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JP3957201B2 - 音響板設計装置 - Google Patents
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JP3957201B2 - 音響板設計装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、音響板設計装置にかかり、特に、3次元空間内において音源から発せられる音を受音点において増減させるために音響板を空間内に設定する音響板設計装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ホールの音響設計における反射面の設計問題や、CADシミュレーションの形状入力における音響的に有意な(反射)面の位置・寸法を評価する方法は、現時点では明確な定量的指針が明らかではない。
【0003】
例えば、空間内の任意の位置に音源と受音点の位置が設定され、かつ音源から発生する音の強さ自体が制御できない場合に、受音点に到達する直接音の大きさを制御する方法としては、以下の3方法が原理的に存在する。なお、ここでは、制御対象の音源として、例えばスピーカのような音の強さを積極的に制御できる拡声装置を除くものである。
【0004】
第1の方法としては、音響的な反射面(または吸音面)を設置して、その面により音源から受音点に到達する直接音と同位相の音(または逆位相の音)を発生させる。
【0005】
第2の方法としては、音源と受音点の間に障壁等の障害物を設置して、直接音の伝搬を阻害する。
【0006】
第3の方法としては、電気音響装置(スピーカ・アンプ・電気的制御系)を用いて、直接音を補強する信号を発生する(所謂拡声装置)。音を弱めるためには、この電気音響装置を用いて直接音と逆位相の音を発生する(騒音のアクティブ制御技術)。一例としては、複数のスピーカにより広い聴取範囲を実現できる音場再生装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
任意の音源に対する音響対策を行う場合、経済性やその方法による効果、または、周辺の形状や配置条件などの制約を受けるため、第2の方法や第3の方法を利用することは実際的ではない。
【0008】
そこで、簡便性などを考慮すると、第1の方法が妥当である。
【0009】
まず、音源から受音点に至る間で反射波を発生できる位置に、平面またはなだらかな曲面の反射面または吸音面を設置する。この場合、反射面または吸音面の位置と大きさの決定には任意性がある。その決定方法には、オペレータなどの直感的な決定方法と、簡単な近似計算による決定方法がある。
【0010】
上記直感的な決定方法では、オペレータなどの経験的なものに頼っているので、安定的な効果を得ることができない。そこで、簡単な近似計算による定量的な方法を想定すると、その近似理論として、フレネル積分を評価する方法(例えば、非特許文献1参照)、や垂直入射に対するフレネル帯の概念を用いる方法(例えば、非特許文献2参照)などに基づくことが一般的であった。これらの技術による音響的な反射面(または吸音面)の設置により音源からの直接音と同位相(または逆位相)の音を発生させることが可能であった。
【0011】
【特許文献1】
特開平10−48008号公報
【非特許文献1】
I.G.Leizer "APPLICABILITY OF THEMETHODS OF GEOMETRIC ACOUSTICS FOR THE CALCULATION OF SOUND REFLECTION FROM PLANE SURFACES" (SOVIET PHYSICS-ACOUSTICS VOL.12,NO.2 OCTDEC,1966,P180-184)
【非特許文献2】
L.Cremer "Fresnels Methoden zur berechnung von Beugungsfeldern" (ACUSTICA vol.72,1990)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、Leizer論文ではフレネル積分による評価にあたって限定的な近似式を用いている。すなわち、フレネル積分自体が近似式であり限られた条件下のみで成立するため誤差を含んでおり、精度の良い計算を行えず一般条件に対して使用できない。言い換えると、Leizer論文による技術が適用できるのは、音源と受音点の両方が反射面から充分遠方にあり、かつ対象とする超音波など音の周波数が高い場合に限定されている。
【0013】
また、Cremer論文では垂直入射を前提とした考察がなされているのみである。すなわち、Cremer論文によぽる技術を採用するためには、音源と受音点が共に、反射面からの一本の法線上に存在していなければならない。ところが、実際に垂直入射が仮定できる状況は非常に限られており、面について音は斜入射するのが通常であるため、この方法の適用は困難である。
【0014】
従って、すなわち、空間内の任意の位置にある音源から受音点に到達させるための反射面位置などは、経験的なものに頼らざるを得ず、簡便かつ容易に設定することが困難であった。
【0015】
本発明は、上記事実を考慮して、音源から受音点に至る音を容易かつ簡便に強めたり弱めたりすることができる音響板設計装置の提供を目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、音源から発せられる音を受音点において増減させるために音響板を空間内に設定するための音響板設計装置であって、音源と受音点の位置を入力する入力手段と、前記音源と前記受音点の位置を含む3次元空間内に予め定めた平面を、前記空間内の特定面として設定する面設定手段と、前記音源から前記受音点に直接到達する直接音と、前記音源から前記3次元空間内の微小反射体で反射して前記受音点に到達する反射波との行路差が前記音源から発せられた音の半波長の整数倍となり、かつ前記音源及び前記受音点の位置を焦点とする偏長楕円体の各々と前記特定面とが交差することによって形成されるフレネル楕円帯の領域を求めることによって、前記特定面における反射音により前記受音点に到達する音が強めるように作用または弱めるように作用する所定関係の位相を有する前記特定面上のフレネル楕円帯の領域である位相領域を求める領域演算手段と、前記フレネル楕円帯の各領域の反射波についてヘルムホルツ積分の振幅項を求めることによって、前記特定面上における前記位相領域において反射する音の振幅を求める振幅演算手段と、求めた振幅及び前記位相領域に基づいて、求めた振幅の値が所定値を超える前記位相領域内の領域を、前記受音点に到達する音が強まるまたは弱まる前記位相領域内の領域として求め、求めた領域を反射領域として前記特定面上に反射領域を設定する領域設定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明者は、音の位相計算のみでは、音の強弱を制御するのに不十分であるとの観点から、音波の斜め入射に対するフレネル反射帯の計算と、反射板からの反射音の強度分布をキルヒホフ・ヘルムホルツ積分により求めることにより、容易に反射面の位置や大きさを導出することが可能であるという知見を得た。フレネル反射帯の計算は反射音の位相を評価するものであり、強度分布の計算は反射音の振幅を評価することである。例えば位相が正のとき、反射音は対象となる騒音やホール内の発生音と同位相となり、これを補強するように作用する。一方、位相が負のとき、反射音は逆位相となって、対象の音波を打消すように作用する。ただし、位相の情報だけでは不十分で、反射音が充分な振幅(強度)を持っていることが必要で、これを積分評価によって求めれば、有効な(充分な振幅を有する)反射面の位置を決めることができる。
【0018】
そこで、本発明では、音源と受音点の位置を入力し、空間内に特定面を設定する。そして、音源からの直接到達する直接音に対して、特定面における反射音により受音点に到達する音の位相が所定関係を有する特定面上の位相領域を求める。この位相領域は、受音点における音源からの音と特定面からの位相関係が一定の関係を有するものであり、打ち消したり補強したりする対象となる領域である。この特定面上における位相領域の振幅を求めることで、実際に受音点における音の状態を評価することができる。そこで、特定面上において求めた振幅の位相領域から所定の振幅を有する位相領域を反射領域を設定することによって、音源からの音を打ち消したり補強したりする領域を設定することができる。
【0019】
前記受音点に到達する音が強めるように作用または弱めるように作用する所定関係の位相は、直接音に対する半波長の奇数倍である正の位相または半波長の偶数倍である負の位相を採用することができる。
【0020】
上述のように位相が正のとき反射音は音源からの音と同位相となり、音源を補強するように作用し、位相が負のとき反射音は逆位相となって音源からの音を打消すように作用する。従って、正位相及び負位相の少なくとも一方の位相を採用することで、音源からの音を打ち消したり補強したりする領域を容易に設定することができる。
【0022】
なお、音源からの音を打ち消したり補強したりするためには、反射板を設定することが好ましく、その反射板に反射性を有する曲面を採用することで効率的に音源からの音を打ち消したり補強したりすることができる。
【0023】
前記音源として前記音源が予め定めた曲面に対称となる仮想的な音源である鏡像音源とすることができる。すなわち、音源から発せられる音を受音点において増減させるために音響板を空間内に設定するための音響板設計装置であって、音源と受音点の位置を入力する入力手段と、前記音源と前記受音点の位置を含む3次元空間内に予め定めた平面を、前記空間内の特定面として設定すると共に、前記音源について前記特定面に対称となる位置を仮想的な鏡像音源に定める設定手段と、前記鏡像音源から前記受音点に直接到達すると想定される音と、前記鏡像音源から前記3次元空間内の微小反射体で反射して前記受音点に到達する反射波との行路差が前記鏡像音源から発せられたとされる音の半波長の整数倍となり、かつ前記鏡像音源及び前記受音点の位置を焦点とする偏長楕円体の各々と前記特定面とが交差することによって形成されるフレネル楕円帯の領域を求めることによって、前記特定面における反射音により前記受音点に到達する音が強めるように作用または弱めるように作用する所定関係の位相を有する前記特定面上のフレネル楕円帯の領域である位相領域を求める領域演算手段と、前記フレネル楕円帯の領域の反射波についてヘルムホルツ積分の振幅項を求めることによって、前記特定面上における前記位相領域において反射する音の振幅を求める振幅演算手段と、求めた振幅及び前記位相領域に基づいて、求めた振幅の値が所定値を超える前記位相領域内の領域を、前記受音点に到達する音が強まるまたは弱まる前記位相領域内の領域として求め、求めた領域を反射領域として前記特定面上に反射領域を設定する領域設定手段と、を備えたことを特徴とする。
この受音点に到達する音が強めるように作用または弱めるように作用する所定関係の位相は、直接音に対する半波長の奇数倍である正の位相または半波長の偶数倍である負の位相を採用することができる。
【0024】
音源及び受音点に基づいて楕円体が一意に定義できる。また、音源が予め定めた曲面に対称となる仮想的な音源である鏡像音源及び受音点に基づいて楕円体が一意に定義できる。そこで、特定面は、音源または鏡像音源、及び受音点に基づいて定義される楕円体と、該楕円体を交差することのできる任意の平面とが交差して形成される曲面を採用する。これにより、位相及び振幅を考慮した曲面を設定することができる。一例として、反射面を設ける場合、積極的に一定の大きさのものを設置しようとする場合と、防音などのように既存の面(例えば地面)にさらに設けようとする場合がある。そこで、特定面として、音源と受音点とを含む平面と交差する曲面を採用することで、積極的に反射面を設けることができ、音源と受音点とを含む平面にほぼ平行な曲面を採用することで、地面などの既存の環境を考慮した反射面を設けることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
【0026】
まず、音源で発生する音について、対象とする音を補強したり減衰させる場合、減衰させるものとして、騒音対策がある。例えば、屋外に騒音を発生する機器が存在し、騒音低減の対象となる領域が与えられたとき、原理的には音源と逆位相の音波を発生して受音域に返せば、騒音は低減するが、マイク・位相変換機・スピーカ等からなる電気的なシステムが必要であり実質的には困難である。また、周辺の大地・建物からの反射が影響して騒音値が上昇する場合には、どの地域が特に大きく騒音に影響するかの判定が困難であったため、全反射面を吸音処理していた。
【0027】
また、音を補強させるものとしては、室内音響がある。例えば、ホールなどでは演奏者がアンサンブルを取ることを助けるために、舞台上部や周辺には音響反射板が設置されるが、演奏者の位置と反射板の位置関係やサイズ・形状を特定することは困難であったため、反射板は経験則に基づいて設定されていた。さらに、ホールなどではエコーなどの不要な反射音を消去するために、壁などの部分に吸音処理を施しているが、やはり経験則に基づいて設定されていた。
【0028】
そこで、本実施の形態では、音源と受音点の位置関係が与えられたとき、空間の任意の点におかれた微小な反射体から反射する音波の位相を判定する。これにより、どの位置にいかなる大きさの反射面を配置すれば、同位相または逆位相の音波が得られるかが決定できる。従って、騒音源からの直接音を低減するために配置すべき(逆位相用)パネルの位置と大きさが決まり、同様に、演奏者にとって有用な反射音を返す(同位相用)パネルの位置と大きさが決まる。なお、使用するパネルは反射性であれば材質は任意であり、合板・アクリル・ガラス等が使用できる。また、当該パネルの位置と大きさ・形状は一意に決まるのではなく、ある程度の任意性のなかから選択できるので、設計上の自由度も確保される。
【0029】
次に、騒音制御・建築音響の分野において、音源で発生する音波について、対象とする音波を補強したり減衰させることについて説明する。
【0030】
〔反射面の位置決定の原理〕
まず、反射面(吸収面)の位置を求めることについて説明する。
【0031】
音源と受音点の位置が与えられたとき、空間内の任意の点に置いた面を考えれば、そこから発生する反射音の、直接音に対する位相関係は正の位相(0から180度)であるか、負の位相(0度から−180度)のいずれかである。つまり正の位相であれば反射音は直接音を強めるように作用し、負の位相であれば反射音は直接音を打ち消すように作用する。なお、以下では面は全て音響的な反射性の面(合板、ボード類、ガラス、金属パネル等)とする。
【0032】
従って、正の位相の反射音だけ(または負の位相の反射音だけ)を発生するように面を設計できれば、直接音の大きさの制御が電気的な方法を用いることなく、パネルを設置するだけで可能となる。
【0033】
図1に示すように、3次元のxyz空間内に音源Sと受音点Rを設定したときに、反射面はxy軸のなす平面に存在するとし、xy平面上に点Pを想定する。このとき、音の挙動の対象となる制御は2つの条件に分ける必要がある。第1条件は、音源Sから受音点Rへ到達する直接音に対して、点Pからの反射音の寄与(位相)を制御する場合であり、第2条件はxy平面上に反射性の面を設置することによって発生する、本来の音源Sに対する鏡像音源S'から発生して受音点Rに到達する、所謂面による幾何光学的反射音に対する点Pの寄与(位相)を制御する場合である。
【0034】
・第1条件(a):(直接音に対する反射音の寄与):
第1条件では、図2に示すように、各点の座標とパラメータを定める。このとき、音源Sからの直接波に対して点Pからの反射波の行路差Δは次の式で表すことができる。この第1条件は、直接波と同位相(位相差λ/2以内)である反射面の存在域を考慮するためのものであり、例えば、舞台周り(音源周辺)の反射面の影響を扱う場合などに有効である。
【0035】
【数1】
Figure 0003957201
【0036】
ここで、Δ=mλ/2,m=1,2,3,…と表現すれば、点Pからの反射波の位相の正負が表現できる。ここでλは対象とする音の波長である。すなわち行路差から考えると、mが奇数のとき反射音は正の位相で反射し、偶数のとき負の位相で反射することが理解される。
【0037】
そこでまず、図2の条件のもとに、反射波の行路差Δが一定となる点(x,y,z)の満たす式は、次の偏長楕円体の式で表すことができる。
【0038】
【数2】
Figure 0003957201
【0039】
但し、定数a、bは次式で定義する。また、図2より2fはSR間の距離(音源−受音点間の距離)に等しいものとする。
【0040】
【数3】
Figure 0003957201
【0041】
上記(2)式で定まる偏長楕円体がxy平面と交差する領域は、次の(3)式,(4)式で表すことができる。
【0042】
【数4】
Figure 0003957201
【0043】
上記の式で求まる領域は楕円となる。この楕円の形状を明確にするために変形すると、次数mに対する楕円の中心y0mは、次の(5)式になる。
【0044】
【数5】
Figure 0003957201
【0045】
また、楕円の短軸と長軸の長さxm、ymは次の(6)式で表すことができる。
【0046】
【数6】
Figure 0003957201
【0047】
但し、Dは次の(7)式から求まる値である。なお、次数mは定数aに含まれている。
【0048】
【数7】
Figure 0003957201
【0049】
・第2条件(b):(鏡像音源S'からの反射音の寄与):
第2条件では、図3に示すように、各点の座標とパラメータを定める。S'はxy平面に対する音源Sの鏡像であり、鏡像音源S'と受音点Rを結ぶ直線とy軸の交点を座標原点に定める。このとき、鏡像音源S'からの鏡像反射波に対して点Pからの反射波の行路差Δは次の(8)で表すことができる。この第2条件は幾何学的な鏡面反射波と同位相の反射領域を考慮するためのものであり、一般の反射面について(面が充分に大きい場合に)反射波として実効的に寄与する領域の影響を扱う場合などに有効である。
【0050】
【数8】
Figure 0003957201
【0051】
ここで、Δ=mλ/2,m=1,2,3…と表現すれば、Pからの反射波の位相の正負が表現できる。ここでλは対象とする音の波長である。すなわち行路差から考えると、mが奇数のとき反射音は正の位相で反射し、偶数のとき負の位相で反射することが理解される。
【0052】
そこでまず、図3の条件のもとに、反射波の行路差Δが一定となる点(x,y,z)の満たす式は、次の偏長楕円体の(9)式で表すことができる。
【0053】
【数9】
Figure 0003957201
【0054】
ただし、定数a、bは次式で定義する。また、図3よリ2fはS'R間の距離に等しい。
【0055】
【数10】
Figure 0003957201
【0056】
この偏長楕円体がxy平面と交差する領域は、次の(10)式,(11)式で表すことができる。
【0057】
【数11】
Figure 0003957201
【0058】
上記の式で求まる領域は楕円となる。この楕円の形状を明確にするために変形すると、次数mに対する楕円の中心y0mは、次の(12)式になる。
【0059】
【数12】
Figure 0003957201
【0060】
また、楕円の短軸と長軸の長さxm、ymは次の(13)式で表すことができる。
【0061】
【数13】
Figure 0003957201
【0062】
但し、Dは次の(14)式から求まる値である。なお、次数mは定数aに含まれている。
【0063】
【数14】
Figure 0003957201
【0064】
以上の結果から、音源Sと受音点Rの位置が与えられ、設置する反射面を含む平面を直交座標系のxy平面上にとれば、上記の二つの第1条件(a)と第2条件(b)に対して、正の位相で作用する領域(mが奇数の条件を満たす領域)、または、負の位相で作用する領域(mが偶数の条件を満たす領域)が定められる。このとき、図4に示すように、それらの領域は、音源Sと受音点Rの座標、および次数mを与えれば、第1条件(a)については(5)式と(6)式、第2条件(b)については(12)式と(13)式によって、一意に決定できる。
【0065】
図4にはフレネル楕円帯の計算例を示したが、一般に、入射角が擦過入射に近づくほど、または高周波になるほど楕円は非常に縦長となる。また、フレネル次数mの増加とともに楕円短軸が単調に増加していく傾向がある。
【0066】
〔反射面の大きさ決定の原理〕
次に、反射面の大きさの求めることについて説明する。
【0067】
上述のようにして、反射面(吸収面)の位置を求めることができるが、反射面には音源から発生した音波は一般に斜めに入射するので、垂直入射の場合とは異なる。このため、ある次数mの値に対して生成される楕円から反射する音波の振幅は楕円上の位置により異なることが予想される。
【0068】
そこで、ヘルムホルツ積分の振幅項を考慮すれば、楕円上の位置の寄与を評価することができる。ヘルムホルツ積分は、次の(15)式で表すことができ、その振幅項は、次の(16)式で表すことができる。
【0069】
【数15】
Figure 0003957201
【0070】
【数16】
Figure 0003957201
【0071】
この評価は、上記ヘルムホルツ積分の振幅項を包落線と見なすことで、その寄与を評価することができる。その一例のプロットを図5に示すが、場所により非常に振幅項が異なることが理解できる。すなわち、このように振幅項の(16)式を数値計算し、その値が大きい領域にのみ反射面を設置すれば、上記の楕円全部の領域に反射面を設置しなくとも、充分な効果を得ることが可能となる。
【0072】
なお、本条件の特別の場合として、音源と受音点が面に立てた同一の法線上に存在する場合、つまり、垂直入射の条件に一致するときには、任意の次数mに対応する定式で定義される楕円は同心円(所謂フレネル輪環帯)となる。すなわち、任意の次数mに対応する同位相の面は同心円であるドーナツ状の領域となるが、このときには、この領域の面要素からの寄与は回転対象であり、場所による違いは生じない。従って、上述の方法のように、反射に有効に寄与する特定の領域を決めることはできない。
【0073】
図5では、特に、h1=h2かつh<<rの場合には、音源と受音点の近傍の点で振幅は極大となり、幾何学的な反射点(r/2,0)で鞍部点を有する(h1≠ h2では両者は一致しない)。
【0075】
以上より、擦過入射に近づくほど、フレネル帯内でもその寄与は場所により大きく変化するという知見を得て、この知見では重要な寄与は音源と受信点の近傍の範囲から生じることが理解できる。特に重要な寄与が音源と受信点の近傍の範囲から生じることは、幾何光学的反射点が主たる寄与をするという考えと異なるものである。また、音源と受音点近傍の吸音が効果的であるという騒音対策の経験則に沿う結果が得られた。
【0076】
〔反射面設計装置〕
次に、上記原理に基づく反射面設計装置について説明する。
【0077】
図6に示すように、反射面設計装置10は、CPU12,ROM14,RAM16が入出力ポート(以下、I/Oという)18に接続され、コマンドやデータが授受可能なコンピュータ構成とされている。このI/O18には、各種データやプログラムが格納されたメモリ20が接続されている。また、I/O18には、コマンドやデータ入力のためのキーボードなどの入力装置22、及びコマンドやデータを表示するための表示装置24が接続されている。
【0078】
なお、メモリ20には、上述の偏長楕円体の数式データや係数、ヘルムホルツ積分の振幅項の数式データや係数、以下に説明する処理プログラムが記憶されている。
【0079】
反射面設計装置10では、図7に示す処理ルーチンが実行される。まず、ステップ100では、音源S及び受音点Rの座標入力値を読み取る。次のステップ102では、オペーレータの入力による選択値を判別することによって、上述の第1条件による反射面の計算を実行するか否かを判断する。肯定されると、ステップ104へ進み、否定されると、ステップ116へ進む。
【0080】
ステップ104では、第1条件による直接音を考慮する偏長楕円式を設定する。ここでは、上記(2)式が設定される。次のステップ106では、設定した偏長楕円式を用いて偏長楕円体がxy平面と交差する領域すなわち楕円領域を導出する。ここでは、上記(3)式及び(4)式が求まる。なお、これらの式は、上述のように、上記(5)式及び(6)式によることで楕円形状を明確に規定することができる。
【0081】
次に、ステップ108において楕円領域の積分項を導出し(上記(16)式参照)、次のステップ110で評価する。この評価は、振幅項の(16)式による数値計算の値が大きい領域を求める。数値計算の値が大きい領域とは、数値計算の最大値になる領域、最大値から所定数の領域、所定値を超える値の領域などがある。
【0082】
次のステップ112では、上記ステップ110の評価により求めた領域に対して反射面を設置するための位置及び大きさを求める。この位置及び大きさは、上記ステップ110の評価により求めた領域に見合うものであればよい。このステップ112で求めた位置及び大きさの反射面の計算値を、次のステップ114で表示装置24へ出力する。
【0083】
一方、ステップ102で否定されたときは、ステップ116において、第2条件による直接音を考慮する偏長楕円式を設定する。ここでは、上記(9)式が設定される。次のステップ118では、設定した偏長楕円式を用いて偏長楕円体がxy平面と交差する領域すなわち楕円領域を導出する。ここでは、上記(10)式及び(11)式が求まる。なお、これらの式は、上述のように、上記(12)式及び(13)式によることで楕円形状を明確に規定することができる。
【0084】
そして、楕円領域の積分項を導出して評価する(ステップ108、110)。この評価により求めた領域に対して反射面を設置するための位置及び大きさを求め(ステップ112)、表示装置24へ出力する(ステップ114)。
【0085】
これによって、反射面の位置及び大きさを得ることができる。すなわち、(16)式による振幅項の大きな領域が最も効率的に音源からの音を反射または減衰できるので、この位置及び大きさにのみ反射面を設置すれば、上記の楕円全部の領域に反射面を設置しなくとも、充分な効果を得ることが可能となる。
【0086】
このように、本実施の形態では、反射面を設けるのみの簡単な構成で、電源供給が必要な装置を用いることなく、効率的に音源からの音を増強したり減衰したりすることができる。また、目的に応じて反射と吸音のいずれかについて、シンプルな部材(プラスターボードや合板)だけで構成することができる。さらに、反射・吸音パネルの位置にはある程度の任意性を有することができ、実用上、設置可能な位置に設けることができる。従って、音源からの音を増強したり減衰したりするにあたって、ランニングコスト、材工費の削減が図れる。また、設計の自由度が大きいので、従来、対策が困難と考えられた場合にも対応が期待できる。
【0087】
本方法(本実施の形態の反射面設計装置10)による計算結果は、次の音響環境に用いることが好適である。
【0088】
図8には、騒音源の発生音の低減に用いた適用例を示した。
【0089】
騒音源からの直接音を低減するため、反射性のパネルを第1条件(a)の方法に沿って設計できる。このとき次数mが偶数となる領域が対象域となり、必要なパネルの寸法は上記(16)式を計算して決定できる。そして、設置時の施工条件などを同時に考慮して適正なパネルの位置と寸法を決定すれば、騒音低減の効果が得られるパネルが設計できる。
【0090】
図9には、騒音対策のための吸音処理のエリアの決定に用いた適用例を示した。
【0091】
騒音源からの放射音を低減するため、例えば、音響反射に寄与すると予想される壁面に吸音処理を行う場合がある。これは、例えば天井や床面である。この場合、従来は、対象とする壁面に施工する吸音材料のどの部分が有効に作用するかを判定できなかったため、壁面の全面積に施工することが行われている。そこで、この場合、第2条件(b)を想定し、正の位相(mは奇数)の領域でかつ、上記(16)式によって、振幅の大きい領域に限定して吸音材を施工すればよい。
【0092】
図10には、コンサートホールの音響反射板への適用例を示した。
【0093】
コンサートホールの舞台では、演奏者が自分の音を聞いたり、演奏者同士のアンサンブルを取るために、舞台周辺には反射面(通常、音響反射板と呼ばれる)が設置される。これにより、有効な反射音がこれから演奏者に返ることが必要である。この場合、第2条件(b)に該当し、有効な反射音を得るため次数mが奇数となる領域かつ上記(16)式の振幅項が大きくなる場所に、反射面を設置する設計が可能となる。
【0094】
図11には、ホールや講堂などの有害エコー除去への適用例を示した。
【0095】
ホールや講堂などでは、舞台上の演奏者や拡声用スピーカから遠方の特定の壁面から、直接音から遅れて受音点に到達して、スピーチや音楽の品質を阻害するエコーが発生する場合がある。これを消去するため、コンピュータシミュレーションなどでエコーを発生する壁面を同定することは現状の技術で可能である。ただし、その面を吸音してエコーを消去する場合、その壁面が大きい場合には全面に吸音処理を行うことは部屋の残響時間を低下させて好ましくない影響を生じる場合がある。この場合にも、第2条件(b)の次数mが奇数の条件を満たし、かつ、上記(16)式を計算して必要最小限の領域面積を決定して、この部分に吸音処理を行う設計が可能となる。
【0096】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、入力設定された音源、受音点、及び特定面の位置による、音源からの直接音に対する特定面の反射音による位相が所定関係を有する特定面上の位相領域の振幅に基づいて、反射領域を設定するので、音源からの音を打ち消したり補強したりする領域を容易に設定することができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態にかかる音源と受音点の位置関係の説明図である。
【図2】 第1条件による位置関係を示す線図である。
【図3】 第2条件による位置関係を示す線図である。
【図4】 音源と受音点の位置関係及び楕円領域の位置関係の説明図である。
【図5】 ヘルムホルツ積分の振幅項による寄与の度合いの説明図である。
【図6】 本発明が適用された反射面設計装置の概略構成を示すブロック図である。
【図7】 本発明が適用された反射面設計装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】 本発明を、騒音源の発生音の低減に適用する場合の説明図である。
【図9】 本発明を、騒音対策のための吸音処理のエリアの決定に適用する場合の説明図である。
【図10】 本発明を、コンサートホールの音響反射板に適用する場合の説明図である。
【図11】 本発明をホールや講堂などの有害エコー除去、に適用する場合の説明図である。
【符号の説明】
P…点
R…受音点
S’…鏡像音源
S…音源
Δ…反射波の行路差
10…反射面設計装置
20…メモリ
24…表示装置

Claims (4)

  1. 音源から発せられる音を受音点において増減させるために音響板を空間内に設定するための音響板設計装置であって、
    音源と受音点の位置を入力する入力手段と、
    前記音源と前記受音点の位置を含む3次元空間内に予め定めた平面を、前記空間内の特定面として設定する面設定手段と、
    前記音源から前記受音点に直接到達する直接音と、前記音源から前記3次元空間内の微小反射体で反射して前記受音点に到達する反射波との行路差が前記音源から発せられた音の半波長の整数倍となり、かつ前記音源及び前記受音点の位置を焦点とする偏長楕円体の各々と前記特定面とが交差することによって形成されるフレネル楕円帯の領域を求めることによって、前記特定面における反射音により前記受音点に到達する音が強めるように作用または弱めるように作用する所定関係の位相を有する前記特定面上のフレネル楕円帯の領域である位相領域を求める領域演算手段と、
    前記フレネル楕円帯の各領域の反射波についてヘルムホルツ積分の振幅項を求めることによって、前記特定面上における前記位相領域において反射する音の振幅を求める振幅演算手段と、
    求めた振幅及び前記位相領域に基づいて、求めた振幅の値が所定値を超える前記位相領域内の領域を、前記受音点に到達する音が強まるまたは弱まる前記位相領域内の領域として求め、求めた領域を反射領域として前記特定面上に反射領域を設定する領域設定手段と、
    を備えたことを特徴とする音響板設計装置。
  2. 前記受音点に到達する音が強めるように作用または弱めるように作用する所定関係の位相は、直接音に対する半波長の奇数倍である正の位相または半波長の偶数倍である負の位相であることを特徴とする請求項1に記載の音響板設計装置。
  3. 音源から発せられる音を受音点において増減させるために音響板を空間内に設定するための音響板設計装置であって、
    音源と受音点の位置を入力する入力手段と、
    前記音源と前記受音点の位置を含む3次元空間内に予め定めた平面を、前記空間内の特定面として設定すると共に、前記音源について前記特定面に対称となる位置を仮想的な鏡像音源に定める設定手段と、
    前記鏡像音源から前記受音点に直接到達すると想定される音と、前記鏡像音源から前記3次元空間内の微小反射体で反射して前記受音点に到達する反射波との行路差が前記鏡像音源から発せられたとされる音の半波長の整数倍となり、かつ前記鏡像音源及び前記受音点の位置を焦点とする偏長楕円体の各々と前記特定面とが交差することによって形成されるフレネル楕円帯の領域を求めることによって、前記特定面における反射音により前記受音点に到達する音が強めるように作用または弱めるように作用する所定関係の位相を有する前記特定面上のフレネル楕円帯の領域である位相領域を求める領域演算手段と、
    前記フレネル楕円帯の領域の反射波についてヘルムホルツ積分の振幅項を求めることによって、前記特定面上における前記位相領域において反射する音の振幅を求める振幅演算手段と、
    求めた振幅及び前記位相領域に基づいて、求めた振幅の値が所定値を超える前記位相領域内の領域を、前記受音点に到達する音が強まるまたは弱まる前記位相領域内の領域として求め、求めた領域を反射領域として前記特定面上に反射領域を設定する領域設定手段と、
    を備えたことを特徴とする音響板設計装置。
  4. 前記受音点に到達する音が強めるように作用または弱めるように作用する所定関係の位相は、直接音に対する半波長の奇数倍である正の位相または半波長の偶数倍である負の位相であることを特徴とする請求項3に記載の音響板設計装置。
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