JP3989148B2 - 金属微粒子の光固定化方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機化合物により金属微粒子表面を修飾した金属微粒子のコロイド溶液に被コーティング材料を浸漬して、金属微粒子を励起するレーザー光を照射することにより金属微粒子を該被コーティング材料表面に固定する方法に関する。
【0002】
【従来技術】
被コーティング材料、例えば基板の表面に金微粒子を形成する従来方法として、1.金微粒子を有機溶媒に分散させたコロイド溶液をキャストし乾燥させる方法、2.ガラス表面等に吸着させたポリカチオンやカチオン性分子膜の上に静電相互作用によって金微粒子を吸着させる方法、さらには3.基板表面をチオール誘導体で修飾(処理)し、金−イオウ間の自発的な結合形成を利用して金微粒子を固定化させる方法などがあるが、1.の場合には、揮発する溶剤による健康への問題があり、更には、任意の形状に固定化させることが困難であり、2.および3.の場合には、基板表面を予め修飾剤で処理しておく必要である。4.また最近では金微粒子が負に帯電していることを利用して、電気泳動法により電極上に金微粒子を集積する方法も開発されているが、基板が導電性に限定される。
【0003】
また、Au、Ag、Ptなど数十nm〜数nmの貴金属微粒子、例えば金微粒子は、紫外域〜近赤外域のレーザー光を吸収し、その結果、粒子の凝集と粒子の分裂(分散)の両現象があらわれることが知られている。
【0004】
ところで、金属による表面加工は、種々の機能性部材の製造にも利用されている。例えば、テフロン多孔質電極はテフロン多孔膜を金属材料で処理することによって得られているし、表面増強ラマン(Surface Enhanced Raman Spectroscopy:SERS)センサー基板は、基板表面に金属を島状に薄く真空蒸着することによって得られている。従って、金属による新しい表面加工技術の開発は、新たな機能を持った部材の開発の面でも重要であることが認識されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、前記従来の金属微粒子の固着方法における、健康への問題や特殊な処理を予め基板表面にするという不都合がない金属微粒子の固着方法を提供することであり、更に、新しい機能性を持った部材が得られる金属微粒子の固着方法を提供することにある。前記課題を解決するのに、前記金属微粒子のコロイド溶液にレーザーを照射した時の現象を応用できないかとの考えに基づいて鋭意検討したところ、金属微粒子の有機溶媒のコロイド溶液に金属による表面加工すべき材料を浸漬した状態で、前記コロイド溶液および前記加工すべき材料の表面を、紫外域のレーザー光又は近赤外域までの赤外線レーザー光を照射することにより、前記加工すべき材料の表面に金属微粒子を固定することができることを発見し、前記課題を解決したものである。更に、前記現象は基板を構成する材料に限定されることなく適用でき、透明基板としては、ガラスに限らずフツ素系高分子フィルムなどの非伝導性かつ不活性な基板に対しても適用可能であることも発見された。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(1)有機溶媒に可溶化する高級アルキルチオール化合物又は高級脂肪酸から選択される安定化剤により安定化した金属微粒子の溶媒が有機溶媒であるコロイド溶液中に被コーティング材料を浸漬し、前記金属微粒子の安定化剤を前記金属微粒子表面から脱離する紫外線レーザー光又は近赤外域までの赤外域のレーザー光を前記コロイド溶液に照射することにより前記金属微粒子表面から安定化剤を脱離させ金属微粒子を該被コーティング材料表面に固定する方法である。好ましくは、(2)金属微粒子のコロイド溶液は50nm未満1nm以上の金属微粒子表面に有機溶媒に可溶化する高級アルキルチオール化合物又は高級脂肪酸から選択される安定化剤を結合し、有機溶媒中に分散したものであることを特徴とする前記(1)に記載の金属微粒子を被コーティング材料表面に固定する方法であり、より好ましくは、(3)パルス幅5ns〜10nsであり、かつパルスエネルギーが20mJ〜400mJであることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の金属微粒子を被コーティング材料表面に固定する方法である。本発明は、金属微粒子を有機溶媒に分散したコロイド溶液から、紫外線レーザー光又は近赤外域までの赤外域のレーザー光照射により、前記基体表面への金属微粒子の析出および固着現象があることを発見することによって、前記課題を解決したのである。また、このようにして固着された金属微粒子のサイズは平均約10nm(おおむね30nm以下であり)であり、共鳴ラマンセンサーとしての機能性が改善されることが予想される。
【0007】
【本発明の実施の態様】
本発明をより詳細に説明する。
A.本発明で使用する金属微粒子のコロイド溶液とは、粒径1nm〜100nmの、好ましくは50nm〜5nmの金属微粒子表面を、レーザー光照射により前記金属微粒子表面から分離する安定化剤で安定化したものである。このような材料を構成する、金属としては、Ag、Au、Cuなどのプラズモン励起の起こし易いものを好ましい材料として挙げることができる。安定化剤としては、有機溶媒に可溶化する硫黄原子含有有機化合物である、例えば、ドデカンチオールなどのチオール化合物や、オレイン酸などの脂肪酸などを挙げることができる。
B.分散する溶媒としては、ヘキサンなどの脂肪族、シクロヘキサンなどの脂環式、ベンゼン、トルエンなどの芳香族等の炭化水素類などを挙げることができる。
【0008】
C.レーザー光と金属微粒子コロイドの基板表面への金属微粒子固定現象。前記金属微粒子の基板表面への固定には、紫外域〜近赤外域のレーザー光が利用でき、特にパルスレーザー光の利用は効率の良い方法である。パルスレーザー光としては、Nd:YAGレーザーの基本波(1064nm)、2倍波(532nm)、3倍波(355nm)、幅5ns〜10ns、およびパルスエネルギー20mJ〜400mJのものが、レーザー光による金属微粒子コロイドから基板表面への金属微粒子の固定に有用である。本出願の発明においては、前記基本波を含む近赤外光までの赤外光、又は前記3倍波を含む紫外光のレーザーを用いて金属微粒子コロイドから基板表面への金属微粒子の固定を行うものである。
【0009】
D.図1には、本発明の金属微粒子コロイドから基板表面への金属微粒子の析出・固定方法を原理的に説明するものである。パルスレーザー発生手段(L.R)からのパルスレーザーは、マスク(M.S)を介し、被コーティング基板、具体的にはガラス基板(B.P)が浸漬されている金属コロイド溶液に照射される。照射された前記基板表面に金属微粒子(M.P.L)が固定される。 前記金属微粒子の固定の工程は、マスクを介することなく、レーザー光を所望の描画図形に従って操作することによっても実施できる。図2は、マスクに対応して固定された金微粒子(M.P.L)の走査電子顕微鏡写真(SEM像)である。白い丸形のものが析出・固定した金コロイドである。粒径の違いはレーザー光照射前の金微粒子の粒径分布にも依存するものと推測される。図3は、レーザー照射によるガラス表面に付着した金コロイドの吸収スペクトルであり、金微粒子のプラズモンバンドが540nm付近に観察されている。E.パルスレーザー発生手段としては、Nd:YAGレーザー(波長1064nm、532nm、355nm)、その他チタン:サファイヤレーザー、エキシマーレーザー等を使用できる。
【0010】
前記金属コロイドからの金属微粒子の析出・固定の現象は、金属コロイドの光子吸収に伴う現象である。パルスレーザー光の照射によって光子を吸収した金微粒子は、急激な温度上昇を起こすことが知られている。その際に、安定化剤として微粒子表面にくっついている安定化剤(保護剤)の一部が光で外れ、分散安定性が失われると考えられる。その結果、基体近傍に存在する不安定化された微粒子が、基体に固定化することで安定化すると考えられる。一方、溶液中では、前記現象による微粒子の凝集と成長も進行するものと考えられる。したがって、固定化は、安定化剤や用いる溶媒にも影響されるものと考えられる。
【0011】
【実施例】
実施例1
金微粒子の固定A.金コロイドの作製。塩化金酸を水素化ホウ素ナトリウムで還元するレフ(Leff)らの方法(J.Phys.Chem.,99,7036(1995))により金コロイド溶液を得た。透過電子顕微鏡(TEM)で測定した結果、金微粒子の平均粒径は3〜4nmであった。
B.光固定化方法 前記作製した金コロイドをシクロへキサンに溶解してコロイド溶液(M.C.S)とした。この溶液3mLを蛍光測定用石英セル(4×1×4cm)(SE)に入れ、ガラス基板(B.P)(2×2×0.02cm)を溶液中に浸し、20℃の温度の下で、パルスレーザー光(Nd:YAGレーザー、波長1064nm、パルス幅5-7ns,パルスエネルギー260mJ、くり返し数10Hz)を照射した。10分程度でガラス表面への固定化が確認できるようになった。20−30分でほぼ一定に達し、それ以上照射すると脱着が認められるようになった。ガラス基板を取り出し、レーザー光照射部のみに金微粒子の付着(M.P.L)が確認された。石英セルについても、レーザー光照射部のみに金微粒子の付着が確認された。ガラス基板の吸収スペクトルを測定すると(図2)、金微粒子に特徴的なプラズモンバンドが540nm付近に観測された。また、前記金微粒子はガラス基板上に均一に配列されて、荒くされた表面が観察された。ガラス基板をトルエン、硝酸中に浸漬したが、金微粒子の脱離はみとめられなかった。また超音波照射によっても脱離は明確には認められなかった。すなわち、金微粒子はガラス基板上に、機械力により脱離しない付着力によって固定されていることが確認された。
【0012】
実施例2
基板をフッ化カルシウム板に代えただけで、実施例1の操作を繰り返した。フッ化カルシウム板(直径1.8cm,厚さ0.1cm)でも同様の結果が得られた。
【0013】
実施例3
基板をテフロンメンブレンフィルターに代えただけで、実施例1の操作を繰り返した。テフロンメンブレンフィルター(ミリポア社デュラポアVVLP、孔径100nm)でも、照射したレーザー光の形状に金粒子が固定された。吸収スペクトル測定から固定された粒子はコロイド的に分散した金の微粒子(平均粒径約10nm)であることが明らかになった。
【0014】
実施例4
照射するレーザー光の波長を変えて実施例1の操作を繰り返した。Nd-YAGレーザーの3倍波〔355nm、20mJ/パルス(pulse)〕のレーザー光を用いて、ガラス基板上に金微粒子を固定できることが明らかになった。
【0015】
金属の表面を荒くした基板では、吸着した物質のラマン散乱強度が非常に増大することが知られている。この現象は表面増強ラマン(Surface Enhanced RamanSpectroscopy:SERS)といわれる。これまではこのような表面として、表面をエッチングした金や銀の基板や、金属が島状に付着するように非常に薄く真空蒸著した基板が用いられてきた。しかし、一方で金属微粒子を2次元的に配列した基板はSERSセンサー基板としてもっとも有効であるということが明らかにされている。従来、金微粒子を基板表面に並べるためには交互吸着法やLB法がもちいられているが、いずれの手法でも大量の有機物が金粒子近傍に存在しているし、基板表面を予め修飾剤で処理しておく必要がある。本手法で作成した金属微粒子固定基板では金属微粒子は有機化合物に一層囲まれているだけであり、さらにその有機分子は硝酸処理によって金属微粒子表面からはぎ取ることが可能である。得られる清浄な表面を持つ金属微粒子固定基板はSERSセンサ基板として従来に無い感受性、選択制を持たせることが可能だと考えられる。
【0016】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の金属微粒子の固定化方法は、基板材料に限定されずに適用できること、レーザー手段として、本発明による金属微粒子の固定化用のものと、熱融着作用のものとを組み合わせて用いることなどによって、前記SERSセンサ基板の製造、多孔質電極の製造といったものへの適用が考えられる点で優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の金属微粒子コロイドから基板表面への金属微粒子の析出・固定方法の原理的説明(a)、(b)は(a)のA−A’面図
【図2】 固定された金属微粒子(M.P.L)の走査電子顕微鏡写真(SEM像)
【図3】 金微粒子のプラズモンバンドの測定
【符号の説明】
L.R パルスレーザー発生器 M.S マスクM.C.S 金属コロイド溶液 B.P 基板 SE セルM.P.L 固定金属微粒子
Claims (3)
- 有機溶媒に可溶化する高級アルキルチオール化合物又は高級脂肪酸から選択される安定化剤により安定化した金属微粒子の溶媒が有機溶媒であるコロイド溶液中に被コーティング材料を浸漬し、前記金属微粒子の安定化剤を前記金属微粒子表面から脱離する紫外線レーザー光又は近赤外域までの赤外域のレーザー光を前記コロイド溶液に照射することにより前記金属微粒子表面から安定化剤を脱離させ金属微粒子を該被コーティング材料表面に固定する方法。
- 金属微粒子のコロイド溶液は50nm未満1nm以上の金属微粒子表面に有機溶媒に可溶化する高級アルキルチオール化合物又は高級脂肪酸から選択される安定化剤を結合し、有機溶媒中に分散したものであることを特徴とする請求項1に記載の金属微粒子を被コーティング材料表面に固定する方法。
- パルス幅5ns〜10nsであり、かつパルスエネルギーが20mJ〜400mJであることを特徴とする請求項1または2に記載の金属微粒子を被コーティング材料表面に固定する方法。
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