JP3974766B2 - 弾性表面波素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、弾性表面波素子に関係している。
【0002】
【従来の技術】
基材上に弾性表面波を発生させるとともに、基材上に発生された弾性表面波を受信するものとして弾性表面波素子は従来から良く知られている。
【0003】
従来の弾性表面波素子では平坦な基材上に1対の櫛形電極が設けられている。基材が圧電性材料で形成されているか、又は櫛形電極と基板の間には圧電体が設けられており、一方の櫛形電極に高周波電圧を供給することにより電極の並んでいる方向に弾性表面波を励起させる。他方の櫛形電極はこの弾性表面波の伝搬方向に配置されていてこの弾性表面波を受信する。
【0004】
弾性表面波素子は、遅延線、発信機のための発振素子若しくは共振素子、周波数を選択するためのフィルタ、化学センサ、バイオセンサ、又はリモートタグ等に使用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
弾性表面波素子の精度を高める方法として、球状の基材の表面に弾性表面波を伝搬させて基材を多数回周回させるものが知られている。このとき、弾性表面波は拡散せずに長い距離伝搬するが、基材の表面に電界を印加するために櫛形電極などを形成する必要がある。この場合、特に0.5mmよりも小さなパターンを形成するためには、フォトリソグラフィーの手法を採用しなくてはならず、工数が増えることにより高価なものになる。
【0006】
また、基材の表面に金属などの電極を直接に形成すると、基材の表面を周回する弾性表面波がこの電極によって反射されるなどして周回数が増える度に急激にその強度を小さくする。このため、例えば30回周回するのに必要な時間を測定して評価を行う用途のような場合に、20回程度で減衰や拡散によって消失してしまい、十分な精度での評価ができない。
【0007】
この発明はこのような事情の下でなされ、本発明の目的は、極めて多い回数の弾性表面波の周回を実現することで高い精度の信号処理や評価ができる弾性表面波素子を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係わる弾性表面波素子は、
少なくとも球面の一部で形成されていて円環状に連続している円環状表面を有しており、圧電性材料で形成されている基材と、
円環状表面と間隔を置いて対向しており、前記円環状表面に沿って伝搬する弾性表面波を励起する弾性表面波励起手段と、
を備えていて、
前記弾性表面波励起手段は、前記円環状表面に沿って設けられ、高周波電源に接続される櫛形電極を含んでおり、
前記櫛形電極と円環状表面との間隔が、この櫛形電極の電極周期の1/4以下である、
ことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項2に係わる弾性表面波素子では、前記基材は、水晶の単結晶、LiNbO3の単結晶およびLiTaO3の単結晶からなる群から選択される単結晶で形成されている。
【0010】
本発明の請求項3に係わる弾性表面波素子では、前記弾性表面波励起手段により励起される弾性表面波の波長が、基材の球面の半径の1/10以下である。
【0013】
本発明の請求項4に係わる弾性表面波素子では、前記櫛形電極の重なり幅は、前記基材の球面の直径の半分以下でこの球面の半径の1/100以上である。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1ないし図12を参照して、本発明の実施の形態に係わる弾性表面波素子を説明する。先ず、本発明の第1の実施の形態の弾性表面波素子を説明する。図1は弾性表面波素子の構成を示す斜視図である。弾性表面波素子は単結晶の水晶で形成されている球状の基材110を有している。本実施の形態では水晶の単結晶を用いているが、LiNbO3の単結晶、LiTaO3の単結晶等の圧電性材料の単結晶を用いてもよい。基材110は溶融石英で形成されている基台121に保持されている。基台121には基材110の球面の一部に適合する凹部122が設けられている。凹部122は基材110を透視して示されている。基材110は凹部122に嵌合している。本実施の形態では、基材110の半径及び凹部122の曲率半径はともに5mmである。しかしながら、基材110の寸法はこれに限定されない。
【0018】
凹部122にはハッチングで示されている櫛形電極123が基材110の表面に沿って設けられている。櫛形電極123は基台121の表面に積層された厚さ500Åのクロムの層と、クロムの層の上に積層された厚さ1500Åの金の層とを有している。これらの層は熱蒸着により形成され、その後フォトリソグラフィーにより1対の櫛形パターンが形成されるようにパターニングされている。基材110の表面には櫛形パターンの他に、櫛形パターンに接続される、電界を発生させるための回路等(図示せず)が形成される。櫛形電極123にはこのような回路等が含まれている。
【0019】
櫛形電極123はその他の形成方法により形成されてもよい。例えば、導電性の箔を櫛形に切り抜きこれを凹部122に貼り付けてもよい。また、印刷、スパッタリング、ゾルゲル法等を用いてもよい。櫛形電極123にはインピーダンスマッチング回路124とサーキュレータ125とを介して、高周波電源を有している発信器126に接続されている。櫛形電極123は弾性表面波励起手段として用いられている。
【0020】
水晶の基材110の表面には樹脂薄膜が形成されている。樹脂薄膜はレジスト薄膜パターンをフォトレジスト工程で作成して硬膜化処理を行って形成されている。
【0021】
櫛形電極123に電圧を印加すると、櫛形電極123は電界を発生する。この電界は、樹脂薄膜を通過し、凹部122に対向している基材110の表面に印加される。
【0022】
ところで、基台121に凹部122が設けられておらず、平板状の基台に櫛形電極が形成され、これらが基材110に対向している場合は、電界は基材110の表面の比較的狭い領域にしか印加されない。これに対して、本実施の形態のように凹部122が設けられていれば基材110の比較的広い領域に電界を印加できる。
【0023】
基材110を形成している水晶の結晶は圧電性材料である。基材110の表面に電界が印加されると、基材110の表面が圧電効果により振動し、基材110の表面に所定のモードの弾性表面波が励起される。櫛形電極123を用いた弾性表面波励起手段は比較的高い効率でかつ特定の方向に弾性表面波を励起することができる。
【0024】
本明細書では、単結晶の基材の表面にエネルギーを集中させて伝搬する弾性波を弾性表面波と総称している。単結晶の基材からエネルギーを放出しながら伝播する漏洩弾性表面波や、SH(シェアーホリゾンタル)波や、ラテラル波と呼ばれる弾性波も含まれる。
【0025】
励起された弾性表面波は円環状に連続している基材110の円環状表面111に沿って伝搬する。弾性表面波は基材110の表面を周回する。弾性表面波励起手段、本実施の形態では櫛形電極123は、円環状表面111と間隔を置いて対向しており、円環状表面111に沿って設けられている。櫛形電極123と円環状表面111との間には微小な樹脂粒子が散在させられており、櫛形電極123と円環状表面111とが直接接することがない。このため、基材110の表面を周回する弾性表面波は櫛形電極により散乱されることが少ない。
【0026】
基材の表面に直接櫛形電極が形成されている場合、基材の表面に励起された弾性表面波は櫛形電極により反射されたり散乱されたりする。本実施の形態ではこのようなことがない。
【0027】
所定の条件が揃った場合、樹脂薄膜を導波管として弾性波が励起される場合がある。このようなモードの弾性波も本実施の形態の弾性表面波に含まれる。
【0028】
発明者らの実験により、櫛形電極が基材の表面に接していないため十分な強度で弾性表面波を励起できるだけでなく、接している場合よりも極めて多数回の周回を実現できることが分かっており、このような特性は各種センサへの応用上、極めて好都合である。
【0029】
弾性表面波励起手段と円環状表面111との間隔は、電界を圧電性材料である水晶の基材110に及ぼすことができるならば、弾性表面波励起手段により励起される弾性表面波の波長の1/4以下であることが好ましい。この間隔が波長の1/4を超えると、櫛形電極の電圧勾配に基づく、基材の表面の電界強度の振幅がなだらかになり、励起される弾性表面波の強度が著しく弱くなることが確かめられている。
【0030】
後述するように、所定の条件下では弾性表面波の波長は櫛形電極123の電極周期に一般にはほぼ等しい。この事実を用いると、上記間隔と波長の関係を、櫛形電極123と円環状表面111との間隔は、櫛形電極123の電極周期の1/4以下である、と言い換えることができる。本実施の形態では、樹脂粒子の直径、即ち櫛形電極123と円環状表面111との間隔は10μmであり、後述するように、波長は0.209mmである。
【0031】
櫛形電極123には上述した発信器126の他にアンプ127、ディジタルオシロスコープ128が接続されている。櫛形電極123を利用すれば、周回した後に櫛形電極123に入力する弾性表面波を検出できる。ここで、櫛形電極123は弾性表面波を再び電気信号に変換することにより弾性表面波を検出する機能をもつために、1対の櫛形電極のみで弾性表面波の励起と検出とを行えるが、検出用の櫛形電極を弾性表面波の伝搬経路上に別個に形成してもよい。
【0032】
弾性表面波が球状の基材の円環状表面に沿って伝搬する現象は、等方性の材料で形成されている基材については知られていた。単結晶で形成された基材については、結晶方位に従って弾性表面波の伝搬速度が異なる。そして、単結晶で形成された球状の基材を周回する過程で伝搬不可能な結晶面を通過したり、エネルギーが拡散する結晶面を通過したりするために、弾性表面波が基材の表面を周回する際の効率が悪化し、周回する度に急激にエネルギーを消耗すると考えられていた。
【0033】
ところが、水晶、LiNbO3、LiTaO3等の三方晶系の単結晶の基材については、弾性表面波が伝搬する経路を適切に選べば同様の現象が起こることが発明者らにより実験で確認された。この経路は、後に示すように、結晶方位で決まる。この経路に沿って伝搬する弾性表面波は弾性波エネルギーの散逸や球表面における反射は小さいので、雑音の少ない良好な周回が実現できる。
【0034】
従来のように非圧電性材料で基材を形成する場合、基材と櫛形電極との間に圧電膜を形成する必要がある。LiNbO3、LiTaO3および本実施の形態の基材を形成している水晶は良好な圧電材料であるので、圧電膜を形成する必要がなく低コストである。また、圧電膜の形成プロセスの条件に伴って弾性表面波素子の特性が変わる危険性が無いので安定して同じ製品を生産できる。
【0035】
非圧電性材料の基材を用いた場合よりも、水晶、LiNbO3およびLiTaO3の基材を用いた場合の方が信号純度が高い。従って、従来の弾性表面波素子に比べ遥かに性能を高めることができる。
【0036】
上記単結晶の中で、水晶は硬度がたかく、加工が容易で、材料として安価に入手できるために非常に有用である。LiNbO3およびLiTaO3についても電気機械結合係数が大きく、また弾性表面波の位相速度の温度依存性についての特徴から雑音の少ない良好な周回が実現できる。
【0037】
弾性表面波が拡散することなく球状の基材の表面を周回する条件は、近似的に以下のようにして求められた。以下の計算は等方性材料で基材を形成した場合について説明されているが、大部分の弾性表面波が周回する領域において、弾性表面波が伝搬する方向の弾性表面波位相速度が著しく変化しない場合に、理論的に近似的な推測を行うことができる。
【0038】
先ず、弾性表面波の発生源が点とみなせる場合について説明する。発生源は球状の基材の表面にある。これは、櫛形電極123の重なり幅が基材110の球面の半径の1/100未満であることに対応している。ここで、重なり幅は櫛形電極123一方の櫛形パターンの複数の電極片と、他方の櫛形パターンの複数の電極片とが相互に対面する長さである。
【0039】
弾性表面波は発生源を中心にして球面である表面上を同心円状に広がった後に発生源とは正反対の側の地点に向かい同心円状に集束する。そして、正反対の側の地点から球面上を同心円状に広がった後に発生源に集束する。即ち、発生源が点とみなせる場合は、指向性をもたずに拡散する。尚、基材に櫛形電極が直接形成されている場合や、基材を支持するための支持部が直接基材に接している場合は、櫛形電極の配線取り付け部、櫛形電極の櫛形パターンに接続される所定の回路、支持部などで弾性表面波が散乱される。本実施の形態ではこのようなことは起こらない。
【0040】
次に、弾性表面波の発生源が円弧とみなせる場合について説明する。これは、櫛形電極123の重なり幅が基材110の球面の半径の1/100以上であることに対応している。但し、付随の電気回路パターンなどを含めた櫛形電極の全幅は、基材110の周囲長の半分以下である必要があるので、櫛形電極123の重なり幅は基材110の球面の直径の半分以下である。図2には、球状の基材の中心を原点Oとする座標系が示されている。XYZ座標軸と基材の半径rの球面の交点をそれぞれ点A、B,Cとする。また、OB間にあり、Y軸上の点を点E、点E通りZ軸に平行な直線と上記球面との交点を点F、点E通りX軸に平行な直線と上記球面との交点を点Dとする。円弧DF上の点Pから発生した弾性表面波が円弧CG上の点Qに達するとする。ここで、点Gは円弧AB上の点である。角度φ0,θ0,φ1,θ1を図2中に示したように取ると、点P,Qの座標はそれぞれ
(rcosφ0cosθo,rsinφ0,rcosφ0sinθo)及び
(rcosφ1cosθ1,rcosθ1sinφ1,rsinθ1)
となるため、
PQ2=2r2[1−cosφ0cosθocosφ1cosθ1−sinφ0cosφ1cosθ1−cosφ0sinφ0sinθ1]…(1)
である。従って、角POQ=θとおくと余弦定理より
cosθ=cosφ0cosθocosφ1cosθ1+sinφ0cosφ1cosθ1+cosφ0sinφ0sinθ1 …(2)
の関係が成り立つ。
【0041】
点Pで発生した弾性表面波の点Qにおける粒子変位の半径方向成分は、
【数1】
である(Viktorov,Rayleigh and Lamb Waves)。式(3)はレイリー波やラム波について求められたものであるが弾性表面波一般にも適用できる。なおここで、Cは定数、CRはレイリー波速度、tは時間である。mは
m=円周の長さ/弾性表面波の波長
であり、波数パラメータと呼ぶ。
【0042】
角度θは式(2)から求められる。点Eから見こむ角度が2θAの円弧状音源による点Qの音場は、式(3)をθoについて−θAからθAまで積分することにより得られる。音場分布は点Qの迎角θ1を変化させて計算することで求められる。
【0043】
図3には点PがXZ面上にあるφ0=0の場合について式(3)を使用して求めた弾性表面波が球面上を伝搬する4つの状態が示されている。
【0044】
図3(A)、図3(B)及び図3(C)は、波数パラメータm=600の場合の音場(粒子変位の絶対値の角度θ1依存性)を調べた結果である。図の各々において、最も下のプロットは球面上の弾性表面波の伝搬を表す角度(伝搬角)φ1が0°の場合の音場であり、上に向かって15°づつ増加した場合の音場が順にプロットしてある。
【0045】
図3(A)は、開口半角θA=30°の場合である。この場合には、図3(A)から明らかなように、弾性表面波の伝搬状態は集束ビーム形状である。即ち、伝搬角φ1が増加するにつれて音場の幅が減少しφ1=90°で最小になった後は再び幅が増加し対極点180°で音源上と同じ分布が再現される。以降は180°毎に上記同じ変化が繰り返され、何周回っても同じ変化が繰り返される。これは回折による波の拡散が全く無い球面に独特な現象である。この場合、開口半角θA=30°よりも音場が広がることがなく、θ1<θAの帯状部分に弾性表面波のエネルギーが閉じ込められている。この場合には球面のθ1>θAの部分に他の物体を接触させても音場に擾乱は生じない。
【0046】
図3(C)は、開口半角θA=1°の場合である。この場合には、図3(C)から明らかなように、弾性表面波の伝搬状態は点音源の場合と類似した発散ビーム形状である。即ち、伝搬角φ1が増加するにつれて音場の幅も増加しφ1=90°で最大になった後は再び幅が減少し対極点180°で音源上と同じ分布が再現される。この場合は、図3(A)を参照しながら上述した集束ビームの場合とは異なり、θ1<θAの帯状部分に弾性表面波のエネルギーが閉じ込められることが無く、φ1=90°では球の表面全体に広がってしまう。この場合には、球面のφ1=90°かつθ1>θAの部分に他の物体を接触させると音場に擾乱が生じる。
【0047】
図3(B)は、開口半角θA=3.5°の場合である。この場合には、図3(B)から明らかなように、弾性表面波の伝搬状態は伝搬角φ1が増加しても音場の幅は殆ど変化しないコリメートビーム形状である。即ち、θ1=θAの帯状部分に弾性表面波のエネルギーが閉じ込められている。これは無限媒体中のベッセルビームと同様な特性である。そしてコリメートビームが得られる開口半角θAをコリメート角θcolと呼ぶ。
【0048】
図3(A)、図3(B)及び図3(C)から明らかなように、開口半角θAがコリメート角θcolに略等しい時、最も幅の狭い帯状部分に弾性表面波のエネルギーが閉じ込められている
さらに、波数パラメータmを変化させて上述したのと同様の数値解析を行った結果、波数パラメータmによりコリメート角θcolが変化することが分かった。図3(D)は、波数パラメータmが300の場合に弾性表面波の伝搬状態がコリメートビーム形状になるのは、開口半角θAが略4.5°であることを示しており、この場合のコリメート角θcolは約4.5°になる。
【0049】
以下には、波数パラメータmが変化した場合のコリメート角θcolの値を示す。
【0050】
なおこれは、数値計算による近似値である。このように、コリメート角θcolは波数パラメータmから式(3)を用いて求められる。
【0051】
再び図1を参照して本実施の形態の弾性表面波素子を説明する。櫛形電極123から弾性表面波が出力されると、上述のように円環状表面111に沿って伝搬する。説明の便宜上、円環状表面111の幅を櫛形電極123の重なり幅と等しく取る。櫛形電極123の重なり幅は、コリメート角θcolにより規定される弾性表面波の発生源の幅以上である。より好ましくは重なり幅はコリメート角θcolにより規定される幅に等しい。弾性表面波は、上記数値計算の結果から円環状表面111の幅を超えて拡散することなく、円環状表面111に沿って伝搬する。この伝搬の様子は図3(A)及び図3(B)に対応する。コリメート角θcolを決定する波数パラメータmの代表的な値は、100〜800であるが、本発明の波数パラメータmはこの値に限定されない。
【0052】
上記数値計算では、弾性表面波の波長及び位相速度は弾性表面波が伝搬する球面の全ての場所で一定であるとして説明した。しかしながら、結晶である水晶で形成された球状の基材では、ある振動数をもった弾性表面波の波長及び位相速度は結晶方位に従って一般に異なる。よって、波数パラメータmも球面上で一定ではないが、近似的に一定であるとする。この一定の波数パラメータmを求めるために、弾性表面波励起手段により弾性表面波が励起される基材の部分を伝搬している弾性表面波の波長を用いる。即ち、櫛形電極123が設けられた基材110の部分の波長を用いる。さらに、それぞれの電極片の位置の基材110上の波長に合わせて櫛形電極123の電極パターンの形状を設定することが望ましい。
【0053】
弾性表面波が伝搬する円環状表面111は、上述したように基材110を形成しいている単結晶の結晶方位で決まる所定の経路に沿って形成されている。この経路は三方晶系に属する水晶については発明者らの実験によって確認されている。この経路は水晶のZ軸に関係している。水晶の結晶軸は図4に示されている。
【0054】
図5はこの経路を示す図である。説明の便宜上、Z軸は球状の基材110の中心を通るものとする。結晶方位で決まる所定の経路は4つの経路a,b1,b2,b3を含んでいる。経路aは基材110の表面である球面と、この球面の中心を通り、Z軸と直交する平面との交線である。経路b1,b2,b3はそれぞれ基材110の表面である球面と、この球面の中心を通り、Z軸と平行な3つの平面との交線である。経路b1を含む平面は経路b2,b3を含む平面とそれぞれ60°,−60°の角度をなしている。Z軸を球状の基材110の地軸と考えると、経路aは赤道であり、経路b1,b2,b3は60°間隔で並んでいる6つの経線で構成される。
【0055】
本実施の形態では、弾性表面波は図1に示されているように経路aに沿って伝搬する。即ち、円環状表面111は経路aに沿って形成されている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。経路a,b1,b2,b3の内の少なくとも2つの経路に沿って弾性表面波を伝搬させてもよい。例えば経路aと経路b1に沿って伝搬させる場合、経路a,b1に対向させて弾性表面波励起手段をそれぞれ設ける。また、経路aと経路b1が交差する基材110の部分に弾性表面波を散乱する散乱体又は弾性表面波を反射する反射体を設け、経路aを伝搬する弾性表面波を経路b1に分岐してもよい。経路a上の弾性表面波の乱れが無視できる程度の散乱体又は反射体を設ければ、経路a上で励起され、経路aを周回する弾性表面波を経路aの外で検出できる。
【0056】
櫛形電極123をより詳細に説明する。図6は櫛形電極123の平面図である。櫛形電極123は1対の櫛形パターン123a,123bを備えている。櫛形パターン123aは弾性表面波が伝搬する方向に配列している複数の電極片l1,l2,l3,…を有している。後述するように、弾性表面波が伝搬する方向は図6のように基材110の経路aに一致させられる。櫛形パターン123bは電極片l1,l2,l3,…と互い違いに配列している複数の電極片r1,r2,r3,…を有している。隣り合う電極(例えば電極片r1と電極片l1、又は電極片l1と電極片r2)の間隔は全て等しい。電極片l1,l2,l3,…と電極片r1,r2,r3,…とは経路aに対して垂直に延びている。即ち、Z軸を基材110の地軸とすれば、これらの電極片は経線に沿って延びている。これらの電極片は周期的に並んでいる。即ち、電極片l1,r1を経路aに沿って移動すれば、電極片l2,r2、電極片l3,r3、…にそれぞれほぼ重なる。電極片l1,r1は周期的に並んだ電極片の単位を形成する。この電極片の単位を弾性表面波が伝搬する方向に並べれば、櫛形電極123の1対の櫛形パターン123a,123bが形成される。
【0057】
弾性表面波が伝搬する方向の電極片の単位の長さである電極周期Pは一定である。弾性表面波励起手段により励起される弾性表面波の波長は、基材の球面の半径の1/10以下である。このとき、この波長は基材110全体の固有振動ではなく、電極周期Pにほぼ等しくなる。但し、上述したように、弾性表面波励起手段により励起される弾性表面波の波長、即ち櫛形電極123に対向する基材110の部分を伝搬する弾性表面波の波長は、基材110のその他の部分の波長と異なる場合がある。
【0058】
再び図1を参照して説明する。水晶の基材110のZ軸は水平にされている。上述したように、基材110は、経路aに沿って櫛形電極123の電極片が並ぶように凹部122に対して位置決めされている。
【0059】
櫛形電極123の電極周期は以下のようにして設定される。以下、基材110を等方性の材料で形成されていると見なす。水晶の結晶のYカット面のX軸伝搬のレイリー波の位相速度のある値は3160m/sである。これを弾性表面波の代表的な位相速度と見なす。周波数が15.1MHzの弾性表面波が励起される素子を作るときを考える。波数パラメータが150の素子を作成しようとする。弾性表面波の波長は3160m/s÷15.1MHz=209.3μmより、0.209mmである。従って、電極周期を0.209mmに設定する。尚、周囲長が31.415mmであるから半径は5.0mmである。上述したように、弾性表面波の波長は基材110の球面の半径の1/10以下である。
【0060】
弾性表面波が拡散しないような重なり幅は以下のようにして設定される。150である波数パラメータに対応するコリメート角θcolは、上記数値計算から7.0°である。コリメート角の定義から重なり幅は、
従って、重なり幅を1.22mmに設定する。
【0061】
本実施の形態の弾性表面波素子に、信号振幅20V、時間幅2ナノ秒にインパルス信号を1mm秒置きに入力して、その出力信号の観測を20MHzのローパスフィルターを通して測定した波形を図7に示す。雑音信号が非常に小さく、10回まで周回することが確認できた。
【0062】
次に、櫛形電極の変形例を説明する。図8は本変形例の櫛形パターン123c,123dの平面図を変形した図である。図8では水晶の基材110のZ軸を地軸としたとき、全ての緯線が同じ長さにされている。即ち、地軸に対して垂直に基材110を見ると、基材110は正方形に見える。
【0063】
櫛形パターン123cは経路aに沿って配列している複数の電極片S1,s1,S2,s2,S3,s3,…を有している。これらの電極片は経線方向に延びている。電極片S1,s1、電極片S2,s2、電極片S3,s3…はそれぞれ組みになっている。これらの電極片は周期的に並んでいる。電極片S1と電極片S2の間隔、電極片S2と電極片S3の間隔、…は全て等しい。電極片S1と電極片s1の間隔、電極片S2と電極片s2の間隔、電極片S3と電極片s3の間隔、…は全て等しい。電極片S1,s1を経路aに沿って移動すれば、電極片S2,s2、電極片S3,s3…にそれぞれ重なる。
【0064】
櫛形パターン123dは経路aに沿って配列している複数の電極片T0,T1,T2,T3,…を有している。これらの電極片は経線方向に延びている。電極片T1は電極片s1と電極片S2の間に、電極片T2は電極片s2と電極片S3の間に、それぞれ配置されている。T3以降の電極片Ti(i=3,4,5…)も電極片T1,T2と同様に電極片siと電極片Si+1の間に配置されている。電極片T0は、電極片T0と電極片T1との間に電極片S1,s1が位置するように配置されている。電極片T0,T1,T2,T3,…の内の隣り合う電極片の間隔は全て等しい。電極片T0を経路aに沿って移動すれば、電極片T1,T2,T3,…にそれぞれ重なる。
【0065】
電極片S1,s1,T1、電極片S2,s2,T3、電極片S3,s3,T3…はそれぞれ組みになっている。上記説明からこれらの電極片の組みは周期的に並んでいることは明らかである。電極片S1,s1,T1は周期的に並んだ電極片の単位を形成する。櫛形パターン123c,123dの寸法を説明する。電極周期Pは図8に示されているように、
電極周期P=(電極片S1と電極片S2の間隔)+(経路aに沿った方向の電極片S1の幅)
で表される。電極周期Pを用いて櫛形パターン123c,123dの寸法は、
経路aに沿った方向の電極片S1の幅=P/4
経路aに沿った方向の電極片T1の幅=P/8
電極片T1と電極片S2の間隔=3P/16
となるように設定されている。
【0066】
櫛形パターン123c,123dを上記のように形成すると、経路aに沿って一方向(図8の矢印の方向)に弾性表面波を出力することができる。
【0067】
本実施の形態の櫛形電極123及びこれの上記変形例には様々な修正と変形とが可能である。例えば、電極片は基材110の経線に沿って延びているが、経線に交差する方向に延びてもよい。図9のような各部が縦方向と横方向に直線的に延びる穴を有する板状のフォトマスクを基台121の凹部122に対向させてフォトレジストにより櫛形電極を形成する場合、電極片は経線に交差する方向に延びる。このようなフォトマスクは容易に設計することができ、またフォトレジストを容易に行うことができる。
【0068】
また、隣り合う電極片の間隔(例えば、電極片S1と電極片s1の間隔、電極片s1と電極片T1の間隔等)又は、電極片の組みの間隔(電極片T1と電極片S2の間隔)、又は電極周期を一定にしなくともよい。上述したように、結晶である水晶で形成された球では、波長及び位相速度は結晶方位に従って一般に異なる。電極片が位置する基材110の部分の波長に応じて電極周期等を設定すれば、所望の周波数をもつ弾性表面波を効率よく励起できる。
【0069】
ところで、従来、基材が平板状であり、広帯域用の弾性表面波素子として、電極片の組みが周期的に並んでいる弾性表面波素子が知られている。このような弾性表面波素子を球状の基材110に応用すれば、広い波長域にわたって弾性表面波が励起される。波長と関係しているコリメート角θcolが櫛形電極の重なり幅以上であるような波長をもつ弾性表面波だけが拡散せずに基材110を周回できる。
【0070】
また、本実施の形態では櫛形電極123には高周波電源を有する発信器126が接続されているが、本発明はこれに限定されない。例えば、高周波電源123の代わりに、高周波の電波を受信するアンテナを櫛形電極123に接続してもよい。アンテナに高周波の電波が受信されると、発信器126が接続されていた場合と同様に、櫛形電極123に電界が発生し、弾性表面波が励起される。
【0071】
次に、本発明の第2の実施の形態の弾性表面波素子を説明する。本実施の形態の構成の大部分は、基本的に第1の実施の形態の構成の大部分と同じである。本実施の形態において、第1の実施の形態の図1を参照して説明した構成部材と実質的に同一の構成部材は、第1の実施の形態の対応する構成部材を指示していた参照符号と同じ参照符号を付して詳細な説明を省略する。
【0072】
本実施の形態の構成が第1の実施の形態の構成と異なる点は基材の構成である。本実施の形態の基材には樹脂薄膜が設けられていない。図10は基台121の斜視図である。基台121には、櫛形電極123が基材と間隔を置いて対向するようにスペーサ231,232が設けられている。スペーサ231,232はレジスト樹脂を硬化させて設けられる。スペーサ231,232は櫛形電極123の櫛形パターンが形成されている部分の両側に配置されており、弾性表面波の伝搬に影響を与えないように設けられている。
【0073】
図11は基台121を図10のL11−L11断面線で切断した断面図であり、スペーサ231,232に基材210が保持されている。L11−L11断面線は2つのスペーサ231,232を貫き、櫛形電極123の電極片が並んでいる方向に対して直交する方向に延びている。
【0074】
基材210は、等方性の材料であるガラス材料で形成されている球状部材212と、これを覆う厚さ1000Åの金膜213と、金膜213を覆うZnOのZ軸配向膜214とを有している。図11では、金膜213と配向膜214は球状部材212の表面から一部取り除かれて示されている。配向膜214は圧電性材料である。即ち、基材210の一部は圧電性材料で形成されている。
【0075】
金膜213は蒸着などにより形成される。配向膜214はDCスパッタにより形成される。基材210を回転させながらスパッタを行うことで基材210を一周する環状の領域に配向膜を形成できる。これを利用して基材210の表面の全てにわたって配向膜を形成できる。DCスパッタで用いるガスの濃度やDC高圧電圧の電圧など、また蒸着マスクの作成方法については基本的に公知の技術を利用できる。
【0076】
櫛形電極123により基材210に電界が印加されると、圧電効果によりZnOのZ軸配向膜214が振動する。この結果、基材210の円環状表面211に沿って伝搬する弾性表面波が励起される。円環状表面211は櫛形電極123の電極片が並んでいる方向に沿ってスペーサ231,232の間で延びている。円環状表面211はスペーサ231,232から離れている。これにより、弾性表面波は散乱したり反射されたりせずに円環状表面211を伝搬できる。尚、円環状表面211は、図5を用いて第1の実施の形態で説明した水晶の基材110のように、材料の性質に基づく特定の経路に沿っていない。但し、円環状表面211は基材210の最大円周線に沿って延びている。
【0077】
本実施の形態では櫛形電極123の重なり幅は2mm、電極周期は350μmである。スペーサ231,232の高さ、即ち櫛形電極123と円環状表面211との間隔は第1の実施の形態と同様に10μmである。これは電極周期の1/4以下である。
【0078】
本実施の形態では、櫛形電極123の櫛形が形成されている部分の両側に2つのスペーサが設けられているが、本発明はこれに限定されない。例えば両側に2つずつ設けられていてもよい。あるいは、微小な樹脂の粒子を基材210と櫛形電極123の間に分散させても比較的よいスペーサになり得る。
【0079】
次に、本発明の第3の実施の形態の弾性表面波素子を説明する。本実施の形態の構成の大部分は、基本的に第2の実施の形態の構成と同じである。本実施の形態において、第2の実施の形態の図10及び図11を参照して説明した構成部材と実質的に同一の構成部材は、第2の実施の形態の対応する構成部材を指示していた参照符号と同じ参照符号を付して詳細な説明を省略する。
【0080】
本実施の形態では、第2の実施の形態の基台121の代わりに、基台321を用いている。図13は基台321の斜視図である。基台321の上面には縦方向に延びている角柱状の電極片u1,v1,u2,v2,u3,v3,u4がこの順に横方向に並んでいる。これらの電極片は櫛形電極を形成している。これらの電極片の上面にわたって、基材210の球面の一部沿った形状をもつ凹面が形成されている。電極片u1,v1,u2,v2,u3,v3,u4内の隣り合う電極片はそれぞれ別の電極に接続されている。即ち、電極片u1,u2,u3,u4は電極335に、電極片v1,v2,v3は電極336にそれぞれ接続されている。これらの電極片と基台321とは、ガラスエポキシ材料の切削し、電極片の上面に対応する部分に銅をメッキすることにより形成される。これらの電極片で形成されている櫛形電極の重なり幅と電極周期は第2の実施の形態のものと同じである。電極335,336は所定の回路を介してインピーダンスマッチング回路124(図1参照)に接続されている。電極片u1,v1,u2,v2,u3,v3,u4と電極335,336は弾性表面波励起手段として用いられている。
【0081】
基台321の上面には基材210を保持するための4つの保持部材331,332,333,334が設けられている。保持部材331,332,333,334に基材210が保持されるとき、電極片u1,v1,u2,v2,u3,v3,u4の上面は基材210の表面と間隔を置いて対向する。これらの電極片により基材210に電界が印加されると、基材210の円環状表面211に沿って伝搬する弾性表面波が励起される。円環状表面211は、第2の実施の形態と同様に、最大円周線に沿って延びている。これらの電極片で形成されている櫛形電極は円環状表面211と間隔を置いて対向している。この間隔は第2の実施の形態のものと同じであり、上記電極周期の1/4以下である。保持部材331,332,333,334は円環状表面211の両側に位置する。
【0082】
このように弾性表面波素子を構成しても、第2の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0083】
本実施の形態では櫛形電極は7つの電極片u1,v1,u2,v2,u3,v3,u4で形成されているが、本発明はこれに限定されない。電極片の数は2〜6つでもよいし、8以上でもよい。
【0084】
上記第1から第3の実施の形態には様々な修正と変形とが可能である。例えば、第1の実施の形態の水晶の基材110は第2の実施の形態の基台121又は第3の実施の形態の基台321に保持されてもよい。この場合、第1の実施の形態の基材110には樹脂薄膜が形成されない。基材110は、基材110の経路aが第1の実施の形態の櫛形電極123又は第2の実施の形態の櫛形電極の電極片が並ぶ方向に沿うように、第2の実施の形態の基台121又は第3の実施の形態の基台321に位置決めされる。
【0086】
次に、本発明の第1の実施の形態の分析方法を説明する。先ず、少なくとも球面の一部で形成されていて円環状に連続している円環状表面を有している基材を用意する(基材用意工程)。本実施の形態では、圧電性材料である水晶の単結晶で形成された球状の基材を用意する。この基材は水晶の表面に形成されていて、人の所定の体内物質と反応する反応膜を有している。即ち、反応膜は円環状表面に沿って形成されている。本実施の形態では体内物質を被検物質として分析する。反応膜は反応部として用いられている。反応膜は体内物質と反応すると硬度が増す材料で形成されている。本実施の形態では基材に水晶が用いられているが、水晶と同じ三方晶系であり、圧電性材料であるLiNbO3、LiTaO3等の単結晶を用いてもよい。
【0087】
次に、反応膜と体内物質を反応させる(反応工程)。反応させるには、基材を人に経口投与する(投与工程)。このとき比較的多数の基材を投与する。基材の反応膜は体内物質と反応し硬化する。これらの基材を排泄物から取り出すことにより、投与工程で経口投与した基材を回収する(回収工程)。このとき、経口投与した基材210の全てを回収する必要はない。反応工程には多数の基材が必要であるが、基材は殆ど加工を要しないために非常に安価であるので、反応工程にかかるコストは比較的低い。
【0088】
次に、回収した基材を図1を用いて説明した第1の実施の形態の弾性表面波素子の基台121の凹部122に載置する。尚、図1を参照して説明した構成部材と実質的に同一の構成部材は、第1の実施の形態の弾性表面波素子の対応する構成部材を指示していた参照符号と同じ参照符号を付して詳細な説明を省略する。載置されるとき、基材110は、基材110の経路aが櫛形電極123の電極片が並ぶ方向に沿うように、位置決めされる。経路aは図5を用いて説明したように、水晶の基材110のZ軸を地軸としたときの赤道である。経路aに沿って上記円環状表面が形成されている。基材110はこのZ軸が水平にされたときに適切に位置決めされる。Z軸を地軸としたとき北極と南極に対応する部分には印が設けられている。この印は基材110をエッチングするなどしてくぼみを作るなどして形成してもよい。位置決め後、円環状表面に沿って弾性表面波を伝搬させる(伝搬工程)。尚、基材110は、基材110の経路b1,b2,b3が櫛形電極123の電極片が並ぶ方向に沿うように、位置決めされてもよい。
【0089】
次に、伝搬工程で伝搬させられた弾性表面波を検出する(検出工程)。
【0090】
この後、検出工程で検出された弾性表面波と、基材用意工程で用意された基材の円環状表面を伝搬する弾性表面波とを比較する。後者の弾性表面波は体内物質と反応していない反応膜を有している基材の円環状表面を伝搬する弾性表面波である。この弾性表面波は予め検出しておく。体内物質の性質、例えば特定の化学物質の濃度に応じて、体内物質と反応した反応膜の硬度は変化する。そして、反応膜の硬度に応じて弾性表面波の周波数や速度は変化する。即ち、体内物質の性質に応じて、検出工程後の弾性表面波と基材用意工程直後の弾性表面波の周波数や速度の差は変化する。これを利用して化学物質の性質を分析することができる。
【0091】
本実施の形態では、人の体内物質を被検物質として分析していたが、動物の体内物質を被検物質として分析してもよい。
【0092】
次に、本発明の第2の実施の形態の分析方法を説明する。本実施の形態の分析方法は例えば、配管内のアルカリ濃度を評価するために用いられる。先ず、基材用意工程を説明する。先ず直径3mmの水晶の単結晶で形成された球状の基材を用意する。この基材は水晶の表面に形成されていて、アルカリ溶液に溶出するレジスト樹脂膜を有している。即ち、レジスト樹脂膜は円環状表面に沿って形成されている。レジスト樹脂膜は反応部を形成している。水晶の基材のZ軸を地軸としたとき北極と南極に対応する部分には印が設けられている。
【0093】
続く反応工程では基材を配管に入れ、配管内でレジスト樹脂膜をアルカリ溶液と反応させる。レジスト樹脂膜はアルカリ溶液に溶出し膜の厚さはうすくなる。反応後、基材を配管から回収する。
【0094】
回収後、第1の実施の形態の分析方法と同様に、伝搬工程、検出工程及び比較工程を行う。本実施の形態では、レジスト樹脂膜の厚さに応じて弾性表面波の周波数や速度が変化することを利用して配管内のアルカリ溶液を分析する。
【0095】
上記第1又は第2の実施の形態の分析方法では硬化又は溶出する反応部を用いているが、本発明はこれらに限定されない。被検物質と遊離する、結合する、分解するなどをして反応する様々な反応部を含む。
【0096】
尚、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることは勿論である。
【0097】
【発明の効果】
以上詳述したことから明らかなように、本発明に従った弾性表面波素子においては、極めて多い回数の弾性表面波の周回を実現することで高い精度の信号処理や評価ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態における弾性表面波素子の構成を示す斜視図である。
【図2】弾性表面波の振幅を計算するために用いた座標系を示す図である。
【図3】(A)、(B)、(C)及び(D)は、図2の座標系を使用して作成された式により計算された波数パラメータm(円周の長さと弾性表面波の波長の比)と開口半角(振動手段を設ける幅の1/2)を変えて得られた弾性表面波が球状の基材の表面を伝搬する4つの状態を概略的に示す図である。
【図4】水晶の結晶軸を示す図である。
【図5】弾性表面波が伝搬する経路を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における弾性表面波素子の櫛形電極の平面図である。
【図7】図1の弾性表面波素子で測定された弾性表面波の波形を示す図である。
【図8】図6の櫛形電極の変形例の平面図を変形した図である。
【図9】櫛形電極のフォトマスクの穴の平面図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態における弾性表面波素子の基台の斜視図である。
【図11】図10のL11−L11断面線で切断した基台の断面図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態における弾性表面波素子の基台の斜視図である。
【符号の説明】
110 基材
111 円環状表面
121 基台
123 櫛形電極
210 基材
211 円環状表面
321 基台
Claims (4)
- 少なくとも球面の一部で形成されていて円環状に連続している円環状表面を有しており、圧電性材料で形成されている基材と、
円環状表面と間隔を置いて対向しており、前記円環状表面に沿って伝搬する弾性表面波を励起する弾性表面波励起手段と、
を備えていて、
前記弾性表面波励起手段は、前記円環状表面に沿って設けられ、高周波電源に接続される櫛形電極を含んでおり、
前記櫛形電極と円環状表面との間隔が、この櫛形電極の電極周期の1/4以下である、
ことを特徴とする弾性表面波素子。 - 前記基材は、水晶の単結晶、LiNbO3の単結晶およびLiTaO3の単結晶からなる群から選択される単結晶で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波素子。
- 前記弾性表面波励起手段により励起される弾性表面波の波長が、基材の球面の半径の1/10以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の弾性表面波素子。
- 前記櫛形電極の重なり幅は、前記基材の球面の直径の半分以下でこの球面の半径の1/100以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の弾性表面波素子。
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