JP3980239B2 - 樹脂歯車及びその製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属製ブッシュを鋳込み成形した樹脂歯車とその製造法に関する。殊に、金属製ブッシュとその周囲に配置した補強繊維基材とを成形金型に収容し、成形金型に注入した液状樹脂を補強繊維基材に含浸して金属製ブッシュを鋳込み成形した樹脂歯車、すなわち、注入成形による樹脂歯車に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属製ブッシュを鋳込み成形した樹脂歯車は、金属製ブッシュと樹脂部分の結合強度を確保することが重要である。
上記注入成形による樹脂歯車の製造は、成形金型を閉じたときの圧力で補強繊維基材を変形させることにより、金属製ブッシュ外周面から放射状に多数突出した回り止めを補強繊維基材に食い込ませた状態とし、この状態で、成形金型に液状樹脂を注入して実施する。前記液状樹脂の注入時ならびにその硬化時に補強繊維基材が変形して前記食い込みが促進されることは殆どなく、この点が、予め樹脂を含浸した補強繊維基材を加熱加圧成形し金属製ブッシュを鋳込み成形する樹脂歯車の製造と大きく異なっている。すなわち、前記加熱加圧成形では、補強繊維基材が樹脂の流動と共に動いて回り止め周囲に充填されるので、補強繊維基材を含む樹脂部分と金属製ブッシュの結合が確実で結合強度も大きくなる。それに対し、注入成形では、樹脂の流動に伴う補強繊維基材の移動が起こりにくいので、回り止め周囲への補強繊維基材の充填が不足になりがちである。
【0003】
強度、耐熱性、耐摩耗性、寸法安定性を高度に求められる樹脂歯車(例えば、自動車部品用)においては、補強繊維として繊維長を長くすること、高強度のアラミド繊維を採用することなどが検討されている。また、補強繊維基材の形態も、編み物、織布、繊維間をニードルパンチにより結合したフェルト状物などが検討されている。このような場合の注入成形では、成形金型を閉じる圧力で起こる補強繊維基材の変形が少なくなる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
注入成形による樹脂歯車おいては、成形金型を閉じる圧力で起こる補強繊維基材の変形が少ないと、回り止め周囲への補強繊維基材の充填が不足し、この部分は樹脂リッチとなる。補強繊維基材の含有量が少ない樹脂リッチの部分は機械強度が小さくなるので、金属製ブッシュと樹脂部分の結合強度が低下する心配がある。
【0005】
本発明は、金属製ブッシュとその周囲に配置した補強繊維基材とを成形金型に収容し、成形金型に注入した液状樹脂を補強繊維基材に含浸して金属製ブッシュを鋳込み成形してなる、すなわち、注入成形による樹脂歯車を対象としている。本発明が解決しようとする課題は、前記樹脂歯車において、補強繊維基材を回り止め周囲に十分に充填することにより、金属製ブッシュと補強繊維基材を含む樹脂部分の結合強度を大きくすることである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係る注入成形による樹脂歯車は、金属製ブッシュが次のような構成を備えていることを特徴とする。すなわち、
金属製ブッシュは外周面が円柱形状であり、前記金属製ブッシュ外周面には多数の回り止めが放射状に突出し、前記回り止めは金属製ブッシュの厚さ方向中央部のみの周面に一筋配置されており、回り止め厚さは金属製ブッシュ厚さよりも薄く、隣接する回り止め間にできる凹面は、金属製ブッシュ面方向の断面形状が円弧状であり、回り止めは、金属製ブッシュの厚さ方向のみ、頂部の厚さが厚く基部の厚さが薄いアンダーカット形状であることを特徴とする。
【0007】
上述したように、注入成形における補強繊維基材の回り止め周囲への充填は、成形金型を閉じたときの圧力で補強繊維基材が変形することにより行なわれる。円弧状の断面形状の上記凹面へは、変形した補強繊維基材が滑るように入り込む。これに加えて、回り止め厚さを金属製ブッシュ厚さより薄くすることにより、回り止めは補強繊維基材中に埋没する。これらの作用により、補強繊維基材の回り止め周囲への充填性は良好となり、回り止め周囲には補強繊維基材を含まない樹脂リッチの部分ができにくい。樹脂リッチの部分は機械強度が小さいので、金属製ブッシュの周囲に樹脂リッチの部分ができると損傷しやすく、そこから始まった損傷は樹脂歯車の歯の部分に向かって伝播しやすい。しかし、本発明に係る樹脂歯車は、金属製ブッシュ周囲に補強繊維基材が十分に充填されているので損傷しにくく、その結果、金属製ブッシュと補強繊維基材を含む樹脂部分の結合強度は大きいものとなる。
【0008】
金属製ブッシュ外周面に放射状に突出した回り止めは、頂部の厚さが厚く基部の厚さが薄いアンダーカット形状とする。好ましくは、アンダーカットの掘り込み深さdは、回り止め高さhの30〜85%である。
【0009】
樹脂歯車の回転時には、回り止めが樹脂部分を剪断しようとする力が発生するが、回り止めをアンダーカット形状にすることにより断面で見たときの樹脂部分の面積が増えるので、前記剪断力受ける側として好都合である。また、樹脂部分の熱膨張率は金属製ブッシュの熱膨張率より大きい。従って、熱膨張によって、樹脂部分は金属製ブッシュから径方向へ離れようとするが、上記のアンダーカット形状は、この動きを妨げるように作用する。
尚、アンダーカットの掘り込み深さdが、回り止め高さhの85%を越えると、回り止め基部の強度が小さくなってくるので、85%程度にとどめることが好ましい。
【0010】
このような注入成形による樹脂歯車は、次のように製造する。
金属製ブッシュとその周囲に配置した補強繊維基材とを成形金型に収容し、成形金型に液状樹脂を注入して補強繊維基材に含浸し金属製ブッシュを鋳込み成形するのであるが、前記金属製ブッシュは外周面が円柱形状であり、
その外周面には、厚さ方向中央部のみに多数の回り止めを放射状に突出させ、前記回り止めは金属製ブッシュの厚さ方向中央部のみの周面に一筋配置し、
回り止め厚さを金属製ブッシュの厚さより薄くし、
隣接する回り止め間にできる凹面の断面(金属製ブッシュ面方向の断面)形状を円弧状とし、
回り止めを、金属製ブッシュの厚さ方向のみ、頂部の厚さが厚く基部の厚さが薄いアンダーカット形状とした構成を採用する。
そして、成形金型を閉じたときの圧力で補強繊維基材を変形させることにより、回り止め周囲に補強繊維基材を充填して、回り止めを補強繊維基材に食い込ませた状態とする。この状態で、成形金型に液状樹脂を注入して補強繊維基材に浸透させる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明においては、補強繊維基材として種々の形態を採用することができる。例えば、図4に示すように、アラミド繊維糸を織ったり編んだりして形成した筒状体1を軸方向に巻き上げリング状に形成した補強繊維基材2である。そのほかにも、繊維間をニードルパンチにより結合したフェルト状物を筒状ないしはロール状に巻き、これを軸方向へ蛇腹状に圧縮した補強繊維基材等を採用することができる。フェルト状物を構成するアラミド繊維は、繊維長を50mm程度にするのが適当である。
【0012】
金属製ブッシュの周囲に上記の補強繊維基材を配置して成形金型に収容し、補強繊維基材に樹脂を含浸して、金属製ブッシュを鋳込み成形する。例えば、図5に示すように、補強繊維基材2を成形金型21内で2段に重ね、中央には金属製ブッシュ11を配置して、成形金型21を閉じる。成形金型を閉じるときの圧力で補強繊維基材2を圧縮変形させて金属製ブッシュ11の形状になじませ、成形金型内を減圧にし、液状樹脂(架橋ポリアミノアミド、エポキシ樹脂、ポリイミドなど)を注入して補強繊維基材に浸透させ加熱硬化させる。
補強繊維基材を含む樹脂部分(外周)に切削加工により歯を形成し、図2に示したような樹脂歯車とする。図2(a)に示すように、金属製ブッシュ11の外周面には多数の回り止め12が放射状に突出し、図2(b)に示すように、その回り止め12の周囲に補強繊維基材が十分に充填され、回り止め12と補強繊維基材を含む樹脂部分とが一体となっている。
アラミド繊維、殊に、パラ系アラミド繊維は極めて高強度である。パラ系アラミド繊維だけで補強繊維基材を構成すると、上記の切削加工性が低下するので、メタ系アラミド繊維を併用するとよい。両繊維の混紡糸で筒状体1を形成したり、両繊維を併用してフェルト状物を構成する。両繊維の併用は、回り止め周囲への補強繊維基材充填性を高める上でも好都合である。
【0013】
本発明において重要な点は、回り止め12の構成である。以下、発明の実施の形態を詳述する。
図1に示すように、回り止め12は、金属製ブッシュ11の外周面に放射状に多数突出させるが、多数とは10個又はそれを越えるような個数、好ましくは15個以上である。これらを金属製ブッシュ11の外周面に等角度で配置する。回り止めを数個配置した程度では、1個の回り止めが樹脂部分を剪断しようとする力が大きくなり、樹脂部分が破壊されやすい。多数の回り止めを等角度で配置することにより、1個の回り止めが樹脂部分を剪断しようとする力は小さくなり、かつ、各回り止めの剪断力は均一になる。
回り止め間にできる凹面13は、金属製ブッシュ面方向の断面形状が円弧である。円弧の半径Rは、補強繊維基材がパラ系アラミド繊維とメタ系アラミド繊維の併用の場合、5〜2mm程度が適当である。1mm程度になると、円弧状であっても補強繊維基材の充填性が低下してくる。
回り止め12の厚さは、金属製ブッシュ11の厚さの1/3程度にするのが適当である。図1(b)に示すように、回り止め12は、頂部の厚さが厚く基部の厚さが薄いアンダーカット形状とする。特に、アンダーカットの掘り込み深さdを回り止め高さhの30〜85%にすると、金属製ブッシュと樹脂部分の結合強度を一層大きくすることができる。
【0014】
【実施例】
実施例
パラ系アラミド繊維とメタ系アラミド繊維の混紡糸(混紡質量比50/50,20番手)で織った筒状体1(目付け量130g/m2)を準備した。この筒状体1を軸方向に巻き上げてなる補強繊維基材2を2個用い、金属製ブッシュ11と共に、上記図5を参照して説明した方法により、注入成形を行なった。補強繊維基材2への樹脂含浸は、減圧状態(1300Pa)にした成形金型21に架橋ポリアミノアミドを注入して行なった。
ここで、金属製(鋼製)ブッシュ11は、厚さ9mm,回り止め12を含む外径52mm,回り止め12を含まない外径49mmである。回り止め12は、15°間隔で24個配置されている。その高さhは1.5mm、頂部の厚さは3mmである。回り止め間にできる凹面13は、半径R3mm,深さ1.3mmである。従って、凹面13の最も深い箇所でも回り止め12を含まない外周面との間には0.2mmの段差を生じている。
成形した補強繊維基材を含む樹脂部分は、外径80mmであり、切削加工により外周に歯を形成した(歯数22)。
上記の条件を一定にし、図1(b)を参照して説明したアンダーカットの掘り込み深さdを0,0.5,0.75,1,1.25mmの範囲で変えた樹脂歯車を準備し、金属製ブッシュと樹脂部分の結合強度を評価した。尚、掘り込み深さdが0の場合は、アンダーカット形状ではなく、回り止めの頂部から基部まで同じ3mm厚さとした場合である。前記アンダーカットの掘り込み深さdを、回り止め高さhに対する割合に換算すると、それぞれ、0,33,50,67,83%である。
結合強度の評価は、固定した鋼製歯車に上記各樹脂歯車を噛み合わせ、樹脂歯車の回転軸を捻じって、金属製ブッシュと樹脂部分の界面の破壊荷重を測定するものである。破壊荷重は、両者の結合部で樹脂部分にクラックが発生する時点の大きさとした。クラックは、いずれも樹脂部分と回り止めの界面から歯に向かって入る。結果を、図3に示す。図3から、アンダーカットの掘り込み深さdが、回り止め高さhの30〜85%のときに、一層結合強度が顕著になることが分かる。
【0015】
従来例
上記実施例において、凹面13の断面形状を矩形にした。深さは1.3mmである。また、アンダーカットの掘り込み深さdを、0.75mmとした。図6に、その金属製ブッシュの平面図と要部拡大図を示す。
実施例と同様に破壊荷重を測定して結果を、図3に併せて示した。
【0016】
【発明の効果】
上述のように、本発明に係る注入成形による樹脂歯車は、金属製ブッシュの回り止めの構成を特定することにより、金属製ブッシュと樹脂部分の結合強度を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る樹脂歯車に適用する金属製ブッシュの平面図と要部拡大図(a)及びA−A’線に沿う断面図(b)である。
【図2】本発明に係る樹脂歯車の平面図(a)及びB−B’線に沿う断面図(b)である。
【図3】樹脂歯車の金属製ブッシュと樹脂部分の界面の破壊荷重を示す曲線図である。
【図4】本発明に係る樹脂歯車に適用する補強繊維基材の一例を示す説明図である。
【図5】本発明に係る樹脂歯車を成形する様子を示す説明図である。
【図6】従来の樹脂歯車に適用する金属製ブッシュの平面図と要部拡大図である。
【符号の説明】
1は筒状体
2は補強繊維基材
11は金属製ブッシュ
12は回り止め
13は凹面
21は成形金型
Claims (3)
- 金属製ブッシュとその周囲に配置した補強繊維基材とを成形金型に収容し、成形金型に注入した液状樹脂を補強繊維基材に含浸して金属製ブッシュを鋳込み成形した樹脂歯車において、
前記金属製ブッシュは外周面が円柱形状であり、
前記金属製ブッシュの外周面には多数の回り止めが放射状に突出し、前記回り止めは金属製ブッシュの厚さ方向中央部のみの周面に一筋配置されており、
回り止め厚さは金属製ブッシュの厚さより薄く、
隣接する回り止め間にできる凹面は金属製ブッシュ面方向の断面形状が円弧状であり、
回り止めは、金属製ブッシュの厚さ方向のみ、頂部の厚さが厚く基部の厚さが薄いアンダーカット形状であることを特徴とする樹脂歯車。 - アンダーカットの掘り込み深さdが、回り止め高さhの30〜85%である請求項1記載の樹脂歯車。
- 金属製ブッシュとその周囲に配置した補強繊維基材とを成形金型に収容し、成形金型に液状樹脂を注入して補強繊維基材に含浸し金属製ブッシュを鋳込み成形する樹脂歯車の製造において、
前記金属製ブッシュは外周面が円柱形状であり、
その外周面に多数の回り止めを放射状に突出させ、前記回り止めは金属製ブッシュの厚さ方向中央部のみの周面に一筋配置し、
回り止め厚さを金属製ブッシュの厚さより薄くし、
隣接する回り止め間にできる凹面の断面(金属製ブッシュ面方向の断面)形状を円弧状とし、
回り止めを、金属製ブッシュの厚さ方向のみ、頂部の厚さが厚く基部の厚さが薄いアンダーカット形状とした構成を採用し、
成形金型を閉じたときの圧力で補強繊維基材を変形させることにより、回り止めを補強繊維基材に食い込ませた状態とし、この状態で、成形金型に液状樹脂を注入することを特徴とする樹脂歯車の製造法。
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