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JP3963007B2 - 被覆糸およびそれを用いてなる編織物 - Google Patents
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JP3963007B2 - 被覆糸およびそれを用いてなる編織物 - Google Patents

被覆糸およびそれを用いてなる編織物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐燃焼性、耐熱性、ストレッチ性に優れた被覆糸およびそれを用いてなる編織物に関する。
【0002】
【従来の技術】
衣料や産業資材として広く用いられているナイロンやポリエステル繊維等の汎用熱可塑性合成繊維は約250℃前後で溶融し、また限界酸素指数は約20前後であり、空気中でよく燃焼する。従ってこれらの汎用熱可塑性合成繊維は、炎や高熱に曝される危険の大きい場面で使用される衣料製品、例えば消防服、自動車レース用のレーシングスーツ、製鉄用作業服または溶接用作業服および手袋などの防護用の繊維素材として適しているとはいえない。
【0003】
アラミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維またはポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維等の耐熱性高機能フィラメント糸は約250℃前後では溶融せず、その分解温度が約500℃前後と高温である。また限界酸素指数は約25以上であって、空気中では熱源である炎を近づけることによって燃焼するが、炎を遠ざけると燃焼を続けることができない。
【0004】
このように、耐熱性高機能フィラメント糸は耐熱性および難燃性に優れた素材である。それゆえに、例えば耐熱性高機能フィラメント糸であるアラミド繊維は炎や高熱に曝される危険の大きい場面での衣料製品、例えば消防服、自動車レース用のレーシングスーツ、製鉄用作業服または溶接用作業服および手袋などの防護衣料として好んで用いられている。中でも、耐熱性とともに高強度特性をも併せ持ったパラ系アラミド繊維は、引裂き強さと耐熱性を要するスポーツ衣料や作業服、ロープ、タイヤコードなどに利用されており、また刃物によって切れにくいことから創傷防止のための作業用手袋などにも利用されている。
【0005】
パラ系アラミド繊維は、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(以下PPTA繊維と記す)が良く知られており、例えば米国特許第3,767,756号明細書や特公昭56−128312号公報に、PPTA繊維の製造方法が開示されている。
【0006】
一方、メタ系アラミド繊維は、パラ系アラミド繊維のように耐切創性や、高い引っ張り強さはないが、その耐熱性を特長として消防服や断熱フィルター、耐熱収塵フィルター、電気絶縁材料などに用いられている。
【0007】
従来、これら耐熱性高機能フィラメント糸を用いて衣料製品などの繊維製品を製造する際には、伸縮性のないフィラメント糸や紡績糸などの形態で該繊維が利用されているにすぎなかった。
【0008】
しかし、フィラメント糸や紡績糸などの伸縮性のない糸条を布地に加工し、消防服、レーシングスーツまたは作業服等の衣料製品を製造しても、該衣料製品に伸縮性が劣っているため、該衣料製品を着用した場合に、着心地が悪く、また活動しにくいという難点があった。また、同様に伸縮性の無い糸条から作られた従来の作業用手袋は着用感が悪く、作業効率を低下させる原因となっていた。
【0009】
かかる市場の要求に鑑みて、耐熱性捲縮糸または耐熱高性機能フィラメント糸に捲縮を付与する方法についての研究、提案が多数なされている(特開昭48−19818号公報、特開昭53−114923号公報、特開平3−27117号公報)。具体的には、ナイロンまたはポリエステル繊維など一般の熱可塑性合成繊維の捲縮付与方法を応用した方法が挙げられる。例えば、パラ系アラミド繊維などの高弾性率繊維に低弾性率繊維を混合して押込み法により捲縮を付与する方法(特開平1−192839号公報)、アラミド繊維をその分解開始温度以上、分解温度未満(メタ系アラミド繊維の場合390℃以上460℃未満)に加熱した非接触ヒーターを用い仮撚り捲縮加工した後、弛緩熱処理するという仮ヨリ法により製造された捲縮糸(特開平6−280120号公報)などが公知である。
【0010】
しかし、かかる公知技術のいずれにおいても、良好な伸縮性を持った耐熱高機能フィラメント糸を得ることはできなかった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、良好な伸縮性を有すると同時に耐燃焼性、耐熱性にも優れた被覆糸、つまり、(a)伸縮性、耐熱性、機械的強度および外観に優れ、(b)手などの身体によくフィットして作業性がよく、(c)毛羽や埃の発生しにくいというバランスのとれた高機能の被覆糸およびそれを用いてなる編織物を提供せんとするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の被覆糸は、芯糸と鞘糸からなる被覆糸であって、該被覆糸の芯糸に弾性繊維を用い、鞘糸にJISL 1013に基づいて測定される伸縮復元率が4〜80%の範囲内にあるポリパラフェニレンテレフタルアミドの捲縮糸を用いてなることを特徴とするものである。また、本発明の編織物は、かかる被覆糸を10重量%以上含むことを特徴とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明は、前記課題、つまり良好な伸縮性を有すると同時に耐燃焼性、耐熱性にも優れた被覆糸、つまり、(a)伸縮性、耐熱性、機械的強度および外観に優れ、(b)手などの身体によくフィットして作業性がよく、(c)毛羽や埃の発生しにくいというバランスのとれた高機能の被覆糸について、鋭意検討し、芯糸に弾性繊維、鞘糸に耐熱性高機能フィラメント糸を用いて被覆糸を構成してみたところ、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
【0014】
すなわち、JIS 1013に基づいて測定される伸縮復元率が4〜80%の範囲内にあるポリパラフェニレンテレフタルアミドの捲縮糸(以下、耐熱高機能フィラメント糸と呼ぶこともある。)を鞘糸に利用すると、フィラメントの状態で高い伸縮性をもつ被覆糸を提供することができることを見いだした。さらに、捲縮加工したポリパラフェニレンテレフタルアミド糸を鞘糸に用いると、より高い伸縮性をもつ被覆糸を提供することができる。かかる高伸縮性被覆糸においては、弾性繊維として、ウレタン系スパンデックスを用いることがバランスのとれた被覆糸を提供する上で望ましい。
【0015】
以下、本発明の被覆糸について図を用いて説明する。
【0016】
図1は、本発明の被覆糸の一例を示す概略側面図である。この図の被覆糸(ハ)は、芯糸である弾性繊維(イ)の周りを、鞘糸である耐熱高機能フィラメント糸(ロ)によって一重または二重に撚回されて被覆されているものである。
【0017】
本発明の被覆糸における芯糸は、弾性繊維である。なかでも高い伸縮性を持つポリウレタン系弾性繊維、特にウレタン系スパンデックスが好ましく使用される。
【0018】
かかるポリウレタン系弾性繊維としては、ポリマージオールと有機ジイソシアネートを主体とするイソシアネートと多官能活性水素化合物を反応させて得られるポリウレタン重合体を紡糸して得られたものが好ましく使用される。
【0019】
かかるポリマージオールとしては、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレンエーテルグリコールのようなポリエーテルグリコール類、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのグリコール類の少なくとも一種とアジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、β−メチルアジピン酸、イソフタル酸などのジカルボン酸の少なくとも一種を反応させて得られるポリエステルグリコール類、ポリカプロラクトングリコール、ポリヘキサメチレンジカーボネートグリコールのようなポリマージオールの一種または二種以上の混合物または共重合物が使用される。
【0020】
また、前記有機ジイソシアネートとしては、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートのような有機ジイソシアネートの一種または二種以上の混合物が使用される。この場合、さらにトリイソシアネートを少量併用してもよい。
【0021】
また、前記多官能活性水素化合物としては、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、4,4´−ジフェニルメタンジアミン、ヒドラジン、1,4−ジアミノピペラジン、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、水などの一種またはこれらの二種以上の混合物が使用される。
【0022】
これらの化合物には、所望により、モノアミン、モノアルコールのような停止剤を少量併用してもよい。また、2,6−ジテトラブチルパラクレゾール、亜リン酸エステルなどの酸化防止剤、ヒドロキシベンゾフェノン系またはヒドオキシベンゾチアゾールなどの光吸収剤または紫外線吸収剤、1,1−ジアルキル置換セミカルバジド、ジチオカルバミン酸塩などのガス黄変、劣化防止剤、および酸化チタン、酸化亜鉛などの白色顔料を適宜配合してもよい。
【0023】
かかるポリウレタン系弾性繊維の繊度としては、11〜940デシテックスの範囲が好ましく、22〜310デシテックスの範囲がより好ましい。11デシテックス未満であるとカバリングおよび製編、製織工程で糸切れの原因となったり、衣服を形成したとき、着用時のフィット性が十分なものを得ることができない。一方、940デシテックスを越えると、剛性が高く、柔軟性の求められる衣料には向かない。
【0024】
また、破断伸度は300%以上であることが好ましい。破断伸度が300%未満であると布帛を形成したとき十分な伸縮性を得ることができない。
【0025】
かかるポリウレタン系弾性繊維としては、その断面形状は特に限定されるものではなく、円形であっても扁平であってもよい。
【0026】
本発明の被覆糸における鞘糸は、耐熱高機能フィラメント糸である。かかる耐熱高機能フィラメント糸としては、JISK 7201に基づいて測定される限界酸素指数が25以上であるという難燃性と、JISK 7120に基づいて測定される、つまり示差走査熱量測定法によって測定される熱分解温度が400℃以上であるという耐熱性とを満足する繊維が好ましく使用される
【0027】
かかる耐熱高機能フィラメント糸としては、例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(東レ・デュポン株式会社製、商品名ケブラー)が使用される
【0028】
かかる耐熱高機能フィラメント糸は、編織物を形成したときの風合いがソフトであり、さらに伸縮性に優れるという観点から、捲縮加工を施されたものが使用される。
【0029】
かかる耐熱高機能フィラメント糸に捲縮を付与する方法としては、押込み法や仮撚り法などのいかなる方法であってもよい。
【0030】
例えば、特開2001−248027号公報に提案されているように、耐熱性高機能フィラメント糸に下記式で表わされる撚り係数(K)16,000〜35,000の撚りを加え、次いで130〜250℃の高温高圧水蒸気または高温高圧水処理を行って撚りを固定し、撚りの固定された撚り糸を前記と反対方向に撚りを解撚することによって得られる。
【0031】
K=t×D1/2
〔但し、tは撚り数(回/m)を表し、Dは繊度(Dtex)を表す。〕
また、パラ系アラミド繊維フィラメント捲縮糸条は、つぎの方法でも得られる。すなわち、パラ系アラミド繊維糸条に下記式で表される撚り係数(K)16,000〜35,000の撚りを加え、次いで例えば空気中で加熱などの方法を用いて乾燥することにより、撚りを固定した後、撚りの固定された撚り糸を前記と反対方向に解撚ことによって得られる。このとき、該パラ系アラミド繊維として、好ましくは水分率15%以上、より好ましくは25%以上、特に好ましくは30〜100%であるものを使用するのがよい。該パラ系アラミド繊維に撚りを加える前の水分率が15%未満では、良好な撚りのセット効果が得られず、一方撚りを加える前の水分率が100%を越えると、リング撚糸機やダブルツイスターで撚りをかけるときに、遠心力で糸条から水分が飛び散って撚糸機が水浸しになるなど環境や作業性に支障をきたす。
【0032】
K=t×Dw1/2
〔但し、tは撚り数(回/m)を表し、Dwは水分を含む繊度(Dtex)を表す。〕
この方法は、撚り−乾燥(撚り固定)−解撚を別々の工程で行ってもよいし、例えば仮撚り加工法のように連続的に行ってもよい。
【0033】
また、別の方法として、かかるパラ系アラミド繊維糸条で天竺編みなどの編み地を作り、これを乾燥して、編み目を固定した後、編み地を解くことによってもパラ系アラミド繊維フィラメント捲縮糸条が得られる。
【0034】
かかるポリパラフェニレンテレフタルアミド捲縮糸の伸縮復元率は、望ましくは4〜80%である。伸縮復元率が4%未満では、編織物を形成したときの風合いにおいてソフト感が劣り、また80%以上ではポリウレタン系弾性繊維との調和が悪く、被覆糸の外観に凹凸が発生して好ましくない。
【0035】
本発明にかかる耐熱高機能は、上記ポリパラフェニレンテレフタルアミド捲縮糸の1種類からなっていてもよいし、任意の2種以上の耐熱高機能フィラメント糸からなっていてもよい。また、ポリエステル、ナイロン、ポリビニルアルコール系繊維など他の自体公知の繊維との混繊、交撚などによる複合糸としても使用することができる。
【0036】
耐熱高機能フィラメント糸の繊度、フィラメント数は、用途目的に応じ、表面外観、耐熱性、伸縮性、風合い等を考慮して適宜選択すればよい。
【0037】
鞘糸の繊度は、用途目的に応じて20デシテックス以上1600デシテックス以下の範囲が好ましい。
【0038】
さらに鞘糸の単糸繊度は用途に応じて0.1Dtex以上10Dtex以下の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.4Dtex以上5Dtex以下である。0.1Dtex以下では、製糸効率が低くコストアップとなり、10Dtex以上では剛性が高く、柔軟性の求められる衣料には向かない。
【0039】
本発明の被覆糸は、優れた伸縮性を得る観点から鞘糸が芯糸の回りを一重に被覆したものであってもよく、また、優れた被覆性を得る観点から鞘糸が芯糸の回りを二重に被覆したものであってもよい。
【0040】
次に、本発明の被覆糸の製造方法について説明する。図2は本発明の被覆糸の製造方法の一例を示す概略模式図である。
【0041】
本発明においては、弾性繊維を芯糸として用い、その上から前記耐熱高機能フィラメント糸を鞘糸として被覆するものである。
【0042】
被覆の際には市販のカバリング機等が好ましく用いられる。
【0043】
図2は二重被覆の例であり、図2において、芯糸1として使用する弾性繊維は転がし給糸ローラ3により積極送りされ、フィードローラ4との間で1.2以上2.4以下の範囲でプレドラフトし、転がし給糸ローラ3とデリベリローラ11の間のドラフトが2.4以上4.0以下の範囲となるように設定するが好ましい。
【0044】
鞘糸は、市販の高速ワインダーにより、Hボビン2に巻き取られた後、図2のように下段スピンドル5および上段スピンドル7に設置され、スピンドルを回転させることによって芯糸に巻き付けられ、被覆糸を形成する。
【0045】
得られた被覆糸は、テイクアップローラ13によりチーズ14に巻き取られる。
【0046】
なお、一重被覆糸を製造する際には、上段スピンドルまたは下段スピンドルのいずれか一方にHボビン1本を設置して、スピンドルを回転させることによって芯糸に鞘糸を巻き付ける。
【0047】
鞘糸を芯糸に被覆する際、鞘糸のヨリ数は、鞘糸の番手により適宜選択すればよいが、100〜2000T/mの範囲とするのが好ましい。
【0048】
また、二重に被覆する場合、上ヨリは、下ヨリのトルクを打ち消す観点から、ヨリ方向が下ヨリと逆方向であることが好ましく、また同様の観点から上ヨリの撚数は、下ヨリの撚数の0.7〜0.9倍の撚数であることが好ましい。
【0049】
本発明の被覆糸である高い伸縮性をもつ耐熱高機能フィラメント糸条は、編地や織物に加工して、次のような繊維製品に有用である。たとえば、炎や火花、溶けた金属など高温に曝される場面で用いられる耐熱作業服、突起物や鋭利な破片などから人体を防護する作業用衣料、各種スポーツやアウトドア活動用の衣料素材として適しており、これらの衣料の表地および/または裏地、中地、あるいは下着として用いることができる。具体的には例えば消防用衣服、溶鉱炉における作業衣、溶接作業衣、自動車レーサー用衣服、各種手袋や靴下、前掛け、腕カバー、スパッツ、出目帽などがある。
【0050】
また、本発明の被覆糸はフィラメント糸条から成るため、毛羽やほこりを発生する紡績糸製品と異なり、毛羽やほこりが問題となるクリーンルームや、精密機器の組み立て作業などにおける作業衣や、防護衣料にも有用である。
【0051】
さらに、樹脂補強材としても有用で、本発明の高い伸縮性をもつ耐熱高機能フィラメント糸条を編み地や織物に加工して、これにエラストマーを含浸させたり、エラストマーと張り合わせ接着することにより、耐熱性あるいは耐熱性と高強度を併せ持った膜材が得られる。
【0052】
例えば、難燃性の要求される車両、すなわち列車や自動車などのエラストマーを用いた膜材の補強材として有用である。具体的には列車の車両と車両の連結幌、自動車の取り外し可能な幌などがあげられる。
【0053】
本発明の被覆糸を用いてなる編み地や織物は、伸縮性があって、凹凸面に添い易いことから、タイミングベルトの歯の表面の摩耗を防止するために歯の表面に配置される補強布(カバリングクロス)など、産業用ゴム製品の補強材としても有用である。建築物や構造物などの補強材としても有用である。
【0054】
例えば列車の高架橋の柱、建築物の柱、道路床盤などを樹脂と高強度繊維を用いて補強することが行われている。補強面に凹凸がある場合、従来は伸縮性のない高機能フィラメント織物が用いられてきたが、凹凸面に密着しないために空気層や樹脂だまりが形成され補強効果を低減する原因となっていた。
【0055】
本発明の高い伸縮性をもつ耐熱高機能フィラメント糸条からなる編み地や織物を、このような補強における繊維補強材料として用いると、建築物や構造物などの補強部分の凹凸面に良く追随密着するので、空気層や樹脂だまりを生じることがない。
【0056】
本発明でいうかかる編織物とは、織物や編み物、組み紐などの組み物、ロープ、など糸条物から作られる布帛およびひも状物を意味するものである。
【0057】
すなわち、かかる編織物は、前記被覆糸を10重量%以上、好ましくは40重量%以上、より好ましくは70重量%以上含むことが望ましい。本発明の被覆糸を10重量%以上含むことにより、本発明の目的とする耐熱性、耐燃焼製、ストレッチ性を得ることができる。
【0058】
【実施例】
以下実施例により本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明がこれら実施例により限定されるものではない。
【0059】
なお、本発明における強度、5cN荷重時の伸度および残留ひずみに関する測定方法を以下に説明する。
【0060】
各物性等の表示方法および評価方法は、次の方法に基づいた。
[引張強度]
自記記録装置付定速伸長型引張試験機を用い、1Dtex当たり7mgの初荷重をかけた状態で10cmのつかみの間隔に取付、引張速度を20cm/minとして、破断するまで引き伸ばし、破断時点での強度を測定した。
[5cN荷重時の伸度および残留ひずみ]
自記記録装置付定速伸長型引張試験機を用い、1Dtex当たり7mgの初荷重をかけた状態で10cmのつかみの間隔に取付、引張速度を20cm/minとして、5cNの荷重まで引き伸ばし、5cNの荷重時の伸度を測定した。5cNの荷重後、直ちに、同じ速度で除重し、完全に除重した時点での伸度を残留ひずみとした。
[伸縮性]
JIS L 1013:1999 化学繊維フィラメント糸試験方法8.11.A法により伸縮伸長率を測定した。測定前の前処理として、測定試料をかせ状にしてガーゼに包んだまま、90℃20分間の温水処理を行い、室温で自然乾燥させた。
[伸縮復元率]
JIS L 1013:1999 化学繊維フィラメント糸試験方法 8.12 伸縮復元率 に従って測定した。測定前の試料の調整はつぎのようにおこなった。測定試料をかせ状にしてガーゼに包んだまま、90℃20分間の温水処理を行い、室温で自然乾燥させた。
[繊度]
JIS L 1013:1999 化学繊維フィラメント糸試験方法8.3により繊度を測定した。
[限界酸素指数]
JIS K 7201:1999 酸素指数法による高分子材料の燃焼試験方法により測定した。
[熱分解温度]
JIS K 7120:1987 プラスチックスの熱重量測定方法により測定した。
[熱溶融性]
500℃に加熱された金属棒(直径0.6cm)の先端に6x6cmの試料を自重のもとに水平に5秒間接触させたとき、熱によって布にできた穴あきの程度を金属棒の断面積と相対比較して級で判定する。
5級;穴あき無し、4級;1/4穴あき、3級;1/2穴あき、2級;3/4穴あき、1級;完全に穴があく。
[燃焼試験]JIS L 1091−1999 繊維製品の燃焼性試験方法 8.1.1 A−1法(45ミクロバーナー法) に準じて、規定のバーナーによる1分間加熱後の穴あき面積を測定した。
[切創抵抗(切れ難さCut resistance )] ISO 13997:1999
Protective clothing - Mechanical properties - Determination of resistance to cutting by sharp objects に従って測定した。一定の移動距離で刃が試験片を貫通する(切る)とき、切れにくい素材ほど重い荷重が必要である。刃に加える荷重Lにおいて、刃の移動距離20mmで刃が試験片を貫通する時、荷重Lを切創抵抗値とする。刃はAmerican Safety Razor Co.,品番No.88-0121を使用した。測定値はN(=ニュートン)で表し、数値が大きいほど切れにくいことを示す。
【0061】
[実施例1]
東レ・デュポン(株)製ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(以下PPTA繊維と記す)フィラメント糸条220Dtex(商品名・ケブラー、単糸繊度1.65Dtex,限界酸素指数28、熱分解点537℃、引張強度20.3cN/Dtex、引張弾性率499cN/Dtex)にダブルツイスターで撚りを加えて、撚り数1685(回/m)の撚り糸を得た。
【0062】
このときの撚り係数は、下記式で表されK=25000である。
【0063】
K=t×D1/2
但し、tは撚り数(回/m)を表し、Dは繊度(Dtex)を表す。
【0064】
これを飽和水蒸気処理設備に入れ、200℃の飽和水蒸気処理を15分間行って撚りセットを行った。冷却後、ダブルツイスターで逆よりをかけて撚り数をほぼ0まで解撚し捲縮糸条を得た。
【0065】
得られたPPTA捲縮糸の物性を表1に示す。
【0066】
【表1】
Figure 0003963007
【0067】
33Dtexのポリウレタン系弾性繊維(東レ・デュポン(株)製、商品名ライクラ)を芯糸とし、前記の得られた220DtexのPPTAフィラメントの捲縮糸を鞘糸として用い、図2に示されるカバリング工程を使用して、以下の条件でカバリング加工を施した。
【0068】
ドラフト:3.0倍
ヨリ数:Z200T/m
スピンドル回転数:5000rpm
巻取比:93.0%
得られた一重被覆糸は、引張強度が11.2cN/Dtex、5cN荷重時の伸度が4.8%、残留ひずみが1.6%であり、良好な捲縮を有し、耐燃焼性に優れ、高強度かつ高弾性なものであった。得られた一重被覆糸を20ゲージの1口編機を用いて天竺編み組織を編成したところ、この編み地は限界酸素指数が26、熱溶融性が5級、燃焼試験による穴あき面積が0(cm2 )であった。 また、この編み地の切創抵抗は1.2(N)であった。このようにソフトな風合いを有し、伸縮性に富み、耐燃焼性、耐熱性に優れかつ刃物で切れにくい編地が得られた。
【0069】
[比較例1]
330Dtex68フィラメントのポリエチレンテレフタレート高配向未延伸糸を用い、市販の仮撚加工機を使用して、以下の条件で仮撚加工を実施し、総繊度224Dtex、フィラメント数68、伸縮復元率15%、限界酸素指数20のポリエチレンテレフタレートフィラメント捲縮糸を得た。
「仮撚加工条件」
糸速 300m/min
施撚体 フリクションツイスター
仮撚方向 Z
D/Y比 1.6
仮撚温度 200℃
延伸倍率 1.5
実施例1で使用したものと同じ33Dtexのポリウレタン弾性繊維を芯糸とし、得られた224Dtexのポリエチレンテレフタレートフィラメント捲縮糸を鞘糸として用い、実施例1と同様に以下の条件でカバリング加工を施し、一重被覆糸を得た。
【0070】
ドラフト:3.0倍
ヨリ数:Z200T/m
スピンドル回転数:5000rpm
巻取比:93.0%
得られた一重被覆糸は、引張強度が4.8cN/Dtex、5cN荷重時の伸度が5.3%、残留ひずみが1.5%であり、良好な捲縮を有し、高弾性ではあるが、限界酸素指数が20で、耐燃焼性に欠き、強度も不十分なものであった。得られた一重被覆弾性糸を20ゲージの1口編機を用いて天竺編み組織を編成したところ、ストレッチバック性には優れているものの、限界酸素指数が20、熱溶融性が1級で、燃焼試験による穴あき面積は45cm2以上であり、耐熱性において不十分なものであった。また、この編み地の切創抵抗は0.5(N)で、ほぼ同じ糸使いの実施例1の編み地の約50%であった。
【0071】
[実施例2]
実施例1より太い78Dtexのポリウレタン系弾性繊維を芯糸とし、実施例1で使用したものと同じ220DtexのPPTAフィラメント捲縮糸を鞘糸として用い、実施例1と同様に以下の条件でカバリング加工を施し、一重被覆糸を得た。
【0072】
ドラフト:3.0倍
ヨリ数:Z200T/m
スピンドル回転数:5000rpm
巻取比:93.0%
得られた一重被覆糸は、引張強度が9.6cN/Dtex、5cN荷重時の伸度が27%、残留ひずみが4.5%であり、良好な捲縮を有し、耐燃焼性に優れ、高強度であり、実施例1よりさらに高弾性なものであった。得られた一重被覆糸を20ゲージの1口編機を用いて天竺編み組織を編成した。この編み地は限界酸素指数が26、熱溶融性が5級、燃焼試験による穴あき面積が0(cm2 )、切創抵抗は1.2(N)であった。このようにソフトな風合いを有し、伸縮性に富み、耐燃焼性、耐熱性および耐切創性に優れた編地が得られた。
【0073】
[実施例3]
実施例2で使用したものと同じ78Dtexのポリウレタン系弾性繊維を芯糸とし、実施例1で使用したものと同じ220DtexのPPTAフィラメント捲縮糸を鞘糸として用い、以下の条件でカバリング加工を施し、二重被覆糸を得た。
【0074】
ドラフト:3.0倍
下ヨリ数:S200T/m
上ヨリ数:Z150T/m
スピンドル回転数:5000rpm
巻取比:93.0%
得られた二重被覆糸は、引張強度が12.2cN/Dtex、5cN荷重時の伸度が24%、残留ひずみが4.8%であり、良好な捲縮を有し、耐燃焼性に優れ、高強度であり、実施例1よりさらに高弾性なものであった。得られた二重被覆糸を20ゲージの1口編機を用いて天竺編み組織で編成した。この編み地の限界酸素指数は27、熱溶融性は5級、燃焼試験による穴あき面積は0(cm2 )、切創抵抗は2.1(N)であった。このように、ソフトな風合いを有し、ストレッチバック性に富み、耐燃焼性、耐熱性に優れた編地が得られた。
【0075】
[実施例4]
通常の方法で得られたポリパラフェニレンテレフタルアミド(以下PPTAと記す)(ηinh=6.5)を99.9%の濃硫酸に溶かし、ポリマー濃度19.0%、温度80℃の紡糸ドープとし、孔径0.06mmの細孔数133個を有する口金から押し出し、6mmの空気間隔を通した後、4℃の水中に導いて凝固させ、ネルソンローラに導き、500m/分の速度で前進させ、10%の水酸化ナトリウム水溶液で中和処理し、水洗後、表面温度110℃のホットローラでわずかに乾燥して耐水性のボビンに巻き取り、フィラメント数133からなる、水分率46%の水分込み繊度321Dtex(絶乾換算220Dtex、単糸繊度絶乾換算1.65Dtex)のPPTAフィラメント糸を得た。
この糸条にリング撚糸機で、S撚りを加え、撚り数1395(回/m)の撚り糸を得た。このときの撚り係数はK=25000で、下記式で計算される。
【0076】
K=T×Dw1/2
但し、Tはヨリ数(T/m)を表し、Dwは水分込み繊度(Dtex)を表す。
【0077】
得られた撚り糸300gをアルミ製のボビンに巻き取り、ついで熱風乾燥機に入れて100℃で30分間の乾燥を行って撚りを固定した。このようにして撚りを固定した撚り糸を、リング撚糸機で撚り方向Z撚りの撚りを与えて撚り数0になるまで解撚し、PPTAフィラメントの捲縮糸を得た。得られた捲縮糸の捲縮特性を表2に示す。また同捲縮糸の熱的特性は、限界酸素指数28,熱分解温度537℃であった。
【0078】
【表2】
Figure 0003963007
【0079】
このようにして得たPPTAフィラメント捲縮糸を用いて、実施例1と同様の方法で一重被覆糸を得た。得られた一重被覆糸は、引張強度が11.0cN/Dtex、5cN荷重時の伸度が4.8%、残留ひずみが1.6%であり、良好な捲縮を有し、耐燃焼性に優れ、高強度かつ高弾性なものであった。
【0080】
得られた一重被覆糸を20ゲージの1口編機を用いてスムス組織編成したところ、この編み地は限界酸素指数が26、熱溶融性が5級、燃焼試験による穴あき面積が0(cm2 )であった。 また、この編み地の切創抵抗は1.2(N)であった。このようにソフトな風合いを有し、伸縮性に富み、耐燃焼性、耐熱性に優れかつ刃物で切れにくい編地が得られた。
【0083】
[比較例2]
実施例2で使用したものと同じ78Dtexのポリウレタン系弾性繊維を芯糸とし、比較例1で使用したものと同じ224Dtexのポリエチレンテレフタレートフィラメント捲縮糸を鞘糸として用い、実施例1と同様に以下の条件でカバリング加工を施し、二重被覆糸を得た。
【0084】
ドラフト:3.0倍
下ヨリ数:S200T/m
上ヨリ数:Z150T/m
スピンドル回転数:5000rpm
巻取比:93.0%
得られた二重被覆糸は、引張強度が4.3cN/Dtex、5cN荷重時の伸度が25%、残留ひずみが4.7%であり、良好な捲縮を有し、高弾性ではあるが、耐燃焼性に欠き、強度も不十分なものであった。得られた一重被覆弾性糸を24ゲージの1口編機を用いて天竺編み組織を編成したところ、ストレッチバック性には優れているものの、限界酸素指数が20、熱溶融性が1級で、燃焼試験による穴あき面積は45cm2 以上であり、耐熱性において不十分なものであった。また切創抵抗は0.9(N)で、実施例3のPPTA繊維を用いた二重被覆糸からなる編み地の約43%であった。
【0085】
これらの結果を表3に示す。
【0086】
【表3】
Figure 0003963007
【0087】
表3から明らかなように、実施例1〜のものは、比較例のものに比していずれも優れた特性を有している。
【0088】
【発明の効果】
本発明によれば、伸縮性、耐熱性、機械的強度および外観に優れ、手などの身体によくフィットして作業性がよく、毛羽や埃の発生しにくい被覆糸およびそれを用いて成る編織物、手袋などの繊維製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の被覆糸の一例を示す概略側面図である。
【図2】本発明の被覆糸の製造方法の一例を示す概略模式図である。
【符号の説明】
(イ):芯糸
(ロ):鞘糸
(ハ):被覆糸
1:芯糸
2:鞘糸
3:転がし給糸ローラ
4:フィードローラ
5:下段スピンドル
6:下段ベルト
7:上段スピンドル
8:上段ベルト
9:Hボビン
10:スネルガイド
11:デリベリローラ
12:ガイドバー
13:テイクアップローラ
14:チーズ

Claims (3)

  1. 芯糸と鞘糸からなる被覆糸であって、該被覆糸の芯糸に弾性繊維を用い、鞘糸にJISL 1013に基づいて測定される伸縮復元率が4〜80%の範囲内にあるポリパラフェニレンテレフタルアミドの捲縮糸を用いてなることを特徴とする被覆糸。
  2. 前記弾性繊維が、ポリウレタン系弾性繊維であることを特徴とする請求項1に記載の被覆糸。
  3. 請求項1または2に記載の被覆糸を10重量%以上含むことを特徴とする編織物。
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