JP3876038B2 - 柿渋と結合したカフェイン凝集沈殿物及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はカフェイン含有食品産業廃棄物の肥料化法に関し、さらに詳しくはカフェイン含有食品産業廃棄物を柿渋で処理することによってカフェイン等の植物生育阻害物質を凝集させて低減させることにより、カフェイン含有食品産業廃棄物を早期に肥料化する方法、及び前記方法によって得られるカフェイン凝集沈殿物及びカフェイン含有食品産業廃棄物に関する。
【0002】
【従来の技術】
国内の食品工場から1年間に排出される産業廃棄物は約1200万トンで全産業の約3%である。そのうち、コーヒー粕などのカフェイン含有食品産業廃棄物は約13万トンと言われており、従来からこれらの約60%が接触業者に委託して廃棄されている(コーヒーマーケット、帝飲食糧新聞、1993年9月5日号)。
【0003】
しかしながら、最近、環境破壊などの社会および地球規模での問題から、これらの産業廃棄物のリサイクルが望まれている。
【0004】
例えばコーヒー粕などのカフェイン含有食品廃棄物の再利用法としては以下の方法が考えられている:
▲1▼炭化させて活性炭やコーヒー炭とする。
▲2▼ビニールシート等を被せて3〜5ケ月放置し、微生物を用いてコンポスト化し
特殊肥料とする。
▲3▼牛ふんなどと混合して完熟堆肥化すると悪臭発生防止効果があることから、稲わら、モミガラなどと混合して家畜ふんを堆肥化する(月刊フードケミカル、 No. 9、103(1995)、浅井ら:畜産の研究、第49集、No. 6、70
4−706(1995))。
▲4▼コーヒー粕堆肥は放線菌密度を高め病原菌に対して拮抗効果を示すことから、病気に強い肥料として利用する(鬼頭ら:日本土壌肥料学会要旨集、第39集
、Part II 、323(1993))。
【0005】
しかし、いずれの方法も使用にあたっては最低3〜5ケ月の放置が必要であり、この間の匂いの問題や放置場所の確保など幾つかの問題を抱えている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らはかかる従来技術の現状に鑑み、工場あるいは家庭から排出されるコーヒー粕などのカフェイン含有食品廃棄物を長期間放置することなく、すぐにこれらの廃棄物を利用することを考えた。この場合、廃棄物に含有するカフェインの問題を解決しなければならない。カフェインには選択毒性があり、1600ppmの濃度ではマメ科の植物(ケツルアズキ、カラスノエンドウ)の発芽、生育を全く阻害しないが、マメ科以外の植物(ハリビユ、カラムスギ、イヌビエ)の発芽をそれぞれ100,73,20%阻害する( S. J. H. Rizvi , D. Mukerji 及び S. N. Mathur ,Agric. Biol. Chem.,45(5)、1225−1226(1981))。
また、コーヒー粕の添加では1 w/w%以上の施用によってイタリアンライグラス、シロクローバの生育が抑制され、2 w/w%の施用によってコマツナ、シュンギク、トマトの生育が抑制される(鬼頭ら:日本土壌肥料学会要旨集、第39集
、Part II 、323(1993))。
【0007】
このようにカフェイン含有食品廃棄物はカフェインの持つ植物に対する生育抑制作用のため、その利用にあたっては該廃棄物中のカフェイン濃度を低減することが求められている。
【0008】
本発明はかかる従来技術の問題点を解消するために創案されたものであり、その目的とするところはカフェイン含有食品廃棄物中のカフェイン等の植物生育阻害物質を凝集させて低減させることにより、前記廃棄物を早期に肥料化する方法を提供することにある。また、本発明の目的は前記肥料化法によって得られるカフェイン凝集沈殿物及びカフェイン含有食品産業廃棄物を有効に利用することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはかかる目的を達成するために食品産業廃棄物中のカフェイン等の植物生育阻害物質を低減するための手段について鋭意検討した結果、柿渋にカフェイン等の植物生育阻害物質との結合能があることを見出し、本発明の完成に至った。また、本発明者らは柿渋と結合したカフェイン凝集沈殿物及び柿渋によってカフェインを低減させたカフェイン含有食品産業廃棄物がそれぞれ植物生育促進物質及び肥料として有用であることを見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
本発明は植物生育促進物質として使用することを特徴とする柿渋と結合したカフェイン凝集沈殿物及びその製造方法である。
【0011】
本発明で使用する柿渋とは渋柿の若い果実から搾った汁を発酵させ濾した液をいい、本発明ではこの柿渋製造中に廃棄される柿渋抽出粕もこれに含まれる。柿渋は別名、柿タンニン、柿抽出物とも呼ばれており、主成分は縮合型タンニンである。柿渋抽出粕にも同様の縮合型タンニンが数%含まれている。柿渋の縮合型タンニンは蛋白質やアルカロイドと常温で強い結合を示して凝集する性質があり、植物の生育を阻害しない高分子ポリフエノールから構成される。日本酒業界ではこの柿渋の性質を利用して清酒の蛋白滓下げを行っているが、本発明の肥料化法もこの特異な性質を利用するものである。
【0012】
本発明の肥料化法の対象になるカフェイン含有食品産業廃棄物としては、カフェインを含有するものであれば特に限定されないが、例えばコーヒー粕、茶(ひき茶、玉露、煎茶、番茶、ウーロン茶、紅茶、だん茶など)の粕、コーラーの果実の抽出粕、カカオの種子の抽出粕などが挙げられる。
【0013】
本発明の肥料化法では柿渋とカフェイン含有食品産業廃棄物の接触方法は特に限定されないが、例えばカフェイン含有食品産業廃棄物を柿渋で洗浄することによって、カフェイン含有食品産業廃棄物に柿渋を直接混合することによって、又は柿渋を添加した土壌にカフェイン含有食品産業廃棄物を混合することによって行うことができる。なお、前記接触によって得られた柿渋と結合したカフェイン凝集沈殿物及び柿渋によってカフェインを低減させたカフェイン含有食品産業廃棄物はそれぞれ植物生育促進物質及び肥料として有効に利用することができる。
【0014】
本発明の肥料化法において使用する柿渋の量はその使用目的等によって異なるが、例えばコーヒー粕を肥料化する場合、コーヒー粕1Kgに対して10〜100ml、好ましくは20〜50mlの割合で使用することができる。
柿渋の量が上記範囲未満であればカフェイン濃度の低減効果は乏しく、上記範囲を越えるとカフェインを多量に除去できてもコストがかかるため好ましくない。
【0015】
本発明の肥料化法によって作られたカフェイン含有食品産業廃棄物の肥料は使用目的に応じて土壌と適当な割合で混合して使用することができ、その対象植物はホウレン草、二十日大根等の野菜のみならず、果樹、花き等に広く使用することができる。
【0016】
なお、本発明者らは柿渋を種々分画した結果、柿渋にはカフェインとの結合能(凝集沈殿)が高い画分と全く結合しない画分があることをつきとめている。また、柿渋はカフェインのみならず、その他の植物生育に影響をおよぼすアルカロイドやタンパク質等も除去していることがわかっている。
これは柿渋のポリフエノールが広範囲の分子量分布を有するため、結合能が各々異なっているからである。
このような柿渋の性質を利用すれば所望の植物生育抑制物質を効率良く除去することが可能である。
【0017】
【実施例】
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0018】
柿渋は、国税庁所定分析法注解(財団法人 日本醸造協会発行、平成5年第四版)によるコロイド滴定値150のものを用いた。また、カフェインの定量は、以下の条件で液体クロマトグラフィーを用いてカフェイン標準液とのピーク面積比で求めた:
カラム:ODS−5(野村化学(株)製 Develosil ODS-HG-5)
4.6φ×150mm
溶 媒:メタノール/水=15:85
流 量:1ml/min
検出器:254nm
【0019】
実施例 1
レタス、二十日大根の種子(日本農産種苗(株)製)を2日間水に浸して発芽させた後、図1に示すようなガラス瓶に植え替え、それを25℃の恒温室、15W蛍光燈下40cmのところに置いて10日間育成した。その際、所定量のカフェイン(関東化学(株)製、無水カフェイン一級試薬使用)及び柿渋(水に対して1.0 v/v%を直接添加)を予めガラス瓶中に溶かし込み、それぞれの生育状況を比較した。生育状況は植物育成後の根元から第一葉までの長さを個体数12の平均値として求めた(但し、対照(カフェイン無添加)の平均値を100として換算する)。
【0020】
レタス、二十日大根の上記実験結果は以下のとおりである。
【0021】
【0022】
上記実験結果から明らかなように、レタスの育成ではカフェイン100ppmで12%、カフェイン500ppmで68%の生育阻害がおこったが、1.0 v/v%の柿渋の添加によりいずれのガラス瓶もカフェインの白色沈殿を生じ、生育状況は対照と実質的に差がなかった。
また二十日大根の育成ではカフェイン50ppmで19%、カフェイン300ppmで36%の生育阻害がおこったが、レタスの場合と同様、1.0 v/v%の柿渋の添加でカフェインは白色沈殿物として除去され、生育は対照と実質的に差がなかった。
【0023】
実施例 2
下記工程で製造されるコーヒーエキスを抽出した後のコーヒー抽出粕をコーヒー粕として使用した:
このコーヒー粕1Kgに対して柿渋原液50mlに相当する量を5 v/v%水溶液に稀釈して直接添加・混合した後、一晩(12時間)放置したところ、コーヒー粕中のカフェイン濃度は95ppmから16ppmに減少した。
この実験結果から、50ml/コーヒー粕(Kg)程度の柿渋添加によりコーヒー粕中のカフェイン濃度を1/5以下に減少できることがわかった。
【0024】
実施例 3
実施例2で使用したコーヒー粕(カフェイン95ppm含有)を以下の(a)〜(d)の方法でそれぞれ処理し、これらのコーヒー粕と土(「箱根土」と呼ばれるものを使用)を1:4の割合で混合した土壌でホウレン草と二十日大根の生育状況を比較した。なお、生育状況は植物育成後の重量を個体数の平均値として求めた(但し、対照(a)の平均値を100として換算する)。
(a)コーヒー粕を全く使用しない場合(対照)
(b)柿渋未処理のコーヒー粕を使用した場合
(c)コーヒー粕1Kgに対して柿渋原液50mlに相当する量を5 v/v%水溶液に稀釈して直接添加・混合した後、一晩(12時間)放置した場合
(d)(c)の処理後、水洗し、柿渋や沈殿物を洗い流したもの
【0025】
ホウレン草を上記の土壌で36日間育成した結果、個体数15の平均値は(a)100±35、(b)0、(c)100±18、(d)0であった。(b)の方法では全く生育しなかったが、(c)の方法では対照区(a)と全く差がない程生育し、柿渋処理の効果が認められた。
また二十日大根を上記の土壌で44日間育成した結果、個体数10の平均値は(a)100±17、(b)30±10、(c)35±10、(d)72±24であった。(b)の方法と比較すると(d)の方法で柿渋処理の効果が認められた。
【0026】
実施例 4
実施例3と同様にして(a)〜(d)の方法で接触したコーヒー粕と土を1:2の割合で混合した土壌でホウレン草と二十日大根の生育状況を比較した。
【0027】
ホウレン草を上記土壌で44日間育成した結果、個体数15の平均値は(a)100±33、(b)0、(c)102±18、(d)0で(c)の方法で柿渋処理の効果が得られた。
また二十日大根を44日間育成した結果、個体数10の平均値は(a)100±18、(b)30±7、(c)34±6、(d)73±25で(d)の方法で柿渋処理の効果が得られた。
【0028】
実施例 5
実施例4の実験後、同じ植物を再度同じ条件の土壌に植え替え、さらに35日間育成し、各植物の生育状況を比較した。
【0029】
この場合のホウレン草の個体数15の平均値は(a)100±21、(b)43±14、(c)118±28、(d)0であり、(c)の方法で若干生育が促進した。
また、二十日大根の個体数23の平均値は(a)100±12、(b)72±11、(c)70±16、(d)109±67であり、(c)〜(d)の方法で生育が促進した。
【0030】
実施例 6
コーヒー粕1Kg(カフェイン濃度95ppm)に水1lを加え、30分間煮沸し、カフェインを完全に抽出した後、柿渋50mlを添加した。生成した凝集沈殿物を濾過・水洗後、柿渋−コーヒー粕沈殿物を得た。
この柿渋−コーヒー粕沈殿物の植物成長促進効果を確認するため、以下の(a)〜(c)の区で二十日大根、ホウレン草の生育状況を比較した。なお生育状況は、植物育成後の重量を個体数の平均値として求めた(但し、(a)対照区の平均値を100として換算する)。
(a)コーヒー粕を全く使用しない土のみの区(対照)
(b)土に柿渋未処理のコーヒー粕を4:1の割合で添加した区
(c)土に上記柿渋−コーヒー粕沈殿物を添加した区(土と上記柿渋−コーヒー粕沈殿物製造時に使用したコーヒー粕を4:1の割合とする)
【0031】
二十日大根を上記(a)〜(c)の土壌で45日間育成した結果、個体数20の平均値は(a)100、(b)15、(c)113で柿渋−コーヒー粕沈殿物(c)の成長促進効果が認められた。
またホウレン草を上記(a)〜(c)の土壌で45日間育成した結果、個体数20の平均値は(a)100、(b)21、(c)114で柿渋−コーヒー粕沈殿物(c)の成長促進効果が認められた。
【0032】
実施例 7
実施例6の結果から柿渋−コーヒー粕沈殿物に植物成長促進効果が認められたので、市販のカフェインを用いて、柿渋−カフェイン沈殿物が、同様の効果を持つか否かについて検討した。
1%w/v のカフェイン水溶液1lを調整し、これに柿渋50mlを添加した後、生成した凝集沈殿物を濾過・水洗し、柿渋−カフェイン沈殿物を得た。
【0033】
この柿渋−カフェイン沈殿物を用いて、実施例6と同じ方法で二十日大根、インゲン豆の生育状況を比較した。
(a)土のみの区(対照)
(b)土に上記柿渋−カフェイン沈殿物を添加した区
二十日大根を上記(a),(b)の土壌で41日間育成した結果、個体数20の平均値は(a)100、(b)173であった。添加区(b)は対照区(a)と比較すると約1.7倍に成長し、明らかに柿渋−カフェイン沈殿物の成長促進効果が認められた。
またインゲン豆を上記(a),(b)の土壌で39日間育成した結果、個体数20の平均値は(a)100、(b)215であった。添加区(b)は対照区(a)と比較すると2倍以上に成長し、明らかに柿渋−カフェイン沈殿物の成長促進効果が認められた。
【0034】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明の肥料化法によれば柿渋による処理でカフェイン等の植物生育阻害物質を凝集させて低減させることができるので、カフェイン等の植物生育阻害物質を含有する食品産業廃棄物を早期に肥料化することができる。また、本発明の肥料化法によって得られた柿渋とカフェインの凝集沈殿物は優れた植物生育促進効果を有するので、植物生育促進物質として有効に利用することができる。
また、本発明の肥料化法によってカフェインを低減させたカフェイン含有食品産業廃棄物は植物生育を阻害しないので、有効に肥料として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1において水栽培に使用したガラス瓶の概略図である。
Claims (3)
- 植物生育促進物質として使用することを特徴とする柿渋と結合したカフェイン凝集沈殿物。
- カフェイン含有食品産業廃棄物からカフェインを水で抽出し、柿渋で処理することを特徴とする請求項1記載の柿渋と結合したカフェイン凝集沈殿物の製造方法。
- 前記カフェイン含有食品産業廃棄物がコーヒー粕である請求項2記載の製造方法。
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