JP3998566B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、補強材としてスチールコードを用いた空気入りタイヤに関し、さらに詳しくは、衝撃緩和性を高め、耐久性、特に耐カット性、耐カットスルー性及び耐セパレーション性を向上するようにした空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
空気入りタイヤにおいて、ベルト層やブレーカー層等の補強材としてスチールコードが使用されている。そして、このようなスチールコードに螺旋状又は波形状の型付けを施すことにより、空気入りタイヤを軽量化し、耐久性を向上することが提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。
【0003】
しかしながら、大きなピッチで小さな振幅の型付けを施したスチールコードは、例えばベルト層やブレーカー層に用いた場合、トレッド部に受ける衝撃を分散させて緩和する作用が少なく、トレッド部を柔軟に補強する役割を果たすことができなかった。また、スチールコードに微小な型付けを施した場合であっても、タイヤに大きな衝撃や変形が加えられた際にはゴムの剥離を生じることがあり、空気入りタイヤの耐久性を必ずしも改善することはできなかった。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−328406号公報
【特許文献2】
特開平8−218283号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、衝撃緩和性を高め、耐久性、特に耐カット性、耐カットスルー性及び耐セパレーション性を向上することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、左右のビード部間に複数のカーカス層を装架し、左右のサイドウォール部間にわたるカーカス層の外側に有機繊維コードからなるブレーカー層を埋設し、トレッド部のブレーカー層外周側に少なくとも1本の素線を螺旋状に形成した螺旋体からなるスチールコードを備えたブレーカー層を埋設し、前記螺旋体の外径h、前記素線の直径d及び前記螺旋体のピッチpが3d≦h≦30dかつd≦p≦5hの関係を満足することを特徴とするものである。
【0007】
また、上記目的を達成するための本発明の他の空気入りタイヤは、左右のビード部間に複数のカーカス層を装架し、左右のサイドウォール部間にわたるカーカス層の外側に有機繊維コードからなるブレーカー層を埋設し、トレッド部のブレーカー層外周側に少なくとも1本の素線を螺旋状に形成した螺旋体からなるスチールコードを備えたブレーカー層を埋設し、前記螺旋体は長径hlに対する短径hsの比が0.25〜0.95となる楕円形の横断面形状を有し、前記螺旋体の短径hs、前記素線の直径d及び前記螺旋体のピッチpが3d≦hs≦30dかつd≦p≦5hsの関係を満足することを特徴とするものである。
【0008】
このようにスチールコードを螺旋体から構成し、その螺旋体の外径h(hs)を大きくすると共にピッチpを小さくすることにより、衝撃緩和性を高め、耐久性、特に耐カット性、耐カットスルー性及び耐セパレーション性を向上することができる。つまり、上記関係にて規定される立体的な構造を有するスチールコードは、タイヤ径方向及びタイヤ幅方向の衝撃を効果的に分散させて緩和することができる。また、立体的な構造を有するスチールコードは、コートゴムの浸透性が高く、ゴムとの界面剥離を生じ難いので、セパレーションを抑制し、空気入りタイヤの耐久性を向上することができる。螺旋体の横断面を偏平形状とした場合、走行中のスチールコードの端末の動きが抑制されるため耐セパレーション性の点で更に好ましく、しかも薄ゲージ化により設計の自由度が増大する。
【0009】
本発明において、上記スチールコードはタイヤ周方向に連続的に巻回することが好ましい。つまり、螺旋体からなるスチールコードはタイヤ周方向に連続的に巻回した場合であっても、加硫時のリフト(タイヤ径方向への拡張)に追従することが可能であり、それによりコード端末を実質的に無くし、空気入りタイヤの耐久性(耐セパレーション性)を更に向上することができる。このようなスチールコードはベルト層又はブレーカー層に用いることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は本発明の実施形態からなる建設車両用空気入りタイヤを示し、1はトレッド部、2はサイドウォール部、3はビード部である。左右一対のビード部3,3間には複数層のカーカス層4が装架されている。これらカーカス層4は、その補強コードが層間で互いに交差するように積層されている。各ビード部3にはそれぞれ3組のビードコア5が埋設され、カーカス層4の両端部がこれらビードコア5の廻りにビードフィラー6を挟み込むようにしてタイヤ内側から外側に折り返されている。カーカス層4の内側には、左右のビード部3,3間にわたってインナーライナー層7が設けられている。また、両(左右の)サイドウォール部2,2間にわたるカーカス層4の外周側には、有機繊維コードからなるブレーカー層8が埋設されている。更に、トレッド部1において有機繊維コードからなるブレーカー層8の外周側には、スチールコードからなるブレーカー層9が埋設されている。なお、CLはタイヤ赤道面を通るタイヤセンターラインである。
【0012】
上記建設車両用空気入りタイヤにおいて、ブレーカー層9には螺旋体からなるスチールコードSが使用され、そのスチールコードSがタイヤ周方向に連続的に巻回されている。即ち、スチールコードSのタイヤ周方向に対するコード角度は略0°である。スチールコードSの螺旋体は、少なくとも1本の素線を螺旋状に形成したものである。ここで、螺旋体は1本の素線を螺旋状に形成したものであっても良く、或いは、複数本の素線を引き揃えたり撚り合わせた状態で螺旋状に形成したものであっても良い。特に、複数本の素線で螺旋体を構成する場合、それら素線を撚り合わせることが好ましい。スチールコードSの撚り構造については、公知の構造を適用することができ、ゴム浸透性の点で1×n構造が好ましいが、これに限定されるものではない。また、素線の直径は0.10〜5.00mmが好ましく、更には0.12〜2.50mmが好ましい。螺旋体の横断面形状は円形及び楕円形のいずれであっても良い。
【0013】
図2(a),(b)は円形の横断面形状を有する螺旋体からなるスチールコードを例示するものである。図2(a),(b)において、hは螺旋体の外径であり、dは素線の直径であり、pは螺旋体のピッチである。上記スチールコードSは、3d≦h≦30d、より好ましくは5d≦h≦20dの関係を満足すると同時に、d≦p≦5h、より好ましくはd≦p≦3hの関係を満足するものである。螺旋体の外径hが下限値を下回る場合、及び、螺旋体のピッチpが上限値を上回る場合、立体的な衝撃緩和効果が不十分になる。一方、螺旋体の外径hが上限値を上回る場合、補強層のゲージが過度に増大し、耐熱性が低下するか、或いは、素線配置密度の関係で補強層が疎となり、耐カット性が低下する。また、螺旋体のピッチpが下限値dを下回ることは物理的に存在しない。なお、螺旋体の横断面形状は必ずしも真円である必要はない。
【0014】
このようにスチールコードSを螺旋体から構成し、その螺旋体の外径hを大きくすると共にピッチpを小さくすることにより、以下の作用効果を得ることができる。
【0015】
即ち、立体的な構造を有するスチールコードSをブレーカー層9に使用した場合、スチールコードSがトレッド部におけるタイヤ径方向及びタイヤ幅方向の衝撃を効果的に分散させて緩和するので、不整地走行時においても優れた衝撃緩和性を発揮すると共に、耐カット性、耐カットスルー性及び耐セパレーション性などの耐久性を向上することができる。勿論、素線径、撚り構造、ピッチ等を変化させることにより、スチールコードSの強度や柔軟性を調整することが可能である。
【0016】
また、立体的な構造を有するスチールコードSをタイヤ周方向に連続的に巻回してブレーカー層9を構成した場合、上記の如く衝撃緩和性や耐カット性、耐カットスルー性及び耐セパレーション性などの耐久性が優れている点に加えて、スチールコードSへのゴム浸透性が高い点、スチールコードSの端末が殆ど存在しない点により、スチールコードSにセパレーションを生じ難くなるため、空気入りタイヤの耐久性(耐セパレーション性)を更に向上することができる。
【0017】
図3(a),(b)は楕円形の横断面形状を有する螺旋体からなるスチールコードを例示するものである。図3(a),(b)において、hlは螺旋体の長径(最大外径)であり、hsは螺旋体の短径(最小外径)であり、dは素線の直径であり、pは螺旋体のピッチである。上記螺旋体は長径hlに対する短径hsの比(hs/hl)が0.25〜0.95となる楕円形の横断面形状を有している。この螺旋体からなるスチールコードSは、長径hlがタイヤ幅方向に沿うように配置される。また、上記スチールコードSは、3d≦hs≦30d、より好ましくは5d≦hs≦20dの関係を満足すると同時に、d≦p≦5hs、より好ましくはd≦p≦3hsの関係を満足するものである。螺旋体の外径hsが下限値を下回る場合、螺旋体のピッチpが上限値を上回る場合、及び、楕円の比率が下限値を下回る場合、立体的な衝撃緩和効果が不十分になる。一方、螺旋体の外径hsが上限値を上回る場合、補強層のゲージが過度に増大し、耐熱性が低下するか、或いは、素線配置密度の関係で補強層が疎となり、耐カット性が低下する。また、螺旋体のピッチpが下限値dを下回ることは物理的に存在しない。
【0018】
このようにスチールコードSを螺旋体から構成し、その螺旋体の外径hsを大きくすると共にピッチpを小さくすることにより、上記と同様に、衝撃緩和性を高め、耐久性、特に耐カット性、耐カットスルー性及び耐セパレーション性を向上することができる。特に、スチールコードSを構成する螺旋体が楕円形の横断面形状を有する場合、円形の場合に比べて、走行中のスチールコード端末の動きが抑制されることから、耐セパレーション性が向上し、しかも補強層の薄ゲージ化により設計の自由度が増大する。また、スチールコードの総断面積を一定とする条件で補強層を複層化した場合、つまり補強層の複層化に伴って素線径を小さくした場合、単層の場合に比べて、衝撃緩和性や耐カット性、耐カットスルー性及び耐セパレーション性などの耐久性を更に向上することができる。
【0019】
上記空気入りタイヤにおいてスチールコードSをタイヤ内部に埋設するに際して、スチールコードSを100%モジュラスが0.5〜10MPaである接着用ゴム組成物で被覆することが好ましい。これにより、ゴムの剥離を効果的に回避することができる。
【0021】
また、本発明の空気入りタイヤは、その用途が特に限定されるものではないが、主として不整地で使用される建設車両用として好適である。
【0022】
【実施例】
タイヤサイズ1200−24 16PRで、TRA CODE L4のスムーストレッドを有し、8枚のナイロンカーカスプライと2枚のナイロンブレーカープライとスチールブレーカープライから構成されるバイアス構造を有する鉱石運搬車両用空気入りタイヤにおいて、スチールブレーカープライの構造だけを表1のように種々異ならせた本発明タイヤ1〜8、比較タイヤ1〜3、従来タイヤをそれぞれ製作した。
【0023】
これら試験タイヤについて、下記の試験方法により、耐カット性、衝撃緩和性、耐セパレーション性を評価し、その結果を表1に示した。
【0024】
〔耐カット性〕
試験タイヤを鉱石運搬車両に装着し、実際に坑内での運搬作業に使用した後、カット傷による損傷状態を調べ、深さ10mm以上のカット傷の総長さを求めた。評価結果は、測定値の逆数を用い、従来タイヤを100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど耐カット性が優れていることを意味する。
【0025】
〔衝撃緩和性〕
試験タイヤを空気圧550kPaにてリム組みし、1個のクリート(半径50.8mmの半円径の横断面形状を有する突起)を備えた周長15.7mの回転ドラム試験機に取り付け、荷重15.8kN、速度20km/hの条件で走行させ、タイヤがクリートに乗り上げた時の垂直方向加速度を測定した。評価結果は、測定値の逆数を用い、従来タイヤを100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど衝撃緩和性が優れていることを意味する。
【0026】
〔耐セパレーション性〕
試験タイヤを空気圧500kPaにてリム組みし、3個のクリート(半径50.8mmの半円径の横断面形状を有する突起)を備えた周長15.7mの回転ドラム試験機に取り付け、荷重19.0kN、速度10km/hの条件で走行させ、スチールブレーカープライにセパレーションを生じるまでの走行距離を測定した。評価結果は、従来タイヤを100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど耐セパレーション性が優れていることを意味する。
【0027】
【表1】
【0028】
表1から判るように、本発明タイヤ1〜8はいずれも従来タイヤに比べて耐カット性、衝撃緩和性、耐セパレーション性が優れていた。一方、比較タイヤ1はブレーカープライを構成するスチールコードの外径h及びピッチpが規定範囲から外れているため衝撃緩和性が低下していた。比較タイヤ2はブレーカープライを構成するスチールコードの外径h及びピッチpが規定範囲から外れているにも拘らずスチールコードのタイヤ周方向に対するコード角度を0°としたため、そのスチールコードが加硫時のリフトに追従できず、タイヤが得られなかった。比較タイヤ3はブレーカープライに波形状の型付けを施したスチールコードを用いたため衝撃緩和性が低下していた。
【0029】
次に、タイヤサイズ1200−24 16PRで、TRA CODE L4のスムーストレッドを有し、8枚のナイロンカーカスプライと2枚のナイロンブレーカープライとスチールブレーカープライから構成されるバイアス構造を有する鉱石運搬車両用空気入りタイヤにおいて、スチールブレーカープライの構造だけを表2のように種々異ならせた本発明タイヤ9〜13をそれぞれ製作した。これら本発明タイヤ9〜13はブレーカープライのスチールコードを楕円形の横断面形状を有する螺旋体から構成したものである。
【0030】
これら試験タイヤについて、上記と同じ試験方法により、耐カット性、衝撃緩和性、耐セパレーション性を評価し、その結果を表2に示した。
【0031】
【表2】
【0032】
表2から判るように、本発明タイヤ9〜13はいずれも従来タイヤに比べて耐カット性、衝撃緩和性、耐セパレーション性が優れていた。特に、耐セパレーション性の改善効果が顕著であった。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、少なくとも1本の素線を螺旋状に形成した螺旋体からなるスチールコードを補強材として使用し、その螺旋体の外径及びピッチを特定することにより、衝撃緩和性を高め、耐久性、特に耐カット性、耐カットスルー性及び耐セパレーション性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態からなる建設車両用空気入りタイヤを示す子午線半断面図である。
【図2】円形の横断面形状を有する螺旋体からなるスチールコードを示し、(a)は横断面図、(b)は平面図である。
【図3】楕円形の横断面形状を有する螺旋体からなるスチールコードを示し、(a)は横断面図、(b)は平面図である。
【符号の説明】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 インナーライナー層
8 ブレーカー層(有機繊維コード)
9 ブレーカー層(スチールコード)
S スチールコード
Claims (5)
- 左右のビード部間に複数のカーカス層を装架し、左右のサイドウォール部間にわたるカーカス層の外側に有機繊維コードからなるブレーカー層を埋設し、トレッド部のブレーカー層外周側に少なくとも1本の素線を螺旋状に形成した螺旋体からなるスチールコードを備えたブレーカー層を埋設し、前記螺旋体の外径h、前記素線の直径d及び前記螺旋体のピッチpが3d≦h≦30dかつd≦p≦5hの関係を満足する空気入りタイヤ。
- 左右のビード部間に複数のカーカス層を装架し、左右のサイドウォール部間にわたるカーカス層の外側に有機繊維コードからなるブレーカー層を埋設し、トレッド部のブレーカー層外周側に少なくとも1本の素線を螺旋状に形成した螺旋体からなるスチールコードを備えたブレーカー層を埋設し、前記螺旋体は長径hlに対する短径hsの比が0.25〜0.95となる楕円形の横断面形状を有し、前記螺旋体の短径hs、前記素線の直径d及び前記螺旋体のピッチpが3d≦hs≦30dかつd≦p≦5hsの関係を満足する空気入りタイヤ。
- 前記スチールコードをタイヤ周方向に連続的に巻回した請求項1又は請求項2に記載の空気入りタイヤ。
- 前記スチールコードを100%モジュラスが0.5〜10MPaである接着用ゴム組成物で被覆した請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記空気入りタイヤが建設車両用である請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
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