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JP3971911B2 - 固体リチウム二次電池およびその製造方法 - Google Patents
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JP3971911B2 - 固体リチウム二次電池およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高容量で、薄型化が可能な固体リチウム二次電池およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
全固体電池の製法としては、既に半導体で培われた薄膜プロセスが導入されたことによって、リチウムポリマー電池よりも薄型化が可能な厚さ25μm程度の全固体電池が紹介されている(米国特許第5338625号)。なかでも、薄膜プロセスによってそれぞれの電池構成要素が薄型化された全固体電池は、連続的に積層させることによって、従来の電池の数倍のエネルギー密度が期待できることから注目されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
電池構成要素が薄膜化されても、充放電時においては、正・負極活物質がリチウムを高密度、かつ高速にインターカレートできること、および固体電解質がリチウムイオンに対して高いイオン伝導性を示すことが基本的に必要であり、このことは従来と変わりがない。電極活物質に使用される材料のうち比較的利用割合が高いコバルト酸リチウムLiCoO2は、インターカレーションに結晶構造を必要とする。LiCoO2は、菱面体晶系の結晶構造をとる。結晶内のLi、Co、Oの各原子は、c軸に対してほぼ垂直な層を構成しており、Li層はO層に挟まれた部分に位置している。Liは、Li層内のみを移動することができ、通常はO層を飛び越えて移動することができないという特徴がある。
【0004】
全固体リチウム二次電池が動作するためは、正極活物質中のリチウムイオンが固体電解質との間で移動可能でなければならない。
電池構成要素を、スパッタ、熱蒸着、イオンプレーティング、電子ビーム蒸着、レーザーアブレーション、CVDを始めとする一般的な気相製膜プロセスで作製すると、正極活物質層、固体電解質層、および負極活物質層が平面的な積層構造を構成することになる。LiCoO2を薄膜化した場合、c軸配向する傾向が強いため、前述のLi層の大半は固体電解質に接触しないことから、正極活物質−固体電解質間におけるLiイオンの授受がスムーズに行われない。ここで、c軸配向とは、LiCoO2の場合、(003)面配向に相当する。その結果、全固体リチウム二次電池の出力電流が低く抑えられることとなる。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、コバルト酸リチウム結晶のc軸を基板の法線に対して傾斜させるのである。すなわち、本発明の固体リチウム二次電池は、導電性基板上にLiCoO2からなる膜状の正極活物質層、膜状の固体電解質層および膜状の負極活物質層が順次形成された固体リチウム二次電池において、前記正極活物質層のLiCoO2のc軸が前記基板の法線に対して少なくとも60°傾いていることを特徴とする。
【0006】
本発明は、導電性基板上にLiCoO2からなる膜状の正極活物質層、膜状の固体電解質層および膜状の負極活物質層をこの順序で積層形成する工程を有する固体リチウム二次電池の製造方法であって、前記正極活物質層を形成する工程が、リチウムソース材料およびコバルトソース材料を前記基板上に供給してLiCoO2を気相製膜法によって形成する工程であり、かつ正極活物質層の膜形成初期段階においては、前記両ソース材料を前記基板の法線となす角60〜90°の範囲の入射角にて前記基板へ供給することを特徴とする固体リチウム二次電池の製造方法を提供する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明は、コバルト酸リチウムは、これを気相製膜法によって形成する際、そのソース材料のガスが被製膜基板に入射する方向とは逆の方向にc軸を向けた状態で結晶成長する性質があることを見出したことに基づいている。これを応用して、膜形成材料の原子ないし分子からなるガスの飛散方向を被製膜基板面に対して平行あるいはそれに近い角度とすることで、膜自体がc軸配向しないようにすることが可能になる。
本発明は、膜形成の初期段階においては、ソース材料を基板の法線となす角60〜90°の範囲の入射角にて前記基板へ供給することにより、コバルト酸リチウム層を形成する。本発明の方法によれば、コバルト酸リチウムの結晶成長方向であるc軸が被製膜基板面に対して傾くため、正極活物質層表面にLiイオンが授受可能な部分が形成される。すなわち、正極活物質層の電解質層と接する面にLiCoO2の(101)面および(104)面が露出することとなる。これによってLiイオンの授受が容易となり、出力電流の増大した固体リチウム二次電池を提供することができる。
【0008】
本発明は、上記のように、正極活物質層の膜形成初期段階においては、両ソース材料を被製膜基板の法線となす角60〜90°の範囲の入射角にて前記基板へ供給することを特徴とする。ここに、膜形成の初期段階とは、正極活物質層が少なくとも0.2μmの厚みに達するまでの段階である。それ以後は、ソース材料の前記基板への入射角は60°未満に変更しても良い。
正極活物質層の膜形成初期段階における前記ソース材料の入射角θは、70〜90°が好ましい。入射角θが70°未満の場合には、まだ若干の(003)面配向の傾向が残っていて、放電容量が小さくなる傾向がある。70〜90°の範囲において125mA・h/g以上の放電容量を得ることが可能となる。製膜速度は、ソース材料の入射角θの増加とともに減少する。特に、80°を越えると、膜がポーラスになる傾向が見られるため70〜80°の範囲がより好ましい。
【0009】
ソース材料の被製膜基板への入射角は、ソース材料と被製膜基板との相対位置や両者間のシャッタの位置などにより制御できるほか、被製膜基板に向けて供給されるソース材料をキャリアガスにより被製膜基板の表面とほぼ平行に流れるように制御することができる。
ここに用いるキャリアガスとしては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、窒素、および酸素からなる群より選択される。
【0010】
LiCoO2のソース材料としては、LiCoO2そのものを用いることも可能ではある。しかし、LiとCoの蒸気圧の差に起因すると思われる原子比Li/Coが時間とともに変動するので、LiとCoのそれぞれを別々のソース材料から供給することによって安定した膜形成を図る。この場合、Liソース材料には、金属リチウム、Li2O、LiO、LiOHなど、Coソース材料には金属コバルト、CoO、Co34、Co23などがそれぞれ使用できる。これらの材料は、目標とするLiCoO2正極活物質層を構成する元素で構成されている。これらについては、電子ビーム照射によって蒸発し、すべてのLiソース材料とCoソース材料の組み合わせにおいてLiCoO2層を形成することが確認された。また、LiPO4、Li2CO3などのリチウム塩をLiソース材料に用いてもLiCoO2層を形成することができる。
以下に、本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
《実施の形態1》
図1は本実施の形態の製膜装置の概略構成を示す。
真空容器8の中に挿入された被製膜基板1は、基板ホルダー2によって支持されている。その下方のやや前方には、ソース材料3を入れたるつぼ4がセットされている。るつぼ4内のソース材料3は、電子銃5から発射される電子ビームを受けて昇温、蒸発し、被製膜基板1の表面に正極活物質層を形成する。シャッター6は、実験上必要な治具であって、これが開いた時に製膜される。ガス導入管7、排気管9、メインバルブ10はいずれも装置の基本となる器具であり、これらを調整することによって製膜条件を調整する。
【0012】
図2はソース材料および被製膜基板の位置関係を示す。リチウムソース材料およびコバルトソース材料をそれぞれ入れたるつぼ3aおよび3bの二源ソースが用いられる。両るつぼの中心を結ぶ線の中点を0点とし、そこからx方向およびz方向にずれた位置に被製膜基板1がセットされる。両るつぼ3aおよび3bから蒸発するソース材料は、被製膜基板1にその法線とのなす角θの入射角をもって供給される。基板ホルダー2は、その位置を調整することにより、ソース材料の基板1への入射角θを変えることができる。この例では、ガス導入管7から導入されるガスの流れによって前記のソース材料の入射角は影響されない。
【0013】
《実施の形態2》
図3は本実施の形態の製膜装置の概略構成を示す。
真空容器28の中に挿入された被製膜基板21は、基板ホルダー22によって水平に支持されている。その下方のやや前方には、ソース材料23を入れたるつぼ24がセットされている。ソース材料23は、電子銃25から照射される電子ビームを受けて昇温、蒸発し、被製膜基板21の表面に向かう。このとき、ガス導入管27からのガスは、排気管29に向けて被製膜基板21に対して平行に流れるように設計されている。シャッター26は、これが開いた時にソース材料が被製膜基板側に供給される。被製膜基板に向かうソース材料は、ガス導入管27からのガスにより進路を被製膜基板に沿うように変えられるので、ソース材料の被製膜基板への入射角は90°に近くなる。ガス導入管27、排気管29、およびメインバルブ30などを調整することによって、製膜条件を調整することができる。図では1つのソース材料のみを示しているが、実施の形態1と同様に、二源ソースを用いる。
【0014】
《実施の形態3》
図4は本実施の形態の製膜装置の概略構成を示す。
この製膜装置は、実施の形態2の装置を一部変更したものである。基板ホルダー22bは、その位置を調整することにより、ソース材料の基板21への見かけの入射角θ’を変えることができる。また、ガス導入管27bおよび排出管29bの開口部を基板21上の対向する位置におき、導入管27bからのガスを基板に平行に流し、入射角θ’で基板に向かうソース材料の進路を若干変更させる。
【0015】
《実施の形態4》
図5は本実施の形態の製膜装置の概略構成を示す。
被製膜基板31は、真空容器40の中にある巻きだしロール32に巻きつけてあり、製膜中に製膜ドラム33を経由して巻き取りロール34に巻き取られる。被製膜基板31は、集電体としての導電性を持つものが好ましいが、高抵抗のシートに導電性皮膜を形成したものも使用可能である。アルミニウム、銅、ステンレス鋼など、既に金属箔として量産されているものを使用すると低コスト化が可能である。
製膜ドラム33の下方には、ソース材料35を入れたるつぼ36が設けてあり、ソース材料は電子銃37から発射される電子ビームを受けて昇温、蒸発し、被製膜基板31の表面に正極活物質層を形成する。遮蔽板38はソース材料35から被製膜基板31への材料の入射角度を制限するためのものであり、そのアパーチャ39の位置と間隔を調節することによって被製膜基板への入射角を変えることができる。真空容器40には、バルブ42を有する管41が設けてある。図では1つのソース材料のみを示しているが、実施の形態1と同様に、二源ソースを用いる。
【0016】
以上の実施の形態に示すようにして形成される正極活物質層は、図6に示すような断面構造を持っている。本発明は、LiCoO2はこれを気相製膜するためのソースが飛来する方向に結晶成長する性質があることを発見したことに基づいている。すなわち、被製膜基板11にその法線12とのなす角θの入射角にてソース材料を供給することによって、LiCoO2の結晶のc軸が図の矢印15に示す方向に成長し、(003)面がその方向に積層された正極活物質層14が形成される。一方、Liイオンを授受する(101)面および(104)面は、図の矢印16に示す方向に配向する。これによって、Liイオンを授受する(101)面および(104)面が正極の電解質側の表面に露出することとなる。
【0017】
図7は、最も基本的なリチウム二次電池の断面構造図である。被製膜基板として用いられた正極集電体51の上に正極活物質層52、固体電解質層53、負極活物質層54、負極集電体55をこの順序で積層したものである。正極集電体51および正極活物質層52が負極活物質層54および負極集電体55に接触しないように、固体電解質層53を形成することが必要である。これらを製膜する際のパターニング方法としては、製膜時に金属マスクを用いることが望ましい。
【0018】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。
《実施例1》
本実施例では、図1および図2に示すような構成の製膜装置を用いた。製膜中の被製膜基板へのソース材料の入射角θを一定にした条件下で、入射角θの値と得られた正極活物質層の配向性の関係を調べるために、θの値を40°から90°まで5°刻みで変え、得られた正極活物質層の結晶軸の向きをX線回折分析で調べた。
被製膜基板1には大きさ100×100mm、厚さ20μmの銅箔、ソース材料には金属リチウムと金属コバルトの二源ソースを用いた。ソースサイズは径10mmの円形とし、2つのソースの中心間距離は30mmとした。被製膜基板1は、その下側端面がソースから150mm上方となる位置(z=150mm)で、x軸方向に10mm離れた位置に設置した。大きさ10×10mmの穴が空いたステンレス鋼箔を被製膜基板1の上にかぶせた状態で製膜を行うことにより、被製膜基板1上に大きさ10×10mmのコバルト酸リチウム膜を形成した。
【0019】
製膜条件は、Arと酸素の流量比率を1:1、雰囲気圧力5×10-2Pa、電子ビームの全照射強度は10kV、250mA、リチウムとコバルトへの電子ビーム照射量は、照射時間100msecを0.1:0.9の割合に時間分割することによって調節した。製膜時間は、シャッターの開放時間で決定した。ソース材料の基板への入射角θと製膜時間を表1に示す。この製膜プロセスを実施して、約1μmの膜厚のコバルト酸リチウム膜を形成した。
得られた膜のX線回折パターンを分析し、(003)面による回折強度に対する(101)面および(104)面による回折強度の比率[101]/[003]および[104]/[003]をそれぞれ算出し、結果を表1に併記した。(104)面による回折強度はθ=60°付近から増大する一方、(003)面による回折強度は減少する傾向があり、結晶のc軸が徐々に基板の法線方向からずれていく傾向があることが分かる。
【0020】
得られた膜の上にLi3PO4をターゲットとするスパッタ法によって固体電解質Li3PO3Nの膜を厚さ1μmで形成した。これの製膜雰囲気は窒素、圧力は5Pa、入力パワー200W、製膜時間は35時間である。製膜に際して大きさ20×20mmの穴が空いたステンレス鋼箔を被製膜基板1の上にかぶせた状態で製膜を行うことにより、被製膜基板1上の大きさ10×10mmのコバルト酸リチウム膜の上に大きさ20×20mmのLi3PO3N膜を得た。
さらに、前記の固体電解質膜上に金属リチウム膜を電子ビーム蒸着によって厚さ0.5μm形成した。形成時の雰囲気はAr、圧力は5×10-2Pa、電子ビームの照射強度が10kV、40mA、照射時間は30秒である。製膜に際して大きさ14×14mmの穴が空いたステンレス鋼箔を被製膜基板1の上にかぶせた状態で製膜を行うことにより、被製膜基板1上の大きさ20×20mmのLi3PO3N膜上に大きさ14×14mmの金属リチウム膜を得た。
【0021】
この金属リチウム膜上に負極集電体としてのCuを電池ビーム蒸着によって厚さ10μm形成した。形成時の雰囲気はAr、圧力は5×10-2Pa、電子ビームの照射強度は10kV、150mA、照射時間は5分である。製膜に際して大きさ18×18mmの穴が空いたステンレス鋼箔を被製膜基板1の上にかぶせた状態で製膜を行うことにより、大きさ14×14mmの金属リチウムの上に大きさ18×18mmのCu膜を得た。
以上の工程を経て、図7に示す構造のリチウム二次電池を得た。
得られた全固体リチウム二次電池の性能を検証するため、20Cのレートで充放電し、5サイクル目の放電容量を測定した。
【0022】
【表1】
Figure 0003971911
【0023】
《実施例2》
本実施例では、被製膜基板に対するソース材料の入射角度θを製膜中に変化させて、結晶の配向に与える影響を調べた。これにより、製膜の初期段階の入射角度が結晶の配向に与える効果を示す。
図1および図2に示す製膜装置を用いた。被製膜基板には厚さ20μmの銅箔、ソース材料にはリチウムとコバルトの二源ソースを用いた。タブレット成型した2種類のソース材料に対して、それぞれ適当な強度の電子ビームを照射してそれぞれを加熱して蒸発させた。
大きさ10×10mmの穴が空いたステンレス鋼箔を被製膜基板の上にかぶせた状態で製膜プロセスを実施することによって、大きさ10×10mmのコバルト酸リチウムを形成した。製膜条件は、Arと酸素の流量比率を1:1、雰囲気圧力5×10-2Pa、電子ビームの全照射強度が10kV、250mA、リチウムとコバルトへの電子照射量は、照射時間100msecを0.1:0.9の割合に時間分割することによって調節した。製膜時間は、シャッターの開放時間で決定した。製膜の初期段階のθと製膜時間を表2に示す。
【0024】
まず、入射角θ0で時間t0だけ製膜して約0.5μm厚の膜を形成した後、さらに入射角を0°にして時間t1だけ製膜することによって、約1μmの膜厚のコバルト酸リチウム膜を形成した。得られた膜のX線回折パターンを分析し、(003)による回折強度に対する(101)面および(104)面による回折強度の比率をそれぞれ算出し、結果を表2に併記した。(104)面による回折強度はθ0=60°付近から増大し、(003)面による回折強度は減少する傾向があり、実施例1と同様に結晶のc軸が徐々に基板の法線方向からずれていく傾向があることが分かる。
実施例1と同様にして、正極活物質層の上にLi3PO3N膜、金属リチウム膜、およびCu膜を形成して、図7に示す構造のリチウム二次電池を得た。
得られた全固体リチウム二次電池の性能を検証するため、20Cのレートで充放電し、5サイクル目の放電容量を測定した。
【0025】
【表2】
Figure 0003971911
【0026】
《実施例3》
本実施例では、図3に示す製膜装置を用い、製膜中に被製膜基板面に平行に流すガスの流量および種類を変えて、得られるコバルト酸リチウムの結晶軸の配向性を調べた。
図3のように、るつぼ24から供給されるソース材料の被製膜基板21への入射角θがほぼ0°であるように設計された装置において、被製膜基板21付近にガス導入管27と排気管29を配置し、被製膜基板21に平行にガス流を発生させることが結晶軸の配向性に与える効果を示す。
【0027】
被製膜基板21に厚さ20μmの銅箔、ソース材料23にリチウムとコバルトの二源ソースをそれぞれ用いた。タブレット成型した2種類のソース材料に対して、それぞれ適当な強度の電子ビームを照射してそれぞれを加熱して蒸発させた。大きさ10×10mmの穴が空いたステンレス鋼箔を被製膜基板の上にかぶせた状態で製膜プロセスを実施することによって、大きさ10×10mmのコバルト酸リチウムを形成した。製膜条件は、Arまたは窒素と酸素の流量比率1:1、雰囲気圧力5×10-2Pa、電子ビームの全照射強度が10kV、250mA、リチウムとコバルトへの電子照射量は照射時間100msecを0.1:0.9の割合に時間分割することによって調節した。製膜時間は、シャッターの開放時間で決定した。ガス導入管27からのガス流量を表3に示す。容器内の圧力は、メインバルブ30の開度によって調整した。本実施例では、表面が平滑な被製膜基板の他、実施例5と同様にして表面を粗面化した被製膜基板についても評価した。
【0028】
得られた膜のX線回折パターンを分析し、(003)面による回折強度に対する(101)面および(104)面による回折強度の比率をそれぞれ算出し、結果を表3に併記した。(104)面による回折強度は総ガス流量が10sccm付近から増大し、(003)面による回折強度は減少する傾向がある。そして、総ガス流量の増大、すなわちソース材料の入射角の増大に伴い、実施例1と同様に、結晶のc軸が徐々に基板の法線方向からずれていくことが分かる。
実施例1と同様にして、正極活物質層の上にLi3PO3N膜、金属リチウム膜、およびCu膜を形成して、図7に示す構造のリチウム二次電池を得た。
得られた全固体リチウム二次電池の性能を検証するため、20Cのレートで充放電し、5サイクル目の放電容量を測定した。
【0029】
【表3】
Figure 0003971911
【0030】
《実施例4》
本実施例では、図4に示す製膜装置を用い、製膜中に被製膜基板面に平行にガスを流した状態で、るつぼから基板に向けて供給するソース材料の角度θ’を変えて得られるコバルト酸リチウムの結晶軸の配向性を調べた。
製膜条件は、Arと酸素の流量比率を1:1とし、総流量60sccmで被製膜基板と平行に流したこと、および角度θ’を0°から90°まで15°間隔で変えたこと以外は、実施例1と同じである。得られた膜のX線回折パターンを分析し、(003)面による回折強度に対する(101)面および(104)面による回折強度の比率をそれぞれ算出し、結果を表4に併記した。角度θ’の増大に伴い(104)面および(101)面による回折強度が増大し、(003)面による回折強度は減少する傾向があり、加えて、被製膜基板面に平行なガス流が付加されたことによって(003)面の配向がしにくくなっていることが実施例1との比較で分かる。上記の条件においては、ソース材料の被製膜基板への実際の入射角はθ’より若干小さくなる。
【0031】
実施例1と同様にして、正極活物質層の上にLi3PO3N膜、金属リチウム膜、およびCu膜を形成して、図7に示す構造のリチウム二次電池を得た。
得られた全固体リチウム二次電池の性能を検証するため、20Cのレートで充放電し、5サイクル目の放電容量を測定した。
本実施例により得られた電池の放電容量は、0°≦θ’≦45°の範囲で、(104)面および(101)面による回折強度の増加、(003)面による回折強度の減少に伴って、増大する傾向がみられ、放電容量がθ’と相関関係を有していることが分かる。また、実施例1においては、θ<60°では放電容量が90mA・h/g以下であったが、本実施例では被製膜基板面に平行なガス流があることによってすべてのθ’で放電容量が90mA・h/gを越えている。
【0032】
【表4】
Figure 0003971911
【0033】
《実施例5》
本実施例では、被製膜基板表面に凹凸をつけて粗面にした場合の特性を評価した。すなわち、被製膜基板の表面に凹凸を設けた場合の入射角θの値と配向性の関係を調べるために、θの値を0°から90°まで10°刻みで変えた場合の正極活物質層の結晶軸の向きをX線回折分析で調べた。
被製膜基板に凹凸を設けた以外は、実施例1と全く同一の条件で正極活物質層を製膜した。被製膜基板は、粒径5μmの炭酸カルシウム砥粒を用いてサンドブラスト処理した。最大15μm程度の凹凸が発生している。サンドブラスト処理の後、ジエチルエーテル中で20分間超音波洗浄することで砥粒の残留を抑制した。
【0034】
上記のように表面に凹凸を設けた被製膜基板に製膜した厚さ1μmのコバルト酸リチウム膜のX線回折パターンを分析し、(003)による回折強度に対する(101)面および(104)面による回折強度の比率をそれぞれ算出し、結果を表5に併記した。入射角θの増大に伴い(104)面による回折強度はθ=25°付近から増大し、逆に(003)面による回折強度は減少する傾向があり、結晶のc軸が徐々に基板の法線方向からずれていく傾向がある。そして、その傾向は実施例1と比較して低入射角側にシフトしていることから、基板表面に凹凸を加えたことによって、基板の法線方向への(003)面の配向が抑制され、(104)面が配向しやすくなったと考えられる。
実施例1と同様にして、正極活物質層の上にLi3PO3N膜、金属リチウム膜、およびCu膜を形成して、図7に示す構造のリチウム二次電池を得た。
得られた全固体リチウム二次電池の性能を検証するため、20Cのレートで充放電し、5サイクル目の放電容量を測定した。
【0035】
【表5】
Figure 0003971911
【0036】
【発明の効果】
以上のように本発明は、被製膜基板に飛来するソース材料の入射角度を制御することによって、基板上に形成されるコバルト酸リチウムからなる正極活物質膜の配向性を制御することが可能となり、放電性能の向上した固体リチウム二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における正極活物質の膜形成装置の概略構成を示す縦断面図である。
【図2】同装置のソース材料および被製膜基板の位置関係を示す略図である。
【図3】本発明の他の実施例における正極活物質の膜形成装置の概略構成を示す縦断面図である。
【図4】本発明のさらに他の実施例における正極活物質の膜形成装置の概略構成を示す縦断面図である。
【図5】本発明のさらに他の実施例における正極活物質の膜形成装置の概略構成を示す縦断面図である。
【図6】正極活物質形成時の結晶成長の様子を示す概念図である。
【図7】リチウム二次電池の縦断面図である。
【符号の説明】
1 被製膜基板
2 基板ホルダー
3 ソース材料
4 るつぼ
5 電子銃
6 シャッター
7 ガス導入管
8 真空容器
9 排気管
10 メインバルブ
51 正極集電体
52 正極活物質層
53 固体電解質層
54 負極活物質層
55 負極集電体

Claims (9)

  1. 導電性基板上にLiCoO2からなる膜状の正極活物質層、膜状の固体電解質層および膜状の負極活物質層が順次形成された固体リチウム二次電池であって、前記正極活物質LiCoO2のc軸が前記基板の法線に対して少なくとも60°傾いていることを特徴とする固体リチウム二次電池。
  2. 導電性基板上にLiCoO2からなる膜状の正極活物質層、膜状の固体電解質層および膜状の負極活物質層をこの順序で積層形成する工程を有する固体リチウム二次電池の製造方法であって、前記正極活物質層を形成する工程が、リチウムソース材料およびコバルトソース材料を前記基板上に供給してLiCoO2を気相製膜法によって形成する工程であり、かつ正極活物質層の膜形成初期段階においては、前記両ソース材料を前記基板の法線となす角60〜90°の範囲の入射角にて前記基板へ供給することを特徴とする固体リチウム二次電池の製造方法。
  3. 前記膜形成の初期段階が、正極活物質層が少なくとも0.2μmの厚みに達するまでの段階である請求項1記載の固体リチウム二次電池の製造方法。
  4. 前記基板に向けて供給されるソース材料をキャリアガスにより前記基板の表面とほぼ平行に流れるように制御することを特徴とする請求項2記載の固体リチウム二次電池の製造方法。
  5. 前記キャリアガスが、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、窒素、および酸素からなる群より選択される請求項記載の固体リチウム二次電池の製造方法。
  6. 前記基板がその表面に凹凸を有する請求項2または3記載の固体リチウム二次電池の製造方法。
  7. 前記Liソース材料が金属リチウム、Li2O、LiO、およびLiOHからなる群より選択され、コバルトソース材料が金属コバルト、CoO、Co34、およびCo23からなる群より選択される請求項2〜6のいずれかに記載の固体リチウム二次電池の製造方法。
  8. 前記正極活物質層と前記固体電解質層との間におけるLiイオンの授受が、前記固体電解質層の表面で行われる、請求項1記載の固体リチウム二次電池。
  9. 前記正極活物質層と前記固体電解質層とが接する面に、LiCoO 2 の(101)面および(104)面が露出している、請求項1記載の固体リチウム二次電池。
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