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JP4002866B2 - 薄膜磁気ヘッドの製造方法 - Google Patents
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Description

【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、プラズマ処理を用いた薄膜磁気ヘッドの製造方法に関する。
【0002】
【従来技術およびその問題点】
スピンバルブ型薄膜磁気ヘッドは、ピン層/Cu層(非磁性材料層)/フリー層の積層構造を有しており、ピン層は、例えばRu層(非磁性中間層)を介してRKKY的に反平行結合された第1ピン層と第2ピン層を有する積層フェリ構造で形成されることが主流である。このような薄膜磁気ヘッドでは、ピン層とフリー層の間に介在するCu層の界面状態が磁気抵抗効果に大きな影響を与えており、Cu層界面で界面平行方向の平坦性及び界面垂直方向の組成の急峻性が向上すると、磁気抵抗変化率ΔR/Rが増大し、且つ、ピン層とフリー層の間に働くカップリング結合磁界Hinが小さくなる。
【0003】
従来では、Cu層界面の平坦性及び急峻性を向上させるため、酸素によるサーファクタント効果やプラズマ処理による原子再配列効果を利用することが提案されている。具体的には、微量の酸素を含む不活性ガス雰囲気中にプラズマを発生させ、該プラズマにより第2ピン層表面を活性化させて酸素を化学的に吸着させてから、不活性ガス雰囲気中若しくは微量の酸素を含む不活性ガス雰囲気中でCu層を成膜する第1の方法がある。また、プラズマ処理を行なわず、酸素暴露又は酸素流入により第2ピン層表面に酸素を物理的に吸着させ、不活性ガス雰囲気中でCu層を成膜する第2の方法がある。
【0004】
しかしながら、第1の方法では、酸素を含む不活性ガス雰囲気中でプラズマを発生させているため、該プラズマにより酸素が活性種となって様々な反応生成物を生じさせ、チャンバー内及びチャンバー内のターゲットを汚染してしまう。この酸素活性種による汚染は蓄積される傾向がある。このため、プラズマ処理工程とCu層の成膜工程とを別のチャンバーで行なうことが望ましい。ところが、プラズマ処理工程とCu層の成膜工程とを別のチャンバーで行なったとしても、プラズマ処理工程用チャンバーと成膜工程用チャンバーとの間を移送する際に要する時間が比較的長いことから、チャンバー間の移送中に、第2ピン層表面が汚染されてしまうことが問題になっている。また、プラズマ処理工程用チャンバーと成膜工程用チャンバーとの間に設けられた搬送チャンバーでは、チャンバー内のベース真空度がプラズマ処理工程用チャンバーや成膜工程用チャンバー等に比較して低かったため、これによっても第2ピン層表面が汚染されてしまっていることが判明した。
【0005】
一方、第2の方法では、第2ピン層表面に吸着する酸素量が少なくて十分なサーファクタント効果が得られず、第1の方法よりもカップリング結合磁界Hinの低減度が少ない。酸素吸着量を増大させるためには、第2ピン層表面に供給する酸素量を多くすることが考えられるが、酸素量の調整は難しく、酸素量が多すぎると第2ピン層表面に酸化層ができてしまう。この酸化層は、逆に磁気抵抗変化率ΔR/Rを低下させる。
【0006】
【特許文献】
1.特開2002−124718号公報
2.特開2003−8106号公報
3.特再平10−44521号公報
4.米国特許第6353519 B2
5.米国特許第6356419 B1
6.米国特許第6353518 B2
7.米国特許第6226159 B1
【非特許文献】
"Oxygen as a surfactant in the growth of giant magnetoresistance spin valves" written by W.F.Egelhoff et al, J.Appl.Phys., Vol.82, No.12, pp.6142‐6151, 15 December 1997
【0007】
【発明の目的】
本発明は、カップリング磁界Hin及び磁気抵抗変化率ΔR/Rの改善を図れる薄膜磁気ヘッドの製造方法を得ることを目的とする。
【0008】
【発明の概要】
本発明は、プラズマ処理から成膜までの工程を同一の真空チャンバー内で行なえば、プラズマ処理工程用チャンバーと成膜工程用チャンバーの間を移送する必要がなくなるので、チャンバー間の移送中に生じる界面汚染が防止され、プラズマ処理による効果及び酸素吸着によるサーファクタント効果が十分に発揮されることに着目してなされたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、薄膜磁気ヘッドを構成する複数の層のいずれかの層からなる第1特定層上に、この第1特定層とは別の第2特定層を積層形成する際に、純Ar雰囲気中でプラズマ処理を行ない、前記第1特定層界面を活性化させるステップと、前記プラズマ処理終了直後に酸素雰囲気中あるいは酸素と不活性ガスによる混合ガス雰囲気中で、前記活性化させた第1特定層界面に酸素を吸着させるステップとを有する表面改質工程と;前記表面改質工程により酸素を吸着させた第1特定層界面上に、前記第2特定層を成膜する工程と;を同一の真空チャンバー内で連続して行なうことを特徴としている。
【0010】
上記構成によれば、酸素を含まない純Arガス雰囲気中でプラズマ処理が行なわれるので、プラズマによる反応生成物が生じず、チャンバー内の雰囲気が安定すると共にターゲットやチャンバー内がプラズマ反応生成物で汚染される虞がない。よって、表面改質工程と成膜工程とを同一の真空チャンバー内で行なっても、何ら問題は生じない。表面改質工程と成膜工程が同一の真空チャンバー内で連続して行なわれれば、酸素吸着させた第1特定層界面が不純物や外気によって汚染されることなく、プラズマ処理による効果及び酸素によるサーファクタント効果が十分に発揮される。この結果、磁気抵抗変化率ΔR/Rは増大し、カップリング磁界Hinは低減する。カップリング磁界Hinが低減すれば、Cu層の膜厚をより薄くすることで、磁気抵抗変化率ΔR/Rをより増大させることができる。
【0011】
なお、第1特定層界面に酸素を吸着させるステップは、酸素雰囲気中あるいは酸素と不活性ガスによる混合ガス雰囲気中で行なっているが、上記不活性ガスは、酸素フロー量の調節を容易にするため酸素の希釈剤として用いたものであり、不活性ガス自体が酸素吸着に対して関与するものではない。
【0012】
具体的に例えば、薄膜磁気ヘッドが下から順に少なくともピン層、非磁性材料層及びフリー層を積層したシングルスピンバルブ型薄膜磁気ヘッドである場合、第1特定層界面は、非磁性材料層よりも下に位置する層界面のいずれかであることが好ましい。非磁性材料層は、例えばCu、Cr、Au、Agなどにより形成することができ、特にCuで形成されていることが好ましい。
【0013】
酸素によるサーファクタント効果は、第1特定層界面に酸素を一度吸着させれば、第1特定層界面上に何層か積層されても、ある程度持続できることがわかっている。よって、非磁性材料層よりも下に位置する層界面に上記表面改質工程が施されていれば、非磁性材料層界面での界面平行方向の平坦性及び界面垂直方向の組成の急峻性が改善される。上記第1特定層界面は、非磁性材料層よりも下に位置する層界面であれば複数設定することができ、上記表面改質工程は、非磁性材料層よりも下に位置する層界面の少なくとも1以上に施すことができる。非磁性材料層よりも下に位置する層界面の複数に表面改質工程を施せば、さらに、非磁性材料層の上に積層形成される各層の界面平坦性及び組成の急峻性が向上する。
【0014】
上記薄膜磁気ヘッドには、ピン層の直下位置に位置させて、該ピン層の磁化方向を固定するための反強磁性層を備えることができる。このように反強磁性層が備えられている場合、第1特定層界面は、反強磁性層の上面から非磁性材料層までの間に位置していることが好ましい。通常、反強磁性層は100〜200Å程度の厚い膜厚で形成されているので、反強磁性層よりも下の層界面に表面改質工程を施しても、反強磁性層が厚すぎて該反強磁性層よりも上の層まで効果が達しないと思われるからである。
【0015】
また上記薄膜磁気ヘッドは、ピン層の磁化方向固定するための反強磁性層を備えない態様も可能である。すなわち、ピン層を、磁歪定数が正の値をとる磁性材料により形成し、その記録媒体との対向面側の端面を開放させればよい。この場合、ピン層に対して二次元的に且つ等方的に加わっていた応力の対称性が崩れることから、ピン層にはハイト方向に平行な方向に一軸性の引張り応力が加えられる。この逆磁歪効果により、ピン層の磁化方向はハイト方向に平行な一軸方向で安定化する。このように逆磁歪効果を利用してピン層の磁化方向を固定すれば、100〜200Å程度の厚い反強磁性層を備えたGMRヘッドに比べて分流損失が少なくなるので、磁気検出出力を向上させることができる。また、反強磁性層を備えない分だけシールド間隔を縮められるので、高記録密度化に対応しやすくなる。
【0016】
第1特定層界面はピン層の上面とし、第2特定層は非磁性材料層とすることが好ましい。すなわち、ピン層上面に上記表面改質工程を施した後に同一真空チャンバー内で非磁性材料層を形成することが好ましい。非磁性材料層の形成面(非磁性材料層の直下位置)となるピン層の上面が表面改質工程により平滑化されれば、より効果的に、非磁性材料層上に積層形成される各層の界面平坦性及び組成の急峻性を向上させることができる。
【0017】
ピン層の少なくとも上面は、表面改質工程で酸素に触れるため、酸化されにくい磁性材料、例えばCo、CoNi又はCoNiFe合金により形成することが好ましい。酸化されにくい磁性材料を用いれば、酸素雰囲気中又は酸素と不活性ガスによる混合ガス雰囲気中における酸素濃度を増大させて、より多くの酸素を第1特定層界面上に吸着させることができる。
【0018】
ピン層は、磁性膜による単層構造又は多層構造としても、下から順に第1ピン層、非磁性中間層及び第2ピン層を積層して形成した積層フェリ構造としてもよい。非磁性中間層はRuで形成されていることが実際的である。ピン層を積層フェリ構造とした場合、非磁性中間層の上面を第1特定層界面とすることが好ましい。Ruは酸化しにくい材料であるから、酸素雰囲気中又は酸素と不活性ガスによる混合ガス雰囲気中における酸素濃度を増大させても非磁性中間層(Ru層)の上面に酸化層が生じにくく、該非磁性中間層の上面により多くの酸素を吸着させることができる。
【0019】
別の態様として、薄膜磁気ヘッドが下から順に少なくともフリー層、非磁性材料層及びピン層を積層したスピンバルブ型薄膜磁気ヘッドである場合、第1特定層界面は、非磁性材料層よりも下に位置する層界面のいずれかであることが好ましい。非磁性材料層はCuで形成されていることが実際的である。上述したように、サーファクタント効果は第1特定層界面上に何層か積層されてもある程度持続されるから、非磁性材料層よりも下に位置する層界面の少なくとも1以上に表面改質工程が施されていればよい。
【0020】
第1特定層界面はフリー層の上面とし、第2特定層は非磁性材料層とすることが好ましい。すなわち、フリー層上面に上記表面改質工程を施した後に同一真空チャンバー内で非磁性材料層を形成することが好ましい。非磁性材料層の形成面(非磁性材料層の直下位置)となるフリー層の上面が表面改質工程により平滑化されれば、より効果的に、非磁性材料層上に積層形成される各層の界面平坦性及び組成の急峻性を向上させることができる。
【0021】
フリー層の少なくとも上面は、表面改質工程で酸素に触れるため、酸化されにくい磁性材料、例えばCo、CoNi、CoNiFe合金により形成することが好ましい。酸化されにくい磁性材料を用いれば、酸素雰囲気中又は酸素と不活性ガスによる混合ガス雰囲気中における酸素濃度を増大させて、より多くの酸素を第1特定層界面上に吸着させることができる。
【0022】
フリー層は、磁性膜による単層構造又は多層構造としても、下から順に第1フリー層、非磁性中間層及び第2フリー層を積層して形成した積層フェリ構造としてもよい。非磁性中間層はRuにより形成されていることが実際的である。フリー層を積層フェリ構造とした場合、非磁性中間層の上面を第1特定層界面とすることが好ましい。Ruは酸化しにくい材料であるから、酸素雰囲気中又は酸素と不活性ガスによる混合ガス雰囲気中における酸素濃度を増大させても非磁性中間層の上面に酸化層が生じにくく、該非磁性中間層の上面により多くの酸素を吸着させることができる。
【0023】
この態様の薄膜磁気ヘッドにおいても、反強磁性層を備えずに、逆磁歪効果を利用してピン層の磁化方向を安定化させることができる。ピン層を、磁歪定数が正の値をとる磁性材料により形成し、その記録媒体との対向面側の端面を開放させればよい。
【0024】
さらに本発明は、デュアルスピンバルブ型の薄膜磁気ヘッドにも適用可能である。具体的に、下から順に少なくとも下部ピン層、下部非磁性材料層、フリー層、上部非磁性材料層及び上部ピン層を積層したデュアルスピンバルブ型薄膜磁気ヘッドである場合は、第1特定層界面が、上部ピン層よりも下に位置する層界面であることが好ましい。この態様では、下部ピン層の直下位置に下部反強磁性層を備え、上部ピン層の直上位置に上部反強磁性層を備えることができ、この場合の第1特定層界面は、下部反強磁性層の上面から上部ピン層までの間に位置していることが好ましい。あるいは、下部ピン層及び上部ピン層を、磁歪定数が正の値をとる磁性材料で形成し、さらに記録媒体との対向面側の端面を開放させることにより、反強磁性層を備えずに磁化方向を固定させてもよい。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明を説明する。図中において、X方向はトラック幅方向、Y方向は記録媒体からの漏れ磁界方向、Z方向は記録媒体の移動方向及び巨大磁気抵抗効果素子を構成する各層の積層方向である。
【0026】
図1〜図6は、本発明の第1実施形態による薄膜磁気ヘッド(GMRヘッド)の製造方法を示す模式断面図である。
【0027】
第1実施形態によるGMRヘッドは、下から順に下部シールド層2/下部ギャップ層3/シード層4/反強磁性層5/ピン層(第1ピン層6/Ru層(非磁性中間層)7/第2ピン層8)/Cu層(非磁性材料層)9/フリー層10の積層構造を有するシングルスピンバルブ型薄膜磁気ヘッドである。
【0028】
先ず、図1に示すように、基板1上に下部シールド層2と下部ギャップ層3を成膜する。成膜にはスパッタ法を用いる。スパッタ法にはDCマグネトロンスパッタ法、RFスパッタ法、イオンビームスパッタ法、ロングスロースパッタ法、コリメーションスパッタ法などを使用できる。下部シールド層2は例えばNiFeなどの軟磁性材料により形成し、下部ギャップ層3は例えばアルミナなどの絶縁材料により形成する。
【0029】
次に、シード層4、反強磁性層5及び第1ピン層6を真空チャンバー内で下から順番に成膜する。成膜にはスパッタ法を用いる。シード層4は、該シード層4上に形成される各層の結晶配向を良好にする機能を発揮する層であって、NiFe合金、NiFeCr合金あるいはCrなどにより形成することができる。本実施形態のシード層4は、例えば(Ni0.8Fe0.260Cr40により、35Å〜60Å程度の膜厚で形成する。反強磁性層5は、例えばPtMn系合金などにより形成する。第1ピン層6は、NiFe合金やCoFe合金などの磁性材料で形成することができ、具体的に例えばCo90Fe10により形成する。第1ピン層6の膜厚は10〜30Å程度とする。なお、第1ピン層6がNiFe合金で形成される場合には、第1ピン層6と反強磁性層5の間にCoやCoFeなどからなる拡散防止層が形成されていることが好ましい。
【0030】
続いて、同一真空チャンバー内で、第1ピン層6上にRu層7(第1特定層)を成膜する。成膜にはスパッタ法を用いる。Ru層7は、RKKY的な伝導電子を介した間接交換相互作用により第1ピン層6と後に形成される第2ピン層との間に反平行結合磁界を生じさせるため、例えば9Å程度の膜厚で形成する。
【0031】
Ru層7までを成膜したら、同真空チャンバー内に純Arガスを導入した後、図2に示すように、スパッタが起こらない程度に低エネルギーのプラズマをRu層界面7a(第1特定層界面)上に形成する。すると、プラズマ粒子がRu層界面7aに衝突してRu層界面7aに存在するRu原子を活性化し、Ru層界面7aで原子再配列が促進される。これにより、Ru層界面7aの表面粗さが低減される。
【0032】
プラズマ処理時の条件は、例えば以下の範囲である。
高周波電力:30〜120W
Arガス圧:0.13〜3.99Pa
処理時間:30〜180秒
【0033】
プラズマ処理後は直ちに、同真空チャンバー内に、純Arガスに加えて微量の酸素を流入する。すると、上述のプラズマ処理によりRu層界面7aが活性化されているため、純Arガスと酸素による混合ガス雰囲気中でRu層界面7aに酸素が吸着される。図3は、酸素がRu層界面7aに吸着する様子を模式的に示している。Ru層界面7aに吸着された酸素はサーファクタントとして機能し、このRu層界面7aよりも上に積層形成される各層の界面平坦性及び組成急峻性を改善させる。本実施形態では、酸素フロー量の調整を容易にするため純Arガス(不活性ガス)に微量の酸素を加えて流入し、純Arガスと酸素による混合ガス雰囲気中でRu層界面7aに酸素を吸着させている。上記純Arガス(不活性ガス)は酸素の希釈剤として用いたもので、純Arガス自体が酸素吸着に対して関与するものではない。よって、純Arガス(不活性ガス)を用いずに酸素のみを真空チャンバー内に流入し、酸素雰囲気中でRu層界面7aに酸素を吸着させてもよい。
【0034】
酸素フロー時の条件は、例えば以下の範囲である。
酸素ガス圧:0.266×10-3〜6.65×10-3Pa
酸素フロー時間:30〜180秒
【0035】
Ruは酸化されにくい特性を有するため、酸素供給量(酸素フロー時間)を多くしてもRu層界面7aに酸化層が生じることなく、Ru層界面7aに十分な量の酸素を吸着させることができる。
【0036】
続いて、同真空チャンバー内に純Arガスを導入し、図4に示すように、純Arガス雰囲気中で第2ピン層8(Ru層7に対する第2特定層、Cu層9に対する第1特定層)を成膜する。成膜にはスパッタ法を用いる。第2ピン層8は、NiFe合金やCoFe合金などの磁性材料ですることができ、少なくとも界面がCo、CoNi又はCoNiFe合金等の酸化されにくい磁性材料で形成されていることが好ましい。具体的には、例えばCo90Fe10とCoの積層膜、又はCoの単層膜により形成することができる。第2ピン層8の膜厚は、15Å〜30Å程度であり、第1ピン層6よりも厚く形成されている。この第2ピン層8の磁化と第1ピン層6の磁化は、Ru層7を介して反平行な状態に保持される。図4では、上述のプラズマ処理と酸素フローによる表面改質処理を施したRu層界面7aが太線で示されている。
【0037】
本実施形態では、第1ピン層6、Ru層7及び第2ピン層8による積層フェリ構造でピン層を形成しているが、ピン層は単層構造でもよい。ピン層を単層構造とする場合は、ピン層表面に上記表面改質処理を施せるように、例えば酸化されにくいCo、CoNi又はCoNiFe合金等の磁性材料によりピン層を形成することが好ましい。
【0038】
第2ピン層8を成膜したら、同真空チャンバー内で、上述のRu層界面7aに施した表面改質処理を第2ピン層界面8a(第1特定層界面)にも行なう。すなわち、純Arガス雰囲気中で第2ピン層界面8aにプラズマ処理を施した後、速やかに同真空チャンバー内に微量の酸素を流入し、酸素雰囲気中あるいは純Arガス(不活性ガス)と酸素による混合ガス雰囲気中で、プラズマ処理で活性化されている第2ピン層界面8aに酸素を吸着させる。
【0039】
第2ピン層界面8aの表面改質工程は、以下の条件範囲で行なう。
<プラズマ処理>
高周波電力:30〜120W
純Arガス圧:0.13〜3.99Pa
処理時間:30〜180秒
<酸素フロー>
酸素分圧:0.11×10-3〜3.99×10-3Pa
処理時間:30〜180秒
【0040】
この表面改質工程により、第2ピン層界面8aがより平滑化され、この第2ピン層界面8a上に形成されるCu層9の界面平坦性及び組成の急峻性を向上させることができる。図5では、表面改質処理を施した第2ピン層界面8aが太線で示されている。
【0041】
続いて、同真空チャンバー内に純Arガスを導入し、図5に示すように、純Arガス雰囲気中でCu層9(第2特定層)、フリー層10及びキャップ層11を連続成膜する。成膜にはスパッタ法を用いる。Cu層9は、第2ピン層8とフリー層10の磁気的な結合を防止する導電層であって、17Å〜30Å程度の膜厚で形成する。フリー層10は、NiFe合金やCoFe合金などの磁性材料により、単層膜、多層膜あるいは積層フェリ構造で形成することができる。具体的には、例えばCo90Fe10とNi80Fe20の2層より形成する。フリー磁性層25がNiFe合金で形成されるとき、フリー層10とCu層9の間にCoやCoFeなどからなる拡散防止層が形成されていることが好ましい。フリー層10の膜厚は、20Å〜60Å程度である。キャップ層11は、酸化防止層として機能するもので、例えばTaにより形成する。このキャップ層11の膜厚は10Å〜50Å程度とする。
【0042】
上述したようにCu層9よりも下に位置する層界面には2回(Ru層界面7a及び第2ピン層界面8a)の表面改質処理が施されている。これにより、第2ピン層界面8a上に成膜されたCu層9は、その界面平坦性及び界面急峻性が良好に確保されている。Cu層9の膜厚については後述する。
【0043】
続いて、基板1を真空チャンバーからアニール炉に移し、ハイト方向(図示Y方向)の磁場中でアニール処理して反強磁性層5と第1ピン層6の間に交換結合磁界を生じさせる。この磁場中アニールにより、第1ピン層6の磁化方向は図示Y方向に固定される。第1ピン層6と第2ピン層8は、Ru層7を介したRKKY的相互作用により、互いに磁化が反平行状態となっている。よって、第2ピン層8の磁化は、図示Y方向と反平行方向に固定される。本実施形態では、第2ピン層8の磁気的膜厚(飽和磁化Ms×膜厚t)を第1ピン層6の磁気的膜厚よりも大きくしてあるので、ピン層全体としての磁化方向は第2ピン層8の磁化方向に等しくなる。すなわち、ハイト方向に対して反平行方向となる。
【0044】
アニール処理後は、キャップ層11上に光学的なGMR素子面積(トラック幅寸法Tw及び高さ寸法MRh)を定めるレジストを形成し、このレジストで覆われていないキャップ層11からシード層4までの各層を例えばイオンミリングやエッチングにより除去する。これにより、記録媒体との対向面側からみたときに断面略台形状をなすGMR素子Mが得られる。
【0045】
GMR素子Mのトラック幅方向の両側には、フリー層10の磁化方向を図示X方向に揃えるためのハードバイアス層12とGMR素子Mに給電するための電極層13とを順に形成する。ハードバイアス層12は、例えばCo−Pt合金やCo−Cr−Pt合金などにより、100〜500Åの膜厚で形成する。電極層13は、例えばCr、W、Au、Rh、α−Taなどの導電材料により400〜1500Å程度の膜厚で形成する。不図示ではあるが、ハードバイアス層12の直下には、CrやW−Ti合金などからなるバイアス下地層が15〜100Å程度の膜厚で形成されていることが好ましい。
【0046】
電極層13及びキャップ層11上には、アルミナなどの絶縁材料からなる上部ギャップ層14が形成され、この上部ギャップ層14上にNiFe合金などの軟磁性材料からなる上部シールド層15を形成する。以上により、図6に示すGMRヘッドが完成する。
【0047】
図7〜図11は、本発明の第2実施形態による薄膜磁気ヘッド(GMRヘッド)の製造方法を示す模式断面図である。
【0048】
第2実施形態は、反強磁性層を備えずに、ピン層自体の一軸異方性により磁化固定したいわゆる自己固定式のシングルスピンバルブ型薄膜磁気ヘッドを製造する方法である。自己固定式のGMRヘッドは、100〜200Å程度の厚い反強磁性層を備えたGMRヘッドに比べて分流損失が少なくなるため磁気検出出力が向上すること、及び、反強磁性層を備えない分だけシールド間隔を縮められるので高記録密度化に対応しやすい等の利点を有している。この第2実施形態により形成される薄膜磁気ヘッドは、上述した第1実施形態と実質的に同等の機能を有する構成要素を備えるので、該構成要素には図1に示す第1実施形態と同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0049】
先ず、基板1上に下部シールド層2と下部ギャップ層3を成膜する。次に、下部ギャップ層3上に、シード層4と第1ピン層6’を真空チャンバー内で順次成膜する。成膜にはスパッタ法を用いる。第1ピン層6’は、NiFe合金やCoFe合金などの磁性材料で形成することができ、その磁歪定数λが正の値をとる。具体的に、例えばCo90Fe10により形成する。第1ピン層6’の膜厚は、第1実施形態と同様、10〜30Å程度とする。
【0050】
続いて、同一真空チャンバー内で、第1ピン層6’上にRu層7(第1特定層)を成膜する。成膜にはスパッタ法を用いる。Ru層7は、RKKY的な伝導電子を介した間接交換相互作用により第1ピン層6’と後に形成される第2ピン層との間に反平行結合磁界を生じさせるため、例えば9Å程度の膜厚で形成する。
【0051】
Ru層7までを成膜したら、上述の第1実施形態と同様に、同真空チャンバー内に純Arガスを導入した後、スパッタが起こらない程度に低エネルギーのプラズマをRu層界面7a(第1特定層界面)上に形成する(図2参照)。これにより、プラズマ粒子がRu層界面7aに衝突してRu層界面7aに存在するRu原子を活性化し、原子再配列効果でRu層界面7aの表面粗さが低減される。プラズマ処理後は直ちに、同真空チャンバー内に、微量の酸素を流入する。すると、上述のプラズマ処理によりRu層界面7aが活性化されているため、Ru層界面7aに酸素が吸着される(図3参照)。Ru層界面7aに吸着された酸素はサーファクタントとして機能し、このRu層界面7aよりも上に積層形成される各層の界面平坦性及び組成の急峻性を改善させる。なお、プラズマ処理時の条件及び酸素フロー時の条件は第1実施形態と同様であるから、そちらを参照されたい。
【0052】
続いて、同真空チャンバー内に純Arガスを導入し、純Arガス雰囲気中でRu層7上に第2ピン層8’(Ru層7に対する第2特定層、Cu層9に対する第1特定層)を成膜する。成膜にはスパッタ法を用いる。第2ピン層8’は、NiFe合金やCoFe合金などの磁性材料ですることができ、その磁歪定数λが正の値をとっている。この第2ピン層8’は、少なくとも界面がCo、CoNi又はCoNiFe合金等の酸化されにくい磁性材料で形成されている。具体的には、例えばCo90Fe10とCoの積層膜、又はCoの単層膜により形成することができる。第2ピン層8’の膜厚は、15Å〜30Å程度であり、第1ピン層6’よりも厚く形成されている。この第2ピン層8’の磁化と第1ピン層6’の磁化は、Ru層7を介して反平行な状態に保持される。図7では、上述のプラズマ処理と酸素フローによる表面改質処理を施したRu層界面7aが太線で示されている。
【0053】
第2ピン層8’を成膜したら、第1実施形態と同様に、同真空チャンバー内で、上述のRu層界面7aに施した表面改質処理を第2ピン層界面8a’(第1特定層界面)にも行なう。すなわち、純Arガス雰囲気中で第2ピン層界面8a’にプラズマ処理を施した後、速やかに同真空チャンバー内に微量の酸素を流入し、活性化された第2ピン層界面8a’に酸素を吸着させる。図7では、表面改質処理を施した第2ピン層界面8aが太線で示されている。なお、プラズマ処理時の条件及び酸素フロー時の条件は、第1実施形態と同様であるので、そちらを参照されたい。
【0054】
続いて、同真空チャンバー内に純Arガスを導入し、図7に示すように、純Arガス雰囲気中でCu層9(第2特定層)、フリー層10及びキャップ層11を連続成膜する。成膜にはスパッタ法を用いる。上述したようにCu層9よりも下に位置する層界面には2回(Ru層界面7a及び第2ピン層界面8a’)の表面改質処理が施されているので、第2ピン層界面8a’上に成膜されたCu層9は、その界面平坦性及び組成の急峻性が良好に確保されている。Cu層9の膜厚については後述する。
【0055】
キャップ層11まで成膜したら、図8に示すように、該キャップ層11上に光学的なGMR素子面積(トラック幅寸法Tw及び高さ寸法MRh)を定めるレジストを形成し、このレジストで覆われていないキャップ層11からシード層4までの各層を例えばイオンミリングやエッチングにより除去する。これにより、記録媒体との対向面側からみたときに断面略台形状をなすGMR素子Mが得られる。
【0056】
続いて、図9に示すように、上記レジストを残したままの状態でGMR素子Mのトラック幅方向の両側に、不図示のバイアス下地層とハードバイアス層12と電極層13とを順に形成した後、レジストをリフトオフにより形成する。電極層13及びキャップ層11上には、上部ギャップ層14と上部シールド層15を順に形成する。
【0057】
ここまでの工程により、図10に示すGMRヘッド構造が完成する。このGMRヘッド構造は、1枚の基板1上に複数形成されるものである。複数のGMRヘッド構造が形成されている基板1を所定のダイシングラインに沿って切断することで、個々のGMRヘッド(スライダ)が得られる。この切断工程では、GMR素子M、ハードバイアス層12及び電極層13の、記録媒体との対向面側の端面Fを開放し、露出させる。端面Fは、例えば膜厚20〜50Å程度のダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなる薄い保護層で覆ってもよい。
【0058】
上述のようにGMR素子M、ハードバイアス層12及び電極層13の、記録媒体との対向面側の端面Fは開放端となっている。GMR素子Mの上下に位置するギャップ層などからの応力は、元々は二次元的且つ等方的に加わっているが、端面Fが開放端とされることによりその対称性が崩れる。この結果、GMR素子Mには、ハイト方向に平行な方向に一軸性の引張り応力が加えられている。上述したようにピン層(第1ピン層6’及び第2ピン層8’)は、磁歪定数λが正の値である磁性材料によって形成されているので、逆磁歪効果(磁気弾性異方性)により、ピン層の磁化方向はハイト方向に平行な一軸方向で安定化する。
【0059】
上記切断工程後、あるいはスライダをロードビームに取り付けた後に、ハードバイアス層の着磁と、第1ピン層6’及び第2ピン層8’の磁化方向を固定するための工程を行なう。第1ピン層6’及び第2ピン層8’の磁化方向は、一方がハイト方向に固定され、他方がハイト方向に対して反平行方向に固定される。
【0060】
以上の第2実施形態では、逆磁歪効果(磁気弾性異方性)を利用して第1ピン層6’及び第2ピン層8’の磁化固定を行なっているが、誘導磁気異方性を利用してピン層の磁化を固定することも可能である。具体的には、電極層までを形成した後に、第1ピン層及び第2ピン層にハイト方向へ磁場を印加しながらアニール処理を行なうことで、第1ピン層及び第2ピン層にハイト方向に平行な一軸異方性を付与することができる。
【0061】
この第2実施形態において、シード層4と第1ピン層6’の間には、図11に示すように、5Å以上50Å以下の膜厚で形成された非磁性金属層16を介在させてもよい。非磁性金属層16は、PtMn合金、又はX−Mn合金(ただしXは、Pt、Pd、Ir、Rh、Ru、Os、Ni、Feのいずれか1種又は2種以上の元素である)により形成され、第1ピン層6’との界面で結晶不整合を生じさせ、この結晶構造の歪により第1ピン層6’の磁歪定数λを増大させる。第1ピン層6’の磁歪定数λが増大すれば、第1ピン層6’及び第2ピン層8’の磁化固定をより強固にでき、出力が増大すると共に出力の安定性及び対称性も向上する。
【0062】
次に、図12及び図13を参照し、図6に示す本実施例と、第1比較例及び第2比較例とを比較して説明する。
【0063】
本実施例と第1比較例及び第2比較例は、GMR素子Mの層構成及び表面改質工程を施した界面位置(第1特定層界面)が同一である。具体的にGMR素子Mは、シード層4がNiFeCr膜(52Å)、反強磁性層5がPtMn膜(140Å)、第1ピン層6がCoFe膜(16Å)、Ru層7が9Å、第2ピン層8がCoFe膜(17Å)とCo膜(5Å)、Cu層9が19Å、フリー層10がCoFe膜(10Å)とNiFe膜(42Å)、及びキャップ層11がTa膜(30Å)により形成されていて、Ru層界面7a及び第2ピン層界面8aに表面改質工程が施されている(クレーム対応のためCo膜を加えた構成にしてあります)。
【0064】
【実施例】
本実施例では、上述したようにRu層7を成膜した後、純Ar雰囲気中でプラズマ処理を施した後、速やかに酸素雰囲気中あるいは純Arガスと微量酸素の混合ガス雰囲気中でRu層界面7aに酸素を吸着させている。酸素を吸着させたRu層界面7a上には、純Ar雰囲気中で第2ピン層を成膜する。成膜工程と表面改質工程(Arプラズマ処理及び酸素フロー処理)は、同一の真空チャンバー内で連続して実施される。同様にして、第2ピン層界面8aにも酸素を吸着させてある。
【0065】
表面改質工程は、下記最適化条件で行なった。
<Arプラズマ処理>
高周波電力:100W
Arガス圧:2.66Pa
処理時間:120秒(Ru層界面7a)
60秒(第2ピン層界面8a)
<酸素フロー処理>
酸素分圧:1.43×10-3Pa(Ru層界面7a)
0.48×10-3Pa(第2ピン層界面8a)
処理時間: 60秒(Ru層界面7a)
60秒(第2ピン層界面8a)
【0066】
【第1比較例】
第1比較例では、Ru層7を成膜した後、純Arガスと微量の酸素の混合ガス雰囲気でプラズマ処理を施して、Ru層界面7aに酸素を吸着させている。酸素を吸着させたRu層界面7a上には、純Arガスと酸素の混合ガス雰囲気で第2ピン層8を成膜する。成膜工程と表面改質工程(Ar/O2プラズマ処理)は、別の真空チャンバー内で実施される。同様にして、第2ピン層界面8aにも酸素を吸着させてある。表面改質工程(Ar/O2プラズマ処理)は、下記最適化条件で行なった。
高周波電力:10W
酸素分圧:1.17×10-3Pa
処理時間:25秒
【0067】
【第2比較例】
第2比較例では、Ar雰囲気中でRu層7を成膜した後、プラズマ処理を行なわずに、純Arガスと微量の酸素による混合ガスを真空チャンバー内に流入することで、Ru界面7aに酸素を物理的に吸着させている。酸素を吸着させたRu界面7a上には、Ar雰囲気中で第2ピン層8を成膜する。この成膜工程と表面改質工程(酸素フロー処理)は、同一の真空チャンバー内で実施される。同様にして、第2ピン層界面8aにも酸素を吸着させてある。表面改質工程(酸素フロー処理))は、下記最適化条件で行なった。
酸素分圧:5.69×10-3Pa
処理時間:120秒
【0068】
以上の本実施例及び第1、第2比較例において、磁気抵抗変化率ΔR/R(%)とカップリング磁界Hinを測定した結果を表1に示す。
【0069】
【表1】
Figure 0004002866
【0070】
表1に示されるように本実施例では、磁気抵抗変化率ΔR/Rは第1比較例及び第2比較例と同程度であるが、カップリング磁界Hinが第1比較例及び第2比較例よりも低減されていることがわかる。本実施例のカップリング磁界Hinが第1比較例よりも低減されているのは、同一真空チャンバー内で表面改質工程と成膜工程とを連続して行なったことから、表面改質後の界面が不純物等により汚染されず、サーファクタント効果が十分に発揮されているためだと推測される。また第2比較例よりも低減されているのは、Arプラズマ処理により界面が活性化され、第2比較例よりも多くの酸素が界面に吸着されたためだと推測される。
【0071】
図12は、カップリング磁界Hin(kA/m)とCu層9の膜厚(Å)の関係を示すグラフである。図12を見ると、上述したように本実施例のほうが第1比較例及び第2比較例よりもカップリング磁界Hinが小さくなっていて、同じ大きさのカップリング磁界Hinを得る場合、本実施例のほうが第1比較例及び第2比較例よりもCu層9の膜厚が薄くできることがわかる。カップリング磁界Hinが小さい状態でCu層9の膜厚を薄くできれば、GMR効果に寄与しない電子(シャントロス)を低減することができ、図13に示すように磁気抵抗変化率ΔR/Rが増大する。Cu層9の膜厚は、本実施例では18〜19Å程度とすることが好ましい。これに対し、第1比較例及び第2比較例では、Cu層9の膜厚を薄くするとカップリング磁界Hinが増大し、これによりピン層(第1ピン層6、Ru層7及び第2ピン層8)とフリー層10の磁化の反平行状態を得づらく、磁気抵抗変化率ΔR/Rが逆に減少してしまう。
【0072】
以上のように本実施形態では、純Arプラズマ処理及び酸素フローによる表面改質工程と成膜工程とを同一の真空チャンバー内で連続して行なうので、酸素吸着させた界面が不純物や外気によって汚染されることなく、プラズマ処理による効果及び酸素によるサーファクタント効果が十分に発揮される。この結果、図7に示すように、従来の表面改質技術を用いてGMRヘッドを形成した場合よりも、カップリング磁界Hinを改善することができた。カップリング磁界Hinが小さくなれば、Cu層9の膜厚をより薄くして磁気抵抗変化率ΔR/Rを増大させることができる。
【0073】
また本実施形態では、酸素を含まない純Arガス雰囲気でプラズマ処理を行った後に酸素を真空チャンバー内に流入するので、プラズマによる反応生成物が生じず、チャンバー内の雰囲気が安定すると共に、ターゲットやチャンバー内がプラズマ反応生成物で汚染される虞がない。これにより、表面改質工程と次層の成膜工程とを同一の真空チャンバー内で実現可能になった。また表面改質工程と成膜工程とを同一の真空チャンバー内で行なうことにより、チャンバー間を移送する必要がなくなった分だけ、スループットの向上も図れる。
【0074】
本実施形態では、Ru層界面7a及び第2ピン層界面8aに表面改質工程を施してあるが、表面改質工程を施す界面位置は変更可能である。周知のように、一度吸着させたサーファクタント(本実施形態では酸素)はその吸着界面よりも上に何層か積層されてもある程度効果を持続できるので、Cu層9の下に位置する積層界面の少なくとも1つに対して表面改質工程を施せばよい。ただし、反強磁性層5は厚く備えられるので、反強磁性層5よりも上に位置する界面を表面改質することが好ましい。具体的には、第1ピン層6の界面、Ru層界面7a、第2ピン層界面8aの少なくとも1つを表面改質する。いずれの界面に本実施形態による表面改質工程を施しても、Cu層9より上に積層形成される各層の界面平坦性及び組成の急峻性は向上することが確認されている。本実施形態のように、Cu層9の直下に位置する第2ピン層界面8aと酸化されにくいRu層界面7aの2箇所に表面改質工程が施されていれば、より好ましい。
【0075】
また本実施形態では、酸化されにくいCo、CoNi又はCoNiFe合金等の磁性材料からなる極薄の膜をCoFe上に積層して第2ピン層8を形成しているので、第2ピン層界面8aに表面改質工程を施しても該第2ピン層界面8aに酸化層が生じにくく、第2ピン層8とCu層9の分断による磁気抵抗変化率ΔR/Rの減少を抑えることができる。第2ピン層8は、少なくとも上面がCo、CoNi又はCoNiFe合金等の酸化しにくい磁性材料により形成されていればよく、単層膜であっても3層以上の多層膜であってもよい。
【0076】
また本実施形態では、下から順に第1ピン層6、Ru層7、第2ピン層8、Cu層9及びフリー層10が積層されたGMR素子Mを備えているが、本実施形態とは上下を逆にして、下から順にフリー層、Cu層(非磁性材料層)、第2ピン層、Ru層(非磁性中間層)及び第1ピン層の順番で積層されたGMR素子を備えていてもよい。下から順にフリー層、非磁性材料層、第2ピン層、非磁性中間層及び第1ピン層が積層されたGMR素子では、非磁性材料層よりも下に位置する層界面の少なくとも1以上に表面改質工程が施されていればよく、フリー層の上面に表面改質工程を施すことが実際的である。フリー層の上面に表面改質工程を施す場合、フリー層は、少なくとも上面が酸化されにくい磁性材料、例えばCoにより形成されていることが好ましい。またフリー層は、磁性膜による単層構造又は多層構造としても、下から順に第1フリー層、非磁性中間層、及び第2フリー層を積層した積層フェリ構造としてもよい。フリー層を積層フェリ構造とした場合、非磁性中間層をRuにより形成すれば、非磁性中間層の上面に表面改質工程を施すことができる。Ruは酸化しにくい材料であるから、酸素雰囲気中あるいは純Arガスと酸素の混合ガス雰囲気中における酸素濃度を増大させても非磁性中間層上面に酸化層が生じにくく、該非磁性中間層上面により多くの酸素を吸着させることができる。
【0077】
以上では、シングルスピンバルブタイプのGMR素子Mを備えた薄膜磁気ヘッドを製造する実施形態について説明したが、本発明は、デュアルスピンバルブタイプのGMR素子を備えた薄膜磁気ヘッドの製造方法にも、Cu層9の替わりに絶縁層を有するTMR素子を備えた薄膜磁気ヘッドの製造方法にも適用可能である。
【0078】
例えば本発明をデュアルスピンバルブ型薄膜磁気ヘッドに適用する場合は、図14又は図15に示すように、下から順に少なくとも下部ピン層102、下部非磁性材料層(Cu層)103、フリー層104、上部非磁性材料層(Cu層)105及び上部ピン層106を積層し、上部ピン層106よりも下に位置する層界面の少なくとも1以上に、プラズマ処理と酸素フロー処理による表面改質処理を施せばよい。但し、図14に示すように下部ピン層102の直下位置に下部反強磁性層101を、上部ピン層106の直上位置に上部反強磁性層107をそれぞれ備えている場合には、下部反強磁性層101の上面から上部ピン層106よりも下に位置する層界面(下部反強磁性層上面、下部ピン層上面、下部非磁性材料層上面、フリー層上面、上部非磁性材料層上面)の少なくとも1以上にプラズマ処理と酸素フロー処理による表面改質処理を施す。このようなデュアルスピンバルブ型薄膜磁気ヘッドでは、より一層の高出力化及び高記録密度化を図るため、下部ピン層と上部ピン層を、例えば磁歪定数λが正の値をとる磁性材料によって形成し、さらに記録媒体との対向面側の端面を開放させることによって、自己固定式とすることが好ましい。図15は、自己固定式の下部ピン層102’と上部ピン層106’を備えたデュアルスピンバルブ型薄膜磁気ヘッドの構造を示している。なお、図14及び図15において符号100は下部ギャップ層であり、また下部ピン層102(102’)、フリー層104及び上部ピン層106(106’)は、積層フェリ構造であってもよい。
【0079】
また本実施形態は、再生用薄膜磁気ヘッドの製造方法のみでなく、この再生用薄膜磁気ヘッド上にさらに記録用のインダクティブヘッドを積層した録再用薄膜磁気ヘッドの製造方法にも適用可能である。
【0080】
さらに本実施形態は、平行通電型のCIP(Current In the Plane)薄膜磁気ヘッドにも、垂直型のCPP(Current Perpendicular to the Plane)薄膜磁気ヘッドにも適用可能である。
【0081】
【発明の効果】
本発明によれば、純Arプラズマ処理及び酸素フロー処理による表面改質工程と成膜工程とを同一の真空チャンバー内で連続して行なうので、表面改質工程により活性化され且つ酸素吸着された界面が不純物や外気によって汚染されたり、上記界面に吸着された酸素が脱着したりすることがなく、酸素によるサーファクタント効果を十分に発揮させることができる。この表面改質工程を施した界面上に積層形成される各層は、界面平行方向に平坦となり、且つ界面垂直方向に組成が急峻となる。この結果、従来の表面改質技術を用いた場合よりもカップリング磁界Hinが改善され、非磁性材料層(Cu層)を薄膜化することにより磁気抵抗変化率ΔR/Rをより増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態による薄膜磁気ヘッド(GMRヘッド)の製造方法の一工程を示す模式断面図である。
【図2】図1に示す工程の次工程を示す模式断面図である。
【図3】図2に示す工程の次工程を示す模式断面図である。
【図4】図3に示す工程の次工程を示す模式断面図である。
【図5】図4に示す工程の次工程を示す模式断面図である。
【図6】図5に示す工程の次工程を示す模式断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態による薄膜磁気ヘッド(GMRヘッド)の製造方法の一工程を示す模式断面図である。
【図8】図7に示す工程の次工程を示す模式断面図である。
【図9】図8に示す工程の次工程を示す模式断面図である。
【図10】図9に示す工程の次工程を示す模式断面図である。
【図11】図7に示すシード層と第1ピン層との間に非磁性金属層を介在させた薄膜磁気ヘッドを示す模式断面図である。
【図12】カップリング磁界HinとCu層厚の関係を示すグラフである。
【図13】磁気抵抗変化率ΔR/RとCu層厚の関係を示すグラフである。
【図14】ピン層の磁化方向を固定するための反強磁性層を備えたデュアルスピンバルブ型薄膜磁気ヘッドの構造を示す断面図である。
【図15】自己固定式の上部ピン層及び下部ピン層を備えたデュアルスピンバルブ型薄膜磁気ヘッドの構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1 基板
2 下部シールド層
3 下部ギャップ層
4 シード層
5 反強磁性層
6 第1ピン層
7 Ru層(第1特定層)
7a Ru層界面(第1特定層界面)
8 第2ピン層(Ru層に対する第2特定層、Cu層に対する第1特定層)
8a 第2ピン層界面(第1特定層界面)
9 Cu層(第2特定層)
10 フリー層
11 キャップ層
12 ハードバイアス層
13 電極層
14 上部ギャップ層
15 上部シールド層

Claims (15)

  1. 薄膜磁気ヘッドを構成する複数の層のいずれかの層からなる第1特定層上に、この第1特定層とは別の第2特定層を積層形成する際に、
    純Ar雰囲気中でプラズマ処理を行ない、前記第1特定層界面を活性化させるステップと、前記プラズマ処理終了直後に酸素雰囲気中あるいは酸素と不活性ガスによる混合ガス雰囲気中で、前記活性化させた第1特定層界面に酸素を吸着させるステップとを有する表面改質工程と;
    前記表面改質工程により酸素を吸着させた第1特定層界面上に、前記第2特定層を成膜する工程と;
    を同一の真空チャンバー内で連続して行なうことを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造方法。
  2. 請求項1記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法において、前記薄膜磁気ヘッドは、下から順に少なくともピン層、非磁性材料層及びフリー層を積層したシングルスピンバルブ型薄膜磁気ヘッドであって、前記第1特定層界面は、前記非磁性材料層よりも下に位置する層界面である薄膜磁気ヘッドの製造方法。
  3. 請求項2記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法において、前記薄膜磁気ヘッドは、前記ピン層の直下位置に反強磁性層を備えており、前記第1特定層界面は、前記反強磁性層の上面から前記非磁性材料層までの間に位置している薄膜磁気ヘッドの製造方法。
  4. 請求項2記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法において、前記ピン層は、磁歪定数が正の値をとる磁性材料によって形成し、さらに記録媒体との対向面側の端面を開放させる薄膜磁気ヘッドの製造方法。
  5. 請求項2ないし4のいずれか一項に記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法において、前記第1特定層界面は前記ピン層の上面であって、前記第2特定層は前記非磁性材料層である薄膜磁気ヘッドの製造方法。
  6. 請求項5記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法において、前記ピン層の少なくとも上面は、Co、CoNi又はCoNiFe合金により形成する薄膜磁気ヘッドの製造方法。
  7. 請求項2ないし4のいずれか一項に記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法において、前記ピン層は、下から順に第1ピン層、非磁性中間層、及び第2ピン層を積層して形成し、前記第1特定層界面は前記非磁性中間層の上面であって、前記第2特定層は前記第2ピン層である薄膜磁気ヘッドの製造方法。
  8. 請求項1記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法において、前記薄膜磁気ヘッドは、下から順に少なくともフリー層、非磁性材料層及びピン層を積層したシングルスピンバルブ型薄膜磁気ヘッドであって、前記第1特定層界面は、前記非磁性材料層よりも下に位置する層界面である薄膜磁気ヘッドの製造方法。
  9. 請求項8記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法において、前記第1特定層界面は前記フリー層の上面であって、前記第2特定層は前記非磁性材料層である薄膜磁気ヘッドの製造方法。
  10. 請求項9記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法において、前記フリー層の少なくとも上面は、Co、CoNi又はCoNiFe合金により形成する薄膜磁気ヘッドの製造方法。
  11. 請求項8ないし11のいずれか一項に記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法において、前記フリー層は、第1フリー層と、第2フリー層と、該第1フリー層と第2フリー層の間に介在する非磁性中間層とにより形成し、前記第1特定層界面は前記非磁性中間層の上面であって、前記第2特定層は前記第2フリー層である薄膜磁気ヘッドの製造方法。
  12. 請求項8ないし11のいずれか一項に記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法において、前記ピン層は、磁歪定数が正の値をとる磁性材料によって形成し、さらに記録媒体との対向面側の端面を開放させる薄膜磁気ヘッドの製造方法。
  13. 請求項1記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法において、前記薄膜磁気ヘッドは、下から順に少なくとも下部ピン層、下部非磁性材料層、フリー層、上部非磁性材料層及び上部ピン層を積層したデュアルスピンバルブ型薄膜磁気ヘッドであって、前記第1特定層界面は、前記上部ピン層よりも下に位置する層界面である薄膜磁気ヘッドの製造方法。
  14. 請求項13記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法において、前記薄膜磁気ヘッドは、前記下部ピン層の直下位置に下部反強磁性層を備え、前記上部ピン層の直上位置に上部反強磁性層を備えており、前記第1特定層界面は、前記下部反強磁性層の上面から前記上部ピン層までの間に位置している薄膜磁気ヘッドの製造方法。
  15. 請求項13記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法において、前記下部ピン層及び前記上部ピン層は、磁歪定数が正の値をとる磁性材料によって形成し、さらに記録媒体との対向面側の端面を開放させる薄膜磁気ヘッドの製造方法。
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