JP3894545B2 - スポット溶接方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、剛性が異なる板材を重ね合わせたワークをスポット溶接するためのスポット溶接方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属板材を重ね合わせたワークを一対の電極間に挟んで加圧することにより局部的に接触抵抗を小さくした箇所に大電流を流し、該電流より金属板材間の接触面にナゲット(碁石状の溶着部)を生じさせて溶接するスポット溶接が広く使用されている。そして、従来は、両電極チップのワークに対する加圧力が略々均等となるようにしていた。
【0003】
ここで、図5(a)に示したように、剛性が大きい2枚の厚板50,51の上に剛性が小さい薄板52を重ね合わせたワークW10をスポット溶接する場合、各電極チップ55,56のワークW10に対する加圧力Fを均等にすると、図5(b)に示したように、薄板52と厚板51が図中上方に撓んで変形する。そして、この場合、薄板52の剛性が厚板51,50よりも小さいため、薄板52の方がより変形し易い。
【0004】
そのため、薄板52と厚板51間の接触面積が厚板50,51間の接触面積よりも大きくなり、薄板52と厚板51間の接触抵抗が厚板50,51間の接触抵抗よりも小さくなる。
【0005】
したがって、この状態で電極チップ55,56間に通電すると、接触抵抗が小さい薄板52と厚板51間における発熱量は、接触抵抗が大きい厚板50,51間における発熱量よりも小さくなる。その結果、図6(a)に示したように、薄板52から厚板50に亘って形成されるナゲットN10が厚板50側に偏り、厚板50,51間から中散りが発生し、さらにナゲットN10が厚板50の表面に達して表散りやチップ溶着を生じるようになる。
【0006】
そこで、散りやチップ溶着を防ぐために通電量を減少させると、今度は図6(b)に示したように、形成されるナゲットN11が小さくなり、薄板52と厚板51間の溶接強度を確保することが困難になるという不都合があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記不都合を解消し、3枚の板材を剛性が最も低い板材を片側にして重ね合わせたワークの溶接強度を向上させることができるスポット溶接方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するためになされたものであり、第1の高張力鋼板を、第2の高張力鋼板と該第1の高張力鋼板及び該第2の高張力鋼板よりも剛性が低い軟板とにより挟んで重ね合せたワークを、一対の電極チップにより挟んでスポット溶接する方法において、軟板側に位置する一方の電極チップのワークに対する加圧力を、第2の高張力鋼板側に位置する他方の電極チップのワークに対する加圧力よりも小さくすることを特徴とする。
【0009】
かかる本発明によれば、剛性が最も低い板材側における前記ワークに対する一方の電極チップの加圧力が、他方の電極チップの加圧力よりも小さくなるようにしてスポット溶接が行われる。この場合、詳細は後述するが、電極チップの加圧力が小さい側である剛性が最も低い板材と他の板材間の接触抵抗が大きくなると共に、電極チップの加圧力が大きい側である剛性が高い2枚の板材間の接触抵抗が小さくなる。そのため、前記電極チップ間に通電したときに、剛性が最も低い板材と他の板材間との接触部における発熱量を増加させることができ、これにより、剛性が最も低い板材の溶接強度を高めることができる。
【0010】
ここで、剛性とは、外力に対して物体が形を変えまいとする性質であり、板材の場合は厚さと鋼種により変化する。例えば、鋼種が同じであれば板厚が大きいほど板材の剛性は高くなる。また、板厚が同じであれば鋼種のランク(引張り強度が大きいほどランクが高くなる)が高いほど板材の剛性が高くなる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態の一例について、図1〜図4を参照して説明する。図1は本発明のスポット溶接方法の実施に用いられるスポット溶接ガンの構成図、図2,図3は本発明のスポット溶接方法によるワークの溶接状況の説明図、図4は電極チップの形状の説明図である。
【0012】
図1を参照して、Rは溶接ロボットであり、該溶接ロボットRの動作端の手首部1にスポット溶接ガンGが搭載されている。そして、溶接ロボットRは、クランパーCによって支持されたワークW1の各打点位置にスポット溶接ガンGを移動し、ワークW1のスポット溶接を行う。
【0013】
スポット溶接ガンGは、手首部1に取付けられたガン支持ブラケット2に上下動自在に支持されたガン本体3を備えている。ガン本体3には、下方に延びるC形ヨーク4が取付けられており、該C形ヨーク4の下部の先端に固定電極チップである下チップ5が取付けられている。
【0014】
また、ガン本体3の上端には、サーボモータを駆動源とする加圧部6が搭載されており、加圧部6によりガン本体3内のボールねじ機構(図示しない)を介して上下動するロッド7がガン本体3の下方に突出し、該ロッド7の下端に下チップ5と対向させて可動電極である上チップ8が取付けられている。なお、上チップ8と下チップ5により本発明の一対の電極チップが構成される。
【0015】
ガン本体3は、ガン支持ブラケット2に固定されたリニアガイド11に上下方向に摺動自在に支持されている。そして、ガン支持ブラケット2の上端にサーボモータ10が搭載され、サーボモータ10に連結されたボールねじ9をガン本体3に固定されたナット12に螺挿してボールねじ機構を構成し、サーボモータ10の回転によりガン本体3を上下動させるようにしている。
【0016】
加圧部6とサーボモータ10の作動はガンコントローラ20によって制御され、ロボットRの位置制御によりスポット溶接ガンGがワークW1の各打点位置に到達したときに、ガンコントローラ20は、加圧部6とサーボモータ10とを作動させて、下チップ5と上チップ8との間にワークW1を挟んで加圧する。そして、この加圧状態で、ガンコントローラ20は、下チップ5と上チップ8間に通電してワークW1をスポット溶接する。
【0017】
ここで、図2に示したように、板厚が厚く剛性が高い2枚の鋼板(以下、厚板という)30,31の上に板厚が薄く剛性が低い鋼板(以下、薄板という)32を重ね合わせたワークW1をスポット溶接するときには、ガンコントローラ20に予め記憶されているティーチングデータに従って、薄板32側に位置する上チップ8のワークW1に対する加圧力FUを下チップ5のワークW1に対する加圧力FLよりも小さくする(FU<FL)。
【0018】
このようにFU<FLとするために、ガンコントローラ20は、先ず、サーボモータ10によりガン本体3を上動させて下チップ5をワークW1の下面に当接させると共に、加圧源6により上チップ8を下降させてワークW1の上面に当接させる。この場合、加圧源6の加圧力が上チップ8とガン本体3を介して下チップ5とに均等に作用する
次に、サーボモータ10によりガン本体3を押し上げる。この際、加圧源6を上チップ8のガン本体3に対する相対位置が変化しないように位置制御すれば、ガン本体3の押し上げにより、下チップ5の加圧力FLがガン本体3の押し上げ分だけ増加する。そのため、FU<FLとなる。
【0019】
また、加圧源6を上チップ8の加圧力FUが一定となるようにトルク制御するときには、ガン本体3を押し上げても上チップ8の加圧力FUは変化しないが、下チップ5の加圧力FLはガン本体3の押し上げ力の分だけ増加する。そのため、この場合にもFU<FLとなる。
【0020】
FU<FLとなると、撓み反力がFUとFLの差と等しくなるように、ワークW1は下方に撓む。そして、薄板32と厚板31間の接触圧力が厚板31,30間の接触圧力よりも小さくなるため、相対的にみると、薄板32と厚板31間の接触抵抗が大きくなると共に、厚板30,31間の接触抵抗が小さくなる。
【0021】
その結果、通電経路x1により電極チップ5,8間に通電したときに、薄板32と厚板31の接触箇所における発熱量が厚板30,31の接触箇所における発熱量に対して相対的に増加する。
【0022】
そのため、図2(b)に示したように、薄板32から厚板30に亘って偏りのない良好なナゲットN1が形成され、薄板32の溶接強度を確保できると共に、厚板30の下面に表散りやチップ溶着が生じることを防止することができる。
【0023】
また、図2では、厚さが異なる板材を重ね合わせた例を示したが、厚さが等しく剛種が異なる板材を重ね合わせたワークをスポット溶接する場合についても、本発明のスポット溶接方法の効果を得ることができる。
【0024】
図3(a)を参照して、同じ鋼種で厚さが等しい3枚の板材45a〜45cを重ね合わせた板材W2をスポット溶接する場合に、上チップ44の加圧力FUと下チップ43の加圧力FLを等しくすると(FL=FU)、板材45a〜45cの剛性は同じであるから、板材45a,45b間の接触抵抗は板材45b,45c間の接触抵抗と等しくなる。そのため、電極チップ43,44間に通電したときに、板材45a,45bの接触箇所における発熱量と板材45b,45cの接触箇所における発熱量とが等しくなり、板材45aから板材45cに亘って偏りのない良好なナゲットN2が形成される。
【0025】
しかし、一般に、使用する剛種の剛性が高くなる程、板材の電気抵抗が高くなる。そのため、図3(b)に示したように、剛性が高い剛種により形成された板材(以下、高張力鋼板という)47a,47bに剛性が低い剛種により形成された板材(以下、軟板という)46を重ね合わせたワークW3を、上チップ44の加圧力FUと下チップ43の加圧力FLを等しくして(FU=FL)挟むと、剛性が小さく接触面積が大きくなる軟板46と高張力鋼板47a間の接触抵抗は、剛性が高く接触面積が小さい高張力鋼板47a,47b間の接触抵抗よりも小さくなる。
【0026】
したがって、電極チップ43,44間に通電したときに、通電経路x2における電流密度が均一であれば、接触抵抗が低い軟板46と高張力鋼板47a間における発熱量の方が、接触抵抗が高い高張力鋼板47a,47b間における発熱量よりも少なくなる。
その結果、形成されるナゲットN3が高張力鋼板47b側に偏り、軟板46の溶接強度が不十分となると共に、ナゲットN3が高張力鋼板47bの表面に達して表散りやチップ溶着が生じ易くなる。
【0027】
その結果、形成されるナゲットN3が高張力鋼板47b側に偏り、軟板46の溶接強度が不十分となると共に、ナゲットN3が高張力鋼板47bの表面に達して表散りやチップ溶着が生じ易くなる。
【0028】
そこで、図3(c)に示したように、上チップ44の加圧力FUを下チップ43の加圧力FLよりも小さくして(FU<FL)、軟板46と高張力鋼板47a間の接触圧力を高張力鋼板47a,47b間の接触圧力よりも低くすることによって、軟板46と高張力鋼板47a間の接触抵抗を高めることができる。
【0029】
そして、このように、軟板46と高張力鋼板47a間の接触抵抗を高くした状態で電極43,44間に通電することによって、軟板46と高張力鋼板47a間の発熱量が増加し、これにより軟板46から高張力鋼板47bに亘って形成されるナゲットN4が軟板46側にシフトする。そのため、軟板46の溶接強度を向上させることができると共に、高張力鋼板47b側で表散りやチップ溶着が生じることを防止することができる。
【0030】
なお、本実施の形態では、図4(a)に示した先端を球面形状としたDR型の電極チップを用いたが、図4(b)に示した球面形状を更に扁平させたR型の電極チップや、図4(c)に示した先端を扁平させた円錐形状としたCF型の電極チップを用いてもよい。DR型及びCF型の電極チップは、損耗時の接触面積変化がR型の電極チップよりも少ないため、電極寿命の点で有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスポット溶接方法の実施に用いられるスポット溶接ガンの構成図。
【図2】本発明のスポット溶接方法によるワークの溶接状態の説明図。
【図3】本発明のスポット溶接方法によるワークの溶接状態の説明図。
【図4】電極チップの形状説明図。
【図5】従来方法によるワークの溶接状態の説明図。
【図6】従来方法によるワークの溶接状態の説明図。
【符号の説明】
W1…ワーク、G…スポット溶接ガン、C…クランパ、5,8…電極チップ、N1…ナゲット、x1…通電経路、30,31…厚板、32…薄板
Claims (1)
- 第1の高張力鋼板を、第2の高張力鋼板と該第1の高張力鋼板及び該第2の高張力鋼板よりも剛性が低い軟板とにより挟んで重ね合せたワークを、一対の電極チップにより挟んでスポット溶接する方法において、
軟板側に位置する一方の電極チップのワークに対する加圧力を、第2の高張力鋼板側に位置する他方の電極チップのワークに対する加圧力よりも小さくすることを特徴とするスポット溶接方法。
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