JP3889946B2 - コンクリート爆裂防止用繊維及びこれを混入した耐爆裂性コンクリート体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリート建物の火災時等におけるコンクリート体の爆裂を防止するためのコンクリート爆裂防止用繊維及び該爆裂防止用繊維が混入された耐爆裂性コンクリート体に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンクリート建物は、火災時にその表面に亀裂が起こり、うろこ状に爆裂をおこして剥離する、いわゆるコンクリート爆裂現象が見られる。これはコンクリート体内部の水分が火災時の熱により水蒸気となって急激に膨張するためと見られている。この現象は特にコンクリート体成型時に水と反応するセメント、シリカ等の結合材の配合量を多くして圧縮強度を高めた高強度コンクリート体に著しいことが知られている。このようなコンクリート体の爆裂を防止するため、従来、コンクリート体にあらかじめ熱溶融性の合成繊維を混入しておき、火災時に発生する高温により合成繊維を溶融させ、その跡にできた空隙から内部に発生する水蒸気を放出し、内部圧力の増大を回避して爆裂を防止する方法が以下のように知られている。例えば、特開平6−321606号公報には、ポリプロピレン繊維やポリエステル繊維を空気連行剤と併せて混入する方法が記載されている。特開平8−189080号公報には、プレキャストコンクリート製の打ち込み枠にポリプロピレン繊維を混入する方法が記載されている。特開平11−256818号公報には、型枠内面に合成繊維を接着剤で貼り付けておきコンクリート打設時に剥離する合成繊維をコンクリートと混合させる方法が記載されている。特開平11−303245号公報には、コンクリート強度差を考慮してあらかじめ爆裂の深さを想定し、混入すべき繊維の種類、寸法、量を設定する方法が記載されている。特開2000−143322号公報には、500℃加熱時の重量残存率が30%以下のポリプロピレン繊維やビニロン繊維を混入する方法が記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のように高強度コンクリート体の火災時爆裂を防ぐための提案が多数なされているが、混入する合成繊維の溶融挙動に着目してより効果的な爆裂防止を図った例はなく、爆裂防止用繊維としてより適した繊維の追求はなされていないのが実状である。本発明者等はコンクリートが有するアルカリ分の溶出に着目し、コンクリートの養生時にコンクリート内部に爆裂防止のための空隙部を予め形成し得る少なくともアルカリ可溶樹脂が配合されて成る単一繊維又は複合繊維が高強度コンクリートの爆裂防止により効果的であることを見出し本発明に至った次第である。特に最近のコンクリートの高強度化に伴いセメントマトリックスの空隙が減少し、従来の爆裂防止用繊維では火災初期の水蒸気の膨張圧を吸収することができずに爆裂を生じていた問題点を本発明により解決しようとするものである。
【0004】
【発明が解決するための手段】
本発明のコンクリート爆裂防止用繊維は、少なくとも1成分がアルカリ可溶樹脂からなり、他の成分がアルカリ難溶又は非溶樹脂からなる複合繊維であって、アルカリ可溶樹脂が、樹脂1gを98〜100℃の1%の水酸化ナトリウム水溶液中にて30分間アルカリ減量処理した時のアルカリ減量率が50%以上の樹脂であり、アルカリ難溶又は非溶樹脂に対するアルカリ可溶樹脂のアルカリ溶解残質量比が1.3以上である複合繊維を以て、上記課題を解決するものである。また、該複合繊維が芯鞘型複合繊維であって、該芯鞘型複合繊維の芯部がアルカリ可溶樹脂から形成され、鞘部がアルカリ難溶又は非溶樹脂から形成されていることが好ましい。また、アルカリ可溶樹脂が共重合ポリエステル樹脂からなることが好ましい。
【0005】
本発明の爆裂防止用繊維をコンクリート体に対して0.01〜5.0vol%混入することにより、コンクリートの養生中にコンクリート中のアルカリ分の溶出によって該繊維のアルカリ可溶樹脂成分の少なくとも一部が溶けて体積減少し、その結果コンクリート内部に予め空隙を形成した耐爆裂性コンクリート体が得られる。このような予め空隙を形成されたコンクリート体は火災初期の水蒸気の膨張圧の吸収に有効に作用し、コンクリート体の爆裂防止に寄与する。
【0006】
【発明の実施の態様】
本発明のコンクリート爆裂防止用繊維は、少なくとも1成分がアルカリ可溶樹脂からなり、他の成分がアルカリ難溶又は非溶樹脂からなる複合短繊維等として適用される。本発明におけるアルカリ可溶樹脂とは、コンクリート養生中にコンクリートのアルカリ分によって溶解又は分解することにより体積減少しやすい樹脂のことであり、後述するように特定の条件にて所定値以上のアルカリ減量率を示す樹脂である。これに対しアルカリ難溶又は非溶樹脂とは、コンクリート養生中にコンクリートのアルカリ分によって体積減少しにくい樹脂、またはアルカリ分によって体積減少しない樹脂のことである。該アルカリ可溶樹脂は、溶融紡糸可能な重合体又は共重合体で、アルカリで溶解または分解することによって体積減少できる樹脂であり、より具体的には樹脂1gを98〜100℃の1%の水酸化ナトリウム水溶液中にて30分間アルカリ減量処理した時のアルカリ減量率が50%以上の樹脂である。アルカリ可溶樹脂として、特に、弱アルカリでも容易に溶ける共重合ポリエステル樹脂が好ましい。該共重合ポリエステルとしては、例えば、ポリアルキレングリコールやスルホネート基を有するテレフタル酸以外のジカルボン酸の1種又は2種を共重合したポリエチレンテレフタレート等の公知の共重合ポリエステル樹脂が適用しえる。また、前記アルカリ難溶又は非溶樹脂としてはこれも特に限定するものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテンあるいはこれらの共重合体、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ビニロン等が適用しえる。アルカリ難溶又は非溶樹脂として、爆裂防止性を考慮すれば火災時の熱溶融分解性の高いものほど好ましく、例えば、ポリプロピレンやその共重合体、ポリアセタール等がより好ましい。
【0007】
また前記複合短繊維の横断面形態としては、並列型、芯鞘型、海島型、花弁状分割型等に配列した形態が挙げられ、円形以外の異型、中空形態等でもよいが、コンクリート強度や前記アルカリ分による溶解、体積減少後の空隙確保性を考慮すれば芯鞘型複合繊維であって、該芯鞘型複合繊維の芯部をアルカリ可溶樹脂から形成し、鞘部をアルカリ難溶又は非溶樹脂から形成することが好ましい。また繊維の長さ寸法及び径は特に限定するものではないが、それぞれ3〜30mm、1〜20dtexが好ましい。このような形態、構成の繊維を用いることにより、コンクリート施行時は複合短繊維の形態のまま存在し、施工時における圧縮に対しても該繊維がつぶれにくい状態を維持し、施工後のコンクリート養生中にコンクリートが流動しない程度に硬化してからコンクリートのアルカリ分により徐々に芯部のアルカリ可溶樹脂が該繊維の両端部から溶解、体積減少していき、該複合繊維の芯部が空洞化していき中空繊維化し、この空洞部でもって爆裂防止用の空隙を形成しやすい複合短繊維となるのである。
【0008】
本発明においては、コンクリート体内部に予め爆裂防止用の空隙を設けることを主眼にするものであり、アルカリ分の影響によって溶解時期の違いはあってもアルカリ難溶樹脂も溶解されて空隙が形成されていてもよい。
【0009】
また、アルカリ難溶又は非溶樹脂に対するアルカリ可溶樹脂のアルカリ溶解残質量比が1.3以上である。ここでアルカリ溶解残質量比とは、アルカリ難溶又は非溶樹脂1gとアルカリ可溶樹脂1gをそれぞれ98〜100℃の1%の水酸化ナトリウム水溶液中にて30分間アルカリ減量処理した後の各々の質量を対比するものであり、該アルカリ難溶又は非溶樹脂のアルカリ減量処理後の質量を該アルカリ可溶樹脂のアルカリ減量処理後の質量で割った値である。該アルカリ溶解残質量比はより好ましくは2.0以上、さらに好ましくは4.0以上である。該アルカリ溶解残質量比を1.3以上とすることによって、該複合繊維をコンクリートに混入した場合にコンクリート養生中にコンクリートのアルカリ分により徐々に芯部のアルカリ可溶樹脂が繊維の両端部から溶解、体積減少していき、該複合繊維の芯部が空洞化していき中空繊維化し、この空洞部でもって予め爆裂防止用の空隙を形成しやすい複合繊維となるのである。該アルカリ溶解残質量比が1.3未満であると、コンクリートのアルカリ分による十分な溶解、体積減少する前にコンクリートが中性化してしまい前記複合繊維の溶解による空隙が予め形成しにくくなり爆裂防止効果の発現性に劣る。
【0010】
また、コンクリートに混入する爆裂防止用繊維量としては、0.01〜5.0vol%が好ましい。より好ましくは0.05〜3.5vol%である。0.01vol%未満では爆裂防止の効果に劣り、5.0vol%を超えるとコンクリート強度の低下に繋がり好ましくない。該混入繊維量は、コンクリート圧縮強度が高いほどセメントマトリックスの空隙が低下するため、繊維量も多くすることが好ましい。例えば、80N/mm2 以上の高強度コンクリートに対しては0.1〜3.5vol%が好ましい。
【0011】
本発明の爆裂防止用繊維は、好ましくは80N/mm2 以上、より好ましくは120N/mm2 以上の高強度コンクリートに混入することが好ましく、セメントマトリックスの空隙が少ない高強度コンクリートに適用するといっそう効果的である。
【0012】
本発明のコンクリート爆裂防止用繊維は、コンクリート養生中にコンクリートのアルカリ分によってアルカリ可溶樹脂が溶解、体積減少し、予めコンクリート内部に爆裂防止用の空隙を形成することによって火災初期の水蒸気爆発を抑制、防止するものである。また、前記アルカリ難溶又は非溶樹脂との複合繊維においては、予め形成された空隙が火災時には該アルカリ難溶又は非溶樹脂が熱溶解、又は熱分解することにより体積減少し、さらに増大した空隙を形成する、いわば2段階でコンクリート内部に空隙を設けることにより火災時のコンクリート爆裂を防止するものである。
【0013】
さらに詳しくは、80N/mm2 以上に高強度化された高強度コンクリートにおいては、通常のコンクリートと比較してセメントマトリックスの空隙が減少しているため、例えば火災時コンクリート表面が加熱された時に、火災の初期(約200℃までの温度域)にはコンクリート内の水分が水蒸気化しその膨張圧によって水蒸気爆発状態となり第1段階の爆裂が発生し易く、次にそれ以上に温度上昇した際の高温域ではコンクリート表面と内部の温度差により歪み圧が生じ第2段階の爆裂が生じ易くなる。従来のコンクリート体ではマトリックスの空隙自体がもともと多いためにこれらの内部圧力を吸収していた。本発明の爆裂防止用繊維は、コンクリート養生中に上記の通り予め空隙を形成しておくことにより高強度コンクリート特有のマトリックス不足分を補うものである。特に本発明のコンクリート内に混入された爆裂防止用複合繊維は、前記水蒸気爆発、コンクリート歪みによる2段階での爆裂現象に対応すべく2段階で空隙を設けて爆裂を抑制、防止しようとするものである。従来のポリプロピレン等の単一成分からなる爆裂防止用繊維ではこのような初期の水蒸気爆発に寄与することが困難であったのである。
【0014】
【実施例】
(実施例1) 芯成分にアルカリ可溶樹脂である共重合ポリエステル樹脂(製品名:ALKALI SOLUBLE Super−BR,カネボウ合繊(株)製)、鞘成分にアルカリ非溶樹脂である共重合ポリプロピレン樹脂(製品名:XK1167,日本ポリケム(株)製)を用いて300/285℃にて溶融紡糸し、44dtexの未延伸糸を得た。該未延伸糸を80℃で2.7倍湿式延伸し、アルキルフォスフェートカリウム塩を付与後、切断して、17dtex×10mmの本発明のコンクリート爆裂防止用芯鞘型複合短繊維を得た。該複合繊維をセメントと骨材を重量比で4:1の割合で配合したコンクリートに対して1vol%添加し、中心部に鉄筋を入れて40cmφ、80cm高のコンクリートブロックを作製した。この作成したコンクリートブロックを60日間自然養生させた後、該ブロック中の複合繊維の状態を確認したところ、該複合繊維の芯部が溶解されており空洞部を形成していた。このコンクリートブロックをJIS−A−1304に準じて加熱し、1100℃で5時間燃焼した。その結果、コンクリートブロックの表面は爆裂のないきれいな表面のままであった。尚、前記芯成分と鞘成分の樹脂各々1gを98〜100℃の1%の水酸化ナトリウム水溶液中にて30分間アルカリ減量した所、各々の残質量がそれぞれ0.24g、1gであって、アルカリ溶解残質量比は、1/0.24≒4.2であった。
【0015】
(実施例2) 使用した樹脂を上記共重合ポリエステル樹脂のみとした以外は実施例1と同様にして本発明のコンクリート爆裂防止用単一短繊維を得た。実施例1と同様にこれを添加したコンクリートブロックを作製し、この作成したコンクリートブロックを60日間自然養生させた後、該ブロック中の単一繊維の状態を確認したところ、該繊維が溶解し空洞部が形成されていた。このコンクリートブロックを同様にJIS−A−1304に準じて加熱し、1100℃で5時間燃焼した結果、コンクリート爆裂現象は確認されなかった。尚、該共重合ポリエステル樹脂1gを98〜100℃の1%の水酸化ナトリウム水溶液中にて30分間アルカリ減量処理した時のアルカリ減量率は76%であった。
【0016】
(比較例1) 繊維無添加の外は実施例1と同様にしてコンクリートブロックを作成し、同様の燃焼テストを行った。その結果、爆裂によりコンクリートブロックの表面部分が剥離して中心部の鉄筋が露出していた。
【0017】
(比較例2) 芯成分にアルカリ難溶樹脂であるポリエチレンテレフタレート樹脂を用いた以外は実施例1と同様にし芯鞘型複合繊維を得た。実施例1と同様にこれを添加したコンクリートブロックを作製し、この作成したコンクリートブロックを60日間自然養生させた後、該ブロック中の複合繊維の状態を確認したところ、該複合繊維の芯部は溶解されておらず空洞部が形成されていなかった。このコンクリートブロックを同様にJIS−A−1304に準じて加熱し、1100℃で5時間燃焼した。その結果、コンクリートブロックの表面部分に鱗状の水蒸気爆発跡が確認された。尚、前記芯成分と鞘成分の樹脂各々1gを98〜100℃の1%の水酸化ナトリウム水溶液中にて30分間アルカリ減量した所、各々の残質量がそれぞれ0.98g、1gであって、アルカリ溶解残質量比は、1/0.98≒1.0であった。
【0018】
【発明の効果】
本発明の爆裂防止用繊維は、高強度コンクリートでセメントマトリックスの空隙が少ないものに特に効果的であり、コンクリート打設後のコンクリート養生中にアルカリ分によって溶解、体積減少し、マトリックスで不足している空隙を補い、火災初期の水蒸気爆発の防止に寄与することができる。
特に本発明の爆裂防止用複合繊維は、水蒸気爆発、コンクリート歪みによる2段階での爆裂現象に対応すべく2段階で空隙を設けて爆裂を抑制、防止することができる。
Claims (5)
- 少なくとも1成分がアルカリ可溶樹脂からなり、他の成分がアルカリ難溶又は非溶樹脂からなる複合繊維であり、
アルカリ可溶樹脂が、樹脂1gを98〜100℃の1%の水酸化ナトリウム水溶液中にて30分間アルカリ減量処理した時のアルカリ減量率が50%以上の樹脂であり、
アルカリ難溶又は非溶樹脂に対するアルカリ可溶樹脂の下記アルカリ溶解残質量比が1.3以上である、
ことを特徴とする、コンクリート爆裂防止用繊維。
[アルカリ溶解残質量比:アルカリ難溶又は非溶樹脂1gとアルカリ可溶樹脂1gをそれぞれ98〜100℃の1%の水酸化ナトリウム水溶液中にて30分間アルカリ減量処理し、アルカリ難溶又は非溶樹脂のアルカリ減量処理後の質量をアルカリ可溶樹脂のアルカリ減量処理後の質量で割った値。] - 複合繊維が芯鞘型複合繊維であって、該芯鞘型複合繊維の芯部がアルカリ可溶樹脂から形成され、鞘部がアルカリ難溶又は非溶樹脂から形成されていることを特徴とする請求項1記載のコンクリート爆裂防止用繊維。
- アルカリ可溶樹脂が共重合ポリエステル樹脂からなることを特徴とする請求項1または2に記載のコンクリート爆裂防止用繊維。
- アルカリ難溶又は非溶樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテンもしくはこれらの共重合体、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、またはビニロンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコンクリート爆裂防止用繊維。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のコンクリート爆裂防止用繊維がコンクリート体に対して0.01〜5.0vol%混入されており、且つ混入された繊維の少なくとも一部が体積減少したことによる空隙が形成されていることを特徴とする耐爆裂性コンクリート体。
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