JP4014982B2 - アーク蒸発源用のロッドターゲット、その製造方法及びアーク蒸着装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、切削工具や機械部品等への耐摩耗性コーティング処理に使用されるアーク蒸発源用のロッドターゲット、その製造方法及びアーク蒸着装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の真空アーク蒸着装置には、図12に示すように、真空容器51内にアーク蒸発源用のロッドターゲット52とワーク53とを配置し、ロッドターゲット52にアーク電源54の陰極を接続して、ロッドターゲット54に電流を入力し、その電流バランスを変化させることにより、ロッドターゲット54の外周面からターゲット材料を蒸発させて、その蒸発したターゲット材料をワーク53に付着させるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平07−173617号公報
【特許文献2】
特開特開2000−80466号公報
【特許文献3】
特開2001−59165号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、実際には、従来技術で均一な膜厚を得るためには、ワーク53の高さとターゲット52の高さが比較的近い場合は、図15に示すようにワーク53の略全長にわたって均一な膜厚が得られるようにするには、図13に示すように、ロッドターゲット52の両端部からのターゲット材料の蒸発量を増やさねばならない。また、図14に示すように、ロッドターゲット52を長さ方向に均一に蒸発させた場合は、図16に示すようにワーク53に均一な膜厚が得られる領域は中央付近の非常に狭い範囲に限られる。従って、いずれにしてもロッドターゲット52が無駄になって、非常に不経済であった。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑み、ワークに対して均一な膜厚を得ると共に、ロッドターゲットの利用率を向上させて、ターゲットが無駄にならないようにしたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、外周面を蒸発面とするアーク蒸発源用のロッドターゲットにおいて、
長手方向両端部が、中央部側よりも太く形成されており、
中央部側の細い部分に対する長手方向両端部の太い部分の有効消耗断面積が、1.0倍よりも大で3.0倍以内に設定されている点にある。
また、本発明の他の技術的手段は、長手方向両端部の太い部分の長さが、それぞれ75mm以上で200mm以下に設定されている点にある。
【0007】
また、本発明の他の技術的手段は、長手方向両端部の太い部分から中央部側の細い部分に向けて徐々に細くなるように、長手方向両端部の太い部分と中央部側の細い部分との境界部分を、段階的に太さを変化させるようにした点にある。
また、本発明の他の技術的手段は、長手方向両端部の太い部分から中央部側の細い部分に向けて徐々に径が小さくなるように、太い部分と細い部分との境界部分にテーパ部が設けられている点にある。
また、本発明の他の技術的手段は、請求項1〜6に記載のアーク蒸発源用のロッドターゲットの製造方法であって、
少なくとも長手方向両端部の太い部分と中央部側の細い部分とを別個に製作した後に、長手方向両端部の太い部分と中央部側の細い部分とが一体になるように組み立てた点にある。
【0008】
また、本発明の他の技術的手段は、真空容器内にアーク蒸発源用のロッドターゲットとワークとが配置され、アーク蒸発源用のロッドターゲットの外周面からターゲット材料を蒸発させて、その蒸発したターゲット材料をワークに付着させるようにしたアーク蒸着装置において、
真空容器内に配置したアーク蒸発源用のロッドターゲットとして、前記請求項1〜6に記載のアーク蒸発源用のロッドターゲットが用いられている点にある。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示の実施の形態に従って説明する。
図3において、真空アーク蒸着装置の真空容器1内に円筒状のアーク蒸発源用のロッドターゲット2とワーク3とが設けられている。
ロッドターゲット2は真空容器1の中央部に上下方向に配置されている。真空容器1の下部に回転テーブル5が設けられ、回転テーブル5は、ロッドターゲット2の軸心と略一致する縦軸廻りに回転自在に支持され、回転テーブル5上にワーク3が保持部材6を介して載置され、回転テーブル5の回転に伴ってワーク3はロッドターゲット2の周囲を公転すると共に、保持部材6と共に縦軸廻りに自転するように構成されている。
【0010】
ロッドターゲット2内には磁石8が昇降自在に設けられている。ロッドターゲット2の上端にアーク電源10の陰極が接続されている。真空容器1にアーク電源5の陽極が接続されている。
真空アーク蒸着装置によりワーク3上に皮膜を形成させるには、まず、図示省略の真空ポンプにより真空容器1内を排気して所定圧の真空状態を保つ。そして、図示省略の点火装置によりロッドターゲット2から真空アーク放電を発生させると、ロッドターゲット2の表面(外周面)にアーク電流が集中したアークスポットが現れる。この際、磁石8の昇降により、アークスポット位置を制御しながらロッドターゲット2の外周面からターゲット材料を蒸発させる。
【0011】
蒸発したターゲット材料の蒸気は、真空容器1内に設置したワーク3に向かって移動し、ワーク3上に皮膜を形成する。ワーク3には、必要に応じて図示しない電源によって負の電圧(バイアス電圧)が印加され、前記蒸気の中のイオンを加速しながら皮膜成形が行われる。また、必要に応じて真空容器1内には窒素等の反応性のガスが導入され、ターゲット材料との化合物の皮膜を形成することもある。
前記アーク蒸発源用のロッドターゲット2は、図1及び図2に示すように、長手方向両端部が、中央部側よりも太く形成され、ロッドターゲット2の長手方向両端部に、太い部分(大径部)13が設けられ、中央部側に細い部分(小径部)14が形成されている。
【0012】
長手方向両端部の太い部分13の長さxが、それぞれ75mm以上で200mm以下に設定され、望ましくは100〜150mmに設定されている。
中央部側の細い部分14に対する長手方向両端部の太い部分13の有効消耗断面積が、1.0倍よりも大で3.0倍以内に設定され、望ましくは1.5〜2.5倍に設定されている。
ここで、図2に示すように、ロッドターゲット2の大径部13の外径をyとし、小径部14の外径をzとし、ロッドターゲット2の内径(消耗限界)をdとすると、大径部13及び小径部14の有効消耗断面積Sy、Szは次のよう式で表される。
【0013】
Sy=(y/2)2・π−(d/2)2・π
Sz=(z/2)2・π−(d/2)2・π
従って、Sy/Szの関係は、次のような範囲に設定されている。
1.0<Sy/Sz≦3.0
なお、図1において、Lはターゲット全長を示している。
上記実施の形態によれば、次のような作用効果を奏する。
(1)ワーク3に均一な膜厚分布を得るためにロッドターゲット2の端部からの蒸発量を増やす際に、ロッドターゲット2の利用率が向上し、無駄がなくなる。
(2)ロッドターゲット2の利用効率がより向上する。
【0014】
即ち、通常要求される、ワーク3に形成される膜厚のバラツキが±5%になるのを達成するために、蒸発量を増やす必要のあるロッドターゲット2の端部の長さは限られており、かつターゲット全長には影響されない。つまり、必要十分な長さだけを太くすることにより、ロッドターゲット2の利用効率はより向上する。必要以上に大径部13が長ければその部分は余り、逆に大径部13が短ければ端部寄りが早期に消耗限界に達し、いずれにしても利用効率が落ちる。
(3)ロッドターゲット2の利用効率がより向上する。
【0015】
即ち、上記(2)の場合と同様に、膜厚バラツキが±5%になるのを達成するために、ロッドターゲット2の端部で増やすべき蒸発量は限られており、必要十分な消耗量(ターゲット径)が確保されていれば、利用効率を上げ、同時に総蒸発源量(使用可能体積)を増やすことができる。それ以上に太い径では小径部14が消耗限界に達したときに大径部13が余って利用効率が下がり、逆に細ければ端部(大径部13)が早期に消耗限界に達してしまい総蒸発源量が少なくなる。
【0016】
図4〜図6は、それぞれ他の実施形態を示している。図4の場合は、ロッドターゲット2の長手方向両端部の太い部分13と中央部側の細い部分14との境界部分に、細かい多数の段部16を設け、これにより、長手方向両端部の太い部分13から中央部側の細い部分14に向けて徐々に細くなるように、太い部分13と細い部分14との境界部分を、段階的に太さを変化させるようにしている。
図5の場合は、長手方向両端部の太い部分13から中央部側の細い部分14に向けて徐々に径が小さくなるように、太い部分13と細い部分14との境界部分に、テーパ部17を設けている。
【0017】
図6の場合は、図5の場合と同様にデーパ部17を設けると共に、テーパ部17の傾斜角度αを、3°以上で30°以下に設定し、望ましくは5〜15°に設定している。
上記図4〜図6の実施の形態によれば、上記(1)(2)(3)の作用効果の他にそれぞれ次のような作用効果を奏する。
(4)通常放電面に対して垂直な面からは、アノード(陽極)との位置関係が変わったり、アノードが見えづらくなったり、放電面に対する磁場形態が大きく変わるなどして、そこを長い距離にわたって放電させると失火しやすいので、段階的にターゲット径を変えることにより、アークスポットが径の異なる領域へ移行する際の失火を防止することができる。
【0018】
また、急激な径の変化点では、図7に示すように、アーク放電の熱応力の集中によるロッドターゲット2の割れ等が生じやすく、段階的にロッドターゲット2の径を変えることで割れを防止することができる。
(5)アークスポットの径の異なる領域への移行がよりスムーズになり、またエッジ部への熱応力の集中を避けることにより割れもさらに生じにくくなる。
(6)異径の境界領域の消耗形状がなめらかになる。
スパッタリング法のようにターゲット全面から面放電するものと異なり、アーク蒸発源ではアークスポットがターゲット表面を不規則に移動する。このためアーク蒸発源では、径の変化点での失火や熱応力の集中という特有の問題が起こりやすいのであるが、図4〜6の実施形態によればそのような問題を起こすことがない。
【0019】
即ち、図8に示すように、磁場を印加した場合のアークスポットの挙動は、ロッドターゲット2の放電面とそこを貫く磁力線の角度に強く依存するため、磁場を印加している場合は、傾斜角度αが大きいテーパ部17(図8の太線部)ではアークスポットが特異な挙動を示してしまう。たとえば、テーパ部17以外ではアークスポットがある範囲に均一に分布していたものが、テーパ部17ではテーパ部17のいずれか片端に集中してしまうなどの現象が見られる。
そこで、傾斜角度αを小さくして、磁力線と放電面の相対角度をテーパ部17以外のそれに近づけることにより、望ましくないアーク挙動を避けることができる。この観点からすると傾斜角度αは小さいほど好ましいが、大径部13の長さや径を最適とするために自ずと制約が生じる。
【0020】
図9は他の実施の形態を示し、ロッドターゲット2を、少なくとも長手方向両端部の大径部13と中央部側の小径部14とを別個に製作した後に、長手方向両端部の大径部13と中央部側の小径部14とが一体になるように組み立てたものである。
図9の実施の形態によれば、上記(1)(2)(3)(4)(5)(6)の作用効果の他に次のような作用効果を奏する。
(7)ロッドターゲット2は、蒸発物質の粉末をHIP(熱間等方加圧)法により成形し、その後所望の最終形状に加工されることが一般的であるが、本発明のロッドターゲット2の場合、最終形状に近い形にHIP処理することは非常に困難である。理由はカプセル形状の設計が極めて難しいばかりでなく、HIP処理中のカプセル破断などのリスクが非常に高いためである。したがって、大径部13に径を合わせた単純円柱形状にHIP処理してから中央部を削らざるを得ず、破棄する部分が非常に多くなる。そこで、大径部13、小径部14をそれぞれ独立に単純円柱形状としてHIP処理し、所望の径に加工した後、大径部13側と小径部14とを一体に結合することで、無駄をなくすことができるのである。
【0021】
なお、図9に示すロッドターゲット2の製造方法は、図1及び図2の実施の実施の形態のロッドターゲット2だけでなく、図4〜図6の各実施の形態のロッドターゲット2の製造にも適用実施することができる。この場合、大径部13と小径部14との他に、大径部13と小径部14との境界部分(段部16、テーパ部17)も別体に製作した後に、これらが一体になるように結合するようにしてもよい。
次に、本発明のロッドターゲット2について実施した試験結果を説明する。
〔試験例1〕
ターゲット全長Lが700mm、小径部14の外径zがφ100mm、大径部13の外径yがφ125mmのロッドターゲットで、大径部13の長さxを変えた場合のターゲット消耗量(体積)および消費効率(寿命までに消費(蒸発)した体積÷初期体積(限界消耗まで)を表1に示す。膜厚分布はバラツキ±5%を維持し、ターゲット消耗限界はφ70mmとした。その結果、大径部13の長さxが100〜150mmの場合に、消費効率が良く、大径部13の長さxを125mmとした場合に最も良かった。消費効率が最大となる大径部13の長さxは、ロッドターゲット2〜ワーク3間の距離などに若干左右されるもののほぼ同様の傾向であり、150mm前後が最適であった。
【0022】
【表1】
【0023】
〔試験例2〕
ロッドターゲット2について大径部13の長さを125mmに設定し、大径部13の外径yを変えた場合の消費効率を表2に示している。
表2から分かるように、大径部13の外径yが小さいほど消費効率が良かったが、120mmより小さくなると効率は頭打ちとなる一方、当然消費できる量が急激に減少した。結局、小径部14に対する大径部13の有効消費断面積比を1.5〜2.5とすると高い消費効率を得ながら、消費量を最大化することができた。
【0024】
【表2】
【0025】
〔試験例3〕
ロッドターゲット2の初期状態を、図10に示すように設定して、図15の膜厚分布を得た場合のターゲット消耗形態は、図11に示すようになった。
なお、前記実施の形態では、ロッドターゲット2は、円筒形のものを使用しているが、ロッドターゲット2の形状は円筒形のものに限定されず、中実の円柱状のものであってもよいし、楕円筒状又は楕円柱状のものであってもよい。
【0026】
【発明の効果】
本発明によれば、ワークに対して均一な膜厚分布を得ると共に、ロッドターゲットの利用率が向上し、ターゲット材料の無駄がなくなり、経済的になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態を示すロッドターゲットの正面図である。
【図2】 同ロッドターゲットの正面断面図である。
【図3】 同アーク蒸着装置の概略構成図である。
【図4】 他の実施形態を示すロッドターゲットの正面図である。
【図5】 他の実施形態を示すロッドターゲットの正面図である。
【図6】 他の実施形態を示すロッドターゲットの正面図である。
【図7】 作用効果説明用のロッドターゲットの斜視図である。
【図8】 作用効果説明用のロッドターゲットの正面図である。
【図9】 他の実施形態を示すロッドターゲットの正面図である。
【図10】 試験例を示す初期状態のロッドターゲットの正面図である。
【図11】 同消耗状態のロッドターゲットの正面図である。
【図12】 従来のアーク蒸着装置を示す概略構成図である。
【図13】 従来のロッドターゲットの正面図である。
【図14】 従来のロッドターゲットの正面図である。
【図15】 膜厚分布を示すグラフである。
【図16】 膜厚分布を示すグラフである。
【符号の説明】
1 真空容器
2 ロッドターゲット
3 ワーク
13 太い部分(大径部)
14 細い部分(小径部)
17 傾斜部
Claims (7)
- 外周面を蒸発面とするアーク蒸発源用のロッドターゲットにおいて、
長手方向両端部が、中央部側よりも太く形成されており、
中央部側の細い部分に対する長手方向両端部の太い部分の有効消耗断面積が、1.0倍よりも大で3.0倍以内に設定されていることを特徴とするアーク蒸発源用のロッドターゲット。 - 長手方向両端部の太い部分の長さが、それぞれ75mm以上で200mm以下に設定されていることを特徴とする請求項1に記載のアーク蒸発源用のロッドターゲット。
- 長手方向両端部の太い部分から中央部側の細い部分に向けて徐々に細くなるように、長手方向両端部の太い部分と中央部側の細い部分との境界部分を、段階的に太さを変化させるようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のアーク蒸発源用のロッドターゲット。
- 長手方向両端部の太い部分から中央部側の細い部分に向けて徐々に径が小さくなるように、太い部分と細い部分との境界部分にテーパ部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のアーク蒸発源用のロッドターゲット。
- 前記テーパ部の傾斜角度が、3°以上で30°以下に設定されていることを特徴とする請求項4に記載のアーク蒸発源用のロッドターゲット。
- 請求項1〜5に記載のアーク蒸発源用のロッドターゲットの製造方法であって、
少なくとも長手方向両端部の太い部分と中央部側の細い部分とを別個に製作した後に、長手方向両端部の太い部分と中央部側の細い部分とが一体になるように組み立てたことを特徴とするアーク蒸発源用のロッドターゲットの製造方法。 - 真空容器内にアーク蒸発源用のロッドターゲットとワークとが配置され、アーク蒸発源用のロッドターゲットの外周面からターゲット材料を蒸発させて、その蒸発したターゲット材料をワークに付着させるようにしたアーク蒸着装置において、
真空容器内に配置したアーク蒸発源用のロッドターゲットとして、前記請求項1〜5に記載のアーク蒸発源用のロッドターゲットが用いられていることを特徴とするアーク蒸着装置。
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