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JP3989799B2 - 電磁雑音吸収体 - Google Patents
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JP3989799B2 - 電磁雑音吸収体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波数領域で高い透磁率を有する磁性材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁性材料の持つ高い透磁率は半導体では実現できず、そのインダクタンスは数Hz〜数100MHzの広範囲の周波数範囲で利用されている。しかし、それ以上の高い周波数では、高い電気抵抗の実現あるいは磁気共鳴現象の制御が困難になり、低周波で示すような特性は得られない。しかし、磁気記録の高密度化、インダクタンス素子の高周波化によってGHz帯で動作する磁性材料の要求が強まっている。
【0003】
従来の高周波で使える代表的な磁性材料は、フェライト、金属薄膜、また金属と非磁性絶縁物を複合した多層膜、あるいはグラニュラー構造膜などがある。
【0004】
フェライトは、電気抵抗が非常に高くほぼ絶縁物であり、高周波での渦電流発生が非常に少ないのでバルク形状で使える。しかし、数10MHz以上の高周波になると磁壁の共鳴振動とスピン共鳴現象が起きて、いわゆるスネークの限界が現れる。さらに周波数を高めるには、数μm以下の薄膜形状にして形状磁気異方性を増やしてスネークの限界を引き上げることが効果的であるが、高い透磁率を持つフェライト相の形成には1000℃程度のプロセスが必要で、薄膜の形成は困難となり、実用された例はない。また、金属薄膜には、パーマロイ(Ni80Fe20),アモルファス金属が代表的であり非常に高い透磁率も得られるが、高い導電率のために渦電流が発生しやすく、高周波になるに従って膜厚が制限される。特にGHz以上では、0.1μm以下でないと渦電流の問題が起こる。そこで金属薄膜と酸化物などの絶縁物薄膜を積層して渦電流を抑えた薄膜材料が使われるが、全体の磁化の大きさが減ること、生産プロセスが複雑になることなどから、その利用は限定的である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
最近開発されたグラニュラー構造を持つ薄膜は、強磁性金属の微粒子が酸化物などの母体に分散し、金属に比べて数桁高い電気抵抗を実現している。グラニュラー構造は、金属と酸化物を原子レベルで混じり合わせたときに自己組織的に形成され、酸化物中に直径10nm以下の磁性金属微粒子が析出した構造で、具体的には、スパッター法などの薄膜製造技術によって作られる。グラニュラー薄膜は、高い電気抵抗とともに、微粒子の異方的な結合によって強い磁気異方性をもつことが可能で、これによってGHz帯におけるスピン共鳴現象の発生を抑制または制御できる。グラニュラー薄膜は、従来の薄膜材料に比べて応用の範囲は広いと考えられるが、以下のような問題がある。
【0006】
まず、グラニュラー構造を作る強磁性金属微粒子は、それ自体では直径数nmであり、孤立している状態では室温の熱擾乱によって強磁性を失っている(超常磁性現象)。これに強磁性を持たせるためには、微粒子間に磁気的な結合を持たせて熱擾乱を克服する。この時、磁気な結合によって微粒子は集団としての磁気的性質が現われ、高い透磁率を示すようになる。すなわち、高透磁率薄膜としての性質を得るためには、微粒子間の磁気的結合が不可欠である。この磁気的結合には、絶縁物中の微粒子間に金属的結合があることが必要であって電気抵抗が低下する。このため、高い透磁率と電気抵抗は相反するパラメータとなりグラニュラー構造では、電気抵抗に上限がある。
【0007】
次に、GHz帯における高透磁率材料の応用技術としては、磁気記録における書き込みヘッド用材料、およびスピン磁気共鳴吸収の周波数帯を制御した電磁ノイズ吸収材料がある。グラニュラー薄膜は、高い電気抵抗の故にノイズ吸収材料として有望である。しかし、GHz帯での共鳴吸収が有効に働くためには、さらに数桁高い電気抵抗が必要であることがわかっている。
【0008】
そこで、本発明の技術的課題は、超常磁性を抑制しつつ電気抵抗を上げ、またスピン共鳴現象を制御できる微粒子構造膜を備えた複合磁性材料を用いた電磁雑音吸収体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前述した課題を解決するために、複合磁性材料の設計方針を定め、これを具現化できる新しい技術を見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0010】
即ち、本発明によれば、Fe、Co、またはNiの各々の純金属ないしはそれらを少なくとも20重量%含有する合金からなる柱状構造体が、酸化物、窒化物またはフッ化物ないしはそれらの混合物である無機質の絶縁性母体中に埋め込まれ、なお且つ超常磁性が現れない条件を満たす構造を有する複合磁性材料を備え、前記柱状構造体の直径Dと長さLの比(アスペクト比L/D)が1<L/D≦1000であり、前記複合磁性材料の直流での電気抵抗率が、10〜10μΩ・cmの範囲にあることを特徴とする電磁雑音吸収体が得られる。
【0011】
また、本発明によれば、前記電磁雑音吸収体において、前記柱状構造体が単磁区構造を有する事を特徴とする電磁雑音吸収体が得られる。
【0012】
また、本発明によれば、前記いずれか一つの電磁雑音吸収体において、前記柱状構造体の直径Dが、2nm≦D≦100nmであることを特徴とする電磁雑音吸収体が得られる
【0014】
また、本発明によれば、前記いずれか一つの電磁雑音吸収体において、前記柱状構造体が長さ方向に磁化容易軸を有すると共に、複数の柱状構造体が前記無機質の絶縁性母体を介して直径方向に略平行に配列された繰り返し構造をもつ事を特徴とする電磁雑音吸収体が得られる。
【0015】
また、本発明によれば、前記電磁雑音吸収体において、前記複数の柱状構造体の長さ方向に対して、隣り合う柱状構造体の間隙又は間隙に存在する前記絶縁性母体の厚さが0.1nm〜100nmの範囲にあることを特徴とする電磁雑音吸収体が得られる。
【0016】
また、本発明によれば、前記いずれか一つの電磁雑音吸収体において、前記柱状構造体が長さ方向に磁化容易軸を有すると共に、複数の前記柱状構造体が前記無機質の絶縁性母体を介して長さ方向に重ね合わされて配列された繰り返し構造をもつ事を特徴とする電磁雑音吸収体が得られる。
【0017】
また、本発明によれば、前記電磁雑音吸収体において、前記複数の柱状構造体の直径方向に対して、隣り合う柱状構造体の間隙あるいは間隙に存在する前記絶縁性母体の厚さが0.1nm〜100nmの範囲にある事を特徴とする電磁雑音吸収体が得られる。
【0018】
また、本発明によれば、前記いずれか一つの電磁雑音吸収体であって、前記厚さが1nm〜100nmの範囲にある絶縁性母体を介して重ねあわされた複数の柱状構造体層からなり、前記各々の柱状構造体層が互いにアスペクト比L/Dの異なる柱状構造体から構成される磁性層であることを特徴とする電磁雑音吸収体が得られる。
【0019】
また、本発明によれば、前記いずれか一つの電磁雑音吸収体において、前記複合磁性材料の飽和磁歪定数の絶対値|λ|が、|λ|≦60ppmである事を特徴とする電磁雑音吸収体が得られる。
【0021】
また、本発明によれば、前記いずれか一つ電磁雑音吸収体において、前記複合磁性材料が厚さtの薄膜状磁性体であって、前記柱状構造体の長さ方向と前記薄膜状磁性体の厚さ方向が略平行であることを特徴とする電磁雑音吸収体が得られる。
【0022】
また、本発明によれば、前記いずれか一つの電磁雑音吸収体において、前記複合磁性材料が厚さtの薄膜状磁性体であって、前記柱状構造体の長さ方向が前記薄膜状磁性体の厚さ方向に対して平均角度θだけ傾いて形成され、前記θが、0<θ≦90°の範囲にあることを特徴とする電磁雑音吸収体が得られる。
【0024】
また、本発明によれば、前記電磁雑音吸収体において、前記複合磁性材料は、互いにアスペクト比L/Dの異なる柱状構造体からなる磁性層が、厚さtの絶縁性母体を介して複数重なりあってなり、前記柱状構造体層の数に相当する数、ないしはそれ以下の複数の磁気共鳴を有する事を特徴とする電磁雑音吸収体が得られる。
【0025】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の原理について説明する。
【0026】
グラニュラー構造においては、自己組織的に微粒子が形成されるため、その形状はほぼ球状に近い。このとき、超常磁性が起こる条件は、次の数1式で示される。
【0027】
【数1】
Figure 0003989799
【0028】
ここで、上記数1式において、kはBoltzmann定数、Tは温度(ケルビン、K)、Kuは金属微粒子が本来持っている磁気異方性の大きさであり、Vは微粒子1個の体積である。KuVは微粒一個が持つ磁気的エネルギーで、これが熱擾乱エネルギーkTと同じ程度になると超常磁性が現れる。高電気抵抗グラニュラー薄膜のFeやCo微粒子の大きさは約5nmで、上記の条件では完全に超常磁性の範囲内もしくは超常磁性の境界にある。
【0029】
しかし、グラニュラー構造では、微粒子間に磁気的結合があるので、超常磁性を抑えている。電気抵抗を上げるために、酸化物の含有率を増やすと、この磁気的結合が切れて超常磁性となる。
【0030】
そこで、本発明では、このKuを大きくする方法として、微粒子の形状を人工的に制御し形状磁気異方性を付与する。すなわち、超常磁性が現れない条件は以下の数2式のように変わる。
【0031】
【数2】
Figure 0003989799
【0032】
ここで、Kusは、微粒子形状が球状でなく、例えば棒状になったときの形状磁気異方性の大きさで、以下の数3式のように表される。
【0033】
【数3】
Figure 0003989799
なお、上記数3式においては、Ndは反磁界定数、Msは飽和磁化である。
【0034】
棒が十分に長い場合には、Ndは長さ方向に4π、長さに直角の方向に0であるので、次の数4式で示される。
【0035】
【数4】
Figure 0003989799
【0036】
このように、グラニュラー構造を球状の集合体でなく、棒を並べたような構造にすれば超常磁性臨界体積を小さくできるので、微粒子間の抵抗を上げることができる。
【0037】
例えば、Feは、5×10erg/cmのKuを持つ。通常のグラニュラー構造で、直径5nmの球状微粒子を仮定すると、次の数5式が成り立つ。
【0038】
【数5】
Figure 0003989799
【0039】
同じ体積でNd=4πと考えられる直径3nm・長さ100nmの微粒子では、次の数6式となる。
【0040】
【数6】
Figure 0003989799
この数6式から、Ktotal=Kus+Ku=3×10 erg/cmである。
【0041】
したがって、次の数7式を導くことができる。
【0042】
【数7】
Figure 0003989799
【0043】
以上のように、微粒子の形状を制御することにより、絶縁物中に孤立した微粒子でも超常磁性を抑えることが可能となり、電気抵抗は飛躍的に上昇する。
【0044】
次に、透磁率、磁気共鳴周波数の制御について述べる。
【0045】
透磁率μと磁気共鳴周波数frは、微粒子の持つ磁気異方性Ktotalで決まる。すなわち、次の数8式及び数9式で示される。
【0046】
【数8】
Figure 0003989799
【数9】
Figure 0003989799
但し、上記数9式において、γは、ジャイロ磁気係数である。
【0047】
したがって、透磁率、磁気共鳴の周波数も、微粒子の形状によって制御できる。
【0048】
本発明者らは、以上述べた複合磁性材料の設計方針を具現化できる新しい技術として、本発明をなすに至ったものである。
【0049】
本発明の複合材料は、Fe、Co、またはNiの各々の純金属ないしはそれらを少なくとも20重量%含有する合金からなる柱状構造体が、酸化物、窒化物またはフッ化物ないしはそれらの混合物である無機質の絶縁性母体中に埋め込まれた構造を有する。この複合磁性材料は、前記柱状構造体が単磁区構造を有し、且つ前記柱状構造体の直径Dが、2nm≦D≦100nmである。そして、前記柱状構造体の直径Dと長さLの比(アスペクト比L/D)が1<L/D≦1000である。
【0050】
また、複合磁性材料は、前記柱状構造体が長さ方向に磁化容易軸を有すると共に、複数の柱状構造体が前記無機質の絶縁性母体を介して直径方向に略平行に配列された繰り返し構造をもち、前記複数の柱状構造体の長さ方向に対して、隣り合う柱状構造体の間隙(間隙に存在する前記絶縁性母体の厚さ)が0.1nm〜100nmの範囲にある。
【0051】
また、複合磁性材料は、前記柱状構造体が長さ方向に磁化容易軸を有すると共に、複数の前記柱状構造体が前記無機質の絶縁性母体を介して長さ方向に重ね合わされて配列された繰り返し構造をもつ。そして、前記複数の柱状構造体の直径方向に対して、隣り合う柱状構造体の間隙(あるいは間隙に存在する前記絶縁性母体の厚さ)が0.1nm〜100nmの範囲にある。
【0052】
また、複合磁性材料は、厚さが1nm〜100nmの範囲にある絶縁性母体を介して重ねあわされた複数の柱状構造体層からなり、前記各々の柱状構造体層が互いにアスペクト比L/Dの異なる柱状構造体から構成される磁性層である。
【0053】
さらに、複合磁性材料の飽和磁歪定数の絶対値|λ|が、|λ|≦60ppmであり、複合磁性材料の直流での電気抵抗率が、10〜10μΩ・cmの範囲にある複合磁性材料である。
【0054】
また、前記複合磁性材料が厚さtの薄膜状磁性体であって、前記柱状構造体の長さ方向と前記薄膜状磁性体の厚さ方向が略平行であるか又は前記柱状構造体の長さ方向が前記薄膜状磁性体の厚さ方向に対して平均角度θだけ傾いて形成され、前記θが、0<θ≦90°の範囲にある。
【0055】
また、本発明の電磁雑音吸収体は、前記複合磁性材料から実質的になる。この複合磁性材料は、互いにアスペクト比L/Dの異なる柱状構造体からなる磁性層が、厚さtの絶縁性母体を介して複数重なりあってなり、この電磁雑音吸収体は、前記柱状構造体層の数に相当する数、ないしはそれ以下の複数の磁気共鳴を有する。
【0056】
次に、本発明について更に詳しく説明する。
【0057】
グラニュラー構造を持つ薄膜を作成するには、酸化物と強磁性金属を同時に混入させる必要から、スパッター法が便利であり、これまでスパッター法により開発されてきた。スパッター法では基板に入射する粒子の運動エネルギーが非常に高いために、酸化物と強磁性金属は効率よく混合し、ほとんどアモルファス状態となる。このため、ほとんどのグラニュラー材料は熱処理による相分離過程を通して前記のグラニュラー構造を得ている。
【0058】
本発明では、酸化物と金属を二元蒸着法により作成する。蒸着法では、スパッター法に比較して基板に到達する原料の原子または分子の運動量が格段に小さいことによって、基板上に積み重なる過程で柱状の微細構造が作られることはよく知られている。本発明では、この柱状構造が作られる原理を利用する。さらに、適当な蒸着速度、すなわち体積比率で酸化物と金属を同時に基板上に形成することによって、よく分離した柱状(棒状)の微粒子を形成する。スパッター法ではその熱処理などのグラニュラー形成プロセスを経るため粒子の形状はほぼ球状に近い不定形であり、蒸着法では熱処理なしでも相分離していて、強磁性金属は長い柱状構造を形成している。このため、前述したように形状磁気異方性によって孤立した強磁性体でも高透磁率となる。この透磁率を制御するには、柱状の強磁性微粒子の長さを短くして形状磁気異方性を変化させればよい。これには、二元蒸着のプロセスで、強磁性体の蒸発源のシャッターを周期的に開閉すると、柱状の長さは、シャッターの開いている時間に比例するので制御できる。柱状が短くなると、上記数6式ののNdが4πより低下し、磁気異方性が低下することによって、透磁率が増加する。同時に数9式の関係から磁気共鳴周波数も変化させることができる。また、蒸着中にシャッターの開いている時間を変えることによって、異なる複数の共鳴周波数をもつ微粒子層を一つの材料中に重ねることができる。この制御方法によって、少しずつ異なる鋭い磁気共鳴吸収を連立させて、望ましい周波数領域の磁気損失を正確に制御できるので、電磁波吸収体としての性能を上げるためには有効な方法である。
【0059】
なお、従来のグラニュラー構造では、粒子間の結合によって磁気異方性が発生するので、その方向は膜面に平行である。そのため透磁率の大きさは、磁気異方性の方向によって敏感に変化する。
【0060】
すなわち、透磁率の大きさに強い面内指向性がある。それに対し、本発明の柱状グラニュラー構造では、膜厚方向に磁気異方性があり、膜面内には指向性がない。すなわち等方的な透磁率を示すことが特徴であり、等方的なノイズ吸収性能を要求される場合には有効である。しかし、等方的であることによってその透磁率の大きさは、面内指向性がある場合の半分になる。本発明ではこの材料の用途に応じて面内指向性をつけることができる。蒸着法では、蒸発源に対して基板の角度を変えることによって基板に入射する粒子の角度を制御することができる。すなわち、柱状の長さ方向を膜厚方向から自由に傾けることができる。
【0061】
本発明でこの方法を利用すると、柱状が傾くに伴って膜厚方向から面内方向に傾いた磁気異方性が発生する。これによって、等方的な透磁率から指向性を持った透磁率へと変化する。
【0062】
以上のように本発明では、従来のグラニュラー薄膜に比べて、膜圧方向から面内まで望ましい方向に望ましい強さの磁気異方性を付与し、透磁率の方向、大きさ、共鳴周波数、さらにその周波数帯を設計し、制御することができるとともに、熱処理の必要がないので基板の選択が自由であり、さらに高速で作成が可能であると言う特長を有している。
【0063】
それでは、本発明の実施の形態について説明する。
【0064】
図1の電子顕微鏡写真は、(a)はスパッター法によるグラニュラー構造(300℃、1時間熱処理後)で、(b)は蒸着による柱状構造を膜断面で観察したものである。
【0065】
図1(a)及び(b)に示すように、スパッター法ではそのグラニュラー形成プロセスによって粒子の形状はほぼ球状に近い不定形であり、蒸着法では熱処理なしでも相分離していて、強磁性金属は長い柱状構造を形成している。図1(a)の電気抵抗が1000μΩcmに対して、図1(b)は100000μΩcmである。
【0066】
図2は、透磁率の周波数特性である。図2の(a)の蒸着膜では、透磁率は低いが、特定の周波数で鋭い磁気共鳴損失が得られる。一方、図2の(b)のスパッター膜では広い周波数領域で共鳴損失が見られ、望ましい周波数領域での磁気共鳴が得られない。これは、図2の(b)では磁気共鳴を決定する磁気異方性が粒子間の結合の状態で決められるので、大きな分散があるためである。これに対して図2の(a)では、よく揃った柱状構造によって磁気異方性が発生しているために、分散がほとんどないので、明確な磁気共鳴が現れる。
【0067】
図3は、透磁率を制御するためにシャッター時間を変えて透磁率を上げた例で、シャッターの開いている時間と透磁率、共鳴周波数との関係を示す図である。図3に示すように、従来のグラニュラー薄膜では困難であった透磁率の精密な制御が可能である。また、蒸着中にシャッターの開いている時間を変えることによって、異なる複数の共鳴周波数をもつ微粒子層を一つの材料中に重ねることができる。
【0068】
図4は、シャッター時間を10秒から200秒まで段階的に変えて一個の試料を作成した場合の透磁率の測定結果を示す図である。図4を参照すると、ほぼ設計通りの周波数帯で磁気共鳴が起こっている。
【0069】
図5(a)、(b)、及び(c)は基板を傾けて透磁率の面内指向性を制御した例を示す図である。図5(a)に示すように、基板が蒸発源に対抗している場合(φ=0)には等方的、傾いている場合(φ=45°)には指向性が現れ、μの測定方向が図5(b)および(c)におけるy方向(θ=0°)で透磁率が大きくなる。
【0070】
次に、本発明で得られた複合磁性材料の電磁雑音吸収効果を調べた。
【0071】
図6は、電磁雑音抑制効果の検証例を図示したものである。図6に示すように、本発明で得られた複合磁性材料試料61を、絶縁基板62b上に形成されたマイクロストリップ導体62aからなるマイクロストリップ線路62上に配置し、マイクロストリップ線路62の両端をネットワークアナライザー63に接続し、伝送特性S11およびS21をみている。
【0072】
図7及び図8は、本発明の実施の形態に基づいて作製した複数の複合磁性材料試料をマイクロストリップ線路上に置いたときの伝送特性S11およびS21を各々示す図である。
【0073】
図7より明らかなように、反射を示す伝送特性S11の大きさは、本発明の例と比較例では大差なく、いずれの試料を用いた場合でも、実用的なレベルの反射量となっていることが判る。一方透過損失を示す伝送特性S21は、第8図から明らかなように、本発明の試料が比較試料に比べて大きくなっており、電磁雑音吸収の効果が高いと言える。
【0074】
以上説明したように、本発明の実施の形態による複合磁性材料は、高周波で優れた透磁率特性、特に虚部透磁率特性を有しており、この複合磁性材料を用いた電磁雑音吸収体は、高周波で優れた雑音吸収効果を有しており、近年問題になっている高周波電磁雑音の抑制に極めて有効である。
【0075】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、超常磁性を抑制しつつ電気抵抗を上げ、またスピン共鳴現象を制御できる微粒子構造膜を備えた複合磁性材料を有する電磁雑音吸収体を提供することができる
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)はスパッター法によるグラニュラー構造(300℃、1時間熱処理後)を膜面内で観察した電子顕微鏡写真である。(b)は蒸着による柱状構造を膜断面で観察した電子顕微鏡写真である。
【図2】(a)は蒸着膜透磁率の周波数特性を示す図で、(b)はスパッター膜透磁率の周波数特性を示す図である。
【図3】シャッター時間を変えて制御した透磁率、共鳴周波数との関係を示す図である。
【図4】図4は、シャッター時間を10秒から200秒まで段階的に変えて一個の試料を作成した場合の透磁率の測定結果を示す図である。
【図5】(a)は基板を傾けて透磁率の面内指向性を制御した例を示す図である。(b)は蒸着源と基板および基板傾き角度を示す図である。(c)はμの測定方向を示す図である。
【図6】電磁雑音抑制効果の検証のための概略的な装置構成例を示す図である。
【図7】本発明に基づいて作製した複数の複合磁性材料試料をマイクロストリップ線路上に置いたときの反射特性S11を示す図である。
【図8】本発明に基づいて作製した複数の複合磁性材料試料をマイクロストリップ線路上に置いたときの伝送特性S21を示す図である。
【符号の説明】
61 複合磁性材料試料
62 マイクロストリップ線路
63 ネットワークアナライザー

Claims (12)

  1. Fe、Co、またはNiの各々の純金属ないしはそれらを少なくとも20重量%含有する合金からなる柱状構造体が、酸化物、窒化物またはフッ化物ないしはそれらの混合物である無機質の絶縁性母体中に埋め込まれ、なお且つ超常磁性が現れない条件を満たす構造を有する複合磁性材料を備え、前記柱状構造体の直径Dと長さLの比(アスペクト比L/D)が1<L/D≦1000であり、前記複合磁性材料の直流での電気抵抗率が、10〜10μΩ・cmの範囲にあることを特徴とする電磁雑音吸収体
  2. 請求項1に記載の電磁雑音吸収体において、前記柱状構造体が単磁区構造を有する事を特徴とする電磁雑音吸収体
  3. 請求項1又は2に記載の電磁雑音吸収体において、前記柱状構造体の直径Dが、2nm≦D≦100nmであることを特徴とする電磁雑音吸収体
  4. 請求項1乃至の内のいずれか一つに記載の電磁雑音吸収体において、前記柱状構造体が長さ方向に磁化容易軸を有すると共に、複数の柱状構造体が前記無機質の絶縁性母体を介して直径方向に略平行に配列された繰り返し構造をもつ事を特徴とする電磁雑音吸収体
  5. 請求項に記載の電磁雑音吸収体において、前記複数の柱状構造体の長さ方向に対して、隣り合う柱状構造体の間隙又は間隙に存在する前記絶縁性母体の厚さが0.1nm〜100nmの範囲にあることを特徴とする電磁雑音吸収体
  6. 請求項1乃至の内のいずれか一つに記載の電磁雑音吸収体において、前記柱状構造体が長さ方向に磁化容易軸を有すると共に、複数の前記柱状構造体が前記無機質の絶縁性母体を介して長さ方向に重ね合わされて配列された繰り返し構造をもつ事を特徴とする電磁雑音吸収体
  7. 請求項に記載の電磁雑音吸収体において、前記複数の柱状構造体の直径方向に対して、隣り合う柱状構造体の間隙あるいは間隙に存在する前記絶縁性母体の厚さが0.1nm〜100nmの範囲にある事を特徴とする電磁雑音吸収体
  8. 請求項5又は7に記載の電磁雑音吸収体であって、前記厚さが1nm〜100nmの範囲にある絶縁性母体を介して重ねあわされた複数の柱状構造体層からなり、前記各々の柱状構造体層が互いにアスペクト比L/Dの異なる柱状構造体から構成される磁性層であることを特徴とする電磁雑音吸収体
  9. 請求項1乃至の内のいずれか一つに記載の電磁雑音吸収体において、前記複合磁性材料の飽和磁歪定数の絶対値|λ|が、|λ|≦60ppmである事を特徴とする電磁雑音吸収体
  10. 請求項1乃至9の内のいずれか一つに記載の電磁雑音吸収体において、前記複合磁性材料が厚さtの薄膜状磁性体であって、前記柱状構造体の長さ方向と前記薄膜状磁性体の厚さ方向が略平行であることを特徴とする電磁雑音吸収体
  11. 請求項1乃至10の内のいずれか一つに記載の電磁雑音吸収体において、前記複合磁性材料が厚さtの薄膜状磁性体であって、前記柱状構造体の長さ方向が前記薄膜状磁性体の厚さ方向に対して平均角度θだけ傾いて形成され、前記θが、0<θ≦90°の範囲にあることを特徴とする電磁雑音吸収体
  12. 請求項に記載の電磁雑音吸収体において、前記複合磁性材料は、互いにアスペクト比L/Dの異なる柱状構造体からなる磁性層が、厚さtの絶縁性母体を介して複数重なりあってなり、前記柱状構造体層の数に相当する数、ないしはそれ以下の複数の磁気共鳴を有する事を特徴とする電磁雑音吸収体。
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