JP3940959B2 - 組換えポックスウイルス−サイトメガロウイルス組成物および使用 - Google Patents
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Description
発明の分野
本発明は、変性(修飾)ポックスウイルスならびにその製造および使用方法に関し;例えば、ワクシニアウイルスまたはトリ(鳥類)ポックス(例えば、カナリアポックスまたは家禽ポックス)、例えば変性組換えポックスウイルス−サイトメガロウイルス(CMV)、例えば、弱毒化組換え体のようなヒトサイトメガロウイルス(HCMV)、特にNYVACまたはALVAC CMVまたはHCMV組換え体に関するものである。さらに詳細には、本発明は、外来遺伝子を挿入し発現させて、CMVまたはHCMVウイルスに対して免疫応答を誘起するための安全な免疫化媒体として用いられる改良ベクターに関する。すなわち、本発明はCMVまたはHCMVの遺伝子産生物を発現する組換えポックスウイルス、および、宿主またはインビトロ(例えば、半ビボモダリティ)投与されたCMVまたはHCMV感染に対して免疫応答を誘起する免疫原性組成物に関し、さらには、該ポックスウイルスの発現産生物であって、それ自身が免疫応答を誘起、例えば抗体を産生するのに有用な生成物に関し、ここで、該抗体は、血清反応陽性または血清反応陰性の個体におけるCMVまたはHCMV感染に対して有用であり、また、該発現産生物またはそれから誘起される抗体は、状況に応じて動物またはヒトまたは培養細胞から単離されることにより、ウイルスもしくは感染細胞またはその他の系における抗原または生成物の発現の検出用の診断キット、試験または分析法を構築するのに有用なものである。そのような単離された発現産生物は、各種の系、宿主、血清もしくはサンプルにおける抗体の検出、または抗体の産生に特に有用である。本発明のポックスウイルス組換え体は好ましくは、CMVまたはHCMVのgB、gH、gL、pp150、pp65およびIEIのいずれかまたは全てのコードするDNAを含有し、一部切除された(truncated)IEIを発現する組換え体も含む。そして、該組換えポックスウイルスDNAは、CMVもしくはHCMVまたはそれらの抗原の存否を検出するためのCMVもしくはHCMV用プロープまたはPCRプライマー調製に有用である。
本出願においては、幾つかの刊行物を参照している。これらの参考文献は、本明細書の末尾の特許請求の範囲の前にまとめて引用しているか、あるいは、刊行物について言及している個所においてそれぞれの刊行物を引用しており、それらの内容を本明細書中に包含させることとする。
発明の背景
外来遺伝子を挿入し発現させるためにはワクシニアウイルス、および最近は、その他のポックスウイルスが用いられている。生きた感染性ポックスウイルス内に外来遺伝子を挿入する基本的な手法は、ドナープラスミド内の外来遺伝子をはさむ(フランキングする)ポックスDNA配列と、レスキューウイルスであるポックスウイルス内に存在する相同配列との間で組換えを起こすことである(Piccini他、1987)。
詳述すれば、組換えポックスウイルスは、当該技術分野で既知であり、また、米国特許第4,769,330号、第4,772,848号、第4,603,112号、第5,100,587号および第5,179,993号に記載のワクシニアウイルスまたはトリポックスウイルスのようなポックスウイルスの合成組換体を創製する方法(これらの特許の開示を参考のために本明細書に引用しておく。)に類似の2つの工程で構築される。
第1の工程として、当該ウイルスに挿入すべきDNA遺伝子配列、特に、非ポックス源からのオープンリーディングフレームが、ポックスウイルスDNAの一部に相同的なDNAが予め挿入されている大腸菌プラスミド構造体に導入される。これとは別に、挿入されるべきDNA遺伝子配列をプロモータに連結しておく。プラスミド構造体におけるプロモータと遺伝子の連結体の位置は、可欠(nonessential)遺伝子座を含有するポックスDNAの領域をはさむDNA配列に相同的なDNAにより、該プロモーター遺伝子連結体の両端がはさまれているようにしておく。このようにして得られたプラスミド構造体は、次いで、大腸菌内で培養、増幅され(Clewell、1972)、単離される(Clewell他、1969;Maniatis他、1982)。
第2の工程として、挿入されるべきDNA遺伝子配列を含有する単離後のプラスミドは、ポックスウイルスとともに、培養細胞、例えば、ニワトリ胚線維芽細胞に形質転換(トランスフェクション)される。プラスミド内の相同的ポックスDNAと、ウイスルゲノムとの間の組換えにより、ポックスウイルスのゲノムの可欠領域に外来DNA配列が存在する変性ポックスウイルスが得られる。「外来(foreign)」DNA配列という語は、外因性DNA、特に非ポックス源からのDNAであって、該外因性DNAが導入されているゲノムによって通常は産生されない遺伝子産生物をコードするDNAを指称する。
遺伝子組換えは、一般に、2つのDNA鎖間の相同的DNA部分の交換である。ウイルスによっては、DNAの代わりにRNAとなることもある。核酸の相同的部分とは、同じ配列の核酸塩基を有する核酸(DNAまたはRNA)の一部分である。
遺伝子組換えは、本来、感染宿主細胞内で新しいウイルスゲノムが複製または産生される間に起こり得るものである。すなわち、2種もしくはそれ以上の異なるウイルスまたはその他の遺伝子構造体が共感染した(co-infected)宿主細胞内で起こるウイルス複製サイクル中に、ウイルス遺伝子間の遺伝子組換えが起こり得る。第1のゲノム由来のDNAの一部が交換させられて、この第1のウイルスゲノムに相同的なDNAを有する第2の共感染性ウイルスのゲノムの一部を構成する。
しかしながら、組換えは、完全に相同的でない異なるゲノムにおけるDNA部分間でも起こり得る。第1のゲノム由来のそのようなDNAの一部分が別のゲノムの一部分に相同的であるが、その第1のDNA部分に、例えば、遺伝子マーカーや抗原決定基をコードする遺伝子が挿入されて存在しているような場合には、組換えが起こり、その組換え産生物は組換えウイルスゲノム内のそのような遺伝子マーカーや遺伝子の存在により検出され得るようになる。最近は、組換えワクシニアウイルスを調製するためにその他の戦略も報告されている。
変性された感染性ウイルスにより、挿入されたDNA遺伝子配列の発現を成功させるためには2つの条件が要求される。第1に、ウイルスの可欠領域に挿入を行い、変性ウイルスの生存性が維持されるようにしなければならない。挿入DNAの発現に関する第2の条件は、該挿入DNAに対して至適な関係でプロモータが存在しているということである。プロモータの位置は、発現されるべきDNA配列の上流にあるようにしなければならない。
ワクシニアウイルスは天然痘に対する免疫処置に使用されて成功をおさめ、1980年には世界的に天然痘を撲滅させた。その歴史の過程でワクシニアの多くの菌株が出現した。これらの異なる菌株は、種々の免疫原性を示し、また、程度の差はあるが、いろいろな合併症に関連する可能性があるとされ、その最も深刻なものはワクチン接種後の脳炎と全身性ワクシニアである(Behbehani、1993)。
天然痘の撲滅に伴い、ワクシニアの新しい役割、すなわち、外来遺伝子を発現させるための遺伝子工学用ベクターとして役割が重要となった。きわめて多くの異種抗原をコードする遺伝子がワクシニア内で発現され、その結果、対応する病原体による攻撃(チャレンジ)に対する防御免疫をもたらしたことも多い(Tartaglia他による総説、1990a)。
ワクシニアウイルスの遺伝学的経歴は、発現される外来免疫原の防御効能に影響を与えることが示されている。例えば、ワクシニアウイルスのWyethワクチン株内でエプスタインバーウイルス(EBV)gp340が発現されても、EBVウイルスで引き起こされるリンパ腫に対してタマリンを防御しなかったが、ワクシニアウイルスのWR研究室株内で同じ遺伝子を発現させると防御効果があった(Morgan他、1988)。
ワクシニアウイルスに基づき組換えワクチンを得ようとする場合には効力と安全性との間に精密なバランスをとることがきわめて重要である。組換えウイルスが与える免疫原は、ワクチン投与された動物内で防御能のある免疫応答を誘起するが、実質的に病原性が無いものでなければならない。したがって、ベクター株を弱毒化することが、現在の技術状況では最も望ましいであろう。
多くのワクシニア遺伝子が、組織培養におけるウイルスの成長に可欠であることが確認されており、それらを欠失させ不活化することにより、いろいろな動物系におけるビルレンス(毒性)が減少される。
ワクシニアウイルスのチミジンキナーゼ(TK)をコードする遺伝子についてはマッピングが行われ(Hruby他、1982)、また、配列決定も行われている(Hruby他、1993;Wier他、1993)。チミジキナーゼ遺伝子が不活化または完全欠失しても、広範な組織培養中でワクシニアウイルスの増殖は妨げられない。また、TK-ワクシニアウイルスは各種の投与法により各種の宿主における接種部位においてインビボ複製する能力を有する。
単純ヘルペスウイルス2型については、TK-ウイルスをモルモットに膣内投与すると、TK+ウイルスの投与の場合よりも脊髄中のウイルス力価がかなり低くなることが示された(Stanberry他、1985)。ヘルペスウイルスではインビトロでのTK活性は、代謝の活発な細胞中ではウイルスの増殖に重要でないが、静止細胞中ではウイルス増殖に必須であることが示された(Jamieson他、1974)。
マウスに脳内投与および腹膜内投与することによりTK-ワクシニアが弱毒化されることが示された(Buller他、1985)。神経毒性のあるWR実験室株およびWyethワクチン株の双方について弱毒化が認められた。皮膚内投与されたマウスにおいては、TK-組換えワクシニアが、親株のTK+ワクシニアウイルスと同等の抗ワクシニア中和抗体を産生したが、これは、この試験系では、TK機能の喪失がワクシニアウイルスベクターの免疫原性を有意に減少させないことを示唆している。TK-およびTK+の組換えワクシニアウイルス(WR株)をマウスに鼻内接種すると、他の部位(脳を含む)へのウイルスの伝播が有意に減少したことが見出された(Taylor他、1991a)。
ヌクレオチドの代謝に関連する別の酵素は、リボヌクレオチドレダクターゼである。単純ヘルペスウイルス(HSV)内でコードされているリボヌクレオチドレダクターゼの活性が、その大サブユニットをコードしている遺伝子を欠失させることにより喪失しても、インビトロの分裂細胞中でのウイルス増殖やDNA合成は影響されないが、無血清細胞でのウイルスの増殖能力は極めて損なわれることが示された(Goldstein他、1988)。眼部の急性HSV感染および三叉神経ガングリオンにおける再活性性潜伏感染に関するマウスモデルを用いた場合、リボヌクレオチドレダクターゼの大サブユニットを欠失したHSVについては、野生型HSVに比べてビルレンスが減少することが示された(Jacobson他、1989)。
ワクシニアウイルスにおいては、リボヌクレオチドレダクターゼの小サブユニット(Slabaugh他、1988)および大サブユニット(Schmidtt他、1988)のいずれも同定されている。ワクシニアウイルスのWR株においてリボヌクレオチドレダクターゼを挿入不活化すると、マウスの頭蓋内接種により測定され得るようなウイルスの弱毒化がもたらされる(Ghild他、1990)。
ワクシニアウイルスの血球凝集素(HA)遺伝子についてはマッピングおよび配列決定が行われている(Shida、1986)。ワクシニアウイルスのHA遺伝子は、組織培養中の増殖にとって可欠なものである(Ichihashi他、1971)。ワクシニアウイルスのHA遺伝子を不活化すると、頭蓋内投与されたウサギにおいては神経毒性化が減少し、また、皮膚内投与部位におけるウサギの損傷は小さくなっていた(Shida他、1988)。HAの遺伝子座を利用して、ワクシニアウイルスのWR株(Shida他、1987)、Lister株の誘導体(Shida他、1988)およびCopenhagen株(Guo他、1989)に外来遺伝子を挿入している。外来遺伝子を発現する組換えHA-ワクシニアウイルスは、免疫原性があり(Guo他、1989;Itamura他、1990;Shida他、1988;Shida他、1987)、また、関連する病原体によるチャレンジに対して防御効果を有する(Guo他、1989;Shida他、1987)ことが示された。
牛痘ウイルス(Brighton赤色株)は、鶏卵の漿尿膜上に赤色(出血性)痘瘡を生じさせる。牛痘ゲノム内で自然欠失すると白色痘瘡を生じる変異体となる(Pichup他、1984)。出血性機能(u)は、初期遺伝子によってコードされた38kDaのタンパク質によることがマッピングされている(Pickup他、1986)。この遺伝子は、セリンプロテアーゼインヒビターと相同性を有し、牛痘ウイルスに対する宿主の炎症応答を阻害し(Palumbo他、1989)、また、血液凝固のインヒビターである。
このu遺伝子は、ワクシニアウイルスのWR株中に存在する(Kotwal他、1989b)。外来遺伝子を挿入することによりu領域が不活化されているWRワクシニアウイルス組換え体が接種されたマウスは、u遺伝子がインタクトのままである類似の組換えワクシニアウイルスが接種されたマウスよりも、該外来遺伝子に対して高い抗体レベルを産生する(Zhou他、1990)。このu領域は、ワクシニアウイルスのCopenhagen株内で欠陥性非機能形態として存在する(Goeberu他による報告(1990a,b)においてB13およびB14と称されているオープンリーディングフレーム)。
感染細胞内において牛痘ウイルスは、細胞質A型封入体(ATI)として局在化している(Kato他、1959)。ATIの機能は、動物から動物への伝播に際して牛痘ウイルスビリオンを防御することにあると考えられている(Bergoin他、1971)。牛痘ゲノムのATI領域は160kDaのタンパク質をコードしており、これがATI封入体のマトリックスを形成する(Funahashi他、1988;Patel他、1987)。ワクシニアウイルスは、そのゲノムに相同領域を含有するが、一般にATIを産生しない。ワクシニアのWR株においては、ゲノムのATI領域は94kDaのタンパク質として翻訳される(Patel他、1988)。ワクシニアウイルスのCopenhagen株においてはATI領域に相応するDNA配列の大部分は欠失されており、該領域の残存する3′末端はATI領域の上流にある配列と融合して、オープンリーディングフレーム(ORF)A26Lを形成する(Goeberu他、1990a,b)。ワクシニアウイルスの左末端近傍については、各種の自然欠失(Altenburger他、1989;Drillien他、1981;Lai他、1989;Moss他、1981;Paez他、1985;Panicali他、1981)や人為的欠失が報告されている。10kbが自然欠失したワクシニアウイルスのWR株(Moss他、1981;Panicali他、1981)は、マウスに頭蓋内接種することにより弱毒化されることが示された(Buller他、1985)。後に、この欠失部は17ヶのORFを含む可能性が示された(Kotwal他、1988b)。該欠失部内にある特別の遺伝子としては、ビロカインN1Lおよび35kDaタンパク質(Goebel他による1990a,bの報告でC3Lと称されたもの)が挙げられる。N1Lを挿入不活化すると、通常のマウスおよびヌードマウスのいずれについても、頭蓋内接種によりビルレンスが減少する(Kotwa他、1989a)。上記の35kDaタンパク質は、ワクシニアウイルス感染細胞の培地にN1Lと同様に分泌される。このタンパク質は、補体コントロールタンパク質群、特に補体4B結合タンパク質(C4bp)に相同性である(Kotwal他、1988a)。細胞性C4bpと同様に、ワクシニアの35kDaタンパク質は補体の第4成分と結合し、古典的補体カスケードを阻害する(Kotwal他、1990)。このように、ワクシニアの35kDaタンパク質は、該ウイルスが宿主の防御機構を回避するのを助けることに関与しているものと考えられる。
ワクシニアゲノムの左末端は、宿主域遺伝子として同定された2つの遺伝子、K1L(Gillard他、1986)およびC7L(Perkus他、1990)を含む。これらの遺伝子の双方が欠失すると、各種のヒト細胞系でワクシニアウイルスの増殖能が減少する(Perkus他、1990)。
この他に、本来的に宿主が制限されているポックスウイルスであるトリポックスウイルスを使用する2つのワクチンベクター系がある。すなわち、家禽ポックスウイルス(FPV:fowlpoxvirus)およびカナリアポックスウイルス(canarypoxvirus)の両者に工夫を施して外来遺伝子産生物を発現させてきた。家禽ポックスウイルス(FPV)は、ポックスウイルス科のトリポックス(Avipox)属の基本ウイルスである。このウイルスは、家禽類に経済的に重要な疾病を引き起こすが、1920年代から弱毒化生ワクチンを使用することにより良好な対策が講じられてきた。トリポックスウイルスの複製は鳥類に限られ(Matthews他、1982)、ヒトを含む非鳥類においてトリポックスウイルスの感染が起こったという文献の報告は存しない。このように宿主が制限されているので、他の種にウイルスが伝染することに対する本質的な安全性が確保され、トリポックスウイルス由来のワクチンベクターは魅力ある手段として動物やヒトへ応用される。
FPVは、家禽類病原体由来の抗原を発現する優れたベクターとして使用されてきた。ビルレントトリインフルエンザウイルスの血球凝集素タンパク質がFPV組換え体で発現された(Taylor他、1988a)。この組換え体をニワトリおよび七面鳥に接種すると、同種または異種のビルレントインフルエンザウイルスのいずれのチャレンジに対しても防御能のある免疫応答が誘起された(Taylor他、1988a)。ニューカッスル病ウイルスの表面糖タンパクを発現するFPV組換え体も開発された(Taylor他、1990;Edbauer他、1990)。
宿主制限によりFPVおよびCPVの複製はトリ系に限られているにも拘わらず、これらのウイルスから誘導された組換え体は、非トリ源細胞において外来遺伝子を発現することが見出された。さらに、そのような組換え体ウイルスは、該外来遺伝子産生物に対する免疫応答を引き起こし、場合によっては、相応する病原体によるチャレンジに対する防御能を有することが示された(Tartaglia他、1993a,b;Taylor他、1992;1991b;1988b)。
ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)は、ベータヘルペスウイルス亜科(ヘルペスウイルス科)の一種である。HCMVはヒトに偏在しており、通常は軽症または不顕性の急性感染の後、保続または潜在化する。しかしながら、HCMVは、子宮内感染した幼児においては発病および死亡の主要な原因となっている(Stagno他、1983)。HCMVは、臓器移植(Glenn他、1981)および免疫無防備状態の宿主(Weller他、1971)における最も一般的な感染合併症である。エイズ患者においては、CMV網膜炎が失明の主因となっている(Roarty他、1993;Gallant他、1992;Gross他1990)。冠状動脈休止症におけるHCMVの役割の可能性の1つが最近検討された(Speir他、1994)。HCMVのTowne株を生きたままで弱毒化したものは、血清陰性の腎臓移植受領者を防御しHCMV感染による重い臨床症状を引き起こさないようにし(Plotkin他、1976、1984および1989)、また、当初血清陰性の健康な個体を防御して、HCMV野性株を皮下チャレンジされた後に感染および臨床症状を引き起こさない(Plotkin他、1989)ことが示された。ヒトにおけるヘルペスウイルス感染の特徴として潜伏中に再活性化現象があり、また、HCMVの菌株の中にはインビトロで細胞を悪性に形質転換する能力を有するものがあるため、HCMVの生ワクチンを使用することが従来より関心を持たれている。これらの理由から、ヒトの免疫には組換えによるサブユニットCMVワクチンの方が好ましいであろう。
個々のHCMVタンパク質の防御免疫における役割は不明である。HCMVエンベロープに関連する3種類の免疫学的に異なる糖タンパク質、すなわち、gCI(gp55およびgp93-130)、gCII(gp47-52)およびgCIII(gp85-p145)について検討されている(Gretch他、1988b)。これらの糖タンパク群のそれぞれに特異的な抗体を用いるとインビトロでHCMVが中和されることが示された(Pachl他、1989;Rasmussen他、1989;Kari他、1986)。
gCIをコードする遺伝子はHSV−IのgBと相同性である(Crange他、1986)。HCMVgBは、見かけの分子量130〜140kDaのグリコシル化された非切断前駆体として合成され、これは細胞のプロテイナーゼにより処理されてN末端側の90〜110kDaの生成物とC末端側の55〜58kDaの生成物になるが、これらの生成物はジスルフィド結合されたコンプレックスとして結合状態を保持する(BrittおよびAuger、1986;BrittおよびVugler、1989;Reis他、1993)。HCMV感染細胞のライゼートまたはHCMVビリオンで免疫化(免疫感作)したマウスからHCMVを中和し得るモノクローナル抗体が得られたが、該モノクローナル抗体は、前記C末端側55〜58kDaフラグメントと専ら反応性を有していた(Britt、1984;Kari他、1986;Pereira他、1984;Rasmussen他、1988)。しかしながら、生化学的に生成したgp93で免疫化すると、gp93特異的な中和mAbs(モノクローナル抗体)が得られた(Kari他、1990)。
HCMV−gBはヒト中で防御免疫を誘発するように機能するものと考えられる:精製したgBタンパク質で免疫化すると中和抗体が誘発され(Goenczoel他、1990)、また、ヒト抗gBモノクローナル抗体は当該ウイルスを中和する(Masuho他、1987)。自然感染の後、HCMB−gBに特異的な中和抗体が認められる。ヒト血清からgB特異性抗体を吸収してしまうと、HCMV中和性抗体の力価は有意に減少する(55〜88%、Goenczoel他、1991;0〜98%(メジアン48%)、Marshall他、1992)。さらに、生来的に血清陽性のヒトにおいてはgBタンパク質によりヘルパーT細胞が活性化されるという証拠があり(Liu他、1991)、また、幾つかの研究においてはヒト中にgB特異的なCTLが検出されている(Borysiewicz他、1988;Liu他、1991;Riddell他、1991)。
gCII糖タンパク質は、US6遺伝子群にある単一または複数の遺伝子によってコードされている(US6からUS11、Gretch他、1988a)。これらの糖タンパク質は、回復期の大人由来の血清中にあるヒト抗HCMV抗体により認識される。しかしながら、永続性感染を有する生来感染幼児由来の血清はgCII糖タンパク質と反応せず(KariおよびGehrz、1990)、このことは、gCIIはHCMVに対するヒトの防御免疫応答に重要であろうということを示唆している。
gCIIIコンプレックスのgp86成分は、HSV−1のgHに相同性の遺伝子によりコードされている(Crange他、1988、Pachl他、1989)。HCMVのgHタンパク質は、ヒトにおける中和性免疫応答を誘発する能力がある(HCMV感染した個体の10%に検知可能なレベルの循環性gP特異的抗体が認められ(Rasmussen他、1991)、同様のことが実験動物についても見られる(Babooniann他、1989;Crange他、1988;Ehrlich他、1988;Rasmussen他、1984))。マウスgH−特異性モノクローナル抗体は、補体に依存してウイルス感染を中和し(Bfboonian他、1989;Crange他、1988;Rasmussen他、1984)、そしてウイルスの蔓延を抑制し(Pachl他、1989)、これらのことから、gHはウイルスの付着、浸透および/または拡散に関与したものと思われる。
gHはHCMV感染細胞の表面に見出されるが(Crange他、1988)、各種の組換え系で発現させると内形質細網に限定される(Spaete他、1991)。HCMVのUL115遺伝子産生物(糖タンパク質gL)を共発現(同時発現)させると、これら2種類のタンパク質の安定したコンプレックスが生成し、そして、gHが細胞表面に輸送される(Spaete他、1993;Kaye他、1992)。
HCMVは多くのマトリックス外皮リンタンパク質を合成する。リンタンパク質pp150は、きわめて免疫原性が高く、見かけ上、他のHCMV構造タンパク質のいずれよりも高い(Jshn他、1987)。第2のマトリックスリンタンパク質pp65は、ヒトにおいて各種の体液性応答を誘発する(Jahn他、1987;Plachter他、1990)。このタンパク質は、リンパ球増殖、IL−2およびインターフェロンの産生、抗体のB細胞刺激およびナチュラルキラー細胞活性を刺激することができる(Forman他、1985)。該タンパク質は、さらに、HCMV−特異的でHLA−限定性の細胞障害性T細胞(CTLs)に対する標的抗原としても機能する(Pande他、1991;Gilbert他、1993)。
HCMVに対する防御免疫応答を誘発させるには追加の構造タンパク質を必要とするものと思われる。主キャプシドタンパク質(UL86)は自然感染中に特異抗体を誘発するものとして知られ、また、CMV群に共通の抗原と考えられている(Spaete他、1996)。外皮リンタンパク質pp28(UL99)もまた、自然感染中に持続性の抗体応答を誘発するものとして知られている。さらに、このタンパク質はCTL標的抗原の1種であると考えられている(Charpentier他、1986)。上部外皮リンタンパク質のようには特徴が明らかにされてはいないが、既知の外皮タンパク質の1種として更に検討が必要である。
組換えサブユニットワクチンには、以上の構造タンパク質に加えて、幾つかの非構造タンパク質を含ませることも考えられる。マウスサイトメガロウイルス(MCMV)pp89(HCMV IE 1の機能的ホモログ)を発現する組換えワクシニアウイルスでマウスを免疫すると、MCMVのチャレンジによる防御免疫を媒介するCD8+T細胞応答が誘発される(Jonjic他、1988)。ヒトCMV主要即時初期タンパク質(IE 1)は、HCMV血清陽性個体から単離されたCTLsに対する標的であることが示されている(Borysiewicz他、1988)。IE 1は、発現される初期のウイルスタンパク質の1種であり、他のCMV遺伝子の発現を誘発し潜伏感染細胞内でウイルス寿命を開始させるのに必要であるから(BlantonおよびTevethia、1981;CameronおよびPreston、1981;DeMarchi他、1980;McDonoughおよびSpector、1983;Wathen他、1981)、IE 1に対するCTL応答は、HCMV感染を制御しおよび/または除去するのに重要であると考えられる。最近、Gilberらが提示した(1993)HCMVによって展開される機序によれば、ウイルスにコードされている他のタンパク質がクラスI主要組織適合複合体(MHC)分子と共同して、IE誘導性ペプチドの出現を選択的に妨げるということである。
組換えサブユニットHCMVワクチンには、その他の非構造タンパク質を含ませることも考えられる。即時初期タンパク質IE2(UL122)および調節タンパク質UL69は、ヒトT細胞エピトープを含有することが知られている(Beninga他、1995)。
HCMVサブユニットワクチンを開発する1つの手法は、生のウイルスベクターを使用して関連するHCMV遺伝子産生物を発現させることである。
かくして、CMVまたはHCMVの組換えポックスウイルス、ならびにそれから得られる組成物および生成物、特にNYVACまたはALVAC由来のCMVまたはHCMV組換え体ならびにそれから得られる組成物および生成物、特に、HCMVのgB、gH、gL、pp150、pp65およびIE1のいずれかまたは全てをコードするDNAを含有するような組換え体(一部切除されまたは変性されたIE1および/またはgBを発現する組換体を含む)ならびに、それから得られる組成物および生成物が提供されれば、現在の技術を前進させるきわめて望ましいものとなるであろう。
発明の目的および概要
したがって、本発明の目的は、安全性が向上した変性(修飾)組換えウイルスを提供すること、およびそのような組換えウイルスを製造する方法を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、既知の組換えポックスウイルスワクチンと比較して安全性のレベルが増大した組換えポックスウイルス抗原ワクチンまたは免疫組成物を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、ベクターが宿主内で弱毒化された毒性(ビルレンス)を有するように変性(修飾)された、宿主中で遺伝子産生物を発現する変性(修飾)ベクターを提供することにある。
本発明の別の目的は、安全性の目的は、安全性のレベルが増大した変性(修飾)組換えウイルスまたは変性(修飾)ベクターを用いて、生体内(インビトロ)で培養された細胞中で遺伝子産生物を発現する方法を提供することにある。
本発明のこれらの目的およびその他の目的ならびに効果は、以下の記述から一層明らかになるであろう。
一つの態様として、本発明は、変性組換えウイルスであって、該ウイルスにコードされている遺伝子機能が不活化されていることによりビルレンスが弱毒化され安全性が高められた組換えウイルスに関する。その遺伝子機能は、可欠的なものであるか、またはビルレンスに関連しているものである。ウイルスとしてはポックスウイルスが有利であり、特にワクシニアウイルスまたはトリポックスウイルス、例えば家禽ポックスウイルスまたはカナリアウイルスである。この変性組換えウイルスは、そのウイルスゲノムの可欠領域に、HCMV由来の抗原またはエピトープ、例えば、HCMBのgB、gH、gH、gL、pp150、pp65、IE1(変性または一部切除されたIE1および/またはgBを含む)のいずれかまたは全てをコードする外来DNA配列を含むことができる。
他の態様として、本発明は、接種された宿主動物内に免疫応答を誘起する抗原性、免疫原性、ないしはワクチン組成物または治療用組成物に関し、該ワクチンは、担体と変性組換えウイルスとを含み、該組換えウイルスは、ウイルスにコードされている可欠遺伝子機能が2活化されていることによりビルレンスが弱毒化され安全性が向上している。本発明に従うこの組成物に用いられるウイルスはポックスウイルスが有利であり、特にワクシニアウイルスまたはトリポックスウイルス、例えば、家禽ポックスウイルスまたはカナリアポックスウイルスである。この変性組換えウイルスは、そのウイルスゲノムの可欠領域に、HCMV由来の抗原またはエピトープ、例えば、HCMBのgB、gH、gL、pp150、pp65、IE1(変性または一部切除されたIE1および/またはgBを含む)のいずれかまたは全てをコードする外来DNA配列を含むことができる。
さらに別の態様として、本発明は、変性組換えウイルスを含有する免疫原性組成物に関し、該変性組換えウイルスは、ウイルスにコードされている可欠遺伝子機能が不活化されていることによりビルレンスが弱毒化され安全性が高められている。この変性組換えウイルスは、そのウイルスゲノムの可欠領域に、抗原性タンパク質[例えば、HCMBのgB、gH、gL、pp150、IE1(変性または一部切除されたIE1および/またはgBを含む)のいずれかまたは全てのようなHCMV由来のもの]をコードする外来DNA配列を含み、該組成物は、宿主に投与されると、該抗原に特異的な免疫応答を誘起する能力を有する。
別の態様として、本発明は、インビトロ培養される細胞に、ビルレンスが弱毒化され安全性が高められた変性組換えウイルスを導入することにより該細胞内で遺伝子産生物を発現させる方法に関する。この変性組換えウイルスは、そのウイルスゲノムの可欠領域に、抗原性タンパク質、例えば、HCMVのgB、gH、gL、pp150、IE1(変性または一部切除されたIE1および/またはgBを含む)のいずれかまたは全てのようなHCMV由来のタンパク質をコードする外来DNA配列を含むことができる。その後、該細胞は、個体に直接再注入されるか、または、再注入のために特定の反応性を増幅するのに使用する(半ビボ治療)ことができる。
別の態様として、本発明は、インビトロ培養される細胞に、ビルレンスが弱毒化され安全性が高められた変性組換えウイルスを導入することにより該細胞内で遺伝子産生物を発現させる方法に関する。この変性組換えウイルスは、そのウイルスゲノムの可欠領域に、抗原性タンパク質、例えば、HCMVのgB、gH、gL、pp150、IE1(変性または一部切除されたIE1および/またはgBを含む)のいずれかまたは全てのようなHCMV由来のタンパク質をコードする外来DNA配列を含むことができる。得られた遺伝子産生物は、ヒトまた動物に投与されて免疫応答を刺激することができる。産生された抗体は、各個体内でHCMVの予防および治療に有用であり、また、ヒトもしくは動物由来の抗体または単離されたインビトロ発現産生物は、診断キット、分析または試験に用いられて、血清のようなサンプル中のHCMVもしくはHCMV由来の抗原またはそれらに対する抗体の有無(したがって、該ウイルスもしくは該産生物、または該ウイルスもしくは抗原に対する免疫応答の有無)を測定するのに用いることができる。
さらに別の態様として、本発明は変性組換えウイルスに関し、該組換えウイルスは、ウイルスにコードされている可欠遺伝子機能が不活化されていることによりビルレンスが弱毒化されており、さらに、ウイルスゲノムの可欠領域に外来源のDNAを含有している。このDNAは、HCMVのgB、gH、gL、pp150、pp65、IE1(変性または一部切除されたIE1および/またはgBを含む)のようなHCMVをコードすることができるものである。さらに詳述すれば、遺伝子機能は、ビルレンス因子をコードするオープンリーディングフレームを欠失させることにより、または、自然の宿主制限ウイルスを利用することによって不活化されている。本発明に用いるウイルスは、ポックスウイルスが有利であり、特にワクシニアウイルスまたはトリポックスウイルス、例えば家禽ポックスウイルスまたはカナリアポックスウイルスである。オープンリーディングフレームは、J2R、B13R+B14R、A26L、A56R、C7L−K1L、および14L(Goebel他による1990a,bの報告における名称による)から成る群、ならびにそれらの組合せにより選択されるのが好ましい。ここで、オープンリーディングフレームは、チミジンキナーゼ遺伝子、出血性領域、A型封入体、血球凝集遺伝子、宿主域遺伝子領域もしくはリボヌクレオチドレダクターゼの大サブユニット、またはそれらの組合せから成る。ワクシニアウイルスの好適な変性Copenhagen株は、NYVACとして同定されたものであり(Tartaglia他、1992)、または、J2R、B13R+B14R、A26R、C7L−K11およびI4Lまたはチミジンキナーゼ遺伝子、出血性領域、A型封入体領域、血球凝集遺伝子、宿主域領域、リボヌクレオチドレダクターゼの大サブユニットが欠失されたワクシニアウイルスである(米国特許第5,364,773号も参照されたい)。他の好適なポックスウイルスは、ALVACであり、カナリアポックスウイルス(Rentschlerワクチン株)が、例えば、ニワトリ胚繊維芽細胞による200回以上の継代培養により弱毒化され、そのマスター種株が寒天培地下の4回の連続的なプラーク精製に供された後、5回の追加の継代培養によりプラーククローンが増幅されたものである。
本発明は、さらに別の態様として、本発明による組換えポックスウイルスの発現産生物およびその使用、例えば、治療、予防、診断または試験に用いられる抗原性組成物ないしはワクチン組成物を調製することに関する。
これらの態様およびその他の態様は、以下の詳細な説明から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
以下、添付図面に沿って本発明を詳細に説明するが、この説明は本発明を例示するためのものであり、本発明はそれらの特定の態様に限定されるものではない。
図1は、チミジンキナーゼ遺伝子を欠失させ組換えワクシニアウイルスvP410を形成するためのプラスミドpSD460を構築する方法を図示する。
図2は、出血性領域を欠失させ組換えワクシニアウイルスvP553を形成するためのプラスミドpSD486を構築する方法を図示する。
図3は、ATI領域を欠失させ組換えワクシニアウイルスvP618を形成するためのプラスミドpMP494Δを構築する方法を図示する。
図4は、血球凝集遺伝子を欠失させ組換えワクシニアウイルスvP723を形成するためのプラスミドpSD467を構築する方法を図示する。
図5は、遺伝子群[C7L−K1L]を欠失させ組換えワクシニアウイルスvP804を形成するためのプラスミドpMPCK1Δを構築する方法を図示する。
図6は、リボヌクレオチドレダクターゼの大サブユニットを欠失させ組換えワクシニアウイルスvP866(NYVAC)を形成するためのプラスミドpSD548を構築する方法を図示する。
図7は、TK欠失遺伝子座に狂犬病糖タンパク質G遺伝子を挿入し組換えワクシニアウイルスvP879を形成するためのプラスミドpRW842を構築する方法を図示する。
図8は、C5 ORF[SEQ ID NO:27(配列識別番号27)](このC5 ORFは1537位で開始し1857位で終結する)を含有するカナリアポックスDNAの3209塩基対フラグメントのDNA配列を示す。
図9Aおよび図9Bは、組換えカナリアポックスウイルスvCP65(ALVAC−RG)を構築する方法を図示する。
図10は、NYVACを形成するために欠失させるORFs(オープンリーディングフレーム)を図示する。
図11Aから図11Dは、予め同一のワクチンを接種するかまたはワクチンを変えて免疫化したボランティアにおけるウサギ中和抗体力価(RFFIT、IU/ml)、HDCおよびvCP65(105.5TCID50)のブースター効果を示すグラフである。(なお、ワクチン接種は、0日、28日および180日目に行い、抗体力価の測定は0日、7日、28日、35日、56日、173日、187日および208日目に行った。)
図12は、HCMVgB(Towne株)のDNA配列(SEQ ID NO:37)を示す。
図13Aおよび図13Bは、H6をプロモータとするHCMVgBおよびNYVAC配列(TK遺伝子座をはさむ)のDNA配列(SEQ ID NO:38)を示す。(H6をプロモータとするCMVgBの5′末端は3447位にあり;CMVgBをコードする配列は3324位から606位までである。)
図14Aから図14Cは、C3 ORFを含有するカナリアポックスDNAの7351塩基対フラグメントのDNA配列(SEQ ID NO:39)を示す。(C3 ORFは1458位から開始され、2897位で終結する。)
図15Aから図15Cは、H6をプロモータとするHCMVgBおよびALVAC配列(C3遺伝子座をはさむ)のDNA配列(SEQ ID NO:40)を示す。(H6をプロモータとするCMVgBの5′末端は4425位にあり;CMVgBをコードする配列は4301位から1581位までである。)
図16Aおよび図16Cは、H6をプロモータとするHCMVgBおよびNYVAC配列(ATI遺伝子座をはさむ)のDNA配列(SEQ ID NO:41)を示す。(H6をプロモータとするCMVgBの5′末端は3348位にあり;CMVgBをコードする配列は3224位から504位までである)。
図17は、トランスメンブレン領域が欠失されたHCMVgB(Towne株)のDNA配列(SEQ ID NO:42)を示す。
図18Aおよび図18Bは、H6をプロモータとするHCMVgB(そのトランスメンブレン領域を欠損している)およびNYVAC配列(ATI遺伝子座をはさむ)のDNA配列(SEQ ID NO:43)を示す。(H6をプロモータとするCMVgBの5′末端は3173位にあり;CMVgBをコードする配列は3050位から504位までである。)
図19は、トランスメンブレン領域が欠失され且つ切断部位が変性(修正)されたHCMVgB(Towne株)のDNA配列(SEQ ID NO:44)を示す。
図20Aおよび図20Bは、H6をプロモータとするHCMVgB(トランスメンブレン領域が欠失され且つ切断部位が変性されている)およびNYVAC配列(ATI遺伝子座をはさむ)のDNA配列(SEQ ID NO:45)を示す。(H6をプロモータとするCMVgBの5′末端は3173位にあり;CMVgBをコードする配列は3050位から504位までである。)
図21は、HCMVgH(Towne株)のDNA配列(SEQ ID NO:46)を示す。
図22Aおよび図22Bは、42KをプロモータとするHCMVgHとNYVAC配列(I4L遺伝子座をはさむ)のDNA配列(SEQ ID NO:47)を示す。(42KをプロモータとするCMVgHの5′末端は641位にあり;CMVgHをコードする配列は708位から2933位までである。)
図23Aおよび図23Bは、42KをプロモータとするCMVgHとALVAC配列(C5遺伝子座をはさむ)のDNA配列(SEQ ID NO:48)を示す。(42KをプロモータとするCMVgHの5′末端は1664位にあり;CMVgHをコードする配列は1730位から3955位までである。)
図24は、42KをプロモータとするCMVgHおよびWRフランキング配列のDNA配列(SEQ ID NO:49)を示す。(42KをプロモータとするCMVgHの5′末端は2457位にあり;CMVgHをコードする配列は2391位から166位までである。)
図25は、HCMV IE1(AD169株)のDNA配列(SEQ ID NO:50)を示す。
図26は、H6をプロモータとするCMVIE1およびWRフランキング配列のDNA配列(SEQ ID NO:51)を示す。(H6をプロモータとするCMVIE1の5′末端は1796位にあり;CMVIE1をコードする配列は1673位から201位までである。)
図27Aおよび図27Bは、H6をプロモータとするCMVIE1およびNYVAC配列(ATI遺伝子座をはさむ)のDNA配列(SEQ ID NO:52)を示す。(H6をプロモータとするCMVIE1の5′末端は2030位にあり;CMVIE1をコードする配列は1906位から434位までである。)
図28は、292〜319位のアミノ酸を欠くHCMVIE1(AD169株)のDNA配列(SEQ ID NO:53)を示す。
図29Aおよび図29Bは、H6をプロモータとするCMVIE1(292〜319位のアミノ酸を欠如している)およびNYVAC配列(ATI遺伝子座をはさむ)のDNA配列(SEQ ID NO:54)を示す。(H6をプロモータとするCMVIE1の5′末端は1940位にあり;CMVIE1をコードする配列は1816位から434位までである。)
図30は、HCMVIE1(AD169株)のエクソン4セグメントのDNA配列(SEQ ID NO:55)を示す。
図31は、H6をプロモータとするCMVIE1 エクソン4セグメントおよびALVAC配列(I4L遺伝子座をはさむ)のDNA配列(SEQ ID NO:56)を示す。(H6をプロモータとするIE1 エクソン4の5′末端は630位にあり;CMVIE1 エクソン4をコードする配列は754位から1971位までである。)
図32Aおよび図32Bは、H6をプロモータとするCMVIE1 エクソン4セグメントおよびALVAC配列(C5遺伝子座をはさむ)のDNA配列(SEQ ID NO:57)を示す。(H6をプロモータとするIE1 エクソン4は1647位にあり;CMVIE1 エクソン4をコードする配列は1771位から2988位までである。)
図33は、2〜32位のアミノ酸を欠如するHCMVIE1(AD169株)のDNA配列(SEQ ID NO:58)を示す。
図34は、H6をプロモータとするCMVIE1(2〜32位のアミノ酸を欠く)およびNYVAC配列(I4L遺伝子座をはさむ)のDNA配列(SEQ ID NO:59)を示す。(H6をプロモータとし2〜32位のアミノ酸を欠くIE1の5′末端は630位にあり;2〜32位のアミノ酸を欠くCMVIE1をコードする配列は754位から2133位までである。)
図35Aおよび図35Bは、H6をプロモータとするCMVIE1(2〜32位のアミノ酸を欠く)およびALVAC配列(C5遺伝子座をはさむ)のDNA配列(SEQ ID NO:60)を示す。(H6をプロモータとし2〜32位のアミノ酸を欠くIE1の5′末端は1647位にあり;2〜32位のアミノ酸を欠くCMVIE1をコードする配列は1771位から3150位までである。)
図36は、HCMV pp65(Towne株)のDNA配列(SEQ ID NO:61)を示す。
図37は、H6をプロモータとするCMVpp65およびNYVAC配列(HA遺伝子座をはさむ)のDNA配列(SEQ ID NO:62)を示す。(H6をプロモータとするpp65の5′末端は476位にあり;CMVpp65をコードする配列は660位から2282位までである。)
図38Aおよび図38Bは、C6 ORFを含有するカナリアポックスDNAの3706塩基対フラグメントのDNA配列(SEQ ID NO:63)を示す。(C6 ORFは377位から開始され2254位で終結する。)
図39Aおよび図39Bは、H6をプロモータとするCMVpp65およびALVAC配列(C6遺伝子座をはさむ)のDNA配列(SEQ ID NO:64)を示す。(H6をプロモータとするpp65の5′末端は496位にあり;CMVpp65をコードする配列は620位から2302位までである。)
図40は、H6をプロモータとするCMVpp65およびWRフランキング配列のDNA配列(SEQ ID NO:65)を示す。(H6をプロモータとするpp65の5′末端は168位にあり;CMVpp65をコードする配列は292位から1974位までである。)
図41は、HCMVpp150(Towne株)のDNA配列(SEQ ID NO:66)を示す。
図42Aおよび図42Bは、42KをプロモータとするCMVpp150およびNYVAC配列(ATI遺伝子座をはさむ)のDNA配列(SEQ ID NO:67)を示す。(42Kをプロモータとするpp150の5′末端は3645位にあり;CMVpp150をコードする配列は3580位から443位までである。)
図43Aおよび図43Bは、42KをプロモータとするCMVpp150およびALVAC配列(C6遺伝子座をはさむ)のDNA配列(SEQ ID NO:68)を示す。(42Kをプロモータとするpp150の5′末端は3714位にあり;CMVpp150をコードする配列は3649位から512位までである。)
図44Aおよび図44Bは、42KをプロモータとするCMVpp150およびWRフランキング配列のDNA配列(SEQ ID NO:69)を示す。(H6をプロモータとするpp150の5′末端は3377位にあり;CMVpp150をコードする配列は3312位から175位までである。)
図45Aおよび図45Bは、42KをプロモータとするHCMVgHおよびH6をプロモータとするHCMVIE エクソン4およびNYVAC配列(I4L遺伝視座をはさむ)のDNA配列(SEQ ID NO:70)を示す。(42KをプロモータとするCMVgHの5′末端は2935位にあり;CMVgHをコードする配列は2869位から644位までであり;H6をプロモータとするCMVIE エクソン4の5′末端は2946位にあり;CMVIE エクソン4をコードする配列は3070位から4287位までである。)
図46Aから図46Cは、H6をプロモータとするHCMVpp65および42KをプロモータとするHCMVpp150およびALVAC配列(C6遺伝視座をはさむ)のDNA配列(SEQ ID NO:71)を示す。(H6をプロモータとするCMVpp65の5′末端は496位にあり;CMVpp65をコードする配列は620位から2302位までであり;42KをプロモータとするCMVpp150の5′末端は5554位にあり;CMVpp150をコードする配列は5489位から2352位までである。
図47は、HCMVgL(Towne株)のDNA配列(SEQ ID NO:72)を示す。
図48Aおよび図48Bは、H6をプロモータとするHCMVgLおよびNYVAC配列(TK遺伝子座をはさむ)のDNA配列(SEQ ID NO:73)を示す。(H6をプロモータとするCMVgBの5′末端は3447位にあり;CMVgBをコードする配列は3324位から606位までであり;H6をプロモータとするCMVgLの5′末端は3500位にあり;CMVgLをコードする配列は3624位から4460位までである。)
図49は、ALVAC−IE1(vCP256)によるHCMVIE1 CTLの刺激の結果を示す。(パーセント細胞毒性;無地棒グラフ=WR、黒地(右下がり縞)棒グラフ=WRIE1、(右上がり縞)棒グラフ=非同原)。
図50は、ALVAC−pp65(vCP260)によるHCMV pp65−CTLの刺激の結果を示す。(インビトロでヒトCTLを刺激し、図49に用いたのと同様の方法によりHCMV pp65−CTLを分析したもの。パーセント細胞毒性;無地棒グラフ=WR、黒地(右下がり縞)棒グラフ=WR−pp65、(右上がり縞)棒グラフ=非同原)。
図51は、ALVAC−IE1(vCP256)によるHCMV IE1 CTLの刺激の結果を示す。(図49に用いたのと同様の方法による。但し、再刺激のために6日間インキュベートした後、抗ヒトCD3、CD4またはCD8モノクローナル抗体に結合された免疫磁性ビートを用いてキラー単核細胞をインキュベートした。パーセント細胞毒性;無地棒グラフ=WR、黒地(右下がり縞)棒グラフ=WR−IE1、(右上がり縞)棒グラフ=HLAミスマッチ)。
図52Aから図52Dは、COPAK組換え体によるVero細胞およびHeLa細胞におけるCMV gBの発現を示す。(35Sメチオニンで放射標識した感染細胞由来の細胞および培地画分をモルモット抗CMVgB抗体で免疫沈降したもの;vP993(COPAK親株)(レーン1)、全gBを発現するvP1126(レーン2)、トランスメンブレン部位の無いgBを発現するvP1128(レーン3)、およびトランスメンブレン部位が無く且つ切断部位が変性されたgBを発現するvP1145(レーン4)のそれぞれによる感染由来のVero培地(A)、HeLa培地(B),Vero細胞(C)、およびHeLa細胞(D)画分を示している。右端のレーンは分子量マーカーを示す。
図53Aおよび図53Bは、Vero細部およびHeLa細胞のワクシニア感染を、ワクシニア初期タンパク質E3Lの発現によって検出したものである。(35Sメチオニンで放射標識した感染細胞由来の細胞画分をウサギ抗p25(E3L)抗体で免疫沈降させた;vP993(レーン1)、vP1126(レーン2)、vP1128(レーン3)、およびvP1145(レーン4)による感染由来のVero細胞(A)およびHeLa細胞(B)画分を示す;右端のレーンは分子量マーカーである。)
図54は、Vero細胞、HeLa細胞およびMRC−5細胞によるCMB gBの産生を比較して示すものである。vP1145(レーン1、2、3)またはvP993(レーン4、5、6)を感染させた後、MRC−5細胞(レーン1、4)、Vero細胞(レーン2、5)またはHeLa細胞(レーン3、6)由来の培地にSDS−PAGEおよびウエスタンブロット分析を行った;CMB gBの検出にはモノクローナル抗体CH380を用いた;レーンMには分子量マーカーを示す。)
図55は、幾つかのモノクローナル抗体およびモルモット抗gB抗体によるCMVの免疫沈降を示す。(vP993(レーン1)、vP1126(レーン2)、vP1128(レーン3)、およびvP1145(レーン4)を感染させたVero細胞由来の放射標識した培地画分を、モルモット抗CMV gB抗体またはモノクローナル抗体13−127、13−128、CH380、HCMV34、もしくはHCMV37で免疫沈降させた;左端のレーンは分子量マーカーを示す。)
図56は、CMV gBイムノアフィニティクロマトグラフィカラムからの画分および層(ベッド)物質のウエスタンブロット分析を示す。(溶出したgB(レーン5)、フロースルー物質(レーン6)、カラムに適用した(かけた)粗製gB(レーン7)を表すカラム19画分をSDS−PAGEおよびモノクローナル抗体CH380を用いるウエスタンブロットにより分析した;カラム19からの層物質(レーン2)、カラム11からの層物質(レーン3)およびカラム7で精製したgB(レーン4)についても分析を行った;分子量マーカーはレーン1に示されている。)
図57は、イムノアフィニティクロマトグラフィカラムから溶出したCMB gBのSDS−PAGE分析を示す。(カラム8から溶出した画分8.16から8.22までを10%ゲル上で還元条件下に電気泳動によって分離し、銀染色した。)
図58は、イムノアフィニティにより精製したCMV gBの5つのバッチについてのSDS−PAGE分析を示すものである。(バッチ1から5までのサンプル(レーン1〜5)を10%ゲル上で還元条件下に電気泳動により分離し、クーマーシーブルーで染色した;レーンMは分子量マーカーを含む。)
図59および図59Aは、イムノアフィニティで精製したCMV gBの特性を示す。(図58Aおよび図58Bに示すようにSDS−PAGE分析したバッチ5にデンシトメーターを走査して、各バンドを同定した(レーン7のラベル1〜8)。図59Aは、レーン7のデンシトメーター記録を示す。)
図60Aおよび図60Bは、イムノアフィニティ精製したCMV gBのイムノブロット分析を示す。(精製したHIV env(レーン1)、アフィニティ精製したCMV gB(レーン2)、粗製CMV gB(レーンB3)、またはモノクローナル抗体CH380(レーンA3)を10%ゲル上で電気泳動により分離し、ニトロセルロースペーパーに転写し、そして、ヤギ抗マウスIgG(A)またはモノクローナル抗体CH380(B)を用いてマウスIgGのHおよびL鎖またはCMVgBの存在を探査した;レーン4には分子量マーカーを示す。)
図61Aおよび図61Bは、アフィニティ精製したgBの免疫沈降/イムノブロット分析を示す。(イムノアフィニティで精製したgB(A)または粗製gB(B)を、モノクローナル抗体CH380(レーン1)、13−127(レーン3)、HCMV37(レーン4)またはHCMV34(レーン5)で免疫沈降させた;それらの免疫沈降物を10%ゲル上で還元条件下に電気泳動により分離し、ニトロセルロースに転写し、モルモット抗CMV gB抗体を用いてgBの存在を探査した;右端のレーンは分子量マーカーである。
図62Aおよび図62Bは、アフィニティ精製したCMV gBのイムノブロット分析を示す。(Vero細胞リゼイト(レーンA3、B2)、CEFリゼイト(レーンA2)、ワクシニア感染Vero細胞(レーンB3)、粗製CMV gB(レーン4)、アフィニティ精製したCMV gB(レーン5)または精製HIV env(レーン6)を10%ゲル上で還元条件下に電気泳動により分離し、ニトロセルロースに転写して、ウサギ抗Vero細胞抗体を用いてVero細胞タンパク質の存在(A)、またはウサギ抗ワクシニア抗体を用いてワクシニアタンパク質の存在(B)を探査した;分子量マーカーはレーン1に示す。)
図63Aから図63Cは、H6をプロモータとするHCMVpp65および42KをプロモータとするHCMVpp150およびALVAC配列(C6遺伝子座をはさむ)のDNA配列(SEQ ID NO:188)を示す。(H6をプロモータとするCMVpp65の5′末端は496位にある。CMVpp65をコードする配列は620位から2302位までである。42KをプロモータとするCMVpp150は2341位にある。CMVpp150をコードする配列は2406位から5543位までである。)
図64Aおよび図64Bは、C7 ORF(tk)を含有するカナリアポックスDNAの5798bpフラグメントのDNA配列(SEQ ID NO:189)を示す。(C8 ORFは4412位で開始され4951位で終結する。)
図65Aおよび図65Bは、H6をプロモータとするHCMVgLおよびALVAC配列(C7遺伝子座をはさむ)のDNA配列を示す。(H6をプロモータとするCMVgLの5′末端は2136位にある。CMVgLをコードする配列は2260位から3093位までである。)
図66Aおよび図66Bは、H6をプロモータとするHCMVgLおよびH6をプロモータとするHCMV IE1−エクソン4遺伝子およびALVAC配列(C7遺伝子座をはさむ)のDNA配列(SEQ ID NO:190)を示す。H6をプロモータとするCMVgLの5′末端は3476位である。CMVgLをコードする領域は3600位から4433位までである。H6をプロモータとするIE1−エクソン4の5′末端は3469位にある。CMV IE1−エクソン4をコードする領域は3345位から2128位までである。)
図67は、トランスメンブレン領域および細胞質尾部を欠失したHCMVgHのDNA配列(SEQ ID NO:191)を示す。
図68Aおよび図68Bは、H6をプロモータとするHCMVgL遺伝子および42Kをプロモータとする端部切断HCMVgH遺伝子およびNYVAC配列(ATI遺伝子座をはさむ)のDNA配列(SEQ ID NO:191)を示す。(H6をプロモータとするCMVgL遺伝子の5′末端は2669位にある。CMVgLをコードする領域は2793位から3626位までである。42KをプロモータとするCMVgH遺伝子の5′末端は2650位にある。一部切除されたCMVgHをコードする配列は2584位から434位までである。)
発明の詳細な説明
新しいワクシニアワクチン株を開発するために、NYVAC(vP866)、すなわち、ワクシニアウイルスのコペンハーゲンワクチン(Copenhagen)株を、既知または予想される毒性(ビルレンス)因子をコード化するゲノムの6つの可欠領域を欠失させることにより変性した。配列の欠失については以下詳細に記載されている(米国特許第5,364,773号を参照)。ワクシニアの制限断片(フラグメント)、オープンリーディングフレームおよびヌクレオチド位置の呼称は全て、Goebel等、1990a,bに報告されている用語法に基づいている。
また、挿入する外来遺伝子を受容できるように欠失させる遺伝子座を工夫した。
NYVAC中で欠失された領域を以下に列記する。欠失された領域の略称、およびオープンリーディングフレームの呼称(Goebel等、1990a,b)並びに特定の欠失を含有するワクシニア組換え体の呼称(vP)も併せて記している:
(1)チミジンキナーゼ遺伝子(TK;J2R)vP410;
(2)出血性領域(u;B13R+B14R)vP553;
(3)A型封入体領域(ATI;A26L)vP618;
(4)血球凝集素遺伝子(HA;A56R)vP723;
(5)宿主域遺伝子領域(C7L−K1L)vP804;および
(6)リボヌクレオチドレダクターゼ大サブユニット(I4L)vP866(NYVAC)。
NYVACは、ビルレンスおよび宿主域に関連する遺伝子産生物を含む遺伝子産生物をコードする18のオープンリーディングフレームを欠失させることにより遺伝子工学的手法で得られたワクシニアウイルス株である(Tartaglia他、1992;Goebel他、1990a,b)。宿主域遺伝子を欠失すると、特定の種(例えば、ブタやヒト)由来の組織培養細胞内における該ウイルスの複製能力が減少する(Tartaglia他、1992;Perkus他、1990)。複製能力が減少することの他に、NYVACが高度に弱毒化されたことは以下のような多くの特徴によって示される;(a)ウサギの皮膚に硬結や潰瘍形成がなくなること、(b)投与部位からの迅速なクリアランス、(c)新生マウスに頭蓋内投与した場合、WYETHのような他のワクシニア株に比べて無病毒性が大きくなること、(d)免疫無防備状態の動物に腹膜腔内投与した場合に、死亡、二次障害または播種性感染が起こらなくなること(Tartaglia他、1992)。NYVACが高度に弱毒化する特徴を示すにも拘わらず、NYVACに基づく組換え体は、狂犬病のチャレンジからマウス(Tartaglia他、1992)、日本脳炎ウイルスおよび擬似狂犬病ウイルスのチャレンジからブタ(Brockmeier他、1993;Konishi他、1992)、ならびにウマインフルエンザウイルスのチャレンジからウマ(Taylor他、1993)をそれぞれ防御するのに効果的である。
NYVACは高度に弱毒化されるが、このことは以下のような多くの特徴からも判る:i)新生マウスに脳内接種するとビルレンスが減少すること、ii)遺伝学的に(nu + /nu + )または化学的(シクロホスホアミド)に免疫無防備状態マウスにおける無毒性、iii)免疫無防備状態マウスにおいて、播種性感染が起こらなくなること、iv)ウサギ皮膚の硬結や潰瘍形成がなくなること、v)接種部位からの迅速なクリアランス、vi)多くの組織培養細胞系(ヒト由来のものを含む)において複製能が激減すること。これにも拘わらず、NYVACに基づくベクターは、外来性免疫原に対して優れた応答を誘起し防御免疫を提供する。
生のベクターとしてトリポックスウイルス由来の組換体を用いることによっても組換えサブユニットワクチンが得られる。該ウイルスは本来的にその複製能が鳥類に限られている。TROVACとは、弱毒化家禽ポックスであって、1日齢のヒナへのワクチン接種がライセンスされている家禽ポックスウイルスFP−1ワクチン株からプラークを単離して得られたものである。
ALVACは、弱毒化カナリアポックスを基礎とするベクターであり、ライセンスされているカナリアポックスワクチンKanapox(Tartaglia他、1992)からプラークをクローニングして得られたものである。ALVACの一般的性質には、Kanapoxの一般的性質と同じものがある。外来性免疫原を発現するALVAC系組換えウイルスは、ワクチンベクターとしても有効であることが示されている(Tartaglia他、1993a,b)。例えば、狂犬病ウイルスの糖タンパク質を発現するALVAC組換え体で免疫化されたマウスは、狂犬病ウイルスの致死量チャレンジから防御され(Tartaglia他、1992)、このことはワクチンベクターとしてのALVACの可能性を示唆している。ALVAC由来の組換え体は、さらに、イヌジステンパーウイルスがチャレンジされたイヌ(Taylor他、1992)、狂犬病ウイルスがチャレンジされたイヌ(Perkus他、1994)、ネコ白血病ウイルスがチャレンジされたネコ(Tartaglia他、1993b)、ウマインフルエンザウイルスがチャレンジされたウマ(Taylor他、1993)においても有効であることが証明されている。
このトリポックスベクターは、その複製がトリ類に限定されている。ヒトの培養細胞においては、ウイルスのDNA合成に先行してウイルス複製サイクルの初期にカナリアポックスウイルスの複製は中断してしまう。しかしながら、外来性免疫原を発現するように工夫すれば、哺乳動物細胞中でインビトロで真正な発現とプロセシングが認められ、多くの哺乳動物種に接種すると該外来性免疫原に対する抗体および細胞性免疫応答を誘発し、同種の病原体のチャレンジに対する防御を与える(Taylor他、1992;Taylor他、1993)。カナリアポックス/狂犬病糖タンパク質組換え体(ALVAC−RG;vCP65)に関するヨーロッパおよび米国における最近の第一相臨床試験によれば、この試験ワクチンは、充分に受け入れられるものであり、防御レベルの狂犬病ウイルス中和抗体を誘起することが示された(Cadoz他、1992;Fries他、1992)。事実、ALVAC−RGを投与されたボランティアの反応原性は極めて少なく、そして105.5TCID50の用量でALVAC−RGが2回投与されたワクチン被接種者の全てにおいて狂犬病中和抗体の発現が認められた。さらに、ALVAC−RG被接種者由来の末梢血単核細胞(PBMCs)は、精製狂犬病ウイルスで刺激すると有意レベルのリンパ球増殖を示した(Fries他、1992)。
HIVのエンベロープ糖タンパク質gp160を発現するALVAC組換え体(ALVAC−HIV;vCP125)を用いて第一相ヒト臨床試験を行い、組換えgp160を用いてプライム(一次免疫)/ブースト(追加免疫)プロトコールが実施された。ALVAC−HIVを投与したボランティアの反応原性はきわめて少なく、このワクチンは初回投与でHIV−1のエンベロープに特異的な体液性免疫応答および細胞性免疫応答の両方を誘発した。
最近の研究によれば、プライム/ブーストプロトコールを採用し、外来遺伝子産生物を発現するポックスウイルスによる免疫の後に、該遺伝子産生物を精製したサブユニット製剤を用いてブースト(追加免疫)を行うと、それらの単独を用いて誘発される応答に比べて免疫応答が増大することが示されている。HIV−1のエンベロープ糖タンパク質を発現するワクシニア組換え体で免疫化され且つ精製されたHIV−1エンベロープ糖タンパク質サブユニット製剤がブースト(追加免疫)されたヒトボランティアにおいては、該ワクシニア組換え体または精製されたエンベロープ糖タンパク質のみで免疫化した個体よりもHIV−1中和抗体力価の発現が高い(Graham他、1993;Cooney他、1993)。ALVAC−HIV−1 env組換え体(vCP125)を2回注射して免疫されたヒトにおいては、HIV特異的抗体が出現されなかった。ワクシニアウイルス組み換え体由来の精製rgp160でブーストすると検出可能なHIV−1中和抗体が生じた。さらに、rgp160をブーストすることにより、rgp160に対して特異的なTリンパ球細胞増殖が明らかに大きくなった。このワクチン接種法によれば、エンベロープ特異的細胞障害性リンパ球活性も検出された(Pialoux他、1995)。サル免疫不全症ウイルス(SIV)のエンベロープ糖タンパク質を発現するワクシニアウイルスで免疫化し且つバキュロウイルス由来のSIVエンベロープ糖タンパク質でブーストされたアカゲザルはSIVチャレンジから防御された(Hu他、1991;1992)。同様にして、精製したHCMVgBタンパク質を用いて、NYVACまたはALVAC−gB組換え体によるプライム/ブーストプロトコールを実施することもできる。
また、NYVAC、ALVACおよびTROVACは、以下の点において、あらゆるポックスウイルスの中でも独特であると考えられている。すなわち、米国公衆衛生局のNIH(Institute of Health)の組換えDNA勧告委員会(Recombinant DNA Advisory Committee)は、ウイルスやベクターのような遺伝子材料の物理的封じ込めに関するガイドライン、すなわち、特定のウイルスやベクターの病原性に基づくそれらのウイルスやベクターの利用における安全な取扱に関するガイドラインを出しているが、この物理的封じ込めのレベルをBSL2からBSL1に下げることを認めた。ここで、他のいずれのポックスウイルスもBSL1の物理的封じ込めレベルを満足していない。ワクシニアウイルスのCopenhagen株(最も一般的な天然痘ワクチンである)ですら、これよりも高い物理的封じ込みレベル、すなわち、BSL2を有する。このように、当該分野においては、NYVAC、ALVACおよびTROVACは他のポックスウイルスよりも病原性が低いことが認められている。
CMVは、エイズ患者、骨髄被移植者および新生物疾患(腫瘍性疾患)の免疫抑制治療を受けている患者の発病や死亡の原因となることが多い。CMV感染に対する有効で広く許容された薬剤的治療法はない。1つの方法は、ドナーCMV特異的CTLの半ビボ刺激を行い、骨髄被移植者においてCMV感染により頻発する致命的な肺炎を治療し制御することであろう。事実、CMV CTLクローンの養子移入によるヒトにおけるCMV感染の治療および制御は成功をおさめている(Riddell他、1992)。しかしながら、この例においては、該治療プロトコールに用いたCMV特異的CTLクローンを刺激し維持するためにCMVが用いられた。CTLクローンを半ビボ刺激する目的でCMVを使用することは幾つかの欠点があり、その最も明らかなものは、免疫抑制されている患者に別のCMVを導入する可能性があるということである。抗原特異的な細胞性免疫エフェクター活性を刺激するのに安全で容認できる手段を与えるような免疫治療剤を利用しなければならないということが、養子免疫治療における大きな短所である。タンパク質サブユニットは、安全とは考えられるが、よく知られているようにCTLの刺激能が低い。ペプチドは、一般に安全且つCTL応答を刺激するのも効果的であるが、CTL応答を刺激する能力がきわめて限定的である。すなわち、ペプチドは、一般に、単一のタンパク質に含有されている多くの可能なCTLエピトープのうちの1つのCTLエピトープに対するCTL応答を誘発することしかできない。さらに、ペプチドは、個体群の限定された一部のCTL応答しか刺激しないのが一般的であり、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)の特定のアレルを発現するような個体に限られる。組換えウイルスベクターは、全抗原を発現することができ、個体群の単一部分に対する単一のエピトープに限られないので、CTL活性の優れた誘発剤と考えられる。しかしながら、これらのウイルスベクターの多く(例えば、アデノウイルス)は、複製能があり、この種のプロトコールに使用するのに安全とは限られない。本明細書に含まれるデータによって示されるように、ALVAC組換え体は、哺乳動物細胞内では複製せず、しかも抗原特異的CTL応答を刺激する能力は有するので、ウイルス特異的CTLクローンを半ビボ刺激して免疫治療に適用するための唯一の安全で効果的な方法を提供する。
本発明は、gB、gH、gL、pp150、pp65およびIE1(その一部が切除されたものを含む)をコードするHCMV遺伝子を含有するNYVAC、ALVACおよびワクシニア(WR株)組換え体に関し、その詳細は後の実施例で述べる。
NYVAC、ALVACおよびTROVAC核ベクターの弱毒化プロフィルおよびそれらが体液性免疫応答および細胞性免疫応答を誘発する能力を有することから明らかなように(Tartaglia他、1993a,b;Taylor他、1992;Konishi他、1992)、それらの組換えウイルスは、既述のワクシニア系組換えウイルスよりも顕著な利点を有している。
本発明の組換えウイルスまたはその発現産生物、組成物、例えば、免疫原性、抗原性もしくはワクチン組成物または治療組成物は、非経口経路(皮内、筋肉または皮下)で投与することができる。そのような投与により全身性免疫応答が可能となる。
さらに概説すれば、本発明に従う抗原性、免疫原性もしくはワクチン組成物または治療組成物(本発明のポックスウイルス組換え体を含有する組成物)は、製薬技術分野における当業者に周知の標準的な方法に従って調製することができる。それらの組成物は、患者の年齢、性別、体重、および症状、ならびに投与経路を考慮しながら、適当な投与量で医学的分野の当業者に周知の方法に従って投与することができる。該組成物は、単独投与することもできるが、さらに、本発明の組成物、または他の免疫原性、抗原性もしくはワクチン組成物または治療組成物と同時に、または、それらとともに特定の順序で逐次的に、血清(反応)陽性の個体に投与することもできる。また、該組成物は、単独投与することもできるが、本発明の組成物、または他の免疫原性、抗原性もしくはワクチン組成物または治療組成物と同時に、またはそれらとともに特定の順序で逐次的に、血清(反応)陰性の個体に投与することもできる。他の組成物とは、HCMV由来の精製抗原または組換えポックスウイルスもしくは他のベクター系によって発現されたそのような抗原由来のものが挙げられる。他の組成物としては、また、他のHCMV抗原を発現する組換えポックスウイルスまたは生体応答調節剤が挙げられる。これらの場合においても、患者の年齢、性別、体重および症状ならびに投与経路などの因子を考慮する。
本発明の組成物は、例えば、腔部(例えば、口、鼻、肛門、膣など)投与用の液状製剤、例えば、サスペンション、シロップまたはエリキジールなど;さらには、非経口、皮下、皮内、筋肉内または静脈内投与(例えば、静注)用製剤、例えば、無菌のサスペンションまたはエマルションの形態をとる。それらの組成物においては、組換えポックスウイルスに、適当なキャリア、稀釈剤、または賦形剤、例えば無菌水、生理食塩水、ブドウ糖などを混合させてもよい。
さらに、本発明の組換えポックスウイルスの発現産生物を直接使用して、血清陰性(血清反応陰性)もしくは血清陽性(血清反応陽性)のヒトまたは動物における免疫応答を刺激することもできる。すなわち、上述の組成物における本発明の組換えウイルスの代わりにまたはそれとともに、該発現産生物を使用して本発明に従う組成物とすることもできる。
また、本発明の組換えポックスウイルスおよびそれに由来する発現産生物は、ヒトおよび動物における免疫または抗体応答を刺激し、したがって該産生物は抗原となる。これらの抗体または抗原から、当該技術分野で周知の手法により、モノクローナル抗体を調製することができ、そして、周知の抗体結合分析系、診断キットまたはテスト系においてこれらのモノクローナル抗体または抗原を使用して、特定のHCMV抗原の有無、したがって、(HCMVまたはその他の系において)該ウイルスまた抗原の発現の有無を測定したり、または、該ウイルスまたは抗原に対する免疫応答が刺激されたか否かを判定することができる。これらのモノクローナル抗体または抗原は、免疫吸着クロマトグラフィーに使用されて、HCMVまたは本発明の組換えポックスウイルスの発現産生物を回収したり単離することもできる。
さらに、詳述すれば、本発明に従う組換え体および組成物は、以下のような多くの用途を有する:
(i)血清反応陰性の個体における免疫応答の誘発(ワクチン接種またはワクチン接種の一部として);
(ii)血清反応陽性の個体の治療;および
(iii)ウイルス感染のリスクを伴わないインビトロでのHCMVタンパク質の調製。
本発明の組換えポックスウイルスの発現産生物は、直接使用されて、血清反応陰性もしくは血清反応陽性のヒトまたは動物における免疫応答を刺激することができる。すなわち、本発明の組換えポックスウイルスに代えてまたはそれとともに、該発現産生物を使用して本発明の組成物を調製することもできる。
さらに、本発明の組換えポックスウイルスおよびそれに由来する発現産生物は、ヒトおよび動物における免疫または抗体応答を刺激する。これらの抗体から、当該分野で周知の手法によりモノクローナル抗体を調製することができ、そして、これらのモノクローナル抗体または本発明に従うポックスウイルスの発現産生物もしくは組成物を周知の抗体結合分析系、診断キットまたはテスト系に使用して、特定のHCMV抗原または抗体の有無、したがって、該ウイルスの有無を測定したり、あるいは、該ウイルスまたは抗原に対する免疫応答が刺激されたか否かを判定することができる。これらのモノクローナル抗体を免疫吸着クロマトグラフィーに使用して、HCMVまたは本発明の組換えポックスウイルスの発現産生物を回収、単離または検出することもできる。モノクローナル抗体を製造する方法およびモノクローナル抗体の使用方法、ならびにHCMV抗原(本発明のポックスウイルスの発現産生物および組成物)の使用法などは当該技術分野における当業者には周知である。それらは、診断法、キット、テスト系または分析系などに使用されるとともに、免疫吸着クロマトグラフィーまたは免疫沈降法による物質回収に使用され得る。
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ細胞により産生される免疫グロブリンである。モノクローナル抗体は、単一の抗原決定基に反応し、通常の血清由来の抗体よりも高い特異性を与える。さらに、多数のモノクローナル抗体にスクリーニングを行うことにより、所望の特異性、アビディディ(抗原結合力)およびイソタイプを有する個々の抗体を選択することができる。ハイブリドーマ細胞系は、化学的に同一の抗体の恒常的且つ安価な供給源となり、そして、そのような抗体の調製は容易に標準化できる。モノクローナル抗体を産生する方法は当該技術分野における当業者には周知であり、例えば、Koprowski他による米国特許第4,196,265号1983年3月8日発行)を参考に引用しておく。
モノクローナル抗体の用途も既知である。そのような用途の一つは診断法に利用するものであり、例えば1983年3月8日付でDavid,G.およびGreene,H.に付与された米国特許第4,376,110号を引用しておく。モノクローナル抗体は、免疫吸着クロマトグラフィーにより物質を回収するのにも利用されており、例えば、Milstein,C.による「Scientific American 243:66,70(1980)」を引用しておく。
さらに、本発明に従う組換えポックスウイルスおよびその発現産生物は、インビトロまたは半ビボ(後に患者に再注入)で細胞の応答を刺激するのに使用することができる。患者の血清反応が陰性の場合、再注入により、免疫応答、例えば能動免疫のような免疫または抗原応答を刺激する。血清反応陽性の患者においては、再注入が、HCMVに対する免疫系を刺激または増強する。
従って、本発明の組換えポックスウイルスは以下のような幾つかの用途を有する:血清反応陰性の患者に投与されるような抗原性、免疫性またはワクシン組成物における使用。HCMVに対する免疫系を刺激または増強して治療が必要な血清反応陽性なヒト用組成物への使用。インビトロで抗原性を産生させ、これをさらに、抗原性、免疫性もしくはワクチン組成物または治療組成物に使用すること。以下の用途に使用され得るような抗体(直接投与するか、または本発明の組換えポックスウイルスの発現産生物を投与することによる)または該発現産物または抗原を産生させること:すなわち、診断系、テスト系またはキットに使用して、血清のようなサンプル中における抗原の有無を確認、例えば、血清のようなサンプル中のHTLVの有無を確認したり、あるいは、該ウイルスまたは特定の抗原に対する免疫応答が誘起されたか否かを判定したり、さらには、免疫吸着クロマトグラフィー、免疫沈降またはこれらに類似する手法に使用すること。
さらに、本発明の組換えポックスウイルスは、ハイブリダイゼーションし得るDNAの存否を検出したり、DNAを増幅して、例えば、サンプル中のHCMVを検出し、またはHCMVのDNAを増幅するのに使用することができるプローブまたはPCRプライマー用のDNAを調製するのにも有用である。
本発明の実施態様としてはその他の用途もある。
本発明およびその効果をさらに明らかにするため以下に実施例を示す。
実施例
DNAクローニングおよび合成 標準的な方法(Maniatis他、1982;Perkus他、1985;Piccini他、1987)によりプラスミドを構築し、スクリーニングし培養した。制限エンドヌクレアーゼは、米国メリーランド州Gaithersburgのベセスダーリサーチ・ラボラトリーズ(Bethesda Research Laboratories)、米国マサチューセッツ州Beverlyのニューイングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)、および米国インディアナ州Indianapolisのベーリンガー・マンハイム・バイオケミカルズ(Boehringer Mannheim Biochemicals)から入手した。大腸菌ポリメラーゼのクレノウ断片は、Boehringer Mannheim Biochemicalsから入手した。BAL−31エクソヌクレアーゼおよびファージT4のDNAリガーゼはNew England Biolabsから入手した。各試薬は供給業者の指示に従って使用した。
合成オリゴデオキシリボヌクレオチドは、既述のように(Perkus他、1989)Biosearch 8750またはApplied Biosystems 380B DNA合成装置を用いて調製した。DNA配列決定は、既述の手法に従い(Guo他、1989)シークエナーゼ(Sequenase)を用いて(Tabor他、1987)ジデオキシ−チェインターミネーション法により(Sanger他、1977)行った。配列確認のためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるDNA増幅(Engelke他、1988)は、自動式Perkin Elmer Cetus DNA熱サイクル装置(DNA Thermal Cycler)によりカスタム合成オリゴヌクレオチドプライマーおよびGeneAmp DNA増幅試薬キット(米国コネチカット州Norwalkのパーキン・エルマー・シータス(Perkin Elmer Cetus)社製)を用いて実施した。プラスミドからの過剰DNA配列の欠失は、制限エンドヌクレアーゼ分解、その後、BAL−31エクソヌクレアーゼによる制限分解および合成オリゴヌクレオチドによる突然変異法(Mandecki,1986)により行った。
細胞、ウイルスおよびトランスフェクション ワクシニアウイルスのコペンハーゲン(Copenhagen)株の起源および培養条件は既に明らかにされている(Guo他、1989)。組換えによる組換えウイルスの調製、ニトロセルロースフィルターを用いるインサイトウハイブリダイゼーションおよびβ−ガラクトシダーゼ活性を利用するスクリーニングについては既に明らかにされている(Piccini他、1987)。
ワクシニアウイルスのCopenhagen株およびNYVACの起源および培養条件は既に明らかにされている(Guo他、1989;Tartaglia他、1992)。組換えによる組換えウイルスの調製、ニトロセルロースフィルターを用いるインサイトウハイブリダイゼーション、およびβ−ガラクトシダーゼを利用するスクリーニングについては既に明らかにされている(Panicali他、1982;Perkus他、1989)。
カナリアポックスウイルスの親株(Rentschler株)はカナリアのワクシニア菌株である。このワクチン株は、野生型の単離物から入手され、ニワトリ胚繊維芽細胞を用いる200回以上の継代培養により弱毒化されたものである。そのマスターウイルス種株は寒天培地下の4回の連続的なプラーク精製に供され、そのプラーククローンの1つが5回の追加の継代培養により増幅され、その後、このストックウイルスが親ウイルスとしてインビトロ組換え試験に使用されてきた。このプラーク精製カナリアポックス単離物がALVACと命名されている。
FP−1と命名された家禽ポックスウイルス(FPV)株については既に明らかにされている(Taylor他、1988a)。これは、日齢のヒナのワクチン接種に有用な弱毒化ワクチン株である。親ウイルス株Duvetteは、フランスにおいてニワトリヒナから家禽ポックス疥癬として入手された。このウイルスが胚鶏卵での約50回の連続的な継代培養の後、ニワトリ胚繊維芽細胞における25回の継代培養により弱毒化された。該ウイルスは4回の連続的なプラーク精製に供された。プラークの1つが単離され、初代CEF細胞中で増幅され、TROVACと命名されたストックウイルスが樹立された。
NYVAC、ALVACおよびTROVAC各ウイルスベクターおよびそれらの誘導体の増殖については既に記述されている(Piccini他、1987;Taylor他、1988a,b)。増殖にベロ(Vero)細胞やニワトリ胚繊維芽細胞(CEF)を使用することも既に明らかにされている(Taylor他、1988a,b)。
NYVACおよび特に実施例1から6に関しては、米国特許第5,364,773号を参照しており、本明細書に引用しておく。
実施例1−チミジンキナーゼ遺伝子(J2R)を欠失させたプラスミドpSD460の構築
図1に関連して、プラスミドpSD406は、pUC8にクローニングしたワクシニアHindIII J(位置83359〜88377)(83359〜88377位)を含有する。pSD406をHindIIIとPvuIIで切断し、HindIIIの左側の1.7kbのフラグメントを、HindIII/SmaIで切断したpUC8にクローニングしてpSD447を調製した。pSD447は、J2Rの全遺伝子を含有する(位置83855〜84385)。開始コドンはNlaIII部位内に含まれており、また、終止コドンはSspI部位内に含まれている。転写の方向は図1内の矢印で示す。
左側のフランキングアームを得るために、pSD447から0.8kbのHindIII/EcoRIフラグメントを分離し、次いでNlaIIIで分解して0.5kbのHindIII/NlaIIIフラグメントを分離した。以下の配列を有するアニーニングした合成オリゴヌクレオチドMPSYN43/MPSYN44(SEQID NO:1/SEQ ID NO:2)を0.5kbのHindIII/NlaIIIフラグメントと連結(ライゲート)し、HindIII/EcoRIで切断したpUC18ベクタープラスミドに導入して、プラスミドpSD449を得た。
ワクシニアの右側のフランキングアームおよびpUCベクター配列を含有する制限酵素フラグメントを得るために、ワクシニア配列内でSspI(部分的)を用い、またpUC/ワクシニア結合部においてHindIIIを用いてpSD447を切断して、2.9kbのベクターフラグメントを分離した。このベクターフラグメントを、以下の配列を有するアニーリングした合成オリゴヌクレオチドMPSYN45/MPSYN46(SEQ ID NO:3/SEQ ID NO:4)と連結して、pSD459を得た。
左側フランキングアームと右側フランキングアームを結合させて1つのプラスミドとするために、pSD449から0.5kbのHindIII/SmaIフラグメントを分離し、これを、HindIII/SmaIで切断されたpSD459ベクタープラスミドに連結してpSD460を調製した。このpSD460をドナープラスミドとして用い、野性型親ワクシニアウイルスCopenhagen株VC−2との組換えを実施した。鋳型としてMPSYN45(SEQ ID NO:3)およびプライマーとして相補的な20マー(20mer)オリゴヌクレオチドMPSYN47(SEQ ID NO:5)(5′TTAGTTAATTAGGCGGCCGC3′)を用いるプライマー延長法により32Pがラベルされたプローブを合成した。組換えウイルスvP410の同定はプラークハイブリダイゼーションにより行った。
実施例2−出血性領域(B13R+B14R)を欠失させたプラスミドpSD486の構築
図2において、プラスミドpSD419は、pUC8にクローニングされたワクシニアSalI G(位置160,774〜173,351)を含有する。pSD422は、右側に隣接するワクシニアSalIフラグメントSalI G(位置173,351〜182,746)(pUC8にクローニングされている)を含有している。出血性領域u、B13R−B14R(位置172,549〜173,552)が欠失されたプラスミドを構築するため、左側フランキングアーム源としてpSD419を用い、また、右側フランキングアーム源としてpSD422を用いた。u領域の転写方向は図2の矢印で示す。
pSD419から非所望配列を除去するために、NcoI/SmaIを用いてpSD419を分解し、次いで大腸菌のクレノウ断片を用いる平滑末端化および連結(ライゲーション)を行うことにより、NcoI部位(位置172,253)の左側の配列を除去してプラスミドpSD476を得た。B14Rの終結コドンにおけるHpaIを用いるpSD422の分解およびNruIによる分解によりワクシニアの右側フランキングアーム0.3kbを得た。この0.3kbのフラグメントを単離、pSD476から単離された3.4kbのHincIIベクターフラグメントに連結して、プラスミドpSD477を得た。pSD477におけるワクシニアu領域の部分欠失位置は三角形で示している。pSD477における残りのB13Rコード配列を除去するため、ClaI/HpaIを用いる酵素分解を行い、得られたベクターフラグメントを、以下の配列を有するアニーリングされた合成オリゴヌクレオチドSD22mer/SD20mer(SEQ ID NO:6/SEQ ID NO:7)に連結して、pSD479を調製した。
pSD479は、開始コドン(下線)を含有し、その後にBamHI部位がある。uプロモーターの制御下にB13−B14(u)欠失位置に大腸菌ベーターガラクトシダーゼを入れるために、ベーターガラクトシダーゼ遺伝子(Shapira他、1983)を含有する3.2kbのBamHIフラグメントをpSD479のBamHI部位に挿入して、pSD479BGを調製した。このpSD479BGをドナープラスミドとして、ワクシニアウイルスvP410との組換えを実施した。組換えワクシニアウイルスvP533を、発色性基質X−galの存在下に青色のプラークとして分離した。vP533においては、B13R−B14R領域が欠失され、ベーターガラクトシダーゼによって置換されている。
vP533からベーターガラクトシダーゼを取り除くために、ポリリンカー領域を含有するがu欠失結合部に開始コドンを有しないpSD477の誘導体であるプラスミドpSD486を用いた。先ず、上述のpSD477由来のClaI/HpaIベクターフラグメントを、以下の配列を有するアニーリングされた合成オリゴヌクレオチドSD42mer/SD40mer(SEQID NO:8/SEQ ID NO:9)に連結して、プラスミドpSD478を調製した。
次に、pUC/ワクシニア結合部におけるEcoRI部位を破壊するため、EcoRIを用いてpSD478を酵素分解し、その後、大腸菌ポリメラーゼのクレノウ断片を用いる平滑末端化および連結(ライゲーション)を行うことにより、pSD478E-を得た。このpSD478E-をBamHIおよびHpaIを用いて分解し、以下に示す配列を有するアニーリングされた合成オリゴヌクレオチドHEM5/HEM6(SEQ ID NO:10/SEQ ID NO:11)に連結して、プラスミドpSD486を調製した。
pSD486をドナープラスミドとして用い、組換えワクシニアウイルスvP533との組換えを行ってvP553を得た。このvP553は、X−galの存在下に明瞭なプラークとして単離された。
実施例3−ATI領域(A26L)を欠失させたプラスミドpMP494Δの構築
図3において、pSD414は、pUC8にクローニングされたSalI Bを含有する。A26L領域の左側の非所望DNA配列を取り除くために、pSD414を、ワクシニア配列内でXbaIを用いて切断し、またpUC/ワクシニア結合部においてHindIIIを用いる切断を行い、次に、大腸菌ポリメラーゼのクレノウ断片を用いる平滑末端化および連結を行うことにより、プラスミドpSD483を得た。A26L領域の右側の非所望ワクシニアDNA配列を除去するために、EcoRIを用いてpSD483を切断し(位置140,665およびpUC/ワクシニア結合部)、連結処理(ライゲーション)を行ってプラスミドpSD484を形成した。A26Lコード領域を取り除くため、NdeI(部分的)を用いてA26LのORFの少し上流を切断し(位置139,004)且つHpaIを用いてA26LのORFの少し下流を切断(位置137,889)した。5.2kbのベクターフラグメントを単離し、これを以下の配列を有するアニーリングされた合成オリゴヌクレオチドATI3/ATI4(SEQ ID NO:12/SEQ ID NO:13)と連結して、A26Lの上流領域を再構成し、下記の配列に示すようなBalII、EcoRIおよびHpaIの制限部位を含有する短いポリリンカー領域とA26LのORFを置換した。
得られたプラスミドをpSD485と命名した。pSD485のポリリンカー領域におけるBalII部位およびEcoRI部位は唯一のものではないので、BglIIを用いる分解(位置140,136)およびpUC/ワクシニア結合部におけるEcoRIによる分解を行い、その後、大腸菌ポリメラーゼのクレノウ断片を用いる平滑末端化および連結(ライゲーション)により、プラスミド483(上述)から非所望のBalII部位およびEcoRI部位を除去した。得られたプラスミドをpSD489と命名した。pSD489由来でA26LのORFを含有する1.8kbのClaI(位置137,198)/EcoRI(位置139,048)フラグメントを対応する0.7kbでポリリンカーを含有するpSD485由来のClaI/EcoRIフラグメントと置換することによりpSD492を得た。このpSD492のポリリンカー領域におけるBglII部位およびEcoRI部位は唯一のものである。
pSD492のBglII部位に、11kDaのワクシニアプロモーター(Bertholet他、1985;Perkus他、1990)の制御下に大腸菌ベーターガラクトシダーゼ遺伝子(Shapira他、1983)を含有する3.3kbのBglIIカセットを挿入して、pSD493KBGを形成した。このプラスミドpSD493KBGを用いて、レスキューウイルスvP553との組換えを行った。A26L欠失領域にベーターガラクトシダーゼを含有する組換えワクシニアウイルスvP581が、X−galの存在下に青色のプラークとして単離された。
ワクシニア組換えウイルスvP581からベーターガラクトシダーゼを欠失させるプラスミドを調製するために、以下の配列を有する合成オリゴヌクレオチドMPSYN177(SEQ ID NO:14)を用いる突然変異法(Mandeck、1986)によりプラスミドpSD492のポリリンカー領域を欠失させた。
得られたプラスミドpMP494Δにおいては、位置[137,889〜138,937]をカバーし、A26LのORF全体を含むワクシニアDNAが欠失されている。このpMP494Δとベーターガラクトシダーゼ含有ワクシニア組換え体vP581との間の組換えにより、ワクシニア欠失変異体vP618が得られ、X−galの存在下に明瞭なプラークとして単離された。
実施例4−血球凝集素遺伝子(A56R)を欠失させたプラスミドpSD467の構築
図4において、ワクシニアSalI G制限酵素フラグメント(位置160,744〜173,351)は、HindIII A/B結合部(位置162,539)を包含している。pSD419は、pUC8にクローニングされたワクシニアSalI Gを含有する。血球凝集素(HA)遺伝子の転写方向は図4における矢印で示されている。HindIII B由来のワクシニア配列の除去には、ワクシニア配列内およびpUC/ワクシニア結合部においてHindIIIを用いるpSD419の酵素分解を行い、その後、連結処理(ライゲーション)した。得られたプラスミドpSD456は、左側が0.4kbのワクシニア配列および右側が0.4kbのワクシニア配列で挟まれたHA遺伝子(A56R)を含有する。A56Rをコードする配列を除去するために、A56Rコード配列の上流をRsaI(部分的;位置161,090)により、また、該遺伝子の末端近傍をEag1(位置162,054)によりpSD456を切断した。pSD456から3.6kbのRsaI/EagIベクターフラグメントを単離し、以下の配列を有するアニーリングした合成オリゴヌクレオチドMPSYN59(SEQID NO:15)、MPSYN62(SEQ ID NO:16)、MPSYN60(SEQ ID NO:17)およびMPSYN61(SEQ ID NO:18)に連結(ライゲート)して、A56RのORFの上流のDNA配列を再構成し、A56RのORFを下記に示すようなポリリンカー領域と置換した。
得られたプラスミドがpSD466である。このpSD446におけるワクシニア欠失は位置[161,185〜162,053]を包含する。pSD466における欠失部位は図4では三角形で示されている。
pSD466のBglII部位に、11kDaのワクシニアプロモーター(Bertholet他、1985;Guo他、1989)の制御下に大腸菌ベーターガラクトシダーゼ遺伝子(Shapira他、1983)を含有する3.2kbのBglII/BamHI(部分的)カセットを挿入して、pSD466KBGを形成した。このプラスミドpSD466KBGを用いて、レスキューウイルスvP618との組換えを行った。A56R欠失部位にベーターガラクトシダーゼを含有する組換えワクシニアウイルスvP708が、X−galの存在下に青色プラークとして単離された。
ドナープラスミドpSD467を用い、vP708からベーターガラクトシダーゼ配列を除去した。pSD467はpSD466と同じであるが、但し、EcoRI/BamHIを用いるpSD466の分解、それに続く大腸菌ポリメラーゼのクレノウ断片を用いる平滑末端化および連結処理(ライゲーション)によりpUC/ワクシニア結合部からEcoRI部位、SmaI部位およびBamHI部位が取り除かれている。vP708とpSD467との間に組換えを行うことにより組み換えワクシニア欠失変異体vP723が得られ、X−galの存在下に明瞭なプラークとして単離された。
実施例5−オープンリーディングフレーム[C7L−K1L]を欠失させたプラスミドpMPCSK1Δの構築
図5に関し、次のワクシニアクローンを利用してpMPCSK1Δを構築した。pSD420は、SalI HでpUC8にクローニングされたものである。pSD435は、KpnI FでpUC18にクローニングされたものである。SphIでpSD435を切断してpSD451を形成した。このpSD451においては、HindIII MにおけるSphI部位(位置27,416)の左側のDNA配列が除去されている(Perkus他、1990)。pSD409は、HindIII MでpUC8にクローニングされたものである。
ワクシニアから[C7L−K1L]遺伝子群を除去する基質を得るために、先ず、以下のように、ワクシニアのM2L欠失座に大腸菌ベーターガラクトシダーゼを挿入した。pSD409においてBglII部位を取り除くために、BglIIを用いてワクシニア配列(位置28,212)およびBamHIを用いてpUC/ワクシニア結合部において該プラスミドを切断し、次いで連結処理(ライゲーショん)を行い、プラスミドpMP409Bを形成した。唯一のSphI部位(位置27,416)においてpMP409Bを切断した。以下の配列の合成オリゴヌクレオチドを用いる突然変異法(Guo他、1990;Mandecki,1986)によりM2Lをコードする配列を除去した。
得られたプラスミドpMP409Dは、上記のようにM2L欠失座に挿入された唯一のBglII部位を含有する。BglIIで切断されたpMP409Dに、11kDaのプロモーター(Bertholet他、1985)の制御下に大腸菌ベーターガラクトシダーゼ遺伝子(Shapira他、1983)を含有する3.2kbのBamHI(部分的)/BglIIカセットを挿入した。得られたプラスミドpMP409DBG(Guo他、1990)をドナープラスミドとして用い、レスキューワクシニアウイルスvP723との組換えを行った。M2L欠失座に挿入されたベーターガラクトシダーゼを含有する組換えワクシニアウイルスvP784が、X−galの存在下に青色プラークとして単離された。
ワクシニア遺伝子[C7L−K1L]が欠失されたプラスミドを、SmaI、HindIIIで切断され、大腸菌ポリメラーゼのクレノウ断片で平滑末端化されたpUC8に組み込んだ。ワクシニアHindIII C配列から成る左側のフランキングアームを得るために、pSD420をXbaI(位置18,628)で分解した後、大腸菌ポリメラーゼのクレノウ断片を用いる平滑末端化およびBglII(位置19,706)を用いる分解を行った。ワクシニアHindIII K配列から成る右側のフランキングアームを選るには、pSD451をBglII(位置29,062)およびEcoRI(位置29,778)で分解した。得られたプラスミドpMP581CKは、HindIII CのBglII部位(位置19,706)とHindIII KのBglII部位との間のワクシニア配列が欠失されている。プラスミドpMP581CKにおけるワクシニア配列の欠失部位は図5に三角形で示している。
ワクシニア欠失部の過剰なDNAを除去するため、プラスミドpMP581CKをワクシニア配列内のNcoI部位(位置18,811;19,625)において切断し、Bal−31エクソヌクレアーゼを用いて処理し、さらに、以下の配列を有する合成オリゴヌクレオチドMPSYN233(SEQ ID NO:20)を用いる突然変異法(Mandecki,1986)に供した。
得られたプラスミドpMPCSK1Δは、12のワクシニアリーデンフレーム[C7L−K1L]を包含する18,805〜29,108位置のワクシニア配列が欠失されている。pMPCSK1Δとベーターガラクトシダーゼ含有ワクシニアウイルスvP784との間に組換えを行わせることにより、ワクシニア欠失変異体vP804が得られ、X−galの存在下に明瞭なプラークとして単離された。
実施例6−リボヌクレオチドレダクターゼ大サブユニットを欠失させたプラスミドpSD548の構築
図6において、プラスミドpSD405は、pUC8にクローニングされたワクシニアHindIII I(位置63,875〜70,367)を含有する。このpSD405をワクシニア配列内でEcoRIにより、また、pUC/ワクシニア結合部においてはSmaIにより消化分解し、連結処理(ライゲーション)することによりプラスミドpSD518を形成した。pSD548の構築に用いたワクシニア制限フラグメントは、全て、このpSD518由来のものである。
ワクシニアのI4L遺伝子は、67,371〜65,059の位置に延在している。I4Lの転写方向は、図6において矢印で示されている。I4Lのコード配列の一部が欠失したベクタープラスミドを得るために、pSD518をBamHI(位置65,381)およびHpaI(位置67,001)を用いて分解し、且つ、大腸菌のクレノウ断片を用いて平滑末端化した。この4.8kbのベクターフラグメントを、ワクシニアの11kDaのプロモーター(Bertholet他、1985;Perkus他、1990)の制御下に大腸菌ベーターガラクトシダーゼ遺伝子(Shapira他、1983)を含有する3.2kbのSmaIカセットに連結して、プラスミドpSD524KBGを得た。このpSD524KBGをドナープラスミドとして、ワクシニアウイルスvP804との組換えを行った。I4L遺伝子の部分欠失位置にベーターガラクトシダーゼを含有する組換えワクシニアウイルスvP855が、X−galの存在下に青色プラークとして単離された。
ベーターガラクトシダーゼおよび残存するI4LのORFをvP855から欠失させるために、欠失プラスミド548を構築した。以下に詳述し且つ図6に示すように、左側および右側のワクシニアフランキングアームをそれぞれ別個にpUC8に組み込んだ。
左側のワクシニアフランキングアームを受け入れるベクタープラスミドを構築するため、pUC8をBamHI/EcoRIで切断し、以下の配列を有するアニーリングされた合成オリゴヌクレオチド518A1/518A2(SEQ ID NO:21/SEQ ID NO:22)に連結して、プラスミドpSD531を形成した。
RsaI(部分的)およびBamHIでpSD531を切断し、2.7kbのベクターフラグメントを単離した。BglII(位置64,459)でpSD518を切断して0.5kbのフラグメントを単離した。これらの2つのフラグメントを互いに連結して、I4Lのコード配列の左側の完全なワクシニアフランキングアームを含有するpSD537を形成した。
右側のワクシニアフランキングアームを受け入れるベクタープラスミドを構築するため、BamHI/EcoRIでpUC8を切断し、以下に示す配列を有するアニーリングされた合成オリゴヌクレオチド518B1/518B2(SEQID NO:23/SEQ ID NO:24)に連結して、プラスミドpSD532を形成した。
このpSD532をRsaI(部分的)/EcoRIで切断して2.7kbのベクターフラグメントを単離した。pSD518を、ワクシニア配列内をRsaI(位置67,436)により、また、ワクシニア/pUC結合部をEcoRIによって切断して0.6kbのフラグメントを単離した。I4Lをコードする配列の右側の完全なフランキングアームを含有するpSD538を調製した。
右側のワクシニアフランキングアームは、pSD538から0.6kbのEcoRI/BglIIフラグメントとして単離し、EcoRI/BglIIで切断されたpSD537内に連結した。得られたプラスミドpSD539においては、I4LのORF(位置65,047〜67,836)がポリリンカー領域によって置換されており、該領域は左側を0.6kbのワクシニアDNAにより、また右側を0.6kbのワクシニアDNAにより挟まれており(フランキングされており)、これらは全てpUCバックグランド内にある。ワクシニア配列内の欠失部は、図6において三角形で示している。pSD539のpUC誘導部分のベーターガラクトシダーゼが、組換えワクシニアウイルスvP855内のベーターガラクトシダーゼと組換えを行う可能性を回避するため、pSD539からワクシニアI4L欠失カセットを取り除いてpRC11とした。このpRC11は、すべてのベーターガラクトシダーゼが除去され、ポリリンカー領域で置換されたpUC誘導体である(Cokins他、1990)。pSDをEcoRI/PstIで切断して1.2kbのフラグメントを単離した。このフラグメントを、EcoRI/PstIで切断したpRC11(2.35kb)に連結して、pSD548を形成した。pSD548とベーターガラクトシダーゼ含有ワクシニア組換え体vP855との間に組換えを行わせることにより、ワクシニア欠失変異体vP866が得られ、X−galの存在下に明瞭なプラークとして単離された。
組換えワクシニアウイルスvP866由来のDNAの分析は、制限酵素分解、次にアガロースゲル上の電気泳動法により行った。制限パターンは予測どおりであった。鋳型としてvP866および上で詳述した6つの欠失遺伝子座を挟むプライマーを用いるポリメラーゼチェイン反応(PCR)(Engelke他、1988)により予測された大きさのDNAフラグメントが得られた。PCRで得られたフラグメントの欠失接合領域近傍の配列分析により、接合が期待どおりであることが確認された。上述したような6つの欠失部を有するように工夫した組換えワクシニアウイルスvP866をワクシニアウイルス株「NYVAC」と命名した。
実施例7−NYVACへの狂犬病糖タンパク質G遺伝子の挿入
ワクシニアH6プロモーター(Taylor他、1988a,b)の制御下に狂犬病(ウイルス)糖タンパク質Gをコードする遺伝子をTK欠失プラスミドpSD513に挿入した。pSD513は、ポリリンカーが存在している点を除いては、pSD460(図1)と同一である。
図7に示すように、pSD460をSmaIで切断し、以下の配列を有するアニーリングされた合成オリゴヌクレオチドVQ1A/VQ1B(SEQ IDNO:25/SEQ ID NO:26)に連結することにより該ポリリンカーを挿入することにより、ベクタープラスミドpSD513を形成した。
このpSD513をSmaIで切断し、ワクシニアH6プロモーター(Taylor他、1988a,b)の制御下に狂犬病糖タンパク質Gをコードする遺伝子を含有し、SmaI末端から成る1.8kbのカセットに連結した。得られたプラスミドをpRW842と命名した。このpRW842をドナープラスミドとして用い、NYVACレスキューウイルス(vP866)と組換えを行った。狂犬病糖タンパク質Gをコードする配列に対する32Pラベル化プローブを用いるプラークハイブリダイゼーションにより組換えワクシニアウイルスvP879を同定した。
本発明の変性組換えウイルスは、組換えワクチンベクターとして幾つかの利点を有する。すなわち、ベクターのビルレンスが弱毒化されているので、ワクチン接種による被接種者が無制御(ランナウェー)感染する可能性が減少し、さらに、感染者から非感染者への伝染や環境の汚染も少なくするという利点を有する。
さらに、本発明の変性組換えウイルスは、インビトロ培養される細胞内で遺伝子産生物を発現させるのに用いることもでき、このためには、該細胞内で遺伝子産生物をコードし発現する外来遺伝子を有する本発明の変性組換えウイルスを該細胞に導入すればよい。
実施例8−狂犬病ウイルス糖タンパク質Gを発現するALVAC組換え体の構築
この実施例は、カナリアポックスウイルスベクターALVACおよびカナリアポックス−狂犬病ウイルス組換え体ALVAC−R(vCP65)の調製ならびにその安全性と効力について記述するものである。
細胞およびウイルス 親カナリアポックスウイルス(Rentschler株)はカナリア用ワクチン株の1つである。このワクチン株は野性型の単離物から入手され、にわとり胚繊維芽細胞による200回以上の連続的な継代培養により弱毒化されたものである。マスターウイルス種株は、寒天培地下の4回の連続的なプラーク精製に供され、さらに、プラーククローンの1つが5回の追加の継代培養により増殖された後、該保存ウイルスが親ウイルスとしてインビトロ組換え試験に用いられた。プラーク精製されたカナリアポックス単離物は、ALVACと命名されている。
カナリアポックス挿入ベクターの構築 880bpのカナリアポックスPvuIIフラグメントを、PUC9のPvuII部位間にクローニングしてpRW764.5を調製した。このフラグメントの配列は、図8(SEQ ID NO:27)において1372〜2251位置に示されている。C5として指称されているオープンリーディングフレームの範囲を確認した。このオープンリーディングフレームは、該フラグメント内の位置166(166位)で開始され且つ位置487(487位)で終結されていることが明らかにされた。オープンリーディングフレームを阻害することなくC5の欠失を行った。位置167から位置455までの塩基を、配列(SEQ ID NO:28)GCTTCCCGGGAATTCTAGCTAGCTAGTTTと置換した。この置換配列は、HindIII、SmaIおよびEcoRI挿入部位と、それに後続しワクシニアウイルスRNAポリメラーゼにより認識される翻訳停止シグナルおよび転写終結シグナルを含有している(Yuen他、1987)。C5オープンリーディングフレームの欠失は以下のように行った。プラスミドpRW764.5をRsaIで部分的に切断して線状の生成物を単離した。このRsaI線状フラグメントをBglIIで再切断し、かくして、位置156から位置462までのRsaIからBglIIまでが欠失したpRW764.5フラグメントを単離し、以下の合成オリゴヌクレオチド用ベクターとして使用した。
オリゴヌクレオチドRW145およびRW146をアニーリングし、上述のpRW764.5 RsaIおよびBglIIベクターに挿入した。得られたプラスミドをpRW831と命名した。
狂犬病G遺伝子を含有する挿入ベクターの構築 以下にpRW838の構築について説明する。AからEのオリゴヌクレオチド(狂犬病ウイルスGのH6プロモーターの開始コドンと重なっている)をpUC9にクローニングしてpRW737とした。オリゴヌクレオチドA〜EはH6プロモーターを含有し、NruIで始まり、狂犬病ウイルスGのHindIIIに到り、その後にBglIIがある。オリゴヌクレオチドA〜E((SEQ ID NO:31)〜(SEQ ID NO:35))の配列は以下のとおりである。
また、アニーリングされたオリゴヌクレオチドA〜Eを図解すると次のようになる。
オリゴヌクレオチドA〜Eをキナーゼ処理し、アニーリングし(95℃で5分間、その後、室温に冷却)、pUC9のPruII部位間に挿入した。得られたプラスミドpRW737をHindIIIおよびBglIIで切断し、ptg155PRO(Kieny他、1984)のHindIII−BglIIの1.6kbpフラグメント用ベクターとして使用してpRW739を調製した。ptg155PROHindIII部位は、狂犬病Gの翻訳開始コドンの86bp下流にある。また、ptg155PROにおいて、BglIIは狂犬病G翻訳停止コドンの下流にある。pRW739をNruI用いて部分切断し、さらにBglIIを用いて完全切断し、かくして、既知のH6プロモーター(Taylor他、1988a,b;Guo他、1989;Perkus他、1989)の3′末端から狂犬病Gの全遺伝子までを含有する1.7kbpのNruI−BglIIフラグメントをpRW824のNruI部位とBamHI部位との間に挿入した。得られたプラスミドをpRW832と命名する。pRW824に挿入することにより、NruIのH6プロモーターの5′が付加された。SmaIの前のBamHIのpRW824の配列は、GGATCCCCGGG(SEQ ID NO:36)である。pRW824は、ワクシニアウイルスのH6プロモーターに非関連遺伝子が正確に結合されたプラスミドである。NruIおよびBamHIを用いる分解によりこの非関連遺伝子を切除した。このpRW832のSmaIの1.8kbpフラグメント(H6をプロモーターとする狂犬病Gを含有している)をpRW831のSmaIに挿入して、プラスミドpRW838を調製した。
ALVAC−RGの調製 既知のリン酸カルシウム沈降法を用いて(Panicali他、1982;Piccini他、1987)、ALVAC感染初代CEF細胞にpRW838をトランスフェクトさせた。特定の狂犬病Gプローブに対するハイブリダイゼーションにより陽性クローンを選択し、純粋な集団が得られるまで6回の連続的なプラーク精製に供した。次に、代表プラークを増殖して、得られたALVAC組換え体をALVAC−RG(vCP65)と命名した(図9Aおよび図9B参照)。配列分析により、狂犬病G遺伝子がALVACゲノム内に正しく挿入され、その後の変異が生じていないことを確認した。
免疫蛍光 成熟狂犬病ウイルス粒子が形成される最終段階においては、糖タンパク質成分はゴルジ体から形質膜に移送され、そこで、細胞膜質および細胞膜の外表面にあるタンパク質本体にカルボキシ末端を延ばしながら蓄積する。ALVAC−RG内で発現された狂犬病糖タンパク質が正しく存在していることを確認するために、ALVACまたはALVAC−RGで感染された初代CEF細胞上で免疫蛍光測定法を実施した。この免疫蛍光法は、既知の手法(Taylor他、1990)に従い、狂犬病Gのモノクローナル抗体を用いて行った。ALVAC−RGを感染させたCEF細胞においては強い表面蛍光が検出されたが、親のALVACには蛍光は認められなかった。
免疫沈降 初代CEF細胞、ベロ(Vero)細胞(アフリカミドリザルの腎臓細胞由来の細胞系、ATCC#CCL81)、およびMRC−5細胞(正常なヒト胎児肺臓由来の繊維芽細胞類似の細胞系、ATCC#CCL171)から予め形成した単層に、既知の手法(Taylor他、1990)に従い、放射ラベルした35S−メチオニンの存在下に、10pfu/細胞で、親ウイルスALVACおよび組換えウイルスALVAC−RGを接種した。免疫沈降反応は、狂犬病G特異的モノクローナル抗体を用いて行った。組換えALVAC−RGの場合は、分子量がおよそ67kDaの狂犬病特異的糖タンパク質が効率的に発現していることが検出された。非感染細胞または親ウイルスであるALVACが感染された細胞においては、狂犬病特異的生成物の検出は認められなかった。
連続継代培養実験 ALVACを広範囲の非トリ種に適用した研究では、感染の増幅や明白な病気は認められていない(Taylou他、1991b)。しかしながら、親ウイルスおよび組換えウイルスのいずれも非トリ細胞では増殖できないことを確認するため、連続的な継代培養実験を行った。
以下の細胞基質に2種類のウイルス、すなわち、ALVACおよびALVAC−RGを接種して10代の連続的な盲検(ブラインド)継代培養を行った。
(1)11日齢の白色レグホーン胚由来の初代ニワトリ繊維芽(CEF)細胞;
(2)ベロ(Vero)細胞−アフリカミドリザルの腎臓細胞由来の無限増殖性細胞(ATCC#CCL81);および
(3)MRC−5細胞−ヒト胎児の胚組織由来の二倍体細胞系(ATCC#CCL171)。
各細胞につき3ヶの60mm培養皿を用い各皿に2×106ヶの細胞が含有されるようにして、0.1pfu/細胞のm.o.i.で最初の接種を行った。培養皿の1つは、DNA複製の阻害剤であるシトシンアラビノシド(Ara C)40μg/mlの存在下に接種を行った。37℃で1時間の吸着期間の後、接種物を除去し、単層を洗浄して非吸着ウイルスを取り除いた。この時点で、培地の置換を行い、2つの培養皿(サンプルt0およびサンプルt7)には5mlのEMEM+2%NBCSを入れ、また、第3番目の培養皿(サンプルt7A)には40μg/mlのAra Cを含有する5mlのEMEM+2%NBCSを入れた。サンプルt0は−70℃で凍結して残存する導入ウイルスの指標とした。サンプルt7およびサンプルt7Aは37℃で7日間培養し、その後、内容物をハーベストし、間接音波処理により細胞を破砕した。
各細胞基質のサンプルt7の1mlを同じ細胞基質の3つの培養皿に稀釈せずに接種し(サンプルt0、t7およびt7Aとする)、さらに、初代CEF細胞の1つの培養皿に接種した。サンプルt0、サンプルt7およびサンプルt7Aは継代用に処理した。CEF細胞への追加接種は、非トリ細胞中に存在し得るようなウイルスに対する高感度検出用の増殖工程に供した。
この操作を繰り返して、10代の連続ブラインド継代培養(CEFおよびMRC−5)または8代の連続ブラインド継代培養を行った。サンプルを凍結し、3回解凍して初代CEF単層上で滴定を行うことにより分析した。
次に、寒天培地下にCEF単層上でプラーク滴定を行うことによりウイルス収量を測定した。実験結果をまとめて図1および図2に示す。
この結果から、親のALVACおよび組換え体のALVAC−RGの両方とも、CEF単層上で複製を持続する能力を有し力価の損失はないことが示されている。ベロ(Vero)細胞においては、ALVACについては第2代後、また、ALVAC−RGについては第1代後にウイルスのレベルは検出レベル以下に低下した。MRC−5においても同様の結果が示され、第1代後にはウイルスが検出されなかった。図1および図2には第4代までの結果しか示していないが継代培養を第9代(Vero)および第10代(MRC−5)まで行ったところ、これらの非トリ細胞においてはいずれのウイルスも検知可能となるように成長適応化していなかった。
第1代においては、MRC−5細胞およびVero細胞のt7サンプルには比較的高レベルのウイルスが存在した。しかしながら、このレベルは、t0サンプルおよびウイルスの複製が起こり得ないようにシトシンアラビノシドの存在下に接種を行ったt7Aサンプルにおいて見られるレベルに等しかった。このことは、非トリ細胞において7日目に認められたウイルスレベルは、残存ウイルスを表し新たに複製されたウイルスではないことを示している。
分析をさらに高感度にするため、各細胞基質から7日目にハーベストしたものの一部を、許容CEF単層に接種し、細胞変性効果(CPE)が認められた時にハーベストするか、またはCPEが示されない場合は7日目にハーベストした。この実験結果を図3に示す。許容細胞基質による増殖後においも、MRC−5細胞およびVero細胞においては、更に2代の継代でウイルスが検出されるでけであった。これらの結果から、採用した条件下では、Vero細胞またはMRC−5細胞においてはいずれのウイルスも増殖できるように適応化できないことが明らかである。
アカゲザルへの接種 HIVに関して血清反応陽性の4匹のアカゲザルに先ずALVAC−RGを接種した(表4)。100日後、該動物に再接種してブースター効果を調べ、さらに、追加の7匹のアカゲザルにいろいろな投与量で接種を行った。適当な間隔で血液を抜き出し、56℃において30分間の加熱不活性化後、迅速蛍光フォーカス阻止(Rapid Fluorescent Focus Inhibition:RFFI)分析法(Smith他、1973)により狂犬病ウイルス抗体の存在を血清分析した。
チンパンジーへの接種 オトナのオスのチンパンジー2匹(体重範囲50〜65kg)に、vCP65を1×107pfuで筋肉内また皮下接種した。該動物の反応を観察し、また、規則的な間隔で採血を行いRFFIテスト(Smith他、1973)により抗狂犬病ウイルス抗体の存在を分析した。最初の接種から13週間後、同じ投与量で該動物に再接種した。
マウスへの接種 グループ分けしたマウスに、異なるバッチ由来のvCP65をいろいろな希釈度で50〜100μl接種した。マウスへの接種は肉趾に接種した。14日目に、狂犬病ウイルスのビルレント性CVS株を15〜43マウスLD50で頭蓋内接種することによりマウスのチャレンジを行った。マウスの生存率を監視し、接種から28日目における50%防御投与量(PD50)を求めた。
イヌおよびネコへの接種 10匹のビーグル犬(5ヶ月齢)および10匹のネコ(4ヶ月齢)に、ALVAC−RGを6.7または7.7log10TCID50で皮下接種した。4匹のイヌおよび4匹のネコには接種を行わなかった。接種後14日および28日後にそれらの動物の採血を行い、RFFIテストにより抗狂犬病ウイルス抗体を分析した。6.7log10TCID50のALVAC−RGが投与された動物については、接種後29日目に、NYGS狂犬病ウイルスチャレンジ株の3.7log10(マウスLD50)(ビーグル犬)または4.3log10(マウスLD50)(ネコ)を用いてチャレンジを行った。
リスザルへの接種 各グループに4匹のリスザル(Saimiri Sciureus)から成る3グループのリスザルに、3種類のウイルスの1つ、すなわち、(a)ALVAC(カナリアポックス親ウイルス)、(b)ALVAC−RG(狂犬病G糖タンパク質を発現する組換体、または(c)vCP37(ネコ白血病ウイルスのエンベロープ糖タンパク質を発現するカナリアポックス組換え体)を接種した。接種はケタミン麻酔下に実施した。各動物は以下を同時に投与された:(1)乱刺を行わずに右目の表面に滴注された20μl、(2)口中に数滴として100μl、(3)右腕の外表面の毛をそった皮膚内の2つの注射部位にそれぞれ100μl;および(4)右大腿の前部筋肉に100μl。
4匹のサルに各ウイルスを接種し、2匹についてはlog10pfuとして全量5.0とし、また、他の2匹についてはlog10pfuとして7.0とした。規則的な間隔で該動物の採血を行い、血清を分析してRFFIテスト(Smith他、1973)により抗狂犬病ウイルス抗体を調べた。接種に対する該動物の反応を毎日観察した。最初の接種から6ヶ月後、ALVAC−RGを投与された4匹のリスザル、vCP37が当初投与された2匹のリスザルに加えて非投与のリスザル1匹に、ALVAC−RGを6.5log10pfuで皮下接種した。血清を分析して、RFFIテスト(Smith他、1973)により狂犬病ウイルス中和抗体の存在を調べた。
ヒト細胞系へのALVAC−RGの接種 当該ウイルスが複製しない非トリ細胞内で外来遺伝子が効率的に発現されるか否かを判定するため、5種類の細胞系、すなわち、1種類のトリ系および4種類の非トリ系について分析を行い、ウイルス収量、外来狂犬病G遺伝子の発現およびウイルス特異的DNA蓄積を調べた。接種した細胞は次のとおりである。
(a)Vero細胞。アフリカミドリザル腎臓細胞。ATCC#CCL81。
(b)MRC−5細胞。ヒト胎児肺細胞。ATCC#CCL171。
(c)WISH細胞。ヒト羊膜由来。ATCC#CCL25。
(d)Detroit-532細胞。ヒト包皮由来。ダウン症候群。ATCC#CCL54。
(e)初代CEF細胞。
11日齢白色レグホーン胚由来のニワトリ胚繊維芽細胞を陽性対象として用いた。接種は全て、下記のように予め調製した2×106細胞から成る単層に実施した。
A.DNA分析法。
各細胞系について3ヶの培養皿を用い、被試験ウイルスを5pfu/細胞で接種し、さらに、各細胞系について1ヶの培養皿を追加し非接種用とした。培養皿の1つについては、40μg/mlのシトシスアラビノシド(Ara C)の存在下に培養を行った。37℃において60分間の吸着期間の後、接種物を除き、単層を2回洗浄して非吸着ウイルスを除去した。次いで、培地(Ara Cを含有するもの、または含有しないもの)の交換を行った。培養皿の1つ(Ara Cを含有しないもの)からは、時間ゼロにおけるサンプルとして細胞をハーベストした。残りの皿は、37℃で72時間保持した後、細胞をハーベストしてDNA蓄積の分析に用いた。2×106細胞から成る各サンプルを40mMのEDTAを含有する0.5mlのリン酸緩衝塩溶液(PBS)に再懸濁して37℃で5分間保温した。42℃で予め加温し120mMのEDTAを含有する等体積の1.5%アガロースを細胞懸濁液に添加してゆっくり混合した。該懸濁液をアガロースプラグモールドに移し、少なくとも15分間放置して硬化させた。次いで、アガロースプラグを取り除き、該プラグを覆うような体積の溶解緩衝液(1%のサルコシル、100μg/mlのプロティナーゼK10mMのトリスHCl pH7.5、200mlのEDTA)内で50℃において12〜16時間インキュベートした。次に、該溶解緩衝液を5.0mlの無菌0.5×TBE(44.5mlのトリス−ボロン酸、44.5mMのボロン酸、0.5mMのEDTA)と置換して、TBE緩衝液を3回変えながら4℃において6時間平衡化した。パルス電場式電気泳動装置を用いて細胞RNAおよびDNAからプラグ内にあるウイルスDNAを分別した。電気泳動は、ランプ50〜90秒とし0.5×TBE内で15℃において、180Vで20時間実施した。ラムダDNAを分子量標準としてDNAを走行させた。電気泳動後、エチジウムブロミドで染色することによりウイルスDNAのバンドを可視化した。次にDNAをニトロセルロース膜に移し、精製ALVACゲノムDNAから調製した放射ラベル化プローブを用いて分析した。
B.ウイルス収量の推定
培養皿への接種は上記と同じように行った。但し、感染多重度は0.1pfu/細胞とした。感染72時間後、凍結および解凍サイクルを3回連続的に実施することにより細胞を溶解した。CEF単層上でプラーク滴定を行うことによりウイルス収量を調べた。
C.狂犬病G遺伝子の発現の分析
組換えウイルスまたは親ウイルスを10pfu/細胞の多重度で培養皿に接種するとともに、追加の皿を非感染ウイルス対照用とした。1時間の吸着期間の後、培地を除去し、無メチオニン培地と置換した。30分後、この培地を、25μCi/mlの35S−メチオニンを含有する無メチオニン培地と置換した。感染細胞を一晩かけて(約16時間)ラベル化し、次に、A緩衝液を添加することにより溶解した。狂犬病G特異的モノクローナル抗体を用い既知の手法に従い(Taylor他、1990)、免疫沈降を実施した。
結果:ウイルス収量の推定
細胞当たり0.1pfuで接種した72時間後に行ったウイルス収量を求める滴定分析の結果を表5に示す。この結果が示すように、トリ細胞においては強い感染が生じ得るが、4種類の非トリ細胞系においてはこの方法ではウイルス収量の増加を検知することはできない。
ウイルスDNAの蓄積の分析 DNA複製の前または後に非トリ細胞におけるウイルス複製の阻害が生じたか否かということを判定するために、細胞リゼイト(溶菌液)からのDNAを電気泳動法により分画し、ニトロセルロースに移し、ウイルス特異的DNAを探査した。非感染CEF細胞、時間ゼロにおけるALVAC−RG感染細胞、接種72時間後のALVAC−RG感染CEF細胞および接種72時間後のALVAC−RG感染CEF細胞(40μg/mlのシトシンアラビノシド存在下)由来のDNAはいずれもある程度のバックグランド活性を示したが、これは、おそらく、放射ラベル化ALVAC DNAプローブの調製に際して混入したCEF細胞DNAに因るものと思われる。しかしながら、接種72時間後のALVAC−RG感染CEF細胞は、約350kbpの領域にALVAC特異的ウイルスDNAの蓄積を表す強いバンドを示した。DNA合成阻害剤であるシトシンアラビノシドの存在下に培養物をインキュベートしてもそのようなバンドは検出されなかった。
Vero細胞で得られた相応するサンプルについては、時間ゼロにおけるALVAC−RG感染Vero細胞において約350kbpにおいて非常に弱いバンドが示された。このレベルは残存ウイルスを表すものであった。接種72時間後にはバンド強さが増加されており、このことは、Vero細胞においてはある程度のレベルのウイルス特異的DNA複製が起こったが、ウイルス子孫の増加を生じさせはしなかったということを示唆している。MRC−5細胞で得られた相応するサンプルにおいては、これらの条件下でウイルス特異的DNAの蓄積は検出されなかった。この実験を広げ、追加のヒト細胞系、すなわちWISH細胞およびDetroit-532細胞についても実施した。ALVAC感染CEF細胞を陽性対照とした。ALVAC−RGが接種されたWISH細胞およびDetroit細胞のいずれにおいてもウイルス特異的DNA蓄積は検出されなかった。なお、この方法の検出限界は完全には確認されておらず、ウイルスDNA蓄積は起こっているのかも知れないが、該方法の感度よりも低いレベルであろう。3H−チミジンを導入することによりウイルスDNA複製が測定されるようにした他の実験は、Vero細胞およびMRC−5細胞に関して得られた上記の結果を支持している。
狂犬病遺伝子の発現分析 ウイルス遺伝子、特に挿入された外来遺伝子の発現が、ウイルスDNA複製の非存在下においてもヒト細胞系で起こっているか否かを判定するために、ALVACおよびALVAC−RGを感染させたトリ系細胞および非トリ系細胞由来の35S−メチオニンラベル化リゼイトについて免疫沈降実験を実施した。狂犬病G特異的モノクローナル抗体を用いる免疫沈降実験の結果、ALVAC−RGを感染させたCEF、Vero、MRC−5、WISHおよびDetroitの各細胞において67kDaの糖タンパク質から成る特異的免疫沈降が認められた。非感染細胞および親ウイルスを感染させた細胞のリゼイトのいずれにおいても、そのような特異的狂犬病遺伝子産物は検出されなかった。
この実験結果が示唆することは、分析したヒト細胞系においては、ALVAC−RG組換え体はH6初期/後期ワクシニアウイルスプロモータの転写制限下に感染を開始し外来遺伝子産物を発現させることはできるが、DNA複製を介する複製は進行せず、また、検知され得るようなウイルス子孫は産生しなかったということである。Vero細胞においては、ある程度のレベルのALVAC−RG特異的DNA複製は認められたが、この方法ではウイルス子孫は検出されなかった。これらの結果から、分析したヒト細胞系においてはウイルス複製の阻止はDNA複製の開始前に起こるが、Vero細胞においてはウイルスDNA複製の開始後に該阻止が起こるのであろう。
ALVAC−RG内で発現された狂犬病糖タンパク質が免疫原性を有するか否かを判定するために、多くの動物種に該組換え体を接種してテストした。現行の狂犬病ワクチンの効力はマウスモデル系で評価されている。そこで、ALVAC−RGを用いて同様のテストを行った。感染力価が6.7から8.4(log10(TCID50/ml))の範囲にある9種類のウイルス調製物(種ウイルスを10回組織培養による継代培養して得られたワクチンバッチ(J)を含む)を連続的に稀釈し、50〜100μlの稀釈液を4週齢から6週齢のマウスの肉趾に接種した。14日後に、マウスLD50(対照用マウスグループにおける致死滴定量から求めた)が15から43の狂犬病ウイルスCVS株300μlを頭蓋内投与してマウスをチャレンジした。PD50(50%防御投与量)として表す効力をチャレンジから14日目に計算した。実験結果を表6に示す。この結果から、ALVAC−RGは狂犬病ウイルスのチャレンジに対して恒常的にマウスを防御することができ、PD50値は、3.33から4.56の範囲にあり平均値3.73(STD0.48)であることが示されている。追加実験として、6.0log10TCIDのALVAC−RGを含有するウイルス50μlまたは等体積の非感染細胞懸濁液をオスのマウスに頭蓋内接種した。接種から1日、3日および6日目にマウスを殺し、その脳を取り出し、固定化し薄片に切断した。組織病理学検査によれば、マウス内にALVAC−RGの神経毒性の証拠は認められなかった。
イヌおよびネコに対するALVAC−RGの安全性および効力を評価するため、14ヶ月齢および5ヶ月齢のビーグル犬、ならびに14ヶ月齢および4ヶ月齢のネコから成るグループの分析を行った。該イヌおよびネコのそれぞれについて4匹にはワクチン接種を行わなかった。該動物の5匹には6.7log10TCID50で皮下投与した。動物の採血を行い、抗狂犬病抗体の分析を行った。非投与または6.7log10TCIDのALVAC−RGを投与した動物に対しては、接種から29日目に、NYGS狂犬病ウイルスチャレンジ株の3.7log10(マウスLD50)(ビーグル犬、側部筋に)または4.3log10(マウスLD50)(ネコ、頚部に)を用いてチャレンジを行った。実験結果を表7に示す。
ネコおよびイヌのいずれにおいて且ついずれの接種ウイルス投与量においても接種に対する副作用は認められなかった。6.7log10TCID50で免疫された5匹のイヌのうち4匹は、ワクチン接種14日目に抗体力価を示し、29日目には全てのイヌが抗体力価を有した。全てのイヌが、4匹の対照用イヌの3匹を殺したようなチャレンジに対して防御された。ネコの場合、6.7log10TCID50で投与された5匹のネコのうち、3匹が14日目に特異的抗体力価を有し、そして、29日目には全てが陽性となったが、平均抗体力価は低く2.9IUであった。対照用ネコの全てを殺したようなチャレンジに対して、5匹のネコのうち3匹が生存した。7.7log10TCID50で免疫したネコは全て14日目に抗体力価を示し、29日目には幾何平均力価は8.1国際単位(IU)であった。
ALVAC、ALVAC−RGおよび非関連カナリアポックスウイルス組換え体の接種に対するリスザル(Saimiri Sciureus)の免疫応答を試験した。幾つかのグループに分けたリスザルに上述したように接種を行い、血清を分析して狂犬病特異的抗体の有無を調べた。皮内投与に対する軽い典型的な皮膚反応を除いては、いずれのサルにおいても副作用は認められなかった。投与から2日目および4日目だけは、皮内接種後の皮膚損傷部から少量の残留ウイルスを単離した。7日目以降は全て陰性であった。筋注に対する局部反応は認められなかった。ALVAC−RGが接種された4匹のサルは全て、RFFIテスト測定すると、抗狂犬病血清中和抗体を産生してた。最初の接種から約6ヶ月後、全てのサルおよび追加の非接種サル1匹に、左側大腿部の外表面に6.5log10TCID50のALVAC−RGを皮下経路で再接種した。血清を分析して抗狂犬病抗体の存在を調べた。結果を表8に示す。
狂犬病ウイルス未感染の5匹のサルのうち4匹は、ALVAC−RGの接種7日後に血清学的応答を示した。接種11日後には5匹のサル全てが検出可能な抗体を有した。予め狂犬病糖タンパク質に感染された4匹のサルについては、ワクチン接種から3日から7日の間に血清中和力価に有意の増加が認められた。この結果から、リスザルにALVAC−RGをワクチン接種すると副作用は生じず、一次中和抗体応答が誘起され得ることが示された。ALVACに、または非関連外来遺伝子を発現するカナリアポックス組換え体に予め感染していても、再ワクチン接種に際して、抗狂犬病免疫の誘発を妨げない。
HIV−2に関して血清反応陽性のアカゲザルにおいてALVAC−RG接種に対する免疫応答を調べた。該動物に上述のように接種を行い、RFFIテストにより抗狂犬病血清中和抗体の有無を分析した。表9に結果を示すように、皮下接種されたHIV−2陽性アカゲザルは、1回の接種から11日目までに抗狂犬病抗体を産生した。最初の接種から約3ヶ月後に与えたブースター接種後に既往応答が検出された。該組換え体が経口投与された動物には何らかの応答も検出されなかった。更に、一連の6匹のアカゲザルに投与量を減少させながらALVAC−RGを筋肉内または皮下投与した。接種された6匹のうち5匹がワクチン接種から14日目までに応答を示したが抗体力価に有意の差は無かった。
以前にHIV感染した2匹のチンパンジーに7.0log10pfuのALVAC−RGを皮下または筋肉内接種した。該接種から3ヶ月後に両チンパンジーに同じ方法で再ワクチン接種した。結果を表10に示す。
筋肉内または皮下接種のいずれにおいても接種に対する副作用は見られなかった。いずれのチンパンジーも初回接種から14日目までに応答し、そして、再接種後に応答の強い増強が検出された。
実施例9−狂犬病糖タンパク質を発現するカナリアポックス(ALVAC−RG;vCP65)を用いるヒトの免疫化
実施例9および図9Aおよび図9Bで記述したようにALBAC−RG(vCp65)を調製した。スケールアップおよびワクチン生産のため、SPF卵由来の初代CEFにおいてALVAC−RG(vCP)を増殖させた。細胞を0.1の多重度で感染させ、37℃において3日間インキュベートした。
該感染細胞から成る無血清培地中で超音波破砕することによりワクチンウイルスの懸濁液を得た。次に、細胞破片を遠心分離とろ過により取り除いた。得られた清澄な懸濁液に凍結乾燥安定剤(アミノ酸の混合物)を加え、単一投与用バイアル内に分散させ、凍結乾燥した。凍結乾燥の前に、無血清培地および凍結乾燥剤の混合物に入れたウイルス懸濁液を連続的に10倍稀釈することにより力価が徐々に低下した3種類のバッチを調製した。
細胞基質、培地およびウイルス種株ならびに最終生成物には品質管理試験を行った。望ましくない特徴は見出されなかった。
前臨床データ インビトロ試験によれば、VERO細胞またはMRC−5細胞はALVAC−RG(vCP65)の増殖を支持せず、8回の連続継代培養(VEROの場合)および10回の連続継代培養(MRCの場合)によって、これらの非トリ細胞系において当該ウイルスが検出され得るように増殖適応化されないことが示された。ALVAC−RG(vCP65)が感染または接種されたヒト細胞系(MRC−5、WISH、Detroit-532、HEL、HNKまたはEBV形質転換リンパ芽球細胞)の分析では、ウイルス特異的DNAの蓄積は認められず、これらの細胞においてはDNA合成の前に複製の阻害が起こることが示唆された。しかしながら、重要なことには、試験された全ての細胞系において狂犬病ウイルス糖タンパク質の発現から、カナリアポックス複製サイクルにおける不稔過程はウイルスDNA複製に先行して起こることが示唆された。
一連の動物実験においてALVAC−RG(vCP65)の安全性と効力が明らかにされた。多数の動物種、例えばカナリア、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、実験用げっ歯類(マウスの乳獣および成獣)、ハムスター、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、リスザル、アカゲザルおよびチンパンジーに、105から108pfuの投与量範囲で接種が行われた。各種の投与経路を検討し、最も一般的には皮下、筋肉内および皮下投与であったが、経口(サル類およびマウス)や頭蓋内投与(マウス)も採用した。
カナリアにおいては、ALVAC−RG(vCP65)は、乱刺部位に「癒着」損傷を引き起こしたが、疾病や死亡の徴候はなかった。ウサギへの皮内接種は典型的なポックスウイルス接種反応を示したが、この反応が拡がることはなく、7日から10日で治癒した。いずれの動物においてもカナリアポックスに因る副作用は無かった。げっ歯類、イヌ、ネコおよび霊長動物にALVAC−RG(vCP)を接種した後、迅速蛍光フォーカス阻害テスト(RFFIT)によって測定すると、抗狂犬病抗体が産生していることにより免疫原性があることが明らかにされた。また、ALVAC−RG(vCP65)で免疫したマウス、イヌ、およびネコに狂犬病ウイルスをチャレンジすることにより防御機能が発現することも明らかにされた。
ボランティア 狂犬病免疫化の前略のない年齢20〜45才の25人の健康な成人を登録した。病歴調査、身体検査および血液の化学分析を行うことにより、これらのボランティアの健康状態を調べた。妊娠、アレルギー症、あらゆる種類の免疫低下症、慢性的な衰弱症、がん、過去3ヶ月以内の免疫グロブリンの投与、およびヒト免疫不全症ウイルス(HIV)またはB型肝炎表面抗原に対する血清反応陽性を有する者は排除した。
試験計画 標準的なヒトジプロイド細胞狂犬病ワクチン(HDC)(フランスLyonのPasteur Merieux Serum & Vaccine製)または対象ワクチンALVAC−RG(vCP65)のいずれかが投与されるようにボランティアを無作為に振り分けた。
この試験は投与量(用量)漸増試験とした。3つのバッチ由来の試験対象ワクチンALVAC−RG(vCP65)を3グループのボランティア(グループA,BおよびC)に2週間間隔で逐次的に使用した。それらの3つのバッチの濃度は、それぞれ、1回の投与当たり、103.5、104.5および105.5TCID50(Tissue Culture Infectious Dose:50%組織培養感染量)とした。
各ボランティアには、2週間間隔で三角筋域に同一のワクチンを2回皮下投与(注射)した。最初の投与時にはボランティアには投与ワクチンの種類を知らせないが、研究者には分かるようにした。
第2回目の投与時に即時過敏症を可及的に少なくするため、実験対象ワクチンの中間用量が投与されるように割り当てられたグループBのボランティアには、1時間前に低用量を投与し、また、高用量グループ(グループC)のボランティアには1時間間隔で低用量および中間用量を逐次投与した。
6ヶ月後、最も高用量のALVAC−RG(vCP65)の被投与者(グループC)およびHDCワクチンの被投与者に第3回目のワクチン投与を行った。次に、該被投与者を無作為に分けて以前と同一のワクチンまたは別のもう一方のワクチンを投与した。このようにして、以下の免疫化スケジュールに対応する4つのグループを構成した:1.HDC、HDC−HDC;2.HDC、HDC−ALVAC−RG(vCP65);3.ALVAC−RG(vCP65)、ALVAC−RG(vCP65)−HDC;4.ALVAC−RG(vCP65)、ALVAC−RG(vCP65)、ALVAC−RG(vCP65)。
副作用の観察 すべての被験者を投与1時間後に観察し、さらに次の5日間にわたり毎日検査した。次の3週間、局部反応および全身反応について尋ね、1週間に2度、電話により質問した。
実験室における分析 登録前、ならびに各投与後2日目、4日目および6日目に血液標本を採取した。実施した分析には、血球数、肝臓酵素およびクレアチンキナーゼの分析を含む。
抗体分析 最初の投与の7日前ならびに実験開始から7日、28日、35日、56日、173日、187日および208日目に抗体分析を行った。
中和抗体のレベルの測定には、迅速蛍光フォーカス阻害テスト(RFIIT)(Smith他、1973)を採用した。カナリアポックス抗体は、直接ELISAにより測定した。これには、抗原、すなわち、0.1%Triton×100で破砕した精製カナリアポックスウイルスの懸濁液をマイクロプレートに被覆した。血清の固定化稀釈液を室温下で2時間反応させ、ペルオキダーゼでラベルした抗ヒトIgGヤギ抗体を用いて反応性抗体を出現させた。結果を490mmにおける光学密度として表した。
分析 25名を被験者として登録し試験を行った。男性が10名、女性が15名であり、平均年齢は31.9才(21才〜48才)であった。3名を除く全てが、以前に種痘のワクチン接種を受けていた。残りの3名の被験者は瘢痕およびワクチン接種の前歴がなかった。3名の被験者に試験対象ワクチンの低用量のそれぞれ(103.5および104.5TCID50)を投与し、9名の被験者には105.5TCID50を投与し、さらに10名の被験者にHDCワクチンを投与した。
安全性(表11) 初回免疫に際して、投与から24時間以内に37.7℃より高い熱を示したのは、HDCを投与された者の1名(37.8℃)および105.5TCID50のvCP65を投与された者の1名(38℃)であった。ワクチン接種によるその他の全身性反応はいずれの被投与者にも見られなかった。
皮下接種によるHDCワクチンの被投与者の9/10に、また、103.5、104.5および105.5TCID50のvCP65被投与者には、それぞれ0/3、1/3および9/9に局部的反応が見られた。
痛覚が最も一般的な症状であったが、常に軽いものであった。他の局所的症状として発赤および硬結があったが、これらも軽く且つ一過性のものであった。すべての症状は一般に24時間以内におさまり、72時間以上持続することはなかった。
血球数、肝臓酵素またはクレアチンキナーゼの値に有意の変化はなかった。
免疫応答:狂犬病に対する中和抗体(表12) 最初の投与から28日後、HDC被投与者のすべてが(感染)防御力価
を有していた。これに対して、ALVAC−RG(vCP65)の被投与者においては、この防御力価に達したのは、グループAおよびB(103.5および104.5TCID50)の被投与者にはなく、またグループでは2/9のみであった。
56日目(すなわち、2回目接種(二次接種)から28日目)に、ALVAC−RG(vCP65)ワクチン被投与者においては、グループAでは0/3、グループBでは2/3およびグループCでは9/9が防御力価を取得し、また、HDC被投与者においては10名の全てにおいて、この防御力価が持続されていた。
56日目における幾何平均力価は、グループA、B、CおよびHDCにおいて、それぞれ、0.05、0.47、4.4および11.5IU/mlであった。
180日目には、すべての被験者において狂犬病抗体力価はかなり低下したが、HCD被投与者のうち5/10、また、ALVAC−RG(vCP65)被投与者のうち5/9においては、最低防御力価0.5IU/ml以上に持続されていた。HCDグループおよびグループCにおける幾何平均力価は、それぞれ、0.51および0.45IU/mlであった。
カナリアポックスウイルスに対する抗体(表13) 高力価被験者にカナリアとの接触の前歴が無いにも拘わらず、0.22から1.23O.D.の広範囲にわたる前免疫(pre-immune)力価が認められた。前免疫力価とその後の第2回目の投与による力価との差の2倍以上増加した場合に血清変換(seroconversion)が起こったと定義すれば、グループBの被験者の1/3、グループCの被験者の9/9に血清変換が起こったが、グループAまたはHDCの被験者には血清変換はなかった。
ブースター投与 6ヶ月後のブースター投与(追加接種)時にはワクチンは充分に許容できるものとなった。HDCブースター被投与者の2/9、また、ALVAC−RG(vCP65)ブースター被投与者の1/10に発熱が見られた。局部反応は、HDCブースター被投与者の5/9、また、ALVAC−RG(vCP65)ブースター被投与者の6/10に認めれた。
観察結果 図11A〜図11Dは、狂犬病中和抗体力価(RFFITによる。単位IU/ml)を示すグラフであり、ボランティアに対するHDCまたはvCP65(105.5TCID)のブースター効果を示している(該ボランティアには以前に同一のワクチンまたはもう一方のワクチンを接種)。ワクチン接種は0日、28日および180日目に実施した。抗体力価の測定は、0日、7日、28日、35日、56日、173日、187日および208日目に行った。
図11A〜図11Bに示すように、ブースター投与するとどの免疫スケジュールでも全ての被験者に狂犬病抗体力価の上昇をもたらした。しかしながら、ALVAC−RG(vCP65)ブースターは、全体的に、HDCブースターよりも低い免疫応答を誘発しており、また、ALVAC−RG(vCP65)、ALVAC−RG(vCP65)−ALVAC−RG(vCP65)の順序から成るグループは、他の3つのグループよりも実質的に力価が低くなっていた。さらに、ALVAC−RG(vCP65)をブースター投与すると、以前にHDCワクチンが投与された被験者の3/5に、また、以前にALVAC−RG(vCP65)で免疫化された被験者の全てに、カナリアポックス抗体力価の上昇をもたらした。
一般的に、vCP65の投与による局所的副作用からウイルスの局所的複製が起こっていることは示されなかった。特に、ワクチン接種後に見られるような皮膚障害はなかった。このように見かけ上はウイルスの複製が無いにも拘わらず、該投与により、カナリアポックスベクターおよび発現された狂犬病糖タンパク質の双方に対する有意量の抗体がボランティアに産生された。
狂犬病中和抗体の分析は、迅速蛍光フォーカス阻害テスト(RFFIT)により実施したが、この方法は、マウスにおける血清中和テストと優れた相関性を有することで知られている。105.5TCID50の被投与者9名のうち5名は、初回投与後の応答レベルが低かった。最も用量(投与量)の高い被投与者全員、また、中間用量の被投与者も3名のうち2名において、2回目の投与後に防御力価を有する狂犬病抗体が得られた。この試験においては、両ワクチンとも、生ワクチンについては、一般的に推奨されているが不活性HDCワクチンには勧められていない皮下投与により接種した。この投与経路を選択したのは、投入部位(注射部位)を入念に調べることができる点において最良であるからであるが、このために、HDC被投与者における抗体の出現が遅くなったことも考えられる:事実、HDC被投与者のいずれも7日目には抗体上昇を示さず、一方、HDCワクチン筋肉内投与する多くの試験においては、被験者の大部分に抗体上昇が認められている(Klietmann他、国際赤十字(ジュネーブ)、1981;Kuwert他、国際赤十字(ジュネーブ)、1981)。しかしながら、本発明は必ずしも皮下投与に限定されるものではない。
被験ワクチンにおける狂犬病中和抗体のGMT(幾何平均力価:geometric mean fiters)は、HDC対照ワクチンよりも低かったが、防御に必要な最低力価を充分に上まわるものであった。3種類の投与量を採用した本試験において得られた明瞭な用量依存性応答が示すように、投与量が高い程、強い応答を誘発する。当業者であれば本明細書の開示から、所与の患者に至適な投与量を選択できることは明らかであろう。
本実施例の他の重要な結果は、抗体応答を増強(ブースト)する能力である。免疫スケジュールの如何に拘わらず6ヶ月目の投与後には全ての被験者に狂犬病抗体力価の上昇が見られており、このことは、カナリアポックスウイルスまたは狂犬病糖タンパク質により誘発された既存の免疫は、当該組換えワクチンまたは従来からのHDC狂犬病ワクチンによるブースター(追加接種)に対する阻害作用を有しないということを示している。このことは、ワクシニア組換え体をヒトに用いた場合、既存の免疫によって免疫応答が阻害されるという従来の知見(Cooney他;Etinger他)とは対照的である。
かくして、本実施例が明示するように、非複製性ポックスウイルスはヒトにおいて免疫化ベクターとして機能することができ、その際、複製性の作用物質が免疫応答に与えるような全ての利点を有しながら、完全に許容性のウイルスが引き起こすような安全上の問題はない。そして、本実施例および他の実施例の教示から、狂犬病ウイルスまたはその他のコードもしくは発現産物を含有する組換え体を投与または免疫接種するに際して、至適な投与量(用量)または投与方式や投与経路を選択することは、インビトロ発現法とともに当業者には明らかであろう。
実施例10−ALVACおよびNYVACと各種のワクシニアウイルス株とのLD 50 の比較
マウス 異系交配したオスのスイス・ウェブスター(Swiss Webster)マウスをTaconic Farms(米国ニューヨーク州Germantown)から購入し、3週齢(「標準」マウス)になって使用に供されるまで、マウス飼料と水を任意に(adlibitum)に与えて飼育した。異系交配したオスとメスのスイス・ウェブスター新生マウスはTaconic Faumsによって実施された計画妊娠に従って入手した。新生マウスは全て出産から2日以内に引き渡されたものである。
ウイルス ALVACは、カナリアポックスウイルスの集団をプラーク精製し、初代ニワトリ胚繊維芽細胞(CEF)内で調製されたものである。ショ糖密度勾配遠心により精製した後、CEF細胞内のALVACのプラーク形成単位を測定した。ワクシニアウイルスのWR(L)変異株はWRの大プラーク表現型を選択することによって得られたものである(Panicali他、1981)。ワクシニアウイルスのWyethワクチン株(New York State Board of Health)はPharmaceuticals Calf Lymph Type vaccine Dryvaxから管理番号302001Bとして入手したものである。ワクシニアウイルスのCopenhagen株VC−2はフランスのInstitute Merieuxから入手した。ワクシニアウイルスのNYVAC株はCopenhagen株VC−2から誘導されたものである。Wyeth株をのぞき、これらの株は全て、アフリカミドリザルの腎臓由来のVero細胞で培養し、ショ糖密度勾配遠心法により精製し、そしてVero細胞上のプラーク形成単位を測定した。Wyeth株はCEF細胞内で増殖し、CEF細胞内のプラーク形成単位を測定した。
接種 各グループ10匹から成る標準マウスにウイルス稀釈液の1つの0.05mlを頭蓋内(ic)接種した。ウイルス稀釈液は保存ウイルス液を連続的に10倍稀釈することによって調製した。場合によっては、保存ウイルス液を稀釈せずに接種した。
各グループ10匹から成る新生マウス(1日齢または2日齢)にも標準マウスと同様にic接種した。但し、接種量は0.03mlとして使用した。
すべてのマウスについて、毎日、接種から14日間(新生マウスの場合)または21日間(標準マウスの場合)にわたって死亡率を観察した。接種の翌朝に死亡したマウスは、外傷による死亡の可能性があるので排除した。
被験個体数の50%を死亡させるのに要する致死量(LD50)は、ReedおよびMuenchの比例法(ReedおよびMuench,1938)に従って求めた。
若い異系交配標準マウスにおけるic投与によるALVACおよびNYVACと各種のワクシニアウイルス株とのLD 50 の比較 若い標準マウスにおいては、NYVACおよびALVACのビルレンス(毒力)は、試験した他のワクシニアウイルス株よりも数桁低かった(表14)。NYVACおよびALVACは、Wyeth株よりも3,000倍以上平常マウスにおけるビルレンスが低く;親株であるVC−2株よりも12,500倍以上ビルレンスが低く;そして、WR(L)変異株よりも63,000,000倍以上ビルレンスが低いことが見出された。これらの結果から、NYVACは他のワクシニアウイルスよりも高度に弱毒化されており、また、ALVACは頭蓋内投与された場合、若いマウスには一般に非ビルレンス性であると考えられる。但し、両者ともきわめて高投与量の場合(ALVACを3.85×108PFU、NYVACを3×108PFU)、未だ不明の機序により、この投与経路によりマウスの死亡をもたらすことがある。
異系交配新生マウスにおけるic投与によるALVACおよびNYVACと各種のワクシニア株とのLD 50 の比較 新生マウスにおける5種類のポックスウイルス株の相対的ビルレンスを頭蓋内(ic)チャレンジモデル系における滴定によって調べた(表15)。LD50の値が示したところによれば、ALVACは、ワクシニアウイルスのWyeth株よりも100,000倍以上ビルレンスが低く;ワクシニアウイルスのCopenhagenVC−2株よりも200,000倍以上ビルレンスが低く;そして、ワクシニアウイルスのWR(L)変異株よりも25,000,000倍以上ビルレンスが低い。但し、試験した最高投与量(6.3×107PFU)においては、100%死亡率となった。6.3×106PFUでは33.3%の死亡率が認められた。最高投与量グループ(約6.3LD50)の平均生存時間(MST)が6.7±1.5日であることから、死因は(未だはっきりしないが)おそらく毒性または外傷性によるものではないであろう。チャレンジ投与量5LD50におけるWR(L)と比較すると、ALVACがチャレンジされたマウスのMSTは有意に長いものであった(P=0.001)。
NYVACと比較すると、Wyethは15,000倍以上ビルレンスが高く;VC−2は35,000倍以上ビルレンスが高く;そして、WR(L)は3,000,000倍以上ビルレンスが高いことが見出された。ALVACの場合と同様に、NYVACの投与量が高くなる(6×108PFUおよび6×107PFU)と、100%死亡率となった。しかしながら、そのような最高用量(380LD50に相応)でチャレンジされたマウスのMSTは僅か2日(2日目に9匹死亡、4日目に1匹死亡)であった。これに対して、最高用量(500LD50に等しい)のWR(L)でチャレンジされたマウスは全て4日目まで生存した。
実施例11.−NYVAC(vP866)およびNYVA−RG(vP879)の評価
免疫沈降 トリ細胞または非トリ細胞から成り予め形成した単層に、親ウイルスであるNYVAC(vP866)ウイルスまたはNYVA−RG(vP879)ウイルスを10pfu/細胞接種した。この接種は2%の透析したウシ胎児血清を添加した無メチオニンEMEM内に実施した。1時間インキュベートした後、接種物を除き、培地を20μCi/mlの35S−メチオニンを含有するEMEM(無メチオニン)と置換した。一晩、約16時間インキュベートした後、緩衝液A(1%のNonidet P-40、10mMトリス(pH7.4)、150mMのNaCl、1mMのEDTA、0.01%のアジ化ナトリウム、アプロチニン500単位/ml、および0.02%のフェニル・メチル・スルホニル・フルオリド)を添加して細胞を溶解した。免疫沈降には、狂犬病糖タンパク質特異的モノクローナル抗体24-3F10(入手先:米国ニューヨーク州AlbanyのGriffith Laboratories,New York State Department of HealthのC.Trinarchi博士)およびラットの抗マウスコンジュゲート(入手先:Boehringer Mannheim Corporation,カタログ番号605-500)を使用した。支持マトリックスとしてプロテインAセファロースCL−48(入手先:米国ニュージャージー州PiscatawayのPharmacia LKB Biotechnology社)を用いた。10%ポリアクリルアミドゲル上で免疫沈降物を分画した(Dreyfuss他、1984)。ゲルを固定化し、蛍光写真に供するため1MのNa−サリシレートで1時間処理し、KodakのXAR−2フィルムに露光して免疫沈降したタンパク質種を現像した。
動物源 ニュージーランド(New zealand)白色ウサギをHare-Marland(米国ニュージャージー州Hewitt)から入手した。3週齢のオスの異系交配スイス・ウェブスター(Swiss Webster)マウス、計画妊娠しているメスの異系交配スイス・ウェブスターマウス、および4週齢のスイス・ウェブスターヌードマウス(nu+nu+)をTaconic Farms社(米国ニューヨーク州Germantown)から入手した。これらの動物は全てNIHのガイドラインに従って飼育した。動物のプロトコールは全てIACUCによって承認されたものである。必要と考えられた場合には、明らかに致命的な疾病を有しているマウスは安楽死させた。
ウサギにおける障害評価 2匹のウサギのそれぞれに、104、105、106、107もしくは108pfuの各被験ウイルスを含有するPBSまたはPBS単独0.1mlを複数部位に皮内接種した。4日目から障害が消散するまでウサギを毎日観察した。硬結および潰瘍形成を測定し記録した。
接種部位からのウイルス回収 1匹のウサギに、106、107もしくは108pfuの各試験ウイルスを含有するPBSまたはPBSのみの0.1mlを複数の部位に皮内接種した。11日目に、ウサギを安楽死させ、各接種部位から採取した皮膚のバイオプシー標本を機械的破砕および間接音波処理により無菌的に調製してウイルスを回収した。CEF単層上のプラーク滴定により感染ウイルスを分析した。
マウス内のビルレンス 各グループ10匹から成るマウス、または5匹から成るヌードマウスに、0.5mlの無菌PBSに溶かしたウイルスの数倍稀釈液の1つをip接種した。実施例11も参照。
シクロホスホアミド(CY)処理 −2日目に4mg(0.02ml)のCY(SIGMA製)をマウスにip注入した後、0日目にウイルス注入を行った。ウイルス注入後、次のようにマウスにCYをip注入した:1日目に4mg;4日、7日および11日目に2mg;14日、18日、21日、25日および28日目に3mg。Coulter計数装置を用い11日目に白血球を計数することにより免疫抑制を間接観察した。平均白血球数は、非処理マウス(n=4)については13,500白血球/μl、また、CY処理した対照マウスについては4,220白血球/μlであった。
LD 50 の計算 ReedおよびMuenchによる比例法(ReedおよびMuench,1938)により、50%死亡率をもたらすのに要する致死量(LD50)を求めた。
マウス内のNYVAC−RGの効力試験 4週齢から6週齢のマウスの肉趾に、VV−RG(Kieny他、1984)、ALVAC−RG(Taylor他、1991b)、またはNYVAC−RGのいずれかの一定範囲稀釈液(50%組織培養感染料(TCID50)として2.8〜8.0)の50〜100μlを接種した。各グループは8匹のマウスから構成した。ワクチン接種後14日目において、狂犬病ウイルスCVS株(0.03ml)の15LD50を頭蓋内接種することによりマウスへのチャレンジを行った。28日目に生存マウスを数え、50%防御投与量(PD50)を求めた。
NYVAC(vP866)の誘導 ワクシニアウイルスのNYVAC株は、Copenhagenワクチン株をプラーククローニングして得られたVC−2から調製されたものである。VC−2からNYVACを調製するためには、本明細書において既述したような一連の操作を行って、18ヶのワクシニアのORF(オープンリーディングフレーム)(ビルレンスに関連する多数のウイルスの機能を含む)を正確に欠失させた。これらの欠失を行うに当たっては、非所望の新規なオープンリーディングフレームが出現しないように設計した。図10は、NYVACを調製するのに欠失させたORFを図示する。図10の上部には、ワクシニアウイルスゲノム(VC−2プラーク単離物、Cophenhagen株)のHindIII制限マップを示す。NYVACを調製するのに逐次欠失させたVC−2の6つの領域を拡げて示している。これらの欠失については本明細書において既述した(実施例1から実施例6)。そのような欠失位置の下に、該位置から欠失させたORFを、その遺伝子産物の機能ないしはホモロジーおよび分子量とともに掲記している。
ヒト組織細胞系におけるNYVACおよびALVACの複製試験 ヒト由来の細胞におけるワクシニアウイルスのNYVAC株(vP866)の複製レベルを調べるため、液体培養条件下、導入多重度0.1pfu/細胞で6種類の細胞系を接種し、72時間インキュベートした。親株のCophenhagenクローン(VC−2)の接種も併せて行った。初代ニワトリ胚繊維芽細胞(CEF)(10〜11日齢のSPF源の胚卵。米国コネチカット州StorrsのSpafas社製)使用して全てのウイルスに対する許容細胞基質とした。2つの基準、すなわち、産生的なウイルス複製が生じているかということ、および、外来抗原が発現しているかということに基づいて培養物の分析を行った。ヒト由来のいろいろな細胞におけるNYVACの複製能を表16に示す。VC−2およびNYVACのいずれもCEF細胞内で複製する能力を有するが、NYVACの方が幾分収量(産生量)が低い。VC−2も、EBV形質転換リンパ球芽細胞系JT−1(エプステインバーウイルスで形質転換されたヒトリンパ球芽細胞系。Rickinso他(1984)を参照)を除き、試験した6種類のヒト由来細胞系で産生的複製能力を有している。これに対して、NYVACは、試験したヒト由来細胞系のいずれにおいてもその複製能力が高度に減弱されている。NYVACを感染させたMRC−5(ATCC#CCL171、ヒト胎児肺由来)、DETROIT532(ATCC#CCL54。ヒト包皮、ダウン症候群)、HEL299(ATCC#CCL137、ヒト胎児肺細胞)、およびHNK(ヒト新生児腎臓細胞。米国メリーランド州WakersvilleのWhittiker Bioproducts社製、カタログ#70-151)から、残存ウイルスレベルを超える感染ウイルスの僅かな増加が見られている。これらの細胞系における複製は、NYVAC感染CEF細胞または親株のVC−2から得られたウイルス収量(産生量)に比較すると有意に減少していた(表16)。注目すべきことには、NYVACおよびVC−2のいずれについても、24時間におけるウイルス収量は72時間の収量に等しい。したがって、該ヒト由来細胞系培養物を更に48時間(ウイルス生成サイクルの2回分)培養させると、相対的なウイルス収量を上昇させたかも知れない。
上記のヒト由来細胞系においては、ウイルス収量が低かったことに一致して、MRC−5およびDETROIT532においてもNYVAC特異的DNAの複製は、検出可能ではあったが、そのレベルは低かった。NYVACを感染させたMRC−5およびDETROIT532細胞系におけるDNA複製レベルは、NYVAC感染CEF細胞で見出されたレベルと比較すると、ウイルス収量において近似していた。その他のヒト由来細胞のいずれにおいてもNYVAC特異的ウイルスDNA複製は見出されなかった。
トリポックスウイルスであるALVACを用いても同様の実験を行った。このウイルス複製の結果も表16に示す。いずれのヒト細胞系においても子孫ウイルス(子ウイルス)は検出されず、カナリアポックスウイルスの宿主域によりトリ種に制限されていることに相反しない。さらに、いずれのヒト由来細胞系においてもALVAC特異的なDNA蓄積は検出されなかったという事実も、それらのヒト由来細胞のおいてALVACの産生的複製が起こらないということに矛盾していない。
ヒト細胞におけるNYVA−RG(vP879)による狂犬病糖タンパク質の発現 産生的ウイルス複製が実質的に起こらない場合においても外来遺伝子の効率的な発現が得られるかということを判定するために、上記と同じ細胞系に、35S−メチオニンの存在下に、狂犬病ウイルス糖タンパク質発現性のNYVAC組換え体(vP879、実施例7)を接種した。該狂犬病糖タンパク質に特異的なモノクローナル抗体を用い、放射ラベルした培養リゼイトから狂犬病糖タンパク質を免疫沈降させた。67kDaのタンパク質の免疫沈降物が得られたが、これは狂犬病糖タンパク質が完全にグリコシレートされた形態に一致する。非感染細胞リゼイトまたは親のNYVACが感染した細胞リゼイトにおいて血清学的に交差性の生成物は検出されなかった。分析した他の細胞においても同様の結果が得られた。
ウサギ皮膚への接種 ワクシニアウイルス株の病原性の尺度として、皮内(id)接種後のウサギの皮膚障害およびその特徴が利用されている(Buller他、1988;Child他、1990;Fenner他、1958;Flexner他、1987;GhendonおよびChernos1964)。そこで、ワクシニア株WR(CV−1細胞ATCC#CCL70をプラーク精製したATCC#VR119として、これらからL変異体として単離、選択されたプラークから成るATCC#VR2035。Panicali他(1981)参照)、WYETH(ATCC#VR325。米国ペンシルバニア州MariettaのWyeth Laboratories社からDRYVACとして市販)、COPENHAGEN(VC−2)およびNYVACを2匹のウサギ(A069およびA128)にid接種した場合の障害の特徴を調べた。これらの2匹のウサギはウイルスに対する全体的な感度が異なっており、ウサギA128の方がウサギA069よりも応答性が低かった。ウサギA128においては障害は比較的軽くて、接種後27日目までに消散した。ウサギA069においては、障害程度は強く(特にWR接種部位)、49日経過後ようやく消散した。また、障害の強さは、リンパ液排出網状組織に対する接種部位の相対的な位置に依存していた。特に脊椎上に位置する部位の障害が強く、脾腹にある障害が消散するのに長い時間を要した。4日目から最後の障害が消えるまで全ての障害を毎日調べ、障害の最大サイズの平均値および消散までの日を求めた(表17)。対照であるPBSの注入部位には局部反応は見られなかった。WR、VC−2およびWYETHワクシニアウイルス株の注入部位には潰瘍性障害が見られた。重要なことは、NYVACの接種部位には硬結または潰瘍性障害が観察されなかったということである。
接種部位における感染性ウイルスの残存 接種部位における各ウイルスの相対的な残存性を調べるため、106、107、または108pfuのVC−2、WR、WYETHまたはNYVACを含有する0.1mlのPBSをウサギの複数部位に皮内接種した。各ウイルスについて、107pfuを脊椎上に投与し、その両側に106および108を投与した。接種部位を11日間にわたって毎日観察した。WRが最も強い反応を示し、次いで、VC−2およびWYETHとなった(表18)。潰瘍が最初に見出されたのは、WRおよびWYETHについては9日目、VC−2については10日目であった。NYVACまたは対照用PBSが接種された部位は硬結または潰瘍形成を示さなかった。接種後11日前に、接種部位から皮膚サンプルを切除し、機械的に破砕し、CEF細胞上でウイルスを滴定した。結果を表18に示す。いずれの場合においても、この時点では投与量よりも多量のウイルスは回収されなかった。ワクシニア株WRの回収量は、ウイルス投与量とは無関係に約106pfuであった。ワクシニア株WYETHおよびVC−2の回収量は投与量と関係なく103から104であった。NYVACを接種した部位からは感染性ウイルスは回収されなかった。
遺伝的または化学的に免疫不全性のマウスへの接種 ヌードマウスに高投与量のNYVAC(5×108pfu)またはALVAC(109pfu)を腹腔内投与したが、10日間の観察期間を通じ、死亡、障害および明らかな疾病を引き起こすことはなかった。これに対して、WR(103から104pfu)、WYETH(5×107または108pfu)またはVC−2(104から109pfu)を接種されたマウスは、先ず趾部に、次いで尾部にポックスウイルスに典型的な播種性障害を示し、その後、幾つかのマウスにおいては睾丸炎が見られた。WRまたはWYETHを感染させたマウスは播種性障害が出現すると、一般的に、最終的には死亡したが、VC−2を感染させたマウスは多くの場合、最終的には回復した。LD50計算値を表19に示す。
さらに詳述すると、VC−2を接種されたマウスは先ず趾部に、そして、それより1〜2日後には尾部に障害(赤色丘疹)を示す。これらの障害は、高投与量(109、108、107および106pfu)を投与されたマウスについては接種後から11〜13日目、105pfuを投与されたマウスにおいては接種後16日目、また、104pfuを投与されたマウスにおいては接種後21日目に出現した。103および104を投与されたマウスにおいては100日間の観察期間中障害は見出されなかった。109および108pfuを投与されたマウスにおいては接種後23日目に、また、他のグループのマウス(107から104pfu)においては、それより約7日後に睾丸炎が認められた。睾丸炎は109および108投与グループにおいて特に強く、次第に後退してはゆくが、100日間の観察期間の終わりまで認められた。数匹のマウスの皮膚には、接種後30〜35日目に幾つかのポックス性の障害が認められた。これらのポックス障害の多くは、一般に接種後60〜90日目に治癒した。109pfuを接種されたグループのマウスのうち1匹のみが死亡し(接種後34日)、また、108pfuを投与されたグループのマウスの1匹が死亡(接種後94日)した。VC−2が接種されたマウスにその他の死亡は見られなかった。
104pfuのWRワクシア株を接種されたマウスは、接種後17日目にポックス性障害を示し始めた。これらの障害は、VC−2接種マウスに見られた障害と同じであった(趾部、尾部の腫脹)。103pfuのWR株を接種されたマウスでは接種後34日目まで障害は出現しなかった。睾丸炎が認められたのは高用量のWR(104pfu)が接種されたマウスのみであった。観察期間の後期に口の周りに障害が現れマウスは食餌を止めた。104pfuのWRを接種したマウスは全て、接種後21日から31日目に死亡するか、必要に応じて安楽死させた。103pfuのWRを投与した5匹のうち4匹は、接種後35日から57日目に死亡するか、必要と考えられた場合は安楽死させた。低投与量のWR(1から100pfu)が接種されたマウスには死亡は認められなかった。
高投与量(5×107および5×108pfu)のワクシニアWYETH株を投与したマウスは、趾部および尾部に障害を示し、睾丸炎が発生し、そして死亡した。5×106pfuまたはそれ以下のWYETHを投与したマウスは疾病や障害の症状を示さなかった。
表19に示すように、CY処理されたマウスは、ポックスウイルスのビルレンスを分析するのにヌードマウスの場合よりも高感度のモデル系を与える。WR、WYETH、およびVC−2に関するLD50値は、このモデル系においてはヌードマウスモデルの場合よりも有意に低くなっていた。さらに、WYETH、WRおよびVC−Rワクシニアウイルスをマウスに投与した場合、以下に記すように、各ウイルスをさらに高い用量で投与することにより障害が出現し、この結果、障害の形成がさらに迅速になっている。ヌードマウスにおいて見られたように、NYVACまたはALVACを注入されたCY処理マウスは障害を示さなかった。しかしながら、ヌードマウスの場合とは異なり、NYVACまたはALVACを用いてチャレンジされたCY処理マウスにおいては、投与量とは無関係に、死亡が見られたものもあった。このような不規則な発病が死因と関係しているかも知れない。
WYETHが投与されたマウスはいずれの投与量においても(9.5×104から9.5×108pfu)、接種後7日目から15日目の間に尾部および/または趾部にポックス性障害を示した。さらに、尾部および趾部は腫脹した。尾部での障害の出現は、ポックス性障害の典型的なものであり、丘疹の形成、潰瘍形成、そして最後には痂皮の形成を伴う。VC−2が投与されたマウスも、すべての投与量において(1.65×105から1.65×109pfu)、WYETH投与マウスの場合に類似した尾部および/または趾部にポックス性障害を示した。これより低用量のWRウイルスを投与したマウスには障害は見られなかったが、これらのグループで死亡は生じた。
NYVAC−RGの効力試験 ワクシニアウイルスのCOPENHAGEN株を弱毒化すすることにより、それから得られるNYVAC株のベクターとしての有用性を実質的に変化させていないことを明らかにするため、比較効力試験を行った。該ウイルスを弱毒化するのに行われた一連の遺伝子操作中の該ベクターの免疫原性能を調べるため、リポーター外来抗原として狂犬病ウイルスの糖タンパク質を利用した。該狂犬病糖タンパク質を発現するベクターの感染防御効力の評価は狂犬病に関する標準的なNIHマウス効力試験によった(Seligmann、1973)。表20に示しているように、高度に弱毒化したNYVACベクターについて得られるPD50値は、tk遺伝子座に狂犬病遺伝子を含有するCOPENHAGEN由来組換え体を用いて得られた値(Kieny他、1984)と同じであり、また、ALVAC−RG(トリ種に複製が制限されているカナリアポックス由来ベクター)について得られたPD50に近似している。
考察 よく知られたビルレンス遺伝子が欠失され且つ限定されたインビトロ増殖特性を有するNYVACを動物モデル系で分析して、その弱毒化特性を調べた。これらの試験に当たって、神経毒性のあるワクシニアウイルスの実験室株、WR、2種類のワクシニアウイルスワクチン株、WYETH(New York City Board of Health)およびCOPENHAGEN株、さらには、カナリアポックスウイルス株であるALVACとの比較を行った(実施例11も参照)。さらに、これらのウイルスについてマウスチャレンジモデルおよびウサギ皮膚モデルにおける相対的な病原性能が調べられた。すなわち、WRが最もビルレンスの高い株であり、WYETHおよびCOPENHAGEN(VC−2)は弱毒化ワクチン株として既に利用されているような特徴を有し、そして、ALVACは複製がトリ種に制限されるようなポックスウイルスの1例であることが理解された。これらのインビボ分析は、ワクシニアウイルス株WR、WYETHおよびCOPENHAGEN(VC−2)に比べるとNYVACが高度に弱毒化された特性を有するものであることを明示している(実施例14〜20)。重要なことは、NYVACにおけるLD50値は、トリ宿主制限トリポックスウイルスであるALVACにおいて見出された値に匹敵したということである。NYVACに因る死亡は、ALVACと同様に、きわめて高用量のウイルスが頭蓋投与された場合のみ見出された(実施例11、表14、15、19)。この死亡が多量のタンパク質を接種した非特異性に因るものであるか否かは未だ明らかでない。免疫無防備状態マウスモデル(ヌードマウスおよびCY処理マウス)における分析からも、WR、WYETHおよびCOPENHAGEN株に比べてNYVACが高度に弱毒化された特徴を有することが明らかにされた。重要なことは、NYVAC接種動物またはALVAC接種モデルにおいては、観察期間を通して、ワクシニア感染の播種やワクシニア性疾病の形跡が見出されなかったということである。NYVACにおいて複数のビルレンス関連遺伝子を欠失させると、病原性に関する相乗効果が示された。NYVACの接種特性を知る別の手段としてウサギ皮膚への皮内投与を行った(表17および18)。非トリ種において複製能力を有しないウイルスであるALVACに関する結果を考察すると、接種部位における複製能力のみが反応性に相関しているのではない。ALVACの皮内接種は投与量に依存して硬結域をもたらしたからである。すなわち、ウイルスの複製能力以外の因子が障害の形成に寄与しているものと推測される。NYVACにおいてビルレンスに関連する特定の遺伝子を欠失させると障害の発生が防止される。
さらに、本実施例および既述の実施例(実施例9を含む)の結果から、WR、ならびに既に利用されているワクシニアウイルスワクチン株であるWYETHおよびCOPENHAGENに比べてNYVACが高度に弱毒化された特性を有することが明らかである。事実、試験した動物モデル系におけるNYVACの病原性プロフィルは、トリ種においてのみ産生的複製を行うことで知られたポックスウイルスであるALVACのプロフィルに類似していた。NYVACの産生的複製能がヒト(表16)およびその他の動物(マウス、ブタ、イヌおよびウマを含む)由来の細胞において見かけ上制限されていることが重要な障壁となって、ワクチン接種されたヒトの中で播種する可能性の低いベクターを提供できることに加えて、ワクチン非接種者または一般的な環境への伝染を制限したり防止することになる。
重要なことは、NYVAC系ワクチンが効力を有することが示されたことである。各種の病原体由来の外来遺伝子産物を発現するNYVAC組換え体は、霊長類を含む幾つかの動物種において該外来遺伝子産物に対する免疫応答を引き起こした。特に、狂犬病糖タンパク質を発現するNYVACを基礎とする組換え体は致死的な狂犬病ウイルスのチャレンジに対してマウスを防御する能力を有した。該NYVAC由来狂犬病糖タンパク質組換え体の効力は、tk遺伝子座に狂犬病糖タンパク質を含有するCOPENHAGEN由来組み換え体のPD50に匹敵するものであった(表20)。また、NYVACを基礎とする組換え体は、ウサギにおいて麻疹ウイルス中和抗体を誘起し、ブタにおける擬狂犬病ウイルスおよび日本脳炎ウイルスのチャレンジに対して防御機能を有した。高度に弱毒化されたNYVAC株は、ヒト、動物、医学および獣医学の分野での利用において安全であるという利点を有する(Tartaglia他、1992)。さらに、一般の実験的発現ベクター系としてNYVACを使用すれば、ワクシニアウイルスに関連する生物学的危険性(ハザード)が激減する。
本実施例およびその他の実施例(実施例10を含む)の結果が示すように、次のような基準によりNYVACが高度に弱毒化されたものであることを明らかにした:a)接種部位に硬結または潰瘍化が検出されないこと(ウサギ皮膚);b)皮内接種部位から感染ウイルスが迅速に存在しなくなること(ウサギ皮膚);c)睾丸炎症がないこと(ヌードマウス);d)ビルレンスが激減していること(3週齢マウスおよび新生マウスの両方における頭蓋内チャレンジ);e)免疫不全被験体において病原性が激減しており播種しないこと(ヌードおよびシクロホスホアミド処理マウス);およびf)各種のヒト組織培養細胞において複製能が著しく減少していること。そして、高度に弱毒化されているのにも拘わらず、NYVACは、ベクターとして、外来抗原に対する強力な免疫応答を保有している。
実施例12−ポックスウイルスベクターへのHCMVのクローニング
ワクシニアドナープラスミドへのHCMVgB遺伝子のクローニングHCMV DNA(Towne株)のHindIIIフラグメントの4800bpHindIII−BamHIフラグメントを、プラスミドpIBI24(米国コネチカット州HavenのInternational Biotechnologies社製)の2800bpHindIII−BamHIフラグメント内にクローニングした。オリゴヌクレオチド
を用いるインビトロ変異法(Kunkel、1985)により、該gB遺伝子を変性してワクシニアH6プロモータの制御下に発現され得るようにした(Taylor他、1988a,b;Perkus他、1989)。この変性gBを含有するプラスミドを24CMVgB(5+3)とした。CMVgB遺伝子のDNA配列は図12に示す(SEQ ID NO:37)。
プラスミドpMP2VCL(K1L宿主域遺伝子の上流にワクシニア配列に対するポリリンカー領域を含有する)を上記ポリリンカー内でHindIIIおよびXhoIを用いて分解(酵素分解)し、さらに、以下に示すアニーリングされたオリゴヌクレオチドSPHPRHA AからDに連結(ライゲート)して、HindIII部位、H6プロモータ(−124〜−1)(Perkusu他、1988)およびポリリンカー領域を含有するSP131を調製した。
24CMVgB(5+3)の2900bpEcoRV−BamHIフラグメントを、SP131の3100bpEcoRV−BglIIフラグメント内にクローニングした。このクローニング工程により、当該gB遺伝子がH6プロモータの制御下に置かれるようになる。得られたプラスミドをSP131CMVgBと命名した。
プラスミドpSD22−Hは、pUC8のBamHI部位に連結されたワクシニアウイルスWR株のHindIII F領域由来の2.9kbBglIIフラグメントを含有する。pSD22−Hにおける唯一のBamHI部位は、外来遺伝子に対する挿入遺伝子座として使用する可欠部位である(PanicaliおよびPaoletti、1982)。プラスミドpMP22BHPは、pSD22−Hの誘導体であり、上記の唯一のBamHI部位が、延長したポリリンカー領域を加えることにより外来DNAを挿入できるようになっている。プラスミドpMP22BHPをHindIIIで分解し、SP131CMVgB(H6をプロモータとするgB遺伝子を含有する)由来の2.9kbHindIIIフラグメントに連結して、プラスミドSAg22CMVgBを調製した。SAg22CMVgB内のポリリンカー領域を変性するために、該プラスミドをBamHIで分解した後、HindIIIで部分分解し精製した。IBI24由来の50bpBamHI/HindIIIポリリンカーに連結することによってプラスミド22CMVgBを得た。
NYVACドナープラスミドpSD542へのHCMVgB遺伝子のクローニング プラスミドpSD513(Tartaglia他、1992)からプラスミドpSD542(NYVAC TK遺伝子座ドナープラスミド)を誘導した。このため、pSD513内のポリリンカー領域をPsTI/BamHIを用いて切断し、次に、アニーリングされた合成オリゴヌクレオチド
に連結することによりプラスミドpSD542を得た。
22CMVgBを、BamHIおよびNsiIで分解してH6プロモータおよびgB遺伝子の一部を含有するフラグメントを調製し、また、NsiIおよびPstIで分解してgB遺伝子の残りを含有するフラグメントを調製した。これらの2種類のフラグメントをpSD542(予め、そのポリリンカー内でBamHIおよびPstIで分解して、NYVACドナープラスミド542CMVgBを形成したもの)に連結した。542CMVgBに含有されているCMVgB遺伝子のDNA配列およびその端部をはさむ配列(フランキング配列)は図13Aおよび図13Bに示す(SEQ ID NO:38)。
ALVACドナープラスミドCP3LVQH6へのHCMVgB遺伝子のクローニング 8.5kbのカナリアポックスBglIIフラグメントをpBS−SKプラスミドベクター(米国カリフォルニア州La JollaのStratagene社製)のBamHI部位にクローニングしてpWW5を調製した。ヌクレオチド配列分析によれば、C3と指称されているリーディングフレームは、図14A〜図14Cに示す配列(SEQ ID NO:39)において、1458位から開始され2897位で終結していた。C3遺伝子座に外来遺伝子を挿入するとともにC3のオープンリーディングフレームを完全に切除したドナープラスミドを構築するために、PCRプライマーを用いてC3に対する5′側配列および3′側配列を増幅した。5′側配列用のプライマーとして、
を用いた。また、3′側配列用のプライマーとして、
を用いた。これらのプライマーは、ワクシニアの転写および翻訳停止シグナルが隣接しているような多重クローニング部位を含むように設計した。さらに、左側アームおよび右側アームの5′末端および3′末端に適当な制限酵素部位がある(左側アームについてはAsp718およびEcoRI、右側アームについてはEcoRIおよびSacI)ようにし、これによりAsp718/SacI分解pBS−SKプラスミドベクターにそれらの2種のアームを連結させることができた。得られたプラスミドをpC31と命名した。
プラスミドpWW5をNsiIおよびSspIで分解することにより、C3遺伝子座のすぐ上流に908bpのカナリアポックスDNAフラグメントを得た。PCR法により(Engelke他、1988)、鋳型としてプラスミドpWW5およびオリゴヌクレオチド
を用いて、カナリアポックスDNAの604bpフラグメントを得た。該604bpのフラグメントをAsp718およびXhoI(それらの制限部位は、それぞれ、オリゴヌクレオチドCP16およびCP17の5′末端に存在)で分解し、次に、Asp718/XhoI分解され且つアルカリホスファターゼ処理されたIBI25(米国コネチカット州New HavenのInternational Biotechnologies社製)にクローニングして、プラスミドSPC3LAを調製した。このSPC3LAをIBI25内でEcoRVにより分解、また、カナリアポックスDNA内でNsiIにより分解し、これを908bpのNsiI−SspIフラグメントに連結することによりSPCPLAXを調製した。SPCPLAXは、C3遺伝子座の上流にカナリアポックスDNAの1444bpを含有する。
プラスミドpXX4(これは、pBS−SKのPstI部位にクローニングされたカナリアポックスDNAの6.5kbNsiIフラグメントを含有する)から、カナリアポックスDNAの2178bpBglII−StyIフラグメントを分離した。プラスミドのpXX4を鋳型とし、さらに、オリゴヌクレオチド
を用いて、PCR法(Engelke他、1988)によりカナリアポックスDNAの279bpフラグメントを分離した。この279bpのフラグメントをXhoIおよびSacI(これらの制限酵素部位は、それぞれ、オリゴヌクレオチドCP19およびCP20の5′末端に存在する)で分解し、SacI−XhoI分解されアルカリホスファターゼ処理されたIBI25中にクローニングして、プラスミドSPC3RAを得た。
該ポリリンカーに唯一の制限酵素を追加するために、pC3Iをポリリンカー領域内でEcoRIによって分解し、アルカリホスファターゼで処理し、さらに、キナーゼ処理され且つアニーリングされたオリゴヌクレオチド
EcoRI粘着端、XhoI部位、BamHI部位、およびClaIに結合し得る粘着端を含有する)に連結した。SPCP3Sを、C3遺伝子座の下流のカナリアポックス配列内でStyIおよびSacIを用いて分解し(pBS−SK)、SPC3RA由来の261bpBglII−SacIフラグメントおよびpXX4由来の2178bpBglII−StyIフラグメントに連結して(C3遺伝子座の下流に2572bpのカナリアポックスDNAを含有する)プラスミドCPRALを調製した。C3遺伝子座の上流のカナリアポックス配列内においてAsp718(pBS−SK中)およびAccIを用いてSPCP3Sを分解し、SPCPLAX由来の1436bpAsp718−AccIフラグメントに連結して、(C3遺伝子座の上流に1457bpのカナリアポックスDNAを含有する)プラスミドCPLALを調製した。C3遺伝子座の下流のカナリアポックス配列内でStyIおよびSacI(pBS−SK中)を用いてCPLALを分解し、次に、CPRAL由来の2438bpStyI−SacIフラグメントに連結してプラスミドCP3Lを調製した。かくして、このプラスミドCP3Lは、C3遺伝子座の上流に1457bpのカナリアポックスDNA、6ヶのリーディングフレーム内に停止コドン、初期転写終結シグナル、ポリリンカー領域、初期転写終結シグナル、6ヶのリーディングフレーム内に停止コドン、および、C3遺伝子座の下流に2572bpのカナリアポックスDNAを含有する。
PCR法により(Engelke他、1988)、鋳型としてpRW838(H6プロモータに連結した狂犬病ウイルス糖タンパク質遺伝子(Kieny他、1984)を含有するプラスミド)を用い、さらにオリゴヌクレオチド
を用いて、初期/後期H6ワクシニアプロモータ(Taylor他、1988a,b;Perkus他、1989)を生成物をBamHIおよびEcoRIを用いて(それらの制限酵素部位は、それぞれ、CP21およびCP22の5′末端にある)分解し、CP3Lに連結し、さらに、ポリリンカー内でBamHIおよびEcoRIで分解し、プラスミドVQH6CP3Lを得た。
ALVACドナープラスミドVQH6CP3Lをポリリンカー内でXhoIにより、また、H6プロモータ内でNruIによって分解し、そして、22CMVgB(H6プロモータおよびgB遺伝子の一部、ならびにXhoIおよびHindIII分解によりpIBI24から誘導されたポリリンカーを含有する)由来のNruI/HindIIIフラグメントに連結して、ALVACドナープラスミドCP3LCMVgBを調製した。プラスミドCP3LCMVgBにおけるCMVgB遺伝子のDNA配列および付加されているフランキング配列は図15A〜図15Cに示している(SEQ ID NO:40)。
トランスメンブレン領域が欠失されたHCMVgB遺伝子のNYVACドナープラスミドpSD553へのクローニング プラスミドpSD553は、COPAK系列に属するワクシニア欠失/挿入プラスミドの1つである。このプラスミドは、Copenhagenワクシニアのフランキングアーム内に、ワクシニアK1L宿主域遺伝子(Gillard他、1986;Perkus他、1990)を含有し、ATI領域(オープンリーディングフレームA25L、A26L;Goebel他、1990a,b)を置換している。pSD553は以下のように構築した。
左側および右側のワクシニアフランキングアームは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により鋳型としてpSD414(ワクシニアSalI BをpUC8にクローニングしたものの1種(Goebel他、1990a,b))を用いて調製した。左側アームの合成にはプライマーとして、合成デオキシオリゴヌクレオチド
用いた。右側アームは、プライマーとして合成デオキシオリゴヌクレオチド
を用いて合成した。左側アームおよび右側アームを含有するこれらの2種類のPCR由来DNAフラグメントを一緒にして更なるPCR反応を行った。得られた生成物をEcoRI/HindIIIで切断して、0.9kbのフラグメントを分離した。この0.9kbフラグメントをpUC8のEcoRI/HindIII断片に連結して、プラスミドpSD541を得た。ワクシニアATI欠失座にあるポリリンカー領域を以下のように伸長した。pSD541をBglII/XhoIで切断し、アニーリングされた相補的合成オリゴヌクレオチド
に連結してプラスミドpSD552を調製した。プラスミドpSD542から1kbのBglII(部分分解)/HpaIフラグメントとしてK1L宿主域遺伝子(Perkus他、1990)を単離した。pSD552をBglII/HpaIで切断し、上記K1L含有フラグメントに連結して、pSD553を調製した。
SP131CMVgB(H6プロモータの制御下にあるHCMVgB遺伝子を含有する)由来のHindIIIフラグメントをDNAポリメラーゼIのクレノウ断片で切れ目充填(フィリング)し、プラスミドpSD553(SmaIで分解されアルカリホスファターゼ処理されたもの)に連結した。得られたNYVACドナープラスミド(H6をプロモータとするgBはK1Lと同じ方向にある)を553H6CMVgBと命名した。このプラスミド553H6CMVgBにおけるCMVgB遺伝子のDNA配列と付加されているフランキングDNA配列は図16Aおよび図16Bに示す(SEQ ID NO:41)。
トランスメンブレン領域が欠失されたCMVgBの配列は図17に示されている(SEQ ID NO:42)。トランスメンブレン領域をコードするヌクレオチドは以下のように欠失させた。オリゴヌクレオチド
をキナーゼ処理し、アニーリングし、BamHI/HindIII分解され且つアルカリホスファターゼ処理されたIBI24にクローニングしてプラスミドSPCMVgB2を調製した。オリゴヌクレオチド
を用いプラスミドSP131CMVgBを鋳型とするPCRを行い、0.7kbフラグメントを調製した。このフラグメントをEcoRI/BamHIで分解し、EcoRI/BamHI分解され且つアルカリホスファターゼ処理されたIBI24中にクローニングしてプラスミドSPCMVgB1を調製した。このSPCMVgB1由来の0.7kbEcoRI/NcoIフラグメントを、EcoRI/NcoI分解されホスファターゼ処理されたSPCMVgB2に連結してプラスミドSPCMVgBを調製した。オリゴヌクレオチド
を用いる突然変異法(Mandecki、1986)により、SPCMVgB3内の唯一のNcoI部位を欠失させてプラスミドSPCMVgB4を調製した。SPCMVgB4由来の0.7kbPstIフラグメントを553H6CMVgB由来の6.6kbPstIフラグメントに連結して、NYVACドナープラスミド553H6CMVgBTM-を調製した。このプラスミドは、H6プロモータの制御下にあり、そのトランスメンブレン領域が欠失された(アミノ酸715〜772位;Spaete他、1988)gB遺伝子を含有する。プラスミド553H6CMVgBTM-におけるトランスメンブレンが欠失されたCMVgB遺伝子のDNA配列と追加のフランキングDNA配列は図18Aおよび図18Bに示す(SEQ ID NO:43)。
トランスメンブレン領域が欠失され切断部位が変更されたHCMVgB遺伝子のNYVACドナープラスミドpSD553へのクローニング
トランスメンブレン領域が欠失され変更(変性)された切断部位を含有するCMVgBの配列は図19に示す(SEQ ID NO:44)。切断部位の変性は以下のように行った。オリゴヌクレオチド
をキナーゼ処理し、アニーリングし、EcoRI/BamHI分解され且つアルカリホスファターゼ処理されたIBI24にクローニングして、プラスミドBstIBIを調製した。553H6CMVgBTM-由来の1.4kbBstEII/SpHIフラグメントを、BstEII/SpHI分解され且つアルカリホスファターゼ処理されたBstIBIにクローニングして、SPCMVgB5を調製した。
オリゴヌクレオチド
を用いてプラスミド553H6CMVgBTM-のPCRを行い、0.7kbフラグメントおよび0.8kbフラグメントを得た。これら2種類のフラグメントを組み合わせて、オリゴヌクレオチドSPgB10+SPgB12のPCRを実施して、1.2kbのフラグメントを得た。この1.2kbフラグメントをEcoRIおよびPstIで分解し、0.5kbのフラグメントを分離し、EcoRI/PstI分解され且つアルカリホスファターゼ処理されたIBI24にクローニングして、プラスミドSPCMVgB6を調製した。このSPCMVgB6由来の0.5kbEcoRI/PstIフラグメントを用いて、SPCMVgB5中の対応するフラグメントと置換して、プラスミドSPCMVgB7を調製した。このSPCMVgB7由来の1.4kbBstEII/SpHIフラグメントを用いて、553H6CMVgB中の対応するフラグメントと置換して、NYVACドナープラスミド553H6gBC-TM-を調製した。このプラスミドは、H6プロモータの制御下にあり、トランスメンブレン領域が欠失された(アミノ酸715〜772位)gB遺伝子を含有し且つ切断部位が変性(RTKR*STがRTIRSTに変性。ここで星印は切断が通常起こる個所を示すが(Spaete他、1988)、Sコドンが変性されてBglII制限酵素部位を形成した。)されている。プラスミド553H6gBC-TM-における切断部位が変性され且つトランスメンブレンが欠失されたCMVgBのDNA配列および追加のフランキングDNA配列は図20Aおよび図20Bに示されている。(SEQ ID NO:45)
実施例13−HCMVgBを含有する組換えポックスウイルスの構築
レスキューウイルスを感染させた組織培養細胞に組換えドナープラスミドをトランスフェクションし、ニトロセルロースフィルタ上のインサイチュハイブリダイゼーションにより組換え体を同定することは既に明らかにされている(Guo他、1989;PanicaliおよびPaoletti、1982;Piccini他、1987;Perkus他、1993)。かくして、NYVAC(vP866)感染Vero細胞(ATCC CCL#81)に、プラスミド542CMVgBをトランスフェクションして、組換え体vP1001(NYVAC−gB)を調製した。また、ALVAC感染初代ニワトリ胚繊維芽(CEF)細胞にプラスミドCP3LCMVgBをトランスフェクションして組換え体vCP139(ALVAC−gB)を調製した。さらに、NYVAC感染Vero細胞に、プラスミド553H6CMVgB、553H6CMVgBTM-および553H6gBC-TM-をトランスフェクションして、それぞれ、組換え体vP1126、vP1128およびvP1145を調製した。WR L変異体ワクシニアウイルス(Panicali他、1981)が感染したVero細胞に、プラスミド22CMVgBをトランスフェクションして、組換え体vP992を調製した。
実施例14−ポックスウイルス組換え体によって発現されたCHMVgBの免疫沈降
gB特異的モルモットポリクローナル血清(Goenczoel他、1990)を用い、既知の方法(Taylor他、1990)により免疫沈降分析を行った。gB特異的なバンドの見かけの分子量は以前に報告された結果(BrittおよびAuger、1986;BrittおよびVugler、1989;Reis他、1993)と一致した。vP992、vP1001、vCP139、vP1126、vP1128およびvP1145由来の細胞内画分は、見かけの分子量130〜140kDaの主要バンドを含有したが、これはグリコシル化された未切断gB前駆体であろう。また、細胞画分には約110kDaおよび55kDaにおいて弱いバンドも見られたが、これらはN−末端およびC末端のプロセシングされたフラグメントである。vP1128およびvP1145が感染した細胞由来の細胞内画分は、未切断前駆体ならびにN−末端およびC末端のプロセシングされたフラグメントを含有していた。
実施例15−ALVAC−gBおよびNYVAC−gBを接種した実験動物の体液性応答
CBAマウスにvP1001(NYVAC−gB)を単一回接種して免疫化(免疫感作)した後、被接種マウスの血清中の中和抗体力価を分析した(Goenczoel他、1986)。免疫化から14〜21日後(幾何平均力価は1:16)および28〜60日後(幾何平均力価は1:26)マウスの血清中のHCMV中和性抗体を検出した(表2)。CBAマウスにvCP139(ALVAC−gB)を単一回免疫化した場合に産生されたHCMV中和性抗体力価は、1:64gmt(幾何平均)(免疫後14〜21日)および1:111gmt(免疫後28〜60日)であった。このように、HCMVgBを発現するNYVACおよびALVAC組換え体でマウスを免疫化すると、HCMVの感染を中和することのできる抗体が誘起される。
ヒトのボランティアにおいてALVAC−gB(vCP139)の安全性および免疫原性を評価した。該組換え体を106.3TCID50で2回接種した後でも、顕著な作用は認められなかった。
免疫化は、組換えウイルスを2〜4×108PFUでi.p.投与することにより行った。
次に、モルモットにALVAC−gBを2回(0日および28日)接種、免疫化し、血清を分析してHCMV中和抗体の存在を調べた。34日目(gmt=60)、42日目(gmt=60)および56日目(gmt=60)において血清中のHCMV中和抗体の検出を行った(表22)。このように、ALVAC−gBでモルモットを免疫化すると、HCMVの感染を中和し得る抗体が誘発された。
0日目および28日目に106.3TCID50でモルモットに筋肉内接種した。
実施例16−ポックスウイルスベクターへのHCMVgHのクローニング
NYVACドナープラスミドpSD550へのHCMVgH遺伝子のクローニング PCR法によりオリゴヌクレオチド
を用いてゲノムDNA(Towne株)からHCMVgH遺伝子を単離した。得られた2.3kbフラグメントをPstI(制限部位はSPgH1の5′末端にある)およびHindIII(制限部位はSPgH2の5′末端にある)を用いて分解し、PstI/HindIII分解され且つアルカリホスファターゼ処理されたIBI24にクローニングしてプラスミドSpgH1を調製した。CMVgHの配列は図21に示す(SEQ ID NO:46)。
以下に示すように、該gH遺伝子の3′末端を変性させて、ワクシニアウイルス初期転写終結シグナル(YuenおよびMoss、1987)および唯一のXhoI制限(酵素)部位を含有するようにした。すなわち、SPgH1を、gHの3′末端内でSpHIを用い、また、IBI24内でHindIIIを用いて分解し、得られるgH含有フラグメントを精製し、そして、キナーゼ処理され且つアニーリングされたオリゴヌクレオチド
に連結してプラスミドSPgH2を調製した。
キナーゼ処理され且つアニーリングされたオリゴヌクレオチド
を、EcoRI/BamHI分解され且つアルカリホスファターゼ処理されたIBI24に連結してプラスミドSPgH3を調製した。このプラスミドは、唯一のXhoI部位、エントモポックス42KプロモータおよびHCMVgHの最初の4個のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含有する(オリゴヌクレオチドSPgH13(SEQ ID NO:116)およびSPgH14(SEQ ID NO:117)において斜線を引いているコドンはアミノ酸配列を変更することなくSmaI部位を形成するように変性されたものである)。プラスミドSPgH1を鋳型とするPCR法においてオリゴヌクレオチド
を用いて0.4kbのフラグメントを得た。このフラグメントをSmaIおよびPstIで分解し、SmaI/PstI分解され且つアルカリホスファターゼ処理されたSPgH3にクローニングして、プラスミドSPgH5(唯一のXhoI部位、42KプロモータおよびHCMgH遺伝子の5′側15%を含有する)を調製した。このSPgH5由来の0.4kbEcoRI/BglIIフラグメントを、SPgH5由来の4.7kbEcoRI/BglIIフラグメントに連結して、プラスミドSPgH6(42Kをプロモータとし、XhoI部位にはさまれているgH遺伝子を含有する)を調製した。
プラスミドpSD548(Tartaglia他、1992)からプラスミドpSD550(I4L遺伝視座ドナープラスミド)を誘導した。すなわち、pSD548内のポリリンカー領域をBglIIおよびSmaIで切断し、アニーリングされた合成オリゴヌクレオチド
に連結することにより変性して、プラスミドpSD550を得た。SPgH6由来の2.3kbXhoIフラグメントを、XhoI分解され且つアルカリホスファターゼ処理されたpSD550にクローニングして、NYVACドナープラスミドI4L42KgHを調製した。このプラスミド中でgHの方向は置換されたI4L遺伝子と同じ方向にある。プラスミドI4L42KgHにおけるCMVgHのDNA配列および付加されているフランキングDNA配列は図22Aおよび図22Bに示している(SEQ ID NO:47)。
ALVACドナープラスミドNVQC5LSPへのHCMVgH遺伝子のクローニング 以下のようにして、C5上流に1535bp、KpnI/SmaI/XbaIおよびNotI部位を含有するポリリンカーおよび404bpのカナリアポックスDNA(31塩基対のC5をコードする配列および373bpの下流配列)を含有するC5挿入ベクターを誘導した。コスミドベクター(KnaufおよびNester、1982)にカナリアポックスDNAのゲノムライブラリーを構築した。この際、プロービングにpRW764.5(PUC9系プラスミドであり、図9(SEQ ID NO:27)におけるC5のORFヌクレオチド1372〜2252位を含む880bpカナリアポックスPvuIIフラグメントを含有する)および29kbのインサート(pHCOS1)を含有するクローンを用いた。pHCOS1からC5領域を含有する3.3kbのClaIフラグメントを分離、同定した。C5のオープンリーディングフレームは、図8に示す配列(SEQ ID NO:27)において1537位で開始し、1857位で終結している。
C5挿入ベクターの構築には、2つの工程を実施した。オリゴヌクレオチド
ならびに精製されたゲノムカナリアポックスDNAを鋳型として用いるPCR増幅法により1535bpの上流配列を調製した。このフラグメントをEcoRIで分解(オリゴC5A内で)し、EcoRI/SmaI分解されたpUC8にクローニングしてC5LABを調製した。オリゴヌクレオチド
を用いるPCR増幅法により、404bpのアームを調製した。このフラグメントをPstIで分解(オリゴC5DA内で)し、SmaI/PstI分解されたC5LABにクローニングして、pC5Lを調製した。
このpC5LをAsp718およびNotIで分解(ポリリンカー内)し、アルカリホスファターゼで処理し、さらに、キナーゼ処理され且つアニーリングされたオリゴヌクレオチド
(不能化したAsp718部位、6ヶのリーディングフレームの翻訳停止コドン、ワクシニア初期転写終結シグナル(YuenおよびMoss、1987)、BamHI、KpnI、XhoI、XbaI、ClaIおよびSmaI制限部位、ワクシニア初期転写終結シグナル、6ヶのリーディングフレームの翻訳停止コドン、ならびに不能化したNotI部位を含有する)に連結して、プラスミドC5LSPを調製した。C5LSPのポリリンカー領域をさらに変性するため、BamHIで分解し、アニーリングされたオリゴヌクレオチド
に連結して、プラスミドVQC5LSPを調製した。このVQC5LSPをEcoRIで分解し、アルカリホスファターゼ処理し、キナーゼ処理され且つアニーリングされたオリゴヌクレオチド
に連結し、さらにNotIで分解した。この線状プラスミドを精製し、自己連結させてプラスミドNVQC5LSPを調製した。SPgH6由来の2.3kbのXhoIフラグメントを、XhoI分解され且つアルカリホスファターゼ処理されたNVQC5LSPにクローニングしてALVACドナープラスミドNVQC5L42KgHを得たが、該プラスミド内ではgHの方向は欠失されたC5遺伝子と同じ方向にある。プラスミドNVQC5L42KgHにおけるCMVgHのDNA配列および追加のフランキングDNA配列は図23Aおよび図23Bに示す(SEQ ID NO:47)。
ワクシニアドナープラスミドpSD157K1LINSへのHCMVgH遺伝子のクローニング プラスミドpHK(これは、pBR322にクローニングされたWRワクシニアHindIIIKフラグメントを含有する)をHindIII/BhlIIで分解し、1.2kbフラグメントを単離し、これをBamHI/HindIII分解されたpBS−SK+にクローニングして、プラスミドpBS−HKARMを得た。このpBS−HKARMをポリリンカー内でAsp718を用いて分解し、大腸菌DNAポリメラーゼのクレノウ断片で平滑末端化し、そして、pBS/ワクシニア接合部においてHindIIIで分解した。得られた4.1kbのベクターフラグメントをpHM−1(pHM−1は、pBR322にクローニングしたWRワクシニアウイルスHindIIIMフラグメントを含有する)由来の2.0kbNruI/HindIIIフラグメントに連結してプラスミドpMPWRMKを得た。このpMPWRMKをHpaIで切断し、アニーリングされた合成オリゴヌクレオチド
に連結した。得られたプラスミドがpSD157K1LNSである。pSD157K1LNSをそのポリリンカー領域内でXhoIで分解し、アルカリホスファターゼで処理し、さらに、SPgH6由来の2.3kbのXhoIフラグメントに連結してプラスミドMP804−42KgH(同じ方向にあるHCMVgH遺伝子およびK1L遺伝子を含有)を形成した。プラスミドMP804−42KgHにおけるCMVgHのDNA配列および付加されているフランキングDNA配列は図24に示す(SEQ ID NO:49)。
実施例17−HCMVgHを含有する組換えポックスウイルス組換え体の構築
NYVAC感染CEF細胞にプラスミドI4L42KgHをトランスフェクションして組換え体vP1173(HCMVgHを含有)を調製した。同じプラスミドをvP1001感染Vero細胞にトランスフェクションして組換え体vP1183(HCMVgBおよびgHを含有)を調製した。
プラスミドNVQC5L42KgHをALVAC感染CEF細胞にトランスフェクションして、組換え体vCP236(HCMVgHを含有)を調製した。同じプラスミドをvCP139感染CEF細胞にトランスフェクションして組換え体vCP233(HCMVgBおよびgHを含有)を調製した。ワクシニアウイルスvP1170(これは、欠失されたK1L遺伝子の場所にエントモポックスウイルス42Kプロモータの転写制御下にEcogptを含有する)を用いて、プラスミドMP804−42KgHでトランスフェクションされたVero細胞を感作して組換え体vP1205Bを調製した。
実施例18−ポックスウイルス組換え体によって発現されるHCMVgHの免疫沈降
HCMVgHに対して特異的なモノクローナル抗体を用いて実施した免疫沈降により、組換え体vP1173、vP1183、vP1205B、vCP233およびvCP236によって86KDaのgHタンパク質(Pachl他、1989)が発現されていることが示された。また、gB特異的モルモットポリクローナル血清を用いる免疫沈降により、組換え体vP1183およびvCP233が正確に発現されていることが示された。
HCMVの72KDa即時初期1タンパク質(IE1)は、ヒトにおけるCD8 +細胞障害性T細胞の標的であり(Borysiewicz他、1988)、CD4 +T細胞によって認識される(Alp他、1991)。1人についてIE1上の増殖性でMHC−クラスI−制限性の細胞障害性決定基を調べたところ、エクソン4をコードする領域の空間的に離されたセグメントから成ることが見出された(Alp他、1991)。IE1タンパク質は、それ自身のプロモータ由来の発現を高めるように調節し(CherringtonおよびMocarski、1989)、さらには、HIV LTR由来の発現(BiegalkeおよびGeballe、1991;Ghazal他、1991)および細胞性遺伝子c−myc、c−fosおよびhsp70に対するプロモータの発現(Hagemeiser他、1992;SantomennaおよびColberg-Poley、1990;Colberg-Paley他、1992)に同様の機能を発揮することが示されている。Lafeminaら(1989)は、安定な細胞系内で発現されたIE1タンパク質は分裂中期の染色体に優先的に結合すると報告し、潜伏期にHCMVのDNAをプラスミド状態で保持するのに該タンパク質が関与している可能性があることを提示した。
以下の実施例19〜30においては、IF1全遺伝子、2〜32位のアミノ酸が欠失されたIE1、292〜319のアミノ酸が欠失されたIE1、またはIE1のエクソン4セグメントを発現するポックスウイルス組換え体の構築について示している。これらの検討を行った目的は、核へ転移することができず、したがって、転移活性物質として機能する可能性を減少させながら、CD8 +細胞障害性T細胞により認識され得る能力は維持しているような形態のIE1遺伝子産生物を開発することにある。実施例45により、全長遺伝子産生物とは異なり、変性された形態のIE1タンパク質(2〜32位のアミノ酸が欠失したもの)を発現するALVAC組換え体は、感染細胞の核および細胞質の双方において見出され、HCMV血清反応陽性個体由来の細胞障害性エフェクター細胞を再刺激できることが示されている。
実施例19−ポックスウイルスベクターへのHCMV IE1全遺伝子のクローニング
ワクシニアドナープラスミドpSD22−HへのHCMV IE1遺伝子のクローニング プラスミドpJD083を鋳型とし(Akrigg他、1985)、オリゴヌクレオチド
を用いるPCR法により、1.5kbフラグメントとして全HCMV IE1遺伝子を得た。プラスミドpSD486H6340(これは、H6プロモータに正確に結合した非関連遺伝子を含有する)を(該H6プロモータ内で)NruIで分解し、さらに(該非関連遺伝子の3′末端において)BamHIで分解し、BamHI分解された1.5kbのPCRフラグメント(オリゴヌクレオチドIE3の5′末端にBamHIがある)に連結してプラスミドpSD486H6HCMVIE1を調製した。
このpSD486H6HCMVIE1から、BamHIによる分解の後、部分的BalII分解を行うことにより1.6kbのフラグメントとしてH6をプロモータとするIE1遺伝子が得られ、BamHI分解pSD22−Hに連結してプラスミドpSD22−HCMVIE1を調製した。プラスミドpSD22−HCMVIE1におけるCMV IE1のDNA配列と追加のフランキングDNA配列は図26に示している(SEQ ID NO:51)
ワクシニアドナープラスミドpSD554へのHCMVIE1遺伝子のクローニング プラスミドpSD486H6HCMVIE1を鋳型とするPCR法においてオリゴヌクレオチド
を用いて、181bpフラグメントを調製した。このフラグメントをEcoRIおよびXbaIで分解し、EcoRU/XbaI分解され且つアルカリホスファターゼ処理されたIBI24にクローニングして、プラスミドSPIE1(H6プロモータの一部およびIE1遺伝子の最初の135bpを含有する)を調製した。プラスミドpSD486H6HCMVIE1を鋳型とするPCR法にオリゴヌクレオチド
を用いて506bpのフラグメントを調製した。このフラグメントをXbaIおよびHindIIIで分解し、XbaI/HindIII分解され且つアルカリホスファターゼ処理されたIBI24にクローニングしてプラスミドSPIE2(IE1遺伝子の3′末端、ワクシニア初期転写終結シグナルおよびXhoI部位を含有する)を調製した。SPIE1を、IE1遺伝子の挿入フラグメントの3′末端においてHindIIで分解し、IBI24ポリリンカー内でHindIIIで分解し、アルカリホスファターゼ処理し、さらに、pSD486H6HCMVIE1由来の903bpHindII−BglIIフラグメントおよびSPIE2由来の464bpBglII−HindIIIフラグメントに連結してプラスミドSPIE3(H6プロモータの一部に結合した全IE1遺伝子を含有する)を調製した。
プラスミドpSD553をNruIで切断し、(翻訳開始コドンに対して−26に位置するNruI部位の上流に合成H6プロモータ(Perkus他、1989)を含有する)SmaI/NruIフラグメントに連結した。得られたプラスミドpMP553H5をNruIおよびBamHIで分解し、アニーリングされたオリゴヌクレオチド
に連結した。得られたプラスミドは、開始コドンに対して−1位のヌクレオチドを通る全H6プロモータ領域、それに後続するポリリンカー領域を含有する。このpSD554をNruIおよびXhoIで分解し、SPIE3由来の1.5kbのNruI/XhoIフラグメントに連結してプラスミドCOPAKH6IEを調製した。プラスミドCOPAKH6IEにおけるCMV IE1のDNA配列およびフランキングDNA配列は図27Aおよび図27Bに示す(SEQ ID NO:52)。
実施例20−全HCMVIE1遺伝子を含有する組換えポックスウイルスの構築
WR L変異体を感染させたVero細胞にプラスミドpSD22−HCMVIE1をトランスフェクションして組換え体vP893を調製した。また、NYVAC感染Vero細胞にプラスミドCOPAKH6IEをトランスフェクションして組換え体vP1161を調製した。
実施例21−ポックスウイルス組換え体による全IE1遺伝子の発現
HCMVIE1に特異的なモノクローナル抗体を用いた免疫沈降試験により、vP893およびvP1161による72kDaのIE1タンパク質(BlantonおよびTevethia、1981;CameronおよびPreston、1981)の発現が確認された。免疫蛍光試験(Taylor他、1990)の記載に従って実施)によれば、該IE1遺伝子産生物が核に局在化していることが示された。
実施例22−ワクシニアドナープラスミドpSD554へのHCMVIE1遺伝子(292〜319位アミノ酸を欠失)のクローニング
292〜319位アミノ酸を欠失したCMVIE1のDNA配列は図28に示す(SEQ ID NO:53)。この欠失は以下のように行った。SpeIでプラスミドSPIE3を分解し、4239bpのフラグメントを単離した(これは、292〜319位のアミノ酸をコードする868〜958位のヌクレオチドを欠失する)。該フラグメントを自己連結させてプラスミドSPIE4とした。このSPIE4由来の1.4kbのNruI/XhoIフラグメントをNruI/XhoI分解されたpSD554に連結してプラスミドCOPAKH6IEN-を調製した。プラスミドCOPAKH6IEN-において292〜319位アミノ酸を欠失するCMVIE1のDNA配列とフランキングDNA配列は図29Aおよび図29Bに示している(SEQ ID NO:54)。
実施例23−292〜319位のアミノ酸が欠失したHCMVIE1遺伝子を含有する組換えポックスウイルスの構築
NYVAC感染Vero細胞にプラスミドCOPAKH6IEN-をトランスフェクションして組換え体vP1160を調製した。
実施例24−292〜319位のアミノ酸が欠失したHCMVIE1遺伝子の発現
免疫沈降分析により、vP1160が感染した細胞での69kDaタンパク質の発現は292〜319位のアミノ酸を欠失したものであることが確認された。免疫蛍光試験により、この遺伝子の産生物は核に局在化していることが示された。
実施例25−ポックスウイルスへのHCMVIE1のエクソン4セグメントのクローニング
NYVACドナープラスミドSPI4LH6へのHCMVIE1のエクソン4セグメントのクローニング HCMVIE1のエクソン4セグメントのDNA配列を図30に示す(SEQ ID NO:55)。該遺伝子セグメントは以下のようにして得た。すなわち、プラスミドpSD486H6HCMVIE1に対するPCR法においてオリゴヌクレオチド
を用いて0.5kbのフラグメントで分解し、EcoRI/XbaI分解され且つアルカリホスファターゼ処理されたIBI24にクローニングして、プラスミドSPIE5を調製した。プラスミドSPIE3をEcoRIおよびNcoIで分解して3.6kbのフラグメントを精製し、SPIE5由来の0.47kbEcoRI−NcoIフラグメントに連結してプラスミドSPIE6(これは、H6プロモータの一部に結合したIE1のエクソン4セグメントを含有する)を調製した。
鋳型としてPRW823(非関連遺伝子に結合したH6プロモータを含有するプラスミド)を用い、さらに、オリゴヌクレオチド
を用いて初期/後期H6ワクシニアウイルスプロモータ(Guo他、1989;Perkusu他、1989)を得た。PCR生成物をBamHIおよびXhoIで分解(制限部位は、それぞれ、CP30およびCP31の5′末端にある)し、BamHI/XhoI分解されたC5LSPに連結してプラスミドVQH6C5LSPを調製した。このプラスミドを鋳型として用い、オリゴヌクレオチドCP31および
を用いるPCR法を実施した。得られたPCR生成物をBamHIおよびXhoIで分解(制限部位は、それぞれ、RUB1およびCP31の5′末端にある)し、BamHI/XhoI分解されたpSD550に連結してプラスミドSPI4LH6を調製した。SPIE6から単離した1.3kbのNruI/XhoIフラグメントを、NruI/XhoI分解され且つアルカリホスファターゼ処理されたSPI4LH6にクローニングして、プラスミドI4LH6IE−Ex4(この中では、H6をプロモータとするIE1のエクソン4遺伝子は、置換されたI4L遺伝子と同じ方向にある)を調製した。プラスミドI4LH6IE−Ex4におけるHCMVIE1のエクソン4セグメントのDNA配列とフランキングDNA配列は図21に示している(SEQ ID NO:54)。
ALVACドナープラスミドNVQH6C5LSPへのHCMVIE1のエクソン4フラグメントのクローニング プラスミドVQH6C5LSPをEcoRIで分解し、アルカリホスファターゼ処理し、キナーゼ処理され且つアニーリングされたオリゴヌクレオチドCP29に連結し、さらに、NotIで分解した。直鎖状にした該プラスミドを精製し、自己連結させてプラスミドNVQH6C5LSPを調製した。SPIE6由来の1.3kbNruI/XhoIフラグメントをNruI/XhoI分解され且つアルカリホスファターゼ処理されたNVQH6C5LSPにクローニングしてプラスミドNVQH6IE−Ex4(このプラスミド中では、H6をプロモータとするIE1のエクソン4遺伝子は、置換されたC5遺伝子と同じ方向にある)を調製した。プラスミドNVQH6IE−Ex4におけるHCMVIE1のエクソン4セグメントのDNA配列とフランキングDNA配列は図32Aおよび図32Bに示している(SEQ ID NO:57)。
実施例26−IE1エクソン4セグメントを含有する組換えポックスウイルスの構築
NYVAC感染CEF細胞に、プラスミドI4LH6IE−Ex4をトランスフェクションして組換え体vP1186を調製した。また、ALVAC感染CEF細胞に、プラスミドNVQH6IE−Ex4をトランスフェクションして組換え体vCP244を調製した。
実施例27−ポックスウイルス組換え体によるHCMVIE1のエクソン4セグメントの発現
免疫蛍光分析によれば、組換え体vP1186およびvCP244によって発現されたIE−エクソン4タンパク質は細胞質に局在化していることが示された。IE−エクソン4に特異的なモノクローナル抗体を用いる免疫沈降実験により、vCP244が感染した細胞内でエクソン4セグメントの大きさに正確に一致する60kDaのタンパク質の発現が確認された。バクテリアのエクソン4融合タンパク質に対するポリクローナルウサギ血清を用いる免疫沈降反応により、vP1186およびVCP244が感染した細胞内で60kDaのタンパク質が発現されていることが示された。
実施例28−ポックスウイルスベクターへの(2〜32位のアミノ酸を欠失する)HCMVIE1遺伝子のクローニング
NYVACドナープラスミドSPI4LH6への(2〜32位アミノ酸を欠失する)HCMVIE1遺伝子のクローニング 2〜32位のアミノ酸を欠失するHCMVIE1のDNA配列は図33に示す(SEQ ID NO:58)。このセグメントは以下のように調製した。オリゴヌクレオチド
をキナーゼ処理し、アニーリングし、さらに、SPIE3由来のアルカリホスファターゼ処理された4.2kbフラグメントに連結してプラスミドSPIE8を調製した。このSPIE0(H6プロモータの一部および2〜32位アミノ酸を欠失するIE1を含有する)由来の1.4kbのNruI/XhoIフラグメントを、NruI/XhoI分解され且つアルカリホスファターゼ処理されたSPI4LH6に連結して、プラスミドI4LH6IEd32を調製した。プラスミドI4LH6IEd32における2〜32位アミノ酸欠失HCMVIE1のDNA配列とフランキングDNA配列は図34に示している(SEQ ID NO:59)。
ALVACドナープラスミドNVQH6C5LSPへの(2〜32位のアミノ酸が欠失した)HCMVIE1遺伝子のクローニング SPIE8由来の1.4kbのNruI/XhoIフラグメントを、NruI/XhoI分解され且つアルカリホスファターゼ処理されたNVQH6C5LSPにクローニングして、プラスミドNVQH6IEd32を調製した。プラスミドNVQH6IEd32における2〜32位アミノ酸欠失HCMVIE1のDNA配列とフランキングDNA配列は図35Aおよび図35Bに示している(SEQ ID NO:60)。
実施例29−2〜32位のアミノ酸が欠失されたIE1遺伝子を含有するポックスウイルス組換え体の構築
NYVAC感染CEF細胞に、プラスミドI4LH6IEd32をトランスフェクションして組換え体vP1201を調製した。また、ALVAC感染CEF細胞にNVQH6IEd32をトランスフェクションして組換え体vCP256を調製した。
実施例30−ポックスウイルス組換え体による2〜32位アミノ酸欠失IE1の発現
免疫蛍光実験によれば、組換え体vP1201およびvCP256による2〜32位アミノ酸欠失IE1タンパク質は核および細胞質の両方に存在していることが示された。バクテリアのエクソン4に対するポリクローナルウサギ血清を用いる免疫沈降法は、vP1201が感染した細胞に、予測サイズに一致する68kDaのタンパク質が発現していることを示した。
実施例31−ポックスウイルスベクターへのHCMV pp65遺伝子のクローニング
NYVACドナープラスミドへのHCMV pp65遺伝子のクローニング
pSD456は、HA遺伝子(A56R、Goebel他、1990a,b)およびその周りの領域を含有するコペンハーゲン(Copenhagen)ワクシニアDNAのサブクローンである。このpSD456を鋳型としPCR法により、A56R ORFをはさむ(フランキングする)左側および右側のワクシニアアームを合成した。左側アームの合成にはオリゴヌクレオチド
を用いた。右側アームは、オリゴヌクレオチド
を用いて合成した。これらの左側アームおよび右側アームの精製PCRフラグメントを更なるPCR反応によって結合した。得られた生成物をEcoRI/HindIIIで分解した。得られた0.9kbのフラグメントをEcoRI/HindIII分解されたpUC8にクローニングしてプラスミドpSD544を得た。
このpSD544を、ポリリンカー内でXhoI分解し、クレノウ断片を用いてフィリングを行い、さらにアルカリホスファターゼ処理した。プラスミドSP126(SP131と等価)をHindIIIで分解し、クレノウ処理し、さらにSmaIで分解してH6プロモータを単離した。このH6プロモータフラグメントをpSD544に連結してSPHA−H6を調製した。
鋳型としてHCMVゲノムDNA(Towne株)を用い、さらにオリゴヌクレオチド
を用いて、HCMV pp65遺伝子をPCR増幅した。CMVpp65のDNA配列は図36に示す(SEQ ID NO:61)。1.6kbの生成物をNruIおよびBamHIで分解(制限部位は、それぞれ、オリゴヌクレオチドpp651およびpp651Rの5′末端に存在する)し、NruI/BamHI分解されたSPHA−H6にクローニングしてプラスミドCMV65.1を調製した。このプラスミドはH6プロモータに結合したpp65遺伝子を含有していたが、該pp65遺伝子の最初の30bpを欠失していた。
pp65の最初の30bPを含有するプラスミドを得るために、オリゴヌクレオチド
を用いてゲノムDNAのPCR反応を行った。得られた1kbフラグメントをBamHIで分解(BamHI部位は、両オリゴヌクレオチドの5′末端に存在する)し、BamHI分解されたIBI24にクローニングしてプラスミドpp65.7を調製した。このプラスミドpp65.7を用いてオリゴヌクレオチド
によるPCR法を実施して0.5kbのフラグメントを得た。このフラグメントをNruIおよびBstXIで分解(制限部位は、それぞれ、オリゴヌクレオチドpp651Bおよびpp65BstXIの5′末端にある)し、CMV65.1の4.8kbのNruI/BstXIフラグメントに連結してプラスミドpCMV65.2を調製した。このプラスミドは、H6プロモータに正確に連結され置換されたHA遺伝子と同じ方向に配向されている全pp65遺伝子を含有する。プラスミドpCMV65.2におけるCMVpp65のDNA配列とフランキングDNA配列は図37に示す(SEQ ID NO:62)。
ALVACドナープラスミドpMPC616E6VQへのHCMV pp65遺伝子のクローニング 図38Aおよび図38B(SEQ ID NO:63)は、カナリアポックスDNAの3.7kbフラグメントの配列である。該配列を分析することにより、C6Lと指称されるリーディングフレームが377位で開始し2254位で終結していることが示された。C6の上流の370bp、SmaI、PstI、XhoIおよびEcoRI部位を含有するポリリンカー、ならびに下流配列の1156bpを含有するC6挿入ベクターを以下のようにして誘導した。0.4bpの上流配列の調製は、精製したゲノムカナリアポックスDNA由来のコスミドクローンのPCR増幅法によりオリゴヌクレオチド
を用いて行った。1.2kbの下流アームは上記と同じ鋳型を用いるPCR増幅法によりオリゴヌクレオチド
を使用して調製した。これらのフラグメントを融合するため、ゲル精製した0.4kbフラグメントおよび1.2kbフラグメントを鋳型としてプライマーC6A1SG(SEQ ID NO:159)およびC6D1SG(SEQ ID NO:162)を用いる第3のPCR法を実施した。得られる1.6kbのフラグメントをアガロースゲルから分離し、SacIおよびKpnIで分解し、同じ酵素で分解されたpBSに連結して、C6挿入プラスミドpC6Lを調製した。
非関連遺伝子に結合したH6プロモータを含有するHpaI−XhoIフラグメントを、SmaI−XhoI分解されたpC6LにクローニングすることによりプラスミドpMPC616E6VQを誘導した。このpMPC616E6VQQをNruIおよびBamHIで分解し、4kbのベクターフラグメント(NruI−BamHI)と0.6kbのC6フランキングアームフラグメント(BamHI−BamHI)を単離した。これらの2種類のフラグメントを、pCMV65.2(p65遺伝子に結合したH6プロモータの一部分を含有する)由来の1.7kbNruI−BamHIフラグメントに連結して、プラスミドCMV65C6.1、すなわち、C6フランキングアーム、H6プロモータおよびpp65遺伝子を含有するが0.6kbのC6フランキングアームを欠失したプラスミドを調製した。CMV65C6.1をBamHIで分解し、アルカリホスファターゼ処理し、さらに、0.6kbのC6フランキングアームに連結して、プラスミドCMV65C6.2、すなわち、H6−pp65インサートの両側にC6フランキングアームが存在しているプラスミドを調製した。プラスミドCMV65C6.2におけるCMVpp65のDNA配列とフランキングDNA配列は、図39Aおよび39Bに示す(SEQ ID NO:64)。
ワクシニアドナープラスミドpSD157K1LINSへのHCMVpp65遺伝子のクローニング プラスミドpCMV65.2をKpnI分解し、ヤエナリヌクレアーゼ処理し、さらにBamHIで分解して、H6−pp65を含有する1.7kbフラグメントを調製した。PSD157K1LINSをBamHIおよびSmaIで分解し、上記1.7kbフラグメントに連結して、プラスミドCMV65.WRを調製した。プラスミドCMV65.WRにおけるCMVpp65のDNA配列とフランキングDNA配列は図40に示す(SEQ ID NO:65)。
実施例32−HCMVpp65を含有する組換えポックスウイルスの構築
プラスミドpCM65.2を、NYVAC感染Vero細胞にトランスフェクションして組換え体vP1184(HCMVpp65を含有する)を調製し、vP1001感染Vero細胞にトランスフェクションして組換え体vP1196(HCMVgBおよびpp65を含有する)を調製し、また、vP1183感染Vero細胞にトランスフェクションして組換え体vP1210(HCMVgB、gHおよびpp65を含有する)を調製した。
ALVAC感染CEF細胞にプラスミドCMV65C6.2をトランスフェクションして組換え体vCP260(HCMVpp65を含有する)を調製した。
vP1170感染Vero細胞にプラスミドCMV65.WRをトランスフェクションして組換え体vP1214(WR−pp65)を調製した。
実施例33−ポックスウイルス組換え体によるHCMVpp65の発現
HCMVpp65に特異的なモノクローナル抗体を用いる免疫沈降実験の結果、組換え体vP1184、vP1214、vCP260、vP1196およびvP1210による65kDaのタンパク質(Pande他、1991)の発現が確認された。さらに、gB特異的なモルモットポリクローナル血清を用いる免疫沈降実験の結果、組換え体vP1196およびvP1210によりgBが正しく発現されていることが明らかにされ、また、gH特異的モノクローナル抗体を用いる免疫沈降実験によれば組換え体vP1210によりgHが正しく発現されていることが明らかにされた。
実施例34−ポックスウイルスベクターへのHCMV pp150遺伝子のクローニング NYVACドナープラスミドpSD541へのpp150遺伝子のクローニング
CMVpp150のDNA配列を図41に示す(SEQ ID NO:66)。オリゴヌクレオチド
を用いてTowneゲノムDNAのPCRを行って、pp150の5′末端から2kbフラグメントを調製した。このフラグメントをBamHIおよびHindIIIで分解し、BamHI/HindIII分解され且つアルカリホスファターゼ処理されたIBI24にクローニングしてプラスミドpp150.5を調製した。オリゴヌクレオチド
を用いてTowne DNAのPCRを実施して、該遺伝子の3′末端を含む1.8kbフラグメントを調製した。このフラグメントをBamHIで分解して、BamHI分解され且つアルカリホスファターゼ処理されたPUC8にクローニングしてpp150.3を得た。
オリゴヌクレオチド
を用いてプラスミドpp150.5を鋳型とするPCRを行い、259bpのフラグメントを調製した。このフラグメントをEcoRIおよびXbaIで分解して、EcoRI/XbaI分解され且つアルカリホスファターゼ処理されたIBI24にクローニングしてプラスミド150.5MPを調製した。このプラスミドはNheI部位、65bpのエントモポックスウイルス42Kプロモータ、およびpp150遺伝子の5′末端から1〜170位の塩基を含有する。オリゴヌクレオチドSP150−3の配列において下線を施した塩基(該プロモータの−53位)はこのクローンにおいては欠失している。
オリゴヌクレオチド
を用いてプラスミドpp150.3を鋳型とするPCRを行い、907bpのフラグメントを調製した。このフラグメントをXbaIおよびHindIIIで分解し、XbaI/HindIII分解され且つアルカリホスファターゼ処理されたIBI24にクローニングしてプラスミド150.3MPを得た。このプラスミドは、pp150の2273〜3141位のヌクレオチド、それに後続するワクシニア初期転写終結シグナル(T5ATT)(YuenおよびMoss、1987)およびNheI部位を含有する。このクローンにおけるpp150のヌクレオチド2748位(図41;SEQ ID NO:48)は、Aでありpp150.3におけるようにCでないが、この変化はサイレントである。
プラスミドpp150.3をSnaBIおよびHindIIIで分解し、3451bpのフラグメントを単離した。プラスミド150.3MPをSnaBIおよびHindIIIで分解し、873bpのフラグメントを単離した。これらの2種類のフラグメントを連結することによりプラスミド150.3MC、すなわち、pp150の1473〜3141位ヌクレオチド、それに後続するT5ATTおよびNheI部位を含有するプラスミドを得た。
プラスミド150.5MPをSacIおよびHindIIIで分解し、3056bpのフラグメントを単離した。プラスミドpp150.5をSacIおよびHindIIIで分解し、1816bpのフラグメントを単離した。これら2種類のフラグメントを連結してプラスミド150.5MC(NheI部位、65bpの42Kプロモータおよびpp150の1〜1981位ヌクレオチドを含有する)を得た。
プラスミド150.5MCをHpaIおよびHindIIIで分解して4634bpのフラグメントを単離した。プラスミド150.3MCをHpaIおよびHindIIIで分解し、1412pbのフラグメントを単離した。これら2種類のフラグメントを連結してプラスミド150.1を得たが、このプラスミドはNheI部位、65bpの42Kプロモータ、pp150の1〜3141位ヌクレオチドおよびNheI部位を含有する。
プラスミドpSD5411は、A25LおよびA26LのORF(Goebel他、1990a,b)を包含するワクシニアウイルス配列が欠失した挿入プラスミドである。欠失接合部は、XhoI、SmaIおよびBglII制限部位を含有するポリリンカー領域から成り、その両側が停止コドンおよび初期ワクシニア転写終結シグナル(YuenおよびMoss、1987)ではさまれている。pSD541の構造は、クローニングしたワクシニアSalI Eプラスミドを鋳型とするポリメラーゼ連鎖反応により行った。プライマーとして合成オリゴヌクレオチド
を用いて左側のワクシニアアームを調製し、また、合成オリゴヌクレオチド
を用いて右側のワクシニアアームを調製した。該左側アームおよび右側アームから成るPCR生成物を結合させて、PCR増幅に供した。そのPCR生成物をEcoRIおよびHindIIIで分解して、アガロースゲル上で電気泳動させた。0.8kbのフラグメントを単離し、EcoRI/HindIIIで切断されたpUC8に連結して、プラスミドpSD541を得た。
pSD541をそのポリリンカー内でSmaIで分解し、アルカリホスファターゼ処理した。プラスミド150.1をNheIで分解し、クレノウ断片で処理して3224bpのフラグメント(42K-pp150を含有)を単離した。これらの2種類のフラグメントを連結してプラスミド150.7を得た。プラスミド150.7におけるCMVpp150のDNA配列とフランキングDNA配列は図42Aおよび図42Bに示している(SEQ ID NO:68)。
ALVACドナープラスミドへのpp150遺伝子のクローニング プラスミドPMM117は、ポリリンカー領域が変性されたpC6Lの誘導体である。PMM117をそのポリリンカー内でEcoRIで分解し、クレノウでフィリングを行い、さらに、アルカリホスファターゼで処理した。プラスミド150.1をNheIで分解し、クレノウ処理して、3224bpのフラグメント(42K-pp150を含有)を単離した。このようにして得られた2種類のフラグメントを連結してプラスミド150.69を調製した。プラスミド150.6におけるCMVpp150のDNA配列とフランキングDNA配列を図43Aおよび図43Bに示す(SEQ ID NO:68)。
ワクシニアドナープラスミドpSD157K1LINSへのpp150遺伝子のクローニング プラスミドpSD157K1LINSをそのポリリンカー内でSmaIで分解し、アルカリホスファターゼ処理した。プラスミド150.1をNheIで分解し、クレノウで処理して、3224bpのフラグメント(42K-pp150を含有する)を単離した。これらの2種類のフラグメントを連結してプラスミド150.4を調製した。プラスミド150.4におけるCMVpp150のDNA配列とフランキングDNA配列を図44Aおよび図44Bに示す(SEQ ID NO:69)。
実施例35−HCMVpp150を含有する組換えポックスウイルスの構築
vP1170感染CEF細胞にプラスミド150.4をトランスフェクションして組換え体vP1238(WR−pp150)を調製した。
NYVAC感染CEF細胞にプラスミド150.7をトランスフェクションして組換え体vP1247(NYVAC−pp150)を調製した。
ALVAC感染CEF細胞にプラスミド150.6をトランスフェクションして組換え体vCP284(ALVAC−pp150)を調製した。
実施例36−ポックスウイルス組換え体によるHCMVpp150の発現
HCMVpp150に特異的なモノクローナル抗体を用いるウエスタンブロットにより(HalowおよびLane、1988)、vP1238感染細胞内に150kDaのタンパク質が発現され、HCMV感染細胞内に存在するタンパク質と共に移動したことが示された。pp150に特異的なモノクローナル抗体を用いる免疫沈降により、vP1247およびvCP284感染細胞内に150kDaのタンパク質の発現が認められた。
実施例37−HCMVgHおよびIE1エクソン4遺伝子を含有するNYVACドナープラスミドの構築
プラスミドI4LH6IE−Ex4をBamHIで直鎖状にし、クレノウでフィリングし、さらにアルカリホスファターゼで処理して4.9kbのフラグメントを得た。プラスミドgH6−3をXhoIで分解し、クレノウでフィリングして、2.3kbのフラグメント(42K-gHを含有)を単離した。これらの2種類のフラグメントを連結してプラスミドI4L42KgHH6IE−Ex4を調製した。プラスミドI4L42KgHH6IE−Ex4におけるCMVgHのDNA配列と負荷されているフランキング配列は図45Aおよび図45Bに示す(SEQ ID NO:70)。
実施例38−HCMVgB+gH+pp65+IE−エクソン4、HCMVgB+gH+pp65+pp150、またはHCMVgB+gH+pp65+IE−エクソン4およびpp150を含有するNYVAC組換え体の構築
vP1196感染Vero細胞にプラスミドI4L42KgHH6IE−Ex4をトランスフェクションして、組換え体vP1216(HCMVgB、gH、pp65、IE−エクソン4を含有)を調製した。vP1216感染CEF細胞にプラスミド150.7をトランスフェクションして組換え体vP1251(HCMVgB、gH、IE−エクソン4、pp65、pp150を含有)を調製した。vP1210感染Vero細胞にプラスミド150.7をトランスフェクションして組換え体vP1262(HCMVgB、gH、pp65、pp150を含有)を調製した。
実施例39−vP1216、vP1251、vP1262におけるHCMV遺伝子の発現
gB、gH、pp65およびIE−エクソン4に特異的なモノクローナル抗体を用いる免疫沈降により、組換え体vP1216によるそれら4種類の遺伝子の正確な発現が確認された。gB、gH、pp65およびIE−エクソン4に特異的なモノクローナル抗体を用いる免疫沈降により、組換え体vP1251によってそれら4種類の遺伝子が正確に発現されていることが確認された。gB、gHおよびpp65に特異的なモノクローナル抗体を用いる免疫沈降により、組換え体1262によるそれら3種類の遺伝子の正確な発現が確認された。pp150に特異的なモノクローナル抗体を用いるウェスタンブロットにより、組換え体vP1251およびvP1262による該遺伝子の正確な発現が確認された。
実施例40−HCMVのpp65およびpp150遺伝子を含有するドナープラスミドの構築 プラスミドCMV65C6.2をEcoRIで直鎖状化し、クレノウでフィリングを行い、さらにアルカリホスファターゼで処理して6.3kbのフラグメントを調製した。プラスミド150.1をNheIで分解し、クレノウでフィリングを行って、3.2kbのフラグメント(42K-pp150を含有)を調製した。これらの2種類のフラグメントを連結してプラスミド150.8を得た。プラスミド150.8におけるCMVpp65とpp150のDNA配列と付加されているフランキング配列は図46A〜46Cに示す(SEQ ID NO:71)。
実施例41−HCMVgB、gH、pp65およびpp150を含有するALVAC組換え体の構築
vPC233感染CEF細胞にプラスミド150.8をトランスフェクションして、ALVAC−gB、gH、pp150組換え体(vCP280)を調製した。
実施例42−vCP280におけるHCMV遺伝子の発現
gB、gHおよびpp65に特異的なモノクローナル抗体を用いる免疫沈降により、組換え体vCP280によるそれら3種類の遺伝子の正確な発現が確認された。
実施例43−gBおよびgLを含有するNYVACドナープラスミドを得るためのポックスウイルスへのHCMVgのクローニング
Towne DNAを鋳型とするPCRにおいてオリゴヌクレオチド
を用いて853bpのフラグメントを調製した。このフラグメントをXbaIおよびHindIIIで分解し、XbaI/HindIII分解され且つアルカリホスファターゼ処理されたIBI24にクローニングしてプラスミドUL115.1を調製した。CMVgLの配列は図47に示す(SEQ ID NO:72)。
プラスミドUL115.1を鋳型とするPCRにおいてオリゴヌクレオチド
を用いて498bpのフラグメントを調製した。このフラグメントHindIIIおよびXbaIで分解し、HindIII/XbaI分解され且つアルカリホスファターゼ処理されたIBI24にクローニングしてプラスミド115.2を調製した。
プラスミドUL115.1を鋳型とするPCRにおいてオリゴヌクレオチド
を用いて450bpのフラグメントを調製した。このフラグメントをEcoRIおよびXbaIで分解し、EcoRI/XbaI分解され且つアルカリホスファターゼ処理されたIBI24にクローニングしてプラスミドUL115.3を調製した。
プラスミド115.3をHindIIIおよびSacIで分解し、3226bPのフラグメントを単離した。プラスミドUL115.2をHindIIIおよびSacIで分解し、469bpのフラグメントを単離した。これらの2種類のフラグメントを連結してプラスミドUL115.4を得た。
プラスミド115.4をNruIおよびBglIIで分解し、865bpのフラグメントを得た。プラスミドI4LH6をNruIおよびBglIIで分解し、3683bpのフラグメントを単離した。これらの2種類のフラグメントを連結してプラスミドI4LH6gLを得た。
I4LH6gL内のH6プロモータの1塩基欠失を矯正するために、該プラスミドをEcoRVで分解し、アルカリホスファターゼで処理して、3805bpのフラグメントを単離した。また、プラスミドI4LH6をEcoRIで分解して736bpのフラグメントを単離した。これらの2種類のフラグメントを連結してプラスミドI4LH6CgLを得た。
プラスミド542CMVgBをBamHIを用いて直鎖状化し、アルカリホスファターゼで処理した。プラスミドI4LH6CgLをBamHIおよびBglIIで分解し、968bpのフラグメント(H6をプロモータとするgL遺伝子を含有する)を単離した。これら2種類のフラグメントを連結してプラスミド542CMVgBgLを調製した。プラスミド542CMVgBgLにおけるCMVgLおよびCMVgBのDNA配列と付加されているフランキングDNA配列は図48Aおよび図48Bに示している(SEQ ID NO:73)。
実施例44−gB、gH、gL、pp65、pp150、IE1−エクソン4、またはgB、gH、gL、pp65、pp150を含有するNYVAC組換え体の構築
vP1251感染CEF細胞にプラスミド542CMVgBgLをトランスフェクションして、NYVAC gB、gH、gL、pp65、pp150、IE1−エクソン4組換え体(NYVAC−CMV6:vP1302およびvP1302B)を調製した。
vP1262感染細胞にプラスミド542CMVgBgLをトランスフェクションしてNYVAC組換え体vP1312(NYVAC−CMV5)を調製した。
実施例45−HCMVタンパク質に対するヒト細胞傷害性Tリンパ球応答
免疫系の抗原特異性セグメントから成るリンパ球は、抗体(Bリンパ球)を産生することにより、あるいは細胞傷害性Tリンパ球(CD8+Tリンパ球)になることにより抗原と機能的に反応し得る。ヒト細胞傷害性Tリンパ球により認識されることが知られているHCMVタンパク質を発現するALVAC組換え体は、ヒトの細胞性免疫応答を再刺激することができ、その際、古典的なCTLsの特徴が発揮される。
CTL標的用に既にEBV−形質転換B細胞系(LBCL)が樹立された13名について、スクリーニングを行いHCMVのgB、IE1およびpp65に対するCTL応答を調べた。これらの血液提供ボランティアのうちHCMVの明確な臨床経歴を有するのは1名のみであったが、HCMV中和性抗体を含有する血清によれば7名がHCMV血清陽性であることが判明した。
ALVAC−IE1(vCP256)によるHCMV IE1 CTLsの刺激:各ボランティアドナーから静脈穿刺により全血液を採取してヘパリン添加したVacutainer管に入れた。残りの血液構成分から単核細胞画分をLeucoprep勾配遠心により分離し、Stim培地(5%のウシ胎児血清(FBS)、2mMのL−グルタミン、10-4Mの2−メルトカプトエタノール、100IU/mlのペニシリン、および100μg/mlのストレプトマイシンを含有するMEM)中で遠心することにより数回洗い、トリパンブルーを用いて生存細胞を計数し、Stim培地内に5×106細胞/mlの濃度で再懸濁した(キラー細胞)。該単核細胞の一部を、2%FBSを含有するMEM中に107細胞/mlの濃度で再懸濁し、HCMVのIE1を発現する組換えALVACを37℃において1時間にわたり感染多重度25で感染させた。インキュベーション後、充分量のStim培地を添加して該感染細胞を稀釈して5×105細胞/mlとした(刺激細胞)。等体積のキラー細胞と刺激細胞とを、直立で25cm2の組織培養フラスコまたは24個のウエルから成る組織培養プレートのウエルに添加して、37℃において6日間、5%CO2/95%空気下にインキュベートした。標的細胞の調製は、刺激細胞の感染の場合と同様に、HCMVのIE1を発現する組換えWRワクシニアウイルス(vP893)でLBCLsを感染させることにより行った。但し、標的細胞は、20%FBSを含有するRPMI1640培地中4×105細胞/mlにおいて一晩インキュベートした。インキュベーション後、単核細胞および標的細胞をAssay培地(10%FBS、2mMのL−グルタミン、5×10-5Mの2−メルカプトエタノールを含有するRPMI1640培地)中の遠心により洗浄した。標的細胞をNa2 51CrO4中で1時間インキュベートし、Assay培地中の遠心により洗浄し、Assay培地中で105細胞/mlの濃度に再懸濁して、使用に供するまで氷上に保持した。遠心後、単核細胞をAssay培地中で2×106細胞/mlに稀釈した。10分の1mlの単核細胞および0.1mlの51Crをラベルした感染標的細胞を、96−ウエル丸底組織培養プレートのウエルに添加した。この体積と細胞密度により、エフェクター対標的比(E:T)は20:1となった。該組織培養プレートを250gで2分間遠心し、次に、5%CO2/95%空気中で37℃において4〜5時間インキュベートした。インキュベーション後、各ウエルからSkatronフィルターガーゼを用いて0.1mlの上澄み液を集め、放出された放射能を計数した。細胞毒性(パーセント)は以下のように計算した:
(実験による51Cr放出−自発的51Cr放出)/(最大51Cr放出−自発的51Cr放出)×100。
最大放出は標的細胞に5%のドデシル硫酸ナトリウムを添加することにより測定し、また、自発的放出はエフェクター細胞の不存在下に標的細胞をインキュベーションすることにより測定した。いずれの実験においても、標的細胞からの51Crの自発的放出が最大の51Cr放出の20%を超えることはなかった。
単一のHCMVタンパク質を発現するALVAC組換え体によるインビトロ刺激後、7名の血清陽性ボランティアドナーのうちの4名由来の単核細胞はHCMVのIE1を発現する同原性(自己由来)標的を溶解し(図49)、また、7名の血清陽性ドナーのうちの6名由来の単核細胞はHCMVのpp65を発現する同原性標的を溶解した(図50)。HCMV血清陽性ドナー由来の再刺激単核細胞が、HCMVのgBを発現する同原性標的を溶解することはなかった。
HCMV血清陰性のボランティアドナー由来の単核細胞をHCMV血清陽性ドナーの単核細胞と同様に再刺激したが、HCMVのIE1またはHCMVのpp65を発現する同原性標的細胞を溶解しなかった(それぞれ、図49および図50参照)。
1例を除くすべての場合において、細胞障害性エフェクター細胞は、適当なHCMVを発現する同原性標的細胞のみを溶解し、非同原性標的細胞は溶解しなかった。唯一の例外であるドナー7C由来の単核細胞は、ALVACpp65(vCP650)による再刺激後、HCMVpp65を発現する非同原性標的細胞を溶解することができた。しかしながら、後に、ドナー7Cおよび非同原性標的細胞系のドナーは、ヒト主要組織適合複合体(MHC)のHLA−B7を共有していることが明らかにされた。
ALVAC−IE1(vCP256)によるHCMV IE1 CTLsの刺激:インビトロでヒトCTLsを刺激し、図49と同様の方法を用いてHCMV IE1 CTLsを分析した。但し、再刺激のための6日間のインキュベーションの後、抗ヒトCD3、CD4またはCD8モノクローナル抗体に結合した免疫磁性ビードを用いてキラー単核細胞をインキュベートした。インキュベーション後、マグネットによりビード、すなわちCD3+、CD4+またはCD8+細胞を除去した。磁性ビートに付着している細胞を解離し、洗浄して、細胞障害性分析に使用した。
このHCMV血清陽性コホートの細胞障害性応答の表現型の典型として、ALVAC−IE1(vCP256)で再刺激されたドナー2A由来の単核細胞は、CD3およびCD8を発現するがCD4を発現しないリンパ球を欠失させたIE1発現性標的を溶解しなかった(図51)。さらに、CD8を増加させたがCD4は増加させていない再刺激単核細胞は、細胞障害活性を保持していた。
このように、HCMV IE1を発現するALVAC組換え体(vCP256)またはHCMV pp65を発現するALVAC組換え体(vCP260)によるインビトロ再刺激によってHCMV血清陽性のボランティアドナーから誘導された細胞障害性エフェクター細胞は、抗原特異性でMHC制限性であり、そしてCD3およびCD8発現性である。これらの特徴は、古典的な細胞障害性Tリンパ球(CTLs)の特徴と一致している。
これらの結果は、HCMVが感染したヒトの細胞の破壊を媒介することのできるヒト細胞障害性Tリンパ球を誘発する目的のワクチンとして、HCMVタンパク質を発現するALVAC組換え体が機能し得ることを示すものである。さらに、これらのデータは、これらの組換えウイルスが、免疫治療の目的で半ビボ刺激したり細胞障害性Tリンパ球クローンを増幅する(Riddell他、1992)ための試薬として機能し得ることも示している。
前に論じたように、HCMV−gBはヒトにおいて防御免疫を誘発するように機能することができるが、その理由は、1)ヒト血清からgB特異的抗体が吸収されてしまうとHCMV中和性抗体の力価が有意に減少すること(Goenczoel他、1991;Marshall他、1992)、および2)血清陽性の個体においてgBタンパク質によりヘルパーT細胞が活性化されている証拠がある(Liu他、1991)からである。Goenczoelら(1990)は、イムノアフィニティ法で精製したgBがヒトのボランティア内で免疫原性を有していたことを報告している。この研究では、該精製gBの単一回投与(注射)により、本来血清陽性の個体に高力価のHCMV中和性抗体およびリンパ球増幅を誘起することができた。血清陰性の個体においてはgB製剤を3回投与すると一過性のHCMV中和性抗体が誘起され、第4回目の投与により迅速な再誘起が認められ、HCMV中和性抗体力価が上昇した。
これらの研究は、精製gBがサブユニットとして使用できることを示している。さらに、精製gBはNYVACまたはALVAC−gB組換え体と組み合わせることにより、プライム/ブーストプロトコールに使用することもできる。最近の研究が示すところによれば、外来遺伝子の産生物を発現するポックスウイルス組換え体で免疫化した後、該遺伝子産生物を精製したものでブースト(追加免疫)を行うプライム/ブーストプロトコールは、それらの生成物のいずれか一方のみによって誘起される応答に比べて高い免疫応答を誘起している。例えば、HIV−1のエンベロープ等タンパク質を発現するワクシニア組換え体で免疫化され、さらに、バキュロウイルス組換え体由来の精製されたHIV−1エンベロープ糖タンパク質でブーストされたヒトは、該ワクシニア組換え体または精製エンベロープ糖タンパク質単独で免疫化された個体よりも高いHIV−1中和性抗体力価を示している(Graham他、1993;Cooney他、1993)。ALVAC−HIV(vCP125)の2回投与(注射)で免疫化されたヒトは、HIV特異性抗体を産生しなかった。ワクシニアウイルス組換え体由来の精製rgp160でブーストすると、検知可能なHIV−1中和抗体を生じた。さらに、rgp160を用いるブーストにより、rgp160に対して特異的なリンパT細胞の増殖の上昇が明らかに認められた。このワクチン化法によれば、エンベロープ特異的細胞障害性リンパ球活性も検出された(Pialoux他、1995)。サル免疫不全症ウイルス(SIV)エンベロープ糖タンパク質を発現するワクシニア組換え体で免疫化され且つバキュロウイルス組換え体由来のSIVエンベロープ糖タンパク質でブーストされたマカークザルは、SIVのチャレンジから防御されている(Hu他、1991;1992)。
実施例46−HCMV糖タンパク質Bの精製
この実施例は、ワクシニア組換え体によって産生されたCMV糖タンパク質Bの精製、およびALVAC−CMV gB(vCP139)と組み合わせた場合の実験動物中の免疫原性の試験に関するものである。
COPAK組換え体vP1126、vP1128、およびvP1145(それぞれ、異なる形態のgBを発現する)は、マウス中にCMV中和性抗体を誘発し(表23)、したがって、免疫原性のある形態でgBを発現する。ウイルスと細胞系、そしてCMVのgBを精製するための免疫試薬を選定するために、5種類の異なるgB特異的モノクローナル抗体を用いる免疫沈降分析により上記3種類のCOPAK組換え体の比較を行った。その分析結果に基づき、vP1145感染Vero細胞の培地からgBを精製する方法を開発した。CMV gB特異的モノクローナル抗体(mAb)CH380をプロテインA−アガロースに架橋させることにより、イムノアフィニティカラムの層材料(充填材)を調製した。この材料を用いて1段階法によるgBの精製を行った。gBのバッチを幾つか製造し、セクションIIIに記述するように純度を調べた。
免疫沈降分析 それぞれ60mmの皿に入れたVero細胞およびHeLa細胞の単層にvP1126、vP1128、vP1145、またはvP993(後述)を無血清培地内で5pfu/細胞のmoiで感染させた。感染から24時間後、培地と細胞を別々にハーベストした。下記の試薬を用い、モノクローナル抗体用プロテインAに対するブリッジとしてラットの抗マウスIgGを用いる免疫沈降(IP)分析を行った(Taylor他、1990)。
ウイルス:
vP1126:COPAK-CMV gB(全域)。全長の野性型gB。
vP1128:COPAK-CMV gB(TM-)。トランスメンブレン領域を欠失。
vP1145:COPAK-CMV gB(TM-,Cl-)。トランスメンブレン領域を欠失し、切断部位が変性されている。
vP993:COPAK(対照)。
試薬:
モルモット抗CMV gB:Eva Goenczoel(Wistar研究所)から入手。
モノクローナルCH380:PMs&V(PereriaおよびHoffman、1986)から入手。
モノクローナル13-127:Advanced Biotechnologies社製。
モノクローナル13-128:Advanced Biotechnologies社製。中和性でコンホメーション依存性。
モノクローナルHCMV-34:Cogent Diagnostics製、中和性。
モノクローナルHCMV-37:Cogent Diagnostics製、中和性。
ウサギ抗−p25(ワクシニアE3L):米国アリゾナ州Bert Jacobsから入手。
イムノアフィニティクロマトグラフィ層材料の調製 架橋剤ジメチルピメリミデートを用いてプロテインA−アガロースに結合させたモノクローナル抗体(mAb)CH380の約2.4mgから成るイムノアフィニティカラム層材料1mlがConnaught Laboratories社(カナダのオンタリオ州Willowdale)のStephem Cockleによって提供された。mAb CH380(PereriaおよびHoffman、1986)は、CMVウイルスエンベロープ調製物(Goenzoel他、1990)からCMVgBを精製するのに以前に使用された。S.Cockleからの材料を予備的な実験に用いて、gB精製に有用であるかを確認した。gBの生産をスケールアップするため、S.Cockleによるのと同じ方法により、後述するように、追加の層材料を調製した。
モノクローナル抗体CH380の調製 凍結乾燥したモノクローナル抗体CH380(ロットS1705、PMsvから入手)の4バイアルをPBS(137mMのNaCl、2.7mMのKCl、1.5mMのKH2PO4、8.1mMのNa2HPO4、pH7.4)中で再構成(各1ml)し、PBS(最終体積3.5ml)に対して一晩透析した。ビシンコニン酸分析(BCA分析。試薬は米国イリノイ州RockfordのPierceから入手)によるとタンパク質濃度は4.9mg/mlと測定された。次に、この製剤を等体積のMAPS結合緩衝液(Bio-Radのカタログ番号153-6161;milli-Q水中31.4%w/v、pH9に調整、22mmの膜でろ過したもの)中に稀釈した。粒状物質を取り除くため、MAPS緩衝液に溶かした抗体製剤を16,000×gで30分間遠心し、上澄液中のタンパク質濃度を280nmにおける吸光度(IgGに対する吸光度係数を1.44とする)から計算した。
プロテインA−アガロースビードの調製 プロテインA−アガロースビード(Bio-Rad社カタログ番号153-613)3mlを、2倍体積のMAPS結合緩衝液を用い密閉管中で軽く混合し、1000×gで5分間遠心(Beckman社製GPKR遠心機で1400rpm、GH3.7ローター)することにより4回洗浄した。最後の洗浄後、上清を廃棄した。
ビートへのモノクローナル抗体の結合 上記の工程1で得たmAb抗体の全てを工程2からの洗浄済みビードに添加し、得られた混合物を密閉管中4℃で回転させた。ビードをペレット化し(1000g/5分)、280nmにおけるODを読みとり(上述)上清中のIgGを測定することにより、ビードに結合されたmAbの量を6〜12時間毎に求めた。上清から90%のIgGが欠失するには、4℃において約48時間のインキュベーションが必要であった。
ビードへのモノクローナル抗体の共有架橋 90%の結合が得られた後、ビードを6ml(2倍体積)の50mMのホウ酸塩、3MのNaCl(pH9)で4回洗浄した。次に、該ビードを30ml(10倍体積)の50mMのホウ酸塩、3MのNaCl(pH9)に再懸濁し、pHを9±0.1に調整した。ビードの1サンプル(100μl)を抜き出し、後の架橋度の評価に供した。架橋剤ジメチルピメリミデート(DMP)は使用直前に調製し、200mMのホウ酸、3MのNaCl、pH9に溶かして500mMの濃度とした。ビードにDMPを添加して最終濃度20mMとし、それらのビードを密閉管内で室温下に30分間上下を逆にすることにより混合した。別のビードサンプル(100μl)を取り出し架橋度の評価に供した。残存する架橋剤をクエンチするため、200mMのエタノールアミン(pH8)6ml(2倍体積)を用いてビードを2回洗浄し、次に、200mMのエタノールアミン(pH8)30ml(10倍体積)中で、2時間室温下に混合(上下を逆にする)することによりインキュべートした。最終ビードを6ml(2倍体積)のPBSで4回洗い、0.01%NaN3を含むPBS6ml中に保存した。
架橋度を測定するため、DMPインキュベーションの前後に取り出したゲル状ビードサンプルをペレット化し、上清を棄て、そしてビードを2倍量のSDS−PAGEサンプル緩衝液(還元剤を含有)と混合した。これらのサンプルを煮沸し、10%ポリアクリルアミドゲル状で電気泳動法により分離した。クーマーシーブルーで染色した後、IgGのH鎖およびL鎖は、「事前」サンプルには検出されたが「事後」サンプルには検出されず、効率的に架橋が生じていることが示された。
ビードによる抗体のインキュベーションの前後のタンパク質濃度に基づき、得られた層材料は、プロテインA−アガロースビード1ml当たり約5mgのモノクローナル抗体を含有するものと推定された。
イムノアフィニティカラムクロマトグラフィによるCMVgBの精製 カラム緩衝液 PBS(173mMのNaCl、2.7mMのKCl、1.5mMのKH2PO4、8.1mMのNa2HPO4)、pH1(バッチ1)、pH7.4(バッチ2〜5)、またはpH6.8(バッチ2〜5);0.1Mグリシン、pH2.5;1Mトリス、pH8.5。
カラム カラムの大きさは、体積として0.3〜4mlの範囲で変化させた。新しいカラムを注入したときは、10層体積(bed volume:bv)の0.1Mグリシン(pH2.5)、次いで10〜20bvのPBS(pH7または7.4)を用いてストリッピングを行った。各カラム運転の最後に、少なくとも10bvのPBS(pH7)を用いてカラムを洗浄した。各カラム運転の最初にも、少なくとも10bvのPBS(pH7)を用いて洗浄を行った。カラムの運転は室温下に行い、使用していないときは、PBS+0.01%NaN3中4℃で貯蔵した。
粗gBサンプルの調製 MEM+10%FBSに入れたVero細胞をローラボトル(850cm2)に接種した。感染の2〜12時間前に培地を無血清MEMに変えた。vP1145を細胞に感染させ、このときのMOIは5pfu/細胞(体積10ml/無血清MEMのRB)とした。37℃で60分間ウイルスを吸収させ、その後、各RBに無血清MEMを添加し、37℃においてインキュベーションを続行した。感染から16〜24時間後、培地をハーベストした。3000rpmで15分間遠心することにより(Beckman製GPKR遠心機、GH3.7ロータ)培地を清澄化した。上清を回収し、Beckman製SW28ロータ中で60分間、20,000rpmで遠心することにより更に清澄化した。次に、清澄化した培地を、30,000MWCOを有する以下の限外濾過装置を用い、PBS(pH7.4)に緩衝液を交換する限外濾過により濃縮(10〜40倍)した:Centricell-60(Polysciences製、カタログ番号19182-6)、Centriprep-30(Amicon製、カタログ番号4306)、またはポリスルホン浸水性フィルターユニット(Polysciences製、カタログ番号2250)。以上のようにして得られた材料を後述するようにカラムに適用した。
カラム操作 ストップコックまたはペリスタル型ポンプにより流量を0.03〜0.09ml/分に制御して、上記の粗gBサンプルをカラムに適用(注入)した。サンプルの注入後、10bvのPBS、pH7(バッチ1)、または20bvのPBS、pH7.4の次に20bvのPBS、pH6.8(バッチ2〜5)を用いて、0.2〜0.6ml/分の流量でカラムを洗浄した。10bvの0.1Mグリシン(pH2.5)を用いて被結合材料を溶出させて、1.0Mトリス(pH8.5)50μlを含有する管(バッチ1,3)または100μlを含有する管(バッチ2,4,5)に、500μlのフラクション(バッチ1,3)または1mlのフラクション(バッチ2,4,5)を集めた。1つのカラム(#28)は0.1Nのグリシン+0.1Mのトリス(pH7)を用いて溶出を行った。CMV gBフラクション(画分)の同定は、還元条件下10%ゲル上のSDS−PAGE、次いで銀染色(Bio-Rad社製キット、カタログ番号161-0443)によって行った。
溶出gBの処理 SDS−PAGEおよび銀染色による同定後、CMVgB画分をプールし、以下の2つの方法のいずれかによって濃縮した:1)0.1×PBSに対する透析および真空による10倍濃縮(バッチ1の大部分)、または2)70%硫酸アンモニウムを用いる沈降処理およびPBSへの再懸濁。gBサンプルのタンパク質濃度は、ビシンコニン酸マイクロプレート分析(BCA、試薬は米国イリノイ州RockfordのPeirce製)により測定した。gBの5バッチを調製し、幾つかのアリコートにして−70℃に凍結した。
精製gBの評価 スロットブロット スロットブロット分析を用いて、粗調製物、アフィニティカラム精製のフロースルー画分および溶出画分中のCMV gBの相対量を測定した。各テストサンプルについてPBS中の連続的な2倍稀釈を行い、SchleicherおよびSchell Manifold IIスロットブロット装置を用いてニトロセルロースペーパーにかけた。各テストには、標準として既知のタンパク質濃度(BCAマイクロプレート分析によって測定)を有する精製gBの連続稀釈サンプルを含ませた。CMV gBの検出には、モノクローナル抗体CH380(1000倍稀釈)を用い125Iヤギ抗マウス抗体(NEN製、カタログ番号NEX159、0.1Ci/ml)により行った。オートラジオグラフ上のスロットブロット信号をスキャンニングして、デンシオメトリー(米国ニューヨーク州Huntington StationのPDI社製、Quantity-Oneデンシオメータプログラム付)によって分析した。各テストサンプルのCMV gBの量は、gBの標準曲線と比較した線形回帰分析により求めた。
ウエスタンブロット テストサンプルは、還元条件下に10%ゲル上に電気泳動法に分離し、そしてニトロセルロースペーパーにブロッティングした(HarlowおよびLane、1988)。以下の試薬を用いてブロットを探査し、CMVgB、マウスIgG、ワクシニア、およびVero細胞タンパク質の存在を調べた。
免疫沈降/ウエスタンブロット分析 モノクローナル抗体を用いバッチ1のgBについてIP(免疫沈降)/ウエスタンブロットを実施した。ラベル化していない粗製gBおよび精製gBおよび精製gBを免疫沈降に供した後、SDS−PAGEにかけ、ゲルをニトロセルロースにブロッティングし、モルモット抗CMVgB抗体(Eva Goenczoelから入手)(1000倍稀釈)を用い、125IプロテインA(NEN製、#NEX-146)(0.1μCi/ml)により、gB特異的タンパク質を検出した。
gB生成物の純度分析 各gBバッチのサンプルについて、還元条件下10%ゲル上での電気泳動分離による分析を行った後、クーマーシーブルーによる染色を行った。乾燥後のゲルをスキャンニングしてデンシトメトリー(米国ニューヨーク州Huntington StationのPDI社製、Quantitiy-Oneデンシトメータプログラム付)によって分析した。
3種類のワクシニアCOPAK組換え体によるCMVgBの発現を比較するための免疫沈降分析 CMVgBを産生させイムノアフィニティ精製するのに好適な組換え体、細胞基質および抗体を選択するために、モルモット抗gB抗体および一連のモノクローナル抗体を用いる免疫沈降分析により、3種類の異なる形態のgBを発現するCOPAK組換え体の比較を行った。組換え体vP1126、vp1128、およびvP1145は、マウス内にCMV中和性抗体を誘発し、したがって、免疫原性のある形態のgBを発現する(表23)。テストしたCMV gB抗体はすべて同様のIP結果を示した。HeLa細胞およびVero細胞感染由来の培地および細胞画分の両方を用いてモルモット血清について行った代表的な分析を図52A〜図52Dに示す。予想されたように、vP1128およびvP1145感染細胞の細胞および培地画分の両方からCMV gB特異的物質が沈降したが、vP1126感染細胞に関しては細胞画分のみであった。gB特異的バンドの見かけの分子量は以前に報告された結果と一致している(BrittおよびAuger、1986;BrittおよびVugler、1989;Reis他、1993)。これらの3種類のCMVgB組換え体の全ての細胞画分は、見かけの分子量130〜140の主要バンドを含有していたが、これはグリコシル化された未切断gB前駆体の見かけの分子量に一致する。細胞画分にはみかけのMWが110kDaおよび55kDaの弱いタンパク種が観察されたが、これは加水分解処理を受けた成熟タンパク種に一致する。N末端生成物は以前に90〜110kDaであると報告され、また、C末端生成物は55〜58kDaと報告された(BrittおよびAuger 1986)。HeLa細胞においては見かけの分子量がさらに高いタンパク種(約150kDa)も存在していた(例えば、図52Dのレーン4)。このタンパク種も、おそらく、未切断前駆体を示すし、グリコシル化の更に進んだものであろう。培地画分においては、vP1128およびvP1145感染細胞から3種類gBバンドの沈降が認められ、未切断前駆体ならびに、N−末端プロセシングされたポリペプチドおよびC末端がプロセシングされたポリペプチドを示している。デンシトメトリー分析によれば、HeLa細胞に比べてVero細胞の培地画分からの方がより多くのgB特異性の物質の沈降が認められ、組換え体vP1145はvP1128よりも多くのgB特異性物質を産生させていた。この相違は、vP1128の細胞画分よりもvP1145の細胞画分からの方がより多くのワクシニアE3Lが沈降し、このサンプルにおいては全体のワクシニアの発現量が高くなっていることを示しているという事実から(図53Aおよび図53B)説明できる。vP1145については、細胞画分(HeLa細胞およびVero細胞の両方)からよりも培地画分からの方が多くのgB特異的物質の沈降が見られた(図52AおよびBと図52CおよびDを比較されたい)。
HeLa感染細胞の培地から沈降したサイズの異なる3種類のgBは、Vero細胞で産生した3種類と分子量が異なっているようである(図52Aと図52Bを比較)。この相違は、Vero細胞に比べてHeLa細胞におけるグリコシル化の程度が異なることに因るものかも知れないが、この推定は更に検討はしていない。分子量の大きいgB特異的タンパク質が他のヒト細胞系(MRC−5)においても産生されるか否かということを明らかにするため、モノクローナル抗体CH380を用い、vP1145を感染させたHeLa細胞、MRC−5細胞およびVero細胞の培地におけるgBタンパク質を比較するウエスタンブロット分析を行った(図54)。その結果、この分析で検出できる2つのgBバンド、すなわち、gB前駆体(約140kDa)およびC末端プロセシングフラグメント(55〜58kDa)は、Vero細胞におけるよりもHeLa細胞およびMRC−5細胞における方がみかけの分子量が大きくなっていた。N−末端プロセシングフラグメントは、モノクローナル抗体CH380またはモルモット抗CMVgB血清のいずれを用いてもウエスタンブロットでは検出できない。
イムノアフィニティ精製用にモノクローナル抗体CH380を選択した。その理由は、大量を容易に入手でき、また、上記IP分析において5種類の異なるモノクローナル抗体により検出されたgB特異的タンパク質に違いが認められなかったからである(図55)。IP分析に基づき、更に、感染細胞の培地から分泌gBを精製するには細胞膜からgBを可溶化し、細胞タンパク質からそれを精製する必要がないということを考慮して、CMV gBの精製はvP1145感染Vero細胞の培地画分を用いて開始した。無血清培地において感染を行い、粗製材料中に混入するタンパク質を更に減少させた。
CMV gBの精製 別々に実施した15回のイムノアフィニティクロマトグラフィカラム運転(全量として3.1mgのgBを得た)の結果を表24にまとめている。該物質の幾分かを更なる分析に使用し、残りは、精製済み生成物として5つのバッチに分けて(全量2.6mg)プールした(図25)。カラムラン7,8,10および11は同一のカラムにおける連続的な運転である。カラム19A、19B、19C、21A、21Bおよび21C由来の層材料をプールしてラン28、29および32用のカラムを調製した(ラン28、29および32から最大量のgBが得られた)。表24は各カラムに適用した粗製gBを掲記したものであり、該粗製物が誘導されたvP1145感染Veroローラーボトルの数(RB当たり1×108細胞)、該粗製物中の全タンパク質およびgB特異的タンパク質の量を示している。8サンプルの分析に基づき、該粗製物中の全タンパク質含有量は1.2〜3.7mg/RBの範囲にあり平均値は2.4mg/RB(106細胞当たり24μg)であった。精製gBを標準とするスロットブロット分析により、それらの調製物のうちの7つについて粗製物中に存在するgBの量を測定したところ、50〜350μg/RBの範囲にあり、平均値は153μg/RB(1.5μg/106細胞)であった。これらの数値をまとめると、粗製物中のタンパク質は、約6%のgBから構成されていたことが示された。CMV gBの収量は、8〜29μg/RBの範囲にあり、平均値は20μg/RB(0.2μg/106細胞)であった(表24)。1mgのCMV gBを得るのに、大略50のローラーボトル(1×109細胞)が必要であった。gB用免疫吸着ゲルの性能は充分に調べていなかった。そこで、カラムラン28,29および32に用いた4mlの層材料を当初,0.6mlのミニカラムに分割し(カラムラン19A、19B、19C、21A、21Bおよび21C)、gBを量を変えながら各カラムにかけて(適用して)結合の飽和が生じるかを判定した。不幸なことには、カラムに適用した粗製物中のgBの量を過大評価していたため、飽和は見られなかった。結合が最大のもの(カラム19Cから)をカラム性能の推定量として用いた(300μg/ml層材料)。ミニカラムから溶出したgBの量は、カラムに適用したgPタンパク質の8〜25%であった(表24)。したがって、4mlカラムの性能が少なくとも1.2mgであり、適用されたgBの25%が回収されるとすれば、1.2mgの精製gBを得るには、4.9mgの粗製gB(約33のRBから)をカラムに適用しなければならないものと推定された。カラム28による結果はこの推定に近い:36のローラーボトルから得られた材料をカラムに適用して、1mgのgBが溶出された。
カラムに適用されたが精製物として溶出されなかったgBの定量的な説明はできていない。カラムに適用された(かけられた)gBのうちの8〜25%のみが精製gBとして回収されたものであるから、残りは、フロースルー画分、洗浄画分、生成物とともにプールされなかった溶出画分に存在するか、またはカラムに結合しているはずである。フロースルー画分においてはウエスタンブロットによりCMV gBを検出することはできた(例えば、図56のレーン6)。しかしながら、スロットブロット分析によりフロースルー画分中のgB量を推定すると、適用したgBの20%以上を説明できなかった。洗浄画分は調べていない。最終的なgB生成物として選ばれたプール画分はピーク画分のみであるから、隣接する画分中の痕跡量のgBが消失gBとなっているのかも知れない。例えば、図57は、カラム8から溶出された連続的な画分であり、画分8.17〜8.21はgB生成物としてプールされたが、痕跡量が画分8.16および8.22に残存していた。さらに、免疫吸着ゲル中にgBが保有されている証拠もある。溶出および洗浄後のカラム11および19Cからのゲル材料は、ウエスタンブロットで検出され得るgB特異的物質を含有している(図56のレーン2および3)。カラム上に残存するgBの量の定量的分析は行わなかった。
カラムラン7のフロースルー物質をカラム10に適用することにより、フロースルー物質をカラムに再度適用してみた(表24)。カラム10から溶出したgBの量(4.5μg)は、カラム7から得られたgB量(110μg)のわずか4%であった。この結果を評価することはできない。gB用層材料の性能、ならびにカラムに適用されフロースルー画分に存在するgBの量が不明であったからである。収量が悪いので、この方法を再度用いることはなかった。
精製gBの評価 gBを含有する溶出画分をプールした後、精製gBについて以下の評価を行った:1)全タンパク質濃度の測定、2)gB特異的および非特異的バンドを同定するSDS−PAGE分析、および3)免疫試薬を用いる上記バンドの確認。さらに、精製gBを分析して、デンシトメータの走査による純度、および一連のCMVモノクローナル抗体に対する結合能による自然コンホメーションを調べた。
各カラムから溶出したCMV gB含有画分を先ずSDS−PAGEと銀染色により分析し、gB画分の同定を行い各ラン毎にプールした。典型的な溶出プロフィルは図57に示す。溶出gBの一部を分析に使用し、該物質の残りを一緒にして5つのバッチに分けた(表25)。各バッチについて、還元条件下10%ゲル上のSDS−PAGEによる分析を行い、クーマーシーブルーを用いて染色を行った(図58)。染色ゲルをデンシトメータでスキャンニング(走査)し、各バンドの分子量および相対量を求めた:典型的なスキャンを図59および図59Aに示し、また、5つのバッチの分析結果を表26にまとめている。SDS−PAGE分析によれば、バッチ1〜5は非常に似ているようである(図58)。みかけの分子量が120〜130および51〜59kDaの2つの主要バンドは、前駆体gBタンパク質およびC末端がプロセシングされたフラグメントを表す。これらのバンドが幅広状になっているのは、一般にグリコシル化の強いこの種のタンパク質においていろいろなレベルのグリコシル化が生じているためであろう。これらのバンドがgB特異的であることの確認は、モノクローナル抗体CH380を用いるウエスタンブロットの結果によって裏付けられた(図60B)。バッチ2〜5においてダブレットとして現れている(図58)みかけの分子量77〜100kDaのバンドは、gBのN−末端プロセシングフラグメントのサイズに一致し、IP分析によりvP1145感染細胞の培地で同定されたものである(図52Aおよび52B)。これらのバンドは、ウエスタンブロット分析(図60B)または免疫沈降−ウエスタンブロット分析の組合せ(図61Aおよび図61B)のいずれによってもgB特異的であると確認できなかったが、モルモット抗gB血清またはモノクローナル抗体のいずれもウエスタンブロットによりN−末端プロセシングフラグメントを検出することができないことから、その可能性は除外されるべきであろう。各バッチには、全タンパク質の6〜15%の程度で、約39〜45kDaの混入(汚染)タンパク質が存在する(図58および表26)。全てのバッチにおいてgBタンパク質である可能性のより高い2つのバンド、すなわち、一方は200kDaより大きいバンドおよびもう一方は30〜35kDaのバンドが存在する(図58、59、および59A;表26)。大きいタンパク質(〜200kDa)がgBであるという証拠は、モノクローナル抗体を用いるウエスタンブロットによって導かれ、これによれば、200kDaよりも大きい分子量を有する2つのタンパク質が検出されている(図60Bのレーン2および3)。約30〜35kDaのタンパク質もgB特異的である可能性がある(図58)。vP1145感染細胞の培地のIP分析においては、約35kDaのタンパク質が、3種類のモノクローナル抗体(13-128、HCMV34、およびHCMV37)により検出され(図55)、およびモルモット血清により検出されている(図52Aおよび図52B)。このサイズのタンパク質はReis他により(1993)gBの分解産物として記述されていた。
gB調製物の汚染(混入)タンパク質が、細胞基質、ウイルスベクターまたは免疫吸着層材料に由来するものと仮定して、該調製物を調べてマウスIgG、Vero細胞タンパク質、およびワクシニアタンパク質の存在を確認した。Vero細胞またはマウスIgG由来のタンパク質はウエスタンブロット分析によっては検出することができなかった(図60Aおよび図62A)。しかしながら、約35および20kDaの分子量を有するワクシニア特異的タンパク質が痕跡量で検出された(図62B、レーン5)。
溶出されたgBがその自然のコンホメーションを保持していたかということを明らかにするため、3種類の中和性抗体および1種類のコンホメーション依存性抗体を含む一連のモノクローナル抗体を用いて、免疫沈降/ウエスタンブロットを組み合わせた分析を行った。各モノクローナル抗体は、精製されたgB由来の前駆体およびC−末端フラグメントを沈降させ、イムノアフィニティカラムから溶出されたgBがその自然のコンホメーションを保持していることが示された。
総括すると、バッチ1〜5の溶出gBの分析により、生成物は少なくとも2種類の既知のgB特異的タンパク質、すなわち前駆体gBおよびC末端フラグメントを含有し、これらを合せてタンパク質の約50%を占めていることが示されている(図58および表26)。その他の3種類のタンパク種(全タンパク質の約20〜25%をしめる)もgB特異的と考えられ得るが、直接的な証拠は得られていない。
精製されたgBの免疫原性 CMVgBの5つのバッチをプールし、最終濃度を測定した。精製gBの幾つかにはアジュバントとしてミョウバンまたはQS21を加え、マウスへの接種に用いた。マウスの血清についてHCMV中和性抗体の有無を調べた。表27は、テストした精製gBはいずれの量においても両アジュバントによりHCMV中和性抗体を誘発できたことを示している。
精製gBをALVAC−gBと組み合わせてマウスプライム(初回免疫)/ブースト(追加免疫)プロトコールに用いた。表28が示すように、0日目にALVAC−gB(vCP139)が投与され且つ29日目に精製gB(QS21またはミョウバンをアジュバントとする)でブースとされたマウスは、2回目にALVAC−gB(vCP1319)が投与されたマウスよりも高レベルのHCMV中和性抗体を発現した。
本明細書に記す結果が示すように、NYVACおよびALVAC−HCMV組え体およびそれらから得られる生成物の性能は、記述したような組成物や用途に利用することができ、例えば、免疫原性、抗原性もしくはワクチン組成物、または、分析、キットもしくは試験用の抗原もしくは抗体の調製に用いられ、また、例えば、HCMVの感染を防止することのできるワクチンまたは免疫化(免疫感作)戦略に用いられるのに適しており、さらに、該組換え体のDNAはプローブとして、またはPCRプライマーを調製するのに有用である。
実施例47−NYVAC−CM6およびNYVAC−CMV5におけるCMV遺伝子の発現
gB、gH、pp65、pp150およびIE1−エクソン4に特異的なモノクローナル抗体を用いる免疫沈降によれば、NYVAC−CMV6によりこれら5種類の遺伝子が正しく発現されていることが示された。FACScan分析(Becton-Dickinson社製)によれば、vP1302B感染細胞内ではgHの表面発現があるが、その親株(vP1251)が感染した細胞内ではこれがなく、機能性gL遺伝子産生物はvP1302B内で発現されることが示された。
gB、gH、pp65およびpp150に特異的なモノクローナル抗体を用いる免疫沈降によれば、NYVAC−CMVによりこれら4種類の遺伝子が正しく発現されていることが示された。FACScan分析によれば、vP1312感染細胞内でgHの発現があるが、その親株(vP1262)が感染した細胞内ではこれがみられず、機能性gL遺伝子産生物はvP1312内で発現されることが示された。
実施例48−HCMVのpp65およびpp150遺伝子を含有するALVACドナープラスミドの構築
プラスミドCMV65C6.2をEcoRIで直鎖状化し、クレノウでフィリングを行い、さらに、アルカリホスファターゼ処理して6.3kbのフラグメントを調製した。プラスミド150.1をNheIで分解し、クレノウでフィリングして3.2kbのフラグメント(42K-pp150)を単離した。これら2種類のフラグメントを連結してプラスミド150.8R1(このプラスミド内では、pp65およびpp150の転写が同じ方向にあり、また、pp150は実施例40のプラスミド150.8と逆になっている)を得た。プラスミド150.8R1におけるCMVpp65およびCMVpp150のDNA配列と付加されているフランキング配列は図63A〜図63Cに示している(SEQ ID NO:177)。
実施例49−ALVAC−CMV4(gB、gH、pp65、pp150)の構築
vCP233感染CEF細胞にプラスミド150.8R1をトランスフェクションしてALVAC−CMV4(vP1360)を調製した。
実施例50−ALVAC−CMV4内でのCMV遺伝子発現
gB、gH、pp65およびpp150に対して特異的なモノクローナル抗体を用いる免疫沈降によって、ALVAC−CMV4(vP1360)により4種類の遺伝子は全て正しく発現されていることが示された。
実施例51−HCMVのgLまたはgL+IE1−エクソン4を含有するALVACドナープラスミドの構築
図64Aおよび64B(SEQ ID NO:178)は、プラスミドpCPtkに含まれるカナリアポックスDNAの3.8kdセグメントの配列である。カナリアポックスチミジンキナーゼ遺伝子(tk)は、このセグメント内にコードされ、4412位のヌクレオチドから開始され4951位のヌクレオチドで終結している。C7の上流2085bp、SmaI、NruI、EcoRI、XhoIおよびStuI部位を含有するポリリンカー、ならびにC7の上流812bpを含有するtk(C7)挿入ベクターを以下のように調製した。pCPtk由来の3450bpのPstI/NsiIフラグメントを、pBS−SK+の平滑末端化Asp718/XbaI部位にクローニングしてプラスミドpEU1を得た。tkのORFを欠失させポリリンカーと置換させるため、オリゴヌクレオチド
を用いてpCTtk由来の2種類PCRフラグメントを増幅した。これらのフラグメントを精製し、HindIII/EcoRIまたはBstBI/EcoRIで分解し、HindIII/BstBIで切断されたpFU1に連結して、プラスミドpC7を得た。
pC7内のポリリンカー領域を次のように変性した。pC7をEcoRIおよびStuIで分解し、精製し、次に、アニーリングされたオリゴヌクレオチド
に連結して、プラスミドpC7+を調製した。プラスミドpC7+をBamHIで分解し、アルカリホスファターゼで処理した。プラスミドI4LH6CgLをBamHIおよびBglIIで分解して968bpのフラグメント(H6をプロモータとするgL遺伝子を含有する)を単離した。これら2種類のフラグメントを連結してプラスミドC7gL(このプラスミド内では、gLの転写は欠失されたtk遺伝子と同じ方向になる)を調製した。プラスミドC7gLにおけるHCMVのgLのDNA配列と付加されているフランキング配列は図65Aおよび図65Bに示している。
プラスミドC7gLをBamHIおよびPspAIで分解し、アルカリホスファターゼで処理した。プラスミドI4LH6IEEX4をBamHIおよびPspAIで分解し、1363bpのフラグメント(H6をプロモータとするIE1−エクソン遺伝子を含有する)を単離した。これら2種類のフラグメントを連結してプラスミドC7gLIES2を得た。プラスミドC7gLIES2におけるHCMVのgLおよびIE1−エクソン4のDNA配列と付加されているフランキング配列は図66Aおよび66Bに示している。
実施例52−ALVAC−CMV6(gB、gH、gL、pp65、pp150、IE1−エクソン4)およびALVAC−CMV6(gB、gH、gL、pp65、pp150)の構築
vP1360感染細胞にプラスミドC7gLIES2をトランスフェクションしてALVAC−CMV6(gB、gH、gL、pp65、pp150、IE1−エクソン4)を調製した。
vP1360感染細胞にプラスミドC7gLをトランスフェクションしてALVAC−CMV5(gB、gH、gL、pp65、pp150)を調製した。
実施例53−トランスメンブレン領域および細胞質テイルを欠失するHCMV gLおよびgHのNYVACドナープラスミドpSD553へのクローニング
トランスメンブレン領域および細胞質テイル(尾部)を欠失するHCMV gHの配列を図67に示す。プラスミドSPgH1にPCRを実施しオリゴヌクレオチド
を用いて756bpのフラグメントを調製した。このフラグメントをNsiIおよびHindIIIで分解して275bpのフラグメントを単離した。プラスミドSPgH6をNsiIおよびHindIIIで分解し、4779bpのフラグメントを単離した。これら2種類のフラグメントを連結してプラスミドSPgH7(トランスメンブレン領域および細胞質テイルを欠失し、42KをプロモータとするgH遺伝子を含有する)を得た。
NYVAC挿入プラスミドpSD553 VCをBamHIで分解しアルカリホスファターゼで処理した。プラスミドI4LH6CgLをBamHIおよびBglIIで分解し、970bpのフラグメント(H6プロモータとgL遺伝子を含有する)を単離した。これら2種類のフラグメントを連結してプラスミドCOPAKgL−24を調製した。
プラスミドgH7をXhoIおよびScaIで分解し、2239bpのフラグメント(42Kプロモータと端部切除されたgH遺伝子を含有する)を単離した。プラスミドCOPAKgL−24をXhoIで分解し、アルカリホスファターゼで処理し、さらに、前記2239bpフラグメントに連結してプラスミドCOPAKHL−15を調製した。プラスミドCOPAKHL−15におけるgLおよび端部切除gHのDNA配列と付加されているフランキング配列は図68Aおよび68Bに示している(SEQ ID NO:187)。
実施例54−トランスメンブレン領域および細胞質テイルを欠失するgLおよびgHを含有するポックスウイルス組換え体の構築
NYVAC感染CEF細胞にプラスミドCOPAKHL−15をトランスフェクションして組換え体vP1399を調製した。
実施例55−組換え体vP1399によるgHの発現
gHに特異的なモノクローナル抗体を用いる免疫沈降によって、約97kDaの分泌gHタンパク質が組換え体vP1399により発現されていることが示された。
以上のように本発明を好ましい実施態様に沿って詳述したが、請求の範囲に記載の本発明はそのような特定のものに限定されるものではなく、本発明の技術思想または請求の範囲から逸脱しない多くの変更が可能である。
Claims (21)
- ポックスウイルスゲノムの非必須領域に外来DNAを含有する組換えポックスウイルスであって、前記DNAは、アミノ酸715-772が欠失されたgB、またはアミノ酸715-772が欠失され、切断部位がArgThrLysArgSerThrからArgThrIleArgSerThrに修飾されたgBであるHCMVタンパク質を、単独でまたはHCMV gH、gL、pp150、pp65、IE1、2-32位のアミノ酸が欠失されたIE1、292-319位のアミノ酸が欠失されたIE1、またはIE1エクソン4セグメントの少なくとも1つと共に、コードすることを特徴とする組換えポックスウイルス。
- 修飾組換えウイルスであって、ウイルスにコードされている遺伝子機能が不活化されていることにより該ウイルスのビルレンスが弱毒化されていることを特徴とする請求項1の組換えポックスウイルス。
- トリポックスウイルスであることを特徴とする請求項1の組換えポックスウイルス。
- ポックスウイルスがワクシニアウイルスであることを特徴とする請求項1の組換えポックスウイルス。
- ワクシニアウイルスであり、少なくとも1つのオープンリーディングフレームを欠失させることにより遺伝子機能が不活化されていることを特徴とする請求項2の組換えポックスウイルス。
- 欠失された遺伝子機能が、C7L−K1Lオープンリーディングフレームまたは宿主域領域を含むことを特徴とする請求項5の組換えポックスウイルス。
- 少なくとも1つの追加のオープンリーディングフレームが欠失されており、
該追加のオープンリーディングフレームが、J2R、B13R+B14R、A26L、A56R、およびI4Lから成る群より選ばれることを特徴とする請求項6の組換えポックスウイルス。 - 少なくとも1つの追加のオープンリーディングフレームが欠失されており、
該追加のオープンリーディングフレームが、チミジンキナーゼ遺伝子、出血性領域、A型封入体領域、血球凝集素遺伝子、およびリボヌクレオチドレダクターゼ大サブユニットから成る群より選ばれることを特徴とする請求項6の組換えポックスウイルス。 - J2R、B13R+B14R、A26R、A56R、C7L−K1LおよびI4Lがウイルスから欠失されていることを特徴とする請求項7の組換えポックスウイルス。
- チミジンキナーゼ遺伝子、出血性領域、A型封入体領域、血球凝集素遺伝子、宿主域領域およびリボヌクレオチドレダクターゼ大サブユニットがウイルスから欠失されていることを特徴とする請求項8の組換えポックスウイルス。
- NYVAC組換えウイルスであることを特徴とする請求項9の組換えポックスウイルス。
- NYVAC組換えポックスであることを特徴とする請求項10の組換えポックスウイルス。
- 修飾組換えトリポックスウイルスであって、修飾により宿主内におけるビルレンスが弱毒化されていることを特徴とする請求項2の組換えポックスウイルス。
- ウイルスがカナリアポックスウイルスであることを特徴とする請求項13の組換えポックスウイルス。
- カナリアポックスウイルスが、Rentschlerワクチン株の1つであって、ニワトリ胚繊維芽細胞による200回以上の継代培養により弱毒化され、そのマスター種株が寒天培地下の4回の連続的なプラーク精製に供された後、そのプラーククローンが5回の追加の継代培養により増殖されたものであることを特徴とする請求項14の組換えポックスウイルス。
- ALVAC組換えウイルスであることを特徴とする請求項15の組換えポックスウイルス。
- 前記DNAが、アミノ酸715-772が欠失され、切断部位がArgThrLysSerThrからArgIleArgSerThrに修飾されたHCMV gBタンパク質を、HCMV pp65またはIE1の少なくとも1つと共にコードすることを特徴とする請求項3の組換えポックスウイルス。
- 前記DNAが、アミノ酸715-772が欠失され、切断部位がArgThrLysArgSerThrからArgThrIleArgSerThrに修飾されたHCMV gBタンパク質を、HCMV pp65またはIE1の少なくとも1つと共にコードすることを特徴とする請求項4の組換えポックスウイルス。
- vP1128またはvP1145であることを特徴とする請求項4の組換えポックスウイルス。
- 請求項1、2、3、4、11、13、14、15または16のいずれかに記載の組換えポックスウイルスを適当な担体と混合して含むことを特徴とする免疫応答を誘起するための組成物。
- インビトロ培養される細胞内で遺伝子産生物を発現させる方法であって、該細胞に請求項1、2、3、4、11、13、14、15または16のいずれかに記載の組換えポックスウイルスを導入することを特徴とする方法。
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