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JP3971664B2 - 炭素纖維ストランド - Google Patents
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JP3971664B2 - 炭素纖維ストランド - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭素纖維強化熱硬化性樹脂複合材料用炭素纖維ストランドに関し、詳しく述べれば熱硬化性樹脂としてラジカル重合性樹脂を用いる場合、熱硬化性樹脂と炭素纖維の密着性に優れた複合材料を製造することのできる炭素纖維ストランドに関する。
【0002】
【従来の技術】
炭素纖維は他の纖維と比較し、強度や弾性率が高く、軽いという特徴を有するため、航空宇宙産業やスポーツ産業といった、各種の産業分野において利用されている。また、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂とする複合材料の強化材として使用されている。
【0003】
熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂として複合材料を製造する方法としては、中間基材であるプリプレグを用いて賦形成型する方法の外、引抜成形法、レジン・トランスファー・モールディング(RTM)法、フィラメント・ワインディング(FW)法、シート・モールディング・コンパウンド(SMC)法、バルク・モールディング・コンパウンド(BMC)法、ハンドレイアップ法などがある。
【0004】
複合材料において、マトリックス樹脂となる熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂のほか、不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂等の不飽和熱硬化性樹脂が使用される。
【0005】
不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂は一般的にスチレン等の重合性モノマーと共に使用され、エポキシ樹脂に比べ粘度が低いことや硬化速度が速いことから、RTMや引抜成形によって製造される複合材料のマトリックス樹脂として広く利用されている。
【0006】
しかしながら、不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂をマトリックス樹脂(不飽和マトリックス樹脂)とし、従来のサイズ剤を付与した炭素纖維を強化材として使用する場合、得られる複合材料の物性は、エポキシ樹脂をマトリックス樹脂とする場合と比較して低い場合がある。具体的には諸物性のうち、炭素纖維と、不飽和ポリエステル樹脂又はビニルエステル樹脂との接着強度、特に剪断強度がエポキシ樹脂の場合と比較して低く、得られる複合材料は実用的に使用し難いものとなる場合がある。
【0007】
炭素纖維と不飽和マトリックス樹脂との接着強度を向上させる技術としては、ビニルエステル樹脂を炭素纖維に付着させる方法(特公昭62−18671号公報)、不飽和基を有するウレタン化合物を炭素纖維に付着させる方法(特開昭56−167715号公報、特開昭63−50573号公報)、末端不飽和基を有するエステル化合物を炭素纖維に付着させる方法(特開昭63−105178号公報)が開示されている。
【0008】
しかし、前記特公昭62−18671号公報にみられるビニルエステル樹脂を炭素纖維に付着させる方法の場合は、特開2000−355881の比較例2に示されているとおり、樹脂の含浸性に効果があっても接着性には効果がなかった。
【0009】
また、他の技術においては、サイズ剤にカップリング剤の役割を持たせることによって、炭素纖維と不飽和ポリエステル樹脂との接着性を向上させようと試みているが、その効果は不十分である。
【0010】
更に、前記特開昭56−167715号公報に記述されるように、強化材と樹脂との界面の親和力を高める手法であるビニルシラン処理やクロム酸処理は、ガラス纖維には有効であるが、炭素纖維には余り有効ではない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は、熱硬化性樹脂強化用に適した炭素纖維を開発するために種々検討しているうちに、炭素纖維ストランド(数百本乃至数万本のフィラメントからなる纖維束)に付着するサイズ剤として、末端に不飽和結合を含有するエステル化合物、及びシランカップリング剤を併用することにより、上記炭素纖維ストランドが熱硬化性樹脂系複合材料に適した強化材となり得ることを知得し本発明を完成するに至った。
【0012】
よって、本発明の目的とするところは熱硬化性樹脂、特に不飽和マトリックス樹脂との接着性に優れ、炭素纖維強化複合材料の物性に優れた炭素纖維ストランドを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明は、以下に記載のものである。
【0014】
〔1〕 下記一般式(1)で示される官能基を化合物の末端に含有するエステル化合物、及び、シランカップリング剤を含有するサイズ剤が付着されてなる炭素纖維ストランド。
【0015】
【化4】
Figure 0003971664
【0016】
式中のR1は水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を表す。
【0017】
〔2〕 一般式(1)で示される官能基がアクリロイル基、メタクリロイル基、又はα−(ヒドロキシメチル)アクリロイル基である〔1〕記載の炭素纖維ストランド。
【0018】
〔3〕 シランカップリング剤が下記一般式(2)で示される官能基を化合物の末端に含有する化合物である〔1〕又は〔2〕記載の炭素纖維ストランド。
【0019】
【化5】
Figure 0003971664
【0020】
式中のR2は水素、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、又はアリール基、A1は単結合、−CH2−、又は−COO−を表す。
【0021】
〔4〕 一般式(2)で示される官能基がビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、又はα−(ヒドロキシメチル)アクリロイル基である〔3〕記載の炭素纖維ストランド。
【0022】
〔5〕 シランカップリング剤が、下記一般式(3)で示される化合物である〔4〕記載の炭素纖維ストランド。
【0023】
【化6】
Figure 0003971664
【0024】
式中のR3は水素、又はメチル基、R4はメチル基、又はエチル基、nは0〜6の整数を表す。
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明の炭素纖維ストランドはサイズ剤が付着されてなり、このサイズ剤は一般式(1)で示される官能基を化合物の末端に含有するエステル化合物、及び、シランカップリング剤を含有する。
【0027】
エステル化合物は、末端が一般式(1)で表される構造をしている。ここでR1は水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を表す。
【0028】
一般式(1)で示される官能基を化合物の末端に含有するエステル化合物は特に限定されるものではないが、以下のものが例示できる。
【0029】
(i) 1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,3−プロパントリオール等の脂肪族ポリオール若しくはビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等の芳香族ポリオールの単量体若しくは縮合体と、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和一塩基酸とのエステル化合物。
【0030】
(ii) 下記一般式(4)
【0031】
【化7】
Figure 0003971664
【0032】
〔式中のR5、R10は、それぞれ独立して水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を表し、R6、R7、R8、R9は、それぞれ独立して水素、又はメチル基を表し、p、q、rは、それぞれ独立して1以上の整数を表す。〕
で示されるアルキレンオキシド変性ビスフェノール系(メタ)アクリル型ビニルエステル化合物。
【0033】
(iii) 下記一般式(5)
【0034】
【化8】
Figure 0003971664
【0035】
〔式中のR11、R14は、それぞれ独立して水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を表し、R12、R13は、それぞれ独立して水素、又はメチル基を表し、sは1以上の整数を表す。〕
で示されるビスフェノール系(メタ)アクリル型ビニルエステル化合物。
【0036】
以上のエステル化合物のうちでも、ビスフェノール系(メタ)アクリル型ビニルエステル化合物が靭性に優れることから特に好ましい。
【0037】
更に具体的には、(i)の脂肪族ポリオール又は芳香族ポリオールの単量体又は縮合体と、不飽和−塩基酸とのエステル化合物としては、例えば、ジエチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学株式会社製ライトエステル2EG)や、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物のジメタクリレート(共栄社化学株式会社製ライトエステルBP−2EM)等が挙げられる。
【0038】
(ii)のアルキレンオキシド変性ビスフェノール系(メタ)アクリル型ビニルエステル化合物としては、例えば、ビスフェノールAエチレンオキシド2モル付加物ジグリシジルエーテルアクリル酸2モル付加物(共栄社化学株式会社製エポキシエステル3002A)や、ビスフェノールAプロピレンオキシド2モル付加物ジグリシジルエーテルメタクリル酸2モル付加物(共栄社化学株式会社製エポキシエステル3002M)等が挙げられる。
【0039】
(iii)のビスフェノール系(メタ)アクリル型ビニルエステル化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸2モル付加物(共栄社化学株式会社製エポキシエステル3000A)やビスフェノールAジグリシジルエーテルメタクリル酸2モル付加物(共栄社化学株式会社製エポキシエステル3000M)等が挙げられる。
【0040】
ビスフェノール系メタクリル型ビニルエステル化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテルメタクリル酸2モル付加物(共栄社化学株式会社製エポキシエステル3000M)やビスフェノールAプロピレンオキシド2モル付加物ジグリシジルエーテルメタクリル酸2モル付加物(共栄社化学株式会社製エポキシエステル3002M)等が挙げられる。
【0041】
これらの化合物は、例えばエポキシ化合物と不飽和一塩基酸とにより合成することができる。
【0042】
シランカップリング剤は、ガラス纖維に用いられる公知のシランカップリング剤が使用できる。具体的には、化合物の末端に、一般式(2)で示される官能基、グリシジル基、アミノ基、アルコキシ基、イソシアン酸基、ハロゲン基を含有する化合物が例示できる。
【0043】
これらのシランカップリング剤のうちでも、一般式(2)で示される官能基を化合物の末端に含有する化合物が好ましい。ここで、R2は水素、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、又はアリール基であり、A1は単結合、−CH2−、又は−COO−である。
【0044】
更に具体的には、一般式(2)で示される官能基としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、又はα−(ヒドロキシメチル)アクリロイル基が例示できる。
【0045】
また、これらのシランカップリング剤において、上記末端基を有する有機残基が結合された以外のSiの結合手には、炭素数1〜6のアルコキシ基、メチル基、エチル基、フェニル基、スチリル基が結合されていても良い。
【0046】
更に好ましいシランカップリング剤としては、一般式(3)で示される化合物である。ここで、R3は水素、又はメチル基であり、R4はメチル基、又はエチル基であり、nは0〜6の整数である。
【0047】
一般式(3)で示される化合物のうちでも、メタクリロキシアルキルアルコキシシランが炭素纖維ストランドのしなやかさに優れることから特に好ましい。
【0048】
メタクリロキシアルキルアルコキシシランとしては、例えば市販の、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカー株式会社製A−174など)、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業株式会社製KBM−502など)等が挙げられる。
【0049】
上記サイズ剤におけるシランカップリング剤の配合割合は90質量%以下が好ましく、5〜90質量%がより好ましい。シランカップリング剤の配合割合が90質量%を超えると、炭素纖維ストランドの収束性が悪くなり、取扱性が悪くなる虞がある。
【0050】
本発明の炭素纖維ストランドに付着されたサイズ剤は、一般式(1)及び一般式(2)で示される官能基を有する化合物を30質量%以上含むことが好ましい。
【0051】
本発明の炭素纖維ストランドは、炭素纖維フィラメントを束ねたものであり、そのフィラメント数は特に制限はないが、樹脂の含浸の容易さからは1束当たり1000〜50000本が好ましい。
【0052】
前記炭素纖維ストランドを構成する炭素纖維は、原料としては特に限定するものではないが、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素纖維、ピッチ系炭素纖維、レーヨン系炭素纖維、リグニン系炭素纖維、フェノール系炭素纖維等が例示できる。これらの炭素纖維のうち、取扱性能、製造工程通過性に適したPAN系炭素纖維、ピッチ系炭素纖維が好ましい。ここで、PAN系炭素纖維は、アクリロニトリル構造単位を主成分として、イタコン酸、アクリル酸、アクリルエステル等のビニル単量体単位を10モル%以内で含有する共重合体を常法に従い、酸化安定化後、炭素化して炭素纖維化したものである。
【0053】
また、ピッチ系炭素纖維は、タールやピッチを常法に従い、光学的性質を整え、酸化不融化後、炭素化して炭素纖維化したものである。
【0054】
本発明の炭素纖維ストランドを構成する炭素纖維は、マトリックス樹脂との接着強度を高めるために、X線光電子分光法により測定される表面酸素濃度比O/Cが0.1〜0.3であることが好ましい。
【0055】
炭素纖維の表面酸素濃度比O/Cを上記範囲にするためには、炭素纖維の製造工程において、炭素化処理終了後、表面処理を施すことが好ましい。
【0056】
かかる表面処理は、液相処理、気相処理などによる表面処理を挙げることができる。本発明においては、生産性、処理の均一性、安定性等の観点から、液相電解表面処理が好ましい。
【0057】
この場合、十分に洗浄して電解質を除去することが好ましい。
【0058】
炭素纖維の表面処理を行う程度を管理するための指標としては、X線光電子分光法(XPS)により測定される炭素纖維の表面酸素濃度比O/Cが好ましい。
【0059】
O/Cは一例として次の方法によって求めることができる。予めサイズ剤を除去した炭素纖維を10-6Paに減圧した測定室に入れ、日本電子株式会社製X線光電子分光器ESCA JPS−9000MXにより、Mgを対極として電子線加速電圧10kV、電流10mAの条件で発生させたX線を照射し、光電子の脱出角度を90°とした場合に炭素原子、酸素原子より発生する光電子スペクトルを測定し、その面積比を算出する。
【0060】
発生する光電子の割合は各元素により異なり、この日本電子株式会社製X線光電子分光器ESCA JPS−9000MXの場合の装置定数を含めた換算計数は2.69である。
【0061】
表面処理を施された炭素繊維は、前述したサイズ剤を施す。
【0062】
サイズ剤の付与は、スプレー法、液浸法、転写法等、既知の方法を採択し得る。汎用性、効率性、付与の均一性に優れることから、液浸法が特に好ましい。
【0063】
炭素纖維ストランドをサイズ剤液に浸漬する際、サイズ剤液中に設けられた液没ローラー又は液浸ローラーを介して、炭素纖維ストランドの開纖と絞りを繰り返し、炭素纖維ストランドの内部までサイズ剤を含浸させることが好ましい。
【0064】
サイズ剤付与処理は、アセトン等の溶剤にサイズ剤となる化合物を溶解させた溶液中に炭素纖維を浸漬する溶剤法と、乳化剤等を用い、水系エマルション中に炭素纖維を浸漬するエマルション法とがある。人体の安全性及び自然環境の汚染を防止する観点からエマルション法が好ましい。
【0065】
シランカップリング剤はエマルションを調製する際にエステル化合物と予め混合しても良いが、シランカップリング剤は加水分解し易いのでサイズ剤液中に別々に加えて調製することが好ましい。
【0066】
シランカップリング剤は酸性水に溶解するものが多いため、エステル化合物の乳化の際には酸性域でも安定なものを選択することが好ましい。酸性水の調製には蟻酸、酢酸、乳酸等を用いることができる。
【0067】
また、炭素纖維の取扱性や、耐擦過性、耐毛羽性、含浸性を向上させるため、分散剤、界面活性剤、炭素纖維ストランドのしなやかさ調整用の樹脂等の補助成分を添加しても良い。
【0068】
これらの補助成分は、予めサイズ剤となる化合物の組成物に添加しても良く、又は別途付与しても良い。具体的には、液浸法によるサイズ剤の付与の場合は、サイズ剤を含むサイジング浴に上記補助成分を添加しても良く、又は別の浴で付与しても良い。
【0069】
なお、補助成分の添加量はサイズ剤の付着量の70質量%以下が好ましい。
【0070】
サイズ剤付与処理後、炭素纖維ストランドは通常の乾燥工程により、サイズ剤付与時の分散媒であった水の乾燥あるいは溶媒である溶剤の乾燥を行う。乾燥工程は乾燥炉を通過させる方法、加熱したローラーに接触させる方法等、既知の方法が採択し得る。乾燥温度は特に規定されるものではないが、汎用的な水系エマルションの場合は通常80〜200℃に設定される。
【0071】
また、本発明においては、乾燥工程の後ならば、200℃を超える熱処理工程を経ることも可能である。但し、アミノシランをカップリング剤として用いる場合は、炭素纖維ストランドのしなやかさが失われるので、たとえ乾燥工程の後であっても200℃を超える熱処理工程を経ることは好ましくない。
【0072】
炭素纖維ストランドのストランド引張り強さは、4000MPa以上が好ましく、4500MPa以上がより好ましい。
【0073】
本発明においては、上記炭素纖維ストランド、表面酸素濃度、サイズ剤等を適宜調節することにより、本発明の炭素纖維ストランドを製造できる。
【0074】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
【0075】
【実施例】
以下の実施例及び比較例に記載した条件により炭素纖維ストランドを作製した。各炭素纖維ストランドの諸物性値を、以下の方法により測定した。
【0076】
<コンポジット成型及び層間剪断強さ(ILSS)>
ビニルエステル樹脂(昭和高分子株式会社製リポキシR−806)100質量部、メチルエチルケトンパーオキサイド(日本油脂株式会社製パーメック−N)1質量部、6質量%ナフテン酸コバルト溶液(和光純薬工業株式会社製)0.5質量部に調製されたマトリックス用樹脂を、樹脂浴(長さ:400mm、幅120mm、高さ:100mm)に適量投入した。
【0077】
30cm長に切断した炭素纖維ストランドを適度な本数、平行に束ね(以下サンプル束という)、両端を市販の炭素纖維ストランド(東邦テナックス株式会社製ベスファイトHTA−12K E30)にて縛り、固定した。
【0078】
この内、片端の固定に使用している市販の炭素纖維ストランド(以下誘導糸とする)を予め絞りガイド及び筒状の金型(サンプル束が通過する内断面:10mm×3mm、長さ30cm)に通過させておいた。
【0079】
サンプル束を樹脂浴に樹脂浴長さ方向と平行に浸漬させ、30秒浸漬後、サンプル束を15cm/分の速度で引っ張って金型内に収めた。その後、誘導糸を切断除去した。
【0080】
尚、サンプル束を形成する炭素纖維ストランドの本数は炭素纖維フィラメントの断面積及び炭素纖維ストランドのフィラメント数により決定した(炭素纖維体積含有率Vfが60%になるように調製した)。
【0081】
上記のサンプル束が充填された金型を12時間室温で放置した後、120℃のオーブン中に2時間加熱することで、マトリックス樹脂を硬化させた。脱型した成型物(コンポジット)からJIS K 7078に準拠した試験片を作製し、同規定に準拠してILSSの測定を行った。クロスヘッドの移動スピードは1.3mm/分とした。
【0082】
<濡れ性>
上記コンポジットの内、ILSS測定に用いない部分を曲げ試験と同様にして破壊し、破断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その結果を
A:纖維表面の大半に樹脂が付着し、纖維断面と樹脂断面の段差が小さい(纖維と樹脂が良く馴染み、纖維破断面と樹脂破断面とがほぼ同一面内にあり、破断面がスパッと切れている。)
B:纖維表面の大半に樹脂が付着するが、纖維断面と樹脂断面の段差が大きい(纖維と樹脂が良く馴染んでいるが、破断箇所で纖維の素抜けが見られ、纖維破断面と樹脂破断面との間に段差がある。)
C:纖維表面への樹脂の付着が殆ど見られず、纖維断面と樹脂断面の段差が非常に大きい(纖維と樹脂が馴染まず、纖維と樹脂の間に空間が存在し、破断箇所で纖維の素抜けが見られる。)
のようにA、B、Cの三段階で表現した。
【0083】
実施例1〜3
未サイジングの炭素纖維ストランド(東邦テナックス株式会社製ベスファイト、12000フィラメント、引張り強さ3900MPa、引張り弾性率235GPa)をサイジング浴に連続的に浸漬させた。
【0084】
サイジング浴は、アセトン50質量%、エタノール50質量%を混合したアセトン/メタノール系溶剤に、ビスフェノールAジグリシジルエーテルメタクリル酸2モル付加物(共栄社化学株式会社製エポキシエステル3000M)とシランカップリング剤の質量比が9:1のサイズ剤を溶解させた溶液であった。
【0085】
その後、雰囲気温度120℃の熱風乾燥機中で溶剤を除去し、表1に挙げる炭素纖維ストランドを得た。これらの炭素纖維ストランドを用いて、上記に挙げた各種評価試験を行った。その結果を表1にまとめて示した。
【0086】
表1に示すように、実施例1乃至3は何れも満足な結果が得られた。
【0087】
比較例1
サイズ剤にシランカップリング剤を使用しなかった以外は、実施例1乃至3と同様に炭素纖維ストランドを作製し、各種評価試験を行った。
【0088】
その結果、表1に示すようにILSSは満足な結果が得られたが、濡れ性が若干劣った。
【0089】
【表1】
Figure 0003971664
【0090】
尚、表1において用いられている各成分の詳細は以下
A−171:日本ユニカー株式会社製ビニルトリメトキシシラン
A−174:日本ユニカー株式会社製3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
A−1100:日本ユニカー株式会社製3−アミノプロピルトリエトキシシランの通りである。
【0091】
実施例4
ビスフェノールAプロピレンオキシド2モル付加物ジグリシジルエーテルメタクリル酸2モル付加物(共栄社化学株式会社製エポキシエステル3002M)100質量部をポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル50質量部で乳化、イオン交換水で希釈した濃度18g/lの水系エマルションをサイジング浴に入れ、続いて酢酸(和光純薬工業株式会社製一級試薬)でpHを5に調節した後、ビニルトリメトキシシラン(日本ユニカー株式会社製A−171)を濃度2g/lとなるように前記サイジング浴に入れることで得た液をサイジング用液として用いた以外は、実施例1〜3と同様にして炭素纖維ストランドを作製した。得られた炭素纖維ストランドのサイズ剤付着量は0.8質量%であった。また、この炭素纖維ストランドを用いてコンポジットを成型したところ、濡れ性はA、ILSSは83MPaと満足な結果が得られた。
【0092】
比較例2
ビニルトリメトキシシランを用いなかった以外は実施例4と同様にしてサイズ剤付着量が0.7質量%の炭素纖維ストランドを得た。この炭素纖維ストランドを用いてコンポジットを成型したところ、濡れ性はB、ILSSは80MPaであり、実施例1乃至4の何れと比較しても性能が劣った。
【0093】
【発明の効果】
本発明の炭素纖維ストランドは、このストランドを用いて作製した炭素纖維強化樹脂複合材料における不飽和マトリックス樹脂との接着性に優れるため、濡れ性、ILSS等の物性が優れた炭素纖維強化樹脂複合材料を得ることが可能である。

Claims (5)

  1. 下記一般式(1)で示される官能基を化合物の末端に含有するエステル化合物、及び、シランカップリング剤を含有するサイズ剤が付着されてなる炭素纖維ストランド。
    Figure 0003971664
    式中のR1は水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を表す。
  2. 一般式(1)で示される官能基がアクリロイル基、メタクリロイル基、又はα−(ヒドロキシメチル)アクリロイル基である請求項1記載の炭素纖維ストランド。
  3. シランカップリング剤が下記一般式(2)で示される官能基を化合物の末端に含有する化合物である請求項1又は2記載の炭素纖維ストランド。
    Figure 0003971664
    式中のR2は水素、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、又はアリール基、A1は単結合、−CH2−、又は−COO−を表す。
  4. 一般式(2)で示される官能基がビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、又はα−(ヒドロキシメチル)アクリロイル基である請求項3記載の炭素纖維ストランド。
  5. シランカップリング剤が、下記一般式(3)で示される化合物である請求項4記載の炭素纖維ストランド。
    Figure 0003971664
    式中のR3は水素、又はメチル基、R4はメチル基、又はエチル基、nは0〜6の整数を表す。
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