例えば、自動車のタイヤや高圧ホースなどの補強、集積回路の電極と前記集積回路と印刷配線板との接続に用いられるリードとの接続等の用途には、従来から、種々の極細の線材(図10に例示する)100を用いてきた。
この種の極細の線材100は、超硬ダイス、ダイヤモンドダイスなどを用いた伸線加工によって製造される。一般的な伸線加工では、極細の線材100の表面層の引張り応力と中心層の圧縮応力に分けられる軸方向残留応力が生じる。この残留応力が大きい極細の線材100は、線のクセや曲がりを生じて寸法精度などに影響を及ぼし、品質を低下させる傾向がみられた。
前述した残留応力の発生原因は、外的な不均一加工による要因と内的な結晶組織、結晶粒の方位性や材料定数などにあった。また、残留応力の大きさも様々である。伸線加工時に発生する残留応力は、極細の線材100の材質、極細の線材100の材料物性値、ダイスのリダクション角度、断面減少率、総加工度などのごく一般的な加工条件によって容易に変化するため、極細の線材100の品質を管理する上で加工中に発生する残留応力を小さくするような加工条件を設定することが重要であり、極細の線材100の残留応力を正確にかつ簡便に測定することが求められていた。
従来、金属からなる線材100の残留応力を測定する方法としては、被測定物としての線材100の一部を切断・除去・分割・分離したりすることによって、線材100の残留応力を部分的に解放したときに発生する変形量を測定したり、またはX線、中性子線、放射光などにより線材100の結晶格子間隔を測定したりすることによって行われてきたが、測定範囲は線材100表面部分に限られていた。
スリット法と呼ばれる一般的な線材100の分割による軸方向残留応力測定法では、図10に示すように、長手方向に直交する方向に切断した線材100の断面(端面)100aに、該線材100の長手方向に沿って、機械的な切れ目101を入れたときに発生する前述した端面100aを含んだ端部の反り量を測定して軸方向残留応力を求めてきた。この時、線材100の表面と中心部に存在する軸方向残留応力を正確に解放させるために、線材100の長手方向と法線との双方に沿って、細い切れ目101を前記線材100に入れる必要がある。
また、特許文献1に示されているように、線材100を切断して、前述した残留応力を測定する方法は、線材100の外径が大きい場合に比較的簡易に実施・測定が可能である。しかしながら、線材100の直径が0.5mm以下の場合では、機械的な加工が困難になるとともに、切断時に生じる機械的な変形によって線材100の残留応力が変化する。このため、このような切断する方法や切り裂きにする加工方法は外径0.5mm以下の線材100には実際上適用しがたいものであった。
一方、被測定物が、厚み0.1mm以下の箔の場合には、特許文献2に示されているとおり、他の金属を被覆することによって残留応力を測定・評価することが可能となる。しかしながら、線材100の場合には、前述した特許文献2に示された方法も利用することができない。
X線等により結晶格子間隔を測定することによって残留応力を求める方法は、特定部位毎に残留応力量を特定できるため、定量的な残留応力の測定法として主流である。ところが、X線など放射線の侵入深さとスポット径の関係から、対象となる線材100の線径が限られる。例えば、X線を用いて残留応力を測定する方法では、X線のスポット径が数十μmから数百μmであるため、当然の事ながら被測定物または被測定物の測定部位がそれ以上の大きさであることが必要である。また、スポット径を小さくすると測定時間が長くなるため、前述したX線等により残留応力を求める方法は、一般的には直径が数mmの線材100に対してのみ適用されてきた。
線材100の残留応力を求める方法としては、多数のワイヤを巻き付けた集合ワイヤにおける残留応力を測定する方法もある。しかしながら、この方法では、軸方向、半径方向、円周方向に存在する残留応力を特定できず、多数本ワイヤの集合情報として得られるのみであった。
また、X線の侵入深さが数μmから数十μmであるため、観察対象が線材100の中心部である場合は、エポキシ樹脂などで埋め込んだ被測定物としての線材100を、研磨して測定面を露出させるなど試料調製が必要であった。線材100の直径が0.5mm以下である場合は、この点においても試料調製に難があり不利であるといえる。
特公平5−4012号公報
特開2003−315171号公報
したがって、本発明の目的は、線材の残留応力を確実に測定することを可能とする線材の残留応力測定方法及び線材の残留応力測定装置を提供することにある。特に、極細の線材、とりわけ金属(合金を含む)からなる極細の丸線の残留応力を正確かつ確実に測定することを可能にする線材の残留応力測定方法及び線材の残留応力測定装置を提供することにある。
前述した課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載の本発明の線材の残留応力測定方法は、線材の残留応力を推測する際に、集束イオンビームを前記線材の端面を含む部分から長手方向に沿って中央部に向かって、所定の長さ毎、順にずらしながら照射して、前記所定の長さ毎、前記線材の一部を順次除去することにより、順次除去されることで残存した部分が生じる反り量を測定することを特徴としている。
請求項2に記載の本発明の線材の残留応力測定方法は、線材の残留応力を推測する際に、集束イオンビームを用いたスパッタリングによって該線材の端面から長手方向に沿って該線材の一部を所定の長さに除去した後、前記端面を含みかつ所定長さの一部が除去されることで残存した部分が生じる反り量を測定する、という除去・測定工程を繰り返すことを特徴としている。
請求項3に記載の本発明の線材の残留応力測定方法は、請求項1または請求項2に記載の線材の残留応力測定方法において、前記線材の一部を除去する際に、該線材半径方向の半分を除去することによって、該線材はその軸芯を含んだ平面が露出し、そして残存部分はその半断面を持つ柱状をなすことを特徴としている。
請求項4に記載の本発明の線材の残留応力測定方法は、線材の残留応力を推測する際に、集束イオンビームを前記線材の中央部に位置する部分から長手方向に沿って、所定の長さ毎、順にずらしながら照射して、前記所定の長さ毎、前記線材中央部の一部を順次除去した後、この一部が除去された部分の中央を切断し、そしてこの切断によって生じた該線材の端面を含みかつ一部が除去されることで残存した部分の反り量を測定することを特徴としている。
請求項5に記載の本発明の線材の残留応力測定方法は、請求項1又は請求項4記載の線材の残留応力測定方法において、前記反り量をh、該線材のヤング率をE、前記線材の外径をD、および前記残存した部分の長さをlとして、前記線材の残留応力σを、σ=0.2878×E×D×2h/l2と推定することを特徴としている。
請求項6に記載の本発明の線材の残留応力測定方法は、請求項1ないし請求項5のうちいずれか一項に記載の線材の残留応力測定方法において、前記線材は、その外径が1〜100μmであることを特徴としている。
請求項7に記載の本発明の線材の残留応力測定方法は、請求項1ないし請求項5のうちいずれか一項に記載の線材の残留応力測定方法において、前記線材は、その外径が3〜50μmであることを特徴としている。
請求項8に記載の本発明の線材の残留応力測定装置は、線材の残留応力を推測する際に用いられる線材の残留応力測定装置において、該線材の一端または両端を支持するフォルダと、イオン源、集光レンズ及び偏向電極を少なくとも備え、該線材の長手方向に対し直交する方向から該線材の表面にイオンビームを加速集束させて、前記線材の長手方向に沿って、所定の長さ毎、順にずらしながら照射して、前記所定の長さ毎、前記線材の一部を順次除去して、前記線材の端面を含みかつ一部が除去されることで残存した部分を反らせる加工手段と、前記線材の表面を所定の長さ毎に観察する観察手段と、前記線材の端面を含みかつ一部が除去されることで残存した部分が生じる反り量を測定する手段と、を含むことを特徴としている。
請求項9に記載の本発明の線材の残留応力測定装置は、線材の残留応力を推測する際に用いられる線材の残留応力測定装置において、該線材の一端または両端を支持するフォルダと、イオン源、集光レンズ及び偏向電極を少なくとも備え、該線材の長手方向に対し直交する方向から該線材の表面にイオンビームを加速集束させて照射することによって該線材の端面から長手方向に沿って該線材の一部を所定の長さ毎に順次除去する加工手段と、前記線材の表面を所定の長さ毎に観察する観察手段と、前記端面を含みかつ所定長さが除去されることで残存した部分が生じる所定の長さ毎の反り量を測定する測定手段と、を含むことを特徴としている。
本発明に適用できる線材は、断面形状が円形、八角形、六角形あるいは四角形等でも可能であるが、断面形状が円形の線材は、どの直径方向からでも線材の一部を順次除去することができるので、位置決めが容易となり好ましい。本発明の方法などで品質管理された極細の線材は、集積回路とリードとの接続に適している。
請求項1に記載の本発明は、端面から長手方向に沿って線材の一部を除去するので、線材が極細線の場合でも容易に加工ができる。したがって、極細線の残留応力を確実に測定できる。
このように、本発明による極細線の軸方向残留応力測定方法によれば、従来のX線回折のような集合情報としての残留応力ではなく、被測定物としての線材が極細線である場合にも、該極細線がもつ軸方向残留応力を簡易迅速に定量化することができる。このため、従来、知ることができなかった線材内部の欠陥を視覚認識することができるので、ロット間のばらつき等を抑制することができる。
しかも、この軸方向残留応力測定法はスリット法に比べて信頼性の高い値が得られる。スリット法では機械的に分割を行うため、スリット加工時にも加工応力を生じてしまいがちである。ところが、例えば、集束イオンビームを用いた場合、例えばガリウム(Ga)イオンの衝突によって生じるイオンビーム・ダメージ層は表面層から数十nmの深さであるので、残留応力は削り取られずに残った極細材全体に対して数μm〜数十μmの厚さ領域に発生しているのみである。よって、全体に占めるイオンビーム・ダメージ層の割合が1%以下と小さいので、イオンビーム・ダメージ層の影響をほとんど無視することができる。また、二次電子像(SIM像)で観察しながらスパッタリングするので、丸線等の線材を正確に半分に切り取ることができ、軸方向残留応力の導出式により近づけることができるという利点がある。
請求項1に記載の本発明は、長手方向に沿って中央部から線材の一部を除去するので、線材が極細線の場合でも容易に加工ができ、除去作業中に残留応力の反りを発生させることがほとんどない。したがって、極細線の残留応力を確実に測定できる。
請求項1に記載の本発明は、所定の長さ毎に線材から一部を除去するので、線材から一部を長手方向に沿って確実に除去できる。したがって、極細線の残留応力を確実に測定できる。
請求項1に記載の本発明は、端面から長手方向に沿って線材の一部を除去するので、線材が極細線の場合でも容易に加工ができる。したがって、極細線の残留応力を確実に測定できる。
請求項3に記載の本発明は、軸芯を含んだ平面が露出するように線材から半径方向の半分を除去して、残存部分が半断面を持つ柱状に形成するので、正確な残留応力を測定することを可能とする試験片を作成することができる。
請求項4に記載の本発明は、長手方向に沿って中央部から線材の一部を除去するので、線材が極細線の場合でも容易に加工ができ、除去作業中に残留応力の反りを発生させることがほとんどない。したがって、極細線の残留応力を確実に測定できる。
請求項6に記載の本発明は、線材の外径が1〜100μmであるので、集積回路とリードとを接続する極細線の残留応力を確実に測定できる。
請求項7に記載の本発明は、線材の外径が3〜50μmであるので、集積回路とリードとを接続する極細線の残留応力を確実に測定できる。
請求項8及び請求項9に記載の本発明は、集束イオンビームを用いるので、線材の全体に占めるイオンビーム・ダメージ層の割合が1%以下と小さいので、イオンビーム・ダメージ層の影響をほとんど無視することができる。また、観察手段で観察しながらスパッタリングするので、丸線等の線材を正確に半分に切り取ることができる。しかも、極細線の残留応力を正確に測定することが可能となる。
以下、本発明の第1の実施形態にかかる試験片の作成方法、線材の残留応力測定方法、試験片の作成装置及び線材の残留応力測定装置を、図1ないし図5に基づいて説明する。
本実施形態では、直径が例えば25μmの極細線1の軸方向残留応力を測定する。極細線1は、例えば、純度が99.99%の金からなり、断面円形に形成されている。極細線1は、図1に示すように、一端が集積回路としてのICチップ2と接続し、他端が印刷配線板3の導体パターン4と接続されるリード5と接続する。ICチップ2は、極細線1によりリード5に接続されて、樹脂6でモールドされる(覆われる)。
印刷配線板3は、絶縁性の基板7と、該基板7上に貼り付けられた銅などからなる導体パターン4と、を備えている。リード5は、半田などを用いたろう付けにより、印刷配線板3の導体パターン4に取り付けられる。
前述した極細線1は、一端が集積回路としてのICチップ2と接続し、他端が印刷配線板3の導体パターン4と接続されるリード5と接続して、所謂、ICチップ2とリード5とを接続するワイヤボンディングに用いられる。このように、極細線1は、ICチップ2を、印刷配線板3との接続に用いられるリード5に取り付けるために用いられる。
前述した極細線1の軸方向残留応力を測定する際には、スパッタリング法や、微細エッチング法等によって、極細線1から一部を除去して、図5などに示された試験片20を作成することもできるが、好ましくは図2に示すガリウムイオン、金イオン、ビスマスイオン等を用いた集束イオンビーム装置8を備えた線材の残留応力測定装置(本発明の試験片の作成装置にも相当する)21を用いる。特に好ましくは、輝度が高く、エネルギー幅の狭い液状金属としてのガリウムイオン源が使われる。
線材の残留応力測定装置21は、図2に示すように、フォルダ9と、ステージ駆動装置22と、加工手段としての集束イオンビーム装置8と、観察手段としての二次荷電粒子検出器23と、制御手段としての制御装置24と、入力操作部25と、表示手段としてのディスプレイ26と、を備えている。
フォルダ9は、極細線1の一端または両端を支持する。ステージ駆動装置22は、フォルダ9を後述するイオンビームBと互いに直交する2方向に沿って移動自在に支持する。
集束イオンビーム装置8は、Gaイオン源10と、イオン光学系27と、を備えている。Gaイオン源10は、高周波や強磁場、アーク放電により液体ガリウム(Ga)からなるイオンビームB(図2に示す)を発生する。イオン光学系27は、集光レンズ11と、偏向電極12とを備えている。集光レンズ11と偏向電極12とを含むイオン光学系27は、Gaイオン源10からのイオンビームBを加速集束させて、フォルダ9に保持された極細線1に照射する。集束イオンビーム装置8は、フォルダ9に支持された極細線1の長手方向に対し直交する方向から該極細線1の表面にイオンビームBを加速集束させて照射することによって、極細線1の後述する部分13a,13bを順次除去する。
二次荷電粒子検出器23は、極細線1からの二次粒子を検出することで、フォルダ9に支持された極細線1を撮像する(極細線1の加工表面を観察する)。二次荷電粒子検出器23は、撮像して得た極細線1の画像を制御装置24を介してディスプレイ26に向かって出力する。
制御装置24は、周知のRAM、ROM及びCPUなどを備えたコンピュータである。制御装置24は、集束イオンビーム装置8、ステージ駆動装置22、二次荷電粒子検出器23、入力操作部25及びディスプレイ26と接続して、これらの動作を制御することで、線材の残留応力測定装置21の制御をつかさどる。また、制御装置24は、二次荷電粒子検出器23の撮像して得た画像から後述する残存した部分(残存部分にも相当する)15の長さlと、反り量hを測定し、後述する式1に基づいて、極細線1即ち試験片20の残留応力を測定(推測)する。二次荷電粒子検出器23と制御装置24は、本発明の反り量hを測定する手段をなしている。
入力操作部25は、ボタンやジョイスティックなどを備えている。入力操作部25は、極細線1の外径D、イオンビームBのビーム種、イオンビームBを照射する箇所などを制御装置24に入力することができる。
ディスプレイ26は、二次荷電粒子検出器23が撮像して得た画像と、該画像中のイオンビームBを照射する箇所などを表示する。
線材の残留応力測定装置21の集束イオンビーム装置8は、融点が29.7℃と低く、蒸気圧も10-10Paと低く、かつ、長時間安定して動作できる等の理由から前述した液体ガリウム(Ga)を用いる。線材の残留応力測定装置21の集束イオンビーム装置8は、ガリウム(Ga)イオンを数百eV〜数十keVのエネルギーで極細線1の表面を照射する。
線材の残留応力測定装置21の集束イオンビーム装置8は、ガリウム(Ga)イオンの衝突によって極細線1の表面の金属原子を削り取る。このように、線材の残留応力測定装置21は、集束イオンビーム装置8を用いて極細線1の表面を、ドライエッチング(スパッタリング)する。集束イオンビーム装置8は、30kV内外の加速電圧で印加して極細線1の直角方向からスパッタリングしていくと、極細線1を構成する材料をその表面から削り取っていくことができる。
線材の残留応力測定装置21では、このスパッタリングしている領域を二次荷電粒子検出器23で得た画像としての二次電子像(SIM)で観察しながら加工ができるので、極細線1の半径方向の半分の領域(即ち略半径分の領域)を正確に削り取ることができる。また、集束イオンビーム装置8は、ビーム種を変更することで加工精度を調整できるため、極細線1の半径方向の半分の領域だけを精密に削り取ることで、前述のスリット法と同様に残留応力を求めることができる。
前述した線材の残留応力測定装置21を用いて、極細線1の軸方向残留応力を測定する際には、まず、フォルダ9に極細線1を支持させる。そして、入力操作部25を操作して、図3(a)中の点線で示す極細線1の端面1aを含む部分13a(一部に相当)にイオンビームBを照射する。このとき、極細線1の軸芯Pに、前述した部分13aの縁を重ねる。さらに、前述した部分13aの長さは、加工後の反りを考慮して徐々に削ることが望ましく、好ましくは外径の2倍以内とし、ここでは例えば50μmなどの所定の長さになっている。
その結果、前述した部分13a(半径方向の半分に相当する)を極細線1から削り取ることとなる。その後、入力操作部25を操作して、図3(b)中の点線で示すように、イオンビームBを照射する部分13b(一部に相当)を、極細線1の長手方向に沿って該極細線1の中央部に向かってずらす。そして、図3(c)に示すように、前述した部分13bを、更に、極細線1から削り取る。このように、端面1aを含んだ部分13aから極細線1の中央部に向かって順にイオンビームを照射する部分13bをずらしていくと、前記極細線1の軸芯Pを含んだ平面14が露出する。
このように、線材の残留応力測定装置21は、ドライエッチング法としての所謂集束イオンビーム加工により、極細線1の端面1aから長手方向に沿って、該極細線1の部分13a,13bを順次除去する。また、集束イオンビーム装置8は、前述した所定の長さ毎に極細線1から部分13a,13bを順次除去する。また、集束イオンビーム装置8は、極細線1から除去される部分13a,13bが、略半円柱状となるように、極細線1から部分13a,13bを除去する。なお、半円柱状とは、断面が略半円の柱を示している。さらに、集束イオンビーム装置8は、軸芯Pを含んだ平面14が露出して、前記部分13a,13bが除去されることで残存した部分15が、その半断面を持つ柱状(半円柱状)をなすように、極細線1から部分13a,13bを除去する。
前述した端面1aから長手方向に沿って部分13a,13bが除去して、図4及び図5に示された試験片20を作成する。試験片20は、端面1aを含みかつ前記部分13a,13bが除去されることで残存した略半円柱状の部分15が、前述した軸方向残留応力により反り返る。
前述した部分15の反り量hを制御装置24が測定し、前記極細線1のヤング率をEとし、極細線1の外径をDとし、前述した残存した部分15の長さlを制御装置24が測定し、以下の式1(1984年11月16日日本塑性加工学会 第20回伸線技術分科会 「銅線の機械的性質と残留応力におよぼすダイススケールの影響」を参照)を用いて、制御装置24が、試験片20即ち極細線1の軸方向残留応力を測定する。なお、反り量hとは、前記軸芯Pに対し直交する方向の前記軸芯Pと前記残存した部分15の端面1aとの距離を示している。
こうして、前述した試験片20即ち極細線1の軸方向残留応力を測定する。本実施形態によれば、端面1aから長手方向に沿って極細線1の部分13a,13bを順次除去するので、極細線1でも容易に加工ができる。したがって、試験片20即ち極細線1の残留応力を確実に測定できる。また、極細線1の残留応力を確実に測定することを可能とする試験片20を得ることができる。
所定の長さ毎に、極細線1から部分13a,13bを除去するので、極細線1から部分13a,13bを長手方向に沿って確実に除去できる。したがって、極細線1の残留応力を確実に測定できる。
集束イオンビーム加工で極細線1から部分13a,13bを除去するので、極細線1から部分13a,13bを正確に除去できる。また、集束イオンビーム加工で極細線1から部分13a,13bを除去するので、極細線1に熱を付与することなく部分13a,13bを除去できる。このため、極細線1から部分13a,13bを除去する際に極細線1の残留応力に影響を与えることを防止できる。したがって、極細線1の残留応力を正確に測定できる。
極細線1から除去する部分13a,13bが略半円柱状となりかつ軸芯Pを含んだ平面14が露出し、残存した部分15がその半断面を持つ柱状(即ち半円柱状)をなすように、極細線1から部分13a,13bを除去するので、正確な残留応力を測定できる。
本発明においては、ドライエッチング法としてのスパッタリング法(前述した集束イオンビーム加工を含む)によって極細線1の外径の約半分迄の範囲を所定長さまで削りとった後、更に同一のスパッタリングを繰り返すことにより極細線1の端面1aから所定長さまでを長く削る。極細線1にねじれや長手方向の不規則な残留応力の分布があれば2回目のスパッタリングによる極細線1の反り方向が最初のものと異なる。しかしながら、二次電子像(SIM)で観察できるので、反りが発生しても外径の約半分迄の所定長さに正確に削り取ることが出来る。
また,本発明の極細線1は、細いほどイオンビームによる切削加工が容易になるので、1〜500μm、好ましくは1〜100μm、より好ましくは3μm〜50μmの線径のものが好ましい。線径がこの範囲内にあると、切削加工を短時間の内に、かつ正確に実施することができる。
次に、本発明の第2の実施形態を、図6ないし図9に基づいて説明する。なお、前述した第1の実施形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。本実施形態の図6に示す線材の残留応力測定装置21のフォルダ9’は、極細線1の両端を支持する。
前述した線材の残留応力測定装置21を用いて、極細線1の軸方向残留応力を測定する際には、まず、フォルダ9’に極細線1の両端を支持させる。そして、入力操作部25を操作して、図7(a)中の点線で示す極細線1の中央部に位置する部分16a(一部に相当)にイオンビームBを照射する。このとき、極細線1の軸芯Pに、前述した部分16a(半径方向の半分に相当する)の縁を重ねる。さらに、前述した部分16aの長さは、外径の1/2迄を目安とし、例えば50μmなどの所定の長さとなっている。
その結果、前述した部分16aを極細線1から削り取ることとなる。その後、入力操作部25を操作して、図7(b)中の点線で示すように、イオンビームBを照射する部分16b(一部に相当)を、極細線1の長手方向に沿ってずらして、前述した部分16b(半径方向の半分に相当する)を、更に、極細線1から削り取る。このように、極細線1の長手方向に沿って順にイオンビームBを照射する部分16a,16b…を順次ずらすと、部分16a,16bが極細線1から順次削り取られる。その結果、図7(c)に示すように、前記極細線1の軸芯Pを含んだ平面14が露出する。
このように、線材の残留応力測定装置21は、所謂集束イオンビーム加工により、極細線1の16a,16b…を長手方向に沿って順次除去する。また、集束イオンビーム装置8は、前述した所定の長さ毎に極細線1から16a,16b…を除去する。また、集束イオンビーム装置8は、極細線1から除去される16a,16b…が、略半円柱状となり、残存した部分15が半断面をもつ柱状(半円柱状)をなすように、極細線1から16a,16b…を順次除去する。なお、略半円柱状とは、断面が略半円の柱を示している。さらに、集束イオンビーム装置8は、軸芯Pを含んだ平面14が露出するように、極細線1から16a,16b…を除去する。
そして、前述した16a,16b…が除去されることで残存した部分15の例えば図7中に二点鎖線で示す中央で切断する。その結果、図8及び図9に示す試験片20が得られる。試験片20では、中央で切断することによって生じた端面15aを含んだ前述した残存した部分15に前述した軸方向残留応力により反りが生じる。
制御装置24が前述した部分15の反り量hを測定し、前記極細線1のヤング率をEとし、極細線1の外径をDとし、制御装置24が前述した残存した部分15の長さlを測定して、前述の式1を用いて、試験片20即ち極細線1の軸方向残留応力を測定する。
本実施形態によれば、長手方向に沿って中央部から極細線1の部分16a,16b…を順次除去するので、極細線1でも容易に加工ができる。したがって、試験片20即ち極細線1の残留応力を確実に測定できる。また、極細線1の残留応力を確実に測定することを可能とする試験片20を得ることができる。
所定の長さ毎に、極細線1から部分16a,16b…を順次除去するので、極細線1から部分16a,16b…を長手方向に沿って確実に除去できる。したがって、極細線1の残留応力を確実に測定できる。
集束イオンビーム加工で極細線1から部分16a,16b…を除去するので、極細線1から部分16a,16b…を正確に除去できる。したがって、極細線1の残留応力を正確に測定できる。
部分16a,16b…が略半円柱状となりかつ軸芯Pを含んだ平面14が露出するとともに、残存した部分15がその半断面を持つ柱状(半柱状)をなすように、極細線1から一部を除去するので、正確な残留応力を測定できる。
(実施例1)
純度が99.99%の金からなり、かつ最終が直径25μmとなるまで伸線したときの総加工度が87%となるように焼きなましした母材から1パス減面率が5%の加工率で加工した極細線1を用いた。集束イオンビーム装置8として、株式会社日立製作所製の集束イオン装置(型式FB・2000A)を用いた。極細線1を、10mmに切断して、フォルダ9に一方の端部を固定し、他方の端部は非固定状態とした。極細線1を、長手方向に精密に加工していくため,イオンビーム照射面と水平直角になるように極細線1の位置を調整する。極細線1の他方の端部は、精密ハサミで切断しているが、切断による加工層が残るので半径の2倍程度の長さをM1・500のビーム種でスパッタリングして除去した。さらに、他方の端部の切断面を精密に加工するため、ビーム種をM1200等の弱いビーム種に変更して約1〜2μmの厚みを精密にスパッタリングして、前述した切断面を整える。集束イオンビーム装置8の加工画面で、極細線1の直径Dの約2倍分の25×2=50μmの部分13a,13bを、ビーム種M1500でスパッタリングして削り取る。極細線1の他方の端部より約50μmまで削り取られた断面を整えるため,ビーム種をM1200等の弱いビーム種に変更して約1〜2μmの厚みを精密にスパッタリングする。
そして、反り量hを測定したところ、0.625μmであった。ここで、極細線1のヤング率Eは80GPaであり、極細線1の直径Dは25μmであり、前述した残存部分15の長さlは50.94μmであった。式1によると、軸方向残留応力σは、278MPaとなった。
(実施例2)
前述した実施例1と同様に、集束イオンビーム加工によるスパッタリングを繰り返し,スパッタリングされて残存した部分15の長さlを、極細線1の直径Dの約4倍としたときの軸方向残留応力を求めた。すなわち、直径Dが25μmの極細線1の端面1aから25μm×4=長さ約100μmを精密に仕上げスパッタリングした。
そして、反り量hを測定したところ、1.91μmであった。ここで、極細線1のヤング率Eは80GPaであり、極細線1の直径Dは25μmであり、前述した残存部分15の長さlは107.64μmであった。式1によると、軸方向残留応力σは、190MPaとなった。
(実施例3)
前述した実施例1及び実施例2と同様に、集束イオンビーム加工によるスパッタリングを繰り返し、スパッタリングされて残存した部分15の長さlを、極細線1の直径Dの約6倍としたときの軸方向残留応力を求めた。すなわち、直径Dが25μmの極細線1の端面1aから25μm×6=長さ約150μmを精密に仕上げスパッタリングした。
そして、反り量hを測定したところ、4.46μmであった。ここで、極細線1のヤング率Eは80GPaであり、極細線1の直径Dは25μmであり、前述した残存部分15の長さlは160.51μmであった。式1によると、軸方向残留応力σは、199MPaとなった。
実施形態では、軸芯Pを含んだ平面14が露出するように、極細線1にスパッタリングを施している。しかしながら、本発明では、軸芯Pを含んだ平面14が露出しなくてもよい。また、本発明では、集束イオンビーム加工に限定することなく、種々の方法で極細線1の部分13a,13b,16a,16b…を、該極細線1の長手方向に沿って除去してもよい。また、本発明では、極細線1に限定することなく、種々の直径の線材に適用することができる。
実施形態では、極細線1は、導電性の金属からなる。しかしながら、本発明では、線材は、導電性を有していれば、金属線に限定されない。本発明にかかる線材は、導電性プラスチック繊維、導電性セラミックス繊維、カーボンファイバー、金属線などの導電性を有する線材あればよい。本発明にかかる線材は、中でも、金属線であるのが最も好ましい。
また、本発明では、集束イオンビーム加工に限らず種々のドライエッチング法により極細線1から部分13a,13b,16a,16bを順次除去してもよい。即ち種々のスパッタリング法や、レーザーアブレーション法を用いてもよい。さらに、実施形態では、制御装置が反り量hを測定して残留応力σを推測している。しかしながら、本発明では、作業員が、ディスプレイ26に表示された画像から反り量hを測定して、残留応力σを推測しても良い。
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施例に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。