JP4012102B2 - 金属化合物を含むガスの検知剤及び検知方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属化合物の検知剤及び検知方法に関する。さらに詳細には、半導体製造工程等から排出されるガスに含まれる金属化合物を高感度で検知できる検知剤及び検知方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、窒化ガリウム系化合物半導体が、発光ダイオードやレーザーダイオード等の素子として、光通信分野を中心に急速に需要が高まっている。窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法としては、例えばトリメチルガリウム、トリメチルインジウム、またはトリメチルアルミニウム等の金属化合物ガスをIIIb族元素源として、アンモニア等を窒素源として用い、あらかじめ反応管内にセットされたサファイヤ等の基板上に窒化ガリウム系化合物の半導体膜を気相成長させて成膜する方法が知られている。
【0003】
これらのIIIb族元素を含む金属化合物を使用した際には、半導体製造工程からは、窒素、水素、ヘリウム等のガスで希釈された状態で未反応の前記金属化合物がアンモニアとともに排出されるが、これらの金属化合物は極めて毒性が高く、大気にそのまま放出した場合は人体及び環境に悪影響を与えるので、大気に放出するに先立ってこれらを除去する必要がある。また、例えば乾式浄化法によりこれらの金属化合物を浄化する場合は、浄化筒の破過を検知する必要がある。
【0004】
このため、取り扱いが容易で感度が高い金属化合物を検知するための検知剤あるいは検知方法が開発されてきた。
従来より、有機金属化合物を検知するための検知剤としては、例えばモリブデン酸またはその塩、若しくはモリブデン酸またはその塩と第二銅塩を変色成分とする検知剤(特開平10−19872号公報)、フェノサフラニンを変色成分とする検知剤(特開平11−264815号公報)が知られている。また、検知剤を用いない金属化合物の検知方法としては、排出ガスの一部をサンプリングし、FT−IRを用いて検知する方法等が一般的に用いられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、モリブデン酸またはその塩を変色成分とする検知剤は、アンモニアとの接触によって変色するので、前記のような窒化ガリウム系化合物半導体の製造装置から排出される排ガスに対しては、アンモニアを除去した後でなければ、金属化合物を選択的に検知することができないという不都合があった。また、フェノサフラニンを変色成分とする検知剤は、金属化合物との接触によりピンクから色合いがこれに近い紫に変色するので、変色がわかりにくい場合があった。また、FT−IRを用いて検知する方法は、分析に手間がかかるほか、検知対象ガスがアンモニアを含む場合は、金属化合物とアンモニアの赤外線吸収スペクトルが重なることがあり、金属化合物を検知できなくなる虞があった。
【0006】
従って、本発明が解決しようとする課題は、半導体製造工程等から排出されるガスに含まれるトリメチルガリウム、トリメチルインジウム、トリメチルアルミニウム等のアルキル金属化合物、さらに金属ハロゲン化物等の金属化合物を、アンモニア等の同伴ガスに影響されることなく、高感度で容易に検知できる検知剤あるいは検知方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これらの課題を解決すべく鋭意検討した結果、検知剤の変色成分として1−(2−ピリジルアゾ)−2−ナフトール等のピリジルアゾ化合物を用いることにより、半導体製造工程等から排出される排ガス中の金属化合物を、アンモニア等の同伴ガスに影響されることなく、高感度で容易に検知できることを見い出し、本発明の金属化合物の検知剤及び検知方法に到達した。
【0008】
すなわち本発明は、担体に変色成分としてピリジルアゾ化合物を担持させたことを特徴とするガリウム、インジウム、アルミニウム、亜鉛、または錫のアルキル化合物、ホウ素またはタングステンのハロゲン化物から選ばれる金属化合物を含むガスの検知剤である。
また、本発明は、ガリウム、インジウム、アルミニウム、亜鉛、または錫のアルキル化合物、ホウ素またはタングステンのハロゲン化物から選ばれる金属化合物を含むガスを、担体に変色成分としてピリジルアゾ化合物を担持させた検知剤と接触させて、該検知剤の変色を検知することにより該ガスに含まれる該金属化合物を検知することを特徴とする検知方法でもある。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は、半導体製造工程等から排出される窒素、水素、アルゴン、ヘリウム等をベースガスとして含むガス中に存在する金属化合物を検知する検知剤あるいは検知方法に適用されが、特に水素、アンモニアを含むガス中の金属化合物の検知に効果が発揮される。
本発明の金属化合物の検知剤は、担体に変色成分としてピリジルアゾ化合物を担持させた検知剤である。また、本発明の金属化合物の検知方法は、金属化合物を含むガスを、担体に変色成分としてピリジルアゾ化合物を担持させた検知剤と接触させて、検知剤の変色を検知することにより前記ガスに含まれる金属化合物を検知する検知方法である。
【0010】
以下、本発明の検知剤について詳細に説明する。
本発明における検知対象化合物は、トリメチルガリウム(Ga(CH3)3)、トリエチルガリウム(Ga(C2H5)3)、トリメチルインジウム(In(CH3)3)、トリエチルインジウム(In(C2H5)3)、トリメチルアルミニウム(Al(CH3)3)、トリエチルアルミニウム(Al(C2H5)3)等の窒化ガリウム系化合物半導体に用いられるアルキル金属化合物を挙げることができる。その他、ジメチル亜鉛(Zn(CH3)2)、ジエチル亜鉛(Zn(C2H5)2)、テトラメチル錫(Sn(CH3)4)、テトラエチル錫(Sn(C2H5)4)等のアルキル金属化合物を挙げることができる。
【0011】
また、前記のほかに、三塩化ホウ素(BCl3)、六フッ化タングステン(WF6)等の金属ハロゲン化物を検知することも可能である。さらに、以上のような半導体製造工程に使用される原料に含まれる金属化合物だけでなく、原料ガスに含まれる金属化合物が、半導体製造工程において反応して生成した金属ハロゲン化物等も検知することができる。
【0012】
本発明における前記金属化合物中の金属としては、ホウ素、アルミニウム、亜鉛、ガリウム、インジウム、錫、タングステンを挙げることができる。
【0013】
本発明の金属化合物の検知剤においては、ピリジルアゾ化合物が担体に担持せしめられて検知剤とされる。担体としては、セルロース、シリカゲル、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカアルミナ、シリカチタニア等を例示することができる。しかし、これらの担体の中で、より長期間変色することなく安定して保存できる点で、セルロースまたはシリカゲルを使用することが好ましい。担体の形態には特に制限はないが、シリカゲルの場合は、通常は比表面積が0.1〜400m2/gの範囲のものが使用可能である。
【0014】
本発明の検知剤におけるピリジルアゾ化合物としては、ピリジルアゾフェノール化合物、ピリジルアゾナフトール化合物、またはピリジルアゾレゾルシノール化合物を挙げることができるが、金属化合物を検知しやすく、また容易に入手できることから、1−(2−ピリジルアゾ)−2−ナフトールを用いることが好ましい。ピリジルアゾ化合物の含有量は、担体に対して、通常は0.01〜10wt%、好ましくは0.05〜2.0wt%である。ピリジルアゾ化合物の含有量が担体に対して0.01wt%未満の場合は、検知剤の変色成分の色が薄すぎて検知しにくくなる不都合を生じる。また、ピリジルアゾ化合物の含有量が担体に対して10wt%を超える場合は検知剤の検出感度が悪くなる不都合を生じる。
【0015】
ピリジルアゾ化合物を担体に担持させる方法について特に制限されることはないが、例えばピリジルアゾ化合物をエタノール等の有機溶媒に溶かし、担体に含浸させた後、乾燥する方法、あるいは担体をかき混ぜながら前記溶液を振りかけて乾燥させる方法等を挙げることができる。
【0016】
次に本発明の検知方法について詳細に説明する。
本発明の金属化合物の検知方法においては、半導体製造工程等から排出される金属化合物を含有するガスを、前述の検知剤と接触させることによりガスに含まれる金属化合物が検知される。
本発明において、金属化合物がピリジルアゾ化合物と接触すると、ピリジルアゾ化合物が変色するので、この間の検知剤の変色を検知することによりガス中の金属化合物を検知することができる。例えば、金属化合物が白色のシリカゲルに1−(2−ピリジルアゾ)−2−ナフトールを担持させた検知剤と接触した場合、検知剤は橙色から赤色に鋭敏に変色する。
【0017】
本発明の金属化合物の検知剤は通常は固体であり、例えば本発明の検知剤をガラス製の透明管に充填して検知管とし、検知対象ガスを配管等のガス採取口より検知管に吸引することにより目的の金属化合物を検知することができる。また、本発明の検知剤をガラス製あるいはプラスチック製の透明管に充填し、これを検知対象ガスの配管のバイパス管に設置して、透明管の中に検知対象ガスを通すことにより目的の金属化合物を検知することができる。また、本発明の検知剤を浄化筒の破過を検知するために使用する場合には、検知剤を浄化筒内の浄化剤層の下流側、浄化筒の後、または複数の浄化剤層の間等に設けられた透明な覗き窓部に配置して使用される。
【0018】
本発明の検知剤を透明管に充填し、これをバイパス管に設置して使用する場合、あるいは本発明の検知剤を浄化剤等とともに使用する場合等において、検知剤と接触させる検知対象ガスの速度に特に制限はないが、通常は空筒線速度で0.01〜100cm/sec程度とされる。空筒線速度が0.01cm/secより低い場合は検知が遅くなり、100cm/secより高い場合は圧力損失が大きくなる虞がある。接触時の検知対象ガスの温度は通常は−20〜100℃、また、圧力は通常は常圧であるが、1kPa(abs)の減圧から1MPa(abs)の加圧下においても使用可能である。
【0019】
本発明の検知剤及び検知方法においては、水素、あるいはアンモニア、ヒドラジン等の分子内に金属を有しない塩基性ガスの存在下でもこれらにより変色しないので、これらを含むガス中の金属化合物を選択的に高感度で検知することができる。また、半導体製造工程から排出されるガスに含まれる金属化合物を乾式浄化法により浄化する場合、金属化合物と浄化剤が反応して水素、あるいは分子内に金属を有しない塩基性ガスを発生するような浄化筒の破過も高感度で検知することができる。
【0020】
【実施例】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明がこれらにより限定されるものではない。
【0021】
実施例1
(検知剤の調製)
1000mlのエタノールに、変色成分として1.0gの1−(2−ピリジルアゾ)−2−ナフトール(PAN)を加えた溶液を、径5.0mm、比表面積230m2/gの球状シリカゲル500gに含浸させた後、ロータリーエバポレーターを用いて80℃の温度で減圧乾燥させて検知剤(変色成分の含有量:シリカゲルに対して0.2wt%)を調製した。
【0022】
(検知能力の測定)
この検知剤20gを内径20mmのガラス管に充填した検知管を製作した。この検知管に、10%の水素を含有する窒素ガスを、25℃、常圧、空筒線速度5cm/secの条件で流通し検知剤に接触させた結果、検知剤は50時間経過しても橙色を維持し変色しないことが確認された。また、同様にして、10%のアンモニアを含有する窒素ガス、10%のヒドラジンを含有する窒素ガスに対しても、検知剤は50時間経過しても橙色を維持し変色しないことが確認された。次にこの検知管に、300ppmのトリメチルガリウムを含有する窒素ガスを、25℃、常圧、空筒線速度12cm/secの条件で流通し、検知剤が橙色から赤色に変色し始めるまでの時間を測定した。その結果を表1に示す。
【0023】
実施例2
実施例1における検知対象ガスを、300ppmのトリメチルガリウム及び15%の水素を含有する窒素ガスに替えたほかは実施例1と同様にして検知能力の測定を行なった。その結果を表1に示す。
【0024】
実施例3
実施例1における検知対象ガスを、300ppmのトリメチルガリウム及び15%のアンモニアを含有する窒素ガスに替えたほかは実施例1と同様にして検知能力の測定を行なった。その結果を表1に示す。
【0025】
実施例4
実施例1における検知対象ガスを、300ppmのトリメチルガリウム及び15%のヒドラジンを含有する窒素ガスに替えたほかは実施例1と同様にして検知能力の測定を行なった。その結果を表1に示す。
【0026】
実施例5,6
実施例1の浄化剤の調製における変色成分の含有量を、シリカゲルに対して各々0.05wt%、0.5wt%に変えたほかは実施例1と同様にして検知剤を調製した。
これらの検知剤を用いたほかは実施例1と同様にして検知能力の測定を行なった。その結果を表1に示す。
【0027】
実施例7
実施例1の浄化剤の調製における担体を球状アルミナに替えたほかは実施例1と同様にして検知剤を調製した。
この検知剤を用いたほかは実施例1と同様にして検知能力の測定を行なった。その結果を表1に示す。
【0028】
実施例8
1000mlのエタノールに、変色成分として1.0gの1−(2−ピリジルアゾ)−2−ナフトールを加えた溶液を、セルロース粉末500gに含浸させた後、ロータリーエバポレーターを用いて減圧乾燥し湿った状態の剤を得た。これをさらに球状シリカゲル500gと混合した後、乾燥器を用いて80℃の温度で乾燥させて検知剤を調製した。
この検知剤を用いたほかは実施例1と同様にして検知能力の測定を行なった。その結果を表1に示す。
【0029】
実施例9
実施例1における変色成分を、4−(2−ピリジルアゾ)レゾルシノールに替えたほかは実施例1と同様にして検知剤を調製した。
この検知剤を用いたほかは実施例1と同様にして検知能力の測定を行なった。その結果を表1に示す。但し、検知剤は橙色から赤紫色に変色した。
【0030】
実施例10,11
実施例1における検知対象ガス中のトリメチルガリウムの濃度を、各々100ppm、1000ppmに変えたほかは実施例1と同様にして検知能力の測定を行なった。その結果を表1に示す。
【0031】
実施例12,13
実施例1における検知対象ガスの空筒線速度を、各々5cm/sec、30cm/secに変えたほかは実施例1と同様にして検知能力の測定を行なった。その結果を表1に示す。
【0032】
実施例14〜17
実施例1における検知対象成分を各々トリメチルインジウム、トリメチルアルミニウム、ジエチル亜鉛、六フッ化タングステンに替えたほかは実施例1と同様にして検知能力の測定を行なった。その結果を表1に示す。
【0033】
比較例1
1000mlの水に、変色成分として1.0gの硫酸銅5水和物及び2.0gのリンモリブデン酸水和物を加えた水溶液を、径5.0mm、比表面積230m2/gの球状シリカゲル500gに含浸させた後、ロータリエバポレーターを用いて80℃の温度で減圧乾燥させて検知剤を調製した。
この検知剤20gを内径20mmのガラス管に充填した検知管を製作した。この検知管に、10%の水素を含有する窒素ガスを、25℃、常圧、空筒線速度5cm/secの条件で流通し検知剤に接触させた結果、検知剤は黄色を維持し変色しないことが確認された。しかし、10%のアンモニアを含有する窒素ガス、10%のヒドラジンを含有する窒素ガスに対して、検知剤は黄色から青色に変色してしまった。変色した検知剤について、その後300ppmのトリメチルガリウムを含有する窒素ガスを、25℃、常圧、空筒線速度12cm/secの条件で流通したが、検知剤は青色を維持し変色しなかった。
【0034】
【表1】
【0035】
【発明の効果】
本発明の金属化合物の検知剤及び検知方法により、半導体製造工程等から排出されるガスに含まれる金属化合物を、アンモニア等の同伴ガスに影響されることなく、高感度で容易に検知することが可能となった。
Claims (9)
- 担体に変色成分としてピリジルアゾ化合物を担持させたことを特徴とするガリウム、インジウム、アルミニウム、亜鉛、または錫のアルキル化合物、ホウ素またはタングステンのハロゲン化物から選ばれる金属化合物を含むガスの検知剤。
- ピリジルアゾ化合物が、ピリジルアゾフェノール化合物、ピリジルアゾナフトール化合物、またはピリジルアゾレゾルシノール化合物である請求項1に記載の金属化合物を含むガスの検知剤。
- ピリジルアゾ化合物が、1−(2−ピリジルアゾ)−2−ナフトールである請求項1に記載の金属化合物を含むガスの検知剤。
- 担体が、セルロースまたはシリカゲルである請求項1に記載の金属化合物を含むガスの検知剤。
- ピリジルアゾ化合物の含有量が、担体に対して0.01〜10wt%である請求項1に記載の金属化合物を含むガスの検知剤。
- ガリウム、インジウム、アルミニウム、亜鉛、または錫のアルキル化合物、ホウ素またはタングステンのハロゲン化物から選ばれる金属化合物を含むガスを、担体に変色成分としてピリジルアゾ化合物を担持させた検知剤と接触させて、該検知剤の変色を検知することにより該ガスに含まれる該金属化合物を検知することを特徴とする検知方法。
- 検知対象ガスが、検知対象成分である金属化合物とともに水素を含むガスである請求項6に記載の検知方法。
- 検知対象ガスが、検知対象成分である金属化合物とともにアンモニアを含むガスである請求項6に記載の検知方法。
- 検知対象ガスが、検知対象成分である金属化合物とともに、分子内に金属を有しない塩基性ガスを含むガスである請求項6に記載の検知方法。
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