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JP3971920B2 - 流れ特性測定用素子及びその製造方法 - Google Patents
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JP3971920B2 - 流れ特性測定用素子及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、流体(測定雰囲気)の流速、流量(質量流量)、温度及び流れ方向等を測定することができる流れ特性測定用素子及びその製造方法に関する。更に詳しくは、ヒータパターンのリード部抵抗が低減されて、測定精度が高く、消費電力が低減された流れ特性測定用素子及びその製造方法に関する。
本発明の流れ特性測定用素子は、あらゆる流体の上記のような特性の測定に利用することができる。中でも、気体の流速及び/又は質量流量の測定に好適であり、例えば、内燃機関の吸入空気量の測定等に利用することができる。
【0002】
【従来の技術】
従来より、マイクロマシニング技術を用い、基板上に形成された絶縁膜の一部をこの基板と熱的に隔離し(この熱的に隔離された部分を以下、単に「絶縁膜隔離部」という)、この絶縁膜隔離部上にヒータパターンを配した流れ特性測定用素子(1)が知られている。例えば、特開昭58−72059号公報、特開昭60−142268号公報、特開平6−50783号公報及び特開平11−201792号公報等に開示されている。このような流れ特性測定用素子(以下、単に「素子」ともいう)は、発熱させた発熱体が、測定雰囲気の流動により冷却される時に、温度を一定に保とうとするのに要する電圧及び電力等から流れ特性(流速等)を算出するものである。
【0003】
上記(1)のような素子では、発熱体の中でも実際に昇温する部位であるヒータパターンの昇温部と基板とが熱的に隔離されていることにより、昇温部の熱が基板に奪われ難く、所定の温度まで昇温させるために必要となる電力が少なくてすむ(従来の薄膜式流速センサ又は熱線式流速センサに比べて消費電力は1〜2桁程小さい)。また、昇温部の熱が基板へ奪われ難いため、基板自体の温度上昇も抑えられ、基板の温度は測定雰囲気の温度と同じ温度であると見なすことができる。このため、昇温部の温度を、測定雰囲気の温度とみなした基板の温度に対して一定値に保つことが可能となり、正確な流れ特性の測定が可能となる。
【0004】
また、上記の内、特開平6−50783号公報に開示される素子は、測定雰囲気の流路内には実質測定に関わる部位のみを露出させ、他部は流路外に配置させた素子(2)である。このため、従来のように素子全体が測定雰囲気に曝されているものと異なり、飛来する異物によるボンディングワイヤの断線や、導電性の異物による回路(例えば、ボンディングパッド間等)の短絡等を防止できるというものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、(1)のような素子では、実際には、ヒータパターンの昇温部の熱は絶縁膜を通して基板へ僅かに伝導されており、また、ヒータパターンのうち昇温部へ電圧を印加するための部分であるリード部も発熱する。このため、基板の温度は測定雰囲気の温度よりも僅かに高くなっている。従って、基板の温度を測定雰囲気の温度とみなして測定を行う場合、昇温部の温度を測定雰囲気の温度に対して一定値に保つことは厳密には困難である。
【0006】
また、(2)のような素子は、必然的に素子が長くなる。これに伴って、リード部の長さも長くなり、リード部の抵抗値が増大し、リード部自体の発熱量が無視できなくなる場合がある。また、リード部の抵抗値が増えることで消費電力も大きくなり好ましくない。このため、これまではリード部のパターンを素子上で可能な限り太く形成することで、この問題を解決しようとしていた。しかし、素子の大きさにより、リード部のパターンの太さは制限され、例えば、2本以上のヒータを備える素子においては、リード部の配線幅をほとんど拡張することができない場合も生じる。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、ヒータパターンのリード部抵抗が低減されることで、ヒータパターンのリード部抵抗に起因する測定誤差が従来に比べて少なく、より高い精度で測定を行うことができ、更には、消費電力が低減された流れ特性測定用素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の流れ特性測定用素子は、空洞、切欠き及び凹部のうちの少なくともいずれかからなる空間部を有する基板と、少なくとも該空間部を覆って該基板上に形成された絶縁膜と、該絶縁膜上に形成されたヒータパターンとを備え、且つ、該ヒータパターンは、下方に該空間部が位置する昇温部と、外部と該昇温部との電気的接続を行うためのリード部とを備える流れ特性測定用素子において、
(1)ヒータパターン非通電時であって、外部と上記リード部とを導通するボンディングワイヤが該リード部上に接続されるボンディングワイヤ接続位置よりも上記昇温部側に位置する該リード部の抵抗値の、該ヒータパターン全体の抵抗値に対する割合をαとし、(2)測定雰囲気が流動しない状態で所定電圧を印加したヒータパターンの該ボンディングワイヤ接続位置間で測定される該ヒータパターンの抵抗値から算出されるヒータパターン平均温度と、測定雰囲気温度との差をΔTaとし、且つ、(3)測定雰囲気が流動しない状態で所定電圧をヒータパターンに印加した時の基板平均温度と、測定雰囲気温度との差をΔTbとした場合に、下記式[1]で表される値Xが0.01以下となることを特徴とする。
X={α/(1−α)}×(ΔTb/ΔTa) ・・・ [1]
【0009】
また、本発明の流れ特性測定用素子では、上記リード部は、上記ボンディングワイヤ接続位置から上記昇温部の方向へ、少なくとも1mm以上にわたって複層化されたものとすることができる。更に、上記リード部は、上記ボンディングワイヤを該リード部に接続するための領域を除いて、絶縁性保護膜により覆われているものとすることができる。また、測定雰囲気と非測定雰囲気とを隔てる隔壁の該測定雰囲気側に上記昇温部が配置され、該非測定雰囲気側に上記ボンディングワイヤ接続位置が配置され、且つ、該隔壁の非測定雰囲気側表面から該ボンディングワイヤ接続位置までの距離が0.2mm以下となるように配置されるものとすることができる。
【0010】
本発明の流れ特性測定用素子の製造方法は、表裏面に絶縁膜が形成された上記基板上に、上記リード部となる導電層を複層化する複層化工程を備え、且つ、該複層化工程においては該導電層の層間に加熱により該リード部の最表面に析出膜を生じることとなる層間層を形成する層間層形成工程を備える場合に、該析出膜を除去する析出膜除去工程を備えることを特徴とする。
【0011】
【発明の効果】
本発明の流れ特性測定用素子によると、流れに関する諸特性の測定において、従来に比べてより正確な測定を行うことができ、更には、ヒータパターンにおける消費電力を低減することができる。また、リード部のボンディングワイヤ接続位置から昇温部の方向へ複層化されたものとすることで、ヒータパターン全体に対するリード部(ボンディングワイヤ接続位置から昇温部までの間)の抵抗値の割合(以下、単に「抵抗寄与率」ともいう)を低下させることができ、従来に比べてより正確な測定を行うことができ、更には、ヒータパターンにおける消費電力を低減することができる。更に、リード部が、ボンディングワイヤ接続位置付近以外の領域が絶縁性保護膜により覆われていることにより、ヒータパターン等の短絡及び断線等を効果的に防止することができる。また、隔壁の非測定対象雰囲気側表面からボンディングワイヤ接続位置までを0.2mm以下とすることにより、結果的にリード部の抵抗寄与率を低下させることができ、従来に比べてより正確な測定を行うことができ、更には、ヒータパターンにおける消費電力を低減することができる。
また、本発明の流れ特性測定用素子の製造方法によると、上記のような流れ特性測定用素子を確実に得ることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の流れ特性測定用素子について詳しく説明する。
上記「空洞」は基板の表裏両面に開口された基板の欠損であり、例えば、貫通孔及び連通孔等の孔である。上記「切欠き」は基板の表裏面の少なくとも一方に開放され且つ基板の側面のいずれかの一面に開放された基板の欠損である。上記「凹部」は基板の表裏面の一方に開口された基板の欠損である。
【0013】
また、上記「空間部」は、これら空洞、切欠き及び凹部のうちの少なくともいずれかからなる基板の一部が欠損した部分であり、その開口形状(開放形状を含む)及び内部形状等は特に限定されない。但し、通常、開口形状は単純な形状であり、例えば、矩形、円形等である。また、この空間部の大きさも特に限定されないが、通常、1つの空間部を有する基板に対して表裏方向の一面側に開口する開口面積(切欠きにおいては表裏方向の一面側に開放する開放面積)は0.25〜4mm程度(特に□0.5〜□2mmが好ましい)である。空間部は基板上に幾つ備えてもよく、その数は特に限定されない。
【0014】
このような空間部の形成方法は特に限定されないが、後述する基板の一部をエッチングにより除去することで形成することができる。この際に用いるエッチングの方法は特に限定されず、ウェットエッチング法及びドライエッチング法(各々、異方性エッチング及び等方性エッチングを含む)等いずれを用いてもよい。なかでも、空洞の形成には、異方性エッチング液を用いたウェットエッチング法が一般的に用いられる。
【0015】
上記「基板」は、本発明の素子の基体となる部分である。この基体を構成する材料は特に限定されないが、通常、半導体材料が用いられる。中でも、シリコン基板が多用される。この基板の形状は特に限定されないが、例えば、矩形又は円形等とすることができる。また、その大きさも限定はされない。
【0016】
上記「絶縁膜」は、少なくとも空間部を覆って基板上に形成されている薄膜である。この絶縁膜は、後述するヒータパターンと基板とを電気的及び熱的に絶縁する機能を有する。
この絶縁膜の形成方法は特に限定されないが、例えば、熱酸化法等により基板の表面を改質して得ることができる。また、基板の表面に絶縁膜となる成分を付着堆積(蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、気相成長法等により行うことができる)させて得ることができる。その他、基板の表面に予め形成した絶縁膜を張り付けて得ることも可能である。
【0017】
この絶縁膜は、どのような材料から構成されてもよく特に限定はされないが、例えば、SiO2、Si34及びSiOxy等のケイ素化合物等から構成できる。また、絶縁膜の形状、大きさ及び厚さ等は特に限定されず、単層膜であっても複層膜であってもよい。但し、この絶縁膜のうちの空間部上に位置する絶縁膜隔離部(図11参照、図11においては131が絶縁膜隔離部)は、通常、面積が0.25〜4mm程度(特に□0.5〜□2mmが好ましい)であり、厚さは0.5〜2μm程度である。
【0018】
上記「ヒータパターン」は、電圧を印加した場合に発熱し、実際に昇温する昇温部と、外部からこの昇温部までの導通を図るリード部とを備える(図1及び図2参照、図1及び図2においては1411が昇温部、1412がリード部となる)。
このヒータパターンの形成方法は特に限定されないが、所定の材料を絶縁膜上に付着堆積(蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、気相成長法等により行うことができる)させ、その後、前述の空間部の形成方法にて例示したものと同様な各種のエッチング方法により、不必要な部位を除去して得ることができる。ヒータパターンを構成する材料は導電性を有すれば特に限定されないが、例えば、白金単体、白金合金、ニッケル合金、クロム合金等を用いることができる。中でも、抵抗温度係数が大きく、長期の繰り返し使用においても抵抗値及び抵抗温度係数が変化し難いことから白金単体及びニッケルクロム合金を用いることが好ましい。
【0019】
上記「昇温部」は、その下方に空間部が位置するヒータパターンの一部であり、ヒータパターンのパターン形状に関係なく、また、電圧の印加により発熱しているか否かにも関係なく、電圧の印加により実際に昇温し得る部位である{ヒータパターンのパターン形状としては発熱し難い形状(例えば、線幅が幅広である等)であっても、絶縁膜隔離部上に位置するために基板への熱伝導がほとんど無く、実際に昇温し得る部位は昇温部である}。
【0020】
上記「リード部」は、その下方に空間部が位置せず、且つ、外部(素子外部)と昇温部とを導通するヒータパターンの一部である(但し、後述するボンディングワイヤが外部とリード部との間に介在する)。このリード部はヒータパターンのパターン形状に関係なく(例えば、リード部の一部が細幅化される等して発熱に適した形状となっていても、絶縁膜隔離部上に無いため基板への熱伝導により昇温し難い又は昇温しない部位はリード部に含まれる)、また、電圧の印加により発熱しているか否かにも関係ない(発熱していても、絶縁膜隔離部上に無い部分は基板への熱伝導により実質的に昇温しないため)。尚、以下では、リード部のうち、ボンディングワイヤ接続位置から昇温部までの実際に導通に関与している部分を「実導通リード部」という。
【0021】
この実導通リード部の抵抗寄与率はできるだけ小さい方が、精度の高い測定を行うことができる。このため、リード部の配線幅はできるかぎり広くすることが好ましい。しかし、基板上で平面方向へ配線幅を広くするには限度がある。このため、リード部(実導通リード部のみであってもよい)は、単層であってもよいが、複層化することによっても抵抗寄与率を低下させることができる。特に、配線幅を最大限に広く形成し、且つ、複層化することが更に好ましい。
【0022】
複層化は、実導通リード部のどの位置が複層化されていてもよい{図1及び図2参照}。また、何層に複層化されていてもよく、特に限定されない。また、複層化される長さも特に限定はされないが、特に、ボンディングワイヤの接続位置から昇温部方向へ少なくとも1mm以上(より好ましくは2mm以上、更には全体)が複層化されていることが好ましい。1mm未満では複層化による効果が十分に発揮され難い。また、複層化された各層は同一の材料からなっていてもよいが、各々異なる材料からなる層であってもよい。特に、実導通リード部の上層となる層はその一部が昇温部のように発熱する必要がないため、上記ヒータパターンとして例示した金属を用いる必要がなく、むしろ、導電性の高い金、金合金、アルミニウム、アルミニウム合金、銀、銀合金、銅、銅合金等から構成されることが好ましい。これにより、実導通リード部の抵抗値を効果的に低減することができる。
【0023】
また、このリード部は、測定雰囲気内に位置する領域は保護層により覆われていることが好ましく{図1及び図2参照}、更には、ボンディングワイヤを接続するための領域を除いて保護層により覆われていることが好ましい{図1参照}。これにより、測定雰囲気中から飛来する異物によるリード部の断線や、飛来する導電性の異物によるリード部同士の短絡を防止することができる。
【0024】
上記「保護層」は、絶縁性を有する層である。この保護層を構成する成分は特に限定されないが、例えば、SiO、Si、SiO、Al及びTa等を挙げることができる。また、保護層の厚さ、形状等は特に限定されない。更に、この保護層の形成方法も特に限定されないが、例えば、ヒータパターンの形成と同様に付着堆積後、前述の空間部の形成方法にて例示したものと同様な各種のエッチング方法により、不必要な部位を除去して得ることができる。また、絶縁膜となる成分を塗布後、焼き付けることにより得ることもできる。
【0025】
上記「ボンディングワイヤ」は、本発明の素子を流れ特性の測定に実際に使用する場合に、リード部と外部との間の導通を図るための細線{図1及び図2における2}である(但し、素子の構成要素ではない)。このボンディングワイヤの長さ、太さ、形状及び材質などは特に限定されない(材質としては、通常、金又はアルミニウムが用いられる)。
上記「接続するための領域」は、ボンディングワイヤをリード部にボンディングするのに必要な領域である。その領域の面積及び形状は特に限定されないが、通常、接続されるボンディングワイヤの断面に相似で、断面積がボンディングワイヤ断面の4倍である形状が収まる領域である。
【0026】
尚、本発明の素子のヒータパターンにおいて、例えば、絶縁膜隔離部でない部分から絶縁膜隔離部を跨いで絶縁膜隔離部でない部分まで、ヒータパターンがU字系形状に形成されている場合、絶縁膜隔離部上に位置する部位は昇温部であり、U字系形状の2端からこの昇温部まで伸びる部分はリード部である。また、絶縁膜隔離部を跨ぐことによって生じる絶縁膜隔離部上に位置しないU字底部にあたる部分はリード部に帰属される。
【0027】
上記「α」は、ヒータパターン非通電時のヒータパターン全体の抵抗値に対する、実導通リード部の抵抗値の割合である。このαは小さいことが好ましいが、その値は特に限定されず、上記式[1]で与えられるXが0.01以下であればよい。
上記「ヒータパターン平均温度」は、測定雰囲気が流動しない状態でヒータパターンに所定電圧を印加して、ボンディングワイヤ接続位置間の抵抗値を測定し、得られた抵抗値Rと、0℃におけるボンディングワイヤ接続位置間の抵抗値Rと、ヒータパターンの抵抗温度係数であるcとを用いて、下記式[2]により算出される計算値である。
T=(R/R−1)/c ・・・・ [2]
【0028】
上記「測定雰囲気温度」は、測定対象である雰囲気の温度である。この測定雰囲気温度の測定方法は特に限定されず、例えば、放射(赤外線)温度計等を用いて測定することができる。通常は、素子自体に温度測定用の抵抗体パターン(雰囲気温度測定用パターン、基板平均温度測定兼用の温度補償用パターン等)が備えられているため、ヒータパターンには電圧を印加しない状態で、この抵抗体パターンの抵抗値を測定し、この抵抗値から測定雰囲気温度を算出することができる。
【0029】
また、上記「基板平均温度」は、ヒータパターンに通電している状態における基板の平均温度である。この基板平均温度の測定方法は特に限定されず、例えば、放射(赤外線)温度計等を用いて測定することができる。通常は、素子自体に備えられている温度測定用の抵抗体パターン(基板平均温度測定用パターン、雰囲気温度測定兼用の温度補償用パターン等)の抵抗値から基板平均温度を算出することができる。
【0030】
上記「X」は、0.01以下であれば特に限定されない。Xが0.01を超えると、実導通リード部が発熱したために生じる測定誤差が大きくなるため好ましくない。即ち、例えば、測定雰囲気温度が25℃であり、ヒータパターン平均温度を200℃に保持しようとするブリッジ回路を用いて素子を制御した場合に、測定雰囲気を流動させない状態におけるヒータパターン平均温度と測定雰囲気温度との差をΔTh0とし、測定雰囲気を流動させ且つ上記ブリッジ回路で制御した状態におけるヒータパターン平均温度と測定雰囲気温度との差をΔTh1とした場合に、Th0に対するTh1の誤差率である{(Th1−Th0)/Th0}×100で表される割合が1%を超えることとなり、好ましくない(実施例参照)。
【0031】
本発明の素子を用いて流れ特性を測定する場合、上記のように、測定雰囲気側に昇温部が配置され、非測定雰囲気側にボンディングワイヤ接続位置が配置されるように配置され、且つ、隔壁の非測定雰囲気側表面からボンディングワイヤ接続位置までの距離が0.2mm以下(より好ましくは0.1mm以下、更に好ましくは0.05mm以下)となるように配置されることが好ましい。これにより、リード部の長さが短くなり、リード部の抵抗寄与率を低下させることができる。
【0032】
尚、本発明の素子には、上記のヒータパターンの他にも、測温パターン{雰囲気温度測定用、基板平均温度測定用、ヒータパターン上流側温度測定用、ヒータパターン下流側温度測定用、温度補償抵抗用(雰囲気温度及び基板平均温度測定用兼用)}等の抵抗体パターンを各々1つ又は2つ以上備えることができる。これらのパターンの形成方法は特に限定されないが、前記ヒータパターンと同様な方法で得ることができる。また、これらのパターンを構成する材料も特に限定されないが、前記ヒータパターンにおいて例示したものと同じものを適用することができる。これらの各パターンはヒータパターンが形成されている層と同じ層上に、ヒータパターンの形成と同時に形成できる。
【0033】
また、このような流れ特性測定用素子の製造において、その方法は特に限定はされないが、これまでに述べたように各構成部を形成することができる。但し、少なくとも実導通リード部を複層化するために、リード部である導電層の層間に加熱によりリード部最表面に析出膜を生じることとなる層間層を形成する層間層形成工程を備える場合は、後工程でこの析出膜を除去する析出膜除去工程を備えることができる。
【0034】
上記「層間層」は、その一部又は全部が、加熱によりリード部最表面に析出する特性を有する層であり、導電性を有する。このような層の形成目的は特に限定はされない。例えば、導電層を形成することとなる基板最表面の少なくとも一部と導電層との密着強度が十分に得られ難い場合に、導電層の密着強度を向上させるため等である。しかし、リード部の最表面のいずれかの位置には、外部との導通を図るためのボンディングワイヤが接続される。このため、析出膜を生じているとボンディングが正常に行えない場合がある。従って、この析出膜を除去する工程を備えることが好ましい。
【0035】
この層間層となる成分は特に限定されないが、リード部を構成する層の層間に形成するため、各層同士の密着性を十分に向上させることができ、更には、十分な導電性を有することが好ましい。即ち、例えば、Cr、Ti、Mo、W、Ta及びNb等を挙げることができる。これらは、1種で用いても、2種以上を同時に用いてもよい。これら層間層となる成分としては、下層として白金を用い、上層として金を用いる場合にはCr、Ti及びMoのうちの少なくとも1種を用いることが好ましく、更には、絶縁膜と導電層とのエッチング時のエッチングレートの比(選択比)が好ましい範囲となること及び化学的耐久性に優れること等からCrが特に好ましい。また、この層間層を形成する方法は特に限定されないが、例えば、前述のヒータパターンを形成する場合と同様に、所望の成分を付着堆積させることで形成することができる。また、同様に、必要で有ればエッチングにより不必要な部分を除去することができる。
【0036】
上記「加熱」は、これを行う目的は特に限定されないが、例えば、前述したリード部を飛来する異物などから保護するための保護層を形成する際に基板全体を加熱する場合がある。また、加熱温度及び加熱時間等は特に限定されないが、層間層として、例えば、前記Cr、Ti、Mo、W、Ta及びNb等を付着堆積させた場合には、250〜300℃程度で析出することがある。
【0037】
上記「析出膜」の組成等は限定されないが、例えば、層間層として用いた成分の一部又は全部である。従って、層間層として、前述のようにCr、Ti、Mo、W、Ta及びNb等を用いた場合は、これらの成分(他成分との反応の有無等をとわない)が析出することとなる。
また、この析出膜の除去方法は、特に限定されないが、前述の空間部の形成方法にて例示したものと同様な各種のエッチング方法により除去することができる。
【0038】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
1.流れ特性測定用素子の作製
▲1▼ 絶縁膜の形成
洗浄したシリコン基板11(厚さ400μm)の表裏面に絶縁薄膜13を形成した(図3参照)。この絶縁膜は、裏面側は、熱酸化法による厚さ0.1μmの酸化膜とLP(Low Pressure)CVD法による厚さ0.1μmの窒化珪素膜とからなる。一方、表面側は熱酸化法による厚さ0.1μmの酸化膜とLPCVD法による厚さ0.1μmの窒化珪素膜とプラズマCVD法による厚さ0.4μmの窒化珪素膜とからなる。尚、熱酸化法による酸化膜及びLPCVD法による窒化珪素膜は、表裏面同時に形成した。
【0039】
▲2▼ 第1層間層、ヒータパターン、ヒータパターン上流側温度測定用パターン、ヒータパターン下流側温度測定用パターン、及び、雰囲気温度測定用パターンの形成
▲1▼で得られた絶縁膜13上全面に、スパッタ法により厚さ20nmのタンタル層を形成した。その後、このタンタル層上に、更にスパッタ法により厚さ0.1μmの白金層を形成した。次いで、この白金層上にフォトレジストを塗布した後、必要部分を感光・硬化させ、その後、不必要部分を除去してレジストパターンを形成した。次いで、ウェットエッチング法により白金層のエッチング(王水を使用)を行い図11に示す形状のヒータパターン141、ヒータパターン上流温度測定用パターン142及びヒータパターン下流温度測定用143、並びに、温度補償用パターン144を形成した。更に、ドライエッチング法によりタンタル層をエッチングし、第1層間層161を形成した。その後、レンジストパターンを硫酸過水により除去した(図4及び図11参照)。
【0040】
▲3▼ 第2層間層及びリード部上層の形成
基板の絶縁膜及び各パターンが形成された面の全面に、スパッタ法により、厚さ50nmのクロム層を形成した。その後、このクロム層上に、更にスパッタ法により厚さ1μmの金層を形成した。次いで、この金層上にフォトレジストを塗布した後、必要部分を感光・硬化させ、その後、不必要部分を除去してレジストパターンを形成した。次いで、ウェットエッチング法により金層のエッチング(王水を使用)を行いリード部上層141’(ボンディングワイヤ接続位置から昇温部方向へ3.5〜4mm)を形成した。更に、ウェットエッチング法によりクロム層のエッチング(硝酸第2セリウムアンモニウム系エッチング液を使用)を行い第2層間層162(リード部上層の層下全面に形成)を形成した。その後、レンジストパターンを硫酸過水により除去した(図5参照)。
【0041】
▲4▼ 保護層の形成
基板の各パターンを備える面の全面にプラズマCVD法により、厚さ1μmの窒化珪素からなる保護層17を形成した(その際、プラズマCVD法を行うことにより温度300℃程度に基板が加熱され、少なくとも第2層間層を構成するクロムが保護層17の層下にリード部上層141’の層下から析出する。図6参照)。その後、ボンディングに必要な部位(各パターンのリード部末端付近)のみをRIE(Reactive Ion Etching)を用いたエッチング法により除去し、保護層にボンディングを行うための穴を開けた(図7参照)。
【0042】
▲5▼ 空間部の形成
▲4▼までに得られた基板の各パターンが形成されていない側の絶縁膜13の表面の所定領域を、RIEを用いたエッチング法により除去した(図8参照)。次いで、エッチングにより表面に現れたシリコン基板11を、基板の各パターンが形成されている表面側の絶縁膜の表面までを、異方性エッチング液を用いたエッチング法により除去し、空間部12を形成した(図9参照)。
【0043】
▲6▼ 析出膜の除去
▲4▼で開けられたボンディング用の穴の底部表面(リード部最表面)に析出膜18が形成されていたため、▲3▼で第2層間層のエッチングに用いた硝酸第2セリウムアンモニウム系エッチング液を用いて、ボンディング用の穴から表出した部分の析出膜を除去し(図10参照)、実験例1の素子1を得た。
▲7▼ 素子のαの算出
得られた実験例1の素子のαを算出したところα=0.01であった。
【0044】
2.αの異なる素子の作製
(i) α=0.12の素子(実験例2)の作製(図2参照)
▲1▼ 絶縁膜、第1層間層及びヒータパターン等の形成
上記1.▲1▼〜上記1.▲2▼までと同様にしてシリコン基板上に絶縁膜を形成した後、絶縁膜上に第1層間層を形成し、更に、第1層間層上にヒータパターン、ヒータパターン上流側温度測定用パターン、ヒータパターン下流側温度測定用パターン、及び、温度補償用パターンを形成した。
その後、上記1.▲3▼と同様にして、スパッタ法によりクロム層及びこのクロム層上に金層を形成した。その後、レジストパターンを形成し、上記1.▲3▼と同様にウェットエッチング法により金層をエッチングし、リード部上層141’を形成した。但し、このリード部上層は、ボンディングワイヤ接続位置から昇温部方向へ1〜2mmまでに形成し、上記1.で得られた実験例1の素子が備えるリード部上層141’に比べて短いものである。その後、上記1.▲3▼と同様にクロム層のエッチングを行って第2層間層162を形成し、更に、レンジストパターンを除去した。
【0045】
▲2▼ 保護層の形成
上記▲1▼で形成した各パターンを備える面の全面にプラズマCVD法により、厚さ1μmの窒化珪素からなる保護層を形成した。その後、上記▲1▼で形成されたリード部上層141’の全面が表出されるように、RIEを用いてエッチングを行った。
【0046】
▲3▼ 空間部の形成
上記▲2▼までに得られた基板の各パターンが形成されていない側の絶縁膜の表面の所定領域を、上記1.▲5▼と同様な方法によりエッチングして空間部を形成した。次いで、上記1.▲6▼と同様にして、析出膜を除去して実験例2の素子を得た。▲4▼ 素子のαの算出
得られた実験例2の素子のαを算出したところα=0.12であった。
【0047】
(ii) α=0.15の素子(実験例3)の作製(図13参照)
上記2.(i)▲1▼において、金層のエッチングを行った際にボンディングワイヤ接続位置から昇温部方向へ0.2mmにしか複層化されていないボンディングパッド3を形成した以外は、上記2.(i)と同様にして実験例3の素子を得た。得られた実験例3の素子のαはα=0.15であった。
【0048】
3.素子を用いた評価
▲1▼ 流れ特性測定計の製造
上記1.及び上記2.で得られた実験例1〜3の各々素子を、測定雰囲気を分流する分流管の所定位置に、素子の昇温部が分流路内(測定雰囲気側)に突出し、且つ、上記1.において保護層及び析出膜が除去された部位は分流路外(非測定雰囲気側)に突出するように隔壁に嵌挿し、固定した。次いで、保護層及び析出膜が除去された部位に表出するリード部にボンディングワイヤをボンディング接合し、更に、図12に示す回路構成となるように外部回路を接続して流れ特性測定計3種を得た。
【0049】
▲2▼ Xの測定
上記3.▲1▼で得られた各流れ特性測定計を用い、温度が25℃である測定雰囲気が流動しない状態において、ヒータパターン平均温度が175℃となるように外部回路より電圧を印加した。また、温度が25℃である測定雰囲気が流動しない状態において、基板平均温度を測定したところ各々表1のような温度であった。これらからXを算出した結果を表1に併記する。
【0050】
▲3▼ ヒータパターン平均温度の誤差率の測定
上記の各流れ特性測定計の分流路内に基板平均温度が25℃となるように、25℃の測定雰囲気を流動させた。この時、図12に表される回路により測定雰囲気温度とヒータパターン平均温度との差が175℃となるように制御した。また、ヒータパターンに印加されている電圧を元に、ヒータパターン平均温度を算出した。更に、測定雰囲気を流動させない状態におけるヒータパターン平均温度と測定雰囲気温度との差ΔTh0と、測定雰囲気を流動させ且つ上記外部回路で制御した状態におけるヒータパターン平均温度と測定雰囲気温度との差ΔTh1と、これらΔTh0とΔTh1との差(ΔTh1−ΔTh0)とを表2に示した。また、「Th0」に対する「Th1」の誤差率{(Th1−Th0)/Th0}×100を算出し、表2に併記した。
【0051】
【表1】
Figure 0003971920
表中「*」は本発明の範囲外であることを示す。
【0052】
【表2】
Figure 0003971920
表中「*」は本発明の範囲外であることを示す。
【0053】
表1及び表2の結果より、Xの値が0.01を超える実験例3の素子においては、表2における誤差率が1.1%となり、誤差率を1.0%以下に抑えることができないことが分かる。これに対して、実験例1及び実験例2のように、Xの値が0.01以下となる素子においては、表2における誤差率を1.0%以下に抑えることができることが分かる。即ち、誤差率が1.0%以下のより正確な流れ特性を測定することができることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の流れ特性測定用素子の一例の模式的な断面図である。
【図2】本発明の流れ特性測定用素子の他例の模式的な断面図である。
【図3】実施例における本発明の流れ特性測定用素子の作製過程を表す説明図である。
【図4】実施例における本発明の流れ特性測定用素子の作製過程を表す説明図である。
【図5】実施例における本発明の流れ特性測定用素子の作製過程を表す説明図である。
【図6】実施例における本発明の流れ特性測定用素子の作製過程を表す説明図である。
【図7】実施例における本発明の流れ特性測定用素子の作製過程を表す説明図である。
【図8】実施例における本発明の流れ特性測定用素子の作製過程を表す説明図である。
【図9】実施例における本発明の流れ特性測定用素子の作製過程を表す説明図である。
【図10】実施例における本発明の流れ特性測定用素子の作製過程を表す説明図である。
【図11】実験例1として作製した本発明の流れ特性測定用素子の各種パターンの形状を模式的に表す説明図である。
【図12】実験例1として作製した本発明の流れ特性測定用素子とこれに接続された外部回路とを併せた回路図である。
【図13】従来の流れ特性測定用素子の一例の模式的な断面図である。
【符号の説明】
1;流れ特性測定用素子、11;基板、12;空間部、13;絶縁膜、131;絶縁膜隔離部、141;ヒータパターン、1411;昇温部、1412;リード部、141’;リード部上層、142;ヒータパターン上流温度測定用パターン、143;ヒータパターン下流温度測定用パターン、144;温度補償用パターン、15;ボンディングワイヤ接続位置、16;層間層、17;保護層、18;析出膜、2;ボンディングワイヤ、3;ボンディングパッド、4;隔壁。

Claims (5)

  1. 空洞、切欠き及び凹部のうちの少なくともいずれかからなる空間部を有する基板と、少なくとも該空間部を覆って該基板上に形成された絶縁膜と、該絶縁膜上に形成されたヒータパターンとを備え、且つ、該ヒータパターンは、下方に該空間部が位置する昇温部と、外部と該昇温部との電気的接続を行うためのリード部とを備える流れ特性測定用素子において、
    (1)ヒータパターン非通電時であって、外部と上記リード部とを導通するボンディングワイヤが該リード部上に接続されるボンディングワイヤ接続位置よりも上記昇温部側に位置する該リード部の抵抗値の、該ヒータパターン全体の抵抗値に対する割合をαとし、(2)測定雰囲気が流動しない状態で所定電圧を印加したヒータパターンの該ボンディングワイヤ接続位置間で測定される該ヒータパターンの抵抗値から算出されるヒータパターン平均温度と、測定雰囲気温度との差をΔTaとし、且つ、(3)測定雰囲気が流動しない状態で所定電圧をヒータパターンに印加した時の基板平均温度と、測定雰囲気温度との差をΔTbとした場合に、下記式[1]で表される値Xが0.01以下となることを特徴とする流れ特性測定用素子。
    X={α/(1−α)}×(ΔTb/ΔTa) ・・・ [1]
  2. 上記リード部は、上記ボンディングワイヤ接続位置から上記昇温部の方向へ、少なくとも1mm以上にわたって複層化されている請求項1記載の流れ特性測定用素子。
  3. 上記リード部は、上記ボンディングワイヤを該リード部に接続するための領域を除いて、絶縁性保護膜により覆われている請求項1又は2に記載の流れ特性測定用素子。
  4. 測定雰囲気と非測定雰囲気とを隔てる隔壁の該測定雰囲気側に上記昇温部が配置され、該非測定雰囲気側に上記ボンディングワイヤ接続位置が配置され、且つ、該隔壁の非測定雰囲気側表面から該ボンディングワイヤ接続位置までの距離が0.2mm以下となるように配置される請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の流れ特性測定用素子。
  5. 請求項2乃至4のうちのいずれか1項に記載の流れ特性測定用素子の製造方法であって、表裏面に絶縁膜が形成された上記基板上に、上記リード部となる導電層を複層化する複層化工程を備え、且つ、該複層化工程においては該導電層の層間に加熱により該リード部の最表面に析出膜を生じることとなる層間層を形成する層間層形成工程を備える場合に、該析出膜を除去する析出膜除去工程を備えることを特徴とする流れ特性測定用素子の製造方法。
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