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JP3946466B2 - 蟻溝用シール材 - Google Patents
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JP3946466B2 - 蟻溝用シール材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、蟻溝用シール材およびシール構造に関し、詳しくは、高い気密性を要求される真空装置や配管機器などにおいて、部材同士の接合個所に装着されて接合個所の封止を図るシール材を対象にしている。
【0002】
【従来の技術】
シール構造として、断面台形状をなす蟻溝を利用する技術が知られている。例えば、JIS−B2401には、シール材としてOリングを装着する蟻溝の寸法形状が規定されている。
【0003】
真空装置など各種装置の出入口ポートに設けられるゲートバルブ等の弁体と弁座とのシール構造において、シール材であるOリングを、片側の部材表面に設けられた蟻溝に装着しておくと、弁体を開いてOリングが露出したときでも、Oリングが蟻溝から浮き上がったり脱落したりし難く、再び蓋などを閉めたときに、Oリングが不適切な位置や姿勢になり難いという利点があるとされている。また、蟻溝であれば、真空環境でシール材が収容溝から吸い出されることも阻止できる。
【0004】
このような蟻溝を利用するシール構造において、密封性などの性能を向上させるために、シール材の形状や構造を改善する技術が種々提案されている。
【0005】
例えば、特開平10−318373号公報には、断面ハート形のシール材が開示されている。基本的な円形断面の円周の一部に凹状部を設けており、凹状部の両側が脚状をなしている。この凹状部と脚状部分とで構成される形状が、蟻溝の内形状に沿って配置され、蟻溝の底に脚状部分が当接して密着した状態になる。その結果、封止リングが蟻溝の内部で捩じれを生じたり転動したりすることなく安定した姿勢で全長にわたって均一に装着できるとされている。凹状部を有することで反発弾性力が良好に作用し封止機能が高まる、ともされている。
【0006】
特開平11−336909号公報には、円形断面からなる本体を基本にして、その外周に概略三日月状の膨出部を設け、膨出部に隣接して凹窪部を設けたシール部材の構造が提案されている。本体と膨出部の片面が、蟻溝の底面に配置されることで、安定した取付姿勢になり、捩れや転動も生じ難いとされている。また、凹窪部を蟻溝の開口縁に引っ掛けるようにしてシール材の出し入れを行なうことで、シール材の装脱作業が容易になるとされている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前記した従来における蟻溝用のシール材は、封止する部材同士を締め付けたときに、シール材の噛み込みが発生したり、シール材から欠落した破片や粉が発生したりし易いという問題がある。
【0008】
蟻溝は、開口縁が楔状に突き出している。締め付け圧縮されて外側に膨れたシール材が、蟻溝の開口縁に引っ掛かると、その部分に局所的に過大な応力が発生して、シール材が損傷したり欠落したりし易い。シール材が開口縁に擦れて磨耗粉が発生する。シール材から欠落した破片や粉が、隣接する空間や流体に混入することは好ましくない。
【0009】
蟻溝の開口縁に引っ掛かったシール材は、封止する両側の部材面の間に挟み込まれ、いわゆる噛み込みを生じる。特に、シール材に隣接する空間が真空状態であると、シール材が真空側に吸い出されて、前記噛み込みを生じ易い。噛み込みが生じると、締め付け圧力を増やしても封止機能が高まらない。漏れが発生し易くなる。噛み込まれたシール材は、損傷や欠落が生じ易くなる。シール材の耐久性も低下する。真空によるシール材の吸い出しは、シール材の転動や捩れを起こす原因にもなる。
【0010】
真空環境等のシール構造では、シール材の隣接空間における圧力変動が非常に大きく、シール材に生じる締め付け応力が大きく変動する。締め付け応力が変動すると、封止機能も大きく変化し、封止不良が発生し易い。
【0011】
本発明の課題は、蟻溝に装着されて使用されるシール材として、噛み込みや転動、捻れなどの問題を起こしにくく、封止機能に優れた蟻溝用シール材を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる蟻溝用シール材は、部材同士の接合個所で何れか一方の部材の表面に設けられた蟻溝に装着され他方の部材の表面と当接することで両部材間を封止する蟻溝用シール材であって、弾性材料からなり、断面形状において、前記蟻溝の底面に配置される平坦な底辺と、底辺の両側から斜め外向きに立ち上がる左右の斜辺と、左右の斜辺のそれぞれ先端に設けられ前記蟻溝の内部で開口近くに配置される左右の張出肩部と、左右の張出肩部の中央に設けられ前記蟻溝の開口よりも上方に突出して配置される中央凸部と、張出肩部と中央凸部との間に設けられ、張出肩部と中央凸部との接線よりも内側に凹んだ凹入部とを備える。
【0013】
〔接合個所〕
シール材は、各種の機械装置において、一対の部材同士が対面して接合される個所において、接合個所を高い機密性を維持して封止するために使用される。このような封止機能を要求される構造部分であれば、接合個所を構成する部材の構造や形状などは特に限定されない。
【0014】
高い気密性が要求される接合個所として、半導体・液晶の製造プロセスで使用される処理チャンバーの、チャンバー本体と開閉蓋との接合個所が挙げられる。このような処理チャンバーに設けられる開閉可能なゲート弁の取付部分も挙げられる。その他にも、真空装置などの開閉蓋や付属機器の取付個所、配管機器の連結個所などもある。
【0015】
何れの場合も、接合個所では一対の部材が対面し、一方の部材の表面には蟻溝が設けられ、この蟻溝にシール材が装着される。他方の部材の表面は単なる平坦面からなるものであってもよいし、蟻溝と対応する個所に浅い溝や段差が設けられている場合もある。
【0016】
〔蟻溝〕
蟻溝の基本的な断面構造は、開口よりも内部側の幅が広くなった概略台形状である。
【0017】
蟻溝の底面は開口と平行な平坦面であることができる。蟻溝の両側面は、底側から開口側へと内向きに傾斜した傾斜面であることができる。両側面で傾斜角度が違っていてもよい。側面が湾曲面であってもよい。側面と底面とが交わる隅部、および、開口の内縁には、円弧状のアール(丸み)や面取りを施しておくことができる。
【0018】
蟻溝は、前記した接合個所において、封止しなければならない領域を囲んで環状に配置される。例えば、真空空間、流体通路などの外周を囲む環状に配置される。蟻溝の配置形状としては、円形のほか、楕円形や長円形、矩形状、多角形状等、封止個所の形状に応じて適宜に設定することができる。
【0019】
接合個所において、一対の部材のうち、どちら側に蟻溝を設けても良い。例えば、上下に開閉する蓋の底面に蟻溝を設けることができる。
【0020】
〔蟻溝用シール材〕
蟻溝用シール材の材料や基本的な構造は、通常のOリングその他の蟻溝用シール材と共通する技術が採用できる。
【0021】
シール材の材料は、封止機能に要求される弾性変形が可能な弾性材料であれば、天然あるいは合成のゴム材料、弾性樹脂材料が使用できる。具体的には、封止される環境の条件(流体の種類、温度、圧力などの条件)に応じて適切な材料を選択することができる。例えば、半導体分野で、乾燥用チャンバーの開閉蓋個所に使用される場合、耐アルコール性やクリーン性に優れ、コストも比較的安価なEPDM系ゴムが使用できる。各種プラズマ条件下などの腐食環境では、フッ素ゴムが好ましい。
【0022】
シール材の基本構造は、特定の断面形状を有する環状体すなわちリングである。シール材の環径および環の配置形状は、装着する蟻溝の環径や配置形状に合わせて設定される。
【0023】
シール材の断面形状は、底辺、斜辺、張出肩部、中央凸部および凹入部を備えており、全体の概略形状が「ダルマ形」を呈する。以下では、本発明の蟻溝用シール材を、ダルマ形シール材と称することがある。
【0024】
<底辺>
底辺は平坦である。蟻溝に装着する際に、蟻溝の底面にシール材の底辺が配置されることで、シール材が傾いたり捻れたりすることなく、安定した状態で配置される。装着後に部材同士が締め付けられたときには、蟻溝の底面との間で圧力を受ける。
【0025】
底辺は、全面が平坦であってもよいし、底辺の一部に凹みや溝などを備えておくこともできる。
【0026】
底辺の幅が蟻溝の開口幅よりも狭いと、蟻溝にシール材を装着する作業の際に、底辺からスムーズに蟻溝の開口を通過させることができる。
【0027】
<斜辺>
斜辺は、底辺の両側から斜め外向きに立ち上がる。装着時に、蟻溝の開口縁にシール材の斜辺が当接しながら装着動作が行なわれる。この装着動作がスムーズに行なえる形状を有するのが好ましい。
【0028】
通常、左右の斜辺は同じ傾き角度に設定されるが、必要に応じて、傾きを違えることもできる。
【0029】
斜辺は、直線状であってもよいし、内側あるいは外側に湾曲していてもよい。
【0030】
<張出肩部>
左右の斜辺のそれぞれ先端に設けられる。装着状態で、張出肩部の外側端が蟻溝の開口縁よりも内側の内斜面に当接する。これによって、蟻溝からシール材が脱落することが防げる。蟻溝内におけるシール材の姿勢や位置を決める機能もある。
【0031】
張出肩部は、円弧状などの滑らかな外形状を有することで、蟻溝の内斜面への当接がスムーズになり、取り扱いおよび装着使用時に張出肩部が欠けたり磨耗したりすることが防げる。
【0032】
<中央凸部>
左右の張出肩部の中央に設けられ、蟻溝の開口よりも上方に突出して配置される。
【0033】
装着状態で、蟻溝の開口縁よりも内側に配置される必要がある。
【0034】
中央凸部の中央先端が、接合する相手側部材の表面に当接して締め付け圧力を受ける。相手側部材との当接がスムーズに行なえ、圧力が良好に受けられ、十分なシール面圧が発生する形状が好ましい。
【0035】
中央凸部の具体的形状として、半円形状、半楕円形状、半長円形状などの曲線形状が採用できる。三角山形、台形状、矩形状などの直線形状も採用できる。直線形状の場合、角部には円弧状のアールのような曲線形状を組み合わせることが好ましい。局部的な応力集中が生じ難く、適度な弾性変形によって封止機能が発揮できる形状が選択される。
【0036】
<凹入部>
張出肩部と中央凸部との間に設けられる。張出肩部と中央凸部との接線よりも内側に凹んでいる。
【0037】
具体的には、張出肩部と中央凸部との外形に沿って1本の直線状をなす接線を想定したときに、凹入部の外形は、接線よりも内側に存在している。
【0038】
凹入部は、張出肩部と中央凸部の形状を滑らかにつなぐことができれば、直線形状および曲線形状の何れでもよい。
【0039】
〔蟻溝および蟻溝用シール材の各部寸法〕
ダルマ形をなすシール材の各部の寸法を適切に設定することによって、シール材の性能を向上させることができる。
【0040】
蟻溝の寸法形状としては、JIS−B2401やAS568Aなどの規格で規定された条件が採用される。このようにして決められた蟻溝の寸法形状に合わせて、シール材の寸法が設定される。
【0041】
具体的には、蟻溝の寸法が、高さH、開口幅G、断面積Aであるときに、蟻溝用シール材を以下の寸法条件に設定することが有効である。
【0042】
全幅Wp1 =1.05G〜1.15G
全幅が広すぎると、装着時に蟻溝の開口縁を張出肩部が通過し難い。全幅が狭すぎると、装着後に蟻溝からシール材が脱落したり、蟻溝の内部で転動や捩れが発生し易くなる。張出肩部が蟻溝の内斜面にちょうど配置されるように、全幅を設定しておけば、蟻溝内でのシール材のずれや移動が規制できる。
【0043】
底辺の幅Wp2 =0.65G〜0.76G
底辺の幅が狭すぎると、圧力が加わったときに底辺に生じる応力が過大になり、シール材の耐久性が低下する。底辺の幅が広すぎると、蟻溝に底辺から挿入する装着作業が行い難い。
【0044】
中央凸部の幅Wp3 =0.75G〜0.90G
中央凸部の幅が広すぎると、蟻溝の開口縁に引っ掛かったり噛み込みを起こしたりし易くなる。中央凸部の幅が狭すぎると、圧力が加わったときの変形が過大になり、中央凸部の物理的強度が低下する。但し、使用条件によっては、下限値よりも狭い幅でも採用できる。
【0045】
全高Hp1 =1.35H〜1.60H
全高が小さ過ぎると、接合個所の締め付け時に締め代が十分に確保できず、部材同士が直接に接触し易くなり、十分な封止機能も発揮し難い。全高が大き過ぎると、変形によって外側に大きく膨れ、蟻溝の開口縁に接触したり噛み込みを発生したりし易くなる。中央凸部の変形が過大になって、中央凸部が折れ曲がったり損傷したりする。
【0046】
断面積Ap =0.95A〜1.40A
断面積が大き過ぎると、蟻溝に収容され難く、取り付け取り外しが行い難い。断面積が小さ過ぎると、蟻溝内でシール材が転動したり捻れたり、蟻溝からシール材が脱落したりし易くなる。部材同士のメタルタッチも発生し易い。また、断面積は、シール材の総合的な変形容量や封止能力と相関するので、適切な断面積を有することで、封止機能も良好になる。
【0047】
なお、使用条件によって、部材同士がメタルタッチを起こす心配が少ない場合には、下限値よりも小さな断面積でも使用可能な場合がある。
【0048】
断面積Ap と全高Hp1 との関係で、全高Hp1 を大きく断面積Ap を小さくすると、圧縮率が大きく弾性に富んだシール材が得られる。このようなシール材は、一般的には、低い締め付け力で使用される小型品に適している。これとは逆に、全高Hp1 を小さく断面積Ap を大きくすると、腰の強いシール材が得られる。このようなシール材は、大きな締め付け力で使用される大型品に適している。
【0049】
底辺から張出肩部上端までの高さHp2 =0.90H〜0.95H
この張出肩部の高さが大き過ぎると、負荷時の変形で、張出肩部が蟻溝の開口縁に引っ掛かったり噛み込みを起こしたりし易くなる。張出肩部の高さが小さ過ぎると、蟻溝内でシール材が左右に動いたり姿勢が変わったりし易くなる。
【0050】
一般的には、張出肩部が出来るだけ蟻溝の開口縁に近い位置で開口縁よりは内側に配置されるように設定するのが好ましい。
【0051】
中央凸部を、半径Rp3 =0.35〜0.45Gの概略半円形に設定できる。半径Rp3 が大きいほど、負荷時に中央凸部と相手側部材との接触量が増え、接触個所の応力は小さくなる。半径Rp3 は、中央凸部の幅Wp3 に影響を与える。具体的には、中央凸部の幅Wp3 は半径Rp3 の2倍に相当することになる。
【0052】
張出肩部を、半径Rp1 =0.08〜0.20Gの円弧状に設定できる。半径Rp1 は、張出肩部と蟻溝の内斜面との接触量や発生する応力に影響を与える。
【0053】
斜辺の傾斜角度θ=10〜35°(底辺から直立する鉛直線に対して)
傾斜角度が小さいほど、シール材を蟻溝に挿入する作業がスムーズに行なえるが、底辺に対する張出肩部の張り出し量が少なくなる。
【0054】
〔蟻溝用シール材の使用〕
環状をなす蟻溝に沿って、同じ環状などをなす蟻溝用シール材を一端から順次挿入する。
【0055】
シール材は、底辺側から蟻溝の開口に挿入していく。シール材の斜辺が蟻溝の開口縁に当接して滑るように移行する。シール材は全幅が狭まるように弾性変形する。張出肩部を蟻溝の開口縁から内側に通過させれば、シール材は蟻溝に装着される。
【0056】
装着状態では、蟻溝の底面にシール材の底辺が当接し、シール材の左右の張出肩部が蟻溝の内斜面に当接もしくは近接することで、蟻溝に対するシール材の姿勢および位置は適切な状態に決められる。蟻溝内で、シール材が転動したり捻れたりすることが防げる。
【0057】
特に、蟻溝が下向きに開口しているような状態でも、内部に装着されたシール材は、張出肩部が蟻溝の開口縁よりも内側の内斜面に引っ掛かるので、蟻溝から落下したり、はみ出したりすることがない。蟻溝が、開閉蓋の底面に下向きに設けられている場合などに、極めて有効である。
【0058】
さらに、左右の張出肩部が蟻溝の内斜面に当接することで、中央凸部および凹入部は、蟻溝の開口縁よりも確実に内側の空間に配置される。シール材が偏って開口縁に接触したり引っ掛かったりすることが防げる。開口縁よりも上方に突出する中央凸部の突出量も確実に設定される。
【0059】
〔蟻溝用シール材の封止機能〕
蟻溝用シール材が装着された蟻溝に、相手側の部材を配置して部材同士を接合することで、シール材を相手側部材の表面と当接させて接合個所を封止する。
【0060】
部材同士の接合個所で、蟻溝に装着されたシール材は、蟻溝の上方に突出する中央凸部の先端が相手側部材の表面に当接する。中央凸部の先端が弾性的に変形することで相手側部材の表面との間に封止機能を果たすための十分な大きさの接触面積および面圧力が発生する。
【0061】
中央凸部の弾性的変形に伴って、中央凸部から凹入部、張出肩部および斜辺を含むシール材の全体が左右の外側に膨れるように変形する。蟻溝の開口縁と、シール材の中央凸部や凹入部との間には十分な余裕があるので、シール材の一部が開口縁に引っ掛かったり、部材表面で開口縁の外側にはみ出したりすることが防げる。張出肩部が蟻溝の内斜面に当接することで、シール材がそれ以上は外側に膨出変形し難くなるという作用もある。
【0062】
シール材の底辺は、蟻溝の内底面に当接することで、十分な面積で封止機能が発揮される。シール材の底辺が蟻溝の内底面に当接していれば、シール材が傾いたり捻れたりすることが阻止される。中央凸部の先端にある程度まで偏った力が加わったとしても、シール材は安定した姿勢を維持できる。例えば、一辺が軸支された旋回動作する開閉蓋では、開閉蓋と本体側とは正確な平行状態で閉まらないことがあり、シール材の中央凸部を相手側部材が倒したり捻じ曲げたりする方向に力を加えることがある。そのような場合でも、シール材が傾いたり捻れたりし難い。
【0063】
〔補助シール材の使用〕
前記した概略ダルマ形をなす蟻溝用シール材を、別の構造のシール材と組み合わせて使用することができる。
【0064】
具体的なシール構造として、前記蟻溝用シール材を蟻溝に装着するとともに、蟻溝の内部で底部両隅に断面円形をなす補助シール材を配置することができる。
【0065】
補助シール材は、汎用のOリングを使用することができる。Oリングの材料や構造は、特に限定されない。使用環境に合わせて、前記ダルマ形の蟻溝用シールと共通する材料を採用するのが好ましい。
【0066】
蟻溝に前記蟻溝用シール材を装着した状態で、蟻溝用シール材の斜辺と蟻溝の底の隅部との空間を、補助シール材で埋めるようにする。
【0067】
負荷時には、蟻溝用シール材の斜辺が外側に膨れるように変形しようとすると、補助シール材に当接する。蟻溝の隅部と蟻溝用シール材の斜辺とで挟まれた補助シール材が弾力的に変形し、その弾性反発力が蟻溝用シール材の斜辺を元の状態に押し戻すように作用する。
【0068】
その結果、蟻溝用シール材と両部材との間に発生する応力が高くなり、封止機能が向上する。
【0069】
蟻溝用シール材の左右を補助シール材で支えることで、蟻溝用シール材が傾いたり捻れたりすることを防ぐ機能も発揮できる。
【0070】
【発明の実施形態】
図1に断面形状を示すように、概略ダルマ形をなす蟻溝用シール材10は、全体が弾性変形可能なゴム材料からなり、図示された断面形状で連続する環状をなしている。ゴム材料としては、硬度65HA程度のEPDM系ゴムが使用できる。
【0071】
〔蟻溝用シール材の構造〕
蟻溝用シール材10の断面形状は、平坦な底辺12と、底辺12の両端から斜め外向きに立ち上がる左右の斜辺14、14を有する。斜辺14の先端には張出肩部16を有する。張出肩部16は、外側に向かって突出する円弧状をなしている。
【0072】
左右の張出肩部16の中央で張出肩部16の上方には中央凸部18を有する。中央凸部18は、上方に突出する大きな円弧状をなしている。中央凸部18と左右の張出肩部16との連結個所には、中央凸部18と張出肩部16とをつなぐ接線よりも内側に円弧状に凹んだ凹入部17を有する。中央凸部18と凹入部17との間、および、凹入部17と張出肩部16との間は何れも、滑らかに移行するように連結されている。
【0073】
その結果、全体の断面形状は、概略ダルマ形をなしている。
【0074】
〔蟻溝用シール材の寸法〕
図2に示すように、前記した基本構造を有する蟻溝用シール材10は、各部の寸法を規定することで、全体形状が決定される。これらの寸法の名づけ方は、蟻溝用シール材10を蟻溝に装着した姿勢を基準にしている。
【0075】
全幅Wp1は、蟻溝用シール材10のうち、最も広い幅寸法であり、具体的には、左右の張出肩部16、16の外端間の寸法となる。左右の張出肩部16,16を構成する半径Rp1 の円弧同士の距離で規定される。
【0076】
底辺幅Wp2 は、蟻溝用シール材10の底辺で平坦な部分の幅である。
【0077】
全高Hp1 は、蟻溝用シール材10の最も高い個所の高さ寸法であり、具体的には、底辺12から中央凸部18の上端までの寸法である。中央凸部18は半径Rp3 の円弧で構成されているので、円弧の中央先端位置で規定される。
【0078】
張出肩部高さHp2 は、底辺12から張出肩部16の上端までの高さ寸法である。張出肩部16の上端は、張出肩部16と凹入部17との境界点、すなわち、張出肩部16の外向き円弧から凹入部17の内向き円弧へと曲率が変化する点で規定する。凹入部17は、半径Rp2 の円弧で構成されている。
【0079】
中央凸部幅Wp3 は、中央凸部18で最も広い部分の幅であり、具体的には、中央凸部18の左右の最下端で、凹入部17との境界点、すなわち、中央凸部18の外向き円弧から凹入部17の内向き円弧へと曲率が変化する点で規定する。
【0080】
〔蟻溝用シール材の装着〕
図3に示すように、蟻溝用シール材10は、蟻溝22に装着して使用される。
【0081】
蟻溝22は、圧力容器の蓋と容器本体、真空装置の開口蓋と本体装置など、複数の部材20、30が互いに対面して配置され、両部材20、30間を封止しておく必要がある個所に設けられる。
【0082】
図3では、上下に配置された部材20,30を接合しているが、部材20,30が左右方向や斜め方向で対面している場合もある。
【0083】
片方の部材20の表面に、断面台形状の蟻溝22が設けられる。図3では、説明を判り易くするために、下方側の部材20における上向きの面に蟻溝22を配置した状態で図示しているが、上方側の部材30における下向きの面に蟻溝22を設けることもできる。
【0084】
蟻溝22は、平坦な内底面とその両側に立ち上がる内斜面とで構成され、底側の幅が広く、開口側の幅が狭い。内底面と内斜面とが交差する内隅部は円弧状をなして滑らかにつながっている。開口縁24は、断面が小さな円弧状をなしている。蟻溝22の具体的寸法形状は、JIS規格などで規定されている。通常、内底面から開口縁24までの高さHと、開口縁24の内幅Gで、蟻溝22の寸法が規定される。内斜面の傾斜は通常、24°に設定される。
【0085】
図3(a)に二点鎖線で示すように、蟻溝用シール材10を、底辺12側から蟻溝22に装入する。このとき、蟻溝内幅Gよりも蟻溝用シール材10の底辺幅Wp2 のほうが狭いので、蟻溝用シール材10は底辺12側からスムーズに蟻溝22へと挿入される。
【0086】
蟻溝用シール材10の張出肩部16における全幅Wp1 は、蟻溝22の開口縁24における蟻溝内幅Gよりも大きいので、張出肩部16が蟻溝開口縁24を通過する際には、蟻溝用シール材10を弾性的に変形させる。このとき、蟻溝用シール材10の斜辺14が蟻溝22の開口縁24に当接して滑るようにしながら蟻溝用シール材10が変形するので、大きな抵抗が発生せず、滑らかに移行させることができる。従来のOリングに比べて、はるかに優れた挿入性を示す。
【0087】
張出肩部16が開口縁24を通過すれば、蟻溝用シール材10は溝元の形状に復元する。
【0088】
図3(a)の装着状態では、蟻溝用シール材10の底辺が蟻溝2の底面に当接する。張出肩部16は、蟻溝22の開口縁24よりも下方で内斜面に当接する。
【0089】
その結果、蟻溝用シール材10は、蟻溝22に対して安定した位置に適切な姿勢で配置される。蟻溝用シール材10の底辺12と、左右の張出肩部16,16との3個所で、蟻溝22に対する位置決めがなされる。但し、無負荷時には、張出肩部16は蟻溝22の内斜面に当接せず近接しているだけでもよい。
【0090】
〔蟻溝用シール材の封止機能〕
図3(b)に示すように、蟻溝22を備えた部材20に対して、別の部材30が配置される。部材20、30を、図示を省略した締め付けボルトなどで締め付け固定することで、両部材20、30が接合一体化される。
【0091】
このとき、部材30の表面が蟻溝用シール材10の上端すなわち中央凸部18に当接し、蟻溝用シール材10を上下方向に押しつぶすように変形させる。
【0092】
蟻溝用シール材10が上下方向に圧縮されることで、中央凸部18は円弧が平坦に押しつぶされるようになり、部材30の表面と一定の面積で圧接される。この圧接によって、蟻溝用シール材10と部材30との間に必要なシール面圧が確保され、封止機能が発揮される。
【0093】
蟻溝22の内部では、底辺12が蟻溝22の内底面に圧接される。中央凸部18が押しつぶされることに伴い、左右の斜辺14,14は外側に膨れるように変形する。張出肩部16は、蟻溝22の内斜面に押し付けられる。底辺12と蟻溝22の内底面との接触、および、張出肩部16と蟻溝22の内斜面との当接によって、蟻溝用シール材10と部材20との間が封止される。
【0094】
底辺12は比較的に広い面積で蟻溝22の内底面と接触するので、底辺12に発生する応力は比較的小さく、変形量も少ない。また、底辺12から左右の斜辺14,14を経て張出肩部16に至る逆台形の形状は、上下方向の圧縮に対して変形し難い構造である。
【0095】
その結果、シール材10は、上下方向の変形が少なくなる。締め付け力が変動したり、周囲の圧力環境が変動したりしても、シール材10の圧縮変形量は変動し難くなる。圧力条件の変動に関わらず、常に良好な封止機能を発揮することができる。
【0096】
シール材10が上下方向に変形し難いことで、部材20,30同士が直接に接触してしまう、いわゆるメタルタッチも生じ難い。
【0097】
蟻溝用シール材10が左右に膨れるように変形すると、蟻溝用シール材10の側面が蟻溝22の開口縁24に近づくことになるが、蟻溝22の開口縁24には、張出肩部16よりも上方の凹入部17から中央凸部18が配置されることになるので、蟻溝22の開口縁24に強く当接したり引っ掛かったりすることが防がれる。開口縁24よりも上方の空間で、蟻溝用シール材10の一部が開口縁24よりも外側に膨れてはみ出すことも起き難い。
【0098】
図3(b)の状態で、左右何れかの空間が真空状態であった場合、蟻溝用シール材10が、蟻溝22から部材20,30間の隙間へと吸い出される作用が生じる。しかし、この場合でも、中央凸部18および凹入部17と開口縁24との間には余裕があるので、シール材10の一部が部材20,30間に噛み込まれることが防止できる。特に、張出肩部16が蟻溝22の内斜面に当接していることで、シール材10が真空側に吸い出されたり転動したりすることが確実に阻止できる。
【0099】
〔蟻溝用シール材の製造〕
図1、2に示す構造の概略ダルマ形をなす蟻溝用シール材を製造した。
【0100】
<弾性材料>
ベースゴムにエスプレン501A(住友化学社製EPDM系ゴム)を用い、加工助剤や、補強剤としてのカーボンブラック、老化防止剤、架橋剤などを配合して、弾性ゴム材料とした。
【0101】
<製 造>
各材料の配合物を、予備成形して、短冊状に裁断した。
【0102】
予備成形体を、所定形状の金型に装着し、170℃×15分で加熱加圧成形し、蟻溝用シール材を得た。
【0103】
弾性ゴム材料の硬度は、65HA(JIS規格に準じて測定)であった。
【0104】
<寸法>
得られた蟻溝用シール材の、図2に示す断面形状における各寸法は以下のとおりであった。
【0105】
全幅Wp1 =12.60mm、
底辺幅Wp2 =7.93mm、
全高Hp1 =12.0mm、
中央凸部半径Rp3 =5.0mm、
張出肩部高さHp2 =7.63mm、
張出肩部半径Rp1 =1.5mm、
凹入部半径Rp2 =2.0mm、
中央凸部幅Wp3 =10mm、
蟻溝用シール材は、上記断面形状であって、内径1108mmの環状をなしている。
【0106】
〔封止性能の評価〕
製造した概略ダルマ形の蟻溝用シール材10の性能を評価した。比較品として、同じゴム材料で断面直径φ12mmのOリングを製造して、対比試験を行なった。
【0107】
蟻溝の寸法:JIS−B2401、Oリングの呼び番号P12に対応する規格を採用した。内幅G=11.75mm、高さH=7.6mm、開口縁アールR=0.6mm、内斜面角度=24°(鉛直方向に対して)である。
【0108】
<平面ひずみモデル解析>
解析に用いた材質条件:表面摩擦係数=1.0、縦弾性係数=6.531N/mm2 (0.66595kgf/mm2)。
【0109】
圧縮荷重を負荷したときの、歪量と圧縮荷重値を解析した。その結果を、図4に示す。実線が実施例、破線が比較例を示す。
【0110】
比較例(Oリング)に比べて本発明の実施品(ダルマ形)は、同じ歪を生じさせるために必要な荷重値が大きく、変形し難いことが判る。また、グラフの傾きから、圧縮荷重の変動量が同じときに歪量の変化が少ない。これは、使用環境でシール材に加わる負荷が変動しても歪量は変動せず、安定した封止機能を発揮できることを裏付けている。
【0111】
3.8mm圧縮した状態の、歪モデルを画像表示させて評価した。比較品(Oリング)の場合は、蟻溝の開口縁にシール材の一部が噛み込まれていた。実施品(ダルマ形)では、図3(b)に示すように、蟻溝の開口縁とシール材との間には隙間があいており、噛み込みは発生していなかった。
【0112】
上記した3.8mm圧縮状態で、表面に発生するミーゼス相当応力を求めて、その結果を、図5(実施例)および図6(比較例)に示している。
【0113】
測定は、各図の(a)に示すように、各シール材の頂点を開始点(0)として、X矢印の方向に、シール材表面を、終了点(1)までスキャニングした。各図の(b)は各点における応力値をグラフで示す。縦軸はミーゼス相当応力を示し、横軸は、開始点を0、測定終了点を1としたときの相対距離Xを示す。
【0114】
図6の比較品(Oリング)では、蟻溝開口縁に相当するX=0.4の位置に、極めて鋭いピーク(約5.492N/mm2=約0.56kgf/mm2)が認められた。この部分に過大な応力が発生していることが判る。
【0115】
これに対し、図5の実施品(ダルマ形)では、X=0.54の位置に、比較品のピークに比べると、ブロードなピーク(約4.413N/mm2=約0.45kgf/mm2)が認められた。この位置は、蟻溝の開口縁よりも内部であり、応力も比較的に小さいので、シール材に大きな悪影響は生じないものと判断できる。
【0116】
<シール性能試験>
常用のシール試験装置を用いた。試験装置の蟻溝にシール材を装着し、所定の締め付け力で締め付けた状態で、シール材の片側の空間を真空吸引して、反対側の空間との間に圧力差を生じさせた。真空吸引側の圧力を測定して、シール材のシール性能を評価した。
【0117】
その結果、比較品(Oリング)は初期状態でもかなり弱い真空状態(約130Pa)しか得られず、しかも、経時的に圧力が増えていき、圧力の漏れが発生していることが判った。実施品(ダルマ形)は、初期状態では極めて高い真空状態(約13Pa未満)が得られ、経時的にも安定した真空状態が維持できた。
【0118】
また、試験装置として、真空チャンバーの本体と、本体の上に被さる開閉蓋との間のシール構造に、実施品および試験品を装着して、真空チャンバー内を真空状態にした。開閉蓋の底面に蟻溝が設けられ、シール材が装着される。
【0119】
比較品は、チャンバー本体と蓋との表面同士が直接に接触して、いわゆるメタル接触を起こしてしまった。実施品の場合は、チャンバー本体と蓋との間には確実に隙間が形成されており、メタル接触は生じなかった。
【0120】
真空チャンバーを継続的に使用して、蓋の開け閉めを繰り返したところ、比較品では、表面に指ですくえる程度の磨耗粉の発生が認められた。磨耗粉には、シール材の材料であるゴム粉とともに、蓋の材料であるアルミ粉が含まれており、シール材の転動などによる磨耗に加えて、メタル接触による磨耗が発生したことが確認された。実施品の場合は、約3ヶ月の使用後でも、ゴム粉およびアルミ粉の何れもが認められなかった。
【0121】
〔断面形状の違う実施形態A〕
図7に示す実施形態の蟻溝用シール材10は、基本的な構造は前記実施形態と共通するが、一部の形状が異なる。異なる点を主に説明する。
【0122】
底辺12と斜辺14との交差個所が、半径Rp4 の円弧になっている。したがって、底辺幅Wp2 は、円弧の除いた底辺12の平坦部分の幅で規定される。
【0123】
中央凸部18は、上辺が平坦で両側に垂直辺を有する概略矩形状をなし、左右の上端角部は、半径Rp5の円弧になっている。
【0124】
前記実施形態における円弧状の凹入部17の代わりに、張出肩部16から斜め内向きの傾斜辺と半径Rp5 の凹円弧で構成される凹入部17が設けられている。
【0125】
この場合、張出肩部高さHp2 は、張出肩部16と凹入部17の斜辺との境界点で規定する。中央凸部幅Wp3 は、矩形状の中央凸部17の幅で規定する。
【0126】
凹入部17の斜辺の傾斜は、蟻溝22の内斜面の傾斜よりも水平に近い寝た状態になっているので、蟻溝22の内斜面には張出肩部16だけが当接し、凹入部17が蟻溝22の内斜面に当接することはない。
【0127】
〔断面形状の違う実施形態B〕
図8に示す実施形態の蟻溝用シール材10も、基本的な構造は前記実施形態と共通するが、一部の形状が異なる。異なる点を主に説明する。
【0128】
底辺12の中央に、半円形の凹部19を有する。
【0129】
中央凸部18は、比較的小さな半径Rp5 の円弧部分と、円弧部分の両側に延びる傾斜辺とで構成され、凹円弧状の凹入部17を経て、張出肩部16へと滑らかにつながっている。
【0130】
以上に説明した実施形態A.Bのように、蟻溝用シール材10の断面形状は、基本的な条件を備えていれば、細部については、使用状況や要求性能などによって種々変更することが可能である。
【0131】
〔補助シール材の併用〕
図9に示す実施形態では、前記した図1の概略ダルマ形をなす蟻溝用シール材10と、Oリングからなる補助シール材40とを併用する。
【0132】
図9(a)に示すように、蟻溝用シール材10および蟻溝22の構造は、前記実施形態と共通している。
【0133】
蟻溝22に蟻溝用シール材10を装着する際に、予め、補助シール材40を装着しておく。補助シール材40は、市販のOリングをそのまま使用される。但し、蟻溝22の規格寸法に適合するサイズのOリングではなく、かなり小径のOリングを2本使用する。具体的には、蟻溝22の底部で左右の隅部における円弧形状よりも少し小径のOリングを使用している。
【0134】
補助シール材40は、小径であるから、蟻溝22の開口縁24を容易に通過して挿入できる。2本の補助シール材40を、左右の隅部に分けて配置する。
【0135】
次いで、蟻溝用シール材10を、前記したようにして、蟻溝22に装着する。蟻溝用シール材10の斜辺14で左右に押し退けられた補助シール材40は、左右の隅部に収まる。
【0136】
図9(b)に示すように、上方部材30を下方部材20に重ねて締め付け固定すると、蟻溝用シール材10は、前記したとおりに変形して、部材20,30の間を封止する。
【0137】
但し、蟻溝22の内部では、蟻溝用シール材10が左右に膨れて変形することで、蟻溝用シール材10の斜辺14が補助シール材40を蟻溝22の隅部に押し付けて変形させる。補助シール材40が弾力的に変形することで発生する反発力は、蟻溝用シール材10の変形を阻止する方向に作用する。その結果、蟻溝用シール材10は変形が抑制され、部材20,30の締め付け力に対する反発力が増大する。部材20、30の表面が直接に接触し難くなる。部材20、30と蟻溝用シール材10の当接圧あるいは当接部の応力が高まるので、当接面における封止機能が高まる。
【0138】
なお、両部材20、30に当接して封止機能を果たすのは蟻溝用シール材10であり、補助シール材40は蟻溝用シール材10の変形規制を果たすだけで良い。
【0139】
上記実施形態では、蟻溝用シール材10に補助シール材40を併用することで、蟻溝用シール材10を単独で使用するのに比べて、さらにメタルタッチ防止機能を高めることが可能になる。蟻溝用シール材10を設計変更したり、蟻溝用シール材10の材料に特別に優れたものを使用したりしなくても良く、補助シール材40は比較的簡単な構造の市販品などでも構わないので、コスト安価に性能向上を図ることができる。さらに、補助シール材40の寸法や形状を変更することで、封止機能を調整することもできる。1種類の蟻溝用シール材10を、複数の用途や要求性能に対応させることも可能になる。
【0140】
【発明の効果】
本発明にかかる蟻溝用シール材は、前記した概略ダルマ形の断面形状を有しており、蟻溝への装着作業は、底辺から斜辺へと蟻溝に挿入することで、極めてスムーズに挿入することができる。装着状態では、蟻溝の内底面に底辺が当接し、左右の張出肩部が蟻溝の内斜面に配置されることで、適切な位置および姿勢で安定して装着される。シール材が転動したり捻れたり蟻溝から浮き上がることがない。特に、蟻溝を下向きにしても、張出肩部によって、シール材の脱落は確実に阻止される。シール材の一部が蟻溝の開口縁に接触して損傷することが良好に阻止される。
【0141】
負荷時には、相手側部材と中央凸部との圧接、および、底辺と蟻溝内底面との圧接によって、両部材間を確実に封止することができる。張出肩部が蟻溝の内斜面に当接することで、シール材の過度の変形を抑制でき、シール材と両部材間の強力な圧接によって、良好な封止機能を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態を表す蟻溝用シール材の断面図
【図2】 蟻溝用シール材の寸法構造を示す模式図
【図3】 蟻溝用シール材の使用状態を示す断面図
【図4】 圧縮荷重−歪量の解析結果を示す線図
【図5】 実施例のミーゼス応力測定結果を示す線図
【図6】 比較例のミーゼス応力測定結果を示す線図
【図7】 別の実施形態の使用状態を示す模式図
【図8】 別の実施形態の使用状態を示す模式図
【図9】 別の実施形態の使用状態を示す断面図
【符号の説明】
10 蟻溝用シール材
12 底辺
14 斜辺
16 張出肩部
17 凹入部
18 中央凸部
20 下方部材
22 蟻溝
24 開口縁
30 上方部材
40 補助シール材

Claims (5)

  1. 部材同士の接合個所で何れか一方の部材の表面に設けられた蟻溝に装着され他方の部材の表面と当接することで両部材間を封止する蟻溝用シール材であって、
    弾性材料からなり、
    断面形状において、前記蟻溝の底面に配置される平坦な底辺と、底辺の両側から斜め外向きに立ち上がる左右の斜辺と、左右の斜辺のそれぞれ先端に設けられ前記蟻溝の内部で開口近くに配置される左右の張出肩部と、左右の張出肩部の中央に設けられ前記蟻溝の開口よりも上方に突出して配置される中央凸部と、張出肩部と中央凸部との間に設けられ、張出肩部と中央凸部との接線よりも内側に凹んだ凹入部とを備える
    蟻溝用シール材。
  2. 前記蟻溝が、高さH、開口幅G、断面積Aであるときに、
    断面形状において下記寸法条件を満足する請求項1に記載の蟻溝用シール材。
    全幅Wp1 =1.05G〜1.15G、
    底辺の幅Wp2 =0.65G〜0.76G、
    中央凸部の幅Wp3 =0.75G〜0.90G、
    全高Hp1 =1.35H〜1.60H、
    断面積Ap =0.95A〜1.40A、
    底辺から張出肩部上端までの高さHp2 =0.90H〜0.95H。
  3. 前記中央凸部が、半径Rp3 =0.35〜0.45Gの概略半円形をなし、
    前記張出肩部が、半径Rp1 =0.08〜0.20Gの円弧状をなす
    請求項1または2に記載の蟻溝用シール材。
  4. 前記弾性材料が、EPDM系ゴム、フッ素ゴムからなる群から選ばれる何れか1種の材料である
    請求項1〜3の何れかに記載の蟻溝用シール材。
  5. 互いに対面して接合される一対の部材と、何れか一方の部材の表面に設けられた蟻溝と、蟻溝に装着され他方の部材の表面と当接することで部材間を封止するシール材とを有するシール構造であって、
    前記シール材が、前記蟻溝に装着される請求項1〜4の何れかに記載の蟻溝用シール材と、前記蟻溝の内部で底部両隅に配置され断面円形をなす補助シール材とを含む
    シール構造。
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