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JP3859302B2 - 分岐鎖状ポリエン化合物の製造方法 - Google Patents
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JP3859302B2 - 分岐鎖状ポリエン化合物の製造方法 - Google Patents

分岐鎖状ポリエン化合物の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、分岐鎖状ポリエン化合物の製造方法に関し、詳しくは、エチレンと共役ジエン化合物とを遷移金属触媒の存在下に反応させた後、得られた反応混合物中の遷移金属触媒を失活処理することによって、得られた分岐鎖状ポリエン化合物の内部オレフィン化合物への望ましくない異性化反応を抑えながら、反応混合物からの蒸留によって、目的とする分岐鎖状ポリエン化合物を高収率にて得る方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ポリエン化合物とは、1分子中に炭素−炭素二重結合を2個以上有する炭化水素化合物をいい、従来、数多くのものが知られている。このようなポリエン化合物として、例えば、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン等が知られている。
【0003】
このようなポリエン化合物と、例えば、エチレン、プロピレン等のα−オレフィンとを共重合させることによって、加硫可能な不飽和性共重合体を得ることができ、このようなエチレン性不飽和共重合体は、耐候性、耐熱性、耐オゾン性等にすぐれているところから、自動車工業部品、工業用ゴム製品、電気絶縁材料、土木建材用品、ゴム引布等のゴム製品として、また、ポリプロピレン、ポリスチレン等へのポリマーブレンド用材料等として広く用いられている。
【0004】
このようなエチレン性不飽和共重合体のなかでも、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体は、その他のエチレン性不飽和共重合体に比べて、加硫速度が速いので、特に広く用いられている。
【0005】
しかしながら、従来知られているエチレン性不飽和共重合体は、例えば、上記エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体であっても、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム等の通常のジエン系ゴムに比べて、加硫速度が遅く、ジエン系ゴムとの共加硫性に劣っている。
【0006】
また、従来のエチレン性不飽和共重合体は、加硫速度が遅いので、加硫時間を短く、或いは加硫温度を低くし、加硫時の消費エネルギー量を低減して、加硫ゴムを生産性よく製造することが困難である。
【0007】
そこで、本発明者らは、既に、特開平8−325170号公報に記載されているように、前記一般式(III)で表わされる分岐鎖状ポリエン化合物とエチレン、プロピレン等のα−オレフィンと共重合させることによって得られるエチレン性不飽和共重合体が、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体と比較して、加硫速度が速いことを見出している。上記公報によれば、前記一般式(III)で表わされる分岐鎖状ポリエン化合物は、遷移金属化合物と有機アルミニウム化合物とを反応させることによって得られる遷移金属触媒の存在下にエチレンと共役ジエン化合物とを反応させることによって得ることができる。
【0008】
しかしながら、このような方法によれば、エチレンと共役ジエンとの反応終了後、得られた反応混合物から蒸留によって目的とする分岐鎖状ポリエン化合物を分離する際に、反応混合物中に反応に用いた前記遷移金属触媒が残存していると、蒸留時の加熱によって、得られた分岐鎖状ポリエン化合物の一部が重合に関与しない内部オレフィン化合物への異性化を起こして、製品(分岐鎖状ポリエン化合物)の収量を低下させ、更には、製品(分岐鎖状ポリエン化合物)の品質に悪影響を与えるので、目的とする分岐鎖状ポリエン化合物を蒸留によって反応混合物から分離するに先立って、反応混合物中の遷移金属触媒を失活させる必要がある。即ち、上記非重合性の内部オレフィン化合物は、エチレン、プロピレン等のα−オレフィンとの共重合性を有しないので、前述したような加硫可能なエチレン性不飽和共重合体の製造原料として用いることができない。
【0009】
このような遷移金属触媒を失活させる方法として、従来、種々の方法が知られており、その一つとして、水を失活剤として用いる方法が知られている。この方法は、反応終了後、得られた反応混合物に水を添加し、遷移金属触媒を加水分解して、遷移金属触媒を不活性な遷移金属の水酸化物に変換させることによって、失活させるものである。しかし、この方法によれば、触媒として用いる遷移金属化合物の種類によっては、加水分解を受け難く、従って、遷移金属触媒を十分に失活させることができないという問題がある。
【0010】
また、失活剤として、上述した水のほかにも、アルコールやアミン等を用いる方法も知られている。この方法によれば、遷移金属触媒を比較的容易に失活させることができるが、しかし、失活剤であるアルコールやアミン等が反応混合液に溶解するので、失活剤を反応混合物から分離回収するのために特別な設備が必要となる問題がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述した問題を解決するためになされたものであって、エチレンと共役ジエン化合物とを遷移金属触媒の存在下に反応させて、前記一般式(III)で表わされる分岐鎖状ポリエン化合物を製造するに際して、反応終了後、得られた反応混合物中の上記遷移金属触媒を失活させて、目的とする分岐鎖状ポリエン化合物を反応混合物から蒸留によって分離するに際して、その分岐鎖状ポリエン化合物の内部オレフィン化合物への異性化を抑制して、目的とする分岐鎖状ポリエン化合物を高収率にて得ることができる分岐鎖状ポリエン化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、エチレンと一般式(I)
【0013】
【化6】
Figure 0003859302
【0014】
(式中、fは1〜5の整数を示し、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示し、R3は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基又は一般式(II)
【0015】
【化7】
Figure 0003859302
【0016】
(式中、nは1〜5の整数を示し、R4、R5及びR6はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を示す。但し、R4、R5及びR6は同時に水素原子であることはない。)
で表わされるアルケニル基を示す。但し、R1、R2及びR3は同時に水素原子であることはない。)
で表わされる共役ジエン化合物とを遷移金属触媒の存在下に反応させて、一般式(III)
【0017】
【化8】
Figure 0003859302
【0018】
(式中、f、R1、R2及びR3は前記と同じである。)
で表わされる分岐鎖状ポリエン化合物を製造する方法において、反応終了後、生成した分岐鎖状ポリエン化合物を含む反応混合物を水と酸化剤にて処理して、上記遷移金属触媒を失活させた後、反応混合物から上記分岐鎖状ポリエン化合物を蒸留によって分離することを特徴とする分岐鎖状ポリエン化合物の製造方法が提供される。
【0019】
特に、本発明によれば、前記一般式(I)で表わされる共役ジエン化合物において、R3が前記一般式(II)で表わされるアルケニル基であるときは、エチレンと一般式(I')
【0020】
【化9】
Figure 0003859302
【0021】
(式中、fは1〜5の整数を示し、n1〜5の整数を示し、R1、R2、R4、R5及びR6はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。但し、R4、R5及びR6は同時に水素原子であることはない。)
で表わされる共役ジエン化合物を遷移金属触媒の存在下に反応させることによって、一般式(III')
【0022】
【化10】
Figure 0003859302
【0023】
(式中、f、n、R1、R2、R4、R5及びR6は前記と同じである。)
で表わされる分岐鎖状ポリエン化合物の製造方法が提供される。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明の方法において用いる共役ジエン化合物は、前記一般式(I)
【0025】
【化11】
Figure 0003859302
【0026】
(式中、fは1〜5の整数を示し、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示し、R3は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基又は一般式(II)
【0027】
【化12】
Figure 0003859302
【0028】
(式中、nは1〜5の整数を示し、R4、R5及びR6はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。但し、R4、R5及びR6は同時に水素原子であることはない。)
で表わされるアルケニル基を示す。但し、R1、R2及びR3は同時に水素原子であることはない。)
で表わされる。
【0029】
上記一般式(I)において、R1、R2又はR3が炭素数1〜5のアルキル基であるとき、そのようなアルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基等を挙げることができる。本発明においては、R1、R2又はR3がアルキル基であるとき、そのようなアルキル基としては、特に、炭素数1〜3であることが好ましく、特に、メチル基又はエチル基であることが好ましい。
【0030】
特に、本発明において、前記一般式(I)で表される共役ジエン化合物において、R3が前記一般式(II)で表されるアルケニル基であるときは、共役ジエン化合物は、前記一般式(I')で表わされ、R1、R2、R4、R5又はR6が炭素数1〜5のアルキル基であるとき、そのようなアルキル基としても、上述したような具体例を挙げることができ、特に、炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、なかでも、メチル基であることが好ましい。
【0031】
このような一般式(I)で表わされる共役ジエン化合物の具体例として、例えば、次のような化合物を挙げることができる。
【0032】
【化13】
Figure 0003859302
【0033】
【化14】
Figure 0003859302
【0034】
【化15】
Figure 0003859302
【0035】
【化16】
Figure 0003859302
【0036】
これらのなかでは、特に、次式
【0037】
【化17】
Figure 0003859302
【0038】
で表わされる7−メチル−3−メチレン−1,6−オクタジエン(β−ミルセン)や、次式
【0039】
【化18】
Figure 0003859302
【0040】
で表される7,11−ジメチル−3−メチレン−1,6,10−ドデカトリエン(β−ファルネセン)等が実用上、好ましく用いられる。
本発明の方法によるエチレンと共役ジエン化合物との反応は、次式で示すことができる。
【0041】
【化19】
Figure 0003859302
【0042】
本発明によれば、エチレンと前記共役ジエン化合物との反応は、遷移金属化合物と有機アルミニウム化合物とからなる遷移金属触媒の存在下に行なわれる。
上記遷移金属化合物としては、具体的には、鉄、ルテニウム等の鉄族、コバルト、ロジウム、イリジウム等のコバルト族、ニッケル、パラジウム等のニッケル族から選ばれる遷移金属の塩化物、臭化物、ヨウ化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、酢酸塩、チオシアン酸塩、アセチルアセトナート等を挙げることができる。これらのなかでは、塩化コバルト(II)又は塩化ニッケル(II)等が好ましく、特に、塩化コバルト(II)が好ましく用いられる。
【0043】
このような遷移金属化合物は、そのままでも、遷移金属触媒の調製に用いることができる。しかし、本発明によれば、触媒の調製のためには、遷移金属化合物は、これに有機配位子が配位した遷移金属錯体として用いることが有利である。即ち、遷移金属化合物と共に、上記遷移金属の配位子となり得る有機化合物、即ち、配位化合物を反応系に共存させるか、又は予め遷移金属化合物と上記配位化合物とから遷移金属錯体を調製して、触媒の調製に用いることが好ましい。
【0044】
このような配位子となり得る化合物としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、アセチルアセトン等の含酸素有機化合物、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、アニリン、ジフェニルアミン、ピリジン、ピコリン、2,2'−ビピリジン、1,10−フェナントロリン等の含窒素有機化合物、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスファイト、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフェート等の含リン有機化合物を挙げることができる。これらのなかでは、含リン有機化合物が好ましく、特に、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンが好ましく用いられる。
【0045】
また、予め遷移金属化合物に有機配位子を配位させた遷移金属錯体としては、例えば、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンコバルト(II)塩化物
(φ2 PCH2 CH2 Pφ2 )CoCl2
(式中、φはフェニル基を示す。)
等を挙げることができる。
【0046】
有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムヒドリド等のジアルキルアルミニウムヒドリド、イソブチルアルミニウムジヒドリド等のアルキルアルミニウムジヒドリド、塩化ジメチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、塩化ジプロピルアルミニウム、塩化ジイソブチルアルミニウム等の塩化ジアルキルアルミニウム、エチルアルミニウムセスキクロライド等のアルキルアルミニウムセスキクロライド、二塩化エチルアルミニウム等の二塩化アルキルアルミニウム、臭化ジメチルアルミニウム、臭化ジエチルアルミニウム、臭化ジプロピルアルミニウム、臭化ジイソブチルアルミニウム等の臭化ジアルキルアルミニウム、エチルアルミニウムセスキブロマイド等のアルキルアルミニウムセスキブロマイド、二臭化エチルアルミニウム等の二臭化アルキルアルミニウム、ヨウ化ジメチルアルミニウム、ヨウ化ジエチルアルミニウム、ヨウ化ジプロピルアルミニウム、ヨウ化ジイソブチルアルミニウム等のヨウ化ジアルキルアルミニウム、エチルアルミニウムセスキヨーダイド等のアルキルアルミニウムセスキヨーダイド、二ヨウ化エチルアルミニウム等の二ヨウ化アルキルアルミニウム、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド等のジアルキルアルミニウムアルコキシド等を挙げることができる。
【0047】
本発明においては、これらのなかでも、特に、トリエチルアルミニウムのようなトリアルキルアルミニウムや塩化ジエチルアルミニウムのような塩化ジアルキルアルミニウムが好ましく用いられる。これらの有機アルミニウム化合物は、そのまま用いることができるが、また、トルエン溶液やヘキサン溶液として用いることもできる。また、これらの有機アルミニウム化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
本発明の方法において、用いる遷移金属触媒の量は、通常、遷移金属化合物が共役ジエン化合物に対して、0.001〜10モル%、好ましくは、0.01〜1モル%の範囲になるように用いられる。また、配位化合物は、遷移金属化合物に対して、通常、20倍モル以下、好ましくは、0.1〜10倍モル量の範囲で用いられる。他方、有機アルミニウム化合物は、遷移金属化合物に対して、通常、1〜200倍モル、好ましくは、3〜100倍モルの範囲で用いられる。
【0049】
予め調製した遷移金属錯体を用いる場合、遷移金属錯体は、共役ジエン化合物に対して、0.001〜10モル%、好ましくは、0.01〜1モル%の範囲となるように用いられる。
【0050】
本発明において用いる触媒は、好ましくは、遷移金属化合物と有機アルミニウム化合物とを反応させることによって得ることができる。このような触媒は、エチレンと共役ジエンとを含む反応系において、遷移金属化合物と有機アルミニウム化合物とをその場で反応させて調製してもよく、また、予め、遷移金属化合物と有機アルミニウム化合物とを反応させ、得られた反応生成物を触媒として、エチレンと共役ジエンとを含む反応系に供給して、反応を行なってもよい。
【0051】
本発明の方法において、エチレンと共役ジエン化合物との反応は、共役ジエン化合物の種類によっても異なるが、遷移金属化合物と有機アルミニウム化合物とからなる遷移金属触媒の存在下に、通常、30〜200℃、好ましくは、50〜150℃の範囲の温度で、エチレン圧0.5〜100kg/cm2 、好ましくは、2〜70kg/cm2 の圧力下に行われる。反応時間は、特に限定されるものではないが、通常、0.5〜3時間の範囲である。但し、反応雰囲気は、エチレン単独の雰囲気でもよく、また、エチレンと共に窒素やアルゴン等の不活性ガスを含む雰囲気でもよい。 上記エチレンと共役ジエン化合物との反応において、反応溶媒は、特に用いる必要はないが、しかし、用いてもよい。この場合、反応溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、トリデカン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒を好ましく用いることができる。しかし、これらに限定されるものではない。
【0052】
本発明の方法によれば、以上のようにして、エチレンと共役ジエン化合物とを遷移金属触媒の存在下に反応させた後、得られた反応混合物を水と酸化剤とによって処理することによって、反応混合物中に含まれる遷移金属触媒を完全に失活させる。
【0053】
ここに、本発明によれば、反応混合物の水による処理と酸化剤による処理とは、いずれを先に反応混合物に加えて、反応混合物の処理を行なってもよく、また、反応混合物に水と酸化剤とを同時に加えて、同時に処理してもよい。しかし、反応混合物に先に酸化剤を加えて、酸化処理を行なえば、酸化剤が反応混合物に含まれる有機アルミニウム化合物の酸化に消費されるので、これを防ぐために、先に水を反応混合物に添加して水処理し、この後に、酸化剤を添加して、酸化処理するのが好ましい。
【0054】
本発明の方法において、反応混合物に添加する水の量は、通常、反応混合物に対して0.1〜5重量倍、好ましくは、0.2〜1重量倍の範囲である。この水の添加に際しては、水を単独で添加してもよいが、有機アルミニウム化合物が加水分解されて生成する水酸化アルミニウムを水相に溶解させるために、酸又はアルカリを同時に添加することが好ましい。ここに、酸又はアルカリは、通常、有機アルミニウム化合物1モルに対して、0.1〜100モルの範囲で添加すればよい。
【0055】
また、遷移金属化合物の一部が加水分解されて生成する遷移金属水酸化物等を水層に溶解させるために、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等の所謂キレート配位性化合物を同時に添加することが好ましい。このキレート配位性化合物は、反応混合物中の遷移金属化合物に対して、通常、等モル以上添加するのが好ましい。特に、本発明によれば、上述した酸又はアルカリと共に、このキレート配位性化合物を反応混合物に添加するのが最も好ましい。
【0056】
このようにして、反応終了後、水と、好ましくは、酸又はアルカリとキレート配位性化合物を反応混合物に添加して、反応混合物を水処理(水洗処理)するに際して、反応混合物と水との接触効率を高めるために、必要に応じて、加熱下に、反応混合物を攪拌するのが好ましい。このような攪拌は、通常、0〜90℃、好ましくは10〜50℃の範囲の温度で行なわれる。攪拌時間は、特に限定されるものではないが、通常、0.1〜1時間の範囲である。
【0057】
次に、本発明において用いる酸化剤としては、空気、酸素、オゾン、酸化窒素等の酸化性ガス、過酸化水素、t−ブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、m−クロロ過安息香酸等の過酸化物、硝酸塩、亜硝酸塩等の無機窒素化合物、クロム酸、過マンガン酸等の金属酸化物酸、ピリジン−N−オキシド等のN−オキシド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等を挙げることができる。これらのなかでは、空気、酸素又は過酸化水素が好ましく用いられる。
【0058】
これらの酸化剤は、遷移金属化合物及び配位化合物の合計量に対して、通常、1〜20モル倍、好ましくは、1〜5モル倍である。酸化剤をこのような範囲で用いることによって、遷移金属触媒を効果的に失活させることができ、しかも、目的とする分岐鎖状ポリエン化合物が過酸化物に転化する等の不都合も少ない。
【0059】
上述した酸化剤は、そのまま用いることができるが、酸化剤が酸化性ガスであるとき、窒素やアルゴン等の不活性ガスで希釈して用いてもよく、また、酸化剤が液体又は固体であるとき、水、トルエン、ヘキサン等、適宜の溶剤で希釈して用いてもよい。
【0060】
反応混合物に酸化剤を添加した後に、通常、反応混合物を攪拌する。この攪拌も、通常、0〜90℃、好ましくは、10〜50℃の範囲の温度で行なわれる。攪拌時間は、特に限定されるものではないが、通常、0.1〜10時間の範囲である。
【0061】
このようにして、本発明の方法によれば、エチレンと共役ジエン化合物とを遷移金属化合物と有機アルミニウムとからなる遷移金属触媒の存在下て反応させた後、得られた反応混合物を水と酸化剤とで処理して、反応混合物に含まれる遷移金属触媒を失活させることによって、この後、この反応混合物から、通常の蒸留精製によって、目的生成物である分岐鎖状ポリエン化合物を、内部オレフィン化合物への異性化を抑えて、高収率にて得ることができる。
【0062】
特に、本発明に従って、反応終了後、反応混合物を水処理した後、酸化処理する場合、具体的には、反応混合物に水、好ましくは、酸又はアルカリと共にキレート配位性化合物を含む水溶液を加え、攪拌して、水洗した後、水層を除き、かくして、得られた油相を酸化剤で酸化処理すればよい。このようにして、最終的に得られた油相を蒸留すれば、目的とする分岐鎖状ポリエン化合物が内部オレフィン化合物への異性化を起こさないので、目的とする分岐鎖状ポリエン化合物を高収率にて得ることができる。
【0063】
しかしながら、本発明においては、反応終了後、得られた反応混合物から目的とする分岐鎖状ポリエン化合物を蒸留によって分離するとは、目的とする分岐鎖状ポリエン化合物を反応混合物から分離するに際して、蒸留を含む分離操作によって、目的とする分岐鎖状ポリエン化合物を反応混合物から分離することを意味する。従って、本発明においては、反応終了後、得られた反応混合物から目的とする分岐鎖状ポリエン化合物を蒸留によって分離するとは、反応混合物から目的とする分岐鎖状ポリエン化合物自体を留分として蒸留して分離する場合のほか、反応混合物から反応溶剤等を留去して、目的とする分岐鎖状ポリエン化合物を反応混合物から分離する場合をも含み、更に、これらの複数の蒸留操作を行なって、目的とする分岐鎖状ポリエン化合物を反応混合物から分離する場合をも含むものとする。
【0064】
本発明によれば、原料として用いる共役ジエン化合物を適宜に選択することによって、次のような種々の分岐鎖状ポリエン化合物を得ることができる。
【0065】
【化20】
Figure 0003859302
【0066】
【化21】
Figure 0003859302
【0067】
【化22】
Figure 0003859302
【0068】
【化23】
Figure 0003859302
【0069】
【化24】
Figure 0003859302
【0070】
【化25】
Figure 0003859302
【0071】
【化26】
Figure 0003859302
【0072】
【化27】
Figure 0003859302
【0073】
【化28】
Figure 0003859302
【0074】
【化29】
Figure 0003859302
【0075】
【化30】
Figure 0003859302
【0076】
【化31】
Figure 0003859302
【0077】
【化32】
Figure 0003859302
【0078】
【化33】
Figure 0003859302
【0079】
【化34】
Figure 0003859302
【0080】
【化35】
Figure 0003859302
【0081】
【化36】
Figure 0003859302
【0082】
【化37】
Figure 0003859302
【0083】
【化38】
Figure 0003859302
【0084】
【化39】
Figure 0003859302
【0085】
特に、本発明によれば、エチレンと前述した7−メチル−3−メチレン−1,6−オクタジエン(β−ミルセン)とを反応させることによって、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエンを得ることができ、また、エチレンと前述した7,11−ジメチル−3−メチレン−1,6,10−ドデカトリエン(β−ファルネセン)とを反応させることによって、4−エチリデン−8,12−ジメチル−1,7,11−トリデカトリエンを得ることができる。
【0086】
本発明の方法によって得ることができる分岐鎖状ポリエン化合物は、これをエチレン、プロピレン等のα−オレフィンと共重合させることによって、高速加硫が可能であるのみならず、耐候性、耐熱性、耐オゾン性等にもすぐれているエチレン性不飽和共重合体を得ることができる。
【0087】
【発明の効果】
本発明によれば、遷移金属化合物と有機アルミニウム化合物とからなる遷移金属触媒の存在下に、エチレンと前記共役ジエン化合物とを反応させた後、得られた反応混合物を水と酸化剤とで処理して、上記遷移金属触媒を完全に失活させるので、この後、反応混合物から蒸留精製によって、目的とする分岐鎖状ポリエン化合物を分離する際に、分岐鎖状ポリエン化合物の異性化による重合に関与しない内部オレフィン化合物への転化を抑えることができ、かくして、高収率にて目的とする分岐鎖状ポリエン化合物を得ることができる。このようにして得られる分岐鎖状ポリエン化合物は、これをエチレン、プロピレン等のα−オレフィンと共重合させることによって、耐候性、耐熱性、耐オゾン性にすぐれ、しかも、加硫速度の速いエチレン性不飽和共重合体を得ることができる。
【0088】
【実施例】
以下に実施例を比較例と共に挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。実施例及び比較例において、目的物の収率は、目的とする生成物のモル数をp、反応に用いた原料共役ジエンの仕込みモル数をc0 とするとき、(p/c0 )×100(%)にて求めた。また、原料である共役ジエンの転化率は、反応後の共役ジエンのモル数をcとするとき、〔(c0 −c)/c0 〕×100(%)にて求めた。
【0089】
実施例1
(4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエンの合成)
窒素雰囲気下、1500ml容量のステンレス(SUS316)製オートクレーブに、2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンコバルト(II)塩化物2.86g(5.42ミリモル)と無水トルエン70gと及び7−メチル−3−メチレン−1,6−オクタジエン(β−ミルセン)593g(4.02モル)とを仕込み、室温で1時間攪拌した。次に、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.91モル/L)70.5mL(64.2ミリモル)を加えて、オートクレーブを密閉した。
【0090】
この後、オートクレーブにエチレンボンベを直結して、エチレンを導入し、オートクレーブ内を5kg/cm2 まで加圧し、80℃に加熱した。消費されたエチレンを間欠的に追加しながら、エチレン圧を4〜5kg/cm2 に維持し、80℃で4時間反応を行なった。
【0091】
反応終了後、オートクレーブを冷却した後、開放し、得られた反応混合物の一部を採取し、ガスクロマトグラフで分析して、生成物とその収率を求めた。その結果、β−ミルセンの転化率は99%であり、目的物である4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエンの収量は461g(収率70%)であった。また、反応副生物である5,9−ジメチル−1,4,8−デカトリエンの収量は119g(収率18%)であった。
【0092】
次いで、窒素雰囲気下、1000mL容量の攪拌翼付きガラス製セパラブルフラスコに、上記反応混合物200gを仕込み、続いて、これに5%水酸化ナトリウムと2%エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムとを含む水溶液67gを加え、室温で20分間攪拌した後、20分間静置した。水層を抜き出した後、油相に水67gを加え、更に、室温で20分間攪拌した後、20分間静置して、水層を抜き出した(反応混合物の水処理)。この後、セパラブルフラスコの気相部に空気(酸化剤)を200mり/分の割合で流通させながら、油相を30分間攪拌した(油相の空気酸化処理)。
【0093】
このように処理した油相160g(4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン79gを含む。)を300mL容量のフラスコに移し、140℃に加熱し、140℃で5時間加熱した。加熱終了後、油相の一部を採取して、ガスクロマトグラフで分析し、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエンと5,9−ジメチル−1,4,8−デカトリエンからの反応生成物を調べた。その結果、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエンと5,9−ジメチル−1,4,8−デカトリエンの転化率はいずれも0%であって、重合に関与しない内部オレフィン化合物への異性化は認められなかった。
【0094】
実施例2
窒素雰囲気下、1000mL容量の攪拌翼付きガラス製セパラブルフラスコに、実施例1にて得られた反応混合物200gを仕込み、続いて、5%水酸化ナトリウムと2%エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムとを含む水溶液67gを加え、室温で20分間攪拌した後、20分間静置した。水層を抜き出した後、油相に水67gを加え、更に、室温で20分間攪拌した後、20分間静置して、水層を抜き出した。この後、油相に0.1%過酸化水素水溶液63gを加え、室温で20分間攪拌した後、20分間静置して、水層を抜き出した。
【0095】
このようにして得られた油相160g(4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエンを79g含む。)を、300mL容量のフラスコに移し、140℃に加熱し、140℃で5時間加熱した。加熱終了後、油相の一部を採取して、ガスクロマトグラフで分析し、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエンと5,9−ジメチル−1,4,8−デカトリエンからの反応生成物を調べた。その結果、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエンと5,9−ジメチル−1,4,8−デカトリエンの転化率はいずれも0%であって、重合に関与しない内部オレフィン化合物への異性化は認められなかった。
【0096】
比較例1
実施例1において、エチレンと7−メチル−3−メチレン−1,6−オクタジエン(β−ミルセン)との反応終了後、得られた反応混合物に空気酸化処理を行なわなかった以外は、実施例1と同様に処理して、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエンと5,9−ジメチル−1,4,8−デカトリエンからの反応生成物を調べた。その結果、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエンの34%が4−エチリデン−8−メチル−2,7−ノナジエンに異性化しており、また、5,9−ジメチル−1,4,8−デカトリエンの93%が5,9−ジメチル−2,4,8−デカトリエンに異性化したことが確認された。
【0097】
比較例2
実施例1において、反応混合物の水洗処理と油相の空気酸化処理を行なわなかった以外は、実施例1と同様に処理して、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエンと5,9−ジメチル−1,4,8−デカトリエンからの反応生成物を調べた。その結果、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエンの5%が4−エチリデン−8−メチル−2,7−ノナジエンに異性化しており、また、5,9−ジメチル−1,4,8−デカトリエンの40%が5,9−ジメチル−2,4,8−デカトリエンに異性化したことが確認された。

Claims (9)

  1. エチレンと一般式(I)
    Figure 0003859302
    (式中、fは1〜5の整数を示し、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示し、R3は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基又は一般式(II)
    Figure 0003859302
    (式中、nは1〜5の整数を示し、R4、R5及びR6はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を示す。但し、R4、R5及びR6は同時に水素原子であることはない。)
    で表わされるアルケニル基を示す。但し、R1、R2及びR3は同時に水素原子であることはない。)
    で表わされる共役ジエン化合物とを遷移金属触媒の存在下に反応させて、一般式(III)
    Figure 0003859302
    (式中、f、R1、R2及びR3は前記と同じである。)
    で表わされる分岐鎖状ポリエン化合物を製造する方法において、反応終了後、生成した分岐鎖状ポリエン化合物を含む反応混合物を水と酸化剤にて処理して、上記遷移金属触媒を失活させた後、反応混合物から上記分岐鎖状ポリエン化合物を蒸留によって分離することを特徴とする分岐鎖状ポリエン化合物の製造方法。
  2. エチレンと一般式(I')
    Figure 0003859302
    (式中、fは1〜5の整数を示し、nは1〜5の整数を示し、R1、R2、R4、R5及びR6はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。但し、R4、R5及びR6は同時に水素原子であることはない。)
    で表わされる共役ジエン化合物とを遷移金属触媒の存在下に反応させて、一般式(III')
    Figure 0003859302
    (式中、f、n、R1、R2、R4、R5及びR6は前記と同じである。)
    で表わされる分岐鎖状ポリエン化合物を製造する方法において、反応終了後、生成した分岐鎖状ポリエン化合物を含む反応混合物を水と酸化剤にて処理して、上記遷移金属触媒を失活させた後、反応混合物から上記分岐鎖状ポリエン化合物を蒸留によって分離することを特徴とする分岐鎖状ポリエン化合物の製造方法。
  3. 共役ジエン化合物が7−メチル−3−メチレン−1,6−オクタジエンである請求項1に記載の分岐鎖状ポリエン化合物の製造方法。
  4. 共役ジエン化合物が7,11−ジメチル−3−メチレン−1,6,10−ドデカトリエンである請求項2に記載の分岐鎖状ポリエン化合物の製造方法。
  5. 遷移金属触媒が鉄、コバルト、ニッケル、ロジウム又はパラジウムから選ばれる遷移金属の化合物と有機アルミニウム化合物との反応によって得られる触媒である請求項1又は2に記載の分岐鎖状ポリエン化合物の製造方法。
  6. 遷移金属の化合物が、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンを配位子として有する鉄、コバルト、ニッケル、ロジウム又はパラジウムから選ばれる遷移金属の錯体である請求項1又は2に記載の分岐鎖状ポリエン化合物の製造方法。
  7. 酸化剤が酸素である請求項1又は2に記載の分岐鎖状ポリエン化合物の製造方法。
  8. 酸化剤が過酸化水素である請求項1又は2に記載の分岐鎖状ポリエン化合物の製造方法。
  9. エチレンと共役ジエンとの反応終了後、得られた反応混合物を水で処理した後、酸化剤で処理する請求項1から8のいずれかに記載の分岐鎖状ポリエン化合物の製造方法。
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