基材7として用い、これにウェブを交絡させたものを成形してもよい。
【0056】
この含油保持部材41でも、上述の含油スペーサ21及び含油リテーナ31と同様の作用効果が得られ、特に、二―ドルローラ42が当接する摺動部材(図示せず)に対して摺動する際に、潤滑、清浄作用が得られる。
【0057】
[含油摺動部材]
ここでは、含液成形多孔体1を軸受等の隣接する金属部材間に配置される含油摺動部材として用いる場合について説明する。
【0058】
この含油摺動部材も、上述の含油スペーサ21等と同様に、フッ素樹脂のウェブに加圧加熱成形を施すことにより得られるが、ここでは、成形により得られた成形多孔体に防錆油を含浸させ、これにより、摺動面での防錆を図り、長時間の摺動性能維持を図ることとしている。ここで用いられる防錆油としては、フッ素系オイル、シリコン系オイル、エステル系油、グリコール系油、オレフィン系油等が挙げられる。
【0059】
なお、ウェブ5の成形により得られる成形多孔体は、強度がより増したものとするために、複数のウェブ5を積層させたものであってもよい。また、摺動面となる部分は、フッ素樹脂であればよく、厚肉である場合には摺動面の部分以外は別の材質からなるものであってもよい。さらに、成形多孔体は、PTFEウェブとガラス繊維等の他の繊維との複層体を成形してなるものであってもよい。
【0060】
ここでも、上述の含油スペーサ21等と同様の作用効果が得られ、特に、加圧方向に弾性率が低くかつ多数の空孔を有する摺動部材が得られるため、耐食性の低い相手部材にも適用できる。例えば、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)やテトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等の溶融樹脂の濃縮液に、PTFEウェブを浸漬し、乾燥させることによりウェブ表面に溶融樹脂を付着させ、これをPTFEの融点以下の温度(280〜320℃)で加圧加熱成形することにより低密度多孔体が得られる。
【0061】
[含液塗布部材]
含液成形多孔体は、上記の様な用途以外に、種々の用途に応じた液剤を供給するための含液塗布部材としても、利用可能であり、以下にその例を説明する。
【0062】
この含液塗布部材も、上述の含油スペーサ21等と同様に、フッ素樹脂のウェブを加圧加熱成形することにより得られるが、成形多孔体の密度は、成形温度,成形圧力,成形多孔体を構成するウェブの材質及び積層形態(単独か複層か)を適宜組み合わせることにより設定される。成形多孔体に含浸させる液剤としては、潤滑油、染料系塗料、炭化水素系、塩素系、芳香族系の溶剤、エッチング用腐食液、アルカリ洗浄液、酸洗浄液が挙げられる。
【0063】
このような含液塗布部材を用いて各種液剤を塗布する場合は、塗布対象液剤を含浸させた成形多孔体を、塗布される部材の塗布面に当接させるか、成形多孔体内部に液剤を加圧供給することにより行う。
【0064】
この含液塗布部材は、成形多孔体の多孔性とフッ素樹脂の非粘着性及び低摩擦性とを利用して各種液剤の塗布に適した部材となる。
産業上の利用可能性
本発明によれば、PTFE繊維を含むウェブが加圧加熱成形されることにより、多数の細かい空孔が形成され、機械的強度が増大した成形多孔体が得られる。そして、この成形多孔体に潤滑油等の各種液剤を含浸させることにより、フッ素樹脂の低摩擦性、耐熱性、耐薬品性等の性質と、潤滑油による防錆・潤滑作用とを併せ持つ優れた含液成形多孔体が得られる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の一実施形態が採用された含液成形多孔体を示す断面図である。
図2は、本発明の他の一実施形態が採用された含液成形多孔体を示す断面図である。
図3は、本発明の一実施形態が採用された含油スペーサの製造工程の説明図である。
図4は、本発明の一実施形態が採用された含油リテーナを備えた玉軸受を示す部分断面図である。
図5は、前記玉軸受を示す軸方向断面図である。
図6は、本発明の一実施形態が採用された含油保持部材を示す正面図である。
図7は、前記含油保持部材の断面図である。
Claims (6)
- ポリテトラフルオロエチレンからなる多数の繊維を含むウェブを加圧加熱成形することにより得られ、前記繊維同士が熱融着され、多数の空孔を有する成形多孔体と、
前記多数の空孔に含浸される液剤と、
を備えた含液成形多孔体。 - 前記成形多孔体は、ガラス繊維からなる基材をさらに有し、前記ウェブは、前記基材の表面に交絡により前記基材と結合して積層されている、請求項1に記載の含液成形多孔体。
- 前記ウェブは、ポリテトラフルオロエチレンを除くフッ素樹脂からなる繊維をさらに含んでおり、前記ポリテトラフルオロエチレンからなる繊維と前記ポリテトラフルオロエチレンを除くフッ素樹脂からなる繊維とは混紡されている、請求項1または2に記載の含液成形多孔体。
- 前記ウェブは、ポリテトラフルオロエチレンを除くフッ素樹脂の粒子をさらに含んでおり、前記ポリテトラフルオロエチレンからなる繊維と前記フッ素樹脂の粒子とは溶融により付着している、請求項1または2に記載の含液成形多孔体。
- 前記成形多孔体は密度が不均一である、請求項1から4のいずれかに記載の含液成形多孔体。
- 前記液剤は防錆・潤滑剤である、請求項1から5のいずれかに記載の含液成形多孔体。
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