JP3978064B2 - 重質炭化水素油の2段階水素化処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、重質炭化水素油の水素化処理方法、特に炭化水素油の中でも重質な留分である減圧残渣油の水素化処理において高性能を発揮する触媒組み合わせ方法に関する。
より詳しくは、硫黄、金属、アスファルテン等の夾雑物(不純物)を多量に含有する重質炭化水素油の水素化処理において、機能の異なる触媒同士を組み合わせて用いることにより、目的とする水素化脱硫(HDS)、水素化脱金属(HDM)及び水素化脱アスファルテン(asphaltene removal)を進めながら、且つ装置運転時に熱交換器に堆積して運転の障害となるセディメント生成を抑制できる水素化処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
石油精製時に生じる、例えば538℃以上の沸点を有する成分を50重量%以上含むような常圧残油(Atmospheric residue;AR)や90重量%以上含む減圧残油(Vacuum Residue;VR)は重質炭化水素油と呼ばれている。このような重質炭化水素油を水素化処理して、硫黄等の夾雑物の除去並びに付加価値の高い軽質油への転換を行って利用に供することが強く求められている。
こうした重質留分の分解により生成される軽質油は、相当する直留留分に比べて高硫黄濃度であるため、再度脱硫、水素化処理を必要とする。
【0003】
水素化・分解処理によって除去される対象である夾雑物としては、硫黄、残留炭素(Conradson Carbon Residue;CCR)、各種金属、窒素、アスファルテンが挙げられるが、今日、触媒などの改良によってこうした夾雑物を高度に除去できるようになった。
しかし、アスファルテンは縮合芳香族化合物の集合体であり、周囲の溶剤成分とバランス良く解け合っているので、過度にアスファルテンを分解した場合、凝集して粒子状物質(スラッジ;sludge)や堆積物(セディメント;sediment)が生成してしまう。
【0004】
かかるセディメントとは、詳しくはShell Hot Filteration Solid Test(SHFST)により試料を試験することで測定される沈殿物であり(Van Kerknoortらの文献、J. Inst. pet. 37 p.596-604(1951)参照)、通常の含有量は、精製工程中のフラッシュドラム缶出液から回収される沸点が340℃以上の生成物中において約0.19〜1重量%程度であると言われている。
【0005】
セディメントは、石油精製時に熱交換器や反応器等の装置内に沈殿し堆積するので、流路を閉塞させ装置の運転に大きな支障をきたす恐れがある。特に減圧残渣油を多く含む、より重質な炭化水素油の水素化処理においては、アスファルテン量が多いことによりセディメントの生成が顕著となる。
このため、高度な水素化処理を達成しつつ、同時にセディメントの生成をできるだけ少なくすることが水素化処理用触媒の改良において新たな課題となっている。
【0006】
一方、重質留分の分解により生成される軽質油は、相当する直留留分に比べ硫黄濃度が高いので、再度脱硫、水素化処理を必要とする。そこで低硫黄の軽質油を製造するには、重質留分の水素化・分解においてセディメント生成を抑制し、安定運転を行いつつ、分解軽質留分に対する脱硫性能の高い触媒または触媒の組み合わせが必要とされる。
【0007】
本発明者らは、2段階水素化処理における第1段階と第2段階で異なる機能を持つ触媒を組み合わせて使用し、さらに第2段階で特定の触媒組成と細孔径分布を有する2種類の触媒を混在させて使用することにより、それぞれの触媒を単独で使用した場合よりもセディメント生成の抑制に優れ、なおかつ軽質留分に対する高度な脱硫性能を発揮することを見出した。
すなわち、特定の細孔径を有する異なる触媒を3種類(第1段階で1種及び第2段階で2種)組み合わせて用いることにより、重質な留分を含む減圧残渣油に対し、運転時支障となるセディメントの生成を極力抑制しつつ、高度に脱硫された経済的付加価値の高い白油製品を高収率で生産できる方法を見出した。
【0008】
本発明は、より具体的には、水素化処理の第1段階でアスファルテン分解、高脱金属用の触媒により、セディメントの生成原因となるアスファルテンを極力低減し、続いて第2段階(最終段階)に高脱硫性能を示す触媒を配することで、所望の脱硫生成油を得ながら、セディメント生成の少ない運転を行うことができる。特に第2段階では、セディメントの生成を抑制しながら高度の脱硫を行う必要があるため、特定の触媒組成、細孔径分布を持つ異なる2種類の触媒を混在させて使用することにより、これまで困難とされていたセディメントの抑制維持と高脱硫・水素化が達成される。
【0009】
一方、従来技術においては、以下のとおりセディメントの抑制維持と水素化高脱硫の両立が十分に図られていない。
特公平7−65055号公報には、硫黄不純物と金属性不純物を含む炭化水素油の重質分を少なくとも2段階で変換させる水素化処理方法が開示されている。当該公報では、第1段階で水素化脱金属を目的として0.1〜5重量%の金属酸化物触媒を使用し、続く第2段階で水素化脱硫を目的として同じく金属酸化物として7〜30重量%の金属酸化物触媒で水素化処理する方法が提案されている。この方法によると第1段階で脱金属と水素化クラッキングを行い、第2段階で入念な脱硫を行うことにより残渣分を処理することがよいとされている。特に『ウニ状』の構造を持ったアルミナ凝集状態の触媒の組み合わせが顕著な結果を示している。
【0010】
しかし当該技術によると、第1段階で必要とされる脱金属機能は向上するものの、第1段階で使用される触媒の触媒担持量が低いため、脱硫、水素化機能が低下し、このため第2段階で高脱硫機能が必要となり、どうしても触媒担持量の多い触媒を必要とする。また第2段階で高度な脱硫を行う場合は触媒は高度に発熱するが、この時、分解率が進むことに伴いアスファルテン分の凝集を起こす。当該発明の実施例を見る限りアスファルテン凝集の防止策が十分でなく、その結果、装置の運転上支障がでる恐れがある。
【0011】
特開平8−325580号公報には、重質石油原料の完全な接触水素化転化法が開示されている。当該方法では、第1段階にアルミナ・シリカ及びこれらの組み合わせから選ばれる担体物質に、カドミウム、クロム、コバルト、鉄、モリブデン、ニッケル、スズ、タングステン及びこれらの組み合わせからなる選ばれる活性金属酸化物を合計2〜25重量%担持した触媒を供給し、反応温度438〜468℃、水素分圧105〜245kg/cm2、空間速度0.3〜1.0 (Vf/hr/Vr)の反応条件で反応させ、次いで第2段階で同様の触媒を供給し、反応温度371〜427℃、水素分圧105〜245kg/cm2、空間速度0.1〜0.8(Vf/hr/Vr)の反応条件で水素化転換する方法が記載されている。
当該方法は、重質石油原料である「H−Oil(登録商標)」の接触水素化転化法であり、未反応残留分の処理に対しそれらの再循環によって解決を提案するものである。
【0012】
また、原料のより完全な水素化転換及び触媒の効果的な使用を達成するため、第1段階の反応器に、より高い反応温度及びより低い触媒活性を与え、第2段階の反応器に、より低い反応温度及びより高い触媒活性を与えることによって、反応条件の改良された調和及び各段階の反応器に必要な触媒活性を備えるとしている。
【0013】
しかし、当該公報に開示されている第1段階の高温反応は、アスファルテンの熱縮合を促進させ、一方で油の熱分解を伴って生成するレジン質などのフラグメントを安定化できなくなり、第2段階で触媒の急激なコーク劣化を引き起こしかねない。
【0014】
また、当該方法では、第2段階で引き起こされるアスファルテンの凝集、セディメント析出を防止するのに適した触媒を使うことにはなっていないので、この点で装置の運転時に障害となる恐れがある。
【0015】
特公平6−53875号公報には、重質炭化水素液体供給原料の高転化用多段階接触方法が記載されている。第1段階では固定床または沸騰床反応器で、反応温度が415〜455℃で水素分圧が70〜211kg/cm2、空間速度が0.2〜2.0、第2段階が沸騰床反応器で、反応温度が415〜455℃、同じく水素分圧が70〜211kg/cm2、空間速度が0.2〜2.0である多段接触水素化処理方法が記載されている。使用できる触媒は、アルミナ、シリカ及びこれらの組み合わせ群から選ばれた担体物質に、カドミウム、クロム、コバルト、鉄、モリブデン、ニッケル、スズ、タングステン及びこれらの混合物から選ばれた活性金属酸化物を含有する触媒である。当該方法では、高分解率とするため真空ボトムズを再循環させて高分解率の達成を図っているものの、高分解率運転時に支障となるアスファルテン凝集に対する防止策は示されておらず、装置の運転時に問題となる。
【0016】
また使用触媒についても触媒に対する記載は、水素転化反応の促進に対して、あるいは金属含有量の高い原料油の場合には、脱金属型触媒を第1段階反応で使用することとの内容があるだけで、実際の触媒の開示がない。また、触媒の開示に関し、当該公報は不十分であるので、運転時支障となるセディメントの析出に対して効果的な結果が期待できるとは判断できない。
よって、上記の先行技術による触媒組み合わせでは、重質炭化水素油の水素化分解で、高度な脱硫、分解を達成しながら、且つ装置の運転制約となるセディメント生成を抑制する効果が十分に図られていない。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、硫黄、残留炭素、金属、窒素、アスファルテン等の夾雑物を多量に含有する重質の炭化水素油、特に減圧残油留分を80%以上含む重質油を高度に水素化処理して適度に除去できるよう機能を考慮した触媒を組み合わせ、また第2段階で特定の細孔径分布、触媒組成を有する2種類の異なる触媒を混在させることにより効果的な水素化処理方法を提供することを目的とする。
特に、前記従来技術では十分な解決がなされていない、アスファルテンの高度な分解除去、転化率の増加に随伴して生成するセディメントの低減に対し優れた性能を示し、なおかつ脱硫性能を高くできる触媒組み合わせの提供を目的としている。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、接触2段水素化転化法において、第1段階で特定の細孔径分布を有する触媒を用いて重質炭化水素油中の夾雑物の低減、特に脱金属とアスファルテン凝集防止に効果的な脱アスファルテンを効率的に達成し、次いで第2段階で第1段階とは異なる特定の細孔径分布、触媒組成を有する触媒を2種類混在させて用いることにより、これまでに問題とされてきた水添とセディメントとの関係を改善できることを見出し、特に高度な脱硫、水添反応を達成しつつ、アスファルテン凝集によるセディメント生成を抑制し、安定した運転ができる重質油の接触水素化処理方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0019】
すなわち、第1段階で特定の細孔径分布を有する触媒を用い、続く第2段階で、第1段階とは異なる特有の細孔径分布、触媒組成を有する2種類の異なる機能の触媒を混在させて用い、これによる相乗効果によって、高度に脱硫、水添は進むが、セディメントの生成が抑制された安定運転を可能とすることを見出した。本発明によれば、特に重質な炭化水素油の水素化処理に対して効果が大きい。
【0020】
より具体的には、2段階からなる水素化処理方法において、第1段階の反応装置にある特定の細孔径分布を有する触媒を供給し、セディメントの生成を促進させるアスファルテンの分解を高度に行ないつつ、適度な水添反応を行ない、続く第2段階の反応装置では、脱硫性能を向上させる細孔径分布、触媒組成の触媒と、適度なアスファルテン分解を行わせる細孔径分布、触媒組成の触媒を供給することで、高度な脱硫を達成しながら、セディメントを極力生成させない方法を提供するものである。
また、第1段階で高度にアスファルテンを除去することにより、第2段階の熱分解で触媒上に堆積する好ましくないコーク生成を抑えて触媒性能の低下を防ぐ効果をもたらす。
【0021】
要するに、本発明の水素化処理方法は、重質炭化水素油を、下記触媒(1)が充填された第1の反応装置において水素存在下、触媒(1)と接触させて第1段階の水素化処理を行い、次いで第1段階で得られた水素化処理油を、下記触媒(2a)及び触媒(2b)が混在して充填された第2の反応装置において水素存在下、触媒(2a)及び触媒(2b)と接触させて第2段階の水素化処理を行うことを特徴とする重質炭化水素油の水素化処理方法である。
【0022】
触媒(1)は多孔質のアルミナ担体に、触媒重量を基準として周期表の第6A族金属の酸化物が7〜20重量%、周期表の第8族金属の酸化物が0.5〜6重量%で担持され、触媒の
(a)比表面積が100〜180m2/g、
(b)全細孔容積が0.55ml/g以上であり、
触媒の細孔分布径が全細孔容積を基準として
(c1)直径が200Å以上の細孔容積の割合が全細孔容 積の50%以上、
(c2)直径が2,000Å以上の細孔容積の割合が全細孔容積の10〜30%、
(c3)直径が10,000Å以上の細孔容積の割合が全細孔容積の0〜1%
である水素化処理用触媒である。
【0023】
触媒(2a)は多孔質アルミナ担体に触媒重量を基準として周期表の第6A族金属の酸化物が7〜20重量%、周期表の第8族金属の酸化物が0.5〜6重量%の量で担持され、触媒の
(a)比表面積が100〜180m2/g、
(b)全細孔容積が0.55ml/g以上であり、
触媒の細孔分布径が全細孔容積を基準として
(d1)直径が100〜1,200Åの容積の割合が85%以上、
(d2)細孔の直径が4,000Å以上の容積の割合が0〜2%、
(d3)細孔の直径が10,000Å以上の容積の割合が0〜1%、
(d4)直径が200Å以上の細孔容積の割合が全細孔容積の50%以上
である水素化処理触媒である。
【0024】
触媒(2b)は耐熱性無機多孔質担体に少なくとも1種の水素化活性成分が担持され、触媒の
(a)比表面積が150m2/g以上、
(b)全細孔容積が0.55ml/g以上であり、
触媒の細孔分布径が全細孔容積を基準として
(d1)直径が100〜1,200Åの細孔容積の割合が全細孔容積の75%以上、
(d2)直径が4,000Å以上の容積の割合が0〜2%、
(d3)直径が10,000Å以上の細孔容積の割合が全細孔容積の0〜1%、
(d4)直径が200Å以上の細孔容積の割合が全細孔容積の50%未満
である水素化処理用触媒である。
【0025】
また、本発明は、触媒(2b)の耐熱性無機多孔質担体が、シリカ量として3.5重量%以上含むシリカ−アルミナ担体であることを特徴とする。
また、本発明は、触媒(2b)が、シリカ量として3.5重量%以上含むシリカ−アルミナ担体に、触媒重量を基準として周期表の第6A族金属の酸化物が7〜20重量%、周期表の第8族金属の酸化物が0.5〜6重量%、周期表の第1A族金属の酸化物が0.1〜1重量%の量で担持されている水素化処理用触媒であることを特徴とする。
【0026】
また、本発明は、触媒(2b)が、シリカ量として3.5重量%以上含むシリカ−アルミナ担体に、触媒重量を基準として周期表の第6A族金属の酸化物が7〜20重量%、周期表の第8族金属の酸化物が0.5〜6重量%、周期表の第1A族金属の酸化物が0.1〜1重量%、周期表の第5B族元素の酸化物が0.1〜2重量%の量で担持されている水素化処理用触媒であることを特徴とする。
【0027】
また、本発明は、重質炭化水素油が減圧残油留分を80重量%以上含む重質油であることを特徴とし、第1段階及び第2段階において、温度350〜450℃、圧力5〜25MPaの条件下で水素化処理を行うことを特徴とする。
【0028】
また、第2段階の反応装置に充填された触媒における触媒(2b)の混在割合が1重量%以上であることを特徴とし、さらに重質炭化水素油を沸騰床の様態で水素化処理触媒と接触させることを特徴とする。
【0029】
【発明の実施の形態】
〔I〕触 媒
本発明における水素化処理方法の第1段階で使用される水素化処理用触媒(触媒(1))、及び第2段階で使用される水素化処理用触媒(触媒(2a)及び触媒(2b))は、それぞれ水素化活性を有する金属酸化物である触媒物質と当該触媒物質を担持する担体とから構成される。
【0030】
本発明において触媒物質に使用される成分は、触媒(1)及び触媒(2a)に関しては、周期表(例えば、「岩波理化学辞典 第4版」、岩波書店(1987年発行)の見返し掲載の「II 元素の周期表 (a)長周期型」を参照)の第6A族金属及び第8族金属の酸化物の2成分からなる組成物である。
【0031】
触媒(2b)には、少なくとも1種の水素化活性成分が担持されるが、かかる成分としては、周期表の第1A族金属(リチウム、ナトリウム等)、第2A族金属(マグネシウム、カルシウム等)、第6A族金属(クロム、モリブデン、タングステン等)、第8族金属(鉄、コバルト、ニッケル、白金、パラジウム等)、第4B族元素(スズ、鉛等)や第5B族元素(リン、砒素、アンチモン等)が挙げられる。
【0032】
触媒(2b)に担持される水素化活性成分は、上記周期表の第6A族金属、第8族金属及び第1A族金属の3成分からなる組成物が好ましく、特に上記周期表の第6A族金属、第8族金属、第1A族金属及び第5B族元素の酸化物の4成分からなる組成物が好ましい。
なお、上記第1A族、第2A族、第4B族、第5B族、第6A族、第8族は、A、B亜族に分けない18族長周期型周期表(IUPAC方式)の第1族、第2族、第14族、第15族、第6族、第8〜10族にそれぞれ対応する。
【0033】
本発明の触媒に使用される第8族金属は、鉄、コバルト、ニッケルから選ばれる少なくとも1種であるが、性能及び経済性の観点からコバルト、ニッケルが好ましく、中でもニッケルが好ましい。
また第6A族金属は、クロム、モリブデン、タングステンから選ばれる少なくとも1種であるが、性能及び経済性の観点からモリブデンが好ましい。
【0034】
また、触媒(2b)の好適な態様として、担体がシリカを含有するシリカ−アルミナ担体である場合に、第6A族金属及び第8族金属に加えて使用される第1A族金属としては、リチウム、ナトリウムやカリウム等が挙げられるが、性能の点からナトリウムが好ましい。
【0035】
また、触媒(2b)の特に好適な態様として第6A族金属、第8族金属及び第1A族金属に加えてさらに担持される第5B族元素は、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマスから選ばれる少なくとも1種であるが、性能の点からリンが好ましい。
【0036】
前述のとおり重質炭化水素油の水素化処理においては水素化を高めるに伴ってセディメント生成も上昇する傾向にあるが、本発明においては、第2段階に特定の細孔構造と活性成分を有する触媒を一部混在させることによって、より高度な水素化とセディメント生成抑制とをバランス良く達成することができるのである。
【0037】
完成後の触媒重量を基準(100重量%)とした場合における上記の各金属酸化物の担持量は次の通りである。
すなわち、触媒(1)、触媒(2a)及び触媒(2b)に共通して担持される第6A族金属の酸化物は、7〜20重量%であり、8〜16重量%が好ましい。かかる金属酸化物が7重量%未満では触媒性能の発現が不十分となり、一方、20重量%を超えても触媒性能の増分はない。
【0038】
また、触媒(1)、触媒(2a)及び触媒(2b)に共通して担持される第8族金属酸化物は0.5〜6重量%であり、1〜5重量%が好ましい。0.5重量%未満では触媒性能の発現が不十分で、一方、6重量%を超えても触媒性能の増分はない。
【0039】
さらに、第1A族金属酸化物が触媒(2b)に担持される場合の量は、0.1〜1重量%であり、好ましくは0.1〜0.5重量%である。0.1重量%未満では表面活性を制御するのに十分でなく、セディメント生成が増加し好ましくない。1重量%を超えると、触媒性能の発現が不十分となる。
【0040】
また、第5B族元素酸化物が触媒(2b)に担持される場合の量は、0.1〜2重量%であり、好ましくは0.1〜1.0重量%である。2重量%超過では、アスファルテン以外への水素化が進みすぎ、その結果セディメントの急激な増加を招く。一方、0.1重量%未満では効率的な水素化が図られない。
【0041】
次に触媒を構成する担体について説明する。
触媒(1)及び触媒(2a)の担体は、工業的に生成される方法で得ることができる多孔質アルミナで、その代表としてアルミン酸ソーダ(アルミン酸ナトリウム)と硫酸アルミニウムを共沈させることにより得られるものを用いることができる。この際得られるゲル(擬ベーマイト)を、乾燥、成形、焼成してアルミナ担体として得る。
【0042】
一方、触媒(2b)の担体として用いる耐熱性無機多孔質担体は、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、マグネシア、酸化亜鉛、チタニア、ジルコニア、ゼオライト、粘土鉱物やこれらの複合酸化物が例示されるが、中でも経済性及び性能上の観点からシリカ−アルミナが好ましい。
触媒(2b)の担体がシリカ−アルミナ担体である場合は、シリカ源として水ガラス(ケイ酸ソーダ)を使用してアルミナ沈殿時に同時に共沈する方法で得ることもできるし、次工程の浸漬時に水溶性シリカ源の溶液を浸漬することでも良い。
【0043】
担体の具体的な製造方法は以下のとおりである。
まず、水道水または温水を蓄えたタンクに、アルミン酸ソーダ、水酸化アンモニウムや水酸化ナトリウム等のアルカリ溶液を入れ、次いで硫酸アルミニウムや硝酸アルミニウム等の酸性アルミニウム溶液を用いて加混合を行う。触媒(2b)がシリカ−アルミナ担体である場合の製造法としては、シリカ源として、予め水ガラスを蓄えたタンクとしてもよい。
【0044】
混合溶液中の 水素イオン濃度(pH)は反応が進むにつれて変化するが、酸性アルミニウム溶液の添加が終了する時のpHが7〜9、混合時の温度は第1段階の触媒(1)には70〜85℃、第2段階の触媒(2a)、触媒(2b)には60〜75℃であることが好ましい。また適当な大きさの細孔を得るため、保持時間は約0.5〜1.5時間が好ましく、特に40分〜80分が好ましい。かかる加混合の諸条件を適宜調整することで所望のアルミナ水和物、またはシリカ−アルミナのゲルが得られる。
【0045】
次に、得られたアルミナ水和物またはシリカ−アルミナゲルを溶液から分離した後、工業的に広く用いられている洗浄方法、例えば水道水や温水を用いて洗浄処理を行い、ゲル中の不純物を除去する。
次に混練機を用いてゲルの成形性を向上させた後、成型器にて所望の形状に成形する。触媒活性成分を担持する前に、所望の形状に成形しておくことが好ましく、直径が0.9〜1mm、例えば0.95mm、長さが2.5〜10mm、例えば3.5mmの円柱形状の粒子が好適である。
【0046】
最後に、成形されたアルミナゲル、またはシリカ−アルミナゲルに乾燥及び焼成処理を施す。
乾燥条件は、空気存在下で常温から200℃の温度で、また焼成条件は、空気存在下で300〜950℃、好ましくは600〜900℃の温度条件で、30分間から2時間程度行う。また焼成処理時には水蒸気を導入して、アルミナ粒子、シリカ−アルミナ結晶の成長をコントロールすることもできる。
【0047】
以上の製造方法によって、後述する完成触媒の比表面積や細孔分布とほぼ一致する性状を備えたアルミナ担体、またはシリカ−アルミナ担体を得ることができる。
なお、前述の混練し成形する工程において、成形助剤として酸、例えば硝酸、酢酸、蟻酸を添加し、あるいは水を添加してアルミナゲル、シリカ−アルミナゲル中の水分量を調整することにより、細孔分布の調整を適宜行うこともできる。
【0048】
触媒物質の金属成分を担持する前の担体の比表面積は、完成後の触媒において特定範囲の比表面積や細孔分布をもたらすために、触媒(1)のアルミナ担体は100〜200m2/g、特に130〜170m2/gが好ましく、また全細孔容積が0.5〜1.2ml/g、特に0.7〜1.1ml/gが好ましい。
一方、触媒(2a)のアルミナ担体、及び触媒(2b)のシリカ−アルミナ担体の比表面積は、完成後の触媒において特定範囲の比表面積や細孔分布をもたらすために180〜300m2/g、特に185〜250m2/gが好ましく、また全細孔容積が0.5〜1.0ml/g、特に0.6〜0.9ml/gが好ましい。
【0049】
触媒(2b)の耐熱性無機多孔質単体がシリカ−アルミナ担体である場合のシリカ含有量は、触媒物質を含めた完成された触媒を基準として(100重量%)として、3.5重量%以上、好ましくは4.5〜10重量%である。3.5重量%未満では触媒性能の発現が不十分である。
【0050】
本発明の触媒は以下に述べる方法で製造され完成する。
前記の触媒物質用の各種金属成分をアルカリ性または酸性の金属塩とし、この金属塩を水に溶解した浸漬液に、触媒(1)、触媒(2a)、触媒(2b)の担体を浸漬し担持させる。この場合、複数の金属塩からなる混合水溶液に浸漬して同時に担持させても良いし、あるいは個別に金属塩水溶液を調製して浸漬担持させても良い。
また、浸漬液の安定化のために少量のアンモニア水、過酸化水素水、グルコン酸、洒石酸、クエン酸、リンゴ酸、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)等を添加することが好ましい。
【0051】
第8族金属の金属水溶液は、通常水溶性の炭酸塩または硝酸塩を使用し、例えば硝酸ニッケルの10〜40重量%水溶液であり、好ましくは 25重量%水溶液が使用される。また、第6A族金属は水溶性のアンモニウム塩を使用でき、例えばモリブデン酸アンモニウムの10〜25重量%水溶液であり、好ましくは15重量%水溶液が使用される。
【0052】
触媒(2b)に特有な水素化活性成分である第1A族金属は、水溶性の炭酸塩または硝酸塩を使用でき、例えば硝酸ナトリウムが使用される。
同様に触媒(2b)に特有な水素化活性成分である第5B族元素は、リン化合物が使用でき、例えば正リン酸(オルトリン酸)が使用される。
【0053】
30〜60分間程度の時間、担体を金属塩水溶液に浸漬した後、空気気流下で常温〜200℃の温度で、0.5〜16時間程度乾燥を行い、次いで空気気流下で200〜800℃、好ましくは450〜650℃の加熱条件で1〜3時間程度焼成(か焼)を行って各金属酸化物が担持された触媒が完成する。
【0054】
上述の製法により完成した細孔を多数有する多孔質触媒が、それらを組み合わせることによって所望の目的を達成するためには、以下の比表面積や細孔径分布を有することが重要である。
【0055】
触媒(1)の比表面積は100〜180m2/g、好ましくは150〜170m2/gである。比表面積が100m2/g未満では触媒性能が不十分となる。一方180m2/gを超えると、所望の細孔径分布が得られないことが多く、仮に添加物などにより得られたとしても高い比表面積による水添活性の増加により、セディメントの増加を引き起こすことになる。
【0056】
触媒(2a)の比表面積は100〜180m2/g、好ましくは150〜170m2/gである。比表面積が100m2/g未満では触媒性能が不十分となる。また180m2/gを超えても触媒性能の増分はない。
触媒(2b)の比表面積は150m2/g以上、好ましくは185〜250m2/gである。比表面積が150m2/g未満では触媒性能が不十分となる。
ここで比表面積は窒素(N2)吸着によるBET式で求められる比表面積である。
【0057】
さらに、水銀圧入法で測定される全細孔容積は触媒(1)、触媒(2a)、触媒(2b)に共通して0.55ml/g以上、好ましくは0.6〜0.9ml/gである。0.55ml/g未満では触媒性能が不十分となる。
ここで水銀圧入法による測定とは、例えばマイクロメリティクス(Micromeritics)社製の水銀多孔度測定機器「オートポア(Autopore)II」(商品名)を使用し接触角140°、表面張力480dyne/cmの条件下で測定して得られる値である。
【0058】
また、触媒(1)では直径が200Å以上の容積の割合が全細孔容積の50%以上、好ましくは60〜80%の範囲である。(ここで本明細書において記号「Å」は長さの単位であるオングストロームを表し1Å=10-10mである)。直径が200Å以上の細孔の容積割合が全細孔容積の50%未満では、触媒性能、特にアスファルテン分解性能の低下を招き、セディメントの生成の抑制が十分でない。なお、金属酸化物が担持される前の担体においては、該細孔の総容積割合は全細孔容積の43%以上、好ましくは45〜70%の範囲である。
【0059】
また、触媒(1)では、直径が2,000Å以上の細孔の容積割合が、全細孔容積の10〜30%である。かかる割合が10%未満では、反応装置の最終出口で脱アスファルテン性能の低下を招き、セディメントの生成が多くなり、30%を超えると触媒の機械強度が極端に低くなってもろくなり、商業使用において十分耐えることができない。
【0060】
また、特に減圧残油の多い原料油を処理する場合、触媒(1)では、直径が100〜1,200Åの細孔の総容積割合は、前記全細孔容積を基準とした場合に82%以下、特に80%以下とすることが好ましい。かかる割合が82%を超えると2,000Å以上の細孔の総容積の割合が相対的に減少し、第1段階に必要とされる超重質留分の触媒細孔内拡散が不十分となることで減圧残油留分の分解率の低下を招きやすくなるからである。
【0061】
触媒(1)では、その細孔の直径が500〜1,500Åの細孔容積は0.2ml/g未満が好ましい、0.2ml/gを超えた場合、脱硫、脱金属反応に有効な直径300Å以下の細孔が相対的に減少することで、触媒性能が低下しやすくなるからである。さらに、直径300Å以下の細孔が超重質成分で閉塞されやすくなることから触媒寿命の短命化も懸念されるからである。
また、触媒(1)の細孔径分布として、直径が100Å以下の細孔容積の割合が全細孔容積の25%以下が好ましい。25%を超える場合には、アスファルテン以外の成分への水添が高度に進み、セディメントの生成が増える傾向がある。
【0062】
触媒(2a)は、細孔径分布が全細孔容積を基準として直径が100〜1,200Åの細孔容積の割合が85%以上、より望ましくは87%以上である。100〜1,200Åの容積割合が85%未満であると、脱硫、分解等の水素化反応が十分発揮されない。
【0063】
触媒(2b)は、細孔径分布が全細孔容積を基準として直径が100〜1,200Åの細孔容積の割合が75%以上、より望ましくは78%以上であることが好ましい。100〜1,200Åの細孔容積の割合が75%未満であると、脱硫、分解等の水素化反応が十分発揮されない。
【0064】
触媒(2a)及び触媒(2b)共に、直径4,000Å以上の細孔容積の割合が0〜2%、直径が10,000Å以上の細孔容積の割合が0〜1%とすることにより脱硫や水素化活性、特に減圧残渣油留分の分解率の極端な低下を防ぐことが可能となる。
【0065】
さらに触媒(2a)及び触媒(2b)共に、細孔分布として、直径が100Å以下の細孔容積の割合が全細孔容積の25%以下が好ましい。25%を越える場合には、アスファルテン以外の成分への水添が高度に進み、セディメントの生成が増える傾向がある。
【0066】
また、触媒(2a)は直径が200Å以上の細孔容積の割合が全細孔容積の50%以上、好ましくは60〜80%である。直径が200Å以上の細孔容積の割合が全細孔容積の50%未満であると、アスファルテン分解性能が不十分となり、セディメント生成の抑制が不十分となる。
【0067】
一方、触媒(2b)は、直径が200Å以上の細孔容積の割合が全細孔容積の50%未満、好ましくは40%以下である。直径が200Å以上の細孔容積の割合が全細孔容積の50%以上であると水素化活性の低下を招くため触媒(2a)によって分解されたアスファルテンの適度な水素化ができずセディメントの生成を抑制できない。また、脱硫性能も低下するため触媒(2a)に対する添加効果もなくなる。
【0068】
水素化処理の第2段階において、触媒(2a)と混在させる触媒(2b)の割合、すなわち(2b)/〔(2a)+(2b)〕は、1重量%以上であるが、好ましい割合は1〜50重量%、より好ましくは10〜30重量%である。混在割合が50重量%を超えた場合は、第2段階での水添が過度に進行するため、セディメント生成が顕著となる傾向を示す。一方、1重量%未満では脱硫性能が不十分となる。
【0069】
〔II〕水素化処理方法
本発明の水素化処理の対象である重質炭化水素油は、石油系残渣油、溶剤脱瀝油、石炭液化油、頁岩油、タールサンド油、典型的には常圧残油(AR)や減圧残油(VR)やそれらの混合物、特に減圧残(渣)油である。
【0070】
特に、538℃以上で沸騰する成分(減圧残油留分)を80重量%以上、硫黄を3重量%以上、残留炭素を10重量%以上、その他高濃度の金属が存在する夾雑物を含む重質油が、本発明の水素化処理の対象として好適であり、上記触媒の組み合わせることにより、夾雑物の除去や軽質油への転換を行うことができる。
【0071】
水素化処理における第1及び第2の反応装置は、固定床、移動床あるいは沸騰床を備えた一般的なものを使用できるが、反応温度を均一に保持できる点から沸騰床の様態で水素化処理を行うことが好ましい。
【0072】
具体的には、直径0.9〜1.0mmで長さ3.5mmの円柱形状の触媒を反応装置に充填し、炭化水素油を液相中、全液空間速度(LHSV)0.1〜3hr-1、好ましくは0.3〜2.0hr-1で導入し、一方、水素は炭化水素油との流量比(H2/Oil)300〜1,500Nl/L、好ましくは600〜1,000Nl/Lで導入し、圧力5〜25MPa、好ましくは14〜19MPa、温度350〜450℃、好ましくは400〜440℃の条件下にて反応させる。
【0073】
第2の反応装置での触媒(2a)及び触媒(2b)の混在の様態としては、固定床においては均一に混在するように充填するが、移動床や沸騰床の場合は触媒(2a)を装入後、触媒(2b)を徐々に装入する方法を用いてもよい。
また、第1の反応装置と第2の反応装置は、直列に連結してもよいが双方の装置の途中に硫化水素を除くストリッピング工程や水素を供給するクエンチラインを設けてもよい。
【0074】
【実施例】
以下に示す実施例によって、本発明を更に具体的に説明する。
ただし、下記実施例は本発明を限定するものではない。
〔I〕触媒の製造
▲1▼ 触媒A(上記の触媒(1)に相当)の製造
(i) 担体の製造
水道水を貯えたタンクに、アルミン酸ソーダ溶液、硫酸アルミニウム溶液を同時滴下し加混合を行った。混合時のpHを8.5、温度を77℃、保持時間は70分とした。かかる加混合によってアルミナ水和物のゲルが生じた。
前記工程で得られたアルミナ水和物のゲルを溶液から分離した後、温水を用いて洗浄処理を行い、ゲル中の不純物を除去した。
次いで、混練機を用いて20分ほど混練してゲルの成形性を向上させた後、成型機にて直径0.9〜1mm、長さが3.5mmの円柱形状の粒子に押し出し成形した。
最後に、成形したアルミナゲルを空気存在下120℃で16時間かけて乾燥した後、800℃で2時間焼成してアルミナ担体を得た。
【0075】
(ii) 触媒の製造
モリブデン酸アンモニウム四水和物17.5g、硝酸ニッケル六水和物9.8gを添加したクエン酸溶液100mlに上記のアルミナ担体100gを25℃、45分間浸漬し、金属成分担持担体を得た。
次いで担持担体を、乾燥機を使用して120℃で30分間乾燥した後、620℃で1.5時間、キルンでか焼して触媒を完成させた。
製造した触媒A中の各成分の量及び性状は下記の表1に示す通りである。
【0076】
▲2▼ 触媒B(上記の触媒(2a)に相当)の製造
(i) 担体の製造
水道水を貯えたタンクに、アルミン酸ソーダ溶液、硫酸アルミニウム溶液を同時滴下し加混合を行った。混合時のpHを8.5、温度を65℃、保持時間は70分とした。かかる加混合によってアルミナ水和物のゲルが生じた。
前記工程で得られたアルミナ水和物のゲルを溶液から分離した後、温水を用いて洗浄処理を行い、ゲル中の不純物を除去した。
次いで、混練機を用いて20分ほど混練してゲルの成形性を向上させた後、成型機にて直径0.9〜1mm、長さが3.5mmの円柱形状の粒子に押し出し成形した。
最後に、成形したアルミナゲルを空気存在下120℃で16時間かけて乾燥した後、900℃で2時間焼成してアルミナ担体を得た。
【0077】
(ii) 触媒の製造
モリブデン酸アンモニウム四水和物16.4g、硝酸ニッケル六水和物9.8gを添加したクエン酸溶液100mlに上記のアルミナ担体100gを25℃、45分間浸漬し、金属成分担持担体を得た。
次いで担持担体を、乾燥機を使用して120℃で30分間乾燥した後、600℃で1.5時間、キルンでか焼して触媒を完成させた。
製造した触媒B中の各成分の量及び性状は下記の表1に示す通りである。
【0078】
▲3▼ 触媒C(上記の触媒(2b)に相当)の製造方法
(i) 担体の製造
水道水を貯えたタンクに、アルミン酸ソーダ溶液を入れ、硫酸アルミニウム溶液を用いて加混合を行った。硫酸アルミニウム溶液の添加終了時にpHが8.5となるように添加し、混合時の温度を64℃、保持時間は1.5時間とした。次にシリカ源の水ガラス(ケイ酸ソーダ)を混合した。水ガラスは、硫酸アルミニウム溶液と共に前記タンクに入れておいた。このときのアルミナゲル中のケイ酸ソーダの濃度を1.6重量%に設定した。
前記工程により得られたシリカ−アルミナ水和物のゲルを溶液から分離した後、温水を用いて洗浄処理を行い、ゲル中の不純物を除去した。
次いで、混練機を用いて1時間混練してゲルの成型性を向上させた後、成型機にて直径が0.9〜1mm、長さが3.5mmの円柱形状の粒子に押出成型した。
最後に成型したシリカ−アルミナ粒子を空気存在下120℃で16時間かけて乾燥させた後、800℃の温度で2時間焼成し、シリカ−アルミナ担体を得た。得られた担体中のシリカ含有量は7重量%であった。
【0079】
(ii) 触媒の製造
モリブデン酸アンモニウム四水和物16.2g、炭酸ニッケル4.7g、硝酸ナトリウム 0.66g、正リン酸2.1gに上記のシリカ−アルミナ担体100gを25℃、45分間浸漬し、金属成分担持担体を得た。
次いで担持担体を、乾燥機を使用して120℃で30分間乾燥した後、540℃で1.5時間、キルンでか焼して触媒を完成させた。
製造した触媒C中の各成分の量及び性状は下記の表1に示す通りである。
【0080】
▲4▼ 触媒Dの製造
(i) 担体の製造
水道水を張ったタンクに、硫酸アルミニウム、アルミン酸ソーダ溶液を同時滴下し加混合を行った。混合時の温度は70℃とし、滴下時pHを7.5とした後、最終pHを9.5とするまで更にアルミン酸ソーダを加えた。保持時間は70分間である。
得られたアルミナゲルを実施例1と同様の成形、焼成を行い、アルミナ粒子を得た。
【0081】
(ii)触媒の製造
モリブデン酸アンモニウム四水和物17.2g、硝酸ニッケル六水和物9.8gを添加したクエン酸水溶液100mlにアルミナ担体100gを25℃、45分間浸漬し、実施例1と同様の条件で乾燥並びに焼成を行い、金属成分担持担体を得た。
製造した触媒D中の各成分の量及び性状は下記の表1に示す通りである。
【0082】
【表1】
【0083】
(II)水素化処理
表2に通油した原料油の性状を示した。この原料油は538℃を越える沸点を有する成分を約93重量%含有し、硫黄含有量が約4.9重量%、全窒素含有量が約3300重量ppm、バナジウム含有量が109重量ppm及びニッケル含有量が46重量ppm、ノルマルヘプタン不溶解分で示されるアスファルテン分を約8重量%含有するものである。
【0084】
【表2】
【0085】
上記触媒A、触媒B、触媒C及び触媒Dを、表3及び表4に示した組み合わせで反応装置の固定床に充填し、それぞれについて水素化処理を行った。
表2に記載した性状の原料油を圧力16.0MPa、全液空間速度(Liquid Hourly Space Velocity :LHSV)1.5hr-1、平均温度427℃、供給する水素と原料油の比(H2/Oil)を800Nl/Lとして固定床に導入し、生成油を得た。
生成油を捕集し分析して水素化によって脱離された硫黄(Sulfur)、金属(バナジウム+ニッケル)及びアスファルテン(Asp.)量を算出し、下記計算式に基づいて比活性(Relative Volume Activity;RVA)を求め、表3、表4に示した。比活性は、比較例1の触媒の水素化脱硫(HDS)、水素化脱金属(HDM)、及び水素化脱アスファルテン(HDAsp.)の各指数である
【0086】
【数1】
【0087】
【表3】
【0088】
【表4】
【0089】
上記の表3及び表4の結果から、実施例1及び実施例2は、重質留分を含む減圧残油の処理において、種々の組み合わせの比較例と比べて、石油精製工程で問題となるセディメント生成を抑制しつつ、高度な脱硫、脱金属、アスファルテン分解を達成していることが理解される。
【0090】
【発明の効果】
本発明によれば、硫黄、残留炭素、金属、窒素、アスファルテン等の夾雑物を大量に含有する重質の炭化水素油、特に減圧残油留分を80重量%以上含む重質油の水素化処理において、装置運転上の支障となるセディメントの生成を抑制しながら、高度な夾雑物の除去および付加価値の高い留出油の製造を可能とする。
また、水素化処理の第1段階で高度にアスファルテンを除去することにより、第2段階の熱分解で触媒上に堆積する好ましくないコーク生成を抑えて触媒性能の低下を防ぐ効果をもたらす。
Claims (6)
- 重質炭化水素油を、下記触媒(1)が充填された第1の反応装置において水素存在下、触媒(1)と接触させて第1段階の水素化処理を行い、次いで第1段階で得られた水素化処理油を、下記触媒(2a)及び触媒(2b)が混在して充填された第2の反応装置において水素存在下、触媒(2a)及び触媒(2b)と接触させて第2段階の水素化処理を行うことを特徴とする重質炭化水素油の水素化処理方法。
触媒(1):多孔質のアルミナ担体に、触媒重量を基準として周期表の第6A族金属の酸化物が7〜20重量%、周期表の第8族金属の酸化物が0.5〜6重量%で担持され、触媒の
(a)比表面積が100〜180m2/g、
(b)全細孔容積が0.55ml/g以上であり、
触媒の細孔分布径が全細孔容積を基準として
(c1)直径が200Å以上の細孔容積の割合が全細孔容積の50%以上、
(c2)直径が2,000Å以上の細孔容積の割合が全細孔容積の10〜30%、
(c3)直径が10,000Å以上の細孔容積の割合が全細孔容積の0〜1%
である水素化処理用触媒;
触媒(2a):多孔質アルミナ担体に触媒重量を基準として周期表の第6A族金属の酸化物が7〜20重量%、周期表の第8族金属の酸化物が0.5〜6重量%の量で担持され、触媒の
(a)比表面積が100〜180m2/g、
(b)全細孔容積が0.55ml/g以上であり、
触媒の細孔分布径が全細孔容積を基準として
(d1)直径が100〜1,200Åの容積の割合が85%以上、
(d2)細孔の直径が4,000Å以上の容積の割合が0〜2%、
(d3)細孔の直径が10,000Å以上の容積の割合が0〜1%、
(d4)直径が200Å以上の細孔容積の割合が全細孔容積の50%以上
である水素化処理触媒;
触媒(2b):耐熱性無機多孔質担体に触媒重量を基準として周期表の第6A族金属の酸化物が7〜20重量%、周期表の第8族金属の酸化物が0.5〜6重量%、周期表の第1A族金属の酸化物が0.1〜1重量%、周期表の第5B族元素の酸化物が0.1〜2重量%の量で担持され、触媒の
(a)比表面積が150m2/g以上、
(b)全細孔容積が0.55ml/g以上であり、
触媒の細孔分布径が全細孔容積を基準として
(d1)直径が100〜1,200Åの細孔容積の割合が全細孔容積の75%以上、
(d2)直径が4,000Å以上の容積の割合が0〜2%、
(d3)直径が10,000Å以上の細孔容積の割合が全細孔容積の0〜1%、
(d4)直径が200Å以上の細孔容積の割合が全細孔容積の50%未満
である水素化処理用触媒。 - 触媒(2b)の耐熱性無機多孔質担体が、シリカ量として3.5重量%以上含むシリカ−アルミナ担体である請求項1記載の方法。
- 重質炭化水素油が、減圧残油留分を80重量%以上含む重質油である請求項1または2記載の方法。
- 第1段階及び第2段階において、温度350〜450℃、圧力5〜25MPaの条件下で水素化処理を行う請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 第2段階の反応装置に充填された触媒における触媒(2b)の混在割合が1重量%以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 重質炭化水素油を沸騰床の様態で水素化処理触媒と接触させる請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
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