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JP3889766B2 - 穴拡げ加工性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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穴拡げ加工性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、乗用車、トラック等の自動車や産業機械等に使用される高強度熱延鋼板およびその製造方法に関するものであり、特にその優れた穴拡げ加工性を活かして上記各種用途の部品素材として有効に活用できる高強度熱延鋼板、およびこうした熱延鋼板を製造するための有用な方法に関するものである。
近年、省エネルギーの観点からの自動車の燃費向上のための車体の軽量化や、自動車の衝突安全性の確保等を背景として、より高強度(例えば、引張強度で780MPa以上)の熱延鋼板の需要が増加してきている。またこうした高強度熱延鋼板が用いられる用途において、当該熱延鋼板には伸びは勿論のこと穴拡げ加工性が優れていることが要求される。こうしたことから、素材として用いられる高強度鋼板における穴拡げ性を改善するための技術が各種提案されている。
こうした加工用高強度熱延鋼板として、残留オーステナイトやマルテンサイトを有する複合組織鋼板が広く知られている。例えば特許文献1には、フェライト、ベイナイト、残留オーステナイトおよびマルテンサイト組織からなる複合組織鋼板であって、極低P鋼化、ミクロ組織や介在物の最大長さ等の制御、ミクロ組織の硬さ制御等によって、穴拡げ性を向上させる方法が提案されている。
また例えば特許文献2には、フェライトを主体としたフェライト−ベイナイト組織で、鋼中TiやNbと反応していない非固定炭素量と、時効処理時に粒界に析出して強度を高める未析出炭素量を制御した高強度鋼板が提案されている。更に、特許文献3には、ミクロ組織が主にフェライトからなり、ベイニティックフェライトとポリゴナル・フェライトで構成されるミクロ組織を有する高強度熱延鋼板とすることによって穴拡げ加工性を改善する技術が提案されている。またこの技術においては、上記組織を作り込むために、熱間圧延終了後からコイルに巻取る工程での冷却条件とそれを制御するための方法が開示されている。
しかしながら、これまで提案されている技術では、安定して良好な穴拡げ加工性を発揮できていないのが実情である。
特表2004−536965号公報、特許請求の範囲等 特開2003−342684号公報、特許請求の範囲等 特開2003−342684号公報、特許請求の範囲等
本発明は、上記した従来の高強度熱延鋼板が持つ問題を解決するためになされたものであって、その目的は、引張強度が780MPa以上の高強度熱延鋼板であって、優れた伸びおよび穴拡げ加工性を有する高強度熱延鋼板、並びにこうした高強度熱延鋼板を製造するための有用な方法を提供することにある。
上記目的を達成し得た本発明の高強度熱延鋼板とは、C:0.05〜0.15%(質量%の意味、以下同じ)、Si:1.50%以下(0%を含まない)、Mn:0.5〜2.5%、P:0.035%以下(0%を含まない)、S:0.01%以下(0%を含む)、Al:0.020〜0.15%、Ti:0.05〜0.2%を夫々含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼板であって、金属組織が60〜95体積%のベイナイトの他、固溶強化または析出強化したフェライトまたはフェライトとマルテンサイトを含む組織であり、当該鋼板の衝撃試験で得られる破面遷移温度vTrsが0℃以下である点に要旨を有するものである。
本発明の熱延鋼板においては、必要によって更に、(a)Ni:1.0%以下(0%を含まない)、(b)Cr:1.0%以下(0%を含まない)、(c)Mo:0.5%以下(0%を含まない)、(d)Nb:0.1%以下(0%を含まない)、(e)B:0.01%以下(0%を含まない)、(f)Ca:0.01%以下(0%を含まない)、(g)Cu:1.0%以下(0%を含まない)、等を含有させることも有効であり、含有させる元素の種類に応じて熱延鋼板の特性が更に改善される。
一方、上記のような高強度熱延鋼板を製造するに当っては、前記化学成分を有する鋼スラブを1150〜1300℃の温度範囲に加熱する工程と、加熱後の鋼スラブをAr3変態点以上の仕上げ温度で熱間圧延して鋼板とする工程と、熱間圧延後の鋼板を400〜550℃の温度域まで平均冷却速度:30℃/秒以上で冷却してコイルに巻取る工程と、巻取り後のコイルを300℃以下の温度まで平均冷却速度:50〜400℃/時で冷却する工程を含むようにして製造すれば良い。
本発明によれば、化学成分組成およびミクロ組織の他、破面遷移温度vTrsを適切に制御することによって、伸びおよび穴拡げ加工性に優れた熱延鋼板が実現でき、こうした熱延鋼板は板厚2mmにおいて、引張強度780MPa以上、伸びが20%以上、および穴拡げ率60%以上の高強度熱延鋼板となる。こうした熱延鋼板では、従来では成形性の観点から適用されなかった熱延鋼板を自動車や産業機械等の様々な部材に適用することができ、部材の低コスト化に寄与するばかりか、各種部品の板厚低減および自動車の衝突安全性の向上を可能とし、しいては自動車の高性能化に寄与するものとなる。
本発明者らは、穴拡げ加工性に優れた高強度熱延鋼板を実現するべく、様々な角度から検討した。その結果、鋼の化学成分組成を適切に調整したうえで、製造条件を規制し、鋼材のミクロ組織をフェライトおよびフェライトからなり、ベイナイト体積率が60〜95%とし、更にTiCおよび/またはNbやMoの炭化物をこの組織中に微細に析出させるようにすれば、引張強度が780MPa以上の鋼板が実現できることが判明した。また、コイルに巻取った後に、巻取りコイルの冷却条件を制御することによって、衝撃試験によって求められる破面遷移温度vTrsを制御することが可能となり、この破面遷移温度vTrsを適切な範囲となるようにすれば熱延鋼板の穴拡げ加工性を良好にできることを見出し、本発明を完成した。以下、本発明が完成された経緯に沿って、その作用効果について説明する。
780MPa以上の引張強度を有する鋼板において、伸びおよび穴拡げ加工性(以下、「穴拡げ性」と呼ぶ)を向上させるには、できるだけ低C化し、主相をベイナイト組織とすると共に、固溶強化および析出強化したフェライト組織を適切な体積分率で含有させることが有効であり、低C化することで、ベイナイトの硬度を低減させて、ベイナイトの延性を改善させると共に、固溶強化や析出強化したフェライトとの硬度差を小さくできることから、高い伸びと高い穴拡げ性を確保できるものと考えられる。しかしながら、同一組成、同一条件で熱間圧延された鋼板であっても、コイルによって穴拡げ性が変化することがある。
そこで、本発明者らは、穴拡げ性と靭性の関係について着目し、衝撃試験で求められる破面遷移温度vTrsと穴拡げ性の関係について調査したところ、これらには良好な相関関係があり、穴拡げ率(測定方法については後述する)で60%以上の良好な穴拡げ性を確保するためには、破面遷移温度vTrsを0℃以下となるようにすれば良いことを見出したのである(後記図1、3参照)。
上記の破面遷移温度vTrsの高い(即ち、靭性値の低い)鋼板について更に詳細に調査したところ、低温破壊させると粒界破壊すること、およびこの粒界破面をオージェ分析装置を用いて分析するとPの粒界偏析が生じていることが観察された。これに対して、靭性が良好(即ち、破面遷移温度が低い)とされる鋼板では、低温で破壊させても劈開破壊しか認められず、粒界に偏析した元素の有無については確認できないことが判明した。
上記のようなフェライト粒界に偏析するPは、巻取りコイルの冷却が徐冷となることによって、粒内に比べて不安定な粒界にPが拡散・偏析したものと考えることができた。本発明者らは、上記のようなPの偏析を防止すれば靭性を良好にできるとの観点から、その手段について更に検討を重ねた結果、拡散時間を短くすることが有効ではないかとの着想に基づいて、そのための具体的手段について様々な角度から検討を加えた。その結果、鋼板をコイルに巻取った後、300℃以下の温度範囲まで50℃/時(以下、「℃/hr」と記す)以上の平均冷却速度で冷却することによって、破面遷移温度vTrsが低くなって靭性値が向上し得ることが判明したのである(後記図2、4参照)。
本発明の熱延鋼板では、その基本的な機械的特性(降伏強度YS、引張強さTS、伸びEL等)を具備させるためには、その化学成分組成も適切に調整する必要があるが、本発明で規定する化学成分組成の範囲限定理由は次の通りである。
C:0.05〜0.15%
Cは強度向上元素として基本的な成分であり、鋼板の引張強度780MPa以上を確保するためには0.05%以上含有させる必要がある。しかしながら、C含有量が0.15%を超えると、ミクロ組織にフェライト以外の第2相(例えば、マルテンサイト等)が生成、増加してしまい、穴拡げ性が劣化することになる。尚、C含有量の好ましい下限は0.06%であり、好ましい上限は0.10%である。
Si:1.5%以下(0%を含まない)
Siはポリゴナルフェライトの生成を促進し、伸びおよび穴拡げ性を低下させずに強度を確保するのに有効は元素である。こうした効果はその含有量が増加するにつれて大きくなるが、過剰に含有されると表面性状が顕著に劣化すると共に、熱間変形抵抗を増大させ、鋼板の製造が困難になるので、その含有量は1.5%以下とすべきである。尚、Si含有量の好ましい下限は0.2%であり、好ましい上限は1.0%である。
Mn:0.5〜2.5%
Mnは鋼を固溶強化するのに有用な元素であり、780MPa以上の引張強度を確保するためには、少なくとも0.5%以上含有させる必要がある。しかしながら、Mnを過剰に含有させると焼き入れ性が高くなり過ぎて変態生成物を多量に生成し、高い穴拡げ率を確保することが困難になるので、2.5%以下とすべきである。尚、Mn含有量の好ましい下限は1.4%であり、好ましい上限は2.3%である。
P:0.035%以下(0%を含まない)
Pは、延性を劣化させずに、鋼を固溶強化するのに有効な元素であり、本発明では特に重要な元素である。Pの含有量が過剰になると、コイル巻取り後の冷却中に粒界中に偏析し、靭性を劣化させ、破面遷移温度vTrsを上昇させることになる。こうしたことから、Pの含有量は、0.035%以下とするのが良い。尚、P含有量の好ましい上限は、0.025%である。
S:0.01%以下(0%を含む)
Sは製造工程で不可避的に混入する元素であるが、穴拡げ性に悪影響を及ぼす硫化物系介在物を形成するので、できるだけ低減することが好ましい。こうした観点から、S含有量は0.01%以下に抑制するのが良い。尚S含有量の好ましい上限は、0.008%であり、より好ましくは0.005%以下とするのが良い。
Al:0.02〜0.15%
Alは溶製時の脱酸元素として添加され、鋼の清浄度を向上させるのに有効な元素であるが。こうした効果を発揮させためには、Alが0.02%以上含有させる必要があるが、その含有量が過剰になるとアルミナ系介在物が多量に生成して表面疵の原因となるので、0,15%以下とする必要がある。尚、Al含有量の好ましい下限は0.025%であり、好ましい上限は0.06%である。
Ti:0.05〜0.2%
Tiは,フェライト中のCやNを析出物として析出強化し、フェライトを強化すると共に、フェライト中の固溶C量およびセメンタイト量を低減し、穴拡げ性を向上させるのに有効な元素であり、780MPa以上の引張強度を確保する上で重要な元素である。これらの効果を発揮させるためには、Ti含有量は0.05%以上とする必要がある。しかしながら、Ti含有量が過剰になると延性が劣化すると共に、上記効果も飽和するので0.2%以下とする必要がある。尚、Ti含有量の好ましい下限は0.08%であり、好ましい上限は0.18%である。
本発明の熱延鋼板においては、上記成分の他はFeおよび不可避不純物(例えば、VやSn等)からなるものであるが、必要によってNi,Cr,Mo,Nb,B,Ca、Cu等を含有することも有効である。これらの元素を含有させるときの範囲規定理由は次の通りである。
Ni:1%以下(0%を含まない)
Niは、鋼を固溶強化するのに有効な元素であるが、その含有量が過剰になるとその効果が飽和して経済的に不利となるので1%以下とするのが良い。Ni添加による上記効果はその含有量が増大するにつれて大きくなるが、フェライト単相組織鋼で780MPa以上の引張強度を確保という観点からしてして、Niは少なくとも0.1%含有させることが好ましく、より好ましくは0.2%以上含有させるのが良い。また、Ni含有量の好ましい上限は0.8%であり、より好ましくは0.5%以下とするのが良い。
Cr:1.0%以下(0%を含まない)
Crは、鋼中Cを析出物にして析出強化し、フェライトを強化するのに有効な元素であるが、その含有量が過剰になってもその効果が飽和して経済的に不利となるので1.0%以下とするのが良い。Cr添加による上記効果はその含有量が増大するにつれて大きくなるが、上記効果を有効に発揮させるためには、そのCrは少なくとも0.1%含有させることが好ましく、より好ましくは0.2%以上含有させるのが良い。また、Cr含有量の好ましい上限は0.8%であり、より好ましくは0.5%以下とするのが良い。
Mo:0.5%以下(0%を含まない)
Moは炭化物としてフェライト中に析出し、フェライトを析出強化するうえで非常に有効な元素である。また巻取りコイルが冷却されるときに、フェライト粒界にPが偏析し、靭性値を低下させ、破面遷移温度vTrsが上昇するのを防止することにも有効に作用する。こうした効果はその含有量が増加するにつれて大きくなるが、Moの含有量が過剰になるとその効果が飽和するので0.5%以下とすることが好ましい。
Nb:0.1%以下(0%を含まない)
Nbは、熱間終了後のオーステナイトから生成するフェライトを微細化して、穴拡げ性の向上に寄与する元素である。また、鋼中CおよびNを析出物にして析出強化し、フェライトを強化するのに有効である。こうした効果はその含有量が増加するにつれて大きくなるが、その含有量が過剰になってもその効果が飽和して経済的に不利となるので、0.1%以下とするのが良い。Nbによる上記効果を有効に発揮させるためには、0.01%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.02%以上含有させるのが良い。尚、Nb含有量の好ましい上限は0.08%であり、より好ましいは0.07%以下とするのが良い。
B:0.01%以下(0%を含まない)
Bは、鋼の粒界エネルギーを低下させ、Pの粒界偏析を抑制するのに有効な元素である。こうした効果はその含有量が増加するにつれて大きくなるが、過剰に含有してもその効果が飽和するので、0.01%以下とすることが好ましい。尚、B含有量の好ましい下限は0.001%であり、より好ましい上限は0.005%である。
Ca:0.01%以下(0%を含まない)
Caは鋼板中の硫化物を球状化し、穴拡げ性を向上させるのに有効な元素であるが、その含有量が過剰になるとその効果が飽和するので0.01%以下とすることが好ましい。Ca添加による効果を有効に発揮させるためには、Caは0.001%以上含有させることが好ましい。尚、Caのより好ましい上限は0.005%である。
Cu:1.0%以下(0%を含まない)
Cuは、Ti、Nbと共に添加した場合、TiCおよびNbCの均一微細析出を促進し、微細析出による強度上昇と更に穴拡げ性も向上するので有効な元素であるが、その含有量が過剰になってもその効果が飽和して経済的に不利となるので1.0%以下とするのが良い。Cu添加よる上記効果はその含有量が増加するにつれて大きくなるが、上記効果を有効に発揮させるためには、Cuは少なくとも0.1%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.3%以上含有させるのが良い。また、Cu含有量の好ましい上限は0.8%である。
本発明の熱延鋼板では、高強度で且つ高い穴拡げ性を有し、延性に優れたものとするためには、金属組織の構成も重要な要件となる。高強度と高い穴拡げ性を実現するためには、高強度でありながらマルテンサイトよりもフェライトとの硬度差が小さいベイナイトを主相とし、且つ延性を確保するためにフェライトを含有させる必要がある。こうした観点から、金属組織中のベイナイト相は60〜95体積%の範囲とすることによって、高強度で加工性の良好な鋼板とすることができる。
本発明の鋼板における金属組織は、基本的に(ベイナイト+フェライト)であるが、フェライトの一部がマルテンサイトになっていても良い。尚、本発明において「フェライト」とは、ポリゴナルフェライト、擬ポリゴナルフェライトは含むものであり、アシュキュラーフェライトやベイニティックフェライト等の転位密度の高い組織は本発明における「ベイナイト」に含まれるものである。
次に、本発明の製造方法について説明する。本発明の高強度鋼板を製造するには、前述のごとく少なくともコイル巻取り後の冷却速度を適切に制御する必要があり、他の条件(熱間圧延条件)については通常の条件に従えば良いが、本発明の製造方法における基本的な製造条件は下記の通りである。
本発明の高強度熱延鋼板を製造するに当っては、まず上記のように化学成分組成に制御した鋼板を、常法によりスラブ鋳片とし、熱間圧延に供されることになるが、このときのスラブ加熱温度は1150℃以上とする必要がある。これはオーステナイト中にTiCやNb(C,N)が固溶し始める温度であり、この温度以上に加熱することによって、添加したTiやNbを鋼中に効果的に固溶させることができる。固溶したTiやNbは、熱間圧延終了後のフェライト生成時にフェライト中の固溶Cや固溶Nと反応し化合物として析出し、鋼板を析出強化することで、所望の引張強度を得ることができる。但し、この加熱温度があまり高くなり過ぎると、加熱炉の損傷やエネルギーコストの増大を招くことになるので、1300℃以下とする必要がある。
熱間圧延に際しては、基本的には通常の熱間圧延条件に従えば良く、特別な条件的制約はないが、熱間圧延仕上げ温度は、オーステナイト単相温度域であるAr3変態点以上の温度とする必要がある。熱間圧延温度が低下してAr3変態点未満となると、熱間圧延がフェライト−オーステナイトの二相組織で終了することになるので、加工フェライト(加工組織の意味)が残り、延性および穴拡げ性が劣化することになる。また、表層部に粗大組織が形成され、伸びが低下することになる。更に、熱間圧延中に固溶Nbや固溶Tiが炭窒化物として析出するが、この析出物は強度上昇には寄与しない。その結果、フェライト中に析出してフェライトの強度上昇に関与できなくなり、本来の添加目的である析出強化量が減少してしまい、鋼材の所望の強度が得られなくなる。
熱間圧延終了後の冷却では、400〜550℃の巻取り温度範囲まで、平均冷却速度を30℃/秒(以下、「℃/s」と記す)以上で冷却する必要があるが、これはオーステナイトから生成するベイナイト組織を均一な整細粒組織とし、延性および穴拡げ性を向上させるためである。即ち、このときの平均冷却速度が30℃/sよりも遅くなると、変態後のフェライトが粗大化し、またベイナイト内部に析出する炭化物の凝集、成長が進み、粗大な炭化物が生成して、延性および穴拡げ性が劣化することになる。
巻取り温度を400〜550℃の温度範囲とするのは、鋼のミクロ組織をベイナイト主体の組織とするためである。即ち、巻取り温度が400℃よりも低くなると、マルテンサイト組織が生成し、穴拡げ性が低下することになる。また、炭窒化物の析出強化量が不足してしまい、所望の強度が得られなくなってしまう。
一方、巻取り温度が550℃を超えて高温になると、セメンタイトが析出してパーライト組織が混入し、強度が却って低下することになる。また穴拡げ性も低下することになる。こうしたことから、巻取り温度は400〜550℃の温度範囲とする必要があり、好ましくは400〜500℃の温度範囲とするのが良い。
巻取った後のコイルの冷却では、鋼中Pのフェライト粒界への偏析を防止するために、巻取り温度から300℃以下の温度範囲までの平均冷却速度を50℃/hr以上とする必要がある。この平均冷却速度よりも遅くなると、冷却中にフェライト粒界へのPの析出が起こり、衝撃試験で求まる破面遷移温度vTrsが高くなり、良好な穴拡げ性が得られなくなる。
尚、コイルに巻取った後の冷却速度を上記のように確保する手段については、特に限定されるものではないが、例えば巻取りコイルに送風機を用いて衝風冷却する方法、衝風にミストを含ませ(衝風+ミスト)冷却する方法、巻取りコイルに散水ノズルを用いて水冷する方法、更には、水槽に巻取りコイルを浸漬する方法等が挙げられる。
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
実施例1
下記表1に示す化学成分組成を有する各種鋼スラブを、1250℃のスラブ加熱温度にて30分保持した後、通常の熱間圧延工程によって、仕上げ圧延温度を900℃で厚さ:4mmの熱延鋼板を得た。その後、平均冷却速度:30℃/sで冷却し、電気加熱炉を用いた600℃の巻取り温度で30分の巻取り処理後、その後の冷却速度を変えるため、冷却速度を制御した炉冷却、炉から取り出し後に放冷、衝風冷却、(衝風+ミスト)冷却、シャワー冷却、水槽への浸漬等による冷却を行い、各種熱延鋼板を得た。
Figure 0003889766
このようにして得られた熱延鋼板について、JIS5号試験片による圧延方向に直角方向(C方向)の衝撃試験を行って機械的特性(降伏強度YS、引張強さTS、伸びEL等)を測定する共に、穴拡げ性を下記の方法によって測定した穴拡げ率λで評価すると共に、破面遷移温度vTrsを下記の方法によって測定した。また、各鋼板のミクロ組織を、ナイタール腐食後、走査型電子顕微鏡にて、フェライト、ベイナイト、マルテンサイトを同定し、ベイナイト面積率を画像解析装置によって測定した。尚、衝撃試験片は、得られた熱延鋼板の両面を研削し、厚さ:2.5mmのサブサイズ試験片で試験を行った。
[穴拡げ率λ測定法]
初期穴直径:10mm(d0)の打ち抜き穴を60°円錐ポンチで打ち抜き側から押し広げ、割れが板厚方向に貫通した時点での穴径d(mm)を測定し、次式によって穴拡げ率λを測定した。
λ=[(d−d0)/d0]×100(%)[d0=10mm]
[破面遷移温度vTrsの測定方法]
機械加工によって作製したJIS4号衝撃試験片を用い、JIS Z2242に準拠した試験方法で衝撃試験を行い、JISに準拠した方法で脆性破面率(若しくは「延性破面率」)を求め、(試験温度vs脆性破面率)の曲線から、脆性破面率が50%となる遷移温度vTrsを求めた。
これらの結果を、製造条件と共に下記表2に示す。また、これらの結果に基づき、破面遷移温度vTrsと穴拡げ率λの関係を図1に、コイル巻取り後の冷却速度と破面遷移温度vTrsの関係を図2に、夫々示す。
Figure 0003889766
図1から明らかなように、破面遷移温度vTrsと穴拡げ率λには良好な相関関係が認められ、目標とする良好な穴拡げ率λ(λ=60%)を確保するためには、破面遷移温度vTrsを0℃以下とすれば良いことが分かる。尚、穴拡げ性に良否を判定する基準としては、「穴拡げ率λ:60%以上」とするが、これは高強度熱延鋼板が適用される各種の部材に加工するときに要求される特性レベルである。
一方、図2から明らかなように、巻取りコイルの冷却をシミュレートした冷却速度により、穴拡げ率λに影響する破面遷移温度vTrsが変化することが分かる。このとき破面遷移温度vTrsを、目標とする0℃以下に確保するためには、平均冷却速度で50℃/hr以上の冷却速度で冷却する必要があることが分かる。
このときの衝撃試験片についての破面をSEM観察したところ、破面遷移温度vTrsの高い試験片での脆性破面には、粒界破面が観察された。これに対して、破面遷移温度vTrsの低い試験片の脆性破面では、劈開破面のみが観察された。そこで、この粒界破面部をオージェ電子分光分析器を用いて測定した結果、粒界には高濃度のPを検出した。従って、このフェライト粒界に偏析したPが母材の靭性値を低下させ、穴拡げ試験時の亀裂伝播を抑制できなくなり、低い特性になるものと考えることができた。即ち、コイルの巻取り後の冷却速度を制御することによって、フェライト粒界に偏析するPの拡散が抑制され、穴拡げ率λ値の高い特性が得られることになることが分かる。
実施例2
下記表3に示す化学成分組成を有する各種鋼スラブを、1250℃のスラブ加熱温度にて30分保持した後、通常の熱間圧延工程によって、仕上げ圧延温度を900〜930℃で厚さ:4mmの熱延鋼板を得た。その後、平均冷却速度:30℃/秒で冷却し、電気加熱炉を用いた450〜650℃の巻取り温度で30分の巻取り処理後、その後の冷却速度を変えるため、冷却速度を制御した炉冷却、炉から取り出し後に放冷、衝風冷却、(衝風+ミスト)冷却、シャワー冷却、水槽への浸漬による冷却等を行い、各種熱延鋼板を得た。
Figure 0003889766
このようにして得られた熱延鋼板について、JIS5号試験片による圧延方向に直角方向の引張試験を行って機械的特性(降伏強度YS、引張強さTS、伸びEL等)を測定する共に、穴拡げ性および破面遷移温度を実施例1と同様の方法によって測定した。その結果を製造条件(圧延仕上げ温度、巻取り温度、巻取り後の冷却速度)と共に、下記表4に示す。また、これらの結果に基づき、破面遷移温度vTrsと穴拡げ率λとの関係を図3に、コイル巻取り後の平均冷却速度と破面遷移温度vTrsの関係を図4に夫々示す。
Figure 0003889766
図3から明らかなように、実施例1と同様に、破面遷移温度vTrsと穴拡げ率λには良好な相関関係が認められ、目標とする良好な穴拡げ率λ(λ=60%)を確保するためには、破面遷移温度vTrsを0℃以下とすれば良いことが分かる。また図4から明らかなように、巻取りコイルの冷却をシミュレートした冷却速度により、穴拡げ率λに影響する破面遷移温度vTrsが変化することが分かる。このとき破面遷移温度vTrsを、目標とする0℃以下を確保するためには、平均冷却速度で50℃/hr以上の冷却速度で冷却する必要があることが分かる。尚、図4の破線で囲んだ部分は、化学成分組成が本発明で規定する範囲を外れることによって、破面遷移温度vTrsが上昇したものである。
またこれらの結果から、次のように考察できる。試験No.12〜15、17、18、20〜25、27、28、30、31のものは、本発明で規定する要件の全てを満足するものであり、機械的特性および穴拡げ率ともに良好であり、高強度でしかも加工性の良好な熱間圧延鋼板が実現できていることが分かる。
これに対して、試験No.16、19、26、29、32〜39のものでは、本発明で規定するいずれかの要件を欠いており、機械的特性および穴拡げ性の少なくともいずれかの特性が劣化している。
まず、試験No.16、19、26、29のものでは、コイル巻取り後の平均冷却速度が小さいものであり、破面遷移温度vTrsが高くなって、良好な穴拡げ性が得られていない。また試験No.32、33のものでは、Si含有量が過剰の鋼板であり(表3の鋼種J)、破面遷移温度vTrsが高くなって、良好な穴拡げ性が得られていない。
試験No.34、35のものでは、Mn含有量が過剰の鋼板であり(表3の鋼種K)、延性(伸び)が低下すると共に、破面遷移温度vTrsが高くなって、良好な穴拡げ性が得られていない。試験No.36のものでは、P含有量が過剰の鋼板であり(表3の鋼種L)、破面遷移温度vTrsが高くなって、良好な穴拡げ性が得られていない。
試験No.37、38のものは、Ti含有量およびC含有量が夫々過剰の鋼板であり(表3の鋼種M、N)、延性(伸び)が低下している。試験No.39のものでは、C含有量が不足するものであり(表3の鋼種O)、引張強度が低下している。
実施例1での破面遷移温度vTrsと穴拡げ率λとの関係を示したグラフである。 実施例1でのコイル巻取り後の冷却速度と破面遷移温度vTrsとの関係を示したグラフである。 実施例2での破面遷移温度vTrsと穴拡げ率λとの関係を示したグラフである。 実施例2でのコイル巻取り後の冷却速度と破面遷移温度vTrsとの関係を示したグラフである。

Claims (9)

  1. C:0.05〜0.15%(質量%の意味、以下同じ)、Si:1.50%以下(0%を含まない)、Mn:0.5〜2.5%、P:0.035%以下(0%を含まない)、S:0.01%以下(0%を含む)、Al:0.02〜0.15%、Ti:0.05〜0.2%を夫々含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼板であって、金属組織が60〜95体積%のベイナイトの他、固溶強化または析出強化したフェライトまたはフェライトとマルテンサイトを含む組織であり、当該鋼板の衝撃試験で得られる破面遷移温度vTrsが0℃以下であることを特徴とする穴拡げ加工性に優れた高強度熱延鋼板。
  2. 更に、Ni:1.0%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1に記載の高強度熱延鋼板。
  3. 更に、Cr:1.0%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1または2に記載の高強度熱延鋼板。
  4. 更に、Mo:0.5%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の高強度熱延鋼板。
  5. 更に、Nb:0.1%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜4のいずれかに記載の高強度熱延鋼板。
  6. 更に、B:0.01%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜5のいずれかに記載の高強度熱延鋼板。
  7. 更に、Ca:0.01%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜6のいずれかに記載の高強度熱延鋼板。
  8. 更に、Cu:1.0%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜7のいずれかに記載の高強度熱延鋼板。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の高強度熱延鋼板を製造するに当たり、前記化学成分を有する鋼スラブを1150〜1300℃の温度範囲に加熱する工程と、加熱後の鋼スラブをAr3変態点以上の仕上げ温度で熱間圧延して鋼板とする工程と、熱間圧延後の鋼板を400〜550℃の温度域まで平均冷却速度:30℃/秒以上で冷却してコイルに巻取る工程と、巻取り後のコイルを300℃以下の温度まで平均冷却速度:50〜400℃/時で冷却する工程を含むことを特徴とする穴拡げ加工性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
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