JP3921065B2 - 金属被覆用樹脂組成物、樹脂フィルム、容器用金属板および金属容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐衝撃性、耐薬品性、成形性、耐熱性、ガスバリヤ性に優れ、かつ金属との密着性が良好で、かつ連続扱き加工をしても、白化や耐衝撃特性低下等の欠陥を発生しにくい金属被覆用樹脂組成物に関する。さらに、本樹脂組成物を使用した金属被覆用樹脂樹脂フィルム、本樹脂フィルムを被覆した金属板及び本金属板を扱き加工してなる金属容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル樹脂は、機械的性質、電気的性質、耐熱性、ガスバリア性及び金属との密着性が優れており、腐食防止を目的とした金属板の被覆膜用の材料として広く使用されてきた。しかし、金属との密着性、耐衝撃性、ガスバリア性が、ポリエステル樹脂の結晶化度に強く依存するため、被膜内部の結晶構造を厳密に制御しなければ、目標の特性を得られなかった。具体的には、金属と樹脂界面では、密着性を良好にするために結晶化率を小さくし、その他の部位は、逆に耐衝撃性やガスバリア性を保持するために結晶化を大きくしまければならず、被膜内部の結晶化度を適切に傾斜させる必要があった。この結果、ラミネート工程条件が厳しく制約されていた。
【0003】
これらポリエステル樹脂の欠点を改善する手法として、特開平3-269074号公報には、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂からなる樹脂組成物をラミネートする方法が開示されている。当該方法では、ラミネート工程中で、界面の結晶化率を容易に低下できるため、密着性が向上する反面、ガスバリア性及び耐衝撃性が低下し、これらの特性を発現するためには、2軸延伸膜を使用して、結晶化を積極的に残留させる等の工程の制約があった。また、特開平7-195617号公報には、ポリエステル樹脂とアイオノマー樹脂との組成物からなる被膜を金属板にラミネートする技術が開示されている。当該技術では、結晶化が低下しても耐衝撃性であるため、密着性と耐衝撃性との両方を兼備できるが、低温での耐衝撃性を十分に改善できるまでには至っていない。さらに、特開平7-290644号公報、特開平7-290643号公報には、ポリエステル樹脂、アイオノマー樹脂、ポリエステルエラストマーの3元組成物を金属板の被膜に応用する技術が開示されている。
【0004】
この技術では、低温と室温ともに耐衝撃性がある程度改善されるものの、まだ十分な水準にまで至っていなかった。さらに、WO99/27026号公報には、ポリエステル樹脂中に、アイオノマー樹脂でカプセル化したオレフィン系ゴム状弾性体を微分散させた樹脂組成物が開示されている。この樹脂組成物により、大幅に密着性と耐衝撃性を向上することが可能であるが、扱き加工で金属容器を長期間連続成形する場合には、白化して外観を低下させたり、衝撃性が低下する場合があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、耐衝撃性、耐薬品性、成形性、耐熱性、ガスバリヤ性、金属との密着性に優れ、さらに、連続扱き加工しても、白化して外観を低下させたり、耐衝撃性が低下しない、金属被覆用樹脂組成物を提供することである。さらに、本樹脂組成物を使用した金属被覆用樹脂フィルム、本樹脂フィルムを被覆した金属板及び本金属板を扱き加工してなる金属容器を提供する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記WO99/27026号公報に記載の樹脂組成物での扱き加工時の白化や耐衝撃の低下原因を解析した結果、これら欠陥部は、単品加工では殆ど発現せずに、連続的に扱き加工して、被膜温度がポリエステル樹脂の融点以上に上昇するような場合にのみ発生していること、欠陥発生部では、アイオノマーでカプセル化したオレフィン系ゴム状弾性体が凝集してマクロな相を形成していることを見出した。そこで、本発明者等は、扱き加工時に発生する当該欠陥の原因を、連続扱き加工時の温度上昇により、相溶化剤の機能を果たしているアイオノマーとポリエステル樹脂との静電的な相互作用(イオン結合や配位結合)が低下することに起因していると推定し、温度が上昇してもポリエステル樹脂と強固な相互作用のできる相溶化剤選定が必要であるとの考察に基づき、本発明に至った。
【0007】
即ち、本発明は、固有粘度が0.5〜2.0dl/gであるポリエステル樹脂(A)、ゴム状弾性体(B)、及びエポキシ基含有ユニットを10質量%以下含有するポリオレフィン系樹脂(C)を含む樹脂組成物であって、ポリエステル樹脂(A)100質量部に対してゴム状弾性体(B)が0.5〜50質量部であり、ゴム状弾性体(B)100質量部に対してエポキシ含有ユニットを10質量%以下含有するポリオレフィン系樹脂(C)が1〜100質量部であることを特徴とする金属被覆用樹脂組成物である。
【0008】
さらに、本樹脂組成物を使用した金属被覆用樹脂フィルム、本樹脂フィルムを被覆した金属板、及び本金属板を使用して扱き加工した金属容器である。
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
本発明に使用するポリエステル樹脂(A)とは、ヒドロキシカルボン酸化合物残基、ジカルボン酸残基及びジオール化合物残基、もしくはヒドロキシカルボン酸化合物残基及びジカルボン酸残基及びジオール化合物残基を構成ユニットとする熱可塑性ポリエステルである。また、これらの混合物であってもよい。
【0011】
ヒドロキシカルボン酸化合物残基の原料となるヒドロキシカルボン酸化合物を例示すると、p-ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシエチル安息香酸、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(4’-カルボキシフェニル)プロパン等が挙げられ、これらの単独で使用しても、2種類以上混合して使用してもよい。
【0012】
また、ジカルボン酸残基を形成するジカルボン酸化合物を例示すると、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸等の芳香族ジカルボン酸及びアジピン酸、ビメリン酸、セバシン酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸等の脂肪族ジカルボン酸等が挙げられ、これらの単独で使用しても、2種類以上混合して使用してもよい。
【0013】
次に、ジオール残基を形成するジオール化合物を例示すると、2,2’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」と略称する)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2-ヒドロキシフェニル)メタン、o-ヒドロキシフェニル-p-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’-ビフェノール、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン等の芳香族ジオール及びエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ペンタメチレングリコール、水添ビスフェノールA等の脂肪族ジオール等が挙げられ、これらを単独使用しても、2種類以上混合して使用してもよい。また、これらから得られるポリエステル樹脂を単独で使用しても、2種類以上混合して使用してもよい。
【0014】
本発明のポリエステル樹脂(A)は、これらの残基の組み合わせより構成されていればよいが、中でも芳香族ジカルボン酸残基とジオール残基より構成される芳香族ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0015】
本発明で使用する好ましいポリエステル樹脂(A)を例示すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリブチレン-2,6-ナフタレート等が挙げられるが、なかでも適度の機械特性、ガスバリア性、金属密着性を有するポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリブチレン-2,6-ナフタレートが最も好ましい。
【0016】
本発明に使用するポリエステル樹脂(A)の固有粘度は0.5〜2.0dl/g、好ましくは0.65〜1.7dl/g、より好ましくは0.8〜1.5dl/gである。固有粘度が0.5dl/g未満の場合は、マトリックス自体の機械強度や耐衝撃性が低くなり、フィルムとしての特性がでない。一方、固有粘度が2.0dl/g超の場合には、成形性が不良となり、いずれも好ましくない。
【0017】
ポリエステル系樹脂(A)の特に好ましい固有粘度範囲は、0.8〜1.1dl/gである。この範囲に制御することによりマトリックス強度をより確実に保持できる。また、固有粘度を当該域に制御することにより後述する伸張粘度を適正域に制御でき、製膜加工しても伸張応力によりゴム状弾性体(B)相が伸張方向に配向しにくくなる。この結果、ゴム相に応力が残留しないので金属と被膜との密着力をより強固にでき、かつ、扱き加工のような厳しい加工してもフィルムに疵や耐衝撃性が低下をより確実に防止できる。
【0018】
上記の固有粘度は、25℃のオルトクロロフェノール中、0.5%の濃度で測定し、(式1)によって求められる。式中、Cは溶液100ml当たりの樹脂のg数で表した濃度を、t0は溶媒の流下時間を、tは溶液の流下時間を、各々表す。
【0019】
固有粘度=(ln(t/t0))/C (式1)
本発明の樹脂組成物には、耐衝撃性を向上する目的で、ゴム状弾性体(B)が、ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、0.5〜50質量部添加されなければならない。0.5質量部未満では、耐衝撃性が十分に発揮できない。また、50質量部超では、耐熱性が低下し、レトルト処理等で変形する。耐衝撃性及び耐熱性のバランスから、特に好ましいゴム状弾性体(B)の添加量は、ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、10〜25質量部である。
【0020】
本発明の樹脂組成物を構成するゴム状弾性体(B)には、山下晋三著「ゴムエラストマー活用ノート」、工業調査会(1985)や西敏夫編「ゴム材料選択のポイント」日本規格協会(1993)に記載されている公知のゴム状弾性体を広く使用できる。中でも水蒸気や酸素などの腐食要因物のバリア性から好ましいのは、(式2)の構成ユニットを有するオレフィン系ゴム状弾性体である。
【0021】
-R1CH-CR2R3- (式2)
(式中、R1、R3は、各々独立に炭素数1〜12のアルキル基もしくは水素、R2は、炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基もしくは水素を示す)
具体的には、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、エチレン-酢酸ビニルゴム、エチレン-ブテンゴム、エチレン-アクリルゴム、熱可塑性オレフィンエラストマー、エチレン-酢酸ビニル熱可塑エラストマー、スチレン-ブタジエンゴムとその水素添加物等のスチレン系エラストマーが挙げられる。より具体的には、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ペンテン共重合体、エチレン-3-エチルペンテン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体等のエチレンと炭素数3以上のα-オレフィンの共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸もしくはその誘導体との共重合体、エチレン-メタクリル酸もしくはその誘導体との共重合体、前記2元共重合体にブタジエン、イソプレン、5-メチリデン-2-ノルボーネン、5-エチリデン-2-ノルボーネン、シクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエン等を共重合したエチレン、炭素数3以上のα-オレフィン及び非共役ジエンからなる3元共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体とその水素添加物、スチレン-イソプレン共重合体等が挙げられる。その中でも、エチレン-プロピレン共重合体やエチレン-1-ブテン共重合、エチレン-酢酸ビニル共重合体の2元共重合体、又は、エチレン-プロピレン共重合体やエチレン-1-ブテン共重合体に、非共役ジエンとして5-メチリデン-2-ノルボーネン、5-エチリデン-2-ノルボーネン、シクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエンを使用し、α-オレフィン量を20〜60質量%、非共役ジエンを0.5〜10質量%共重合した樹脂が最も好ましい。これらの樹脂は結晶相を有するので、水蒸気や酸素等の腐食要因物質のバリア性に特に優れ、かつ、-10℃から室温までの領域で良好な耐衝撃性を保持できる。
【0022】
さらに、ゴム状弾性体(B)の好ましい溶融粘度範囲は、ポリエステル樹脂(A)への分散性により決定され、ポリエステル樹脂(A)内にミクロに分散させるために、溶融混練温度、剪断速度域でのポリエステル樹脂(A)の粘度に比較して、1/2以下の粘度であることが好ましく、ポリエステル樹脂(A)の溶融粘度に応じて、ゴム弾性体(B)の分子量及び分子量分散を上記粘度領域になるように制御することが望ましい。具体的な溶融粘度測定条件を例示すると、ポリエステル系樹脂(A)を構成する樹脂の中で最も高融点成分の融点+35℃の温度において、剪断速度域100〜1000/sの範囲でキャピラリー粘度計によって測定する方法が挙げられる。
【0023】
ゴム状弾性体(B)の伸張粘度は、特に規定するものではないが、使用するポリエステル系樹脂(A)に応じて、ポリエステル系樹脂(A)との伸張粘度比η(B)/η(A)(ここに、η(B)はゴム状弾性体(B)の伸張粘度、η(A)はポリエステル系樹脂(A)の伸張粘度である。)が1.0以下、より好ましくは0.4以下であることが望ましい。1.0超では製膜加工中の伸張応力によりゴム状弾性体(B)が伸張方向に配向し易く、扱き加工中に既述のような金属と被膜との密着力低下や疵、耐衝撃性の低下などの欠陥が生じる場合がある。0.4以下のとき、ゴム状弾性体(B)の伸張方向への配向は殆ど起こらない。ここで、上記の伸張粘度は、ポリエステル系樹脂(A)を構成する最も高融点成分の融点+35℃の温度において、1.0×103Paの伸張応力で伸張レオメーターにより測定した、瞬間軸応力と伸張歪速度との比である。
【0024】
本発明の樹脂組成物には、ゴム状弾性体(B)の分散性を向上する目的で、エポキシ基含有ユニットを10質量%以下含有するポリオレフィン系樹脂(C)を含有していなければならない。ポリオレフィン系樹脂(C)は、(式2)のユニットとエポキシ基含有ユニットから構成される。本発明で使用するポリオレフィン系樹脂(C)は、これらのユニットの単数もしくは複数の共重合体でも、また、ユニットが樹脂単位で共重合化される共重合体であってもよい。具体的に、(式2)で示される構成単位を例示すると、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デゼン、1-ドデゼン等のα-オレフィンを付加重合した時に現われる繰り返し単位や、イソブテンを付加したときの繰り返し単位等の脂肪族オレフィン、スチレンモノマーの他にo-、m-、p-メチルスチレン、o-、m-、p-エチルスチレン、t-ブチルスチレン等のアルキル化スチレン、モノクロロスチレン等のハロゲン化スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン系モノマー付加重合体単位等の芳香族オレフィン等が挙げられる。
【0025】
ポリオレフィン系樹脂(C)内に、エポキシ基含有ユニットを含有することにより、ポリエステル樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(C)との間を共有結合により結合でき、分散性が向上できると同時に、連続扱き加工で被膜温度が上昇しても、安定してミクロな分散状態が保持できる。エポキシ基含有ユニットが10質量%超では、エポキシ基とポリエステル樹脂(A)との間で反応が進行しすぎて、ポリエステル系樹脂(A)の伸張粘度が増加し、製膜工程で加わる比較的小さな伸張応力でも長手方向に配向する場合がある。この結果、既述の扱き加工時のフィルム疵、耐衝撃特性の低下、あるいは、金属と被膜との密着性低下が生じる場合がある。さらに、この傾向は、混練と同時に製膜する場合に、特に著しくなるので、このような工程で製膜する場合は、エポキシ基含有ユニット含有量を5質量%以下、より好ましくは3質量% 以下が望ましい。
【0026】
エポキシ基含有ユニットを例示すると、(式3)に示すα・β-不飽和酸のグリシジルエステルが挙げられる。
【0027】
CH2=CR-CO-O-CH2-CH(O)-CH2 (式3)
(式中、Rは水素原子、低級アルキル基あるいはグリシジルエステル基で置換された低級アルキル基である)
より具体的には、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル等のエステルであり、なかでも、熱安定性が良好で、長時間の連続製膜でも熱劣化物の生成を抑制できるという観点から、メタクリル酸グリシジルエステルが特に好ましく使用できる。
【0028】
さらに、ポリオレフィン系樹脂(C)の中には、(式2)のユニットとエポキシ基含有ユニット以外に、エポキシ基以外の極性基を有する第3のユニットが40質量%以下で共重合されていることが好ましい。無極性の(式2)のユニットと極性基を有する第3のユニットとの共重合化により、S. Y. Hobbs, et al., Polymer, Vol.29, 1598 (1988)に示される、ポリエステル樹脂(A)中でのゴム状弾性体(B)/ポリオレフィン系樹脂(C)間のSpread Parameterを正に制御でき、ポリオレフィン系樹脂(C)が、ゴム状弾性体(B)をカプセル化して、ポリエステル樹脂(A)内に分散する。この結果、当該樹脂組成物では、ゴム状弾性体(B)成分が直接金属に接触せず、極性ユニットを含有するポリオレフィン系樹脂(C)を介して金属に接触するので、金属との良好な密着性を確保できる。
【0029】
極性基含有ユニットを例示すると、-C-O-基を有する例としてビニルアルコール、-C=O基を有する例としてビニルクロロメチルケトン、-COO-基を有する例としてアクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル酸及びその金属塩若しくはエステル誘導体、C2O3基を有する例として無水マレイン酸、C2O2N-基を有する例として無水マレイン酸のイミド誘導体、-CN基を有する例としてアクリロニトリル、-NH2基を有する例としてアクリルアミン、-NH-基を有する例としてアクリルアミド、-X基(ハロゲン)を有する例として塩化ビニル、-SO3-基を有する例としてスチレンスルホン酸、等が挙げられ、これらが単独で又は複数でポリオレフィン系樹脂(C)に含有されていても良い。ポリオレフィン系樹脂(C)に含有される極性基を有するユニットは、ポーリングの電気陰性度の差が0.39(eV)0.5以上ある元素が結合した基を有するユニットであれば良く、上記の具体例に限定されるものではない。上記のSpread Parameterを正に制御する上で好ましい極性基含有ユニットを例示すると、ビニルエーテル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、エチル、メチル、プロピル、ブチル等のメタクリル酸エステルもしくはアクリル酸エステル、アクリロニトリルが挙げられる。
【0030】
ポリオレフィン系樹脂(C)を例示すると、エチレン-メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン-酢酸ビニル-メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン-アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン-酢酸ビニル-アクリル酸グリシジル共重合体等が挙げられ、中でもエチレン-酢酸ビニル-メタクリル酸グリシジル共重合体が熱安定性から好ましい。
【0031】
ポリオレフィン系樹脂(C)の添加量は、ゴム状弾性体(B)100質量部に対して1〜100質量部でなければならない。1質量部未満では、ゴム状弾性体(B)を十分に微細に分散できない。100質量部超では、相溶化剤として機能しなかった余剰のポリオレフィン系樹脂(C)が、ポリエステル樹脂(A)マトリックス内に多数相を構成し、耐熱性等の物性を低下させる場合がある。ポリオレフィン系樹脂(C)の好ましい添加量範囲は、ポリオレフィン系樹脂(C)内のエポキシ基含有ユニットの含有量に応じて決定される。樹脂組成物の全質量に対し、エポキシ基含有ユニットが0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下になるように、エポキシ基含有ユニットの含有量に応じてポリオレフィン系樹脂(C)を添加することが望ましい。エポキシ基含有ユニットの含有量を当該範囲に制御することにより、エポキシ基とポリエステル樹脂(A)間の反応度を適正に制御でき、より確実にポリオレフィン系樹脂(C)の溶融粘度増加を抑制して、ゴム状弾性体(B)相の流れ方向への配向を防止できる。
【0032】
本発明の樹脂組成物は、公知の各種混合機を用いて、各成分を所定の温度、例えば200〜350℃で、溶融混練することにより、製造することができる。公知の各種混合機を例示すれば、各種押出機、ブラベンダー、ニーダー、バンバリーミキサー等が挙げられる。
【0033】
さらに、必要に応じて混練時に、ポリオレフィン系樹脂(C)のエポキシ基とポリエステル樹脂(A)との反応を効率的に進行させ、より安定してゴム状弾性体(B)相をミクロに分散させる目的で、反応促進剤を添加することもできる。反応促進剤を例示すると、トリフェニルアミン、 2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン、トリフェニルフォスファイト、トリイソデシルホスファイト等の亜リン酸エステル、トリフェニルアリルホスニウムブロマイド等のホスホニウム化合物、トリフェニルホスフィン等の3級ホスフィン、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム等のカルボン酸金属塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、3,5-ジクルボメトキシベンゼンスルホン酸等のスルホン酸金属塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩等を挙げることができる。これらの反応促進剤の添加量は、ポリエステル樹脂(A)に対して0.01〜5質量%が好ましい。0.01質量%未満では反応促進効果が小さく、5質量%超では過剰の反応促進剤によりポリエステル樹脂(A)の分解反応が進行する場合がある。
【0034】
また、本発明の樹脂組成物は、剛性や線膨張特性の改善等を目的に、ガラス繊維、金属繊維、チタン酸カリウィスカー、炭素繊維のような繊維強化剤、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、ガラスフレーク、ミルドファイバー、金属フレーク、金属粉末のようなフィラー系強化剤を混入させてもよい。これらの充填剤のうち、ガラス繊維、炭素繊維の形状としては、6〜60μmの繊維径と30μm以上の繊維長を有することが望ましい。また、これらの添加量としては、全樹脂組成物質量に対して5〜15質量部であることが望ましい。
【0035】
さらに、本樹脂組成物には、目的に応じて、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、離型剤、滑剤、顔料、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、抗菌抗カビ剤等を適正量添加することも可能である。
【0036】
本発明の樹脂組成物は、広く金属の被覆材として使用することができる。金属を特に限定するものではないが、ブリキ、ティンフリースチール等の鋼板、アルミニウム、銅、ニッケル等が挙げられる。また、金属への被覆は、片面又は両面のいずれであってもよい。また、本樹脂発明の組成物を金属へ被覆した際の被覆膜厚みは、特に制限するものではないが、1〜300μmであることが好ましい。1μm未満では十分な衝撃性がでない場合があり、300μm超では経済性が悪い。
【0037】
金属への被覆には、公知の方法が使用できる。具体的には、(1) 本樹脂組成物をTダイス付きの押し出し機で溶融混練してフィルム化し、これを金属板に熱圧着する方法(この場合、フィルムは無延伸でも、1方向もしくは2方向に延伸してもよい)、(2) Tダイスから出たフィルムを直接熱圧着する方法が挙げられる。さらに、本発明の樹脂組成物にはゴム状弾性体(B)が含有されるため、被覆後の膜内部に結晶化度を傾斜させなくても、十分な耐衝撃性を発現できる。従って、(3) 樹脂組成物を溶融してバーコーターやロールでコーティングする方法、(4) 溶融した樹脂組成物に金属板を漬ける方法、(5) 組成物を溶媒に溶解してスピンコートする方法、等により金属に被覆することも可能であり、被覆方法は特に限定されるものではない。
【0038】
金属への被覆方法として、作業能率から最も好ましいのは、上記(1)及び(2)の方法である。(2)の方法を使用して被覆する場合、フィルム厚みは、上記と同様の理由により1〜300μmであることが好ましい。さらに、膜の表面粗度は、フィルム表面粗度を任意に1mm長測定した結果が、rmaxで500nm以下であることが好ましい。500nm超では、熱圧着で被覆する際に気泡を巻き込む場合がある。
【0039】
本発明の金属被覆用樹脂フィルムは、本発明の樹脂組成物からなる樹脂フィルム層を少なくとも1層含有するフィルムであり、被覆前の樹脂フィルムでも、上記の(3)〜(5)の方法等で被覆後に形成された樹脂フィルムであってもよい。また、上層及び下層に他のフィルムが単層又は複層で積層してもよいし、上下層に印刷層を設けて意匠性を付与しても良い。具体的には、上層にPET等を積層してフレバー性を向上したり、上面に印刷した後、透明ポリエステル系のフィルムやニス等の透明塗料を積層して、印刷層を保護することもできる。あるいは、難燃性、可塑性、帯電防止性、抗菌抗カビ性やたんぱく質や脂質との密着性を低下してミートリリース性を付与する層を積層することもできる。また、下層には、接着力を増加するために、公知の接着剤層を積層することもできる。
【0040】
金属への被覆工程や金属加工時の潤滑性を向上する目的で、特開平5-186613号公報に開示されているような、公知の滑剤が添加されていてもよい。滑剤の粒径は2.5μm以下が好ましい。2.5μm超では、樹脂フィルムの機械特性が低下する。滑剤の添加量は、金属板の巻取性や深絞り加工性に応じて決定され、例えば平均粒径2.0μmの単分散シリカでは0.05質量%、平均粒径0.3μmの二酸化チタンでは0.3質量%以下が望ましい。
【0041】
また、本発明の樹脂フィルムを金属に被覆する際には、必要に応じて他の公知の樹脂フィルムを下層もしくは上層に積層して被覆してもよい。具体的な積層方法としては、上述の(1)、(2)の方法を使用する場合は、多層のTダイスを使用して、本発明の樹脂フィルムと他の樹脂フィルムとの多層膜を製造し、それを熱圧着する方法がある。また、上述の(3)、(4)、(5)の方法を使用する場合、下層の場合は、他の樹脂を被覆した後に本発明の樹脂組成物を被覆し、上層の場合は、その逆にすることにより被覆することが可能である。
【0042】
本発明の金属板は、本発明の樹脂フィルムが被覆された金属板であり、被覆は片面であっても両面であってもよい。金属板の厚みは特に制限するもではないが、0.01〜5mmであることが好ましい。0.01mm未満では強度が発現しにくく、5mm超では加工が困難である。
【0043】
本発明の金属板は、本発明の樹脂フィルムが金属板に被覆されていればよく、公知の樹脂フィルムを本発明の樹脂フィルムの下層もしくは上層に積層して、金属板に被覆していてもよい。また、公知の接着剤を金属板と本発明の樹脂フィルムとの間に積層することも可能である。接着剤を例示すると、特開昭60-12233号公報に開示されるポリエステル樹脂系の水系分散剤、特開昭63-12233号公報に開示されるエポキシ系接着剤、特開昭61-149341号公報に開示される各種官能基を有する重合体等が挙げられる。
【0044】
本発明の金属容器は、本発明の金属板を扱き加工してなる金属容器であり、公知の扱き加工法により成形できる。具体的には、ドローアイアニング成形、ストレッチドローアイアニング成形等が挙げられるが、本発明の金属板を使用した扱き加工金属容器であればよく、成形法は上述した成形法に限定するものでない。
【0045】
本発明の樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)とゴム状弾性体(B)、エポキシ基含有ユニットを10質量%以下含有するポリオレフィン系樹脂(C)の3元成分を含む樹脂組成物であるから、エポキシ基含有ユニットを10質量%以下含有するポリオレフィン系樹脂(C)とポリエステル樹脂(A)とが混練中に反応して共有結合で結合することにより、ポリエステル樹脂(A)とゴム状弾性体(B)との相溶性を改善でき、耐衝撃性を付与できる。と同時に、高温でもポリエステル樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(C)間の相互作用が低下しないので、連続扱き加工のように著しい発熱を伴う工程でも、ゴム状弾性体(B)を凝集させることなく、被覆金属を加工することができる。さらに、ポリエステル系樹脂(A)の固有粘度を特定範囲に制御することにより、フィルム強度をより確実に保持できると同時に、マトリックスの伸張粘度を適正域に制御できる。また、マトリックスの伸張粘度、ポリエステル系樹脂(A)とゴム状弾性体(B)との伸張粘度比、ポリオレフィン系樹脂(C)のエポキシ基含有量を適正範囲に制御することにより、ゴム状弾性体(B)の伸張方向への配向を抑止でき、金属との密着性や扱き加工後の耐衝撃性、フィルム健全性をより確保しやすくできる。さらに、ポリオレフィン系樹脂(C)に適量の極性ユニットを導入することによりゴム状弾性体(B)を ポリオレフィン系樹脂(C)相でカプセル化してポリエステル系樹脂(A)内に分散することができ、より密着性を向上することができる。この結果、本発明の樹脂組成物は、成形性、耐熱性、耐衝撃性、耐薬品性、機械強度、ガスバリア性、金属との密着性、等に優れると同時に、扱き加工しても白化したり、耐衝撃性を低下することがない。従って、金属の被覆用材料として好適に使用することが可能である。
【0046】
さらに、本樹脂組成物を被覆した金属板は、本樹脂組成物の上記の特性により、耐腐食性、加工性に優れた金属板として好適に使用できる。また、本金属板は、扱き加工時に衝撃で被膜が破損したり、白化して意匠を損ねることがない。従って、本金属板を扱き加工した容器は、飲料缶、食缶、ペール缶等の一般容器にも好適に使用できる。
【0047】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例により、詳細に説明する。
【0048】
表1に示すように、ポリエステル樹脂(A)として、ポリエチレンテレフタレート(PET、イソフタル酸共重合比:8mol%)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ゴム状弾性体(B)として、エチレン-プロピレンゴム(EPR)、エチレン-ブテンゴム(EBM)、エポキシ基含有ユニットを10質量%以下含有するポリオレフィン系樹脂(C)として、エチレン系共重合体(住友化学(株)製2C(エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体:E-GMA)及び7L(エチレン-酢酸ビニル-グリシジルメタクリレート共重合体:E-VA-GMA))を使用した。
【0049】
【表1】
【0050】
(実施例1〜9)
本発明の樹脂組成物の各成分(A)、(B)、(C)を、表2の配合でV型ブレンダーを使用してドライブレンドし、2軸押し出し機で260℃(実施例9のみ240℃)で溶融混練した。本樹脂組成物を液体窒素温度で破断した後、130℃メタキシレンで30分間浸漬して、ゴム状弾性体(B)を溶解した。当該片をSEM観察した結果、ドメイン径はいずれも800nmであった。
【0051】
本ペレットを使用して、押し出しTダイスで30μm厚みのフィルムを得た(押し出し温度:280℃)。
【0052】
本フィルムを250℃に加熱した0.35mm厚みのティンフリースチール(TFS)の両面に貼り合わせ、水冷により10秒以内に100℃以下まで急冷した。
【0053】
このようにして得られた常温の樹脂被覆鋼板について、クエン酸1.5質量%-食塩1.5質量%水溶液に24時間浸漬した後、フィルムのはがれた長さ(mm)(10サンプルの平均)で評価した。0.0mmを◎とし、0.0〜0.5mmを○、 0.5〜2.0mmを△、2.0mm超を×とした。密着試験の結果を表2に示す。
【0054】
さらに、本金属板の耐衝撃製性評価をデュポン式の落垂衝撃試験(高さ30cm、r=8mm)で行なった。試験後のサンプルの凸に膨らんだ部位を1.0%食塩水に入れて、鋼板を陽極とし、+6Vの電圧をかけた際のERV値(mA)を測定した。ERV値は以下の指標により評価した。さらに、0℃の恒温層に24時間入れた後、同様の耐衝撃性評価を行ない、低温での耐衝撃性を評価した(表2)。
【0055】
◎;全10サンプルが0.01mA以下であった。
【0056】
○;1〜3個が0.01mA以上であった。
【0057】
△;3〜6個が0.01mA以上であった。
【0058】
×;7個以上が0.01mA以上であった。
【0059】
(比較例1)
25μm厚みの2軸延伸(テフレックス:帝人デュポン社製)を実施例1〜9と同様にTFSの両面に貼り合わせ、密着性、耐衝撃性を評価した。表2に評価結果を示す。
【0060】
(比較例2)
特開平7-195617号公報の実施例1に従い、PET、アイオノマー(ハイミラン1707)とを質量比80/20で溶融混練した。本ペレットを使用して、実施例1〜9と同様にフィルムを作成して、0.35mm厚みのTFSの両面に貼り合わせ、密着性、耐衝撃性を評価した。結果を表2に示す。
【0061】
(比較例3)
特開平7-290643号公報の実施例1に従い、PET、アイオノマー(ハイミラン1707)、ポリエステルエラストマー(東レデュポン製ハイトレル4057)とを質量比80/10/10で溶融混練した。本ペレットを使用して、実施例1〜9と同様にフィルムを作成して、0.35mm厚みのTFSの両面に貼り合わせ、密着性、耐衝撃性を評価した。結果を表2に示す。
【0062】
(比較例4)
WO99/27026の実施例に従い、PET/EBM/アイオノマー(1707)=80/10/10を260℃で混練し、実施例1〜9と同様に25μm厚みのフィルムを製膜した。当該フィルムを実施例1〜9と同様に0.35mm厚みのTFSの両面に貼り合わせ、密着性、耐衝撃性を評価した。結果を表2に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
(実施例10〜18、比較例5)
密着性と耐衝撃性が良好であった実施例1〜9及び比較例4の樹脂フィルムを被覆したTFSを以下の条件で絞り扱き(DI)加工した。連続して150缶を製缶したが、いずれの供試材でも製缶時のトラブルはなかった。
【0065】
成形加工条件:
ブランク径 162mm
第1段の絞り加工の絞り比 1.80
第2段の再絞り加工の絞り比 1.35
扱き加工時のポンチ径 66.08mm
第1段の扱き加工率 20%
第2段の再扱き加工率 20%
第3段の再々扱き加工率 20%
製缶後、130〜149缶目の缶体を抽出して、白化の状態を評価した(内面もしくは外面に一部でも白化が認められた場合は、白化ありと評価)。白化した缶の割合を白化発生率とした。
【0066】
白化評価後、136〜140缶目の缶体の上端をトリミング、乾燥してから、外面の塗装及び印刷工程を想定した190℃×3分の空焼を施した後、上端部をフランジ加工した。成形した缶内にコカ・コーラ(日本コカ・コーラ株式会社商品名)を低温で充填し、塗装したアルミ缶蓋で巻締め、2日間室温に保管してから0℃に1日貯蔵した後、600gの直角ブロックを50cmの高さから直角部が0℃のままの缶体に衝突するように落下させた。なお、この落垂試験は、最初に缶底の接地部に衝撃を与えた後、同一缶の缶側面に衝撃を与えた。落垂試験後、開缶して缶底部及び側面部の衝撃変形部を取り出し、食塩水中でのERV測定により耐低温衝撃特性を評価した。
【0067】
また、141〜145缶目の缶体も同様に成形し、ウーロン茶を充填し、塗装したアルミ缶蓋で巻締め、120℃で30分のレトルト処理を行い、2日間室温に保管してから、20℃に1日貯蔵した後、20℃のままで上述の落垂試験を行った。落垂試験後、開缶して缶底部及び側面部の衝撃変形部を取り出し、食塩水中でのERV測定により耐レトルト衝撃特性を評価した。
【0068】
なお、缶底及び缶側面のERV測定は、各5缶の最大値を用いて、以下の基準で評価した。
【0069】
◎:0.01mA未満 ○:0.01〜0.03mA △:0.03〜0.3mA ×:0.3mA超
【0070】
【表3】
【0071】
実施例1〜9と比較例1〜4との比較と、実施例10〜18と比較例5との比較から、本発明の樹脂組成物及びこれを用いたフィルム、樹脂被覆金属板並びに樹脂被覆金属容器は、従来技術に比較して金属との密着性及び耐衝撃性に優れること、並びに連続扱き加工しても白化や耐衝撃性の低下を抑制できていることが分かる。
【0072】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)とゴム状弾性体(B)、エポキシ基含有ユニットを10質量%以下含有するポリオレフィン系樹脂(C)の3元成分を含む樹脂組成物であるから、エポキシ基含有ユニットを10質量%以下含有するポリオレフィン系樹脂(C)とポリエステル樹脂(A)とが混練中に反応して共有結合で結合することにより、ポリエステル樹脂(A)とゴム状弾性体(B)との相溶性を改善でき、耐衝撃性を付与できる。と同時に、高温でもポリエステル樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(C)間の相互作用が低下しないので、連続扱き加工のように著しい発熱を伴う工程でも、ゴム状弾性体(B)を凝集させることなく、被覆金属を加工することができる。さらに、ポリエステル系樹脂(A)の固有粘度を特定範囲に制御することにより、フィルム強度をより確実に保持できると同時に、マトリックスの伸張粘度を適正域に制御できる。さらに、マトリックスの伸張粘度、ポリエステル系樹脂(A)とゴム状弾性体(B)との伸張粘度比、ポリオレフィン系樹脂(C)のエポキシ基含有量を適正範囲に制御することにより、ゴム状弾性体(B)の伸張方向への配向を抑止でき、金属との密着性や扱き加工後の耐衝撃性、フィルム健全性をより確保しやすくできる。また、ポリオレフィン系樹脂(C)に適量の極性ユニットを導入することによりゴム状弾性体(B)相を ポリオレフィン系樹脂(C)でカプセル化してポリエステル系樹脂(A)内に分散することができ、より密着性を向上することができる。従って、本発明の樹脂組成物は、成形性、耐熱性、耐衝撃性、耐薬品性、機械強度、ガスバリア性、金属との密着性、等に優れると同時に、扱き加工しても白化したり、耐衝撃性を低下することがない。この結果、金属の被覆用材料として好適に使用することが可能である。
【0073】
さらに、本樹脂組成物を被覆した金属板は、本樹脂組成物の上記の特性により、耐腐食性、加工性に優れた金属板として好適に使用できる。また、本金属板は、扱き加工時に衝撃で被膜が破損したり、白化して意匠を損ねることがない。従って、本金属板を扱き加工した容器は、飲料缶、食缶、ペール缶等の一般容器にも好適に使用できる。
Claims (8)
- 固有粘度が0.5〜2.0dl/gであるポリエステル樹脂(A)、ゴム状弾性体(B)、及びエポキシ基含有ユニットを10質量%以下含有するポリオレフィン系樹脂(C)を含む樹脂組成物であって、ポリエステル樹脂(A)100質量部に対してゴム状弾性体(B)が0.5〜50質量部であり、ゴム状弾性体(B)100質量部に対してポリオレフィン系樹脂(C)が1〜100質量部であることを特徴とする金属被覆用樹脂組成物。
- ポリエステル樹脂(A)の固有粘度が0.8〜1.1dl/gであることを特徴とする請求項1記載の金属被覆用樹脂組成物。
- ゴム状弾性体(B)とポリエステル樹脂(A)の伸張粘度比が0.4以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属被覆用樹脂組成物。
- 前記ポリオレフィン系樹脂(C)が、エポキシ基以外の極性基を有する第3のユニットを40質量%以下含有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属被覆用樹脂組成物。
- 前記エポキシ基含有ユニットのトータル量が、樹脂組成物全量の0.1質量%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の金属被覆用樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物からなるフィルム層を少なくとも1層有してなる金属被覆用樹脂フィルム。
- 請求項6記載の金属被覆用樹脂フィルムを少なくとも片面に被覆してなる金属板。
- 請求項7記載の金属板を扱き加工してなる金属容器。
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