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JP3922972B2 - ラックの製造方法 - Google Patents
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、CADシステムを利用して作成されるラックモデルのデータに基づいて作動する加工装置を使用してラックを製造する方法に関するものであり、ラックは、例えばラック・ピニオン型の車両用ステアリング装置に使用される。
【0002】
【従来の技術】
従来、ラックの製造方法として、特公平3−33418号公報に開示された可変歯車式のラックの製造方法がある。この製造方法では、ピニオン形状を決定する諸元から切削および研削等の加工により成形されたピニオン工具により、電極ラックの歯形が創成される。そして、この電極ラックを用いた放電加工により鍛造型が成形され、その鍛造型を使用した鍛造によりラックが製造される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記従来技術では、次の工程を経てラックが製造される。
設計図面→ピニオン工具の成形→電極ラックの成形→鍛造型の成形→鍛造→ラック(製品)
この製造工程では、電極ラックから鍛造型への転写、および鍛造型から製品であるラックへの転写が行われることから、ピニオンの諸元を反映したピニオン工具に対しては、2回の転写を経てラックが製造されるため、高精度な歯形を持つラックを得ることは困難であった。特に、可変歯車式(可変ギヤ型)のラックでは、高精度の歯形を持つラックが得られないことに起因して、小ピッチとされる歯の列で構成される領域(低ゲイン領域)において噛み合い音が発生していた。
【0004】
また、ピニオン工具および電極ラックの各成形工程を含むことから、製造工数が多くなってコスト高となり、しかも設計図面が作成されてからラックが完成するまでに多大な作成時間を要していた。さらに、電極ラックを用いた製造方法では、実際にラックが出来上がらなければ歯形を確認することができないことから、鍛造型を成形する工程前に、製品としてのラックに対するピニオンの噛合い状態、例えば噛合い率を評価することはできず、精度要求に適った鍛造型が得られるまでに時間的およびコスト的な無駄があった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、請求項1および請求項2記載の発明は、ラックの歯形の精度を向上させることができ、しかも製造コストの削減および製造時間の短縮が可能なラックの製造方法を提供することを目的とする。そして、請求項2記載の発明は、さらに、可変ギヤ比型のラックを使用したラック・ピニオン型の車両用ステアリング装置において、低ゲイン領域での噛み合い音の発生を抑制することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
請求項1記載の発明は、CADシステムを構成するコンピュータによりラックモデルを作成するための下記の(A)から(D)の工程と、ラックを成形する下記の(E)の工程とを含むラックの製造方法である。
(A)前記コンピュータに入力されたピニオン形状およびラック素材形状に基づいてピニオンカッターモデルおよびラック素材モデルを作成する工程。
(B)ピニオンと該ピニオンに噛合する前記ラックとが設定位置関係となるように、前記ピニオンカッターモデルを前記ラック素材モデルに対して位置決めする工程。
(C)位置決めされた前記ピニオンカッターモデルを、前記ピニオンの回転角に対する前記ラックの並進移動量であるラックゲインに則して回転および並進させて得られる軌跡によりピニオンカッター運動軌跡モデルを作成する工程。
(D)前記ピニオンカッター運動軌跡モデルにより前記ラック素材モデルをカットしてラックモデルを作成する工程。
(E)前記ラックモデルの3次元データに基づいて作動する加工装置によりラック素材を加工して前記ラックを成形する工程、または該加工装置により成形型を成形し、該成形型を使用することにより前記ラックを成形する工程。
【0007】
これにより、ラックゲインに則して実際の互いに噛合するピニオンとラックとの動きを模擬して得られるピニオンカッター運動軌跡モデルにより、ラック素材モデルがカットされて歯溝が作成され、ラックモデルが作成される。そして、作成されたラックモデルから得られた3次元データに基づいて作動する加工装置により、ラックが直接成形され、またはラックを成形するための成形型が直接成形される。また、ピニオンカッター運動軌跡モデルは、ピニオンの動きの軌跡により作成されるので、ピニオンカッター運動軌跡モデルを移動させることなく、ラック素材モデルがカットされてラックモデルが作成される。
【0008】
この結果、請求項1記載の発明によれば、次の効果が奏される。すなわち、コンピュータに入力されたピニオン形状およびラック素材形状に基づいてピニオンカッターモデルおよびラック素材モデルを作成し、ピニオンカッターモデルをラック素材モデルに対して位置決めし、位置決めされたピニオンカッターモデルをラックゲインに則して回転および並進させて得られる軌跡によりピニオンカッター運動軌跡モデルを作成し、ピニオンカッター運動軌跡モデルによりラック素材モデルをカットしてラックモデルを作成し、ラックを製造するために使用する加工装置をラックモデルの3次元データに基づいて作動させることにより、ラックをピニオンとラックとの実際の噛合状態を模擬して作成されたラックモデルの3次元データに基づいて作動する加工装置が、ラックを直接加工し、またはラックを成形するための成形型を直接加工することから、前記従来技術に比べて転写の回数が少なくなり、しかも加工装置の作動を制御するデータがピニオンとの実際の噛合状態を反映したものであるので、高精度の歯形を有するラックが得られる。そのうえ、前記従来技術とは異なり、ピニオン工具や電極ラックを成形する必要がないので、製造工数が減少して、ラックの製造コストの削減および製造時間の短縮が可能となる。また、ピニオンカッター運動軌跡モデルを回転移動させることなく、ピニオンカッター運動軌跡モデルとラック素材モデルとを重ね合わせることによりラックモデルが作成されるので、コンピュータに対する性能上の要求を低くすることができ、コンピュータでの処理が容易になる。さらに、ラックモデルが作成された時点で、別途作成されたピニオンのソリッドモデルを利用して噛合い状態を評価できるので、設計形状を満足する歯形のみに基づい得られた加工用データで、無駄なく高精度の成形型やラックを製造することが可能であり、この点でもラックの製造コストの削減および製造時間の短縮が可能となる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のラックの製造方法において、前記ラックは、前記ラック・ピニオン型の車両用ステアリング装置に使用されて、前記ラックゲインが前記ピニオンとの噛み合い位置に依存して変化する可変ギヤ比型ラックであるものである。
【0010】
これにより、ステアリング装置の可変ギヤ比型ラックにおいて、歯部の小ピッチの歯の列から構成される低ゲイン領域を含む歯部が高精度の歯形を有する歯により構成される。この結果、請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の効果に加えて、次の効果が奏される。すなわち、ラックは、ラック・ピニオン型の車両用ステアリング装置に使用される可変ギヤ比型ラックであることにより、可変ギヤ比型ラックの歯部の低ゲイン領域も高精度の歯形を有する歯により構成されるので、低ゲイン領域でのピニオンとの噛合による噛み合い音の発生が抑制される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図1から図13を参照しながら説明する。
本発明に係る製造方法が適用されて製造されるラックは、ラック・ピニオン型の車両用パワーステアリング装置に使用されるラックである。図1,図2を参照すると、ラック1は、ピニオン2の回転角に対するラック1の並進移動量、すなわちラックゲインが、ピニオン2との噛み合い位置に依存して変化する可変ギヤ比型ラックである。
【0012】
ラック1において、歯3aの列(以下、「歯列」という。)が形成されている部分である歯部3には、低ゲイン領域3L、可変ゲイン領域3V、および高ゲイン領域3Hが形成される。低ゲイン領域3Lは、ラック1の並進方向A1での歯部3の中央点である中立位置P1を中心にして所定範囲に形成され、そのラックゲインは一定値の小ピッチの歯列により設定される低ゲインとされる。可変ゲイン領域3Vは、低ゲイン領域3Lに連なって、低ゲイン領域3Lの両側の所定範囲に形成され、そのラックゲインは中立位置P1から離れるにつれて低ゲインよりも大きくなるピッチの歯列により設定される可変ゲインとされる。高ゲイン領域3Hは、低ゲイン領域3Lよりも中立位置P1から離れた位置で各可変ゲイン領域3Vに連なって、低ゲイン領域3Lの両側の所定範囲に形成され、そのラックゲインは、可変ゲイン領域3Vでの最大ゲインと等しい大きさの一定値の大ピッチの歯列により設定される高ゲインとされる。
【0013】
このラック1は、図3に示される装置を有するコンピュータ10から構成される3次元CADシステムを使用して作成されるラックモデル50(図13参照)の3次元データに基づいて作動する加工装置を使用して成形される。なお、このCADシステムのコンピュータ10により作成されるラックモデル50をはじめ、後述する各モデルは、いずれも3次元ソリッドモデルである。
【0014】
コンピュータ10は、キーボードやマウス等から構成されて、ピニオン2の形状およびラック素材の形状を特定する諸元や操作コマンドを含む入力情報を入力するための入力部11と、該入力情報に基づいて各種処理を指示する中央処理部(CPU)12と、中央処理部12からの指示に従って各種3次元モデルを含む画像の作成等を行う画像処理部13と、中央処理部12からの指示に従って各種3次元モデルの3次元データ等のデータを保存および更新することが可能な記憶部14と、中央処理部12からの指示に従って、作成された各種3次元モデル等を表示する表示部15とを備え、それら全ての装置は信号およびデータを伝達するバス16で接続されている。
【0015】
このコンピュータ10において、ピニオン2の形状およびラック素材の形状を規定する諸元および操作コマンドが入力部11から入力されると、それら入力情報に基づく中央処理部12からの指示に従って、画像処理部13により、後述するピニオカッターンモデル20およびラック素材モデル30が作成され、さらに記憶部14に保存されたそれらモデル20,30のデータを用いてピニオンカッター運動軌跡モデル40が作成され、そしてピニオンカッター運動軌跡モデル40を用いてラックモデル50が作成される。
【0016】
先ず、図4〜図8を参照して、ピニオンカッターモデル20(図8参照)を作成する工程を説明する。ピニオンカッターモデル20は、ピニオン形状の諸元として、図4に示されるように、ピニオン2の回転軸線L1に直角な断面での歯形(以下、単に「歯形」という。)の諸元に基づいて作成される。
【0017】
設計図面等から得られるピニオン2の歯形の諸元は、歯直角モジュールm、歯直角圧力角α、捩れ角β、歯数Z(この実施例では、歯数は5である。)、転位係数X、歯先円径dおよび歯底円径dを含む基本諸元と、基本諸元を使用する以下の式(1)〜(7)から導かれる諸元、すなわち軸直角モジュールm、軸直角圧力角α、基準ピッチ円径d、基礎円径d、リードL、基準円弧歯厚S、基準円弧中心角ψとからなる算出諸元とから構成される。ここで、捩れ角βは、基準ピッチ円上での捩れ角である。
=m/cosβ (1)
α=tan−1(tanα/cosβ) (2)
=Z・m/cosβ (3)
=d・cosα (4)
L =d・π/tanβ (5)
S =(π・m/2)+2・X・m・tanα (6)
ψ =360・S/(π・d) (7)
【0018】
先ず、入力部11から入力された歯形の諸元および操作コマンドに基づいて、画像処理部13により、図5に示されるように、座標上で1つの歯形モデル21が作成される。
【0019】
その後、図6に示されように、画像処理部13により、歯形モデル21において歯面に相当する曲線部21aと基準ピッチ円22との交点P2を設定された捩れ角βで回転軸線L1に平行な方向A2に並進させつつ左巻きに360°回転させて、1リード分の螺旋曲線からなる基線23が作成される。ワイヤフレームモデルからなる基線23は、歯形モデル21をスイープさせるときの基準線とされる。
【0020】
次に、画像処理部13により、歯形モデル21を基線23に沿ってスイープさせることで、図7に示されるように、歯形モデル21の軌跡である1条の歯モデル24が作成される。その後、歯モデル24を基準ピッチ円22上で周方向に等間隔となるように所要数コピーすることで、5枚の歯モデル24が作成され、これに歯底円径dと等しい外径を有する円柱モデル25が結合されることで、図8に示されるピニオカッターモデル20が作成される。
【0021】
一方、図9,図10を参照すると、円柱状のラック1のラック径dや歯先の高さh等の諸元および操作コマンドが入力部11から入力され、それら入力情報に基づいて、歯先の高さ位置に設けられて、回転軸線L1および中心軸線L2に平行な平面から構成される歯形成部31を有するラック素材モデル30が、画像処理部13により作成される。
そして、ピニオンカッターモデル20およびラック素材モデル30の3次元データは、中央処理部12からの指示に従って記憶部14に保存される。
【0022】
次に、入力部11からの操作コマンドにより、記憶部14から取得したピニオンカッターモデル20およびラック素材モデル30のデータを用いて、画像処理部13により、図9,図10に示されるように、実際のピニオン2とラック1との中立位置P1(図1参照)での基準噛合位置を規定する設計された設定位置関係となるように、ピニオンカッターモデル20が、ラック素材モデル30に対して位置決めされる。
【0023】
すなわち、画像処理部13により、図10に示されるように、ピニオンカッターモデル20とラック素材モデル30との軸間距離dが設計値に一致し、歯形成部31を構成する前記平面に直交する方向から見て(以下、「平面視」という。)、ラック1の中心軸線L2とピニオン2の回転軸線L1とがなす交差角θが設計値に一致し、さらに、平面視で回転軸線L1と中心軸線L2とが交差する位置P3に、平面視でピニオンカッターモデル20の歯先の頂点が位置するように、ピニオンカッターモデル20とラック素材モデル30とが相互に位置決めされる。そして、位置決めされたピニオンカッターモデル20の3次元データは、記憶部14に保存される。
【0024】
次いで、記憶部14から取得された位置決めされたピニオンカッターモデル20のデータを用いて、画像処理部13により、互いに噛合した実際のピニオン2の回転運動およびラック1の並進運動に一致するように、ピニオンカッターモデル20のみを前記ラックゲインに則して回転および並進させて、ピニオンカッターモデル20の軌跡を作成することで、図11(A),(B)に示されるピニオンカッター運動軌跡モデル40が作成される。このピニオンカッター運動軌跡モデル40は、ピニオンカッターモデル20の歯モデル27の軌跡により作成される歯41を有する。(なお、図面の複雑さを避けるために、歯41の数は図1の歯溝の数と一致させていない。)さらに、ピニオンカッター運動軌跡モデル40は、設計上のラック1の並進方向A1(図9参照)での最大移動幅と等しい幅を有し、平面視で該並進方向A1と直交する方向A3(図9参照)で、歯形成面の該直交方向A3での幅よりも大きな幅を有する。
【0025】
具体的には、画像処理部13により、位置決めされたピニオンカッターモデル20は、前記ラックゲインの値に従って、所定回転毎および所定並進毎にコピーされて、ピニオンカッター運動軌跡モデル40が作成される。このピニオンカッター運動軌跡モデル40の3次元データは記憶部14に保存される。
【0026】
次いで、記憶部14から取得されたピニオンカッター運動軌跡モデル40およびラック素材モデル30のデータを用いて、画像処理部13により、ピニオンカッター運動軌跡モデル40がラック素材モデル30をカットすることで、図13に示されるように、歯51の列により構成される歯部52を有するラックモデル50が作成される。
【0027】
具体的には、図12に示されるピニオンカッター運動軌跡モデル40とラック素材モデル30とが、画像処理部13により、前記位置決め状態で重ね合わせられ、ラック素材モデル30において歯41とラック素材モデル30とが重合する部分をカットすることで、ラック素材モデル30に歯溝53が作成され、ラックモデル50が作成される。このラックモデル50の3次元データは、記憶部14に保存される。
【0028】
これにより、ラックモデル50の3次元データが得られる。そして、得られた3次元データに基づいて作成された加工用の制御データが入力される制御装置により制御されて作動する加工装置であるNC加工機により、成形型である金型を作成するための金型素材を直彫りして、ラック1を鍛造により作成するための鍛造用金型が作成される。
【0029】
その後、この金型を使用してラック素材を鍛造することにより、ラック1が製造される。このため、ラック1の製造の工程は、
設計図面→3次元ラックモデルの作成→金型成形→鍛造→ラック(製品)となり、前記従来技術に比べて設計図面の作成後に、ピニオン工具成形工程および電極ラック成形工程が不要となるので、その分、製造工数が減少し、製造時間が短縮される。
【0030】
次に、前述のように構成された実施例の作用および効果について説明する。
CADシステムを構成するコンピュータ10に入力されたピニオン形状およびラック素材形状に基づいてピニオンカッターモデル20およびラック素材モデル30を作成し、ピニオンカッターモデル20をラック素材モデル30に対して前記設定位置関係となるように位置決めし、位置決めされたピニオンカッターモデル20を前記ラックゲインに則して回転および並進させて得られる軌跡によりピニオンカッター運動軌跡モデル40を作成し、ピニオンカッター運動軌跡モデル40によりラック素材モデル30をカットしてラックモデル50を作成し、ラック1を鍛造により製造するための金型を成形するために使用する加工機をラックモデル50の3次元データに基づいて作動させることにより、前記ラックゲインに則して実際の互いに噛合するピニオン2とラック1との動きを模擬してピニオンカッター運動軌跡モデル40が作成され、該ピニオンカッター運動軌跡モデル40によりラック素材モデル30がカットされて歯溝53が作成され、ラックモデル50が作成される。そして、作成されたラックモデル50から得られた3次元データに基づいて作動する加工機により金型が直接成形され、該金型を使用する鍛造によりラック1が成形される。
【0031】
その結果、ピニオン2とラック1との実際の噛合状態を模擬して作成されたラックモデル50の3次元データに基づいて作動する加工機が、ラック1を成形するための金型を直接作成することから、前記従来技術に比べて転写の回数が少なくなり、しかも加工機の作動を制御する加工用データがピニオン2との実際の噛合状態を反映したものであるので、高精度の歯形を有するラック1が得られる。そのうえ、前記従来技術とは異なり、ピニオン工具や電極ラックを成形する必要がないので、製造工数が減少して、ラック1の製造コストが削減され、製造時間が短縮される。また、ピニオンカッター運動軌跡モデル40を回転移動させることなく、ピニオンカッター運動軌跡モデル 40 とラック素材モデル 30 とを重ね合わせることによりラックモデル50が作成されるので、コンピュータ10に対する性能上の要求を低くすることができ、コンピュータ10での処理が容易になる。
【0032】
さらに、ラックモデル50が作成された時点で、前記CADシステムにより別途作成されたピニオンのソリッドモデルを利用して噛合い状態を評価できるので、設計形状を満足する歯形のみに基づい得られた加工用データで、無駄なく高精度の鍛造用の金型を製造することが可能であり、この点でもラックの製造コストの削減および製造時間の短縮が可能となる。
【0033】
そして、ラック・ピニオン型の車両用ステアリング装置に使用される可変ギヤ比型ラックを構成するラック1において、低ゲイン領域3Lを含む歯部3の全体が高精度の歯形を有する歯3aにより構成されるので、低ゲイン領域3Lでのピニオン2との噛合による噛み合い音の発生が抑制される。
【0034】
以下、前述した実施例の一部の構成を変更した実施例について、変更した構成に関して説明する。
ラックモデル50の3次元データに基づいて、加工機により金型を作成することに代えて、加工機によりラック素材を直接加工してラック1を製造することもできる。そして、この場合にも、製造コストが削減され、製造時間が短縮される。
【0035】
ピニオンカッター運動軌跡モデル40は、ピニオンカッターモデル20全体の運動軌跡により作成されたが、ラック素材モデル30の歯形成部31の直交方向A3での幅に対応する幅を少なくとも有するピニオンカッターモデル20の一部分によりピニオンカッター運動軌跡モデル40を作成することもでき、これによりその作成時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法により製造されたラックとピニオンとの噛合状態での平面図である。
【図2】図1のラックとピニオンにおいて、ピニオン回転角とラックゲインとの関係を説明するグラフである。
【図3】図1のラックを製造する際に使用されるCADシステムのコンピュータの構成図である。
【図4】図1のピニオンの形状の諸元を説明する図である。
【図5】図1のラックを製造する際に、コンピュータによりピニオンカッターモデルを作成するときの工程を説明する図である。
【図6】ピニオンカッターモデルを作成するときの、図5の工程の次の工程を説明する図である。
【図7】ピニオンカッターモデルを作成するときの、図6の工程の次の工程を説明する図である。
【図8】ピニオンカッターモデルの斜視図である。
【図9】図1のラックを製造する際に、図8のピニオンカッターモデルとラック素材モデルとの位置決めを説明する図である。
【図10】図9のX矢視の拡大図であり、ラック素材モデルを二点鎖線で示した図である。
【図11】(A)は、図9のピニオンカッターモデルに基づいて作成されたピニオンカッター運動軌跡モデルの斜視図であり、(B)は、(A)の斜め下方のB方向から見た斜視図である。
【図12】図11のピニオンカッター運動軌跡モデルとラック素材モデルとの位置決め前の状態を示す斜視図である。
【図13】ラック素材モデルが図11のピニオンカッター運動軌跡モデルによりカットされて作成されたラックモデルの要部斜視図である。
【符号の説明】
1…ラック、2…ピニオン、3…歯部、3a…歯、
10…コンピュータ、11…入力部、12…中央処理部、13…画像処理部、14…記憶部、15…表示部、16…バス、
20…ピニオンカッターモデル、21…歯形モデル、22…基準ピッチ円、23…基線、24…歯モデル、25…円柱モデル、
30…ラック素材モデル、31…歯形成部、
40…ピニオンカッター運動軌跡モデル、41…歯、
50…ラックモデル、51…歯、52…歯部、53…歯溝、
A1…並進方向、A2…方向、A3…直交方向、P1,P3…位置、P2…交点、L1…回転軸線、L2…中心軸線。

Claims (2)

  1. CADシステムを構成するコンピュータによりラックモデルを作成するための下記の(A)から(D)の工程と、ラックを成形する下記の(E)の工程とを含むことを特徴とするラックの製造方法。
    (A)前記コンピュータに入力されたピニオン形状およびラック素材形状に基づいてピニオンカッターモデルおよびラック素材モデルを作成する工程。
    (B)ピニオンと該ピニオンに噛合する前記ラックとが設定位置関係となるように、前記ピニオンカッターモデルを前記ラック素材モデルに対して位置決めする工程。
    (C)位置決めされた前記ピニオンカッターモデルを、前記ピニオンの回転角に対する前記ラックの並進移動量であるラックゲインに則して回転および並進させて得られる軌跡によりピニオンカッター運動軌跡モデルを作成する工程。
    (D)前記ピニオンカッター運動軌跡モデルにより前記ラック素材モデルをカットしてラックモデルを作成する工程。
    (E)前記ラックモデルの3次元データに基づいて作動する加工装置によりラック素材を加工して前記ラックを成形する工程、または該加工装置により成形型を成形し、該成形型を使用することにより前記ラックを成形する工程。
  2. 前記ラックは、前記ラック・ピニオン型の車両用ステアリング装置に使用されて、前記ラックゲインが前記ピニオンとの噛み合い位置に依存して変化する可変ギヤ比型ラックであることを特徴とする請求項1記載のラックの製造方法。
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