JP4015782B2 - フィードフォワード非線形歪補償増幅器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主増幅器において発生する歪例えば相互変調歪を補償するため、フィードフォワード(以下「FF」と略す)ループを備えたFF非線形歪補償増幅器に関し、特にFFループを最適化するための制御回路や、主増幅器にて発生する歪の補償方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば移動体通信用の基地局・中継局では、所定の周波数間隔を有しそれぞれ適宜変調されている多数の搬送波を含むマルチキャリア信号を、高周波増幅した後無線送信する。高周波増幅に用いる増幅器の線形性が十分良好でないと、例えば相互変調歪等、各種の歪が発生する。この歪は、正常かつ高品質な通信を実現する上で支障になる。そのため、マルチキャリア信号の増幅に用いる増幅器に対しては、マルチキャリア信号が属する周波数帯域全体に亘り、良好な線形性が要求される。
【0003】
マルチキャリア信号の増幅に適する超低歪増幅器を実現する手法の一つとして、特開平4−70203号公報等に記載されているFF増幅方式がある。
【0004】
まず、信号入力端から主増幅器を経て信号出力端に到る信号経路、即ち増幅すべき信号及び増幅した信号を伝送するための信号経路を、本線と呼ぶものとする。FF増幅方式では、本線上で主増幅器より後段にある点から分岐した信号と本線上で主増幅器より前段にある点から分岐した信号とを結合させる歪検出ループを設ける。両信号が経由した信号経路の電気長が互いに等しく、かつ、両信号が互いに同振幅・逆位相になっていれば、上述した信号結合動作によって、搬送波成分を打ち消し、主増幅器及びその周辺回路にて生じた歪に相当する信号を取り出すことができる。
【0005】
FF増幅方式では、更に歪補償ループを設け、歪検出ループにて取り出された信号即ち歪に相当する信号を本線上の信号に再結合させる。歪補償ループにおける信号遅延が本線上で補償されており、かつ、本線上の信号に含まれる歪成分と歪補償ループから得られる信号とが互いに同振幅・逆位相になるよう歪補償ループ又は本線にて適宜振幅や位相の調整が行われているならば、上述した信号再結合動作によって、主増幅器にて発生した歪を補償することができる。
【0006】
図8に、従来におけるFF増幅器の一例構成を示す。この図に示す増幅器では、3個のハイブリッドHYB1〜HYB3を利用して、歪検出ループL1及び歪補償ループL2を形成している。図中、信号入力端INから主増幅器A1及び同軸遅延線D2を経て信号出力端OUTに到る信号経路が本線、信号入力端INから同軸遅延線D1を経てハイブリッドHYB2の出力端に到る信号経路が歪検出ループL1、ハイブリッドHYB2の出力端から補助増幅器A2を経てハイブリッドHYB3の出力端に到る信号経路が歪補償ループL2である。なお、図中のダミーロードZ0は、線路の特性インピーダンスと等しいインピーダンスを有しており、ハイブリッドHYB1及びHYB3の端子の終端に用いられている。
【0007】
信号入力端INに信号例えばマルチキャリア信号が印加されると、この信号はハイブリッドHYB1を介して可変減衰器ATT1及び可変移相器PS1に入力され、これらによる振幅及び位相調整を受け、更に主増幅器A1により増幅される。主増幅器A1により増幅された信号は、ハイブリッドHYB2及び同軸遅延線D2を介してハイブリッドHYB3に入力され、更に、ハイブリッドHYB3から信号出力端OUTを介して後段の回路に出力される。なお、同軸遅延線D2は、歪補償ループL2を構成する回路例えば補助増幅器A2にて発生する信号遅延を、補償するための遅延線である。
【0008】
また、信号入力端INから入力される信号は、ハイブリッドHYB1により2分岐される。2個の分岐は成分の周波数構成上は同じ信号であるが、本線側に供給される分岐は主増幅器A1にて増幅されるのに対し、歪検出ループL1側に供給される分岐に係る信号は、概ねその振幅のまま、ハイブリッドHYB1から同軸遅延線D1を介しハイブリッドHYB2に供給される。この同軸遅延線D1は、本線側の回路特に主増幅器A1にて発生する信号遅延を補償するための遅延線である。同軸遅延線D1を介しハイブリッドHYB2に供給された信号は、ハイブリッドHYB2により歪成分を含む信号と結合される。
【0009】
ハイブリッドHYB2は、主増幅器A1から出力され歪成分を含む信号を2分岐する。2個の分岐は成分の周波数構成上は同じ信号であり、一方の分岐は本線側に、他方の分岐は歪補償ループL2側に供給される。ハイブリッドHYB2は、後者の分岐に係る信号を歪補償ループL2に供給するに際し、この信号と同軸遅延線D1経由の信号とを結合させることにより、この信号中の搬送波成分をキャンセルしかつこの信号から歪成分を取り出す。
【0010】
この結合の結果得られた信号は、ハイブリッドHYB2から、歪補償ループL2を構成する可変減衰器ATT2、可変移相器PS2及び補助増幅器A2に供給され、可変減衰器ATT2及び可変移相器PS2にて振幅及び位相調整を受け、補助増幅器A2により増幅され、ハイブリッドHYB3に入力される。ハイブリッドHYB3に入力された信号は、ハイブリッドHYB3にて同軸遅延線D2経由の信号と結合され(歪成分のキャンセル)、信号出力端OUTから出力される。
【0011】
主増幅器A1の出力信号の分岐と同軸遅延線D1経由の信号とを結合させることによって搬送波成分をキャンセルし主増幅器A1等で発生する歪を取り出すには、主増幅器A1の出力信号の分岐に含まれている所定個数の搬送波成分と、同軸遅延線D1経由の信号に含まれている同数の搬送波成分とが、ハイブリッドHYB2における結合時点で互いに同タイミング・同振幅・逆位相でなければならない。同軸遅延線D1は搬送波成分同士を同タイミングにするための手段である。また、可変減衰器ATT1及び可変移相器PS1並びにこれらにおける信号減衰量G1及び移相量θ1を最適な値に調整・制御する制御回路10は、搬送波成分同士を同振幅・逆位相にするための手段である。これら、同軸遅延線D1、可変減衰器ATT1、可変移相器PS1及び制御回路10は、従って、専ら歪成分のみを含み搬送波成分を含まない信号が補助増幅器A2に供給されるようにハイブリッドHYB2の出力を調整する手段である。
【0012】
また、同軸遅延線D2経由の信号と補助増幅器A2経由の信号とを結合させることによって歪を補償するには、第1に、補助増幅器A2経由の信号が専ら歪成分のみを含み搬送波成分を含まない信号であるのが望ましい。補助増幅器A2における歪発生は歪検出ループL1が正常動作であれば無視できるため、同軸遅延線D1の遅延時間を適切な値に設定し更に制御回路10が可変減衰器ATT1及び可変移相器PS1を適切に制御することにより、この条件を成り立たせることができる。歪を補償するには、第2に、同軸遅延線D2経由の信号中の歪成分と補助増幅器A2経由の信号中の歪成分を表す信号とが、ハイブリッドHYB3における結合時点で互いに同タイミング・同振幅・逆位相でなければならない。同軸遅延線D2は歪成分同士を同タイミングにするための手段である。また、可変減衰器ATT2及び可変移相器PS2並びにこれらにおける信号減衰量G2及び移相量θ2を最適な値に調整・制御する制御回路10は、歪成分同士を同振幅・逆位相にするための手段である。
【0013】
信号減衰量G1及び移相量θ1並びに信号減衰量G2及び移相量θ2を最適な値に調整・制御する処理、即ち歪検出ループL1及び歪補償ループL2の状態最適化処理は、制御回路10により実行される。この最適化処理は、図8においては、制御回路10がCPU制御の下に2種類のパイロット信号を挿入及び検出することによって、実行されている。
【0014】
制御回路10は、それぞれL1用及びL2用パイロット信号を発生させる発振器OSC1及びOSC2を有しており、ハイブリッドHYB1より前段に設けられている方向性結合器DC1、ハイブリッドHYB2から補助増幅器A2を経てハイブリッドHYB3に到る経路上に設けられている方向性結合器DC2、ハイブリッドHYB1から主増幅器A1を経てハイブリッドHYB2に到る経路(主増幅器A1内部でもよい)に設けられている方向性結合器DC3、並びにハイブリッドHYB3と信号出力端OUTの間に設けられている方向性結合器DC4と接続されている。
【0015】
制御回路10は、方向性結合器DC1によりL1用パイロット信号を入力信号中に挿入・重畳し、方向性結合器DC2によりL1用パイロット信号の検出を行い、方向性結合器DC2におけるL1用パイロット信号の検出レベルがより低くなるよう信号減衰量G1及び移相量θ1を制御することによって、歪検出ループL1を最適化する。即ち、ハイブリッドHYB2から補助増幅器A2側に出力される信号中にL1用パイロット信号が現れない状態となるよう、信号減衰量G1及び移相量θ1を制御する。
【0016】
制御回路10は、また、主増幅器A1からハイブリッドHYB2への入力信号中に方向性結合器DC3によりL2用パイロット信号を挿入・重畳し、方向性結合器DC4によりL2用パイロット信号の検出を行い、方向性結合器DC4におけるL2用パイロット信号の検出レベルがより低くなるよう信号減衰量G2及び移相量θ2を制御することによって、歪補償ループL2を最適化する。即ち、信号出力端OUTから出力される信号中にL2用パイロット信号が現れない状態となるよう、信号減衰量G2及び移相量θ2を制御する。
【0017】
信号減衰量G1及び移相量θ1並びに信号減衰量G2及び移相量θ2を決定する処理は、専ら、制御回路10内のCPU12及び制御信号発生回路14により行われている。
【0018】
まず、方向性結合器DC2及びDC4により検出された信号は、それぞれ、バンドパスフィルタBPF1及びBPF2による帯域外不要波除去を経た上で、信号をより簡単に取り扱えるようにするため、ミキサMIX1及びMIX2により局部発振器LOCの発振出力と混合される。その結果得られる信号のうち差周波数の成分即ちより低い周波数に変換された信号が、ローパスフィルタLPF1及びLPF2により取り出され、増幅器又はバッファB1及びB2を経て制御信号発生回路14に入力される。制御信号発生回路14は、CPU12による制御の下に、ステップバイステップの論理・手法に従い、信号減衰量G1及び移相量θ1並びに信号減衰量G2及び移相量θ2に係る制御信号を発生させる。例えば、制御信号値を任意の方向にわずかに変化させてみることにより、増幅器又はバッファB1及びB2の出力がより低レベルとなるような変化方向を探索し、その方向へと制御信号値を変化させる、といった処理を、逐次繰返し実行する。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
以上のような構成の回路によって、マルチキャリア信号の増幅に適する超低歪の増幅器を実現することができる。しかしながら、上述のようにステップバイステップの処理にて制御信号を発生させるのでは、信号入力端INから入力される信号のレベルが変化したとき、波数(搬送波の個数)が変化したとき、温度が変化したとき等、主増幅器A1及び補助増幅器A2の動作条件に変動が生じたときに、これに迅速に追従するのが困難である。例えば、前に掲げた移動体通信用基地局の送信用RF増幅器等の分野でこの従来技術を用いる場合、動作条件の変化に対するループの応答時間、即ち動作条件が変化した後新たな動作条件下でループが平衡しパイロット検出レベルが0近傍に収束するまでに要する時間が、3〜10秒といった長時間となってしまう。また、動作条件が変化してから歪検出ループL1が平衡するまでの間、補助増幅器A2が過入力状態になることがあり、その場合、補助増幅器A2が破損する恐れが生じる。
【0020】
更に、L1用パイロット信号が、ハイブリッドHYB2から同軸遅延線D2を経てハイブリッドHYB3に供給される信号中に含まれているため、信号出力端OUTからの出力信号にL1用パイロット信号が残存してしまう。残存したL1用パイロット信号は、後段の回路の動作に支障となる。例えば、移動体通信用基地局の送信用RF増幅等の用途では、L1用パイロット信号が残存した出力信号をそのままアンテナに供給すると、不要スプリアスが生じてしまう。従って、図8に示した構成の回路を用いる場合、ハイブリッドHYB2の本線側出力端より後段に、L1用パイロット信号を阻止するノッチフィルタを設けるか、或いはL1用パイロット信号を打ち消す信号を本線上に注入する回路を設けるか、いずれかの工夫を施す。しかし、主増幅器A1により増幅された信号即ち大電力の信号を濾波するノッチフィルタは、大型で高価なものになるだけでなく、回路全体の位相直線性を損なう原因にもなり、またノッチフィルタ分の挿入損失の発生による回路全体の動作効率の低下をも招く。他方、L1用パイロット信号を打ち消す信号を本線上に注入する回路は、その構成が複雑になるし、温度補償等の制御も容易でないため、現実的でない。
【0021】
本発明は、このような問題点を解決することを課題としてなされたものであり、歪検出ループの制御のために同期検波回路を新たに採用することによって、L1用パイロット信号を不要にし、不要スプリアスの発生防止、ノッチフィルタ廃止を通じて、従来よりスプリアス放射が少なくかつ小形低価格のFF増幅器を提供することを第1の目的とする。本発明は、更に、歪検出ループや歪補償ループの制御のために同期検波回路を新たに採用することによって、CPUによるステップバイステップ手順を不要にし、従来に比べ各ループの応答時間が短縮された信頼性の高いFF増幅器を提供することを第2の目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成すべく、本発明は、(1)その周波数が相異なる複数の搬送波を含む主増幅器への入力信号から分岐した信号と主増幅器の出力信号から分岐した信号とを結合させ、この結合に際してはその対象となる信号のうち少なくとも一方に関し結合時に搬送波成分同士が打ち消しあうよう振幅及び位相調整を施し、そして結合により得られた信号を利用して主増幅器からの出力信号中に含まれる歪成分を補償する歪補償方法において、(2)主増幅器への入力信号又は主増幅器の出力信号の少なくとも一部を取り出し、取り出したその信号を構成する各搬送波の合計平均電力が変化しないよう当該取り出したその信号を定レベル化し、その結果得られた信号と上記結合により得られた信号とをミキサにより混合し、上記その結果得られた信号を基準として上記結合により得られた信号を同期検波することにより、制御信号を発生させ、(3)この制御信号により上記振幅及び位相調整の動作を制御することを特徴とする。上記振幅及び位相調整は、その対象となる信号のベクトル変調により実行してもよい。同期検波の対象となる信号を、当該同期検波に先立ちより低い周波数に変換するのが望ましい。
【0023】
また、本発明は、(1)主増幅器、その周波数が相異なる複数の搬送波を含む主増幅器への入力信号から分岐した信号と主増幅器の出力信号から分岐した信号とを結合させる歪検出ループ、この結合に際してその対象となる信号のうち少なくとも一方に関し結合時に搬送波成分同士が打ち消しあうよう振幅及び位相調整を施す手段、並びに結合により得られた信号を利用して主増幅器からの出力信号中に含まれる歪成分を補償する歪補償手段を備えるFF増幅器にて用いられ、(2)上記振幅及び位相調整の動作を制御するための第1の制御信号を発生させる制御回路において、(3)主増幅器への入力信号又は主増幅器からの出力信号の少なくとも一部を取り出し、取り出したその信号を構成する各搬送波の合計平均電力が変化しないよう当該取り出したその信号を定レベル化するALC(自動レベル制御)回路と、(4)前記ALC回路による定レベル化の結果得られた信号と上記結合により得られた信号とをミキサにより混合し、前記ALC回路による定レベル化の結果得られた信号を基準として上記結合により得られた信号を同期検波することにより上記第1の制御信号を発生させる第1の同期検波回路と、を備えることを特徴とする。上記振幅及び位相調整を施す手段は、その対象となる信号をベクトル変調するベクトル変調器を含む手段として実現してもよい。また、同期検波の対象となる信号を当該同期検波に先立ちより低い周波数に変換する手段を設けるのが望ましい。
【0024】
本発明は、更に、(1)主増幅器、その周波数が相異なる複数の搬送波を含む主増幅器への入力信号から分岐した信号と主増幅器の出力信号から分岐した信号とを結合させる歪検出ループ、この結合に際してその対象となる信号のうち少なくとも一方に関し結合時に搬送波成分同士が打ち消しあうよう振幅及び位相調整を施す手段、上記結合により得られた信号を主増幅器からの出力信号に再結合させる歪補償ループ、並びにこの再結合に際してその対象となる信号のうち少なくとも一方に関し再結合時に歪成分同士が打ち消しあうよう振幅及び位相調整を施す手段を備え、上記結合により得られた信号を上記再結合に供することにより主増幅器からの出力信号中に含まれる歪成分を補償するFF増幅器にて用いられ、(2)上記結合に係る振幅及び位相調整の動作を制御するための第1の制御信号並びに上記再結合に係る信号の振幅及び位相調整の動作を制御するための第2の制御信号を発生させる制御回路において、(3)主増幅器への入力信号又は主増幅器からの出力信号をその平均電力が一定となるよう定レベル化するALC回路と、(4)その結果得られた信号を基準として上記結合により得られた信号を同期検波することにより上記第1の制御信号を発生させる第1の同期検波回路と、(5)主増幅器の出力信号にパイロット信号を挿入する手段と、(6)上記再結合を経た信号の一部を分岐して取り出す手段と、(7)取り出された信号を上記パイロット信号を基準として同期検波することにより上記第2の制御信号を発生させる第2の同期検波器と、を備えることを特徴とする。好ましくは、上記パイロット信号を挿入に先立ちスペクトル拡散する手段と、上記パイロット信号を基準とする同期検波に先立ち当該同期検波の対象となる信号をスペクトル逆拡散する手段とを、設ける。更に好ましくは、上記パイロット信号を低い周波数で発振させておき、挿入に先立ち主増幅器の動作周波数帯に属する周波数に変換し、上記パイロット信号を基準とする同期検波に先立ち当該同期検波の対象となる信号をパイロット信号の発振周波数と同じ周波数に変換することとする。更には、スペクトル拡散の後に主増幅器の動作周波数帯への変換を実行し、パイロット信号の発振周波数と同じ周波数への変換の後にスペクトル逆拡散を実行するのが望ましい。
【0025】
そして、本発明に係るFF増幅器は、(1)主増幅器と、(2)その周波数が相異なる複数の搬送波を含む主増幅器への入力信号から分岐した信号と主増幅器の出力信号から分岐した信号とを結合させる歪検出ループと、(3)上記結合により得られた信号を主増幅器からの出力信号に再結合させる歪補償ループと、(4)本発明に係る制御回路と、を備えることを特徴とする。
【0026】
このように、本発明においては、歪検出用のパイロット信号を廃止しているためパイロット信号に起因した不要スプリアスが発生することがなく、またこの不要スプリアスの輻射を防止するためのノッチフィルタ等の回路・装置を廃止して小型化・低価格化を実現することができる。更に、各ループの制御に同期検波を用いているため、従来行われていたステップバイステップに監視・制御する手順の廃止、ひいてはそれによる高速応答を実現できる。また、同期検波の際の参照信号乃至基準信号発生にALC回路による定レベル化を導入したことにより、より広範囲な動作レベルにおいて同期検波器の動作を安定で信頼性あるものにすることができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態に関し図面に基づき説明する。なお、図8に示した従来の回路や参考のために付した図9に示される回路と同様の又は対応する構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0028】
(1)実施形態
図1に、本発明の一実施形態に係る回路の構成を示す。この図に示す回路は、同期検波器36及び38並びにALC回路40を有する制御回路10Bを備えている。同期検波器36及び38はそれぞれ歪検出ループL1又は歪補償ループL2に対応して設けられており、図中ERRと記されている誤差信号を、図中REFと記されている信号を参照信号として同期検波し(即ちこの参照信号に対する同期をかけ)、その結果得られる信号のうち振幅制御信号Gを用いて対応する可変減衰器を制御し、位相制御信号θを用いて対応する可変移相器を制御する。
【0029】
同期検波器36及び38の一例を、図2に示す。この図の例では、誤差信号ERRを位相空間上で相直交する信号(ERRI,ERRQ)に変換して出力するハイブリッドHYB5、参照信号REFを同相2分配する同相分配器42、好ましくはDBM(Double Balanced Mixer)により実現されるミキサMIX7及びMIX8、好ましくは集積回路化された増幅器として実現される差動増幅器IC1及びIC2、並びにミキサMIX7及びMIX8のオフセット電圧を調整するオフセット調整回路44及び46を備えている。
【0030】
ミキサMIX7は、ハイブリッドHYB5からの信号ERRI(0[rad])と同相分配器42からの参照信号REFとを混合し、それにより得られた信号を差動増幅器IC1の入力端子(図では非反転入力端子)に印加する。ミキサMIX8は、ハイブリッドHYB5からの信号ERRQ(−π/2[rad])と同相分配器42からの参照信号REFとを混合し、それにより得られた信号を差動増幅器IC2の入力端子に印加する。差動増幅器IC1及びIC2は、これらの信号を増幅して出力する。差動増幅器IC1の出力端子に現れる電圧は可変減衰器ATT1又はATT2に与える振幅制御信号Gとして、また差動増幅器IC2の出力端子に現れる電圧は可変移相器PS1又はPS2に与える位相制御信号θとして、それぞれ用いられる。
【0031】
また、差動増幅器IC1及びIC2の入力端子(図では反転入力端子)には、その一端が出力端子に接続されているコンデンサC及びその一端が接地されている抵抗Rの他、オフセット調整回路44或いは46が接続されている。オフセット調整回路44及び46は、ミキサMIX7及びMIX8のうち対応するものにて発生する数mV程度のオフセット電圧をキャンセルするための回路であり、そのために必要な調整電圧を発生させ、差動増幅器IC1及びIC2に基準電圧として印加する。なお、ミキサMIX7及びMIX8の出力の印加先は、FFループに対し負帰還がかかるように差動増幅器IC1及びIC2で差動増幅される極性である必要があるため、反転/非反転のいずれの入力端子に印加すべきかは、各可変減衰器及び各可変移相器の動作特性により決まる。これにより、差動増幅器IC1及びIC2のいずれの入力端子に基準電圧を印加すべきかも決まる。
【0032】
図1に示される制御回路10Bは、上述した構成を有する同期検波器36及び38、同期検波器36に参照信号を供給するALC回路40、L2用パイロット信号を発振する発振器OSC2、並びにL2用パイロット信号を同相2分配する同相分配器28を備えている。制御回路10Bは、更にハイブリッドHYB2から補助増幅器A2を経てハイブリッドHYB3に到る経路上に設けられている方向性結合器DC2、ハイブリッドHYB1から主増幅器A1を経てハイブリッドHYB2に到る経路(主増幅器A1内部でもよい)に設けられている方向性結合器DC3、並びにハイブリッドHYB3と信号出力端OUTとの間に設けられている方向性結合器DC4及びDC9と接続されており、方向性結合器DC4の出力から帯域外雑音を除去するためのバンドパスフィルタBPF3を有している。なお、方向性結合器DC9は、本線上のいずれの箇所に設けてもよい。
【0033】
同期検波器36は、方向性結合器DC2から同軸遅延線D4を介して誤差信号ERRを、方向性結合器DC9から同軸遅延線D3及びALC回路40を介して参照信号REFを、それぞれ取り込む。同軸遅延線D3及びD4は、対応する方向性結合器から同期検波器36に到る信号経路同士の電気長の差を補償する。ALC回路40は、同軸遅延線D3を経てきた信号のレベルを自動制御することにより、搬送波平均電力が変化しても参照信号のレベルが変化しないよう一定に保つ。これにより、同期検波器36内のミキサMIX7及びMIX8のDCオフセット変動を防止している(後述)。
【0034】
同期検波器38は、方向性結合器DC4からバンドパスフィルタBPF3を介して誤差信号ERRを、同相分配器28から分配される参照信号REFを、それぞれ取り込む。なお、同相分配器28の分配出力のうち残りの一方は、方向性結合器DC3によりL2用パイロット信号として本線上の信号に挿入される。
【0035】
ここで、上述のミキサMIX7及びMIX8のオフセット電圧は、ミキサ毎に固有であると共に、その励振レベルに依存して変化する。ミキサ毎のオフセット電圧の個体差は、概ね、上述のオフセット調整回路44及び46により補償できる。しかし、参照信号REFのレベル即ち励振レベルの変化によるオフセット電圧の変化については、オフセット調整回路44及び46では補償できない。励振レベルの変化に伴いオフセット電圧が変化すると、可変減衰器ATT1又はATT2及び可変移相器PS1又はPS2に対する制御信号G又はθの値が最適値からずれ、その結果歪検出ループL1又は歪補償ループL2が平衡状態から外れてしまう。そこで、本実施形態では、ミキサMIX7及びMIX8の励振レベルを一定にするために、同期検波器38に対しては発振器OSC2からの信号即ちレベルが安定している信号を、同期検波器36に対してはALC回路40の出力即ちレベル安定化処理が施されている信号を、それぞれ参照信号REFとして供給している。
【0036】
図3に示すように、ALC回路40は、本線上に設けられている方向性結合器DC9からの信号の振幅を調整するための可変減衰器ATT3、この振幅調整を経た信号を2分岐するハイブリッドHYB6、可変減衰器ATT3とハイブリッドHYB6の間に設けられている増幅器又はバッファB3、ハイブリッドHYB6の分岐出力のうち一方を検波しその結果である検波電圧を出力する検波器DET、並びに好ましくは集積回路により実現されこの検波電圧を増幅する差動増幅器IC3を、備えている。
【0037】
方向性結合器DC9からの信号は、可変減衰器ATT3及び増幅器又はバッファB3を経てハイブリッドHYB6に入力される。ハイブリッドHYB6の分岐出力のうち一方は、自乗検波領域で検波ダイオードを動作させる構成を有する検波器DETによって検波され、検波電圧は差動増幅器IC3を介してハイブリッドHYB6前段の可変減衰器ATT3に減衰率の制御信号として供給される。ハイブリッドHYB6の分岐出力のうち他方は、可変減衰器ATT3における減衰率の制御により、十分に広いダイナミックレンジで、一定の出力レベルに保持される。
【0038】
検波器DETは、例えば、本願出願人が特願平10−119292号及び特願平10−250582号にて開示したように、検波ダイオードと並列に温度補償用ダイオードを設け、これらのダイオードを同じ条件で順方向にバイアスし、更に温度補償用ダイオードの順方向電圧に関して温度補償を施す構成とする。このように、検波器DETを構成する検波ダイオードを自乗検波領域で動作させると、検波器DETの検波モードが平均値検波となるため、搬送波の波数の変化、変調の有無、変調方式の相違等だけでは、ALC回路40から同期検波器36に供給する参照信号REFのレベルは変化しない。また、一般に検波ダイオードを自乗検波領域で動作させると、温度による順方向電圧の変化ひいてはそれに起因した非線形歪や、検波効率の不均一といった問題が生じるが、上記先提案に係る構成の検波器DETを用いることによって、これらの問題点を抑えることができる。
【0039】
(2)効果及び変形例
以上説明した実施形態によれば、同期検波器36及び38を用いて歪検出ループL1及び歪補償ループL2の最適化に係る制御を行っているため、CPUによるステップバイステップ手順を行う必要がなく、動作条件の変化に対する応答が迅速化する。例えば、図8に示した従来技術では3〜10秒といった応答時間であったのに対し、本実施形態では、歪検出ループL1で数百μ秒、歪補償ループL2で数十m秒程度まで、応答時間を短縮できる。その結果、補助増幅器A2への過入力も生じにくくなる。
【0040】
また、本線上の信号に直接同期をかける同期検波器36を設け、この同期検波器36の出力に応じて歪検出ループL1の制御を行うようにしているため、L1用パイロット信号を用いる必要がない。その結果、信号出力端OUTからのL1用パイロット信号の漏れを防ぐためのノッチフィルタが不要になる、L1用パイロット信号を発生させるための回路が不要になる等、回路構成の簡素化や低価格化の効果も生じる。
【0041】
更に、同期検波器36に供給する参照信号REFを発生させる手段として、本線上の信号の一部を取り出して平均電力検波を行い定レベル化するという手法を用いているため、波数等の変化によらず、安定して、歪検出ループL1を動作させることができる。
【0042】
更に、検波器DETとして本願出願人の先提案に係る検波器を用いているため、温度変化等の動作条件変化が生じてもそれにより動作に支障が生じることはない。
【0043】
また、以上説明した実施形態では、信号の一部を取り出しフィードフォワードするためにハイブリッドを用いているが、ハイブリッドに代えて各種の信号分岐、信号抽出手段を用いることができる。可変減衰器に代えて可変利得増幅器を用いてもよい。信号を取り出して制御回路に供給するため又は制御回路からの信号を回路各部に挿入するための方向性結合器は、本発明の効果を損なわない限り、図示以外の箇所に移動させることもできる。各ミキサはアクティブタイプでもパッシブタイプでもよい。差動増幅器は負帰還の関係が維持できる限りにおいては反転型で用いても非反転型で用いてもよい。
【0044】
更に、可変減衰器と可変移相器の組合せに代えて、図4に示すように、ベクトル変調器を用いてもよい。図4中、可変減衰器ATT1及び可変移相器PS1に代わり設けられているのはベクトル変調器M1であり、可変減衰器ATT2及び可変移相器PS2に代わり設けられているのはベクトル変調器M2である。
【0045】
ベクトル変調器M1及びM2は、いずれも、図5に示すように、入力信号を直交2分配する直交分配器48、直交分配器48の出力のうちI(0[rad])成分と利得制御信号Gとを混合して出力するミキサMIXI、直交分配器48の出力のうちQ(−π/2[rad])成分と位相制御信号θとを混合して出力するミキサMIXQ、並びにミキサMIXI及びMIXQの出力を同相結合する同相結合器50から構成されている。従って、利得制御信号G及び位相制御信号θの振幅を適宜変更することにより、同相結合器50の出力の振幅及び位相を変化させることができる。なお、ミキサMIXI及びMIXQはDBM等により実現できる。
【0046】
更に、図6に示すように、同期検波器36及び38への入力信号に関し、図8に示した従来技術と同様、より低い周波数への変換を施してもよい。図中、BPF1〜BPF4は帯域外雑音を除去するためのバンドパスフィルタ、MIX1,MIX2,MIX9及びMIX10は周波数変換のためのミキサ、LPF1〜LPF4はミキサ出力のうち低域成分即ち周波数変換後の信号を取り出すためのローパスフィルタ、B1〜B4はこの信号を同期検波器36又は38に供給するためのバッファ又は増幅器、LOCは周波数変換用の局部発振器である。このように、低周波に変換した後同期検波を行う構成とすることによって、同期検波器36及び38における信号の取り扱いが容易になり、また、各信号経路間の電気長のずれに起因したキャンセル帯域(歪を補償できる周波数帯域)の狭帯域化を、防ぐことができる。また、低い周波数帯域では、帯域外抑圧特性の良いフィルタを容易に実現でき、これをローパスフィルタLPF1等として用いることができるため、対妨害性に優れた構成とすることができる。なお、ローパスフィルタLPF1〜LPF4に代え、バンドパスフィルタを設けてもよい。
【0047】
加えて、図7に示すように、L2用パイロット信号をスペクトル拡散変調するようにしてもよい。図中、発振器OSC2の発振出力は、同相分配器28により同期検波器38及びミキサMIX11に同相2分配される。ミキサMIX11に分配された信号は、拡散信号発生器56が発生させた拡散信号によりミキサMIX11において直接拡散変調され、更にミキサMIX12において局部発振器LOCの出力を用いてより高い周波数へと変化された後に、方向性結合器DC3に供給される。また、方向性結合器DC4からの信号は、ミキサMIX13において局部発振器LOCの出力を用いて発振器OSC2の発振周波数へと変換された後に、拡散信号発生器56が発生させた拡散信号によりミキサMIX14において逆拡散により原信号に復調され、バンドパスフィルタBPF3を介して同期検波器38に誤差信号ERRとして入力される。
【0048】
ここに、図1に示した実施形態や図8に示した従来技術では、L2用パイロット信号として無変調信号(連続波)が使用されている。従って、L2用パイロット信号の周波数を、増幅器の使用帯域即ち搬送波成分が多数密に並んでいる周波数帯域の内部又はごく近傍に設定すると、L2用パイロット信号と搬送波成分或いはそのスプリアスとの間に相互干渉が発生する。そのため、L2用パイロット信号の周波数は、この相互干渉が生じないよう増幅器の使用帯域からある程度離れた周波数に設定する必要があった。しかし、そのような設定の下では、L2用パイロット信号の周波数における歪除去抑圧性能は最適になるにしても、増幅器が実際に使用される周波数帯域における歪除去抑圧性能は、必ずしも最適にはならない。
【0049】
これに対し、スペクトル拡散されたL2用パイロット信号は、搬送波成分に対して擬似的にノイズのように作用する。従って、L2用パイロット信号の基本周波数を増幅器の使用帯域内に設定しても、上述した相互干渉は発生しない。そのため、増幅器の使用帯域内に属する基本周波数を有するL2用パイロット信号を用いることが可能になる。これは、増幅器が実際に使用される周波数帯域における歪除去抑圧性能を最適化できることを意味している。なお、ここでいうところのL2用パイロット信号の“基本周波数”は、発振器OSC2の発振周波数と局部発振器LOCの発振周波数の和である。局部発振器LOCを用いたアップコンバート及びダウンコンバートを実行しない場合やより多段に亘り周波数変換を行う場合には、それに応じて“基本周波数”の定義も変わる。
【0050】
また、スペクトル拡散されたL2用パイロット信号を用いているため、増幅器の使用帯域が若干変更されたとしても、局部発振器LOCの発振周波数を変更するだけですみ、L2用パイロット信号の周波数を変更する必要がない。従って、スペクトル拡散されたL2用パイロット信号を用いることには、使用帯域の変更に伴うパイロット周波数変更を簡単に実施できる、というメリットもある。
【0051】
更に、図7に示すようにスペクトル拡散されたL2用パイロット信号をアップコンバートして本線上に挿入するようにした場合、アップコンバートせずに本線上に挿入する場合に比べ、スペクトル拡散/逆拡散の対象となる信号の周波数が低くなる。言い換えれば、同期検波器38の動作がクリティカルな動作にならずに済み、また、装置の広帯域化が可能になり、その動作が比較的安定になる。また、妨害波除去性能の優れたバンドパスフィルタBPF3を安値かつ容易に使用できるため、特性も改善される。
【0052】
(3)参考例
ところで、米国特許第5528196号に開示されているFF増幅器は、L1用パイロット信号を廃止している点や、CPU制御によるステップバイステップ手順を不要にしている点で、上述した実施形態と共通している。図1に示した実施形態との比較のため、図9に、上記米国特許により開示されている手法を図8に示した従来回路に変形適用した場合に得られる回路の構成を示す。図示されているのが上記米国特許に係る発明そのものの構成ではないこと、即ちこの図の回路自体は厳密には上記米国特許に開示も示唆もされていないことに、留意されたい。この図に示されている制御回路10Aは、歪検出ループL1の最適化のために差動比較器16を、また歪補償ループL2の最適化のためにL2制御ユニット18を、それぞれ設けた構成を有している。
【0053】
図1に示した回路と図9に示した回路との間には、第1に、信号入力端INから入力される信号との間に相関を有していない信号に関してどのように動作するのかに関する相違点がある。
【0054】
まず、図1に示した回路では、歪検出ループL1に係る誤差信号ERR中に常に残存している搬送波成分を、本線上の信号を定レベル化した信号を参照信号として用いて同期検波している。従って、同期検波器36にて取り出され可変減衰器ATT1及び可変移相器PS1に対する制御信号として用いられるのは、信号入力端INから入力される信号と相関を有している信号、即ち信号ERR中の複数の搬送波成分である。本線上の信号と相関を有していない信号例えばランダムなノイズが、主増幅器A1にて発生した歪と同様に取り出されてしまうことはない。
【0055】
これに対し、図9に示した回路では、方向性結合器DC5からの信号を同相分配器20により振幅検波器24及び位相検波器26に同相分配し、方向性結合器DC6からの信号を同相分配器22により振幅検波器24及び位相検波器26に同相分配し、振幅検波器24及び位相検波器26内に設けられている抵抗ブリッジにこれらの信号を入力し、この抵抗ブリッジの出力を自乗検波し直流増幅器を差動的に動作させる、という手法を採用している。即ち、even modeの成分を取り出すべく差動比較を行っている。その結果として、相関の有無によらず検出の対象となるから、ランダムなノイズが取り出され可変減衰器ATT1及び可変移相器PS1に対する制御信号として用いられることもある。
【0056】
このように、前者即ち本発明の実施形態は、ノイズに対する強さの面で、原理上、後者即ち従来技術の単純な組合せよりも、優れている。
【0057】
図1に示した回路と図9に示した回路との間には、第2に、制御回路に入力すべき信号を取り出す点の位置の相違がある。
【0058】
まず、図1の回路では、ハイブリッドHYB2から補助増幅器A2を経てハイブリッドHYB3に到る経路上からの信号と、信号出力端OUTからの信号とが、信号ERR及びREFとして同期検波器36に入力されている。しかし、これは例の一つであり、本発明を実施するに際しては、同期検波器36のERR,REF各入力端からハイブリッドHYB2の信号結合点までの電気長が互いに等しい限り、誤差信号ERRの検出点はハイブリッドHYB2から補助増幅器A2を経てハイブリッドHYB3に到る信号経路上のどの点としてもよいし、参照信号REFの検出点は本線上のどの点としてもよい。このような高い融通性乃至設計上の高い自由度は、前述のように、図1に示した回路で本線上の信号による誤差信号の同期検波を行っていることによって、生じている。
【0059】
これに対し、図9の回路では、ハイブリッドHYB2の入力端近傍から2種類の信号が差動比較器16に入力されている。この回路では、上述のように差動比較を行っているため、信号を取り出す点の位置を大きく変えることはできない。従って、図1に示した回路の方が、設計の自由度が高い。なお、図9では、図示の便宜のため方向性結合器DC5をハイブリッドHYB2の入力端に記しているが、ハイブリッドHYB2の本線側入力端における搬送波振幅が非常に大きいのに対してハイブリッドHYB2の同軸遅延線D1側入力端における搬送波振幅は小さいため、実際には、方向性結合器DC5をハイブリッドHYB2の本線側入力端に設けるのは好ましくない。差動比較器16を好適に動作させるには、方向性結合器DC5を、搬送波振幅がより小さい位置に設けるであろう。ハイブリッドHYB2の内部には、本線上の信号を2分岐する回路部分と、分岐された信号のうち一方を同軸遅延線D1経由の信号と結合させる回路部分とがあり、両回路部分を結ぶ線路上では搬送波振幅が小さいから、当該線路上に方向性結合器DC5を設けるのがよかろう。
【0060】
図1に示した回路と図9に示した回路との間には、第3に、ALC回路40の有無という相違点がある。
【0061】
まず、図1に示した回路では、本線上の信号の一部をALC回路40を介し参照信号REFとして同期検波器36に入力し、この参照信号REFに基づき信号ERRを同期検波する、という手法を採用している。即ち、歪補償ループL2上の誤差信号を同期検波するのに本線上の参照信号を定レベル化し、オフセット電圧の影響をなくしている。
【0062】
同期検波器36の実効的なダイナミックレンジはALC回路40のダイナミックレンジにより定まっており、ALC回路40のダイナミックレンジはバッファ又は増幅器B3のゲインと可変減衰器ATT3の減衰量の変化量で決まる。従って、これらゲイン及び減衰量の変化幅を大きくとることにより、同期検波器36の実効的なダイナミックレンジを容易に拡大できる。これに対し、図9に示した回路では、そのようなALC回路40は用いられていない。
【0063】
図1に示した回路と図9に示した回路との間には、第4に、歪補償ループL2に係る制御信号の生成手法に関する相違がある。即ち、図1に示した回路では、L2用パイロット信号を変調せずに同期検波器38の参照信号として用いているのに対し、図9に示した回路では、L2用パイロット信号を低周波発振出力で変調して参照信号としている。
【0064】
より具体的には、図9に示した回路では、まず、局部発振器LOCの発振出力を同相分配器28によりハイブリッドHYB4と同相分配器32とに同相2分配し、この信号からハイブリッドHYB4が直交信号即ちI成分(0)及びQ成分(−π/2)を含む信号を生成し、この直交信号と低周波発振器OSC2の直交発振出力とをミキサMIX3及びMIX4により混合し、その結果得られた信号を同相結合器37により同相合成して、片側側波帯に係るL2用パイロット信号を生成している。図9に示した回路では、更に、同相分配器32により同相2分配される信号と方向性結合器DC7及びDC8からの信号に同相分配器32からの信号とをミキサMIX5及びMIX6により混合し、更にミキサMIX5の出力を基準としてミキサMIX6の出力を同期検波器34により同期検波することにより、可変減衰器ATT2及び可変移相器PS2に対する制御信号を生成している。
【0065】
従って、図9に示した回路は、図1に示した回路と同様同期検波により歪補償ループL2を制御しているが、L2用パイロット信号を発生させるため局部発振信号を低周波発振出力にて変調し片側側波帯を取り出す必要があること等、回路構成上の複雑さという問題を有している。
【0066】
これらの相違点から明らかなように、図8に示した従来の回路を上記米国特許の開示に基づき変形したとしても、図1に示した回路とはならない。特に、図1に示した実施形態やその他の図に示した各変形例では、本線上の信号を同期検波回路36の参照信号REFとして使用できるようにするために、平均値検波に係るALC回路40を用いている。このような発想は、上記米国特許からは生まれ得ない。
【0067】
また、上記米国特許の他に、特開平6−244647号公報や特開平6−85548号公報に記載されている従来技術もある。これらの公報に記載されている回路では、L2用パイロット信号をスペクトル拡散して本線上に挿入し、本線上から検出した信号をスペクトル逆拡散し、その結果に基づき歪補償ループL2の動作を調整乃至制御している。しかし、これらの公報には、同期検波器36の使用やそれを可能にするALC回路40の使用、ひいてはL1用パイロット信号の廃止に関する記載も示唆もない。更に、L1用パイロット信号についてもスペクトル拡散を施す旨の記載からすれば、むしろ、これらの公報に開示されている技術は、L1用パイロット信号の廃止という本発明の基本的発想に背いているといえよう。従って、これらの公報に記載されている技術を本願図8に示した従来技術や上記米国特許と組み合わせる動機自体いわゆる当業者には生じ得ない。仮に、組み合わせたとしても、その結果得られる構成と本発明に係る構成との間には、図9に示した構成と本発明に係る構成との間に存する相違点と同様の相違点が残る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係る回路の構成を示す図である。
【図2】 この実施形態における同期検波器の構成を示す図である。
【図3】 この実施形態におけるALC回路の構成を示す図である。
【図4】 この実施形態における振幅位相調整用の部材の変形例を示す図である。
【図5】 ベクトル変調器の一例を示す図である。
【図6】 この実施形態における制御回路の変形例を示す図である。
【図7】 この実施形態における制御回路特にその歪補償ループ関連部分の変形例を示す図である。
【図8】 FF増幅器の一例構成を示す図である。
【図9】 図8に示したFF増幅器を米国特許第5528196号の開示に基づき変形した構成を参考例として示す図である。
【符号の説明】
10B 制御回路、36,38 同期検波器、40 ALC回路、56 拡散信号発生器、A1 主増幅器、A2 補助増幅器、ATT1〜ATT3 可変減衰器、DET 検波器、L1 歪検出ループ、L2 歪補償ループ、LOC 局部発振器、M1,M2 ベクトル変調器、PS1,PS2 可変移相器。
Claims (11)
- その周波数が相異なる複数の搬送波を含む主増幅器への入力信号から分岐した信号と主増幅器の出力信号から分岐した信号とを結合させ、この結合に際してはその対象となる信号のうち少なくとも一方に関し結合時に搬送波成分同士が打ち消しあうよう振幅及び位相調整を施し、そして結合により得られた信号を利用して主増幅器からの出力信号中に含まれる歪成分を補償する歪補償方法において、
主増幅器への入力信号又は主増幅器の出力信号の少なくとも一部を取り出し、取り出したその信号を構成する各搬送波の合計平均電力が変化しないよう当該取り出したその信号を定レベル化し、その結果得られた信号と上記結合により得られた信号とをミキサにより混合し、上記その結果得られた信号を基準として上記結合により得られた信号を同期検波することにより、制御信号を発生させ、
この制御信号により上記振幅及び位相調整の動作を制御することを特徴とする歪補償方法。 - 請求項1記載の歪補償方法において、
上記振幅及び位相調整を、その対象となる信号のベクトル変調により実行することを特徴とする歪補償方法。 - 請求項1又は2記載の歪補償方法において、
同期検波の対象となる信号を当該同期検波に先立ちより低い周波数に変換することを特徴とする歪補償方法。 - 主増幅器、その周波数が相異なる複数の搬送波を含む主増幅器への入力信号から分岐した信号と主増幅器の出力信号から分岐した信号とを結合させる歪検出ループ、この結合に際してその対象となる信号のうち少なくとも一方に関し結合時に搬送波成分同士が打ち消しあうよう振幅及び位相調整を施す手段、並びに結合により得られた信号を利用して主増幅器からの出力信号中に含まれる歪成分を補償する歪補償手段を備えるフィードフォワード非線形歪補償増幅器にて用いられ、上記振幅及び位相調整の動作を制御するための第1の制御信号を発生させる制御回路において、
主増幅器への入力信号又は主増幅器の出力信号の少なくとも一部を取り出し、取り出したその信号を構成する各搬送波の合計平均電力が変化しないよう当該取り出したその信号を定レベル化するALC回路と、
前記ALC回路による定レベル化の結果得られた信号と上記結合により得られた信号とをミキサにより混合し、前記ALC回路による定レベル化の結果得られた信号を基準として上記結合により得られた信号を同期検波することにより上記第1の制御信号を発生させる第1の同期検波回路と、
を備えることを特徴とする制御回路。 - 請求項4記載の制御回路において、
上記振幅及び位相調整を施す手段が、その対象となる信号をベクトル変調するベクトル変調器を含むことを特徴とする制御回路。 - 請求項4又は5記載の制御回路において、
同期検波の対象となる信号を当該同期検波に先立ちより低い周波数に変換する手段を備えることを特徴とする制御回路。 - 上記歪補償手段が、上記結合により得られた信号を主増幅器の出力信号に再結合させる歪補償ループ、並びにこの再結合に際してその対象となる信号のうち少なくとも一方に関し再結合時に歪成分同士が打ち消しあうよう振幅及び位相調整を施す手段を含むフィードフォワード非線形歪補償増幅器にて用いられ、上記第1の制御信号に加え、上記再結合に係る信号の振幅及び位相調整の動作を制御するための第2の制御信号を発生させる請求項4乃至6のいずれかに記載の制御回路において、
主増幅器の出力信号にパイロット信号を挿入する手段と、
上記再結合を経た信号の一部を分岐して取り出す手段と、
取り出された信号を上記パイロット信号を基準として同期検波することにより上記第2の制御信号を発生させる第2の同期検波器と、
を備えることを特徴とする制御回路。 - 請求項7記載の制御回路において、
上記パイロット信号を挿入に先立ちスペクトル拡散する手段と、
上記パイロット信号を基準とする同期検波に先立ち当該同期検波の対象となる信号をスペクトル逆拡散する手段と、
を備えることを特徴とする制御回路。 - 請求項7記載の制御回路において、
主増幅器の動作周波数帯より低い周波数にて発振させた上記パイロット信号を挿入に先立ち主増幅器の動作周波数帯に属する周波数に変換する手段と、
上記パイロット信号を基準とする同期検波に先立ち当該同期検波の対象となる信号をパイロット信号の発振周波数と同じ周波数に変換する手段と、
を備えることを特徴とする制御回路。 - 請求項7記載の制御回路において、
主増幅器の動作周波数帯より低い周波数で発振させた上記パイロット信号をスペクトル拡散する手段と、
スペクトル拡散された上記パイロット信号を挿入に先立ち主増幅器の動作周波数帯に属する周波数に変換する手段と、
上記パイロット信号を基準とする同期検波に先立ち当該同期検波の対象となる信号をパイロット信号の発振周波数と同じ周波数に変換する手段と、
当該周波数に変換された信号をスペクトル逆拡散し上記同期検波に供する手段と、
を備えることを特徴とする制御回路。 - 主増幅器と、主増幅器への入力信号から分岐した信号と主増幅器の出力信号から分岐した信号とを結合させる歪検出ループと、上記結合により得られた信号を主増幅器からの出力信号に再結合させる歪補償ループと、請求項4乃至10のいずれかに記載の制御回路と、を備えることを特徴とするフィードフォワード非線形歪補償増幅器。
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