JP3895606B2 - 難燃性ポリエステル系人工頭髪用繊維 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、易セット性、セット保持性、耐熱性、耐ドリップ性、難燃性に優れたポリエステル系人工頭髪用繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレンテレフタレートを主体とするポリエステルからなる繊維は、高融点、高弾性率で優れた耐熱性、耐薬品性を有していることから、カーテン、敷物、衣料、毛布、シーツ地、テーブルクロス、椅子張り地、壁装材、人工頭髪、自動車内装資材、屋外用補強材、安全ネットなどに広く使用されている。
【0003】
かつら、ヘアーウィッグ、付け毛、ヘアーバンド、ドールヘアーなどの頭髪製品においては、従来人毛が、また人工頭髪としてモダクリル、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエステルなどが使用されてきた。人毛の提供は困難になってきており、人工頭髪の重要性が高まってきている。人工頭髪素材として適度な風合い、触感を有し、カールまたはストレートの各スタイル特性に応じた加工性の面から、特にモダクリルあるいはポリ塩化ビニルが多く使用されてきた。これらは素材としての難燃性の特長を併せ持つものであるが、いずれも耐熱温度の点では不十分であった。
【0004】
前記した種々の頭髪製品は、耐熱性、難燃性といった素材特性を持つのみでなく、美容性、デザイン性、商品性も兼ね備えるべきものであり、ストレートスタイルに加えてカールスタイルにも加工できることが要求される。これにはプレカールセットとして、人工頭髪繊維を製造、または後加工する工程において乾熱あるいは湿熱の熱源を用い、加熱状態で頭髪原料にカール形状を付与した後、冷却により形状を固定する熱セット法が一般的に用いられる。
【0005】
耐熱性が比較的高いポリエステルにおいても、耐熱性の低いモダクリル、ポリ塩化ビニルなどと同様、プレカールセットは比較的低温で行うのが操作性、コスト性などの面から好ましく、80℃〜120℃程度の温度で行われるのが一般的である。
【0006】
一方、それと同時に、ヘアーウィッグ及びヘアーアクセサリー等の頭飾製品、特にウィービングの場合は、頭に取り付けてからカールセットを施して用いることもあるため、ヘアーアイロンによる熱セットが多用される。このヘアーアイロンは一般的に人毛をカールセットするときに用いられるもので、150℃〜180℃前後の高温で使用される。更に、ヘアーアイロンの中でも、温度制御可能なコード付きアイロンであると操作に煩わしさが付きまとうため、ストーブ式ヘアーアイロンが使用されることが多い。このストーブ式ヘアーアイロンは、熱の供給源はストーブであり、ストーブ内で加熱したヘアーアイロンの余熱を利用するものであるが、ストーブから取り出すとヘアーアイロンの温度低下が顕著となるため、ストーブ内の温度を常に高温に保っておく必要がある。このため、セット時のヘアーアイロンの温度管理はラフになりがちであり、前記した温度よりも高温で使用される場合もある。
【0007】
その結果、このような用途の製品に従来の耐熱性の低い合成繊維からなる人工頭髪を使用すると、ヘアーアイロンにより熱セットを施した時に、高温のヘアーアイロンにより合成繊維が収縮による縮れを起こしたり、熱変形、さらには融着して製品外観が見苦しくなる。
【0008】
こういった理由から、人工頭髪用繊維は比較的低温でのプレカールが可能であるとともに、ヘアーアイロンを用いる高温でのカールセットも可能であることが望まれる。ポリエステル繊維は耐熱性に優れている反面、そのポリマー特性として、前記モダクリル繊維やポリ塩化ビニル繊維よりも硬く、触感、風合い等においてより人工的、すなわち不自然となりがちである。
【0009】
これらの問題を改善するために、原料ポリマー構成として例えばポリエチレンテレフタレートに比較的柔軟な成分、例えばポリブチレンテレフタレートを添加するといった方法が良く用いられる。この方法は触感、風合いを改善するとともに、より低温でのカールセットを可能とする。しかしながら同時に難燃性の低下と、耐熱性の低下を招くことになる。
【0010】
前記したように、近年になり前記モダクリルやポリ塩化ビニルに比べて、耐熱性に優れるポリエチレンテレフタレートに代表される、ポリエステルを主成分とする繊維を用いた人工頭髪繊維が提案されるようになってきた。しかしながら、ポリエステル繊維は可燃性素材であるため、難燃性において不十分であった。
【0011】
ポリエステル繊維の難燃性を向上させようとする試みは従来より種々なされており、例えばポリエステル樹脂にリン原子を含有する難燃モノマーを共重合する方法や、ポリエステル繊維に難燃剤を含有させる方法などが知られている。前者の難燃モノマーを共重合する方法としては、例えば、特公昭55−41610号公報には、リン原子が環員子となっていて熱安定性の良好なリン化合物を共重合する方法、また、特公昭53−13479号公報には、カルボキシホスフィン酸を共重合する方法、特開平11−124732号公報には、ポリアリレートを含むポリエステルにリン化合物を配合又は共重合する方法が提案されている。
【0012】
後者の難燃剤を含有させる方法としては、特公平3−57990号公報には、微粒子のハロゲン化シクロアルカン化合物をポリエステル繊維に含有させる方法、また、特公平1−24913号公報には、臭素原子含有アルキルシクロヘキサンを含有させる方法などが提案されている。
【0013】
これらの難燃化技術を人工頭髪に適用したものとしては、例えば、特開平3−27105号公報、特開平5−339805号公報などに、リン化合物を共重合したポリエステル繊維が提案されている。しかしながら、人工頭髪には高い難燃性が要求されるため、これらの共重合ポリエステルを人工頭髪に使用するためにはその共重合量を多くしなければならず、その結果、ポリエステルの耐熱性が大幅に低下し、溶融紡糸が困難になったり、火炎が接近した場合、着火し燃焼はしないが、溶融しドリップするという問題が発生する。
【0014】
一方、ポリエステル繊維に難燃剤を含有させる方法では、十分な難燃性を得るために、含有処理温度を150℃以上の高温にすることが必要であったり、含有処理時間を長時間にする必要があったり、又は大量の難燃剤を使用しなければならないといった課題があり、繊維物性の低下や生産性の低下、製造コストアップなどの問題が発生する。
【0015】
このように、従来のポリエステル繊維の物性に加え、ポリエステル繊維において両立することが困難である難燃性、耐ドリップ性、またポリエステル繊維が本来有している耐熱性、特に人毛と同程度の160〜200℃といった高温で熱セット可能な耐熱性を併せ持つ人工頭髪はいまだ得られていないのが現状である。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、耐熱性、強伸度など繊維物性を維持し、低温かつ高温でのセット性に優れ、また加えて難燃性、耐ドリップ性を有するといった、これまでにない難燃性ポリエステル系人工頭髪用繊維を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、ポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステル系繊維において、人工頭髪に要求される特性をすべて満たしうる繊維を得ることを見いだした。
具体的には、ポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルに、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリアミドよりなる群から選択される少なくとも一種のポリマーと、難燃剤と、ホスファイト系化合物とを溶融混練して得られる組成物を繊維化することで前記目的を達成しうること、またあるいは、反応型リン系難燃剤が共重合された熱可塑性共重合ポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルに、ポリアリレート又はポリカーボネート、ポリアミドよりなる群から選択される少なくとも一種のポリマーと、ホスファイト系化合物とを溶融混練して得られる組成物を繊維化することで前記目的を達成することを見出し、本発明に到達した。
【0018】
すなわち、本発明は、少なくとも180℃でのアイロンセットに耐え、かつ200℃における熱収縮率が5%以下である耐熱性を有し、さらに、限界酸素指数(LOI)が25以上の難燃性を有するポリエステル系人工頭髪用繊維に関し、好ましくは、80℃〜200℃のすべての温度範囲でのカールセットが可能であり、カールセットされた繊維を25℃、7日間静置した時のカール伸長率が35%以下となるポリエステル系人工頭髪用繊維に関する。
【0019】
更に好ましい実施態様として、繊維を構成する樹脂組成物の溶融粘度が、せん断速度600sec-1、温度280℃において50〜300Pa・secであり、更には融点が250℃以上である上記ポリエステル系人工頭髪用繊維に関する。
【0020】
また本発明は、繊維を構成する樹脂組成物中のポリマー成分のうち、ポリアルキレンテレフタレートが70重量%以上であることを特徴とするポリエステル系人工頭髪用繊維に関し、ここでポリアルキレンテレフタレートが、反応型リン系難燃剤が共重合された熱可塑性共重合ポリアルキレンテレフタレートであっても構わない。
【0021】
その好ましい実施態様として、繊維を構成する樹脂組成物中の他のポリマー成分として、ポリアリレート、ポリアミド、ポリカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種、好ましくはポリアリレートを10〜30重量%含有していることを特徴とする上記ポリエステル系人工頭髪用繊維に関する。
【0022】
さらに本発明は、繊維を構成する樹脂組成物が、ポリマー成分合計100重量部に対して難燃剤が1〜20重量部添加されている上記ポリエステル系人工頭髪用繊維に関し、ここで難燃剤がリン系であり、リン原子量換算でポリマー成分に対し0.05〜15重量%添加されていることが好ましい。
【0023】
また、別の好ましい実施態様として、繊維を構成する樹脂組成物が、ポリマー成分合計100重量部に対して、抗酸化剤が0.05〜5重量部添加されていることを特徴とする上記ポリエステル系人工頭髪用繊維に関し、ここで抗酸化剤がホスファイト系であるのが好ましい。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の、ポリエステル系人工頭髪用繊維について詳細に説明する。
【0025】
本発明のポリエステル系人工頭髪用繊維は、少なくとも180℃でのアイロンセットに耐え、かつ200℃における熱収縮率が5%以下である耐熱性を有し、さらに、燃焼試験における限界酸素指数(LOI)が25以上の難燃性を有する人工頭髪用繊維である。更に好ましくは、80℃〜200℃のすべての温度範囲でのカールセットが可能であり、カールセットされた繊維を25℃、7日間静置した時のカール伸長率が35%以下、より好ましくは27%以下となる人工頭髪用繊維である。ここでいう80℃〜200℃のすべての温度範囲でのカールセットが可能であるというのは、80℃〜100℃程度の低温でもプレカールセットが可能であると同時に、180℃〜200℃程度の高温に耐えうる耐熱性を有し高温でのアイロンセットが可能であるということを意味する。
【0026】
本発明のポリエステル繊維は、溶融粘度が、せん断速度600sec-1、温度280℃において50〜300Pa・secの樹脂組成物から構成されるのが好ましく、より好ましい溶融粘度は50〜240Pa・sec の範囲である。溶融粘度が50Pa・sec未満では溶融紡糸困難となり、安定した物性の繊維を得ることができない上に、完成後の頭髪製品に火炎が接近、あるいは燃焼した場合、溶融しドリップしやすいという問題が発生する。また、溶融粘度が300Pa・secを越えると溶融樹脂粘度が高すぎて溶融紡糸困難となり、安定して繊維を得ることが難しい。
【0027】
また、高温での熱加工性、すなわち上記ヘアーアイロン等を用いた高温カールセット性を好適に維持するためには、融点が250℃以上の樹脂組成物から構成されるのが好ましい。
本発明のポリエステル系頭髪用繊維は、ポリエステルを主成分とするものであり、上述したような特性を有するものであれば特に限定されないが、ポリアルキレンテレフタレート又はポリアルキレンテレフタレートを主体とした共重合ポリエステル(以下、ポリマー(A)という)と、ポリアリレート(B1)、ポリカーボネート(B2)、又はポリアミド(B3)よりなる群から選択される少なくとも一種以上のポリマー(以下、ポリマー(B)という)に、難燃剤(C)及びホスファイト系化合物(D)と添加し溶融混練して得られる組成物を繊維化したものが好ましい。
またあるいは、前記ポリマー(A)として反応型リン系難燃剤が共重合された熱可塑性共重合ポリアルキレンテレフタレートと、前記ポリマー(B)に、前記ホスファイト系化合物(D)を添加し溶融混練して得られる組成物を繊維化したものであっても好ましい。
【0028】
本発明で用いられるポリマー(A)は、ポリアルキレンテレフタレート又はポリアルキレンテレフタレートを主体とした共重合ポリエステルであり、これにはポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレート及び/又はこれらのポリアルキレンテレフタレートを主成分とし、少量の共重合成分を含有する共重合ポリエステルが挙げられる。前記において、主成分とは80モル%以上をいう。
【0029】
共重合成分としては、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スぺリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの多価カルボン酸及びそれらの誘導体、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジヒドロキシエチルなどのスルホン酸塩を含むジカルボン酸及びその誘導体、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、4−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトンなどが挙げられる。
【0030】
前記ポリマー(A)の共重合ポリエステルは、主体となるポリアルキレンテレフタレートの主鎖中及び/又は側鎖に前記共重合成分を公知の方法により重縮合すればよい。
【0031】
前記ポリマー(A)は、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、共重合ポリエステルよりなる群から選択される少なくとも1種の混合物が好ましい。ここでポリブチレンテレフタレートの含有量が高いと得られる繊維の耐熱性が低くなる傾向があるので、ポリマー全成分中30重量%以下にするのがより好ましい。
【0032】
前記ポリマー(A)の固有粘度は、0.5〜1.4が好ましく、0.6〜1.2がより好ましい。固有粘度が0.5未満では得られる繊維の機械的強度が低下し、1.4を超えると、分子量の増大に伴い溶融粘度が高くなり、溶融紡糸が困難になったり、繊度が不均一になる傾向がある。
【0033】
本発明においてはまた、前記のポリマー(A)として、反応型リン系難燃剤が共重合された熱可塑性共重合ポリアルキレンテレフタレートを用いることができる。本発明で用いられる反応型リン系難燃剤を共重合した熱可塑性共重合ポリアルキレンテレフタレートとは、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体、グリコール又はそのエステル形成性誘導体、及び、反応型リン系難燃剤を重縮合して得られる共重合ポリエステルをいう。
【0034】
芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸などのジカルボン酸及びそれらの誘導体、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジヒドロキシエチルなどのスルホン酸塩を含むジカルボン酸及びその誘導体などが挙げられる。
【0035】
グリコール又はそのエステル形成性誘導体としては、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール及びそれらの誘導体などが挙げられる。
【0036】
また、上記ジカルボン酸類、グリコール類と少量の共重合が可能な成分として、トリメリット酸、ピロメリット酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スぺリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの多価カルボン酸及びそれらの誘導体、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、4−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトンなどが挙げられる。
【0037】
前記反応型リン系難燃剤は、上記ジカルボン酸類、グリコール類と共重合可能なものであれば使用することができ、例えば、ジエチル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチルホスホネート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、トリス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィン、トリス(4−ヒドロキシブチル)ホスフィン、トリス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキシド、トリス(3−ヒドロキシブチル)ホスフィンオキシド、3−(ヒドロキシフェニルホスフィノイル)プロピオン酸などのリン含有有機化合物及びその誘導体などが挙げられる。前記反応型リン系難燃剤は、単独あるいは2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0038】
ポリマー(A)として、反応型リン系難燃剤が共重合された熱可塑性共重合ポリアルキレンテレフタレートを用いる場合、熱可塑性ポリエステル100重量部に対して、反応型リン系難燃剤の共重合量は、リン原子量換算で0.01〜8重量部であり、0.05〜5重量部がより好ましく、0.1〜3重量部がさらに好ましい。添加量が0.01重量部より少ないと難燃効果が得られ難くなり、8重量部より多いと機械的特性が損なわれる。反応型難燃剤を共重合させた熱可塑性共重合ポリエステルの製造は、公知の方法を用いることができ、ジカルボン酸およびその誘導体とジオール成分およびその誘導体と反応型難燃剤を混合し重縮合する方法や熱可塑性ポリエステルをエチレングリコールなどのジオール成分を用いて解重合し、解重合時に反応型難燃剤を混在させ、再度、重縮合させて共重合体を得る方法などが好ましい。
本発明で用いられるポリマー(B)は、ポリアリレート(B1)、ポリカーボネート(B2)、ポリアミド(B3)よりなる群から選択される少なくとも一種のポリマーであり、またこれらを2種以上混合して用いても良い。
【0039】
ここで、前記ポリアリレート(B1)は、芳香族ジカルボン酸成分と芳香族ジオール成分とからなる全芳香族ポリエステルを意味し、界面重合法、溶液重合法及び溶融重合法のいずれの方法で製造したものでもよい。前記ポリアリレート(B1)成分は、イソフタル酸とその誘導体及び/又はテレフタル酸とその誘導体と、芳香族ジオール成分とからなるポリアリレートから選ばれる1種又は2種以上の混合物が好ましい。
また、前記ポリカーボネート(B2)には、芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、脂肪族−芳香族ポリカーボネート等を挙げることができる。一般には、2,2−ビス(4−オキシフェニル)アルカン系、ビス(4−オキシフェニル)エーテル系、ビス(4−オキシフェニル)スルホン、ビス(4−オキシフェニル)スルフィドまたはビス(4−オキシフェニル)スルホキサイド系等のビスフェノール類からなる重合体、もしくは共重合体であり、目的に応じてハロゲンで置換された、ビスフェノール類を用いた重合体も含まれる。本発明においては入手の容易さなどから、2,2−ビス(4−オキシフェニル)アルカン系が好適に用いられる。
【0040】
また、前記ポリアミド(B3)には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)の単独重合体もしくはこれらの共重合体又はこれらの混合体が挙げられるが、耐熱性などの面からナイロン66の単独重合体が好適に用いられる。
【0041】
本発明において、人工頭髪用繊維として要求される難燃性を満たすために、前記のポリマー(A)として、上述したような反応型リン系難燃剤が共重合された熱可塑性共重合ポリアルキレンテレフタレートを用いるか、用いない場合には上記ポリマー成分に難燃剤(C)を添加することが好ましい。
【0042】
本発明で用いられる難燃剤(C)は、特に限定されないが、通常一般に用いられるリン系難燃剤が使用でき、代表的には、ホスフェート系化合物、ホスホネート系化合物、ホスフィネート系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、ホスホナイト系化合物、ホスフィナイト系化合物、ホスフィン系化合物などの有機リン系化合物が挙げられる。
【0043】
前記(C)成分は、ホスフェート系化合物、ホスホネート系化合物、ホスフィネート系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、ホスホナイト系化合物、ホスフィナイト系化合物、ホスフィン系化合物、及び縮合リン酸エステル系化合物よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、前記縮合リン酸エステル系化合物よりなる群から選択される少なくとも1種であることがさらに好ましい。
また、難燃剤(C)として、前記有機リン系化合物の他に、ハロゲン化シクロアルカン化合物や芳香族系及び芳香族エーテル系ハロゲン化合物、ビスフェノールA骨格ハロゲン化化合物、イミド系ハロゲン化化合物、ハロゲン化ポリスチレン等に代表されるハロゲン系化合物、前記ハロゲン系化合物とアンチモン化合物との併用、その他公知の難燃剤を使用してもよい。
また、前記のポリマー(A)として、反応型リン系難燃剤が共重合された熱可塑性共重合ポリアルキレンテレフタレートを用いる場合でも、ポリエステル繊維としての物性を損なわない範囲で難燃剤を添加することが可能である。
【0044】
本発明のポリエステル系繊維は、限界酸素指数(LOI)が25以上であることが必要である。前記したように、ポリエステル系繊維は可燃性素材であるため、難燃性において不十分であり、特に難燃化していない通常のポリエステル系繊維では、火炎の接近により容易に着火、延焼し、著しく燃焼する。さらに前記したようにドリップすなわち樹脂の溶融滴下を伴い、特に製品を頭部に装着した状態では非常に危険である。そのため、本発明のポリエステル繊維では上記の方法、すなわちポリマー(A)にポリマー(B)を分散し、さらに難燃剤を使用することで適切に難燃化し、またドリップ性などの問題を回避する。限界酸素指数が25未満では、繊維の難燃化において十分とは言えず、実際の製品の燃焼挙動においても安全に自己消火するレベルではないからである。
【0045】
本発明において、ポリマー成分としてポリマー(A)とポリマー(B)の混合物を用いた場合、ポリエステル系繊維を構成する樹脂組成物の相構造は、海島構造をとり、ポリマー(A)のポリエステル相が海で、ポリマー(B)が島になっている。本発明のポリエステル系人工頭髪用繊維において、80℃〜200℃でのカールセットを可能とするためには、前記ポリマー(A)とポリマー(B)の2成分がエステル交換反応、あるいはエステル−アミド交換反応をしないように、かつ繊維物性を維持できるように溶融混練する必要がある。すなわち、エステル交換反応、あるいはエステル−アミド交換反応によるポリエステル本来の耐熱性、溶融粘度、及び強度低下を防止する必要がある。
【0046】
前記ポリマー(A)とポリマー(B)の2成分を溶融混練すると、通常、エステル交換反応あるいはエステル−アミド交換反応が起こり得る。特にエステル交換反応は通常に2成分を溶融混練するだけでも起こり得るが、それを抑制するために混練時間を短くした場合には、均一で微細な分散ができなかったり、十分な混練時間を取った場合には、交換反応を引き起こし、均一に混ざり合ったりして、ポリマー(B)が分散した海島構造が形成されない。ポリマー(B)の分散を推進し、交換反応を抑制するために、エステル交換反応抑制能のある化合物として、本発明では抗酸化剤(D)を使用するのが好ましく、前記(D)成分としてはホスファイト系化合物を用いることがより好ましい。
【0047】
前記ホスファイト系化合物としては、トリオクチルホスファイト、トリデカニルホスファイトなどのトリアルキルホスファイト類や、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ(t−ブチル)フェニル)ホスファイトなどのトリアリルホスファイト類や、ジデカニルフェニルホスファイト、デカニルジフェニルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイトなどのアルキルアリルホスファイト類などのホスファイト系化合物が挙げられる。
【0048】
本発明において、ポリマー成分としてポリマー(A)とポリマー(B)の混合物を用いた場合、その重量比は、ポリマー(A)/ポリマー(B)=90/10〜70/30の範囲であるのが好ましく、88/12〜75/25の範囲であるのがより好ましい。上記範囲よりポリマー(A)が多くなると、繊維表面の凹凸が小さく少なくなるため、つや消し効果が得られなくなる。一方、上記範囲よりポリマー(B)が多くなると、エステル交換反応あるいはエステル−アミド交換反応が起こるため、機械的性質の低下やつや消し効果が得られなったり、溶融粘度が高くなりすぎ、溶融紡糸が困難になる。またポリマー成分として、ポリマー(A)とポリマー(B)以外に、他のポリマーを併用してもかまわない。
【0049】
ポリマー(A)として、反応型リン系難燃剤が共重合された熱可塑性共重合ポリアルキレンテレフタレートを用いない場合、(C)成分は、ポリマー(A)、ポリマー(B)などのポリマー成分合計100重量部に対して1〜20重量部添加するのが好ましい。(C)成分の添加量が1重量部未満では難燃効果が得られ難くなり、20重量部より多いと機械的特性が損なわれる。また(C)成分としてリン系難燃剤を用いる場合、ポリマー成分の合計100重量部に対して、リン原子量換算で0.05〜15重量部添加するのが好ましく、0.1〜12重量部添加するのがより好ましい。リン系難燃剤の添加量が0.05重量部未満では難燃効果が得られ難くなり、15重量部より多いと機械的特性が損なわれる。
【0050】
本発明において、(D)成分を使用する場合には、ポリマー成分の合計100重量部に対して、0.05〜5重量部添加するのが好ましく、0.1〜3重量部添加するのがより好ましい。(D)成分の添加量が0.05重量部未満では、エステル交換反応あるいはエステル−アミド交換反応が起こるため、機械的性質の低下やつや消し効果が得られなくなる。添加量が5重量部を超えると、耐熱性や繊維の機械的性質が低下したり、溶融粘度の低下により溶融紡糸加工時に糸切れを起こし、工程が不安定になる。
【0051】
本発明のポリエステル系繊維を構成する樹脂組成物の製造方法は特に制限されるものではなく、例えば、ポリマー(A)、ポリマー(B)などのポリマー成分に、場合によっては(C)成分、(D)成分をドライブレンドした後に、種々の一般的な混練機を用いて溶融混練する方法を挙げることができる。混練機の例としては、一軸押し出し機、二軸押し出し機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどが挙げられ、二軸押し出し機が好ましい。
【0052】
本発明のポリエステル系繊維は、通常の溶融紡糸法で製造することができる。すなわち、まず、押し出し機、ギアポンプ、口金などの温度を270〜310℃として上記樹脂組成物を溶融紡糸し、紡出糸条を紡糸筒を通過させた後、ガラス転移点以下に冷却し、50〜5000m/分の速度で引き取り未延伸糸が得られる。また、紡出糸条を冷却用の水を入れた水槽で冷却し、繊度のコントロールを行なうことも可能である。紡糸筒の温度や長さ、冷却風の温度や吹き付け量、冷却水槽の温度、冷却時間、引き取り速度は、吐出量及び口金の孔数によって適宜調整することができる。
【0053】
得られた未延伸糸は熱延伸するが、延伸は未延伸糸を一旦巻き取ってから延伸する2工程法及び巻き取ることなく連続して延伸する直接紡糸延伸法のいずれの方法によってもよい。熱延伸は、1段延伸法又は2段以上の多段延伸法で行われる。熱延伸における加熱手段としては、加熱ローラ、ヒートプレート、スチームジェット装置、温水槽などを使用することができ、これらを適宜併用することができる。
【0054】
前記熱延伸に続いて、熱処理を行う。ここで、熱処理の前に、必要に応じて紡糸油剤を付与しても良いし、熱処理後に紡糸油剤を付与しても構わない。熱処理には前記熱延伸の場合と同様に任意の加熱手段を用いることができる。前記熱延伸工程で得られた延伸糸を緊張または弛緩、及びこれらを併用して処理することにより、延伸糸の残留収縮応力を除去し形状を安定化し、完成後の人工頭髪製品を実際にカールセットしたときに大きく収縮したり、縮れたりすることを防止できる。
【0055】
熱処理温度としては160℃〜220℃で行うことが好ましく、さらに好ましくは180℃〜200℃である。熱処理温度160℃未満では、160℃を超える温度、とりわけ180℃以上でのカールセット時すなわちヘアーアイロン等の使用時に大きく収縮したり縮れたりすることがあり、また220℃を越える温度では繊維が軟化し、工程が不安定になる、繊維の外観が損なわれるなどの問題を生じることがある。本発明においては200℃における熱収縮率を5%以下にする必要があり、この熱処理が重要である。
【0056】
本発明のポリエステル系繊維の加工条件は、特に限定されるものではなく、通常のポリエステル繊維と同様に加工することができるが、使用する顔料、染料や助剤などは耐候性及び難燃性のよいものを使用することが好ましい。
【0057】
なお、本発明のポリエステル系繊維には、必要に応じて、難燃剤、耐熱剤、光安定剤、蛍光剤、酸化防止剤、静電防止剤、顔料、可塑剤、潤滑剤などの各種添加剤を含有させることができる。
【0058】
本発明のポリエステル系繊維は、美容熱器具(ヘアーアイロン等)を用いたカールセット性に優れ、カールの保持にも優れる。更に、繊維表面処理剤、柔軟剤などの油剤を使用し、触感、風合いを付与してより人毛に近づけることができる。
【0059】
また、本発明のポリエステル系繊維を人工毛髪として使用する場合には、人毛の他、モダアクリル、ポリ塩化ビニル、ナイロンなど他の人工毛髪素材と併用してもよい。
【0060】
【実施例】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0061】
尚、特性値の測定法は、以下のとおりである。
【0062】
(強度及び伸度)
インテスコ社製INTESCO Model 201型を用いて、フィラメントの引張強伸度を測定した。長さ40mmのフィラメント1本をとり、フィラメントの両端10mmを接着剤を糊付けした両面テープを貼り付けた台紙(薄紙)で挟み、一晩風乾して、長さ20mmの試料を作製する。試験機に試料を装着し、温度24℃、湿度80%以下、荷重1/30gf×繊度(デニール)、引張速度20mm/分で試験を行ない、強伸度を測定した。同じ条件で試験を10回繰り返し、平均値をフィラメントの強伸度とした。
【0063】
(熱収縮性)
セイコー電子工業(株)製SSC5200H熱分析TMA/SS150Cを用いて、フィラメントの熱収縮率を測定した。長さ10mmのフィラメント10本をとり、5.55mg/dtexの荷重をかけ、昇温速度3℃/分で30〜280℃の範囲で測定し、その結果より200℃での熱収縮率を求めた。
【0064】
(限界酸素指数)
16cm/0.25gのフィラメントを秤量し、端を軽く両面テープでまとめ、懸撚器で挟み撚りをかける。十分に撚りがかかったら、試料の真中を二つに折り2本を撚り合わせる。端を粘着テープで止め、全長7cmになるようにする。105℃で60分間前乾燥を行ない、さらにデシケーターで30分以上乾燥する。乾燥したサンプルを所定の酸素濃度に調整し、40秒後8〜12mmに絞った点火器で上部より着火し、着火後点火器を離す。5cm以上燃えるか、3分以上燃え続けた酸素濃度を調べ、同じ条件で試験を3回繰り返し、限界酸素指数とする。
(融点)
セイコー電子工業(株)製DSC220Cを用いて融点の測定を行った。フィラメントのサンプルをカッター又はハサミで細断し、10mgを精秤してアルミパンに入れて装置にセットした。測定温度範囲設定は−20℃〜340℃(実測定範囲は概ね−10℃〜290℃)、昇温速度は20℃/min、測定時の窒素流量は30ml/minとした。得られたチャートからメイン(最大)融解ピークトップを求め、これを融点とした。
(溶融粘度)
(株)東洋精機製作所製キャピログラフを用いて行った。テストスピードは50mm/min、オリフィス半径0.0500cm、バレル半径0.4775cm、バレル温度280℃として測定し、下記式より溶融粘度を算出した。
【0065】
せん断圧力 τ=P・r/2L=F・r/2πR2L (1)
せん断速度 γ=4Q/πr3=4V/60πr3 (2)
見かけ粘度 η=τ/γ (3)
(式中、Pはバレル内圧、Fは押出荷重、Rはバレル半径、rはキャピラリー半径、Lはキャピラリー長さ、Qはフロー値、Vは押出量、vは押出速度である。)
(ドリップ性)
繊度約50dtexのフィラメント100本を束ねて、一方の端をクランプで挟んでスタンドに固定して垂直に垂らす。固定したフィラメントに20mmの炎を接近させ、長さ100mmを燃焼させ、その時のドリップ数をカウントし、ドリップ数が5以下を○、6〜10を△、11以上を×とした。
【0066】
(コールドセット性)
160mm/0.1gのフィラメントを真っ直ぐに伸ばし、両端をテープで固定して、100℃で40分間加熱する。室温まで冷却した後に、85mmにカットし、二つ折りにして両端をミシン糸で結び、φ4mmの棒に釣り下げ、荷重が6.7mg/dtexになるように錘を付け、30℃、60%RHで24時間保持する。錘を外し、5分間静置した後に80mmにカットし、フィラメントの曲がり具合(角度)を測定する。これを低温での癖の付きやすさの指標とし、真っ直ぐ(180℃)に回復するのが最も好ましい。
【0067】
(カール保持力)
蓑毛にしたフィラメントをφ32mmのパイプに捲きつけ、100℃で60分間カールセットし、室温で60分間エイジングした後に、カールしたフィラメントの一端を固定し釣り下げ、初期のフィラメント長、7日後までのフィラメント長の経時変化を調べる。これをカールの付きやすさ、保持性の指標とし、初期長は短い方がよく、低温でカールセットが可能で、かつ、より高温でセットできるのが好ましい。
【0068】
また、7日間静置後のカール伸び率は、前記のカール保持力評価において、(7日静置後のフィラメント長−初期のフィラメント長)÷初期のフィラメント長×100により計算し百分率で表す。フィラメントの初期長に対する相対的な保持性の指標である。
【0069】
(アイロンセット性)
ヘアーアイロンによるカールセットのしやすさ、カール形状の保持性の指標である。フィラメントを180℃に加熱したヘアーアイロンにかるく挟み、3回扱き予熱する。この時のフィラメント間の融着、櫛通り、フィラメントの縮れ、糸切れを目視評価する。次に、予熱したフィラメントをヘアーアイロンに捲きつけ、10秒間保持し、アイロンを引き抜く。この時の抜きやすさ(ロッドアウト性)、抜いた時のカールの保持性を目視評価する。
【0070】
(実施例1〜10)
水分量100ppm以下に乾燥させたポリエステルとポリアリレート又はポリカーボネート又はポリアミドの混合物100重量部に対し、リン系難燃剤として縮合リン酸エステル化合物、及びホスファイト系化合物を表1に示す比率で混合し、着色用ポリエステルペレットPESM6100 BLACK(大日精化工業(株)製、カーボンブラック含有量30%)1.5重量部を添加してドライブレンドし、エクストルーダーに供給し、300℃で溶融混練し、ペレット化した後に、水分量100ppm以下に乾燥した。次いで、ノズル径0.5mmの丸断面ノズル孔を有する紡糸口金を用いて溶融ポリマーを吐出し、口金下30mmの位置に設置した水温50℃の水浴中で冷却し、100m/分の速度で巻き取って未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を80℃の温水浴中で延伸を行い、4倍延伸糸とし、200℃に加熱したヒートロールを用いて、100m/分の速度で巻き取り、熱処理を行い、単繊維繊度が50dtex前後のポリエステル系繊維(マルチフィラメント)を得た。
【0071】
(実施例11)
水分量100ppm以下に乾燥させた反応型リン系難燃剤共重合ポリエステル(HUVIS社製難燃PET、SBT−3)とポリアリレートの混合物100重量部に対し、ホスファイト系化合物を表1に示す比率で混合し、着色用ポリエステルペレットPESM6100 BLACK(大日精化工業(株)製、カーボンブラック含有量30%)1.5重量部を添加してドライブレンドし、エクストルーダーに供給し、300℃で溶融混練し、ペレット化した後に、水分量100ppm以下に乾燥した。次いで、ノズル径0.5mmの丸断面ノズル孔を有する紡糸口金を用いて溶融ポリマーを吐出し、口金下30mmの位置に設置した水温50℃の水浴中で冷却し、100m/分の速度で巻き取って未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を80℃の温水浴中で延伸を行い、4倍延伸糸とし、200℃に加熱したヒートロールを用いて、100m/分の速度で巻き取り、熱処理を行い、単繊維繊度が50dtex前後のポリエステル系繊維(マルチフィラメント)を得た。
【0072】
(実施例12)
水分量100ppm以下に乾燥させたポリエステルとポリアリレートの混合物100重量部に対し、臭素系難燃剤として臭素化ポリスチレン、及びホスファイト系化合物を表1に示す比率で混合し、実施例1〜8と同様にして単繊維繊度が50dtexのポリエステル系繊維(マルチフィラメント)を得た。
【0073】
実施例1〜12で得られた繊維について、溶融粘度、繊度、強度、伸度、熱収縮率、融点の測定結果、難燃性評価として、限界酸素指数、ドリップ性の評価結果、及び、人工毛髪の評価として、コールドセット性、カール保持力、アイロンセット性を評価した結果を表1に示す。実施例1〜12ではいずれも易セット性、セット保持性、耐熱性、耐ドリップ性、難燃性に優れたポリエステル系人工頭髪用繊維を得ることができた。
【0074】
【表1】
(比較例1)
水分量100ppm以下に乾燥させたポリエチレンテレフタレートとポリアリレートを表2に示す比率で混合し、この混合物100重量部に対し、縮合リン酸エステル化合物、及びホスファイト系化合物を表2に示す比率で混合し、着色用ポリエステルペレットPESM6100 BLACK(大日精化工業(株)製、カーボンブラック含有量30%)1.5重量部を添加してドライブレンドし、エクストルーダーに供給し、300℃で溶融混練し、ペレット化した後に、水分量100ppm以下に乾燥した。次いで、ノズル径0.5mmの丸断面ノズル孔を有する紡糸口金を用いて溶融ポリマーを吐出し、口金下30mmの位置に設置した水温50℃の水浴中で冷却し、100m/分の速度で巻き取って未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を80℃の温水浴中で延伸を行い、4倍延伸糸とし、200℃に加熱したヒートロールを用いて、100m/分の速度で巻き取り、熱処理を行い、単繊維繊度が52dtexのポリエステル系繊維(マルチフィラメント)を得た。しかしながら難燃性評価としての限界酸素指数、200℃での収縮率、ドリップ性においても満足のいく繊維を得ることができなかった。
【0075】
(比較例2)
水分量100ppm以下に乾燥させたポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレートを表2に示す比率で混合する以外は比較例1と同様にして、単繊維繊度が50dtexのポリエステル系繊維(マルチフィラメント)を得た。しかしながら人工毛髪の評価としてのカール保持力がやや悪く、またドリップしやすく、アイロンセットにおいても繊維の縮れや融着が生じロッドアウト性が悪いなど満足のいく繊維を得ることができなかった。
【0076】
(比較例3)
ポリエチレンテレフタレート65重量部、ポリアリレート35重量部とする以外は比較例1と同様にしてポリエステル系繊維(マルチフィラメント)を得ようとしたが、溶融粘度が高く、昇圧したために紡糸口金から吐出し繊維化することができなかった。
【0077】
(比較例4)
ポリエチレンテレフタレート80重量部、ポリアリレート20重量部とし、リン系難燃剤を無添加とする以外は比較例1と同様にして、単繊維繊度が48dtexのポリエステル系繊維(マルチフィラメント)を得た。しかしながら難燃性評価としての限界酸素指数、ドリップ性において満足のいく繊維を得ることができなかった。
【0078】
(比較例5)
ポリエチレンテレフタレート80重量部、ポリアリレート20重量部とし、リン系難燃剤を30部添加とする以外は比較例1と同様にして、単繊維繊度が51dtexのポリエステル系繊維(マルチフィラメント)を得た。限界酸素指数は高い値を示したものの、燃焼時にかなりドリップし、またアイロンセット性においても繊維の縮れや融着が生じロッドアウト性が悪いなど満足のいく繊維を得ることができなかった。
【0079】
(比較例6)
ポリエチレンテレフタレート85重量部、ポリアリレート15重量部とし、ホスファイト系化合物を無添加とする以外は比較例1と同様にして、単繊維繊度が50dtexのポリエステル系繊維(マルチフィラメント)を得た。しかしながら融点が大きく低下し、燃焼時にかなりドリップし、アイロンセットにおいても繊維の縮れや融着が生じロッドアウト性が悪いなど満足のいく繊維を得ることができなかった。
【0080】
比較例1〜6で得られた繊維について、強伸度、熱収縮率、の測定結果、難燃性評価として、限界酸素指数、ドリップ性の評価結果、及び、人工毛髪の評価として、コールドセット性、カール保持力、アイロンセット性を評価した結果を表2に示す。比較例1〜6ではいずれも目的とするポリエステル系人工頭髪用繊維を得ることはできなかった。
【0081】
【表2】
【0082】
【発明の効果】
本発明により、ポリエステル繊維の特長である耐熱性、強伸度などの繊維物性を維持することに加え、易セット性、セット保持性などの人工毛髪としての要求性能を満たし、さらに従来のポリエステル系人工頭髪用繊維にはなかった、耐ドリップ性、難燃性を得ることができる。
Claims (6)
- ポリエチレンテレフタレートを64重量%以上含有するポリエステル成分(A1)70〜90重量%と、
ポリアリレート,ポリカーボネート,及びポリアミドよりなる群から選択される少なくとも一種のポリマー成分(B)10〜30重量%と、
からなる樹脂成分100重量部に対し、
リン系難燃剤1〜20重量部とホスファイト系化合物0.05〜5重量部とを溶融混練して得られる樹脂組成物を繊維化して得られるポリエステル系人工頭髪用繊維。 - 反応型リン系難燃剤が共重合されたポリエチレンテレフタレート成分(A2)70〜90重量%と、
ポリアリレート,ポリカーボネート,ポリアミドよりなる群から選択される少なくとも一種のポリマー成分(B)10〜30重量%と、
からなる樹脂成分100重量部に対し、
ホスファイト系化合物0.05〜5重量部を溶融混練して得られる樹脂組成物を繊維化して得られるポリエステル系人工頭髪用繊維。 - 前記樹脂組成物の溶融粘度が、せん断速度600sec-1、温度280℃において90〜220Pa・secである請求項1または2のいずれかに記載のポリエステル系人工頭髪用繊維。
- 前記樹脂組成物の融点が250℃以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエステル系人工頭髪用繊維。
- 前記ポリマー成分(B)がポリアリレートである請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエステル系人工頭髪用繊維。
- 前記樹脂成分に対し、リン原子量換算で0.05〜15重量%のリン系難燃剤が添加されている請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリエステル系人工頭髪用繊維。
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