JP4001665B2 - 発酵製品の培養管理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発酵乳等の乳酸菌を利用した各種発酵製品を製造するに際して、その培養工程における乳酸菌の培養状態を管理する方法に関するものであり、さらに詳しくは、本発明は、FT−IR法を利用した、乳酸菌の培養工程の管理方法、特に培養物の凝固速度を簡便に測定し、培養終点を正確に予測することを可能とする新しい乳酸菌の培養管理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、発酵乳などの乳酸菌を利用した各種製品の製造にあたり、その培養工程の管理において、培養の終了点(培養終点)の決定は重要である。
従来は、基質としての糖の濃度、発酵の進行に伴い生成してくる生成物としての乳酸の濃度、および発酵液の酸度やpHなどの数値の変化などを指標として、発酵の管理、即ち、発酵の進行状況や、発酵終了のタイミングを図ることが行われている。これらの数値を得るために、従来は、発酵工程において、適宜の段階で発酵液を一旦サンプリングし、次いで、それぞれの項目について、例えば、中和滴定法などを利用して、常法に従い、分析定量を行うことが通常であった。
しかし、このような方法によると、それぞれの指標値を測定するのに、滴定の誤差が大きいという問題があり、また、かなりの時間や人手を要するので、簡便かつ迅速な形で培養工程の管理を行うことができなかった。
一方、本出願人は先に特開平9−37770において、培養液中の乳酸の解離および非解離型の吸光度および糖の吸光度変化に着目し、FT−IRを用いてpH値などを測定する培養管理方法を提案している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記の如く、上記従来方法に鑑みて、従来、発酵乳などの培養工程において、乳酸菌の培養状態を管理する指標としての、糖の濃度、乳酸の濃度、酸度、pH値を迅速・簡便かつ正確に測定する方法の開発、特にインライン的に測定する方法の開発、およびそれに基づく新しい乳酸菌の培養管理方法の開発が、望まれていた。
本発明者らは、そのような新しい乳酸菌の培養管理方法を開発することを目標として鋭意研究を進めた結果、FT−IR法(フーリエ変換赤外分光法)を用い、発酵液の赤外吸収スペクトルを測定し、培養物中の1635cm-1近傍のアミドIの吸光度および/または1540cm-1近傍のアミドIIの吸光度を経時的に測定し、当該吸光度の変化速度を指標として、培養物の凝固速度を測定し、培養終了点を決定することが可能であることを確認し、本発明を完成した。
また、FT−IR法の中でも全反射スペクトル(ATR−FT−IR法)を測定する方法である、ATR−FT−IR法によれば、インライン的に、各種指標の数値が測定可能であること、特に、培養終点を正確に予測できること、そして、それにより乳酸菌の培養管理の自動化を行うことができることを見出した。
【0004】
本発明は、発酵乳などの乳酸菌を利用した各種製品の製造にあたり、その培養工程を管理する方法を提供することを目的とするものである。
また、本発明は、乳酸菌の培養工程において、培養物の凝固速度を測定し、さらに培養終了点を決定することを可能とする新しい培養管理方法を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明は、乳酸菌を利用した発酵製品の培養工程において、FT−IR法を用いて、培養物の1635cm−1 のアミドIの吸光度および/または1540cm−1 のアミドIIの吸光度を経時的に測定し、当該吸光度の変化速度を指標として発酵製品の培養を管理することを特徴とする上記発酵製品の培養管理方法である。
さらには、本発明は、上記発酵製品の培養工程において、FT−IR法を用いて、培養物の1635cm−1 のアミドIの吸光度および/または1540cm−1 のアミドIIの吸光度を経時的に測定し、当該吸光度の変化速度を指標として、培養物の凝固速度を測定し、培養終了点を予測/決定することを特徴とする上記発酵製品の培養管理方法である。
本発明では、上記FT−IR法として、ATR−FT−IR法を用いて、吸光度の測定を行うこと、を好ましい実施の態様としている。尚、上記FT−IR法による吸光度の測定では、培養物の1635cm −1 のアミドIの吸光度および/または1540cm −1 のアミドIIの吸光度が経時的に測定されるが、測定の精度的に実質的に1635cm −1 あるいは1540cm −1 に含まれる場合は、それらの近傍であっても本発明の範囲に含まれる。
【0006】
【発明の実施の形態】
次に、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明は、乳酸菌を利用した各種製品の培養工程において適用されるが、本発明は、乳酸菌を含む発酵・培養工程であれば、その製品の種類を問わず対象とされる。以下、発酵乳の培養を例として説明する。
乳酸菌を利用した各種製品の製造工程において、乳酸菌の生産する酸によって起こる乳の凝固現象は、1635cm-1および/または1540cm-1近傍の吸光度の変化として観察される。この2つの吸光バンドは、タンパク質分子のアミドの吸収として知られ、1635cm-1はC=O伸縮振動であるアミドI、1540cm-1はN―H変角振動のアミドIIと呼ばれている。
発酵乳の培養において、後記する実施例1の場合のデータを例として、培養時間とpHおよび1635cm-1および1540cm-1の吸光度の関係を図1に示した。吸光度は、培養0時間のスペクトルをリファレンスとして、変化量で示した。乳の凝固が始まるpH5.1近傍で吸光度が急変することを確認した。
この吸光度の変化速度を培養時間に対してプロットすると図2のようになる。この2つの吸光度の変化速度は、主にミルクタンパク質の凝固速度の従属関数である。換言すると、吸光度の変化速度は、発酵の速度を表しているといえる。したがって、吸光度の変化速度から培養終点を決めることができる。
【0007】
具体的には、次の2つの関数式のいづれか、もしくは両方を用いることにより培養終点を決定することができる。
利用する吸光度は、上述の2つの吸収バンドのうちのどちらを用いても良く、あるは両方用いても良く、あるいは2つの吸光度の和を用いても良い。ただし、波数精度の低い分光器を用いる場合や、水の吸光度に変化を与えるような操作を行う場合は、1635cm-1のアミドIの吸光度は、1650cm-1の水の吸収の影響を受けるので、1540cm-1のみを利用することが望ましい。
t= f(v) ─────── (1)
t= f(s) ─────── (2)
吸光度の変化速度が最大となったときから培養終点までの時間:t
吸光度の最大変化速度:v
吸光度の変化速度の軌跡と時間軸とで囲まれる面積:s
関数fは、培養系により異なるので、あらかじめ培養を行い、設定しておく必要がある。
本発明は、乳酸菌の生産する酸によって起こる乳の凝固現象を上記吸光度の変化速度として定量化して、凝固速度を測定し、培養終点を決定することを可能とするものである。本発明は、発酵乳などの乳酸菌を利用した各種製品の培養系における培養管理方法としてその製品の種類を問わず適用することが可能である。
【0008】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。
実施例1
ストレプトコッカス サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)YIT2001 を20% 濃度の脱脂粉乳水溶液で、37℃、緩やかに攪拌しつつ培養した。赤外スペクトルは、フーリエ変換赤外分光光度計 FTS-65A (バイオラド デジラボ)(Bio-Rad Digilab)および、FT-IR/ATR プローブ モデル DPR-210(S) ( アクシオンアナリティカル)(Axion Analytical Inc. )を組み合わせて1900〜900 cm-1の範囲で赤外吸収スペクトルの連続自動インライン計測を行った。データ蓄積および解析は、コンピュータ(IBM-PC)を用いて検討した。
スターターの活性や添加量により培養終点が変化することが知られている。上述した関係式(1) を導くために、スターターの活性を変化させて数バッチ培養した。その結果、以下の関係式が得られた。
t= 0.45/v ─────── (3)
吸光度の変化速度が最大となったときから培養終点までの時間:t
吸光度の最大変化速度:v
【0009】
培養の例として、スターターの活性が高い培養Aと低い培養Bのケースについて述べる。滴定酸度値20を培養終点した場合、培養Aの培養時間は20時間、培養Bは25時間であった。このときの1635cm-1および1540cm-1の吸光度の和の培養経時変化を図3の上段に示す。図3の吸光度の和の培養経時変化を時間で微分した吸光度の変化速度を図3の下段に示す。吸光度の変化速度の最大値と最大値になったときの培養時間は、それぞれ培養Aでは−0.041(Ab./h)、9h、培養Bでは−0.032(Ab./h)、10hであった。この吸光度の最大変化速度を式(3)に代入するとそれぞれ、11、15が得られる。
したがって、総培養時間は培養Aは11+9で20時間、培養Bは15+10で25時間となり、滴定酸度値に基づいた培養の終点と一致し、本発明の方法で培養終点が決定できることが示された。
【0010】
実施例2
ビフィドバクテリウム ブレーベ(Bibidobacterium breve )YIT4065 を20% 濃度の全脂粉乳水溶液で、37℃、緩やかに攪拌しつつ培養した。赤外スペクトルは、フーリエ変換赤外分光光度計 FTS- 65A ( バイオラド デジラボ)(Bio-Rad Digilab)および、FT-IR/ATR プローブ モデル DPR- 210(S) ( アクシオン アナリティカル)(Axion Analytical Inc. )を組み合わせて1900〜900cm-1の範囲で赤外吸収スペクトルの連続自動インライン計測を行った。データ蓄積および解析は、コンピュータ(IBM-PC)を用いて検討した。
滴定酸度値20を培養終点した場合、培養48時間で終点となった。このときの1635cm-1および1540cm-1の吸光度の和の培養経時変化および吸光度の変化速度を図4に示す。培養開始27.5時間で、吸光度の変化速度は最大値の0.0175(Ab./h)となっている。
したがって、この培養系においては、以下の関係式で培養終点の決定が可能であった。
t= 0.35/v
吸光度の変化速度が最大となったときから培養終点までの時間:t
吸光度の最大変化速度:v
【0011】
上述のように、本発明は、発酵乳などの乳酸菌を利用した各種製品の培養工程において、インラインによる赤外分光分析法を用いることにより、培養状態の監視が、測定試料の前処理を行う必要もなく、閉鎖系で監視できることから、コンタミネーションのリスクが小さく、簡便かつ迅速に完全自動で行えることが示された。したがって、従来、滴定酸度で培養プロセスを監視していた乳酸菌飲料、発酵乳などの系において本発明の方法が極めて有効であることが明らかとなった。
【0012】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、発酵乳などの乳酸菌を利用した各種製品の培養工程において、FT−IR法を用いて、培養物の1635cm-1近傍のアミドIの吸光度および/または1540cm-1近傍のアミドIIの吸光度を経時的に測定し、当該吸光度の変化速度を指標として、培養物の凝固速度を測定し、培養終点を決定することを特徴とする上記発酵製品の培養管理方法に係るものであり、本発明によれば、(1)測定試料の前処理を行う必要がない、(2)発酵製品の培養状態を閉鎖系で監視できる、(3)発酵製品の培養工程において、培養物の凝固速度を簡便に測定し、培養終点を正確に予測/決定することができる、(4)インラインにより簡便かつ迅速に発酵製品の培養管理を行うことができる、などの格別の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の発酵乳の培養工程における、培養時間とpH値、および1635cm-1および1540cm-1の吸光度の関係を示す。
【図2】実施例1における、吸光度の変化速度を培養時間に対してプロットした結果を示す。
【図3】実施例1における、1635cm-1および1540cm-1の吸光度の和の培養経時変化を示す。
【図4】上記図3の吸光度の和の培養経時変化を時間で微分した吸光度の変化速度を示す。
Claims (2)
- 乳酸菌を利用した発酵製品の培養工程において、FT−IR法を用いて、培養物の1635cm−1 のアミドIの吸光度および/または1540cm−1 のアミドIIの吸光度を経時的に測定し、当該吸光度の変化速度を指標として、培養物の凝固速度を測定し、培養終点を決定することを特徴とする発酵製品の培養管理方法。
- FT−IR法として、ATR−FT−IR法を用いて、吸光度の測定を行うことを特徴とする、請求項1記載の発酵製品の培養管理方法。
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