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JP3896656B2 - プラスチックフォトクロミックレンズの製造方法 - Google Patents
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、矯正用レンズ、ファッションレンズ等に用いられる、プラスチックフォトクロミックレンズの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フォトクロミズムとは、ある物質に紫外線を含む太陽光などの光を照射すると、速やかに物質の色が変化し、光の照射をやめて暗所に放置すると元の色に戻る可逆作用の事である。この性質を持ったプラスチックフォトクロミックレンズを製造するために、種々の製造方法が提案されている。
【0003】
一般に練り混み方法と呼ばれる方法として、例えば、フォトクロミック物質を重合性単量体と混合した後、成型用の型内に注入して、加熱、重合を行い、フォトクロミックレンズを得る方法が特開昭62−187784号公報に紹介されている。また、他の方法として溶剤染色方法が提案されている。例えばジエチレングリコールなどのアルコール系溶剤中に、スピロオキサジンのような有機調光物質を溶解して120℃に加熱した中に、プラスチックレンズを浸漬する染色方法が特開昭55−36284号公報に挙げられている。このような溶剤染色方法は、レンズ基材を後加工によりフォトクロミック性能を持たせることができるため、他品種、少量生産を要求されるメガネレンズ等には好ましい製造方法である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、練り混み方法によってフォトクロミック性能を付与した場合、レンズの中心部と外周部との厚みの差が大きいときに、発色濃度が中心部と外周部で差が表れる欠点がある。すなわち、強度のマイナスレンズで中心厚が薄いと、中心部の発色が薄くなり、逆に外周部の発色が濃くなる。
【0005】
溶剤染色方法によってフォトクロミック性能を付与する場合には、レンズ基材と溶剤の組み合わせによっては、レンズ基材の表面がダメージを受けて面アレ(レンズ表面に凸凹ができる状態)を起こし、レンズの外観が不良となる場合がある。また、上記、特開昭55−36284号公報のように120℃に溶剤の液温を上げた場合、耐熱性の低いレンズでは、高温によりレンズが変形する等の短所が存在する。
【0006】
したがってより好ましくは、水溶液中で100℃以下の温度でフォトクロミック性能を付与することが望ましい。具体的には、プラスチックレンズを染色する時に、分散染料を用いて染色するのと同様に、フォトクロミック物質を100℃以下の水溶液中に分散させ、その中にプラスチックレンズを浸漬してレンズの表面からフォトクロミック物質を含浸させて、レンズにフォトクロミック性能を付与することが望ましい。
【0007】
しかしながら、一般的なフォトクロミック物質は水に対する分散性が悪く、界面活性剤やその他の分散助剤を同時に水中に添加しても、そのままでは均一な分散性を得ることは非常に困難である。
【0008】
本発明では、レンズの厚みの差に起因する発色濃度の濃淡が発生せず、かつ、レンズ表面に溶剤によるダメージや高温による変形を与えずに、フォトクロミック性能をレンズに付与する方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するべく、本発明者らは鋭意研究を続けた結果、フォトクロミック物質を分散染料化した後、水溶液中に分散させ、この水溶液中にプラスチックレンズを浸漬することによって、前記目的を達成できることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明における、分散染料化の方法については、特に制限はないが、界面活性剤とフォトクロミック物質を混合する処理を行うことが好ましい。
【0011】
また、この際に使用される界面活性剤は、陰イオン系界面活性剤であることが、特に好ましい。
【0012】
さらに、本発明における分散染料化されるフォトクロミック物質としては、スピロオキサジン系、フルギミドまたはフルギド系、クロメン系のいずれかのフォトクロミック物質から選ばれる1種または2種以上からなることが好ましい。
【0013】
本発明による、プラスチックフォトクロミックレンズの製造方法によれば、矯正用レンズ、ファッションレンズ等に用いられる、プラスチックフォトクロミックレンズを製造することができる。
【0014】
本発明による、プラスチックレンズの製造方法は、成形後のレンズを後加工することによってフォトクロミック性能を持たせることができるため、他品種、少量生産を要求されるメガネレンズ等には好ましい製造方法である。
【0015】
本発明では、本来、水中での分散性が悪いフォトクロミック物質を、前処理にて分散染料化することによって、一般のプラスチックレンズの染色と同様の方法によって、レンズにフォトクロミック性能を付与することができる。フォトクロミック物質は、水中でレンズの表面から一様に含浸していくので、できあがったレンズは厚みの変化に影響を受けずに、レンズ全体が一様に発色する。また、水中で100℃以下の温度で処理を行うことによって、レンズに対する溶剤のダメージを避けることができ、かつ、100℃以上の熱が加わらないために、高温によるレンズの変形も起こさない。
【0016】
本発明で用いられる分散染料化とは、水中でフォトクロミック物質が均一に分散できるように、前処理を行うことであり、その方法に付いては特に限定されないが、一般的には以下のような方法が採られる。フォトクロミック物質を界面活性剤などの分散剤と混合したのち、コロイドミルやサンドミル、ディスパー等の解膠装置を用いて解膠を行い、平均粒度1μm以下程度の微粒子に分散化する。その後乾燥して粉体や顆粒状にするか、あるいは液状のまま使用する。この際に使用される界面活性剤の種類は特に限定されず、非イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性イオン系界面活性剤などが用いられる。非イオン系界面活性剤の具体例は、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどのアルキルアリルエーテル型、ポリオキシエチレン2−エチルヘキシルエーテルなどのアルキルエーテル型、ポリオキシエチレンオレエートなどのアルキルエステル型、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどのアルキルアミン型、ソルビタンオレエートなどのソルビタン誘導体型、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテルなどの多環フェニルエーテル型等が挙げられる。陰イオン系界面活性剤の具体例は、ジアルキルサクシネートスルホン酸Na
塩やナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物Na
塩などのスルホン酸型、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩などの硫酸エステル型等が挙げられる。陽イオン性界面活性剤の具体例としては、第四級アンモニウム塩型やアルキルイミダゾリンなどのイミダゾリン型等が挙げられる。両性イオン系界面活性剤の具体例としては、アルキルベタインなどのベタイン型が挙げられる。水溶液中での分散性をより良好にするために、陰イオン系界面活性剤を使用することが好ましい。なかでも、ジアルキルサクシネートスルホン酸Na
塩やナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物Na
塩などのスルホン酸型の陰イオン系界面活性剤が好ましい。
【0017】
フォトクロミック物質を分散染料化する際には、単独の界面活性剤を使用しても良い。また、十分な水溶液中での分散性を得るために、二つ以上の界面活性剤を使用して、フォトクロミック物質を分散染料化しても良い。
【0018】
このようにフォトクロミック物質を前処理し、分散染料化することによって水中での均一な分散が可能になり、一般の染色ポット等を使用してフォトクロミックレンズを製造することが可能となる。
【0019】
このとき使用するレンズはレンズ基材のままでも良いが、レンズ表面にハードコート等の表面層が存在していても、ハードコート層を透してレンズの内部にフォトクロミック物質が含浸していくため、フォトクロミックレンズを製造することは可能である。このときのハードコート層は、レンズ基材に対して、ハードコート層が一層のみの場合でも可能であり、ハードコート層と衝撃吸収コート層などをを組み合わせた二層以上の構造のものでも可能である。。
【0020】
本発明で使用されるフォトクロミック物質は特に限定されないが、レンズ表面からの含浸が容易であるためには分子量1000以下のフォトクロミック物質が好ましい。例えば、スピロオキサジン系フォトクロミック物質、フルギミドまたはフルギド系フォトクロミック物質、クロメン系フォトクロミック物質、スピロピラン系フォトクロミック物質、チオニン系フォトクロミック物質、アゾベンゼン系フォトクロミック物質、ビオローゲン系フォトクロミック物質等の有機フォトクロミック物質が挙げられる。
【0021】
これらの中でも、発色濃度、発色・退色速度、および耐久性などのフォトクロミック性能の点で、スピロオキサジン系フォトクロミック物質、フルギミドまたはフルギド系フォトクロミック物質、クロメン系フォトクロミック物質などが好ましい。
【0022】
メガネレンズ用として一般に用いられている、グレイやブラウンに発色するプラスチックフォトクロミックレンズを製造するためには、複数のフォトクロミック物質を組み合わせて使用することが好ましい。実際には、発色色調が青〜赤色であるスピロオキサジン系フォトクロミック物質およびフルギミドまたはフルギミド系フォトクロミック物質から選ばれる一種以上のフォトクロミック物質と、発色色調が橙〜黄色であるクロメン系フォトクロミック物質から選ばれる一種以上のフォトクロミック物質を組み合わせて使用することが好ましい。
【0023】
本発明で複数のフォトクロミック物質を組み合わせる方法としては、単独で分散染料化したフォトクロミック物質を、染色ポットなどの水中に投入する時点で混合しても良いし、また、分散染料化する時点で、複数のフォトクロミック物質を混合して、同時に分散染料化しても良い。
【0024】
本発明の分散染料化されたフォトクロミック物質を使って、プラスチックレンズにフォトクロミック性能を付与する際には、一般のレンズの染色で用いられている染色ポットを使用することができる。また、大型の水温調節された水槽を用いて、大量のレンズを同時に処理しても良い。
【0025】
本発明の分散染料化されたフォトクロミック物質を、染色ポットなどの水中に分散させる際に、更にフォトクロミック物質の分散を助けるために、界面活性剤などの分散剤を加えても良い。また、レンズにフォトクロミック物質が含浸していくスピードを速めるために、染色用のキャリアーを加えても良い。このとき染色用のキャリアーとしては、フェニルフェノールやベンジルアルコールなどがよく使われる。
【0026】
本発明によるプラスチックフォトクロミックレンズを、矯正用レンズやファッションレンズ、として用いる場合には、光線透過率を高め、表面反射によるちらつきを防止するために、反射防止膜を施す事が好ましく、さらに、レンズ基材と反射防止膜の密着性を高め、表面の傷防止のためにハードコート層を設けることが特に好ましい。
【0027】
ハードコート層の好ましい例としては、下記(イ)および(ロ)を主成分とするコーティング組成物を塗布し硬化させた物が挙げられる。
【0028】
(イ)少なくとも一種以上の反応基を有するシラン化合物の一種以上。
【0029】
(ロ)酸化ケイ素、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化タンタル、酸化タングステン、酸化アルミニウム等の金属微粒子;酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニア、酸化ケイ素、酸化鉄のうちの2つ以上を用いた複合金属微粒子;酸化スズと酸化タングステンの複合金属微粒子で酸化スズ微粒子を被覆した複合金属微粒子から選ばれる1種以上。
【0030】
(ロ)の成分は、ハードコートの屈折率を調整し、かつ、硬度を高めるのに有効な成分であり、単独または混合して用いることができる。しかし、(ロ)の成分だけでは成膜性が悪く、(イ)の成分を併用する事によって透明で強靭な膜が得られる。(イ)の成分は、そのまま使用することも可能であるが加水分解して使用する方が膜の耐水性や硬度を向上させることができることから好ましい。
【0031】
ハードコート層の厚さは、通常0.2μm〜10μm程度が好ましく、より好ましくは、1μm〜3μm程度である。また、本発明では、レンズ生地とハードコート層の間にプライマー層を設ける様なハードコートも使用できる。このプライマー層は、レンズ生地とハードコート層の密着性をより向上させたり、ハードコート処理後のレンズの耐衝撃性を向上させる効果がある。
【0032】
ハードコート層ならびにプライマー層のコーティングに際しては、好ましくは各層の原料成分をアルコール系または水系等の適当な溶媒系に希釈して、ディッピング、スピン、スプレー等の一般的なコーティング法を用いて塗布し、加熱硬化することで行うことができる。硬化は、単に加熱するだけでも可能であるが、適当な硬化触媒を添加する事でより短時間で硬い膜を形成する事が可能になる。硬化触媒の例としては、過塩素酸マグネシウムや過塩素酸アンモニウム等の過塩素酸塩類、アルミニウムアセチルアセトネート等のキレート化合物等が挙げられる。
【0033】
ハードコート層として、上記(イ)および(ロ)の成分は、両者のみでも十分な塗膜性能を得る事はできるが、ハードコート層の外観や耐久性および他の機能を付加させるために、他の成分を添加する事も可能である。たとえば、ハードコート層の耐水性を向上させ、あるいは、染色性を付与するためには、多価アルコール、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、またはエポキシ化合物を添加すると効果的である。使用できる多価アルコールとしては、たとえば、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、カテコール、レゾルシノール、アルカンジオールなどの二官能性アルコール、または、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの三官能性アルコール、または、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。多価カルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、マレイン酸、o−フタル酸、テレフタル酸、フマル酸、イタコン酸、オキザロ酢酸などが挙げられる。多価カルボン酸無水物としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、1,2−ジメチルマレイン酸無水物、無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、無水ナフタル酸などが挙げられる。また、エポキシ化合物としては、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、カテコール、レゾルシノール、アルカンジオールなどの二官能性アルコールのジグリシジルエーテル、または、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの三官能性アルコールのジまたはトリグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらの添加物を加えた場合には、特に硬化触媒を添加した方が硬度の高い膜を得る事ができる。
【0034】
さらに、ハードコート層の紫外線による劣化を防止するためには、紫外線吸収剤または酸化防止剤・光安定剤等を使用することができる。紫外線吸収剤または酸化防止剤・光安定剤等としては、例えば、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、ニッケル錯塩系、フェノール系、およびヒンダードアミン系の化合物等が使用できる。
【0035】
また、塗布時のユズ肌やハジキ等のコーティング不良を解消するためには、界面活性剤・フローコントロール剤を使用する事ができる。中でも、シリコーン系あるいはフッ素系の界面活性剤が有効である。
【0036】
矯正用レンズとしての使用では、前述のごとくハードコート層表面に反射防止膜を施すことによって、光学性能がさらにアップする。反射防止膜としては、屈折率の異なる薄膜を積層して得られる多層膜であり、反射率の低減されるものであれば、無機物でも有機物でも可能である。しかし、表面の硬度や干渉縞の防止を重視するためには、無機物からなる単層または多層の反射防止膜を設けることが最も好ましい。使用できる無機物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタニウム、酸化セリウム、酸化ハフニウム、フッ化マグネシウム等の酸化物あるいはフッ化物が挙げられ、イオンプレーティング、真空蒸着、スパッタリング等のいわゆるPVD法によって施す事ができる。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下本発明の詳細について実施例に基づき説明するが、これらに限定されるものではない。実施例中にでてくるフォトクロミック物質の構造を以下に示す。
【0038】
S−1:
【0039】
【化1】
Figure 0003896656
【0040】
S−2:
【0041】
【化2】
Figure 0003896656
【0042】
F−1:
【0043】
【化3】
Figure 0003896656
【0044】
F−2:
【0045】
【化4】
Figure 0003896656
【0046】
R−1:
【0047】
【化5】
Figure 0003896656
【0048】
R−2:
【0049】
【化6】
Figure 0003896656
【0050】
(フォトクロミック物質の分散染色剤化)
(実施例1)分散染料化されたフォトクロミック物質Aの調製
フォトクロミック物質としてS−1を10g用意する。アニオン性界面活性剤としてデスロールSH(日本乳化剤株式会社)を10g用意する。これらを乳鉢にて十分にすりつぶして、微粉末とする。ここに水20gを加え、十分に攪拌した後、乾燥機で水分を蒸発させる。固化した部分を取り出し、乳鉢にて十分にすりつぶして微粉末として、分散染料化されたフォトクロミック物質Aとする。
【0051】
(実施例2)分散染料化されたフォトクロミック物質Bの調製
フォトクロミック物質としてF−1を10g用意し、乳鉢で十分にすりつぶし微粉末状とする。液状の界面活性剤としてエスコール30(日本乳化剤)を20g用意し、この中に微粉末状のフォトクロミック物質を投入して、十分に攪拌する。攪拌後、乾燥機で水分を蒸発させ、固化した部分を取り出し、乳鉢にて再び十分にすりつぶして微粉末として、分散染料化されたフォトクロミック物質Bとする。
【0052】
(実施例3)分散染料化されたフォトクロミック物質Cの調製
フォトクロミック物質としてR−1を10g用意し、乳鉢で十分にすりつぶし微粉末状とする。液状の界面活性剤としてエスコール30(日本乳化剤)を20g用意し、この中に微粉末状のフォトクロミック物質を投入して、十分に攪拌する。攪拌後、乾燥機で水分を蒸発させ、固化した部分を取り出し、乳鉢にて再び十分にすりつぶして微粉末として、分散染料化されたフォトクロミック物質Cとする。
【0053】
(実施例4)分散染料化されたフォトクロミック物質Dの調製
フォトクロミック物質としてS−2を8g、F−2を8g、R−2を8g用意し、乳鉢で混合しながら十分にすりつぶし微粉末状とする。液状の界面活性剤としてエスコール30(日本乳化剤)を30g用意し、この中に微粉末状のフォトクロミック物質を投入して、十分に攪拌する。攪拌後、乾燥機で水分を蒸発させ、固化した部分を取り出し、乳鉢にて再び十分にすりつぶして微粉末として、分散染料化されたフォトクロミック物質Dとする。
【0054】
(プラスチックフォトクロミックレンズの製造)
実施例中で使用したプラスチックレンズの略称と商品名、物質名または製造方法を以下に示す。
【0055】
略称 : 商品名、物質名または製造方法
CR−NC : ジエチレングリコールビスアリルカーボネートの重合体
RX−NC : セイコーエプソン(株)製 セイコープラックスIIハードRX用レンズ生地
RX−HC : セイコーエプソン(株)製 セイコープラックスIIハードRX
SL−NC : セイコーエプソン(株)製 セイコースーパールーシャス用レンズ生地
(実施例5)
水温を90℃に調整した恒温水槽を用意し、水1リットルを入れたガラスピーカーを恒温水槽中に沈めて、染色ポットとして用いる。分散染料化されたフォトクロミック物質を表1に示す量で染色ポット中に添加する。分散剤として、界面活性剤NES−203(日光ケミカルズ)3cc、染色キャリアーとしてベンジルアルコール10ccを染色ポットに添加した後、良くかき混ぜながら攪拌を行い、染色ポットとして用いる。プラスチックレンズとしてCR−NCを用意し、染色ポットを攪拌しながら、このレンズを染色ポット中に完全に沈め、30分後染色ポットから取り出し、フォトクロミックレンズを作製した。以下に評価項目と、評価実験内容を示す。
【0056】
発色濃度:25℃に設定した恒温槽中で人工太陽照明灯(XC−200,セリック株式会社)を10cmの距離から5分間フォトクロミックレンズに照射した。照射直後のレンズの発色濃度をBPIフォトメーターによる可視光線透過率の測定により評価した。
【0057】
発色外観:25℃に設定した恒温槽中で人工太陽照明灯(XC−200,セリック株式会社)を10cmの距離から5分間フォトクロミックレンズに照射し、照射直後のレンズについて、発色の色調と、発色がレンズ全体に均一であるかどうかを、目視により評価した。その結果を表2に表す。
【0058】
レンズ形状:レンズ中心部の湾曲状態を肉眼により観察し、下記ランクに分類した。この際に使用したレンズは、S度数が−5.0ディオプトリー、C度数が0.0ディオプトリーの単焦点レンズを用いた。
【0059】
A 全く湾曲がない。(設計時の曲率と成形時の曲率の差が0〜1%)
B やや湾曲している。(差が1〜3%)
C 若干湾曲している。 (差が3〜5%)
D 湾曲している。 (差が5〜10%)
E 著しく湾曲している。(差が10〜20%)
F 使用できない。 (差が20%以上)
【0060】
【表1】
Figure 0003896656
【0061】
【表2】
Figure 0003896656
【0062】
(実施例6〜12)
表1に示す分散染料化されたフォトクロミック物質と、同じく表1に示すレンズを用いた他は実施例5と同様の条件でフォトクロミックレンズを作製し、実施例5と同様に評価を行った。その結果を表2に示す。
【0063】
(実施例13)
表1に示す分散染料化されたフォトクロミック物質と、同じく表1に示すレンズを用いた他は実施例5と同様の条件でフォトクロミックレンズを作製した。このレンズを下記コーティング組成物aに浸漬し、毎分20cmの速さで引き上げてレンズ表面にコーティング組成物を塗布し、130℃で1.5時間加熱して、ハードコート層を施したフォトクロミックレンズを作製し、実施例5と同様に評価を行った。その結果を表2に示す。
・コーティング組成物a:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 23g、メタノール分散コロイダルシリカ(触媒化学(株)製、商品名OSCAL−1132) 45gおよびメチルセロソルブ 32gをよく撹拌し、0.05規定の塩酸2gを添加して30分間撹拌した。さらに、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名L−7604)0.03gを添加し撹拌して、コーティング組成物を作製した。
【0064】
(比較例1)
表1に示すフォトクロミック物質と、同じく表1に示すレンズを用いた他は実施例5と同様の条件でフォトクロミックレンズを作製した。この際、分散染料化されたフォトクロミック物質を使う代わりに、表1に示すフォトクロミック物質を乳鉢ですりつぶし、微粉末化した後に使用した。このレンズを用いて、実施例5と同様に評価を行った。その結果を表2に示す。
【0065】
(比較例2)
水の代わりにジエチレングリコールで満たした恒温水槽を用意し、液温を120℃に調整する。1リットルのガラスビーカーにジエチレングリコールを満たして恒温水槽中に沈め、これを染色ポットとして用いる。この中に表1に示すフォトクロミック物質を投入し、良く攪拌する。染色ポットを攪拌しながら、表1に示すレンズをこの中に沈め、30分後に取り出し、フォトクロミックレンズを作製した。このレンズを用いて、実施例5と同様に評価を行い、その結果を表2に示す。
【0066】
【発明の効果】
本発明におけるプラスチックフォトクロミックレンズの製造方法を用いると、レンズ基材表層部分にフォトクロミック物質が一様に含浸されたプラスチックフォトクロミックレンズを得られるため、レンズの厚みの差に影響されず、均一に発色するプラスチックフォトクロミックレンズを得ることができる。また、水溶液中で100℃以下の温度で処理するため、レンズの変形や、溶剤によるレンズ表面のダメージを避けて、プラスチックフォトクロミックレンズを製造することができる。

Claims (1)

  1. フォトクロミック物質を分散染料化した後、水中に前記分散染料化したフォトクロミック物質を分散させ、その後、この水中にプラスチックレンズを浸漬することによって、前記フォトクロミック物質を前記プラスチックレンズの内部に含浸させフォトクロミック性能を付与することを特徴とするプラスチックフォトクロミックレンズの製造方法。
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