JP3900779B2 - 液晶表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示装置、特にアクティブマトリクス型液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置は、基板間に挟まれた液晶層の液晶分子に電界を加えることにより液晶分子の配向方向を変化させ、それにより生じる液晶層の光学特性の変化を利用して表示を行う。従来のアクティブマトリクス型液晶表示装置は、液晶の光旋光性を利用して表示を行うツイスティッドネマティック(TN)表示方式に代表されるように、液晶に印加する電界の方向が基板界面にほぼ垂直な方向に設定されていた。一方櫛歯状の電極を用いて、液晶に印加する電界の方向を基板に対してほぼ平行な方向とし、液晶の複屈折性を利用して表示を行う方式(横電界方式)が、例えば特公昭63−21907号,特表平5−505247号により提案されている。この横電界方式は従来のTN方式に比べて広視野角という利点があり、アクティブマトリクス型液晶表示装置として有望な技術である。
【0003】
この横電界方式のアクティブマトリクス型液晶表示装置用の液晶材料としては、比較的低い比抵抗を有する液晶組成物(特開平7−306417号公報),低駆動電圧と高速応答を両立するために、4―(シクロヘキシルカルボニルオキシ)ベンゾニトリルを含有する液晶組成物(特開平9−125063号公報),フッ素を極性基として有する化合物を含有した液晶組成物(特開平9−255956号公報,特開平10−67988号公報),シアノ基を有する成分を含有する液晶組成物(クレメント他、エスアイディ インターナショナルシンポジウム98,26.3(International Symposium 98、26.3))などが提案されている。
【0004】
またこの横電界方式では、液晶の応答時間及び駆動電圧と、液晶材料の物性値とが以下の[数式1]及び[数式2]に示す関係にあることが知られている(大江昌人、近藤克己、アプライドフィジックスレターズ、67巻、3895−3897頁、1995年、大江昌人、近藤克己、アプライドフィジックスレターズ、69巻、623−625頁、1996年)。
【0005】
【数1】
τoff ∝γ1×d2/K22 …(数1)
【0006】
【数2】
【0007】
ここでVthは液晶のしきい値電圧、K22は液晶材料のツイストの弾性定数、Δεは誘電率異方性、Lは電極間隔(図1)、dは液晶層の厚さ(図1)、τoff は電圧印加時から無印加時への液晶の応答時間、γ1は液晶の回転粘性係数を示す。また光学特性を維持するために、d×Δnをほぼ一定値とするため、前記[数式1]及び[数式2]は[数式3]及び[数式4]にそれぞれ変換することができる。
【0008】
【数3】
τoff ∝γ1/(K22×n2) …(数3)
【0009】
【数4】
【0010】
前記式から判るとおり、液晶の粘性係数γ1が小さいほど応答時間は短くなり、Δεが大きいほど駆動電圧は低減される。しかしながら、多くの液晶材料は粘度とΔεがほぼ比例関係、すなわちΔεの小さい液晶ほど粘度が低く、Δεが大きいほど粘度が高い傾向にある。これはΔεの大きい材料は、高極性、すなわち分子の双極子モーメントが大きい傾向にあり、双極子モーメントが大きな材料は、分子間での相互作用が強く、結果として液晶全体の粘度が上昇してしまうことに原因がある。そのために横電界方式においては液晶の高速応答性と低駆動電圧とがトレードオフの関係にある。すなわち比較的粘度の低いΔε≦1の低極性成分、いわゆるニュートラル成分を多く加えれば、粘度が低下し高速応答が達成されるが、同時に駆動電圧が上昇してしまう。またΔεの大きな高極性の液晶成分を多く添加すれば、駆動電圧は低減できるが、粘度が上昇し液晶の応答が遅くなってしまう。さらに駆動電圧と応答時間を支配するもう一つのパラメータであるK22の制御方法に関しては、提案されていない。
【0011】
一方で、高コントラスト化のために、一対の基板間隔を一定に保つためのスペーサを、非画素領域に配置する技術も多く開発されている。例えば、特開平10−170928号公報,特開平9−61828号公報,特開平6−250194号公報,特開平5−53121号公報,特開平5−173147号公報、特開平8−160433号公報,特開平8−292426号公報,特開平7−325298号公報等に記載の方法が提案されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
前述したとおり、これまでの横電界方式アクティブマトリクス型液晶表示装置用の液晶材料では、液晶の応答時間と駆動電圧がトレードオフの関係、すなわち液晶のニュートラル成分の増大による粘度低減により応答時間を短縮すると駆動電圧が上昇し、液晶のΔεを大きくし駆動電圧を低減すると応答時間が遅くなるという関係があり、液晶材料の低粘度化と高Δε、すなわち高速応答と低駆動電圧との両立が困難であるという問題があった。また液晶のツイスト弾性定数K22の制御方法はこれまで明らかではなかった。
【0013】
さらに実験の結果、横電界方式アクティブマトリクス型液晶表示装置では高速応答化と高コントラスト化がトレードオフの関係にあることが判明した。これは、液晶層中のニュートラル成分の含有量を増やし、液晶の低粘度化による高速応答化を試みたところ、コントラストの低下、特に黒表示時の輝度が上昇する現象が発生した。横電界方式アクティブマトリクス型液晶表示装置では通常、液晶層の分子配向状態に応じて光学特性を変える光学手段として、偏光軸がおおむね直交するように配置した偏光板が用いられている。この場合液晶層に印加する電圧を増大させるに伴って透過率が上昇する、いわゆるノーマリークローズモードとなる。このノーマリークローズモードの表示方式の場合、基板間隔を一定に保つためのスペーサ周辺での液晶の配向が、基板と液晶層との配向制御方向と異なることにより、黒表示時にスペーサ周辺から光が漏れ、黒輝度の上昇、ひいてはコントラストの低下をもたらしている。調査した結果、液晶層中のニュートラル成分の含有量が増大すると、このスペーサ周辺からの光漏れが大きくなり、黒表示時の輝度が上昇し、結果としてコントラストが低下していることが判明した。
【0014】
本発明は、このような従来発明の問題点に鑑みなされたもので、第1の目的は、高速応答と高コントラストを両立した横電界方式のアクティブマトリクス型液晶表示装置を提供することにある。本発明の第2の目的は、高速応答と高コントラストを両立し、かつ低駆動電圧を達成した横電界方式のアクティブマトリクス型液晶表示装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本出願の液晶表示装置の一つの実施態様は、スペーサによって間隔が規定された一対の基板と、一対の基板の間に充填された液晶層と、液晶層に電界を印加するために一対の基板の内の一方の基板に形成された電極群と、液晶層を挟んで配置され偏光軸が互いにほぼ直交した一対の偏光板とを備え、スペーサを非表示領域に配置し、液晶層は誘電率異方性Δε≦1の構成成分を40重量%以上100重量%未満含有し、液晶層と一対の基板との二つの界面における液晶分子の配向制御方向がほぼ平行であり、一方の偏光板の偏光軸と前記界面における液晶分子の配向制御方向とがほぼ一致しているというものである。
【0016】
本出願の液晶表示装置の別の実施態様は、スペーサによって間隔が規定された一対の基板と、一対の基板の間に充填された液晶層と、液晶層に電界を印加するために一対の基板の内の一方の基板に形成された電極群と、液晶層を挟んで配置され偏光軸が互いにほぼ直交した一対の偏光板とを備え、液晶層の回転粘性係数γ1と屈折率異方性Δnとが、1×103mPa・s≦γ1/Δn2≦1.2×104mPa・sを満たすというものである。
【0017】
本出願の液晶表示装置のさらに別の実施態様によれば、スペーサによって間隔が規定された一対の基板と、一対の基板の間に充填された液晶層と、液晶層に電界を印加するために一対の基板の内の一方の基板に形成された電極群と、液晶層を挟んで配置され偏光軸が互いにほぼ直交した一対の偏光板とを備え、スペーサは非表示領域に配置され、液晶層は誘電率異方性Δε≦1の構成成分を40重量%以上100重量%未満含有し、前記液晶層の回転粘性係数γ1と屈折率異方性Δnとが、1×103mPa・s≦γ1/Δn2≦1.2×104mPa・sを満たし、液晶層と前記一対の基板との二つの界面における液晶分子の配向制御方向がほぼ平行であり、一方の偏光板の偏光軸と界面における液晶分子の配向制御方向とがほぼ一致しているというものである。
【0018】
尚、ニュートラル成分の含有量は、40重量%以上90重量%以下であることが好ましい。
【0019】
本出願の液晶表示装置のさらに別の実施態様は、液晶表示装置の液晶層中に、下の化学式で表される構造を分子中に有している化合物を含有している。
【0020】
【化5】
【0021】
(式中X1,X2は、HもしくはFを表す)
さらには、液晶層中に、誘電率異方性Δε≦1の低極性成分と前記式で表される高極性成分との間の中極性の成分を含有していることを特徴とする。中極性の液晶成分は、下記式からなる群より選ばれた構造を有する液晶成分であっても良い。
【0022】
【化6】
【0023】
【化7】
【0024】
(式中X1,X2は、HもしくはFを表す。Aはベンゼン環もしくはシクロヘキサン環を表す)
【0025】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の前提となる横電界方式の動作原理を図1の一例を用いて説明する。図1は、横電界方式の液晶パネル内での液晶の動作を示す図で、(a)(b)は側断面図を、(c),(d)は平面図を表す。なお、表示素子全体ではストライプ状の電極をマトリクス状に形成して複数の画素を構成するが、図1では一画素の部分を示したものである。図2に電界201の方向に対する、偏光板透過軸方向112のなす角Φpおよび基板界面近傍での液晶分子長軸(光学軸)の配向方向111のなす角ΦLCの定義を示す。
【0026】
図1(a)に電圧無印加時の液晶の状態を、図1(c)にその時の平面図を示す。透明な一対の基板101,101′の内側にストライプ状の電極102,103が形成され、その上に配向制御膜108が形成されている。そして、両基板間には液晶組成物層が挟持されている。基板間隔はスペーサ(不図示)により保持されている。棒状の液晶分子106は、電界無印加時には45度≦|ΦLC|<90度となるように、配向制御膜108により矢印で示す配向方向111に配向されている。なお、液晶の誘電異方性は正を想定している。ΦLC=90度でないのは、電界に対して液晶分子の動く方向を一方向に規定するためである。すなわち図1中で、液晶分子106が電界方向113に対して、かならず共通電極102から画素電極103の方向に動くように設定するためである。ΦLC=90度とすると、液晶分子
106が図上で左回り、右回り(時計回り)どちらの方向にも動いてしまい、ドメインが発生し表示不良となってしまうためである。
【0027】
次に、図1(b),(d)に示すように、電極102,103に電界113を印加すると、右回りに液晶分子106がその向きを変える。このとき液晶組成物層の屈折率異方性と偏光板109,109′の作用により本液晶素子の光学特性が変化し、この変化により表示を行う。
【0028】
本発明の液晶表示装置では、一対の偏光板を供えた横電界方式の液晶表示装置であって、前記一対の偏光板の偏光軸が互いにほぼ直交しており、前記液晶層と前記一対の基板との二つの界面における液晶分子の配向制御方向がほぼ平行であり、一方の偏光版の偏光軸と液晶分子の配向制御方向とがおおむね一致している。図3にその配置を示す。このような配置にすると、低電圧時に黒表示、高電圧時に白表示、すなわち電圧の上昇に伴って輝度が上昇する、いわゆるノーマリークローズの表示装置となる。この配置にすることにより、より黒表示の輝度が低く、従って高コントラストな液晶表示装置を得ることができる。一方で一対の偏光板の偏光軸、液晶分子の配向制御方向が全て平行な場合は、表示は可能であるが、黒輝度が高く、コントラストが低くなってしまう。
【0029】
また、図1における液晶106は、誘電異方性が正のものを用いた場合について説明したが、負のものであっても構わない。その場合には初期配向状態をストライプ状電極の垂直方向から0度≦|ΦLC|<45度に配向させると良い。
【0030】
図4は、本発明の第1の実施形態である液晶表示装置の、単位画素における各種電極の平面構造及びその断面を示した図である。ガラス基板401と共通電極402及び走査信号電極414、それらの電極上の絶縁膜404、さらに映像信号電極410及び画素電極403,アモルファスシリコン416からなるアクティブ素子である薄膜トランジスタ415(TFT:Thin Film Transistor)、さらにその上層の絶縁層404から構成されている。なお、アクティブ素子としては、他に薄膜ダイオードも使用可能であるが、スイッチング素子としての動作特性により優れたTFTの使用が好ましい。
【0031】
さらに、共通電極もしくは画素電極が透明な材質で構成されている場合は、図5〜図7に示すように、電極の幅を広くしても輝度の低下が少ない。図5中、(a)(b)は側断面図を、(c),(d)は平面図を表す。図1及び図2と同様の液晶配向方向,偏光板透過軸方向とし、電界により液晶分子506がその向きを変え、光学特性の変化により表示を行う。図6,図7は、本発明の第2,第3の実施形態である、液晶表示装置の単位画素における各種電極の平面構造及びその断面を示した図である。図3に示した構成と異なる点は、共通電極及び画素電極が、可視光を透過する透明電極、たとえばインジウム−チン−オキサイド(ITO)である点である。
【0032】
本発明の液晶表示装置では、用いる液晶層中に誘電率異方性Δε≦1の構成成分を40重量%以上100重量%未満含有する。これはニュートラル成分を多く含有させることで、液晶層の粘度を低下させ、第1の目的の一つである高速応答を達成するためである。ニュートラル成分は、本質的に液晶層の粘度を低下させることができる。これは、Δε≦1の構成成分は、双極子モーメントが小さいため、分子間力が小さいためである。例えば、分子軌道計算MOPAC93(AM1)で計算した、誘電率異方性の大きな化合物である、4−メチル−(4−シアノフェニル)シクロヘキサン、4−メチル−(4−シアノ−3,5―ジフッ素フェニル)シクロヘキサンの双極子モーメントが、それぞれ3.93デバイ、5.43デバイであるのに対して、Δε≦1のビス(4−メチルシクロヘキサン)、ビス(4−メチルベンゼン)の双極子モーメントは、それぞれ0.035デバイ,0.027デバイと非常に小さい。すなわちこの計算結果からΔε≦1の化合物は、双極子モーメントが小さく、従って分子間相互作用が小さいため、低粘度化が可能であると説明できる。
【0033】
次に応答時間について説明する。本発明の液晶表示装置では、電圧により液晶の配向状態をコントロールすることで輝度を調節し、様々な表示を行う。応答時間とは、ある電圧から、次の電圧に切り替えたとき、所望の輝度に到達するまでの時間のことをいう。表示は1フレーム期間毎に書き換わるため、少なくとも1フレーム期間以内に液晶の応答が完了しなければ、所望の輝度に到達しない。特に動画を表示した場合、液晶の応答遅延の影響により、画像がぼやけて見えてしまう。ここで1フレーム期間とは、走査回路の走査周波数が60Hzの場合は1/60秒=約17msとなる。実験の結果得られた、本発明の液晶表示装置における、ニュートラル成分の含有量と応答時間の関係を図8に示す。本発明の液晶表示装置では、ニュートラル成分の含有量が40重量%以上で、フレーム周波数60Hzの場合の1フレーム時間、約17ms以下の応答時間となることが判明した。従って本発明の液晶表示装置では、ニュートラル成分の含有量を40重量%以上とした。しかしながら、ニュートラル成分が100%では、Δε=0となり、液晶を電界により駆動することができなくなる。従って液晶を駆動するために、ニュートラル成分の含有量は100%未満が必要であり、実用上はニュートラル成分の含有量は90重量%以下が好ましい。
【0034】
さらに本発明の液晶表示装置では、式1及び式3に示したとおり、応答時間は液晶の粘度だけでなく、セルギャップすなわち、液晶のΔnに依存する。そこで本発明の液晶表示装置における、最低輝度と最大輝度を与える電圧間での応答時間とγ1/Δn2の関係を図9に示す。この図から、17ms以下の応答時間を達成するには、γ1/Δn2≦1.2×104mPa・sであればよいことが判った。このとき、γ1およびΔn測定時の温度は25℃である。さらに液晶画面上には、最低輝度と最高輝度の表示だけでなく、その間、すなわち中間調の画像も多く表示される。従って、中間調の応答時間も重要である。本発明の液晶表示で用いた横電界方式では、中間調間の応答時間が、最低−最高輝度間の応答時間の約2倍程度である。そこで中間調間の応答時間も17ms以下とするためには、最低−最高輝度間の応答時間が8msであればよく、その場合γ1/Δn2≦6.0×103mPa・sであればよいことが判った。
【0035】
次に、ニュートラル成分の含有量とγ1/Δn2の相関について検討した。図10にその結果を示す。液晶層のニュートラル成分を40重量%以上にすれば、γ1/Δn2≦1.2×104mPa・sが達成できることが判った。
【0036】
本発明の液晶表示装置では、液晶層の屈折率異方性Δn、厚さをdとしたときのパラメータd・Δnが、
0.2μm<d・Δn<0.4μm
と設定されている。横電界方式のような複屈折モードの表示方式では、偏光軸が直交した偏光板の間に液晶を挟んで観測される透過光強度は、sin(πd・Δn/λ)に比例する。ここでλは光の波長である。透過光強度を最大にするためにはd・Δnをλ/2,3λ/2,5λ/2,…とすれば良いが、透過光の波長依存性を抑えて白色透過光を得るため、望ましくはλ/2を設定する。すなわち視感度の高い550nmの光を考慮すれば、d・Δn=0.275μmとなる。このd・Δnは実用的には少なくとも、0.2μmから0.4μmの範囲内であればよい。
【0037】
本発明の液晶表示装置では、一対の基板間に挟まれたスペーサを有する横電界方式の液晶表示装置であって、前記一対の基板の間に挟まれたスペーサが、非表示領域にあること特徴とする。以下この作用について説明する。
【0038】
前述したとおり、液晶層中にΔε≦1の構成成分の含有量を増加させると、液晶層の粘度が低下し、高速応答が可能となる。しかしながらニュートラル成分含有量の増大に伴い、コントラストが低下することが判明した。詳細に検討した結果、Δε≦1の構成成分含有量の増大に伴い、黒表示時におけるスペーサ周辺の光漏れ量が増大することが判明した。本発明の横電界方式液晶表示装置では、前述した通り、偏光板や液晶の配向制御方向が、低電圧時に黒表示となる、いわゆるノーマリークローズとなるように配置されている。液晶層中にスペーサが存在する場合、スペーサ−液晶界面で、液晶の配向方向が一様でなく、液晶−基板界面の液晶分子の配向制御方向と異なってしまい、その結果、黒表示時においても、スペーサ周辺から光漏れが発生し、黒表示の輝度上昇、すなわちコントラストが低下してしまう。このスペーサ周辺からの光漏れによるコントラスト低下は、特にノーマリークローズの液晶表示装置において顕著である。本発明において、ニュートラル成分含有量を40重量%以上としたとき、特にコントラストの低下が著しかった。詳細に検討した結果、コントラストの著しい低下は、スペーサ周辺からの光漏れが著しく増大することに起因していることが判明した。そこでこのスペーサ周辺からの光漏れの原因を明らかにするために、図11に示す測定用セルを作製した。この測定用セルは、スペーサ1104を挟んだガラス基板上間に、液晶層1105を挟んだものである。ガラス基板1101にはポリイミド配向膜1108が形成されており、そのラビング方向は互いに反平行方向である。このセル中に、
(1)ニュートラル成分:PCH302(1−(4−エトキシフェニル)−4−プロピルシクロヘキサン)とPCH304(1−(4−ブトキシフェニル)−4−プロピルシクロヘキサン)の等量混合物(Δε=約0)
(2)Δεの大きな成分:メルク社製ZLI−1083(シアノPCHの3成分混合物でΔε=約10(なお、PCHはフェニルシクロヘキサンを意味する))の組成比を変えた混合液晶を注入し、偏光板のクロスニコル下で、セルのラビング方向と一方の偏光板の偏光軸を一致させた状態で、そのスペーサ周辺での液晶の配向を観察した。上記(1)のPCH302とPCH304の等量混合物を用いるのは、前述した通り前記Δε≦1の液晶を少なくとも40重量%以上用いることが横電界方式の液晶表示装置において有効だからである。すなわち(1)の液晶は、Δε≦1の液晶の一例として用いた。
【0039】
その結果、(1)の液晶50重量%、(2)の液晶50重量%の混合液晶の場合、図12(a)に示すように、スペーサ1204の周囲に環状に明部1201が観察され、明部1201の外側は暗部になっていた。また、明部1201には、偏光板の偏光軸と一致する方向に十字に暗部線1202,1203が観察された。偏光顕微鏡を用いて詳細に観察したところ、図13(a)に示すようにスペーサ1302の周りで液晶分子1301が配向していると推察された。図13(a)では、スペーサ1302の周囲の一分子だけを示しているが、実際には、図12の明部1201の径方向の長さ分にほぼ相当する、複数の分子がスペーサ表面に配向している。明部1201の外側の暗部では、液晶分子がラビング方向に平行に配向している。このため、明部1201の外側では、直交している偏光板を光が通過できないため暗部となっている。図13(a)のようにスペーサ1302の周囲の液晶分子1301が配向している部分は、液晶分子1301の配向方向と、偏光板の偏光軸とが一致している部分のみが図12(a)中の暗部線1202,1203として観察される。液晶分子1301の配向方向が偏光板の偏光軸に対して傾いている部分は、偏光板を透過する偏光成分が生じるため図12(a)中の明部1201として観察される。
【0040】
また(1)の液晶45重量%,(2)の液晶55重量%の混合液晶の場合、及び(1)の液晶40重量%,(2)の液晶60重量%の混合液晶の場合のスペーサ周辺の様子を、図12(b),(c)に示す。これらの場合、(1)の液晶50重量%、(2)の液晶50重量%の混合液晶の場合と異なり、明部1201中に、偏光板の偏光軸方向とは異なる方向に暗部線1205,1205が新たに現れた。詳細に検討した結果、液晶分子1301が、図13(b),(c)に示すようにスペーサ1302の表面に配向していると推察された。
【0041】
さらにこれらの液晶を図1に示す液晶表示装置に注入し、コントラスト比を測定したところ、(1)液晶:(2)液晶=40重量%:60重量%,(1)液晶:(2)液晶=45重量%:55重量%,(1)液晶:(2)液晶=50重量%:50重量%の順で、コントラスト比が200:1,160:1,100:1であった。すなわち、Δε≦1の液晶である(1)液晶の含有量が増大するにつれ、コントラストが低下した。特にニュートラル成分が50重量%以上では、光漏れが大きくコントラストが大きく低下する。これは、ニュートラル成分の含有量が多い場合は、前述のようなスペーサ表面での液晶分子が図13(a)のような配向状態となり、このような配向状態では、より黒表示時のスペーサ周辺での光漏れが大きくなるためであると説明できる。すなわち、Δε≦1の液晶成分の含有量を増大させ、高速応答化することと、高コントラストがトレードオフの関係となっている。
【0042】
そこで前記トレードオフを回避し、低駆動電圧と高コントラストとを両立するために、本発明ではスペーサを表示領域(画素領域)外へ配置する。これにより、液晶層中のニュートラル成分の含有量が増大することにより、スペーサの周辺で光漏れが増大しても、表示領域にスペーサが存在しないため、黒輝度は上昇しない。すなわち高コントラストを実現できる。このスペーサを配置する非表示領域とは、電極基板上では例えば図1において、共通電極102や画素電極103,映像信号電極110上のような非光透過領域である。カラーフィルタを形成した基板上では、遮光部であるブラックマトリクス1410(図14)上が非光透過領域である。スペーサを非画素領域に配置する方法としては、球状のスペーサを選択的に非画素領域に配置する方法や、柱状のスペーサを非画素領域に形成する方法等を用いる。柱状のスペーサを形成する方法は、感光性材料とフォトリソグラフィ工程により、より簡便にスペーサを所望の場所に形成することが可能であり、この柱状のスペーサを形成する方法がより望ましい。本発明の柱状スペーサを用いた液晶表示装置の一例を図14に示す。この液晶表示装置においては、カラーフィルタ1405上の平坦化膜1407と柱状スペーサ1412とを、感光性樹脂を用い同時に形成した例である。このように、本発明では、液晶層中のニュートラル成分の含有量を40重量%以上とし、スペーサを非表示領域に配置することで、応答時間を1フレーム期間以下とする高速応答化と、黒表示時の輝度上昇を抑制した高コントラスト化を実現した。
【0043】
さらに本発明では、このようなΔε≦1の構成成分としては、環状構造を分子中に二つ有する化合物であり、その環状構造がベンゼン環とシクロヘキサン環の組み合わせである化合物が挙げられる。このような構造を有する化合物の代表的な構造を(化8)に示す。
【0044】
【化8】
【0045】
(式中、R1及びR2は同一もしくは互いに異なる、炭素数12以下のアルキル基,アルケニル基,アルコキシル基のいずれかである。Xはアルキレン基,アルケニレン基,炭素−炭素3重結合,エーテル基,エステル基のいずれかである。)
その具体的な化合物例を(化9)に示す。
【0046】
【化9】
【0047】
前述したとおり、このような構造を有する化合物は、双極子モーメントがほとんど0に近く小さいため、分子間相互作用が小さく、従って粘度を小さくすることができる。
【0048】
さらに本発明では、Δε≦1の構成成分として、分子中に環状構造を一つしか持たない、単環構造である化合物を用いることを特徴とする。その具体的な化合物を(化10)に示す。
【0049】
【化10】
【0050】
単環構造の化合物は二環化合物より低粘度であり、より高速応答化を図ることができる。単環構造としては、ベンゼン環もしくはシクロヘキサン環のみの構造がより好ましい。また、これらの環に、アルキル基,アルケニル基,アルコキシル基が結合していることが好ましい。このような単環化合物は特に粘度低減に効果が大きく、高速応答化に有利である。また単環であるため、屈折率異方性Δnを小さくすることが可能となり、横電界方式特有の視角による色度変化も低減することができる。これは横電界方式における視覚による色度変化は、角度によりセルギャップと液晶のΔnが変化してしまうことによる。したがってΔnがもともと小さければ、その変化量も小さくなるため、視覚による色度変化が低減する。
【0051】
本発明の液晶表示装置では、液晶層中にΔε≦1の構成成分を40重量%以上含有している。そのためΔεが低下し、駆動電圧が上昇してしまう。そこで本発明では、第2の目的である、高速応答で高コントラストを両立し、かつ低駆動電圧を達成するために、4−シアノ−3−フルオロフェニル、4−シアノ−3,5−ジフルオロフェニル構造を分子内に有する化合物を液晶層中に含有させる。特に望ましくは4−シアノ−3,5−ジフルオロフェニル構造を分子内に有する化合物である。これらの化合物は、先に述べたように、高極性で双極子モーメントは大きいものの、そのΔεも大きく、例えばフルオロフェニル,ジフルオロフェニル構造を有する化合物は、Δεが20以上〜60程度と非常に大きく、少量の添加で液晶層全体のΔεを大きくすることが可能である。このような化合物の例を(化11)に示す。
【0052】
【化11】
【0053】
本発明の液晶表示装置において、上記高極性の液晶成分と、ニュートラル成分との液晶組成物を用い駆動電圧の低減を試みたところ、新たな問題が発生した。それは、液晶の相溶性に関する問題である。上記高極性の液晶成分と、ニュートラル成分との組合せでは、相溶性すなわち液晶相の安定性が著しく低下し、特に低温において、結晶が析出するという問題が発生した。
【0054】
このような液晶調合における相溶性の問題は、アイ ディー ダブリュウ ’97 プロスィーディングス 41〜44頁(Y.Tanaka and S.Naemura IDW
’97 Proceedings p.41-44)に示されているように、理想溶液の溶解の問題として取り扱い、低温での液晶成分の析出を抑制することが検討されている。しかしながら同様の試みを行った結果、理想溶液の取り扱いでは、実際の低温安定性が再現できないことが判明した。特に本発明のような、ニュートラル成分と高極性成分との組合せでは、前記取り扱いでは相溶性の問題が解決できなかった。そこで、本発明では液晶成分の分子間相互作用を十分に考慮し、相溶性の問題を解決するために、液晶成分の溶解度パラメータを導入した。具体的には、ポリマー エンジニアリング サイエンス、1974年、第14巻、147頁(R.F.Fedors,Polym. Eng. Sci., 1974, Vol.14, 147)に示されている、溶解度パラメータの算出方法を利用した。その結果、計算で予測した低温安定性と、実際の液晶組成物での低温安定性がよく一致し、さらに有用な知見を得ることができた。
【0055】
すなわち、液晶の相溶性における分子間相互作用の影響が、溶解度パラメータにより見積もることが可能となったため、液晶成分の溶解度パラメータを考慮することにより、液晶組成物の低温安定性を向上させるという指針を得ることができた。
【0056】
従って、低極性のニュートラル成分と、高極性である4−シアノ−3−フルオロフェニル、4−シアノ−3,5−ジフルオロフェニル構造を分子内に有する成分との間の中極性の液晶成分を添加することにより、低温安定性を大幅に改善できることが判った。
【0057】
具体的には、ニュートラル成分である(化9)の化合物Aは、溶解度パラメータが約8.3と求められた。また高極性成分である(化10)の化合物Bでは溶解度パラメータが約11.8と求められた。従ってその間、溶解度パラメータ8.4〜11.7の化合物を添加すればよい。さらに、その他のニュートラル成分は、おおむね溶解度パラメータが9.2以下であり、本発明で用いた高極性成分は、溶解度パラメータが10.8以上のため、中極性成分としては、9.3〜10.7の溶解度パラメータを有する成分が好ましい。その結果、より多くの高極性成分を含有させることが可能となる。
【0058】
中極性成分としては、Δε>0であることがより望ましい。その結果、液晶組成物としてより大きなΔεとなり、より低駆動電圧が可能となる。具体的には、モノフッ素ベンゼン,ジフッ素ベンゼン,トリフッ素ベンゼン,モノフッ素シクロヘキシル,ジフッ素シクロヘキシル,トリフッ素シクロヘキシル,シアノベンゼン,シアノシクロヘキシル構造を分子中に有する化合物が使用可能である。
【0059】
液晶層中にニュートラル成分が40重量%以上100重量%未満、実質的には40重量%以上90重量%含有されているため、60重量%以下、実質的には10重量%以上60重量%以下の範囲で前記中極性成分と、高極性成分を含有させることで、低駆動電圧と、低温安定性を大幅に改善することが可能となった。
【0060】
本発明ではさらに、電極に不透明な材質、例えばクロムなどを用いた場合、画素電極と共通電極の間隔Lと前記液晶層の屈折率異方性Δn,誘電率異方性Δεとが、LΔn/√Δε≦0.55μmとなるように設定し、さらに、LΔn/√Δε≦0.4μmに設定する。式2及び式4から判るとおり、横電界方式では、駆動電圧は画素電極と共通電極の間隔LとΔn,Δεに依存する。従ってLを小さくすればするほど駆動電圧は低下するが、電極に不透明な材質を用いている場合、同時に開口率の低下、すなわち輝度の低下をもたらす。従って、ある程度Lを大きくする必要がある。実際にLは、20μm〜5μm程度である。実験の結果、現行の駆動ドライバで駆動可能な駆動電圧とするためには、LΔn/√Δε≦0.55μmであることが必要であることが判った。さらにLΔn/√Δε≦0.4μmであることがより好ましい。
【0061】
本発明ではさらに、前記液晶層の屈折率異方性Δn、誘電率異方性Δεとが、Δn/√Δε≦5.5×10-2に設定し、さらに、Δn/√Δε≦2.7×10-2に設定する。以下その作用について説明する。
【0062】
一方、電極に透明な材質、例えばインジウム−チン−オキサイドを用いた場合、Lを小さくしても、輝度の低下はほとんど無く、駆動電圧を低減できる。しかしながら、L=0すなわち、図5,図7に示したように画素電極と共通電極を上下に重ねる構造にしても、駆動電圧を0にできるわけではないことが実験の結果判った。従ってLが小さい場合については、式2及び式4を見直す必要がある。実験的に確認したところ、L=0の場合、Δn/√Δε≦5.5×10-2に設定すれば、現行の駆動ドライバで駆動可能な範囲の電圧となることが判った。
【0063】
さらに、液晶層のΔε≧7,ツイスト弾性定数K22≦5.5pNとすることでも、低駆動電圧化が可能である。
【0064】
以下本発明の実施例を具体的に説明する。
[実施例1]
まず本発明の第1の実施例のアクティブマトリクス型液晶表示装置の製造方法を図4及び図14を用いて説明する。ガラス基板401の上に共通電極402及び走査信号電極414を形成する。また、それらの電極の上に絶縁膜404を形成し、更にその上に映像信号電極410,画素電極403,アモルファスシリコン416からなるTFT415が形成する。第1の実施例では、共通電極402及び画素電極403は可視光領域で不透明な材質であるクロムを用いている。また、共通電極402と画素電極403の間隔は13μmである。更にその上層には絶縁層404を形成する。また、画素は映像信号電極410と平行な共通電極402及び画素電極403によって4分割されている。この電極群を有する基板上に、JSR(株)製オプトマーAL3046を用い、配向膜408を形成する。配向膜形成後、膜表面にラビング法により配向処理を行う。
【0065】
次に図14において、このTFT415を有する基板1401に相対向する基板1401′上にはカラーフィルタ1405及びブラックマトリクス1411を形成する。カラーフィルタ1405の上には平坦化膜1407を形成する。この際、平坦化膜1407に感光性樹脂を用い、フォトリソグラフィ法により平坦化膜1407形成と同時に、ブラックマトリクス1411上に柱状のスペーサ1412を形成する。基板1401と同様に配向膜1408を形成し,ラビング処理を行った。1401,1401′両基板をラビング方向が同一となるように対向させ、シール剤(不図示)により貼り合わせた。本実施例での基板間隙dは約3.1μmであった。基板間に液晶を注入後、偏光板1409,1409′を貼り付け、図14に示す液晶素子を作製する。偏光板1409は、その偏光透過軸をラビング方向とほぼ一致させ、もう一方の偏光板1409′の偏光透過軸をそれにほぼ直交させる。図3にその関係を示す。これにより、液晶層に印加される電圧の増大に伴い、透過率が上昇する、いわゆるノーマリクローズ特性を得ることができる。
【0066】
次に図15に示すように、駆動LSIを接続し、TFT基板上に垂直走査回路1501,映像信号駆動回路1502,共通電極駆動回路1503を接続し,電源回路及びコントローラ1504から走査信号電圧,映像信号電圧,タイミング信号を供給し、アクティブマトリクス型液晶表示装置を作製した。図中、1505は共通電極配線、1506は映像信号電極配線、1507は走査信号電極配線である。本実施例の液晶表示装置の走査周波数は60Hzである。
【0067】
図16は、本発明の液晶表示モジュール1601の各構成部品を示す分解斜視図である。1602は金属板から成る枠状のシールドケース(メタルフレーム)、1603はその表示窓、1606は液晶表示パネル、1605は電源回路基板、1607は光拡散板、1608は導光体、1609は反射板、1610はバックライト蛍光管、1611はバックライトケースであり、図に示すような上下の配置関係で各部材が積み重ねられてモジュール1601が組み立てられる。バックライト蛍光管1610にはインバータ回路基板1612が接続されており、バックライト蛍光管1610の電源となっている。図中、1613は垂直走査回路(図15では1501)、1604は映像信号駆動回路(図15では1502)である。本実施例の液晶表示パネ1606は、対角15.0インチでXGA(1024×768×3ドット)の解像度である。
【0068】
次に比較例として、柱状スペーサではなく、球状のスペーサを基板間に分散した液晶表示パネルも作製した。図17に、その液晶表示パネルの断面図を示す。基板の作製方法は前述の液晶表示パネルと同様であるが、平坦化膜1707作製時に、柱状スペーサを形成しなかった。基板を貼り合わせる際、基板上に球状のスペーサ1711を分散した。その他の装置作製方法は、前述の液晶表示装置と同様である。
【0069】
本実施例で用いた液晶材料は、Δε≦1の液晶材料としてフェニルシクロヘキサン骨格の液晶化合物を15重量%とビシクロヘキシル骨格の液晶化合物を25重量%の合計40重量%、シアノフェニル基を有する液晶化合物と4−シアノ−3,5−ジフッ素フェニル基を有する液晶化合物を15重量%、3,4,5−トリフッ素フェニル基を有する液晶化合物を45重量%の液晶組成物(I)である。この液晶組成物の物性値を測定(25℃)すると、γ1=88mPa・s,Δn=0.094,Δε=8.5,K22=5.5pNであった。従って本実施例の液晶表示装置では、γ1/Δn2=1.0×104mPa・s,d・Δnは0.291である。また、LΔn/√Δε=0.42<0.55となる。
【0070】
この液晶組成物(I)を前述の液晶表示装置に適用したところ、最低輝度を与える電圧から最大輝度を与える電圧に切り替えたときの液晶応答時間が、14msであった。従って本実施例の1フレーム期間、すなわち1/60=16.7ms以下であった。
【0071】
図14に示す柱状スペーサを用いた液晶表示装置と、図17に示す球状スペーサを用いた液晶表示装置のそれぞれのコントラスト比は、350:1と200:1であった。球状スペーサを用いた液晶表示装置の、スペーサ周辺の液晶配向を顕微鏡で観察したところ、図12(c)とほぼ同じ配向状態であった。
【0072】
また、駆動ICにより、最大輝度を与えるのに十分な電圧を液晶に印加することが可能であった。
[実施例2]
実施例1と同様の方法で作製した液晶表示装置に、Δε≦1の液晶材料としてフェニルシクロヘキサン骨格の液晶化合物を16重量%とビシクロヘキシル骨格の液晶化合物を29重量%の合計45重量%、4−シアノ−3−フッ素フェニル基を有する液晶化合物と4−シアノ−3,5−ジフッ素フェニル基を有する液晶化合物を20重量%、3,4,5−トリフッ素フェニル基を有する液晶化合物を35重量%の液晶組成物(II)を注入した。この液晶組成物の物性値は、γ1=75mPa・s,Δn=0.096,Δε=9.0であった。従って本実施例の液晶表示装置では、γ1/Δn2=8.14×103mPa・s,d・Δnは0.298である。また、LΔn/√Δε=0.42<0.55となる。
【0073】
さらに本実施例の液晶表示装置においては、最低輝度を与える電圧から最大輝度を与える電圧に切り替えたときの液晶応答時間が、13msであった。従って1フレーム期間、すなわち1/60=16.7ms以下であった。
【0074】
柱状スペーサを用いた液晶表示装置と球状スペーサを用いた液晶表示装置のそれぞれのコントラスト比は、340:1と190:1であった。球状スペーサを用いた液晶表示装置の、スペーサ周辺の液晶配向を顕微鏡で観察したところ、図12(b)とほぼ同じ配向状態であった。
【0075】
また、駆動ICにより、最大輝度を与えるのに十分な電圧を液晶に印加することが可能であった。
[実施例3]
実施例1と同様の方法で作製した液晶表示装置に、Δε≦1の液晶材料としてフェニルシクロヘキサン骨格の液晶化合物を10重量%とビシクロヘキシル骨格の液晶化合物を30重量%、フェニルビシクロヘキサン骨格の液晶化合物を10重量%の合計50重量%、4−シアノ−3−フッ素フェニル基を有する液晶化合物と4−シアノ−3,5−ジフッ素フェニル基を有する液晶化合物を25重量%、3,4,5−トリフッ素フェニル基を有する液晶化合物を25重量%の液晶組成物(III)を注入した。この液晶組成物の物性値は、γ1=70mPa・s,Δn=0.096,Δε=9.0であった。従って本実施例の液晶表示装置では、γ1/Δn2=7.6×103mPa・s,d・Δnは0.298である。また、LΔn/√Δε=0.42<0.55となる。
【0076】
さらに本実施例の液晶表示装置においては、最低輝度を与える電圧から最大輝度を与える電圧に切り替えたときの液晶応答時間が、12msであった。従って1フレーム期間、すなわち1/60=16.7ms以下であった。
【0077】
柱状スペーサを用いた液晶表示装置と球状スペーサを用いた液晶表示装置のそれぞれのコントラスト比は、340:1と150:1であった。球状スペーサを用いた液晶表示装置の、スペーサ周辺の液晶配向を顕微鏡で観察したところ、図12(a)とほぼ同じ配向状態であった。
【0078】
また、駆動ICにより、最大輝度を与えるのに十分な電圧を液晶に印加することが可能であった。
[実施例4]
実施例1と同様の方法で作製した液晶表示装置に、Δε≦1の液晶材料としてフェニルシクロヘキサン骨格の液晶化合物を20重量%とビシクロヘキシル骨格の液晶化合物を10重量、フェニルビシクロヘキサン骨格の液晶化合物を10重量%、ジアルケニルオキシベンゼン誘導体を10重量%の合計50重量%、4−シアノ−3−フッ素フェニル基を有する液晶化合物と4−シアノ−3,5−ジフッ素フェニル基を有する液晶化合物を25重量%、3,4,5−トリフッ素フェニル基を有する液晶化合物を25重量%の液晶組成物(IV)を注入した。この液晶組成物の物性値は、γ1=65mPa・s,Δn=0.093,Δε=8.5であった。従って本実施例の液晶表示装置では、γ1/Δn2=7.5×103mPa・s,d・Δnは0.288である。また、LΔn/√Δε=0.41<0.55となる。
【0079】
さらに本実施例の液晶表示装置においては、最低輝度を与える電圧から最大輝度を与える電圧に切り替えたときの液晶応答時間が、11msであった。従って1フレーム期間、すなわち1/60=16.7ms以下であった。
【0080】
柱状スペーサを用いた液晶表示装置と球状スペーサを用いた液晶表示装置のそれぞれのコントラスト比は、350:1と150:1であった。球状スペーサを用いた液晶表示装置の、スペーサ周辺の液晶配向を顕微鏡で観察したところ、図12(a)とほぼ同じ配向状態であった。
【0081】
また、駆動ICにより、最大輝度を与えるのに十分な電圧を液晶に印加することが可能であった。
[実施例5]
実施例1と同様の方法で作製した液晶表示装置に、Δε≦1の液晶材料としてフェニルシクロヘキサン骨格の液晶化合物を30重量%とビシクロヘキシル骨格の液晶化合物を20重量、フェニルビシクロヘキサン骨格の液晶化合物を20重量%、ジアルケニルオキシベンゼン誘導体を10重量%の合計80重量%、4−シアノ−3,5−ジフッ素フェニル基を有する液晶化合物を10重量%、3,4,5−トリフッ素フェニル基を有する液晶化合物を10重量%の液晶組成物(V)を注入した。この液晶組成物の物性値は、γ1=55mPa・s,Δn=0.096,Δε=5.5であった。従って本実施例の液晶表示装置では、γ1/Δn2=6.0×103mPa・s,d・Δnは0.298である。また、LΔn/√Δε=0.53<0.55となる。
【0082】
さらに本実施例の液晶表示装置においては、最低輝度を与える電圧から最大輝度を与える電圧に切り替えたときの液晶応答時間が、7msであった。従って1フレーム期間、すなわち1/60=16.7ms以下であった。さらに中間調間の応答時間を測定したところ、最も遅い中間調間応答の場合でも16msであり、1フレーム期間以下の応答時間であった。
【0083】
柱状スペーサを用いた液晶表示装置と球状スペーサを用いた液晶表示装置のそれぞれのコントラスト比は、350:1と140:1であった。球状スペーサを用いた液晶表示装置の、スペーサ周辺の液晶配向を顕微鏡で観察したところ、図12(a)とほぼ同じ配向状態であった。
[実施例6]
次に本発明の第2の実施例のアクティブマトリクス型液晶表示装置について図7に基づき説明する。実施例1に記載の液晶表示装置と大きく異なる点は、画素電極703と共通電極702の材質が透明導電体のITOである点である。
【0084】
ガラス基板701の上に共通電極702及び走査信号電極714を形成する。また、それらの電極の上に絶縁膜704を形成し、更にその上に映像信号電極710,ソース電極717,アモルファスシリコン716からなるTFT715を形成する。さらに絶縁層704′の上層に画素電極703を形成する。ソース電極と画素電極703は電気的に接続されている。この電極群を有する基板上に、JSR(株)製オプトマーAL3046を用い、配向膜708を形成する。配向膜形成後、膜表面にラビング法により配向処理を行う。その他の液晶表示装置の作成方法は実施例1と同様であり、柱状スペーサを用いた液晶表示装置と、比較例として球状スペーサを用いた液晶表示装置を作製した。なお、各電極の基板面垂直方向の層順序は、本実施例の層順序に限定されるものではない。
【0085】
作製した液晶表示装置に、実施例5に記載の液晶組成物(V)を注入した。この場合、Δn/√Δε=4.2×10-2≦5.5×10-2となる。
【0086】
本実施例の液晶表示装置においては、最低輝度を与える電圧から最大輝度を与える電圧に切り替えたときの液晶応答時間が、7msであった。従って1フレーム期間、すなわち1/60=16.7ms以下であった。さらに中間調間の応答時間を測定したところ、最も遅い中間調間応答の場合でも15msであり、1フレーム期間以下の応答時間であった。
【0087】
柱状スペーサを用いた液晶表示装置と球状スペーサを用いた液晶表示装置のそれぞれのコントラスト比は、350:1と140:1であった。さらに球状スペーサを用いた液晶表示装置の、スペーサ周辺の液晶配向を顕微鏡で観察したところ、図12(a)とほぼ同じ配向状態であった。
【0088】
また、駆動ICにより、最大輝度を与えるのに十分な電圧を液晶に印加することが可能であった。
[実施例7]
実施例6と同様の方法で作製した液晶表示装置に、Δε≦1の液晶材料としてフェニルシクロヘキサン骨格の液晶化合物を25重量%とビシクロヘキシル骨格の液晶化合物を20重量、フェニルビシクロヘキサン骨格の液晶化合物を20重量%、ジアルケニルシクロヘキサン誘導体を10重量%、ジアルケニルオキシベンゼン誘導体を10重量%の合計85重量%、4−シアノ−3,5−ジフッ素フェニル基を有する液晶化合物を10重量%、3,4,5−トリフッ素フェニル基を有する液晶化合物を5重量%の液晶組成物(VI)を注入した。この液晶組成物の物性値は、γ1=45mPa・s,Δn=0.094,Δε=4.5であった。従って本実施例の液晶表示装置では、γ1/Δn2=5.1×103mPa・s,d・Δnは0.291である。また、Δn/√Δε=4.4×10-2≦5.5×10-2となる。
【0089】
さらに本実施例の液晶表示装置においては、最低輝度を与える電圧から最大輝度を与える電圧に切り替えたときの液晶応答時間が、5msであった。従って1フレーム期間、すなわち1/60=16.7ms以下であった。さらに中間調間の応答時間を測定したところ、最も遅い中間調間応答の場合でも11msであり、1フレーム期間以下の応答時間であった。
【0090】
柱状スペーサを用いた液晶表示装置と球状スペーサを用いた液晶表示装置のそれぞれのコントラスト比は、350:1と135:1であった。球状スペーサを用いた液晶表示装置の、スペーサ周辺の液晶配向を顕微鏡で観察したところ、図12(a)とほぼ同じ配向状態であった。
【0091】
また、駆動ICにより、最大輝度を与えるのに十分な電圧を液晶に印加することが可能であった。
【0092】
本発明によると、ノーマリークローズ横電界方式の液晶表示装置において、液晶組成の調整により、液晶組成中の誘電率異方性Δε≦1の構成成分を40重量%以上100重量%未満とすることで、応答時間を1フレーム期間以下の高速応答性が達成できる。さらに液晶組成の調整により、液晶層の回転粘性係数γ1と屈折率異方性Δnとを、1×103mPa・s≦γ1/Δn2≦1.2×104mPa・sとすることでも、応答時間を1フレーム期間以下の高速応答性が達成できる。さらにスペーサを非表示領域に配置することで、高コントラストを達成できる。
【0093】
【発明の効果】
高速応答性と高コントラストが可能な液晶表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の横電界方式の液晶表示装置における液晶の動作原理を示す模式図。
【図2】本発明の液晶表示装置の、電界方向に対する液晶分子長軸配向方向と偏光板偏光透過軸のそれぞれがなす角を示す図。
【図3】本発明の液晶表示装置の、液晶分子の配向方向と偏光板の偏光透過軸との関係を示す図。
【図4】本発明の液晶表示装置の、単位画素部の電極群,絶縁膜,配向膜の配置を示す平面および断面を示す模式図。
【図5】本発明の横電界方式の液晶表示装置における液晶の動作原理を示す模式図。
【図6】本発明の液晶表示装置の、単位画素部の電極群,絶縁膜,配向膜の配置を示す平面および断面を示す模式図。
【図7】本発明の液晶表示装置の、単位画素部の電極群,絶縁膜,配向膜の配置を示す平面および断面を示す模式図。
【図8】本発明の横電界方式の液晶表示装置における、液晶層中のニュートラル成分の含有量と応答時間との関係を示す図。
【図9】本発明の横電界方式の液晶表示装置における、液晶材料のγ1/Δn2と応答時間との関係を示す図。
【図10】本発明の実施例で用いた液晶材料の、γ1/Δn2とニュートラル成分の含有量との関係を示す図。
【図11】スペーサ周辺の液晶配向状態を観察するための測定用セルの模式断面図。
【図12】本発明の液晶表示装置の、液晶層中のΔε≦1の構成成分量とスペーサ周辺での光漏れの様子をあらわした模式図。
【図13】スペーサ周辺での液晶分子の推定配向状態を表した模式図。
【図14】本発明の実施例における、柱状スペーサを用いた液晶表示装置の画素部模式断面図。
【図15】実施例1の液晶表示装置における回路システム構成の一例を示す。
【図16】実施例1の液晶表示装置の各構成部品を示す分解斜視図。
【図17】本発明の実施例における、球状スペーサを用いた液晶表示装置の画素部模式断面図。
【符号の説明】
101,101′,401,501,501′,601,701,1101,1401,1701,1701′…基板、102,402,502,602,702,1402,1702…共通電極、103,403,503,603,703,1403…画素電極、404,604,704,704′,1404,1704…絶縁層、1405…カラーフィルタ、106,506,1406,1706…液晶分子、1407,1707…平坦化膜、108,108′,408,508,608,708,1103,1408,1708…配向膜、109,109′,509、509′,1102,1409,1709,1709′…偏光板、110,410,510,610,710,1410,1710…映像信号電極、111,201,301,301′…液晶の配向方向、202,302,302′…偏光板の偏光透過軸方向、113,203,513…電界方向、414,614,714…走査信号電極、415,615,715…TFT素子、416,616,716…アモルファスシリコン、717…ソース電極、1501,1613…垂直走査回路、1502,1604…映像信号駆動回路、1503…共通電極駆動回路、1504…電源回路及びコントローラ、1505…共通電極配線、1506…映像信号電極配線、1507…走査信号電極配線、1104,1204,1711…球状スペーサ、1105…液晶層、1601…液晶表示モジュール、1602…シールドケース、1603…表示窓、1606…液晶表示パネル、1607…光拡散板、1608…導光体、1609…反射板、1610…バックライト蛍光管、1611…バックライトケース、1612…インバータ回路基板、1605…電源回路基板、1201…明部、1202,1203,1205,1206…暗部線、1412…柱状スペーサ、1411,1705…ブラックマトリクス。
Claims (4)
- 前記液晶層の回転粘性係数γ1と屈折率異方性Δnとが、1×103mPa・s≦γ1/Δn2≦1.2×104mPa・sを満たす請求項1に記載の液晶表示装置。
- 請求項1,2のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記スペーサが一方の基板上に形成された構造物である液晶表示装置。 - 請求項1,2のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記液晶層の屈折率異方性Δn,誘電率異方性Δεとが、Δn/√Δε≦5.5×10-2の関係を満たす液晶表示装置。
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