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JP3857652B2 - 歪補償装置 - Google Patents
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JP3857652B2 - 歪補償装置 - Google Patents

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Description

技術分野
本発明は歪補償装置に係わり、特に電力増幅器とフィードバックループで生じる遅延時間を,信号ノイズ比SNR(Signal Noise Ratio)あるいは隣接チャネル漏洩電力比ACLR(Adjacent Channel Power Ratio)あるいはノイズレベルPn等から求め、該遅延時間に基づいて歪補償装置各部におけるタイミングを制御する機能を備えた歪補償装置に関する。
背景技術
近年周波数資源が逼迫し、無線通信に於いてディジタル化による高能率伝送が多く用いられるようになってきた。無線通信に多値位相変調方式を適用する場合、送信側特に電力増幅器の増幅特性を直線化して非線型歪を抑え、隣接チャネル漏洩電力を低減する技術が重要であり、また線型性に劣る増幅器を使用し電力効率の向上を図る場合はそれによる歪発生を補償する技術が必須である。
図26は従来の無線機における送信装置の一例を示すブロック図であり、送信信号発生装置1はシリアルのディジタルデータ列を送出し、シリアル/パラレル変換器(S/P変換器)2はディジタルデータ列を1ビットづつ交互に振り分けて同相成分信号(I信号:In−phase component)と直交成分信号(Q信号:Quadrature component)の2系列に変換する。DA変換器3はI信号、Q信号のそれぞれをアナログのベースバンド信号に変換して直交変調器4に入力する。直交変調器4は入力されたI信号、Q信号(送信ベースバンド信号)にそれぞれ基準搬送波とこれを90°移相した信号を乗算し、乗算結果を加算することにより直交変換を行って出力する。周波数変換器5は直交変調信号と局部発振信号をミキシングして周波数変換し、送信電力増幅器6は周波数変換器5から出力された搬送波を電力増幅して空中線(アンテナ)7より空中に放射する。
W−CDMA及びPDC(Personal Digital Cellular)等の移動通信において、送信装置の送信電力は10mW〜数10Wと大きく、送信電力増幅器6の入出力特性(歪関数f(p))は図27(a)の点線で示すように非直線性になる。この非直線特性により非線形歪が発生し、送信周波数f周辺の周波数スペクトラムは図27(b)の実線に示すようにサイドローブが持ち上がり、隣接チャネルに漏洩し、隣接妨害を生じる。すなわち、非線形歪により(b)に示すように送信波が隣接周波数チャネルに漏洩する電力が大きくなってしまう。漏洩電力をACLR(Adjacent Channel Leakage Ratio)として説明するが、通常のACPR(Adjacent Channel Power Ratio)と同じである。ACLRは図27(b)の1点鎖線Aと1点鎖線A′間のスペクトラムの面積である着目チャネルの電力と1点鎖線A,A′と2点鎖線B,B′間の隣接チャネルに漏れるスペクトラムの面積である隣接漏洩電力の比である。このような漏洩電力は、他チャネルに対して雑音となり、そのチャネルの通信品質を劣化させてしまう。よって、厳しく規定されている。
漏洩電力は、例えば電力増幅器の線型領域(図27(a)参照)で小さく、非線形領域で大きくなる。そこで、高出力の送信電力増幅器とするためには、線形領域を広くする必要がある。しかし、このためには実際に必要な能力以上の増幅器が必要となり、コスト及び装置サイズにおいて不利となる問題がある。
また、通常の増幅器では、線形領域での電力負荷効率は図28に示すように低く、非線形領域で大きくなる。ここで電力負荷効率とは、アンプの定格電力に対する入力電力Pinと出力電力Poutの差(Pin−Pout)の割合(%)であり、熱になる分である。よって、必要な送信電力を得るには非線形領域では大きな消費電力が必要となってしまい、しかも、前述のように歪が増加し、ACLRを劣化させてしまう。この状況に対して送信電力の歪を補償し、電力負荷効率の良い領域での増幅器の使用を実現するものが歪補償機能つきの無線装置(リニアライザ)である。
図29はDSPを用いたディジタル非線形歪補償機能を備えた送信装置のブロック図である。送信信号発生装置1から送出されるディジタルデータ群(送信信号)は、S/P変換器2においてI信号、Q信号の2系列に変換されてDSPで構成される歪補償部8に入力される。歪補償部8は機能的に図30に示すように、送信信号x(t)のパワーレベル0〜1023に応じた歪補償係数h(pi)(i=0〜1023)を記憶する歪補償係数記憶部8a、送信信号レベルに応じた歪補償係数h(pi)を用いて該送信信号に歪補償処理(プリディストーション)を施すプリディストーション部8b、送信信号x(t)と後述する直交検波器で復調された復調信号(フィードバック信号)y(t)を比較し、その差が零となるように歪補償係数h(pi)を演算、更新する歪補償係数演算部8cを備えている。
歪補償部8は送信信号x(t)のパワーレベルに応じた歪補償係数h(pi)を用いて該送信信号にプリディストーション処理を施し、DA変換器3に入力する。DA変換器3は入力されたI信号とQ信号をアナログのベースバンド信号に変換して直交変調器4に入力する。直交変調器4は入力されたI信号、Q信号にそれぞれ基準搬送波とこれを90°移相した信号を乗算し、乗算結果を加算することにより直交変換を行って出力する。周波数変換器5は直交変調信号と局部発振信号をミキシングして周波数変換し、送信電力増幅器6は周波数変換器5から出力された搬送波信号を電力増幅して空中線(アンテナ)7より空中に放射する。
送信信号の一部は方向性結合器9を介して周波数変換器10に入力され、ここで周波数変換されて直交検波器11に入力される。直交検波器11は入力信号にそれぞれ基準搬送波とこれを90°移相した信号を乗算して直交検波を行い、送信側におけるベースバンドのI、Q信号を再現してAD変換器12に入力する。AD変換器12は入力されたI,Q信号をディジタルに変換して歪補償部8に入力する。歪補償部8はLMS(Least Mean Square)アルゴリズムを用いた適応信号処理により歪補償前の送信信号と直交検波器11で復調されたフィードバック信号を比較し、その差が零となるように歪補償係数h(pi)を演算、更新する。ついで、次の送信すべき送信信号に更新した歪補償係数を用いてプリディストーション処理を施して出力する。以後、上記動作を繰り返すことにより、送信電力増幅器6の非線形歪を抑えて隣接チャネル漏洩電力を低減する。
図31は適応LMSによる歪補償処理の説明図である。15aは送信信号x(t)に歪補償係数hn−1(p)を乗算する乗算器(図30のプリディストーション部8bに対応)、15bは歪関数f(p)を有する送信電力増幅器、15cは送信電力増幅器からの出力信号y(t)を帰還する帰還系、15dは送信信号x(t)のパワーp(=x(t))を演算する演算部(振幅−電力変換部)、15eは送信信号x(t)の各パワーに応じた歪補償係数を記憶する歪補償係数記憶部(図30の歪補償係数記憶部8aに対応)であり、送信信号x(t)のパワーpに応じた歪補償係数hn−1(p)を出力すると共に、LMSアルゴリズムにより求まる歪補償係数h(p)で歪補償係数hn−1(p)を更新する。
15fは共役複素信号出力部、15gは送信信号x(t)と帰還復調信号y(t)の差e(t)を出力する減算器、15hはe(t)とu(t)の乗算を行う乗算器、15iはhn−1(p)とy(t)の乗算を行う乗算器、15jはステップサイズパラメータμを乗算する乗算器、15kはhn−1(p)とμe(t)u(t)を加算する加算器、15m,15n、15pは遅延部であり、送信信号x(t)が入力してから帰還復調信号y(t)が減算器15gに入力するまでの遅延時間を入力信号に付加する。15f、15h〜15jは回転演算部16を構成する。u(t)は歪を受けた信号である。上記構成により、以下に示す演算が行われる。
(p)=hn−1(p)+μe(t)u(t)
e(t)=x(t)−y(t)
y(t)=hn−1(p)x(t)f(p)
u(t)=x(t)f(p)=h n−1(p)y(t)
P=|x(t)|
ただし、x,y,f,h,u,eは複素数、*は共役複素数である。上記演算処理を行うことにより、送信信号x(t)と帰還復調信号y(t)の差e(t)が最小となるように歪補償係数h(p)が更新され、最終的に最適の歪補償係数値に収束し、送信電力増幅器の歪が補償される。
図32はx(t)=I(t)+jQ(t)として表現した送信装置の全体の構成図であり、図29、図31と同一部分には同一符号を付している。
以上のように、ディジタル非線形歪補償方式は、送信信号を直交変調して得られる搬送波を帰還検波し、送信信号と帰還信号の振幅をディジタル変換して比較し、比較結果に基づいて歪補償係数をリアルタイムに更新するという原理である。この非線形歪補償方式によれば、歪を減少でき、その結果、高出力で非線形領域での動作でも漏洩電力を低く抑え、かつ、電力負荷効率を改善することが可能となる。
ところで、歪補償装置の各遅延回路15m,15n,15pに設定する遅延時間Dは送信電力増幅器15bにおける遅延時間をD、帰還系15cの遅延時間をDとすれば、次式
D=D+D
を満足するように設定する必要がある。この遅延時間Dを正しく設定できないと歪補償機能が有効に動作せず、遅延時間の設定誤差が大きくなるほどサイドローブが持ち上がって隣接チャネルへの漏洩電力が大きくなる。
電力増幅器15bや帰還系15cに用いられるフィルタ等のデバイスには個体差や経年変化があり、トータルの遅延時間Dが変動する。このため、従来は送信装置毎に各遅延回路15m,15n,15pに設定する遅延時間を遅延時間調整スイッチ等を用いて手動で調整しており、遅延時間調整作業が煩雑となり、しかも、高精度の調整ができない問題があった。
以上から本発明の目的は、自動的に遅延時間を高精度に決定し、該遅延時間を遅延回路に設定できるようにすることである。
本発明の別の目的は、正確な遅延時間を用いることにより良好な歪補償を行えるようにし、しかも、送信電力増幅器の電力負荷効率を改善し、低消費電力化を可能にすることである。
本発明の別の目的は、電力負荷効率を改善して発熱量を削減し、これにより、発熱対策を軽減し、かつ、装置の規模を削減することである。
発明の開示
本発明の第1は、歪補償係数を用いて入力信号に歪補償処理を施して歪デバイスに入力し、歪補償前の入力信号と歪デバイスの出力側からフィードバックされるフィードバック信号とに基づいて歪補償係数を演算し、演算された歪補償係数を入力信号に対応させて記憶する歪補償装置において、(1)フィードバック信号をAD変換し、(2)該AD変換出力に高速フーリエ変換(FFT)を施し、(3)FFT演算結果を用いて信号ノイズ比SNRあるいは隣接チャネル漏洩電力比ACLRあるいはノイズレベルPnのいずれかの値を計算し、(4)現時刻における前記計算値と1つ前の時刻における前記計算値の差が零あるいは閾値以下となるようにを歪デバイスとフィードバックループで生じる遅延時間を調整し、(5)この調整処理を繰り返して正確な遅延時間を決定し、該遅延時間に基づいて歪補償装置各部のタイミング合わせを行う。
本発明の第2は、歪補償係数を用いて入力信号に歪補償処理を施して歪デバイスに入力し、歪補償前の入力信号と歪デバイスの出力側からフィードバックされるフィードバック信号とに基づいて歪補償係数を演算し、演算された歪補償係数を入力信号に対応させて記憶する歪補償装置において、(1)フィードバック信号をAD変換し、(2)該AD変換出力に高速フーリエ変換(FFT)を施し、(3)FFT演算結果に基づいて信号ノイズ比SNRあるいは隣接チャネル漏洩電力比ACLRあるいはノイズレベルPnのいずれかの値を計算し、(4)現時刻における前記計算値と1つ前の時刻における前記計算値の差が零あるいは閾値以下となるようにAD変換部のクロックタイミングを調整する。
本発明の第3は、歪補償係数を用いて入力信号に歪補償処理を施して歪デバイスに入力し、歪補償前の入力信号と歪デバイスの出力側からフィードバックされるフィードバック信号とに基づいて歪補償係数を演算し、演算された歪補償係数を入力信号に対応させて記憶する歪補償装置において、(1)少なくとも隣接チャネルの周波数帯域を通過帯域とすると共に、前記フィードバック信号が入力されるバンドパスフィルタを設け、(2)該バンドパスフィルタの出力より隣接チャネルの電力を含む雑音電力を検出し、(3)現時刻における雑音電力と1つ前の時刻における雑音電力の差が零あるいは閾値以下となるようにを歪デバイスとフィードバックループで生じる遅延時間を調整し、(4)この調整処理を繰り返して正確な遅延時間を決定し、該遅延時間に基づいて歪補償装置各部のタイミング合わせを行う。
以上の第1〜第3の発明によれば、歪補償装置における送信信号とフィードバック信号のタイミングを精度良くかつ自動的に合わせることができ、これにより、歪補償の精度を向上でき、しかも、歪補償を安定に動作させることができる。また、送信電力増幅器の電力負荷効率を改善することができ、低消費電力化が可能となる。さらに、電力負荷効率の改善により、発熱量を削減でき、発熱対策を軽減でき、この結果、装置の規模を削減することができる。
発明を実施するための最良の形態
(A)本発明の原理
歪補償装置において、各遅延回路15m,15n,15p(図31参照)に設定する遅延時間Dを正確に設定できないと、図1の点線で示すようにサイドローブが持ち上がって隣接チャネルへの漏洩電力が大きくなる。各遅延回路に設定する遅延時間の誤差と、隣接チャネル電力比ACLRあるいは信号ノイズ比SNRあるいは有効ビット長(以後ENOB:Effective Number of Bit)あるいは帯域外のノイズレベルPnとの間には相関がある。隣接チャネル電力比ACLRは図2に示すように送信信号の周波数チャネルにおける電力(信号電力)Psと隣接チャネルの電力P11,P21、次隣接チャネルの電力P12,P22の比であり、信号ノイズ比SNRは信号電力Psと雑音電力(P11,P21,P12,P22...)の比、ENOBはSNRより一義的に求まる値、ノイズレベルPnは前記雑音電力である。
以上より、これらの1つを測定し、その値が最小となるように、あるいはその値がもはや変化しなくなるまで、遅延時間を調整すれば、その時の遅延時間が送信電力増幅器とフィードバックループにおけるトータルの正確な遅延時間となり、この遅延量を用いることにより良好な歪み補償を行え、増幅器の電力負荷率効率が改善され、低消費電力化が可能となる。また、電力負荷効率の改善により、発熱量が削減でき、発熱対策が軽減し、装置の規模も削減できる。
(B)第1実施例
(a)全体の構成
図1は本発明の第1実施例の構成図であり、21はディジタルの送信信号x(t)に歪補償係数h(p)を乗算してプリディストーション処理を施す乗算器、22は送信信号をアナログに変換するDA変換器、23は送信電力増幅器、24は送信信号の一部を抽出する方向結合器、25は送信電力増幅器からの出力信号を帰還する帰還系、26はアナログの送信信号をディジタルに変換するAD変換器、27は送信信号x(t)とフィードバック信号y(t)の差e(t)を出力する減算器、28〜30は送信信号x(t)が入力してからフィードバック信号y(t)が減算器26に入力するまでの遅延時間を各部信号に付加する遅延部、31は送信信号x(t)のパワーp(=x(t))を演算する演算部(振幅−電力変換部)、32は送信信号x(t)の各パワーに応じた歪補償係数を記憶する歪補償係数記憶部(歪補償テーブル)であり、送信信号x(t)のパワーpに応じた歪補償係数h(p)を出力すると共に、LMSアルゴリズムにより求まる歪補償係数h(p)で更新されるもの、33は歪補償信号生成部であり、LMSアルゴリズムを用いた適応信号処理により歪補償前の送信信号とフィードバック信号の差が零となるように歪補償係数h(p)を演算して歪補償テーブル32の内容を更新するもの、41は遅延部28〜30に設定する遅延時間を調整するタイミング調整部であり、高速フーリエ変換(FFT)によりACLRを算出して遅延時間を調整する。
タイミング調整部41において、FFT演算部42はAD変換器26から出力するN(=1024)ポイントのAD変換出力データ(サンプリング時刻t〜t1023のデータ)を蓄積し、高速フーリエ変換を行う。このFFT演算により、サンプリング周期をΔtとすれば、周波数Δf(=1/Δt・N)間隔でN/2(=512)個のスペクトラムが得られる。ACLR算出部 43はFFT演算部42から出力するスペクトラムを用いてACLRを算出する。すなわち、送信信号の周波数チャネルの帯域に属するスペクトルを合計して信号成分の電力Ps(図2参照)を算出すると共に、隣接チャネルまたは次隣接チャネルの周波数帯域に属するスペクトルを合計して、隣接チャネル漏洩電力P11または次隣接チャネル漏洩電力P12を算出する。ついで、次式を用いて時間tにおける隣接チャネル漏洩電力比(ACLR1またはACLR2)を算出する。
ACLR1=P11/Ps 隣接チャネル漏洩電力比 (1)
ACLR2=P12/Ps 次隣接チャネル漏洩電力比 (2)
なお、以後これらを単にACLRと総称する。ただし、ACLRとしてACLR1あるいはACLR2を採用することができ、更には、高周波側の隣接チャネル漏洩電力P21、P22を用いてACLRを算出することもできる。
遅延量調整部44は、今回のACLRとメモリ45に保存されている前回のACLRを比較し、比較結果に基づいて遅延時間を増減し、以後、この遅延時間調整処理を繰り返して正確な遅延時間を決定し、該遅延時間を遅延部28〜30に設定する。
(b)遅延時間決定処理
図4は第1実施例のタイミング調整部41の遅延時間決定処理フローである。
AD変換器26から出力する1024ポイントのフィードバック信号を蓄積し(ステップ101)、FFT演算により所定周波数間隔でスペクトルを求め、該スペクトルを用いて送信信号電力Ps、隣接チャネル電力P11を測定し(ステップ102〜103)、(1)式により今回のACLRを測定する(ステップ104)。
ついで、今回のACLRと前回のACLRt−1の差δを計算する(ステップ105)。ここで、今回の時間tにおける遅延量をDとし、前回の時間t−1における遅延量をDt−1とするとき、
>Dt−1 (3)
が成立するかチェックする(ステップ106)。成立すれば、δの正負を判別する(ステップ107)。
δ<0であれば、遅延時間を増加したとき(D>Dt−1)、隣接チャネル漏洩電力ACLRが減少して改善されたことになる。かかる場合は、遅延量Dを1増加してDt+1とし各遅延部28〜30に設定する(Dt+1=Dt+1、ステップ108)。ついで、今回のACLRをACLRt−1とし(ACLRt−1=ACLR、ステップ109)、はじめに戻り以降の処理を繰り返す。
ステップ107において、δ>0であれば、遅延時間を増加したとき(D>Dt−1)、隣接チャネル漏洩電力ACLRが増加してしまい劣化されたことになる。かかる場合、遅延量Dを1減少してDt+1とし各遅延部28〜30に設定する(Dt+1=D−1、ステップ110)。ついで、今回のACLRをACLRt−1とし(ACLRt−1=ACLR、ステップ111)、はじめに戻り以降の処理を繰り返す。
又、ステップ107において、δ=0であれば、もはやACLRを改善できないから、次回の遅延時間Dt+1を今回の遅延時間Dとし(Dt+1=D、ステップ112)、遅延時間調整処理を終了する。
一方、ステップ106において、
>Dt−1
が成立せず、D<Dt−1であれば、δの正負を判別する(ステップ113)。δ<0で負であれば、遅延時間を減少したとき(D<Dt−1)、隣接チャネル漏洩電力ACLRが減少して改善されたことになる。かかる場合は、遅延量Dを1減少してDt+1とし各遅延部28〜30に設定する(Dt+1=D−1、ステップ114)。ついで、今回のACLRをACLRt−1とし(ACLRt−1=ACLR、ステップ115)、はじめに戻り以降の処理を繰り返す。
ステップ113において、δ>0で正であれば、遅延時間を減少したとき(D<Dt−1)、隣接チャネル漏洩電力ACLRが増加してしまい劣化したことになる。かかる場合、遅延量Dを1増加してDt+1とし各遅延部28〜30に設定する(Dt+1=D+1、ステップ116)。ついで、今回のACLRをACLRt−1とし(ACLRt−1=ACLR、ステップ117)、はじめに戻り以降の処理を繰り返す。
又、ステップ113において、δ=0であれば、もはやACLRを改善できないから、次回の遅延時間Dt+1を今回の遅延時間Dとし(Dt+1=D、ステップ112)、遅延時間調整処理を終了する。
以上をまとめると、D>Dt−1であれば以下の関係式
if ACLR>ACLRt−1 then Dt+1<D (4a)
if ACLR=ACLRt−1 then Dt+1=D (5a)
if ACLR<ACLRt−1 then Dt+1>D (6a)
になる。又、D<Dt−1であれば以下の関係式
if ACLR>ACLRt−1 then Dt+1>D (4b)
if ACLR=ACLRt−1 then Dt+1=D (5b)
if ACLR<ACLRt−1 then Dt+1<D (6b)
になる。これらの動作を繰り返すと、最終的に(5a),(5b)式の状態となり、最もACLRが良い最適な遅延量Doptを導くことができる。この値を遅延部28〜30に設定して歪補償処理を実行すると歪が減少し図27(b)の点線で示すようなスペクトラムとすることができる。これにより増幅器の電力負荷効率を改善することができて、低消費電力化が可能となる。さらに、電力負荷効率の改善により、発熱最が削減でき、発熱対策が軽減する。この結果、装置の規模も削減することができる。
なお、初期値については、遅延量を0としてもよいし、ある一定値を設定してもよい。また、実際のACLR1は高周波側(ACLR1+)及び低周波側(ACLR1−)の2種類あり、同様にACLR2についてもACLR2+、ACLR2−の2種類がある。そこで、ACLR+、ACLR1−の平均値をACLRとして採用してもよい。また、ACLR1とACLR2に対して重み付けを行ってACLRとすることもできる。
また、上述の遅延制御において、送信信号x(t)に変調波を用いた場合は、上述のように隣接チャネル漏洩電力比ACLRに基づいて遅延時間決定制御を行い、送信信号x(t)に連続波CWを用いた場合には、SNR又はENOBによって制御する。以下、その手順を示す。
まず、FFT結果のスペクトラムより、信号電力Ps(図5の実線で囲まれた面積)と、雑音電力Pn(図5の斜線の面積)を算出し次式
SNR=Ps/Pn (7)
よりSNRを算出する。以後、図4のフローにおいてSNRをACLRに代わって使用して同様に遅延時間を決定する。ENOBを使用する場合には、次式
ENOB=(SNR−1.76)/6.02 (dB) (8)
によりENOBを演算し、以後、図4のフローにおいてENOBをACLRに代わって使用して同様に遅延時間を決定する。また、ノイズレベルによる制御を行う場合は、送信信号に変調波を用いてもよいし、連続波CWを用いてもよい。
(c)変形例
・第1変形例
第1実施例はシングルキャリアの送信装置に適用できるものであるが、マルチキャリアの送信装置にも適用できる。図6は複数の送信信号をマルチキャリア信号を用いて送信する場合の構成図であり、4つの周波数を多重して送信する場合の例を示している。ディジタルの各送信信号x(t)〜x(t)は周波数シフト部51〜54でexp(jωt)〜exp(jωt)(ωn=2πt)を乗算されてf〜fに周波数シフトを施された後、合成部55で周波数多重される。このディジタル周波数多重信号はシングルキャリアの送信信号に対応し、以後、シングルキャリアの場合と同様の歪補償処理が行われる。
・第2変形例
第1実施例では今回と前回のACLRあるいはSNRが一致したときに遅延時間決定処理を終了するようにしたが、所定の閾値以下になったときに遅延時間決定処理を終了するように構成することもできる。
図7はかかる第2変形例の構成図、図8は遅延時間決定の処理フローである。尚、処理フローでは遅延時間がDt>Dt+1の場合を示し、Dt<Dt+1の処理の図示を省略している。図7において、図3の第1実施例と異なる点は、閾値設定部46を設けている点であり、図8の処理フローにおいて図4の処理フローと異なる点は、今回のACLRtが閾値ACLRth以下になったときに遅延時間決定処理を終了する点である。すなわち、ステップ201において今回のACLRtと閾値ACLRthとの差δ(=ACLRt−ACLRth)を算出し、ステップ201において差δが0以下であるかチェックし、δ≦0であれば遅延時間決定処理を終了し、δ>0であれば今回と前回のACLRの差δを算出し(ステップ105)、以後、差δの正/負/零に応じて図4と同一の処理を行う。ただし、処理フローでは前回と今回の遅延時間がDt>Dt+1の関係にあるものとしている。
ところで、FFT演算はN=1024ポイント蓄積した後は1サンプルデータ毎に行うこともできるが、高速処理を必要とするため、N=1024ポイント毎に間欠的に行う方が消費電力を低減できる。
第2変形例によれば、今回のACLRが閾値以下になった場合、収束したと判断し、そのときの遅延量Dを最適値として各遅延部28〜30に設定して歪み補償を行う。これにより、第1実施例よりも収束を早くできる。又、FFT演算をN=1024ポイント毎に間欠的に行うことにより消費電力を低減することができる。
・第3変形例
第2変形例においてFFT演算部42は、一定数(N=1024)のAD変換出力を用いて間欠的にFFT演算を行っているが、最初は少ない数のAD変換出力データを用いてFFT演算を行ない、遅延時間と閾値の差が小さくなるに従ってポイント数を多くするように構成することもできる。
図9はFFT演算に用いるAD変換データ数を可変にする第3変形例の遅延時間決定処理フローであり、図8の処理フローと同一部分には同一符号を付している。異なる点は、ステップ202の後に、今回のACLRtが閾値ACLRth以下にならなければ、その差δ(=ACLRt−ACLRth)に応じてFFT演算に用いるAD変換データ数Nを適応的に制御するステップ203が含まれている点である。
例えば、FFT演算を行うポイント数を最初は256ポイントと短くし、歪補償が進むにつれて512ポイントとしてFFT演算を行い、更にACLRが改善されれば1024ポイントとし、順次スペクトルが得られる周波数間隔を狭める。これにより、遅延調整制御の収束が早くなるだけでなく、収束安定度が増しかつ、高精度の遅延調整を行うことができる。
・第4変形例
送信電力増幅器22と帰還系25のトータルの遅延時間は経年変化する。そこで、定期的に遅延時間決定処理を行い、常に遅延部28〜30に正確な遅延時間を設定する必要がある。
図10は遅延時間を間欠的に決定して設定する第4変形例の構成図、図11は第4変形例の遅延時間決定処理フローであり、図7、図8に示す第2変形例と同一部分には同一符号を付している。図10において、図7の第2変形例と異なる点は、タイマー61を設けている点であり、図11の処理フローにおいて図8の処理フローと異なる点は、フローの最初のステップ200においてタイマー61より遅延時間決定処理開始が指示されたとき、ステップ101以降の遅延時間決定処理を行う点である。かかる間欠動作によれば常時遅延時間決定処理を行う必要がないため、消費電力を低減できる。
・第5変形例
送信電力増幅器22と帰還系25のトータルの遅延時間はデバイスの個体差により変化する。そこで、工場製造時に遅延時間を調整して最適な遅延時間Doptを求め、メモリに記憶し、実運用時にこの値を用いて歪補償制御を行うようにする。このようにすれば、運用時に遅延時間決定制御を行う必要がなく、タイミング調整部41を省略でき、コスト、規模的に有利である。
以上より、第5変形例では方向性結合器に替えてスイッチ62を使用する。スイッチ62は、遅延時間決定制御時に送信電力増幅器22の出力信号をAD変換器26に入力し、運用時に送信電力増幅器22をの出力信号を図示しないアンテナに入力する。この結果、製造時に遅延時間決定制御を行っても不要電波が放射されることがない。また、方向結合器と異なりフィードバックにおける損失がないため精度良く最適な遅延時間Doptを求めてメモリに記憶するができ、実運用時に、この値を用いて正しい歪補償制御を行うことができる。また、タイミング調整部41を備えておくことにより、製造時の遅延時間の最適値を初期値とし、実運用時に遅延時間を更新することも可能である。これにより、経年変化に対応することができる。
尚、図示しないが、第1〜ら第5変形例を適宜に組み合わせて歪補償装置を構成することもできる。
(C)第2実施例
第1実施例は送信信号に歪補償係数を乗算して歪補償信号を発生して送信電力増幅器に入力する歪補償装置に適用した例であるが、主信号(送信信号)と該送信信号に付加する歪成分(誤差信号)のそれぞれを独立にDA変換した後、合成して送信電力増幅器に入力する歪補償装置にも適用できる。尚、後者の歪補償装置によれば、誤差信号の振幅が小さいため、誤差信号のみを出力するDA変換器のビット精度を低くでき、又、送信信号のみを出力するDA変換器にも大きなダイナミックレンジが不要であり、該DA変換器のビット精度を低くできる利点がある。
(a)構成
図13は第2実施例の歪補償装置の構成図であり、第1実施例と同一部分には同一符号を付している。
71は誤差信号発生部であり、送信信号x(t)のパワー|x(t)|に応じた歪補償係数h(p)を歪補償テーブル32から読み出し、該歪補償係数h(p)を送信信号x(t)に乗算する乗算器71a、乗算器の出力信号x(t)・h(p)と送信信号x(t)との差である誤差信号E(t)を出力する減算器71bを有している。72はディジタルの誤差信号E(t)をアナログに変換するDA変換器、73は必要帯域の誤差信号成分のみを通過して波形整形するバンドパスフィルタ、74は出力を調整する減衰器、75は送信信号(主信号)x(t)をアナログに変換するDA変換器、76は送信信号より不要チャネルの信号成分を除去するバンドパスフィルタ、77はアナログの送信信号x(t)とアナログの誤差信号E(t)を合成して送信電力増幅器23に入力する信号合成部である。他の構成及び遅延時間調整制御は第1実施例(図3、図4)と同じである。
(b)変形例
・第1変形例
第2実施例はシングルキャリアの送信装置に適用できるものであるが、マルチキャリアの送信装置にも適用できる。図14は複数の送信信号をマルチキャリア信号を用いて送信する場合の構成図であり、4つの周波数を多重して送信する場合の例を示している。ディジタルの各送信信号x(t)〜x(t)は周波数シフト部78〜81でexp(jωt)〜exp(jωt)(ωn=2πt)を乗算されてf〜fに周波数シフトを施された後、合成部82,83で周波数多重される。このディジタル周波数多重信号はシングルキャリアの送信信号に対応し、以後、シングルキャリアの場合と同様の歪補償処理が行われる。
尚、4波の場合、スペクトルは図15に示すようになるから、信号成分の電力P1と隣接チャネル漏洩電力P11を算出し、次式により隣接チャネル漏洩電力比ACLR
ACLR=P11/P1 隣接チャネル漏洩電力比 (9)
を算出し、この隣接チャネル漏洩電力比ACLRを用いて図4のフローにしたがって遅延時間を決定する。そして、この決定された遅延時間を遅延部28〜30に設定して歪補償することにより、図15のスペクトラムの広がりが解消され矩形上のスペクトラムが4本の状態に近づき、歪が補償される。これにより増幅器の電力負荷効率を改善することができ、低消費電力化が可能となる。さらに、電力負荷効率の改善により、発熱量が削減でき、発熱対策が軽減する。この結果、装置の規模も削減することができる。
なお、初期値については、遅延量を0としてもよいし、ある一定値を設定してもよい。また、実際には隣接チャネルは周波数の上側及び下側の2種類がある。このため、いずれか一方、平均、両側の和等を用いる事ができる。
.第2変形例
第1変形例では今回と前回のACLRが一致したときに遅延時間決定処理を終了するが、所定の閾値以下になったときに遅延時間決定処理を終了するように構成することもできる。図16はかかる第2変形例の構成図であり、図14の第1変形例と同一部分には同一符号を付している。図14の第1変形例と異なる点は、閾値設定部46を設けている点であり、遅延時間の決定は図8の処理フローに従って行われる。すなわち、今回のACLRtが閾値ACLRth以下になったときに遅延時間決定処理を終了する。
.第3変形例
送信電力増幅器22と帰還系25のトータルの遅延時間は経年変化する。そこで、定期的に遅延時間決定処理を行い、常に遅延部28〜30に正確な遅延時間を設定する必要がある。図17は遅延時間を間欠的に決定して設定する第3変形例の構成図であり、図14に示す第1変形例と同一部分には同一符号を付している。第1変形例と異なる点は、タイマー61を設けている点であり、定期的にタイマー61より遅延時間決定処理開始が指示されたとき遅延時間決定処理を行うようになっている。かかる間欠動作によれば常時遅延時間決定処理を行う必要がないため、消費電力を低減できる。
(D)第3実施例
(a)第3実施例の概略
第1、第2実施例では、FFT演算により求めたACLR等の結果を用いて、送信電力増幅器22と帰還系25のトータルの遅延時間を決定して遅延部28〜30に設定する。第3実施例は第1、第2実施例と異なり、FFT演算により求めたACLR等の結果を用いてAD変換器26のクロックCLK(エンコード信号とも言う)の位相を進みあるいは遅れ制御する。
具体的には、AD変換器26へのクロックCLKのタイミングによって、隣接チャネル漏洩電力ACLRや信号雑音電力比SNR、ENOB等の特性が変動する。以後、SNRを用いて説明する。AD変換器26の入力信号の変換点に対して、クロックCLKの立ち上がりタイミングがどの程度遅れるかによってSNRが変動する。すなわち、アイパターンを考慮すると、信号の変化点と変換点の中間でアイ開口が最も大きくなるため、この中間でクロックCLKが立ち上がり、サンプリングが行われることが最良であり、SNRが最も良い値となる。一方、入力信号の変化点とクロックCLKのタイミングが一致してしまうと、最悪の場合データが不定となてしまい、SNRが劣化する。そこで、クロック位相を制御してこれらを防ぎ、SNRを改善することは、歪補償装置全体の特性を改善することになり、結果的に送信電力増幅器の効率が改善される。
(b)全体の構成
図18は本発明の第3実施例の構成図であり、21〜33、41〜44は第1実施例(図3)と同一部分を示し同一機能を有している。遅延素子65はAD変換器26のクロックCLK′の位相をΔDづつ可変するクロック位相遅延素子であり、遅延量調整部44からの指示に従ってクロックCLK′の位相をΔDづつ進みあるいは遅延する。タイミング調整部41において、FFT演算部42はAD変換器26から出力するN(=1024)ポイントのAD変換出力データ(サンプリング時刻t〜t1023のデータ)を蓄積し、高速フーリエ変換を行う。このFFT演算により、サンプリング周期をΔtとすれば、周波数Δf(=1/Δt・N)間隔でN/2(=512)個のスペクトラムが得られる。SNR算出部43はFFT演算部42から出力するスペクトラムを用いてSNRを算出する。すなわち、送信信号チャネルの周波数帯域に属するスペクトルを合計して信号成分の電力Psを算出すると共に、該送信信号チャネルに属さないスペクトルを合計して雑音信号の電力Pnを算出し、次式
SNR=Ps/Pn (10)
によりSNRを算出する。遅延量調整部44は、今回のSNRとメモリ45に保存されている前回のSNRを比較し、比較結果に基づいてクロック位相を増減し、このクロック位相調整処理を繰り返して最適なクロック位相を決定してAD変換器26に入力する。、
(c)クロック位相決定処理
図19は第3実施例のタイミング調整部41のクロック位相決定処理フローである。
AD変換器26から出力する1024ポイントのフィードバック信号を蓄積し(ステップ201)、FFT演算により所定周波数間隔でスペクトルを求め、該スペクトルを用いて送信信号電力Ps、雑音電力Pnを測定し(ステップ202〜203)、(10)式により今回のSNRを測定する(ステップ204)。
ついで、今回のSNRと前回のSNRt−1の差δを計算する(ステップ205)。ここで、今回の時間tにおけるクロック位相をCLKRとし、前回の時間t−1におけるクロック位相をCLKRt−1とするとき、
CLKR>CLKRt−1
が成立するかチェックする(ステップ206)。成立すれば、δの正負を判別する(ステップ207)。
δ>0であれば、クロック位相を増加したとき(CLKR>CLKRt−1)、SNRが増加して改善されたことになる。かかる場合は、クロック位相CLKRを1増加しCLKRt+1とし、このクロック位相CLKRt+1を遅延素子65に設定する(ステップ208)。これにより、遅延素子65はクロック位相をΔD増加する。ついで、今回のCLKRをCLKRt−1とし(CLKRt−1=CLKR、ステップ209)、はじめに戻り以降の処理を繰り返す。
ステップ208において、δ<0であればクロック位相を増加したとき(CLKR>CLKRt−1)、SNRが減少して劣化されたことになる。かかる場合、クロック位相CLKRを1減少してCLKRt+1とし、このクロック位相CLKRt+1を遅延素子65に設定する(ステップ210)。これにより、遅延素子65はクロック位相をΔD減少する。ついで、今回のCLKRをCLKRt−1とし(CLKRt−1=CLKR、ステップ211)、はじめに戻り以降の処理を繰り返す。又、ステップ207において、δ=0であれば、もはやSNRを改善できないから、次回のクロック位相CLKRt+1を今回のクロック位相CLKRとし(ステップ212)、クロック位相調整処理を終了する。
一方、ステップ206において、
CLKR>CLKRt−1
が成立せず、CLKR<CLKRt−1であれば、δの正負を判別する(ステップ213)。δ>0であれば、クロック位相を減少したとき、SNRが増加して改善されたことになる。かかる場合は、クロック位相CLKRを1減少LCLKRt+1とし、このクロック位相CLKRt+1を遅延素子65に設定する(ステップ214)。これにより、遅延素子65はクロック位相をΔD減少する。ついで、今回のCLKRをCLKRt−1とし(CLKRt−1=CLKR、ステップ215)、はじめに戻り以降の処理を繰り返す。
ステップ213において、δ<0であれば、すなわち、遅延時間を減少するとSNRが減少して劣化すれば、クロック位相CLKRを1増加しCLKRt+1とする(ステップ216)。ついで、今回のCLKRをCLKRt−1とし(CLKRt−1=CLKR、ステップ217)、はじめに戻り以降の処理を繰り返す。
又、ステップ213において、δ=0であれば、もはやSNRを改善できないから、次回のクロック位相CLKRt+1を今回のクロック位相CLKRとし(ステップ212)、クロック位相調整処理を終了する。
以上をまとめると、CLKR>CLKRt−1であれば以下の関係式
Figure 0003857652
になる。又、CLKR<CLKRt−1であれば以下の関係式
Figure 0003857652
になる。これらの動作を繰り返すと、最終的に(12a),(12b)式の状態となり、最もSNRが良い最適な遅延量CLKRoptを導くことができる。この値をAD変換器26に設定して歪補償処理を実行すると歪が減少する。これにより増幅器の電力負荷効率を改善することができ、低消費電力化が可能となる。さらに、電力負荷効率の改善により、発熱量が削減でき、発熱対策が軽減する。この結果、装置の規模も削減することができる。
なお、第1実施例の第1〜第5変形例を第3実施例に同様に適用することができる。
(E)第4実施例
図20は第1、第3実施例を組み合わせて高精度の遅延時間制御を行う第4実施例の歪補償装置の構成図であり、図7の第1実施例(第2変形例)と図18の第3実施例を組み合わせた構成を有し、同一部分には同一符号を付している。
第1実施例の遅延時間決定制御では、決定した遅延時間を遅延部28〜30に設定する。しかし、遅延部28〜30はシフトレジスタ等で構成され、クロック周期以下の遅延時間を設定することができない。一方、第2実施例のクロック位相決定制御では、クロック周期以下のクロック位相制御を行えるがそれ以上のクロック位相制御ができない。そこで、第4実施例では、第1、第3実施例を組み合わせて高精度の遅延時間制御を行うものである。
図21は第4実施例の処理フローであり、まず、第1実施例により遅延時間を決定して遅延部28〜30に設定し、ついで、第3実施例に従ってクロック位相を決定する。
すなわち、AD変換器26から出力する1024ポイントのフィードバック信号を蓄積し(ステップ301)、FFT演算により所定周波数間隔でスペクトルを求め、該スペクトルを用いて送信信号電力Ps、隣接チャネル電力P11を測定し、(1)式により今回のACLRを測定する。ついで、今回のACLRと前回のACLRt−1の差δを計算する(ステップ302〜303)。
以後、今回のACLRと前回のACLRt−1の差δが第1の設定値以下となるまで遅延時間の増減を行って送信電力増幅器及びフィードバックループにおけるトータルの遅延時間を決定し、遅延部28〜30に設定する(ステップ304)。
ついで、AD変換器26から出力する1024ポイントのフィードバック信号を蓄積し(ステップ305)、FFT演算により所定周波数間隔でスペクトルを求め、該スペクトルを用いて送信信号電力Ps、雑音電力Pnを測定し、(10)式により今回のSNRを測定する。ついで、今回のSNRと前回のSNRt−1の差δを計算する(ステップ306〜307)。
以後、今回のSNRと前回のSNRt−1の差δが第2の設定値以下となるまでクロックCLK′の位相の増減を行ってAD変換器26に入力する(ステップ308)。
以上により、第4実施例によればクロック周期以下の単位で遅延時間の制御が可能になる。このため、フィードバック信号の遅延量がCLK単位でなくても対応することができる。たとえば、遅延部28〜30にnクロックの遅延時間を設定し、AD変換器26にクロック時間以下の1/4クロックの位相遅延を設定できる。
以上により、歪補償の精度が増し、増幅器の電力負荷効率を改善することができ、低消費電力化が可能となる。さらに電力負荷効率の改善により、発熱量が削減でき、発熱対策が軽減する。この結果、装置の規模も削減することができる。
なお、上述の説明では遅延量を先に制御したが、クロックタイミングを先に制御してもよい。
(F)第5実施例
第1実施例はAD変換されたフィードバック信号にFFT演算を施すことによりACLRやSNR、ENOBを求めて遅延時間決定制御を行っているが、第5実施例ではFFT演算によらずに雑音電力を求め、該雑音電力が最小となるように遅延時間を決定する。図22は第5実施例の歪補償装置の構成図であり、図3の第1実施例と同一部分には同一符号を付しており、異なる点は、タイミング調整部41の構成である。
タイミング調整部41において、バンドパスフィルタ91は図23(b)に示す通過特性を備え、フィードバック信号に含まれる隣接チャネルの周波数帯域成分(図23(a)の斜線部参照)のみを通過し、ノイズレベル算出部92はバンドパスフィルタ出力より雑音電力Pnを検出して遅延量調整部93に入力すると共にメモリ94に格納する。すなわち、ノイズレベル算出部92において、検波器92aにより雑音電力Pnを検出し、AD変換器92bでディジタルに変換して遅延量調整部93に入力する。遅延量調整部93は図4の処理フローと同様に今回の雑音電力Pnと前回の雑音電力Pnt−1の差δが零あるいは閾値以下となるように遅延時間Dを増減すると共に遅延部28〜30に設定する。以後、かかる制御を繰り返すことにより、最終的に送信電力増幅器23とフィードバックループにおけるトータルの遅延時間が求まり遅延部28〜30に設定される。
尚、ノイズレベル算出部92は図24に示すように、バンドパスフィルタ91から入力する隣接チャネルの信号成分をAD変換器92cでA/D変換し、AD変換出力にFFT演算部92dでFFT演算を施し、雑音電力計算部92eでFFT出力を用いて雑音電力を算出してもよい。
図25はノイズレベル算出部92として図24の構成を用いた場合の遅延時間決定制御フローであり、バンドパスフィルタ91により隣接チャネルの信号成分を取り出し(ステップ401)、該隣接チャネルの信号成分にFFT処理を施し(ステップ402)、FFT出力を用いて雑音電力を算出し(ステップ403)、該雑音電力が最小となるように遅延時間を調整する(ステップ404)。
尚、第1実施例で説明した第2〜第5変形例を第5実施例に適用することができる。
以上本発明によれば、歪補償装置における送信信号とフィードバック信号のタイミングを精度良くかつ自動的に合わせることができ、これにより、歪補償の精度を向上でき、しかも、歪補償を安定に動作させることができる。
また、本発明によれば、送信電力増幅器の電力負荷効率を改善することができ、低消費電力化が可能となる。さらに、電力負荷効率の改善により、発熱量を削減でき、発熱対策を軽減でき、この結果、装置の規模を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は遅延時間と隣接チャネル漏洩電力ACLRの関係図である。
図2はACLR説明図である。
図3は本発明の第1実施例の歪補償装置の構成図である。
図4は遅延時間決定の処理フローである。
図5はSNRの説明図である。
図6は第1実施例の第1変形例である。
図7は第1実施例の第2変形例である。
図8は第2変形例における遅延時間決定処理フローである。
図9は第3変形例における遅延時間決定処理フローである。
図10は第1実施例の第4変形例である。
図11は第4変形例における遅延時間決定処理フローである。
図12は第1実施例の第5変形例である。
図13は第2実施例の歪補償装置の構成図である。
図14は第2実施例の第1変形例である。
図15は4波の場合のスペクトル図である。
図16は第2実施例の第2変形例である。
図17は第2実施例の第3変形例である。
図18は第3実施例の歪補償装置の構成図である。
図19は第3実施例のクロック位相決定処理フローである。
図20は第4実施例の歪補償装置の構成図である。
図21は第4実施例の処理フローである。
図22は第5実施例の歪補償装置の構成図である。
図23はバンドパスフィルタの通過特性説明図である。
図24はノイズレベル算出部の別の構成図である。
図25は雑音電力算出の処理フローである。
図26は従来の送信装置の構成図である。
図27は送信電力増幅器の非直線性による問題点の説明図である。
図28は電力増幅器の効率特性例である。
図29は従来のディジタル非線形歪補償機能を備えた送信装置の構成図である。
図30は歪補償部の機能構成図である。
図31は適応LMSによる歪補償処理説明図である。
図32は送信信号x(t)を複素表現した送信装置の全体の構成図ある。

Claims (17)

  1. 歪補償係数を用いて入力信号に歪補償処理を施して歪デバイスに入力し、歪補償前の入力信号と歪デバイスの出力側からフィードバックされるフィードバック信号とに基づいて歪補償係数を演算し、演算された歪補償係数を入力信号に対応させて記憶する歪補償装置において、
    前記フィードバック信号をAD変換するAD変換部、
    該AD変換部の出力を高速フーリエ変換し、スペクトラムを算出するFFT演算部、
    FFT演算結果に基づいて信号ノイズ比SNRあるいは隣接チャネル漏洩電力比ACLRあるいはノイズレベルPnあるいは有効ビット長ENBOのいずれかの値を計算する計算部、
    現時刻における前記計算値と1つ前の時刻における前記計算値を比較し、比較結果に基づいて歪デバイスとフィードバックループで生じる信号の遅延時間を調整し、該調整処理を繰り返して前記遅延時間を決定する遅延時間決定部、
    前記遅延時間を設定されて歪補償装置各部のタイミング合わせを行う遅延回路、
    を備えたことを特徴とする歪補償装置。
  2. 複数の送信信号を周波数多重して前記入力信号を生成する信号合成部を有する、
    ことを特徴とする請求項1記載の歪補償装置。
  3. 前記遅延時間決定部は前記計算値の差が設定値以下になったとき、遅延時間調整を終了する、
    ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の歪補償装置。
  4. 前記遅延時間決定部はタイマーを備え、間欠的に遅延時間の決定処理を行う、
    ことを特徴とする請求項3記載の歪補償装置。
  5. 前記計算値の差が小さくなるにつれて前記FFT演算部はFFT演算を行うAD変換データ数を増加する、
    ことを特徴とする請求項3記載の歪補償装置。
  6. 遅延時間の決定に際して、歪デバイスの出力信号を選択してAD変換部に入力するスイッチ、
    を備えることを特徴とする請求項3記載の歪補償装置。
  7. 歪補償係数を用いて入力信号に歪補償処理を施して歪デバイスに入力し、歪補償前の入力信号と歪デバイスの出力側からフィードバックされるフィードバック信号とに基づいて歪補償係数を演算し、演算された歪補償係数を入力信号に対応させて記憶する歪補償装置において、
    フィードバック信号をAD変換するAD変換部、
    該AD変換部の出力を高速フーリエ変換し、スペクトラムを算出するFFT演算部、
    FFT演算結果に基づいて信号ノイズ比SNRあるいは隣接チャネル漏洩電力比ACLRあるいはノイズレベルPnあるいは有効ビット長ENOBのいずれかの値を計算する計算部、
    現時刻における前記計算値と1つ前の時刻における前記計算値を比較し、比較結果に基づいてAD変換部のクロックタイミングを調整するクロックタイミング調整部、
    を備えたことを特徴とする歪補償装置。
  8. 複数の送信信号を周波数多重して前記入力信号を生成する信号合成部を有する、
    ことを特徴とする請求項7記載の歪補償装置。
  9. 前記クロックタイミング調整部は前記計算値の差が設定値以下になったとき、クロックタイミング調整を終了する、
    ことを特徴とする請求項7または8記載の歪補償装置。
  10. 前記クロックタイミング調整部はタイマーを備え、間欠的にクロックタイミング調整処理を行う、
    ことを特徴とする請求項9記載の歪補償装置。
  11. クロックタイミング調整に際して、歪デバイスの出力信号を選択してAD変換部に入力するスイッチ、
    を備えることを特徴とする請求項9記載の歪補償装置。
  12. 前記比較結果に基づいて歪デバイスとフィードバックループで生じる信号の遅延時間を調整し、該調整処理を繰り返して前記遅延時間を決定する遅延時間決定部、
    前記遅延時間を設定されて歪補償装置各部のタイミング合わせを行う遅延回路、
    を備え、前記遅延時間決定部は前記計算値の差が第1の設定値以下になったとき、遅延時間決定制御を終了し、前記クロックタイミング調整部は前記計算値の差が第2の設定値以下になったとき、クロックタイミング調整を終了する、
    ことを特徴とする請求項7記載の歪補償装置。
  13. 歪補償係数を用いて入力信号に歪補償処理を施して歪デバイスに入力し、歪補償前の入力信号と歪デバイスの出力側からフィードバックされるフィードバック信号とに基づいて歪補償係数を演算し、演算された歪補償係数を入力信号に対応させて記憶する歪補償装置において、
    少なくとも隣接チャネルの帯域を通過帯域とすると共に、前記フィードバック信号が入力されるバンドパスフィルタ、
    バンドパスフィルタの出力より隣接チャネルの電力を含む雑音電力を検出する雑音電力検出部、
    現時刻における前記雑音電力と1つ前の時刻における雑音電力を比較し、比較結果に基づいて歪デバイスとフィードバックループで生じる信号の遅延時間を調整し、該調整処理を繰り返して前記遅延時間を決定する遅延時間決定部、
    前記遅延時間を設定されて歪補償装置各部のタイミング合わせを行う遅延回路、
    を備えたことを特徴とする歪補償装置。
  14. 複数の送信信号を周波数多重して前記入力信号を生成する信号合成部を有する、
    ことを特徴とする請求項13記載の歪補償装置。
  15. 前記遅延時間決定部は前記計算値の差が設定値以下になったとき、遅延時間調整を終了する、
    ことを特徴とする請求項13または請求項14記載の歪補償装置。
  16. 前記遅延時間決定部はタイマーを備え、間欠的に遅延時間の決定処理を行う、
    ことを特徴とする請求項13または請求項14記載の歪補償装置。
  17. 遅延時間調整に際して、歪デバイスの出力信号を選択してAD変換部に入力するスイッチ、
    を備えることを特徴とする請求項13または請求項14記載の歪補償装置。
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