JP3994661B2 - トロイダル型無段変速機の温度制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車の変速装置として用いられるトロイダル型無段変速機に関し、特に、その温度制御に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、乗用車用の変速装置として従来のオートマティックトランスミッションに代わるトロイダル型無段変速機が注目されている。このトロイダル型無段変速機の主要部であるバリエータは、凹湾曲状の軌道面を有する入力ディスク及び出力ディスクを、軌道面同士が互いに対向するように配置し、両ディスク間に複数個のローラを配置して成るものである。各ディスクの軸方向には油圧による端末負荷が付与され、これにより、ローラは、各ディスクの軌道面に油膜を介して圧接する。入力ディスクは、エンジンにより回転駆動される入力軸に取り付けられており、この入力軸の回転により、入力ディスクからローラを介して出力ディスクにトルクが伝達される。変速は、必要なトルクに応じてローラの回転軸が傾くことにより無段階で行われる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記各ディスクとローラとは油膜を介して非常に高い圧力で互いに接しており、そのため、油膜を形成する作動油の温度も上昇する。温度が上昇すると油の粘度が下がり、その結果、トラクション力が低下したり、油膜が薄くなってディスクとローラとが直接接触して損傷する恐れがある。
一方、例えば寒冷地での冬季のエンジン始動時のように作動油の温度が非常に低い場合には、作動油の粘度が極めて高くなる。このため、各ディスクとローラとの間にまんべんなく作動油を供給すること自体が困難になり、その結果、トラクション力が低下したり、油膜が薄くなってディスクとローラとが直接接触して損傷する恐れがある。
【0004】
上記のような従来の問題点に鑑み、本発明は、トロイダル型無段変速機において、広範囲な温度条件下で作動油の温度を適正な範囲に維持する温度制御装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明のトロイダル型無段変速機の温度制御装置は、トロイダル型無段変速機を収容するケースと、前記ケースに沿って設けられ、熱媒体液を流通させる熱媒体液通路部と、前記トロイダル型無段変速機における作動油の温度を検出する温度センサと、前記熱媒体液通路部に対して熱媒体液を給排するとともに、前記温度センサが検出した作動油の温度に基づいて熱媒体液の温度及び給排量を制御することにより間接的に作動油の温度を所定範囲に維持する熱媒体液給排装置とを備え、前記熱媒体液給排装置は、熱媒体液を吐出する電動ポンプと、当該電動ポンプの回転数を変化させることにより前記給排量を制御するインバータとを含むものである(請求項1)。
上記のように構成されたトロイダル型無段変速機の温度制御装置では、温度センサにより検出された作動油の温度に基づいて熱媒体液給排装置が熱媒体液の温度及び給排量を制御し、ケースの放熱を促進させることにより間接的に作動油の温度上昇を抑制若しくは低下させるか又は、加温した熱媒体液を給排してケースを暖め、これにより間接的に作動油の温度を上昇させ、粘度を下げる。
【0006】
また、上記温度制御装置(請求項1)において、熱媒体液通路部は、ケースの外周面と、これを覆うジャケットとの間に形成されるものであってもよい(請求項2)。
この場合、ケースとジャケットとの間に広い面積の熱媒体液通路部を容易に確保することができる。
【0007】
また、上記温度制御装置(請求項1)において、熱媒体液通路部は、ケースの外周に巻回されたパイプ状の管路であってもよい(請求項3)。
この場合、熱媒体液は管路内を通過することにより、ケースの放熱促進又は加温の作用をする。また、ケースは防水仕様にしなくてよい。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の第1の実施形態によるトロイダル型無段変速機の温度制御装置における、トロイダル型無段変速機の概略図である。このトロイダル型無段変速機の主要部を成すバリエータ1には、エンジンの出力軸2により回転駆動される入力軸3が設けられている。入力軸3の両端近傍にはそれぞれ入力ディスク4がスプライン結合により支持され、各入力ディスク4は、入力軸3と一体回転する。各入力ディスク4の一側面には、凹湾曲状の軌道面4aが形成されている。また、各入力ディスク4は、入力軸3に固定された係止リング5によって互いに離反する方向への移動が規制されている。
【0009】
上記入力軸3の軸方向中央部には、外周にスプロケットギヤが形成された出力部材6と、この出力部材6にそれぞれ一体回転可能に支持された出力ディスク7とを備える出力部8が、当該入力軸3に対して相対回転自在に設けられている。入力ディスク4の軌道面4aに対向する出力ディスク7の一側面には、凹湾曲状の軌道面7aが形成されている。駆動輪に動力を伝達する駆動軸10は、入力軸3と平行に設けられ、出力部材6に対応する位置に一対のスプロケットホイール10aを備えている。出力部材6及びスプロケットホイール10aにはチェーン9が装着され、駆動軸10へ動力が取り出されるようになっている。
【0010】
上記出力ディスク7は、出力部材6に対して軸方向への微動が許容された状態で組み込まれており、その背面には隙間を設けてバックアップ板11が配置されている。上記隙間はケーシング12及び図示しないシールによって密封されており、この隙間に油圧を供給することにより、出力ディスク7を、対向する入力ディスク4方向へ付勢して、所定の端末負荷が加えられている。
【0011】
互いに対向する入力ディスク4の軌道面4aと出力ディスク7の軌道面7aとの間は、トロイド状隙間として構成されており、このトロイド状隙間には、それぞれ各軌道面4a,7aと圧接して回転する3個の円盤状のローラ13が円周等配に配置されている。各ローラ13はキャリッジ14によって回転自在に、かつ、その回転軸が傾動可能に支持されている。キャリッジ14には、油圧による駆動力が付与されるように構成されている。
【0012】
上記バリエータ1においては、一対の入力ディスク4から対応する各出力ディスク7に対して、6個のローラ13を介してトルクが伝達される。トルクを伝達するとき、ローラ13には反力が生じており、この反力を支えているのが、キャリッジ14に付与される駆動力である。当該反力と出力ディスク7を駆動するのに必要なトルクとの間に不均衡が生じると、ローラ13は軸角度を変えてこの不均衡を解消する。例えば、走行負荷の変動やアクセルペダルの加減により、キャリッジ14が油圧による駆動力に抗して押し戻されるか又は引き出されるような力が発生すると、ローラ13の軸角度が変化して(図1の二点鎖線参照)変速比のアップ又はダウンが行われ、バリエータ1の出力するトルクが変化する。すなわち、バリエータ1におけるレシオの変化は、キャリッジ14に付与される駆動力の加減と、外部抵抗に対する応答のみで達成される。ローラ13と各ディスク4,7との間に油膜を形成する作動油は、キャリッジ14の内部通路(図示せず)を経由してローラ13の表面に供給される。
【0013】
上記バリエータ1は、ケース20内に収納され、ケース20により支持されている。ケース20は複数の部材を接合して形成されており、その外周面は隙間なく仕上げられ、かつ、部材同士の接合部はパッキン等により防水仕上げされている。このケース20の外周面を覆うように、かつ、ケース20との間に隙間を保って、ジャケット21が設けられている。ジャケット21は、外側に水を漏らさないような防水仕様になっており、その下部には熱媒体液の供給口21aが、上部には排出口21bが、それぞれ設けられている。ケース20とジャケット21との間の空間は、熱媒体液を満たし、かつ、流通させる熱媒体液通路部Pとなっている。熱媒体液としては、例えば、エンジン冷却用と同様のクーラントを使用する。上記のようなジャケット21でケース20を覆うことにより、熱媒体液通路部Pは広い面積を確保することができる。
【0014】
図2は、上記トロイダル型無段変速機の熱媒体液通路部Pに熱媒体液を給排する熱媒体液給排装置の構成を示す図である。当該熱媒体液給排装置は、熱媒体液を放熱させるラジエータ22と、熱媒体液を加温するヒータユニット23と、ラジエータ22の吐出側経路上に設けられた電磁弁24と、電動ポンプ25と、インバータ26と、作動油の温度を計測する温度センサ27と、温度センサ27の検出する温度に基づいて電磁弁24、ヒータユニット23及びインバータ26を制御する制御装置28とを備えている。電動ポンプ25のモータとしては、ノイズの防止及びメンテナンスフリーの観点からブラシレスモータが採用されている。インバータ26は、バッテリ26aから供給されたDC電圧を交流電圧に変換し、電動ポンプ25に供給する。インバータ26により交流電圧の周波数を変化させることによって、電動ポンプ25の回転数すなわち吐出量を可変とすることができる。なお、上記温度センサ27は、軌道面4a,7aの近傍に設けることが望ましいが、通常はキャリッジ14の先端部に設けられる。
【0015】
次に、上記熱媒体液給排装置の動作について説明する。
温度センサ27によって検出される作動油の温度が所定の温度(例えば100℃)より高いとき、制御装置28は電磁弁24を非励磁状態、すなわち、図示の弁位置としている。また、制御装置28はヒータユニット23をオフの状態としている。
【0016】
トロイダル型無段変速機が運転され、作動油の温度が所定値まで上昇すると、制御装置28はインバータ26に駆動信号を出力し、電動ポンプ25の運転を開始する。これにより、ラジエータ22及びヒータユニット23から電動ポンプ25の吸込口25aへ熱媒体液が吸い上げられるとともに、吐出口25bから熱媒体液がトロイダル型無段変速機のジャケット21の供給口21aに送り込まれる。送り込まれた熱媒体液は、トロイダル型無段変速機のケース20とジャケット21との間の熱媒体液通路部Pを通過し、通過する際にケース20の熱を奪う。ジャケット21の排出口21bから出た熱媒体液はラジエータ22及び、オフの状態のヒータユニット23を通過して電動ポンプ25に戻る。ラジエータ22を通過する際、熱媒体液は放熱し、温度が下がる。
【0017】
上記のようにして、ケース20の熱が奪われることによりトロイダル型無段変速機全体に蓄えられている熱量が低下し、作動油の温度上昇が抑制される。すなわち、ケース20を冷却することにより、間接的に、作動油を冷却することができる。また、制御装置28は、作動油の温度の高さに応じてインバータ26を制御して電動ポンプ25の吐出量を増大させる。これにより単位時間あたりの放熱量が増大して、冷却効果を増大させることができる。従って、吐出量すなわち熱媒体液の給排量を制御することにより、作動油の温度上昇を抑制するか又は、温度を下げることができる。これにより、各ディスク4,7とローラ13との間でのトラクション力を適正な範囲に維持することができる。また、各ディスク4,7とローラ13との間に適正な厚さの油膜が形成され、これらの部材の損傷を防止することができる。
【0018】
一方、作動油の温度が所定の温度(例えば100℃)より低い場合には、粘度が低下するため、むしろ加温する必要がある。従って、制御装置28は、電磁弁24を励磁して、ラジエータ22を通過する経路を遮断する。また、制御装置28はヒータユニット23をオンの状態として電動ポンプ25を運転する。これにより、ヒータユニット23で加温された熱媒体液が、電動ポンプ25によって吸い上げられ、トロイダル型無段変速機のジャケット21の供給口21aに送り込まれる。加温された熱媒体液はケース20を暖め、放熱して再びヒータユニット23に戻る。このようにして加温された熱媒体液が循環することによりケース20の温度が上昇し、この結果、間接的に作動油の温度が上昇する。これにより、作動油の粘度が低下し、各ディスク4,7とローラ13との間に適正温度かつ適正量の作動油を供給することができる。従って、各ディスク4,7とローラ13との間でトラクション力を適正な範囲に維持することができるとともに、各ディスク4,7とローラ13との間に適正な厚さの油膜を形成して、これらの部材の損傷を防止することができる。
【0019】
以上のように、作動油の温度が所定値以上であるときは熱媒体液の温度及び給排量を制御してケース20の放熱を促進させ、間接的に作動油の温度上昇を抑制又は低下させ、トラクション力を適正な範囲に維持することができる。また、各ディスク4,7とローラ13との間に適正な厚さの油膜を形成して、これらの部材の損傷を防止することができる。また、作動油の温度が所定値より低いときは加温した熱媒体液を給排してケース20を暖め、これにより間接的に作動油の温度を上昇させ、粘度を下げることにより、トラクション力を適正な範囲に維持することができる。また、各ディスク4,7とローラ13との間に適正な厚さの油膜を形成して、これらの部材の損傷を防止することができる。
このようして広範囲な温度条件下で作動油の温度を所定の温度範囲(例えば0℃〜120℃)に保ち、適正なトラクション力を確保することができるとともに、各ディスク4,7とローラ13との間に適正な厚さの油膜を形成して、これらの部材の損傷を防止することができる。さらに、前述のように熱媒体液通路部Pの面積が広いことにより、ケース20の放熱促進又は加温を効率よく行うことができる。
【0020】
図3は、本発明の第2の実施形態によるトロイダル型無段変速機の温度制御装置における、トロイダル型無段変速機の概略図である。第1の実施形態との違いは、ジャケット21を設ける代わりに、ケース20の外周に、熱媒体液を通すパイプ状の管路31を設けたことである。熱媒体液を給排する装置は、第1の実施形態と同様である。熱媒体液は、管路31の一端の供給口31aから供給され、他端の排出口31bから排出される。
この第2の実施形態の場合、放熱促進又は加温の効果はやや低下するが、ケース20を防水仕様にする必要がなく、管路31を巻き付けるだけなので、構成が簡素である。
【0021】
なお、上記各実施形態において、ヒータユニット23はトロイダル型無段変速機とは別に設けられる。また、作動油は、ヒータによって直接加熱されるのではない。従って、衝突事故等により洩れた作動油がヒータの熱で発火する恐れが非常に少ない。また、電動ポンプ25は必要なときにのみ駆動されるため、エネルギーの無駄がない。但し、電動ポンプに限定する必要はなく、クラッチを介してエンジンの出力により駆動されるポンプ等であってもよい。
【0022】
【発明の効果】
以上のように構成された本発明は以下の効果を奏する。
請求項1のトロイダル型無段変速機の温度制御装置によれば、温度センサにより検出された作動油の温度に基づいて熱媒体液給排装置が熱媒体液の温度及び給排量を制御し、ケースの放熱を促進させることにより間接的に作動油の温度上昇を抑制若しくは低下させるか又は、加温した熱媒体液を給排してケースを暖め、これにより間接的に作動油の温度を上昇させ、粘度を下げる。従って、広範囲な温度条件下で作動油の温度を所定の温度範囲に保ち、適正なトラクション力を確保することができる。また、トロイダル型無段変速機内のディスクとローラとの間に適正な厚さの油膜を形成して、これらの部材の損傷を防止することができる。
【0023】
請求項2のトロイダル型無段変速機の温度制御装置によれば、ケースとジャケットとの間に広い面積の熱媒体液通路部を容易に確保することができる。従って、ケースの放熱促進及び加温の効率が良い。
【0024】
請求項3のトロイダル型無段変速機の温度制御装置によれば、熱媒体液は管路内を通過することにより、ケースの放熱促進又は加温の作用をする。従って、ケースを防水仕様にすることなく、熱媒体液通路部の構成を簡素なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態によるトロイダル型無段変速機の温度制御装置における、トロイダル型無段変速機の概略図である。
【図2】上記トロイダル型無段変速機の熱媒体液通路部に熱媒体液を給排する熱媒体液給排装置の構成を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施形態によるトロイダル型無段変速機の温度制御装置における、トロイダル型無段変速機の概略図である。
【符号の説明】
1 バリエータ
20 ケース
21 ジャケット
22 ラジエータ
23 ヒータユニット
24 電磁弁
25 電動ポンプ
26 インバータ
27 温度センサ
28 制御装置
31 管路
Claims (3)
- トロイダル型無段変速機を収容するケースと、
前記ケースに沿って設けられ、熱媒体液を流通させる熱媒体液通路部と、
前記トロイダル型無段変速機における作動油の温度を検出する温度センサと、
前記熱媒体液通路部に対して熱媒体液を給排するとともに、前記温度センサが検出した作動油の温度に基づいて熱媒体液の温度及び給排量を制御することにより間接的に作動油の温度を所定範囲に維持する熱媒体液給排装置とを備え、
前記熱媒体液給排装置は、熱媒体液を吐出する電動ポンプと、当該電動ポンプの回転数を変化させることにより前記給排量を制御するインバータとを含むことを特徴とするトロイダル型無段変速機の温度制御装置。 - 前記熱媒体液通路部は、前記ケースの外周面と、これを覆うジャケットとの間に形成される請求項1記載のトロイダル型無段変速機の温度制御装置。
- 前記熱媒体液通路部は、前記ケースの外周に巻回されたパイプ状の管路である請求項1記載のトロイダル型無段変速機の温度制御装置。
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