JP3958707B2 - 金型温度の予測方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鍛造型の寿命を予測する方法における目標型打ち回数後の金型温度を予測する予測方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱間鍛造金型の型打ち寿命の多くは金型の摩耗に起因する。この金型摩耗量を解析で予測して、金型寿命を予測して鍛造工程の設計に反映する方法が提案されている(特許文献1)。概要を図3に示す。すなわち、鍛造工程を設計するに当たって、設計中の金型がN回の連続型打ちに対応できるかどうかを金型の摩耗量を予測して判断する方法である。まず、素材形状、金型形状、加熱条件等の設定条件を電算機へ入力して熱・変形連成解析を行う。ここで、金型に対する攻撃的要素である機械的負荷と、金型に対する強度劣化要素である熱的負荷とを演算して、算出された機械的負荷(累積摩擦仕事量など)と熱的負荷(Nショット後の金型の降伏強度など)とから金型の摩耗量を算出し金型寿命を予測する。なお、金型寿命が目標のN回以上であれば工程設計は完了し、目標回数以前に寿命が尽きることが予測された場合には、目標回数が達成できるように鍛造工程を変更したり、金型修正などを行って再度熱・変形連成解析を行って確認する。
【0003】
しかし、この方法においては、摩耗の原因となる金型温度を精度よく予測する必要があり各種の方法が試みられている。例えば、熱・変形連成解析を利用した以下の方法1と方法2とを例示することができる。なお、熱・変形連成解析の詳細は、例えば、明石他:平成10年春塑加講論(1998),325−326等に発表されている。
【0004】
方法1によるフローチャートを図5に示す。この方法は、1回の熱・変形連成解析により、金型温度を評価する方法である。まず、金型の温度がある範囲で加熱冷却を繰り返す定常状態にあると仮定して熱・変形連成解析を実施する(s1)。この時、金型のモニタリング部の温度tを仮に設定して入力する(例えば、t1=300℃など)。得られた熱・変形連成解析後の金型の温度分布を引き継いで、潤滑剤や、エア吹き付けなどによる金型の冷却解析を行う(s2)。s1とs2によって金型の1ショット分の温度の変化が得られるので、この状態がNショット分繰り返されるとしてNショット後の焼き戻し反応量を算出する(s3)。ここで、焼き戻し反応量とは高温に晒されたときに生じる金属の機械的特性の変化量に相当し、高温に晒された温度と時間で演算されるパラメータの積算値として計算される。得られた焼き戻し反応量からNショット後の型の硬さH1を算出し(s4)、別途測定した実金型の硬さ測定データHと対比する(s5)。ここで、計算値H1が実測値Hと異なってNGである場合には、仮温度t1をt1より高いか低い温度t2で置き換えてs1に戻って再計算する。このようにして計算して得られる金型の硬さHnが実測値Hと一致した(Hn=H)硬さになる温度tnが求めるA点の温度である。この温度を入力して熱・変形連成解析を実施して金型温度を算出する。
【0005】
しかし、この方法1では試行錯誤によって硬さの実測値に一致する温度を求めることとなり、工数がかかる。また、部品毎に予め実測の硬さデータを測定しておかなければならないとという問題がある。
【0006】
方法2によるフローチャートを図6に示す。この方法は、熱・変形連成解析と冷却解析とを指定回数繰り返す方法である。熱・変形連成解析(s1)と金型冷却解析(s2)の結果得られた金型温度が定常状態であるか否かの判断を行い(s3)、定常状態でない場合には熱・変形連成解析(s1)と冷却解析(s2)とを繰り返し、定常状態となったらその時の温度が求める金型温度であるとする。なお、ここで定常状態とは、鍛造の連続型打ち過程において、ある型打ち後の鍛造金型の型温度の1サイクルの最高温度と前サイクルの最高温度との差がある値以下となった場合とする。
【0007】
しかし、方法2では、熱・変形連成解析で素材の変形解析に時間がかかり(例えば、2次元の解析で1サイクル約3時間を要する)、解析リードタイムが非常に長くなる。通常の鍛造型では数千個連続型打ちすることで摩耗が発生すると想定されるので、この繰り返しを行うことは現実的ではない。
【0008】
このように、熱・変形連成解析における素材の変形解析の時間の割合は、全計算時間の約80%を占め計算時間のネックになっているために、短時間で精度よく計算する方法の開発が望まれていた。
【0009】
【特許文献1】
特開2002−321032
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、鍛造金型寿命を予測する解析手法において、目標の型打ち回数における金型温度を短時間で精度よく計算する方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の鍛造型温度の予測方法は、鍛造連続型打ち時の鍛造金型温度の予測方法であって、初期温度を入力して1回目の型打ち後の素材と金型の温度分布情報を得る熱・変形解析工程と、得られた温度分布情報を引き継いで冷却時の金型の温度分布を計算する冷却解析工程と、この冷却解析により得られた温度分布を引き継いで鍛造時の金型の温度分布を求める温度解析工程とを備え、前記冷却解析工程と前記温度解析工程とを所定回数繰り返すことにより所定回数型打ち後の金型の温度を計算することを特徴とする方法である。
【0012】
また、金型の冷却解析と温度解析との繰り返し計算による温度変化がある温度領域で昇温・降温を繰り返す定常状態であると判断する判断工程を有することが好ましい。
【0013】
ここで、前記熱・変形連成解析工程は、素材の形状、金型の形状および加熱条件などを入力して素材と金型の変形及び温度情報などを計算してデータベースとして保存する工程であり、冷却解析工程は、型打ち後の温度分布を引き継いで前記金型への潤滑剤の塗布とエアによる強制冷却と素材挿入までの空冷とから金型温度を計算する工程であり、温度解析工程は、熱・変形解析で計算される素材の塑性変形発熱分布と素材と金型間の摩擦発熱分布とを型打ち回数によらず一定として金型の温度解析のみを実施する工程であることが望ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の金型温度の予測方法は、1回分の熱・変形連成解析と加熱と冷却を繰り返す金型の温度解析のみを所定回数繰り返すことを特徴とする。
【0015】
本発明の金型温度の予測方法の第1の実施形態を図1のフローチャートに示す。
【0016】
まず、S1として1回目の素材成形時の素材と金型との熱・変形連成解析を行う。この場合、計算機による数値計算のために、事前に素材形状、金型形状などの幾何データや、また、金型の初期温度や素材の加熱条件などの熱・変形連成解析を実行する上で必要な各種データを計算機に入力しておく。これら入力されたデータを利用し、電子計算機を用いて熱・変形連成解析を実施する。ここでは、基本的に有限要素法を実行する。
【0017】
この解析の結果、素材のいかなる部位に、いかなる応力が作用し、いかなる温度となり、いかなる変形をするのかが解析される。また、金型に関しても同様に作用する応力や応力によって生じる変形、あるいは温度分布などが解析される。しかし、ここで金型を剛体として解析すると金型の温度が解析される。得られた鍛造素材成形中の時間ステップにおける素材の変形、および金型の変形、また、各々の温度分布、メッシュシステムなどの解析結果はデータベースD1として蓄えられる。
【0018】
S2は素材成型時の金型温度解析工程である。従来の方法2ではこの金型温度解析をS1と同様の素材と金型の熱・変形連成解析で行うこととしていた。
しかし、本発明では熱・変形連成解析のうち素材の変形に係わる部分を省略して、また、金型は剛体として扱って金型の温度分布のみを演算で求めることとした。
【0019】
金型の温度は、加熱された素材からの熱伝達、素材の塑性変形によって発生する塑性発熱、素材と金型との摩擦によって発生する摩擦発熱、さらに輻射相当面での入熱等によって上昇する。ここで、塑性発熱と摩擦発熱とは素材の変形解析を行わなければ得られない熱変化である。しかし、これらの熱変化は型打ち回数毎に素材の変形形態が変化しなければ、型打ち回数に係わらずほぼ一定と見なすことができる。前記のように熱・変形連成解析の解析時間の約80%を素材の変形解析が占めているので、S1で得られたデータベースD1中のこれらの値を型打ち回数に係わらず一定として取り扱って、金型の温度変化のみを解析する。
【0020】
S3は素材成形後に成形された素材を取り出して金型を冷却することによる金型の温度分布の変化を解析する冷却解析工程である。
【0021】
素材を鍛造成形することにより上昇した金型温度は、鍛造終了後には成形された素材を取り出して潤滑剤を塗布したりエアによる強制冷却などによって低下する。S3ではS2で得られた金型の温度分布を引き継いで金型の冷却解析を行い冷却後の金型の温度分布を算出する。
【0022】
このように金型の温度分布に関してのみS2(加熱)工程とS3(冷却)工程とを繰り返して、この繰り返し回数が所定の回数となったときの温度分布が求める金型温度となる。
【0023】
以上ようにして得られた所定回数後の金型温度から、以下、従来の方法2と同様に金型の焼き戻し反応量を算出し、所定回数後の金型の硬さを求めて所定回数後の金型の摩耗量を予測することができる。
【0024】
鍛造連続型打ちにおける金型の温度は、以上のように加熱と冷却とが繰り返されながら全体としては徐々に上昇し、やがてはある温度領域で加熱と冷却とを繰り返すようになる。このようなある温度領域の中で加熱と冷却とを繰り返す状態を定常状態と呼ぶ。
【0025】
本発明の第1の実施形態では、S2工程の金型温度解析とS3の金型の冷却解析とを所定回数分だけ繰り返すこととしたが、多くの場合、繰り返し演算回数が所定回数となる前に金型温度は定常状態となる。この定常状態となった温度を所定回数後に得られる金型温度としても以後の摩耗量予測に与える誤差は無視できる程度に小さい。
【0026】
従って、本発明の第2の実施形態は、第1の実施形態に金型温度が定常状態であるか否かを判断する判断工程を設けたものである。図2に本発明の第2の実施形態のフローチャートを示す。
【0027】
すなわち、S1からS3で構成される第1の実施の形態に加え、S4として定常状態の判断工程を設けた構成である。また、図4は型打ち回数による金型温度の変化を模式的示したものである。図4で金型温度は、加熱冷却を繰り返し型打ち回数の増加に伴って上昇し、T℃付近で定常状態となっている。
【0028】
S4の判断工程ではS3で得られたn回目の金型の最高温度tnと1回前のサイクルの金型の最高温度tn-1との差(最高温度の差)が所定の温度差Δtよりも小さい場合に定常状態と判断する。しかし、最高温度の差がΔtよりも大きい場合には、金型の温度はまだ定常状態に入っていないと判断してS2に戻って(n+1)回目の計算を実行する。このようにして、S4で定常状態と判断された時に計算された温度が求める金型の温度である。
【0029】
ここで、定常状態の判断基準である最高温度の差Δtは、素材や金型の形状、冷却条件、潤滑条件といった鍛造条件によって異なるが、1〜10℃が適当である。Δtが1℃未満では、定常状態と判断するまでに時間がかかるためにS4の判断工程を設けた効果が得られない。一方、Δtを10℃を越えて設定すると解析により得られる温度と実温度との誤差が大きくなる虞があり好ましくない。
【0030】
なお、鍛造連続型打ちにおける金型温度の予測方法で、前記の従来の方法2で熱・変形解析と冷却解析とを1サイクルとして10サイクル繰り返したところ、解析に要する計算時間は400分であった。これを本発明の簡便法で1サイクルの熱・変形解析とS2とS3を1サイクルとして10サイクル繰り返したところ、解析に要する計算時間は40分であった。
【0031】
【発明の効果】
本発明の金型温度の予測方法によれば、1加工サイクル毎の素材と金型の変形解析を省略して、データベースの値を利用することによって解析に要する計算時間を従来法の約1/10に短縮することができ、予測作業の効率向上に大きく寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示すフローチャートである。
【図2】本発明の第2の形態を示すフローチャートである。
【図3】鍛造工程設計における摩耗量予測による型寿命予測方法の概略を示す図である。
【図4】型打ち回数による型温度の変化を示す模式図である。
【図5】従来法の方法1を示すフローチャートである。
【図6】従来法の方法2を示すフローチャートである。
Claims (5)
- 鍛造連続型打ち時の金型温度の予測方法であって、
初期温度を入力して1回目の型打ち後の素材と金型の温度分布情報を得る熱・変形連成解析工程と、
前記温度分布情報を引き継いで冷却時の金型の温度分布を計算する冷却解析工程と、
前記冷却解析により得られた温度分布を引き継いで型打ち時の金型の温度分布を計算する温度解析工程と、を備え、
前記冷却解析工程と前記温度解析工程とを所定回数繰り返すことにより該所定回数型打ち後の前記金型の温度を計算することを特徴とする金型温度の予測方法。 - 前記繰り返し計算による温度変化がある温度領域で昇温・降温を繰り返す定常状態と判断する判断工程を有する請求項1に記載の金型温度の予測方法。
- 前記熱・変形連成解析工程は素材の形状、金型の形状および加熱条件などを入力して素材と金型の変形及び温度情報などを計算してデータベースとして保存する工程である請求項1または2に記載の金型温度の予測方法。
- 前記冷却解析工程は型打ち後の温度分布を引き継いで前記金型への潤滑剤の塗布とエアによる強制冷却と素材挿入までの空冷とから前記金型温度を計算する工程である請求項1または2に記載の金型温度の予測方法。
- 前記温度解析工程は前記熱・変形解析で得られた前記素材の塑性変形発熱分布と素材と金型間の摩擦発熱分布とを型打ち回数によらず一定として金型の温度解析のみを実施する工程である請求項1または2に記載の金型温度の予測方法。
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