JP4013277B2 - (メタ)アクリル酸セリンエステルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、(メタ)アクリル酸セリンエステル、その製造方法、該(メタ)アクリル酸セリンエステルを重合した重合体およびその重合体を用いた生体適合性材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
高分子材料で生体適合性を確保するには材料表面の化学構造を制御して血栓形成の引き金となる蛋白質の吸着を制御したり、血小板の粘着さらには活性化、凝集を抑制することが重要となる。したがって、材料表面の化学構造の制御は生体適合性材料の開発において重要な問題で、各種の医療用の重合体について表面特性と生体適合性が研究されている。
生体適合性を付与する有効な方法としては、生体膜を構成するリン脂質二分子膜の主要な構成成分を材料表面に導入する方法が知られている。例えば、リン脂質の極性部を修飾した2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPCと略す)の単量体を重合した重合体は、蛋白質の吸着を制御することが知られている{例えば、石原らによる、生体材料、第9巻(5号)第243〜249頁、(1991年)}。また、糖脂質のグルコース基を含有する2−(グルコシルオキシ)エチルメタクリレート(GEMAと略す)の単量体を重合した重合体は、同様に、蛋白質の吸着を制御することが知られている{例えば、中前らによる、高分子学会、予稿集、第39回、I−17−09、(1990年)}。
以上のように、汎用の高分子材料に生体適合性を付与する有効な方法として、生体膜を構成するリン脂質のホスホリルコリン基あるいは糖脂質の糖を材料表面に導入する方法が行われてきた。
一方、脂質と同様に生体膜あるいは蛋白質を構成するアミノ酸で材料表面を修飾した材料においても生体材料との好ましい相互作用が期待される。例えば、アラニンメタアクリルアミド、メタクリロイルオキシエチルアラニンと蛋白質の相互作用が示されている(例えば、杉山らによる、高分子学会、予稿集、第44巻、第631頁(1995年)}。
これまで、(メタ)アクリル酸セリンエステルは知られていなかった。また、該(メタ)アクリル酸セリンエステルの重合体も知られていなかった。またさらに、該(メタ)アクリル酸セリンエステルの重合体が生体適合性に優れることも知られていなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、(メタ)アクリル酸セリンエステルを提供することにある。本発明の第2の目的は、該(メタ)アクリル酸セリンエステルの製造方法を提供することにある。本発明の第3の目的は、該(メタ)アクリル酸セリンエステルを構成成分として含有する重合体を提供することにある。またさらに、本発明の第4の目的は、該(メタ)アクリル酸セリンエステルの重合体を用いた生体適合性材料を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点に鑑み鋭意検討した結果、セリンのアミノ基を保護して、(メタ)アクリル酸クロリドとセリンの水酸基との反応により(メタ)アクリル酸セリンエステルを合成できること、および、その(メタ)アクリル酸セリンエステルの重合体が生体適合性に優れることの知見を得て、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は次の(1)〜(5)である。
(1)下記一般式[1]
【化5】
(ただし、式中、Rは水素原子またはメチル基を示す)
で示される(メタ)アクリル酸セリンエステル。
(2)次の工程(1)および工程(2)からなる請求項1記載の(メタ)アクリル酸セリンエステルの製造方法。
工程(1);下記式[2]
【化6】
で表されるN−t−ブトキシカルボニル−O−L−セリンと(メタ)アクリル酸クロリドを脱塩化水素剤を用いて反応させて、下記式[3]
【化7】
を合成する工程。
工程(2);前記の生成物を、酸性化合物を用いて保護基を分解して、ついで、酸性にして(メタ)アクリル酸セリンエステルの塩酸塩を得た後、塩基性化合物で塩酸塩をはずす工程。
(3)ラジカル重合して(メタ)アクリル酸セリンエステルに基づく構成成分を0.5モル%〜10モル%を含む重合体。
(4)前記の重合体が
下記一般式[4]
【化8】
(式中、R、R1は、水素原子またはメチル基を示し、R2は炭素数1〜4のアルキル基であり、また、m、nは、(メタ)アクリル酸セリンエステルおよび(メタ)アクリル酸アルキルエステルの付加モル数でそれぞれ、m=1〜3,000、n=20〜30,000である。また、2≦m、20≦nの場合、[ ]内はブロック状でもランダム状の付加でもよい。)
で表される(メタ)アクリル酸セリンエステルの重量平均分子量2,000〜5,000,000の重合体。
(5)ラジカル重合して前記の(メタ)アクリル酸セリンエステルに基づく構成成分を0.5モル%〜10モル%を含む重合体を用いることを特徴とする生体適合性材料。
【0005】
【発明の実施の形態】
一般式[1]において、Rは、水素原子またはメチル基を示す。
【0006】
一般式[1]で表される(メタ)アクリル酸セリンエステルは、次のような方法によって容易に製造することができる。すなわち、
次の工程(1)および工程(2)からなる(メタ)アクリル酸セリンエステルの製造方法である。
工程(1);下記式[2]
【化9】
で表されるN−t−ブトキシカルボニル−O−L−セリンと(メタ)アクリル酸クロリドを脱塩化水素剤を用いて反応させて、下記式[3]
【化10】
を合成する工程。
【0007】
工程(2);前記の生成物を、酸性化合物を用いて保護基を分解して、ついで、酸性にして(メタ)アクリル酸セリンエステルの塩酸塩を得た後、塩基性化合物で塩酸塩をはずす工程。
【0008】
前記の工程(1)において、原料の一般式[1]で表されるN−t−ブトキシカルボニル−O−L−セリンとしては、例えば、市販品のもの(アルドリッチ社=Aldrich社製、東京化成(株)社製、シグマ社製など)が挙げられる。または、定法にしたがってL−セリンより合成してもよい{例えば、参考書、丸善(株)発行、泉屋他著、「ペプチド合成」1975年)}。
また、(メタ)アクリル酸クロリドとしては、市販品のものをそのまま、あるいは精製して使用できる。例えば市販品のものとして、アルドリッチ社製、東京化成(株)社製、和光純薬工業(株)社製等のアクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド等を挙げることができる。
前記の工程(1)の反応において、反応溶媒としては、反応物、生成物を溶解する溶媒、若しくは反応物、生成物を溶解し生成する塩化水素塩を析出する溶媒であればよい。それらの溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン(THF)、エーテルが挙げられる。好ましくは、THFである。
脱塩化水素剤としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン等のトリアルキルアミン;ジメチルアニリン等の芳香族第三アミン;ピリジン、ジメチルアミノピリジン等の環状第三アミンが挙げられる。取り扱いや入手性の観点からトリエチルアミン等が好ましく挙げられる。
また、原料の一般式[1]:(メタ)アクリル酸クロリド:脱塩化水素剤のモル比は1:0.8〜1.5:1〜2で反応させるのが好ましい。
さらに、反応温度としては、−30℃〜室温、好ましくは−20℃〜0℃である。また、反応時間としては、5〜100時間、好ましくは15〜30時間である。
反応は窒素ガス等の乾燥不活性ガス気流下の雰囲気あるいは乾燥空気気流下で行うのが好ましい。
生成した塩は、濾別し、溶媒を留去後、減圧蒸留によってアミノ基をブロック(保護)した前記の式[3]の化合物を得ることができる。
反応後は、ヘキサン、石油エーテル、ジエチルエーテル等を用いて再結晶して精製することができる。
【0009】
工程(2)において、この中間体の前記式[3]の溶液と酸性化合物を用いて、セリンのアミノ基を保護した基をはずして目的の化合物を得ることができる。酸性化合物としては、トリフルオロ酢酸;臭化水素の酢酸溶液、塩化水素の酢酸溶液;塩酸あるいはギ酸の反応溶媒溶液などが挙げられる。好ましくは、トリフルオロ酢酸である。
溶媒としては、脱水品を用いるのが望ましい。用いる溶媒の種類としては、クロロホルム、塩化メチレンが挙げられる。好ましくは、塩化メチレンが挙げられる。
前記式[3]の化合物:酸性化合物のモル比としては、1:1〜10である。反応温度としては、−30℃〜50℃、好ましくは0℃〜室温である。また、反応時間としては、0.1〜10時間、好ましくは0.5〜3時間である。
反応は窒素ガス等の乾燥不活性ガス気流下の雰囲気あるいは乾燥空気気流下で行うのが好ましい。
前記式[3]の化合物を酸性化合物によりセリンのアミノ基の保護基をはずした後、氷冷下で過剰の塩酸を加えて、メタノール等の溶媒に溶かし、生成物の塩酸塩型を得る。その際の塩酸は酢酸エチル溶液が好ましい。ついで溶媒を留去した後、ジエチルエーテル、THF等の溶媒で洗浄して、生成物の塩酸塩型を純度よく得る。ついで、この生成物の塩酸塩型をアセトニトリル等の溶媒に分散させて、氷冷下で、等モル以上のトリエチルアミン等の塩基性化合物を加えて、脱塩酸して、目的とする式[1]の(メタ)アクリル酸セリンエステルを得ることができる。
塩基性化合物としては、トリエチルアミンの他に、前記で示した脱塩化水素剤の化合物が挙げられる。
【0010】
(メタ)アクリル酸セリンエステルの重合体を製造方法は、次の方法により容易に得ることができる。すなわち、前記の(メタ)アクリル酸セリンエステルと共重合可能な単量体とをランダム状あるいはブロック状にラジカル重合することによって重合体が得られる。
重合体は、(メタ)アクリル酸セリンエステルに基づく構成成分単位を0.5モル%〜10モル%含む重合体である。
(メタ)アクリル酸セリンエステルに基づく構成成分が0.5モル%より少ないと、構成成分として(メタ)アクリル酸セリンエステル含む量が少なくなり、生体適合性等の効果を発現しなくなるので好ましくない。(メタ)アクリル酸セリンエステルに基づく構成成分が10モル%より多いと、構成成分としてその他の共重合可能な単量体に基づく構成成分が少なくなり、適当な溶媒がなく、また、強度、密着性などの物性の効果が発現しなくなるので好ましくない。
重合方法としては、通常用いられている重合方法で、例えば、溶液重合、バルク重合、乳化重合、懸濁重合等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸セリンエステルと共重合可能な単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸メチルアミド、(メタ)アクリル酸エチルアミド、(メタ)アクリル酸プロピルアミド、(メタ)アクリル酸ブチルアミド、(メタ)アクリル酸ヘキシルアミド、(メタ)アクリル酸ラウリルアミド、(メタ)アクリル酸ステアリルアミド等の(メタ)アクリル酸アルキルアミド;スチレン等が挙げられる。好ましくは、炭素数1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
重合に用いる溶媒としては、単量体が溶解あるいは分散すればよく、具体的には、水、メタノール、エタノール、プロパノール、t−ブタノール、ベンゼン、トルエン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン等およびこれらの混合物が挙げられる。
重合条件としては、通常用いる条件によって重合できる。反応温度としては、例えば、40℃〜100℃、反応時間としては、1時間〜50時間が挙げられる。
ラジカル重合開始剤としては、通常のラジカル重合開始剤ならばいずれを用いてもよく、具体的には、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスバレロニトリル、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩等の脂肪族アゾ化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等の有機過酸化物、過硫酸アンモニウム、過酸化カリウム等の無機過酸化物を例示することができる。
得られる重合体の分子量は特に限定されないが、2,000〜5,000,000が好ましく、より好ましくは、5,000〜1,000,000である。
重合体の分子量が2,000より小さいとコーテイング等ではがれやすくなり、重合体の分子量が5,000,000より大きくなると粘度が高くなり取り扱い難くなるので望ましくない。
前記の一般式[4]において、m=1〜2,000であり、n=20〜30,000である。
【0011】
得られる重合体は、通常良く用いられる溶媒精製してもよく、あるいは乳化重合や懸濁重合でそのまま粒子として取り出して用いてもよい。
【0012】
本発明の(メタ)アクリル酸セリンエステルは、(メタ)アクリル基の重合性基を有しており、重合が可能である。(メタ)アクリル酸セリンエステルは、生体適合性を有しており、重合して生体適合性を付与することができる。
該(メタ)アクリル酸セリンエステルを用いた共重合体は、生体成分との特異的な適合性が有り、重合体をそのまま粒子状で使用したり、あるいは成形加工したりできる。また、有機溶媒からキャストしてフイルム状として使用したり、あるいは重合体を、プラズマ、ガンマ線、紫外線等のエネルギー照射して他の材料の重合体等の表面にコーテイングして使用することができる。具体的には、カテーテル、カニューレ、中空糸などの医療用のデバイス、あるいは中空糸などの医療用のデバイスのハウジング材料、医用材料等のメディカル用品、コンタクトレンズ等のアイケア用品、化粧品材料、トイレタリー用品等の生体適合性材料として使用できるものと期待される。
【0013】
【発明の効果】
本発明は、新規な(メタ)アクリル酸セリンエステルであり、重合して生体適合性を付与することができる。
本発明の製造方法は、アミノ基を保護しておりエステル化の反応性が高く、該(メタ)アクリル酸セリンエステルを純度よくまた、高収率で製造することができる。
該(メタ)アクリル酸セリンエステルを用いた共重合体は、生体成分との特異的な適合性が有り、医療材料、医用材料などの生体適合性材料としての用途展開が期待される。
【0014】
【実施例】
次に本発明を実施例にもとづいて説明する。
実施例1
合成1−1;N−t−ブトキシカルボニル−O−メタクリロイル−L−セリン(Boc−serMA)の合成
かき混ぜ機、玉付き冷却管、窒素導入管、滴下ロートを備えた500mlの4つ口フラスコにN−t−ブトキシカルボニル−L−セリン25.0g(0.132mol)とトリエチルアミン20.03g(0.198mol)を取り、300mlの脱水テトラヒドロフラン(THF)に溶かした。−20℃で窒素気流下、かき混ぜながら、メタクリル酸クロリド20.70g(0.198mol)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、−20℃で10時間、さらに−5℃で5時間反応した。次に未反応のメタクリル酸クロリドをメタクリル酸に誘導するために、50gの水を加えてかき混ぜた。反応終了後、ジエチルエーテルを加えて、析出したトリエチルアミンの塩酸塩をろ別した後、無水硫酸ナトリウムで一晩乾燥した。無水硫酸ナトリウムをろ別し、ロータリーエバポレーターで濃縮して、粘調な固体を得た。ヘキサンから再結晶して白色結晶を19.38g得た。この化合物をBoc−serMAと略す。Boc−serMAの収率は53.8%であった。また、このBoc−serMAの融点は、95〜98℃であった。
【0015】
Boc−serMAの1H−NMRおよびIR分析、元素分析の結果を次に示した。
1.1H−NMR(δ(ppm):TMS/DMSO)
1.28−1.48(m,9H) ;−C(CH 3 ) 3
1.87 (d,3H) ;−CH 3
4.08 (m,1H) ;−CH−
4.22 (m,1H) ;−CH 2 −
4.33 (m,1H) ;−CH 2 −
5.69 (m,2H) ;−C=CH 2
2.IR(NaCl板)νcm-1
2960cm-1;−CH3
2930 ;=CH2
1760 ;−COOH
1720 ;−CO−O−
1680 ;−CO−NH−
3.元素分析値
C12H19O6N=273.286として
計算値:C:H:N=52.74%:7.01%:5.13%
実測値:C:H:N=52.57%:6.61%:4.81%
以上のことより、Boc−serMA(N−t−ブトキシカルボニル−O−メタクリロイル−L−セリン)が次式のものと同定した。
【化11】
【0016】
合成1−2;O−メタクリロイル−L−セリン(=メタクリル酸セリンエステル;serMA)の合成
かき混ぜ機、玉付き冷却管、窒素導入管、滴下ロートを備えた200mlの4つ口フラスコに前記の合成1−1で得たBoc−serMA、16.44g(0.060mol)とトリフルオロ酢酸40.0g(0.358mol)および脱水塩化メチレン100mlを入れ、室温でかき混ぜながら1時間反応を続けた。反応終了後、ロータリーエバポレーターで溶媒の塩化メチレンを留去して、ジエチルエーテル50mlを加えて、かき混ぜた後上澄みをデカンテーションして未反応のトリフルオロ酢酸を抽出した。残留物を脱水メタノール400mlに溶かし氷冷下でかき混ぜながら、モル比で1.5倍の4H−HClの酢酸エチル溶液を加えて酸性とした。ロータリーエバポレーターでメタノールを留去して、室温で真空乾燥した後、得られた粘調な固体を50mlのジエチルエーテルで白色結晶が得られるまで繰り返し洗浄し、serMAの塩酸塩を得た。
さらにこのserMAの塩酸塩を200mlのアセトニトリルに分散させて、氷冷下でserMAの塩酸塩と等モルのトリエチルアミン(6.06g)を加えてかき混ぜた。グラスフィルター(17G−4)でろ過し、クロロホルムで繰り返し洗浄してserMAの白色結晶を5.02g得た。serMAの収率は48.2%であった。また、このserMAの分解点は、114〜119℃であり、等電点は5.08であった。
【0017】
得られたserMAの1H−NMRおよびIR分析、元素分析の結果を次に示した。
1.1H−NMR(δ(ppm):TMS/DMSO)
1.86 (s,3H) ;−CH 3
4.07 (m,1H) ;−CH−
4.53 (m,2H) ;−CH 2 −
5.70−6.11(m,2H) ;−C=CH 2 −
2.IR(NaCl板)νcm-1
2100cm-1;−NH3 +
1720 ;−CO−O−
1620 ;−NH3 +
1520 ;−NH3 +
1470 ;−COO-
3.元素分析値
C7H11O4N=173.169として
計算値:C:H:N=48.55%:6.40%:8.09%
実測値:C:H:N=48.50%:6.32%:8.19%
以上のことより、serMA(O−メタクリロイル−L−セリン)が次式のものと同定した。
【化12】
【0018】
実施例2−1;serMA−co−MMA共重合体の合成(f=1)
実施例1で合成したserMA0.413g(2.4mmol)とメチルメタクリレート(MMA)24.0g(240mmol)をラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビス[2−(2イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩{VA−044、和光純薬工業(株)社製}0.077g(0.24mmol)、イオン交換水150gを温度計、窒素吹き込み管、冷却管、かき混ぜ機を付した500mlの4つ口フラスコにとり、窒素気流下で70℃、350r.p.m.のかき混ぜ速度、6時間の条件で乳化重合を行った。
重合した重合体粒子は、イオン交換樹脂(三菱化成製、ダイヤイオン、アニオン樹脂:カチオン樹脂=1:1)を用いて精製した。重合体21.85gを得た。重合体収率は、89.5%であった。
得られた重合体粒子を用いて、後述の試験方法により、粒径、X線光電子分光計(=XPS)、含水率、ジータポテンシャル(=ζ−ポテンシャシャル)を測定した。結果を表1に示した。
【0019】
また、得られた重合体の1H−NMRおよびIR分析の結果を次に示した。
1.1H−NMR(δ(ppm):TMS/CDCl3)
1.8 −2.1 ;−CH 3 、−CH 2 −(主鎖)
3.35−3.45 ;−CH− (セリン部)
3.45−3.50 ;−CH 2 −(セリン部)
3.50−3.65 ;−COOCH 3
2.IR(NaCl板)νcm-1
2100cm-1;−NH3 +
1720 ;−CO−O−
1620 ;−NH3 +
1520 ;−NH3 +
1470 ;−COO-
以上のことより、serMAとMMAとの共重合体が次式であると同定した。
【0020】
【化13】
【0021】
実施例2−2;serMA−co−MMA共重合体の合成(f=3)
実施例2−1において用いたserMA0.413g(2.4mmol)をserMA1.246g(7.2mmol)に代えた以外は実施例2−1と全く同様にして重合を行った。重合体18.05gを得た。重合体収率は、71.5%であった。得られた重合体の1H−NMRおよびIR分析の結果、実施例2−1とピーク位置は同じであった。
得られた重合体は、同様に試験を行った。結果を同じく表1に示した。
【0022】
比較例2−1:PMMAの重合
実施例2−1において用いたserMA0.413g(2.4mmol)を用いず、MMA24.0g(240mol)のみを用いた以外は実施例2−1と全く同様にして重合を行った。重合体21.65gを得た。重合体収率は、90.2%であった。結果を表1に併せて示した。
【0023】
【表1】
なお、分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフイ(GPC)により、溶媒THF、標準PMMA換算で測定した。
【0024】
用いた試験方法の条件は、次のとおりである。
<粒径の測定>:
標準ポリスチレンラテックス(ダウ ケミカル社製、Uniform Latex Particles φ=474nm Lot.No.1×94)のSEM写真と比較して粒径を求めた。また、粒度分布は、Pacific Scienntific NICOMP−370を用いた光散乱法により求めた。
<XPS分析>;
ポリマー粒子表面はX線光電子分光計(XPS) Shimadzu ESCA−750を使用した。ポリマー粒子をステンレススチール製のホルダーに乗せ、5×10-7 Torr以下、MgKα(1253.6eV)で測定した。
<含水率(%)の測定>;
ポリマー試料を溶剤に溶かして、溶媒展開法で得たフイルムをリン酸緩衝液中、25℃、24時間浸漬し、浸漬前後の重量増加分より算出した。
<ζ−ポテンシャシャルの測定>;
三田村理研(株)社製、マイクロ電気泳動装置を用い、電位差50Vの直流電場をかけたときに50μm泳動するポリマー粒子の移動時間を室温で測定した。
【0025】
比較例2−3;ポリ(MPC)の合成
MPC2.0g(6.77mmol)開始剤としてAIBN0.054g(0.068mmol)エタノール/THF(=90/10V/V%)の混合溶媒10mlをガラス製重合管にいれ減圧下で溶封した。反応温度60℃、12時間、ふり混ぜの重合条件で重合した後、内容物を多量のジエチルエーテル中に注入してポリMPCを析出させて、重合体を得た。
得られた重合体は、同様にして後述の比較例3−2の試料として用いた。
【0026】
実施例3−1;蛋白質の吸着試験
実施例3−1−1は実施例2−1の重合体、実施例3−1−2は実施例2−2で合成した重合体を用い、蛋白質としてアルブミン(Alb)およびグロブリン(Glo)を用いて、以下の試験条件で蛋白質の吸着試験をおこなった。なお、蛋白質の吸着量は、Lowry法により算出した。
<蛋白質の吸着試験>;
アルブミンの場合;初期のアルブミン濃度50mg/リットル、pH=5.6、イオン強度0.01、温度25℃で2時間重合体を浸漬した後、重合体粒子を濾過で取り除き、溶液中のアルブミン濃度の測定から吸着アルブミンの量を算出した。
グロブリンの場合;初期のグロブリン濃度50mg/リットル、pH=6.2、イオン強度0.01、温度25℃で2時間重合体を浸漬した後、重合体粒子を濾過で取り除き、溶液中のグロブリン濃度の測定から吸着グロブリンの量を算出した。結果を図1に示した。
【0027】
比較例3−1−1〜3−1−5;
実施例3−1と同様にして、比較例3−1−1は比較例2−1で重合したPMMA(ポリメチルメタクリレート)を用い、また比較例3−1−2〜比較例3−1−5は、高分子学会、予稿集、第44巻、第631頁(1995年)に記載のAlaMAm(アラニンメタクリルアミド)、AlaEMA(メタクリロイルオキシエチルアラニン)およびMPCとMMAとの共重合体を用いてアルブミン、グロブリンの吸着試験を行った。結果を併せて図1に示した。
【0028】
以上の結果から、serMAに基づく構成成分を1および3モル%含有する重合体は、アルブミン、グロブリンの吸着の種類、量が特異的であることがわかる。
【0029】
【図面の簡単な説明】
【図1】重合体による蛋白質の吸着試験の結果
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