JP4016444B2 - 複合アルミニウム系金属部品の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム系金属母材に複合化材料が複合化された複合アルミニウム系金属部品の製造方法に関する技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば、エンジンに組み込まれるピストンのリング溝部、車両制動系のブレーキディスクロータやエンジン動弁系のバルブリフタ等、他の部材との摺動部分に耐摩耗性が要求される部品をアルミニウム系金属で製造する場合、アルミニウム系金属を母材として耐摩耗性等を有する複合化材料(強化材)をいわゆる溶湯攪拌法によって複合化する方法が知られている。
【0003】
しかし、この方法では、耐摩耗性等が要求される特定の部分だけでなく部品全体が複合化材料で複合化されるため、複合化材料の使用量が非常に多く、コストが高くなってしまう。また、複合化材料が溶湯中で浮遊等して遍在しないように溶湯粘度等を設定する必要があり、工程が複雑化してしまう。
【0004】
そこで、例えば特開平3−151158号公報に示されているように、SiCウィスカとアルミニウム合金粉末との混合物を所定の形状に焼結して予備成形体を作製し、この予備成形体を鋳型の所定箇所にセットした後、その鋳型内に高圧でアルミニウムの溶湯を注入し、この溶湯で上記予備成形体を複合化することにより、複合化材料を部品の所定箇所に形成する方法が提案されている。
【0005】
この提案方法によると、複合化材料を部品の一部分に複合化することはできる。ところが、その反面、SiCウィスカの含有量が過多となる傾向にあり、複合化に際して、アルミニウム溶湯の圧力を高くする必要があり、さらに、実用上必要とされている低体積率のものを製造することが困難である。よって、コストが高くなると共に、摺動する相手部材を損傷させる虞れもある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、複合化材料としては、ウィスカや短繊維等よりもコストが低くかつ耐摩耗性等が優れている二酸化チタンやSiC等のセラミック粒子を使用することが望ましい。このような複合化材料で予備成形体を作製して、上記提案例のように高圧アルミニウム鋳造を行なう場合、セラミック粒子を圧粉焼結によって予備成形体を作製すると、セラミック粒子が微粒子であるためにその体積率が高くなり、ウィスカの場合と同様にその体積率の制御が困難であり、体積率を低くするには限界があった。このため、高圧アルミニウム鋳造を行なう際、アルミニウム溶湯を予備成形体内に含浸させることができず、その高圧力によって予備成形体が割れたり変形したりしてしまうという問題がある。
【0007】
そこで、セラミック粒子にアルミニウム合金粉末と結晶化温度の低いアルミナゾル等の無機バインダーとを混合してそれらを焼結させることが考えられる。このようにすれば、アルミニウム合金粉末及びセラミック粒子が無機バインダーにより互いに結合されると共に、隣設するアルミニウム合金粉末同士が溶着されてネットワークを形成するので、予備成形体を高強度にすることができる。しかも、アルミニウム合金粉末はアルミニウム溶湯に溶けてその溶湯と入れ替わるので、セラミック粒子とアルミニウム合金粉末との配合比率を調整することでセラミック粒子の体積率を低くすることができる。
【0008】
しかし、この予備成形体は、高圧アルミニウム鋳造に十分に耐えることができるようになるものの、予備成形体内におけるセラミック粒子及びアルミニウム合金粉末の合計含有率が高くなり、通気性が悪くなる。このため、常に高圧(100MPa 程度)で溶湯を予備成形体内に含浸させなければならず、低圧では鋳造を行うことができなくなる。この結果、鋳造用の金型等を高圧に耐えるようにする必要があり、その設備費等が高価となって複合アルミニウム系金属部品のコストが高くなるという問題がある。
【0009】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、セラミック粒子とアルミニウム合金粉末とを焼結させることによって予備成形体を製造し、この予備成形体とアルミニウム溶湯とを複合化して複合アルミニウム系金属部品を製造する場合に、その予備成形体の製造方法を改良することによって、予備成形体の通気性を向上させつつ強度を高めて、低圧でアルミニウム鋳造を行えるようにすることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、この発明では、複合アルミニウム系金属部品を形成するための複合化用予備成形体を製造する予備成形体製造工程において、アルミニウム合金粉末と酸化物系セラミック粒子を含有してなる複合化材料とをポリマー樹脂及び液体と共に混合してスラリー(懸濁液)を調製し、このスラリー中の液体成分を除去することにより得られた脱液体部材を乾燥させた後、ポリマー樹脂を焼失させかつアルミニウム合金粉末及びセラミック粒子を焼結するようにした。
【0011】
具体的には、請求項1の発明では、アルミニウム系金属母材に複合化材料が複合化された複合アルミニウム系金属部品の製造方法として、上記複合アルミニウム系金属部品を形成するための複合化用予備成形体を製造する予備成形体製造工程と、上記予備成形体製造工程で製造された複合化用予備成形体にアルミニウム系金属の溶湯を注入し、上記溶湯と複合化用予備成形体とを複合化する複合化工程とを備え、上記予備成形体製造工程は、アルミニウム合金粉末と、酸化物系セラミック粒子を含有してなる複合化材料と、ポリマー樹脂と、液体とを混合してスラリーを調製するスラリー調製工程と、上記スラリー中の液体成分を除去することにより得られた脱液体部材を乾燥させた後、ポリマー樹脂を焼失させかつ上記アルミニウム合金粉末及びセラミック粒子を焼結する焼結工程とを備える。
【0012】
このことにより、アルミニウム合金粉末、酸化物系セラミック粒子及びポリマー樹脂を液体と共に混合してスラリーを調製することで、それらがスラリー中で均一に混ぜられる。このスラリー中の液体成分を除去することにより、アルミニウム合金粉末、セラミック粒子及びポリマー樹脂が完全に均一に混ざり合った状態で固められた脱液体部材からなる固体物が得られる。そして、この固体物が焼結工程にて所定の温度以上とされると、ポリマー樹脂はモノマーに分解して全てが炭化水素となって空気中に焼失する。すなわち、ポリマー樹脂の存在していた箇所は空洞となって通気性が向上し、アルミニウム合金粉末及びセラミック粒子合計の予備成形体全体に対する体積率をポリマー樹脂の分だけ小さくすることができる。また、アルミニウム合金粉末及びセラミック粒子が焼結され、このとき、隣設するアルミニウム合金粉末同士は溶着されてネットワークを形成すると共に、二酸化チタン等の酸化物系セラミック粒子は、その一部がアルミニウム合金粉末と反応してそれらを強固に結合させる物質に変化するので、ポリマー樹脂が焼失しても予備成形体の強度はその物質によって確保される。そして、この予備成形体と母材であるアルミニウム系金属の溶湯とが複合化されるとき、予備成形体内に侵入した溶湯の熱によりアルミニウム合金粉末が溶解して溶湯と入れ替わるので、ポリマー樹脂及びアルミニウム合金粉末の配合比率を変化させることにより、セラミック粒子の体積率を低くかつ任意の値に制御することができる。
【0013】
したがって、予備成形体の通気性を向上させつつその強度を高めることができ、この予備成形体に対してアルミニウム鋳造を行なう際に低圧で溶湯を含浸させることができる。また、アルミニウム合金粉末及びセラミック粒子を結合するための無機バインダーは不要となるので、溶体化処理効果を促進するマグネシウム等の元素が鋳造時にその無機バインダーと反応して少なくなってしまうということがなく、鋳造により得られた複合アルミニウム系金属部品に対して溶体化処理を行うことでその硬さや強度を向上させることができる。
【0014】
そして、上記予備成形体内にアルミニウム系金属溶湯が含浸されて予備成形体とアルミニウム系金属とが複合化されると共に、予備成形体以外の箇所はアルミニウム系金属のみで鋳造される。よって、セラミック粒子の複合化材料で部品の一部が複合化された複合アルミニウム系金属部品を容易に得ることができる。
【0015】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、複合化工程終了後に、溶体化処理後に時効させる熱処理を施す。
【0016】
このことにより、溶体化処理後に常温時効させるT4熱処理や溶体化処理後に人工時効させるT6熱処理を施すことで、アルミニウム系金属母材内の溶体化を促進させる元素により、簡単にかつ確実に複合アルミニウム系金属部品の硬さや強度を向上させることができる。よって、容易に溶体化処理の効果を得ることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る複合アルミニウム系金属部品Aを示す。この金属部品Aは、アルミニウム系金属を母材とし、その一部が複合化材料(強化材)で複合化されている。すなわち、この金属部品Aは、例えば、エンジンに組み込まれるピストンのリング溝部、車両制動系のブレーキディスクロータやエンジン動弁系のバルブリフタ等、他の部材との摺動部分に耐摩耗性等が要求される部品に使用されるもので、耐摩耗性等を必要とする箇所のみが複合化材料で複合化されている。
【0018】
上記アルミニウム系金属としては、JIS規格H5202に規定されているAC8A等が使用されている。上記複合化材料は、二酸化チタン(TiO2 )や酸化アルミニウム(Al2 O3 )等の酸化物系セラミック粒子を含有してなる。
【0019】
上記複合アルミニウム系金属部品Aにおける複合化材料で複合化された部分は、複合化される前において複合化用予備成形体5とされており、この予備成形体5は、上記アルミニウム系金属と同様のAC8A等からなるアルミニウム合金粉末と上記セラミック粒子とが焼結されてなる。この予備成形体5に対して、後述の如く、上記アルミニウム系金属の溶湯が注入されることで、この予備成形体5とアルミニウム系金属とが複合化されている。
【0020】
以上の構成からなる複合化用予備成形体5及びこの予備成形体5とアルミニウム系金属の溶湯とを複合化した複合アルミニウム系金属部品Aを製造する方法を説明する。
【0021】
最初に、複合化用予備成形体5を製造するには、先ず、スラリーを調製する。すなわち、図2に示すように、有底状の容器11内に、アルミニウム合金粉末とセラミック粒子とポリマー樹脂と水等の液体とを投入して攪拌翼12で攪拌混合してスラリー13を調製する。上記ポリマー樹脂は、後述の如く焼失させるもので、その焼失温度が低く、しかも、このスラリー調整時に水等の液体に浮かないように比重が1よりも大きいものがよい。このようなポリマー樹脂としては、メタクリル酸メチル等が適している。尚、各混合物のスラリー13内の分散性を向上させるために、上記ポリマー樹脂と同種の水溶性ポリマー樹脂を添加するようにしてもよい。
【0022】
次に、図3に示すように、濾過装置14で上記スラリー13を濾過してスラリー13中の水等の液体成分を除去(吸引脱水)する。この濾過装置14は、有底状の容器15の底部に吸引口16を連通形成すると共に、多数の脱水用スリット17,17,…が形成された台部材18を容器15内の上下方向略中央部に水平状に張架し、この台部材18の上面に濾紙19を配設したもので、上記スラリー13を容器15内の濾紙19上に投入した後、吸引口16に負圧吸引力を作用させることにより、スラリー13中の水等の液体を濾紙19及び台部材18の各スリット17より除去することができるようになっている。
【0023】
そして、図4に示すように、スラリー13中の液体成分を除去することにより得られた脱液体部材21を圧縮する。すなわち、上記濾過装置14を脱液体部材21を入れたままその底部を固定台20上に載せ、脱液体部材21をその上方からパンチ22により加圧して予備成形体5の形状となるように圧縮成形する。尚、上述の如くスラリー13中の液体成分を除去する際にその負圧吸引力を調整し、脱液体部材21の体積率が10%以上となるようにすれば、実質的に脱液体部材21に対して圧縮を行ったのと同様の効果が得られ、後述の如く焼結を有効に行うことができるので、そのようにする場合には、この圧縮工程を省略してもよい。
【0024】
その後、上記脱液体部材21を乾燥させた後、ポリマー樹脂を焼失させてアルミニウム合金粉末及びセラミック粒子を焼結する。この焼結工程は、ポリマー樹脂をモノマーに分解して全てを炭化水素として空気中に焼失させることが可能な温度に設定してポリマー樹脂を完全に焼失させる焼失工程と、その焼失工程後に昇温させて脱液体部材21に残されているアルミニウム合金粉末及びセラミック粒子を焼結する本焼結工程とからなる。この本焼結工程が終了すると、アルミニウム合金粉末とセラミック粒子とが焼結された複合化用予備成形体5が完成する。
【0025】
上記焼結工程において、TiO2 等の酸化物系セラミック粒子は、その一部がアルミニウム合金粉末と反応してそれらを強固に結合させる物質に変化するが、ポリマー樹脂を高温で焼失させると、その燃焼熱により内部の温度が上昇しすぎてアルミニウム合金粉末及びセラミック粒子の反応が異常に進行し、予備成形体5が収縮してしまう等の弊害が生じることになる。このため、上述の如く、ポリマー樹脂の焼失温度は低いほど望ましく、最初に低温度でポリマー樹脂のみを焼失させて上記反応の進行を抑制するようにする。そして、ポリマー樹脂が完全に焼失した後に本焼結させる温度に上昇させても、ポリマー樹脂の燃焼熱の影響はなく、本焼結温度を調整することにより、本焼結を良好に行いつつ、上記反応を適度に行わせることができる。よって、予備成形体5に対して悪影響を及ぼすのを防止しつつ、ポリマー樹脂の焼失とアルミニウム合金粉末及びセラミック粒子の焼結とを良好に行うことができる。
【0026】
したがって、このようにして得られた予備成形体5のポリマー樹脂が存在していた箇所は空洞となっているので、そのポリマー樹脂の分だけアルミニウム合金粉末及びセラミック粒子の予備成形体5全体に対する体積率は小さくなって予備成形体5の通気性は向上する。この通気性の程度は、ポリマー樹脂の配合比率を変化させることにより制御することができる。しかも、アルミニウム合金粉末及びセラミック粒子が焼結される際、隣設するアルミニウム合金粉末同士は溶着されてネットワークを形成すると共に、セラミック粒子は、その一部がアルミニウム合金粉末と適度に反応してそれらを強固に結合させる物質に変化するので、ポリマー樹脂が焼失しても予備成形体5の強度はその物質により確保される。
【0027】
次に、上記予備成形体5より複合アルミニウム系金属部品Aを製造する方法を説明する。先ず、図5に示すように、下部に金型26を、また上部に金型27をそれぞれ備え、その金型27の上部中央部に気体導入管28が設けられたアルミニウム鋳造装置24内の所定部に上記予備成形体5を配置し、金型26,27及び予備成形体5を所定温度に加熱保持しておく。そして、金型26,27で囲まれた内部にアルミニウム系金属溶湯25を注入し、この溶湯25の上方に気体導入管28から空気又は窒素等の気体を吹き込んでその気体により溶湯25を加圧する。この気体による加圧力は数MPa 程度とかなり低圧であるが、予備成形体5の通気性は良好であるので、予備成形体5内に溶湯25を十分に含浸させることができる。また、強度も十分に確保されているので、その加圧力によって予備成形体5が割れたり変形したりすることはない。
【0028】
上記溶湯25を加圧することにより予備成形体5内に溶湯25が含浸され、溶湯25と予備成形体5とが複合化されると共に、予備成形体5以外の箇所はアルミニウム系金属のみで鋳造される。このことで、部分的にセラミック粒子で複合化された複合アルミニウム系金属部品Aが容易に得られる。また、この複合化時に、予備成形体内に侵入した溶湯25の熱によりアルミニウム合金粉末が溶解して溶湯25と入れ替わるので、アルミニウム合金粉末及びポリマー樹脂の配合比率を変えることでセラミック粒子の体積率を低くかつ任意の値に調整することができる。
【0029】
さらに、この金属部品Aに対して、溶体化処理後に常温時効させるT4熱処理又は溶体化処理後に人工時効させるT6熱処理を施すことにより、その硬さや強度を向上させることができる。すなわち、この実施形態では、アルミニウム合金粉末及びセラミック粒子を結合するための無機バインダーは不要となるので、マグネシウム等の溶体化処理効果を促進する元素が鋳造時にその無機バインダーと反応して少なくなるということがなく、上記熱処理によりMg2 Si等が時効析出して金属部品Aの硬さ及び強度を向上させる。
【0030】
したがって、上記実施形態では、アルミニウム合金粉末と酸化物系セラミック粒子とポリマー樹脂と液体とを混合してスラリーを調製し、そのスラリー中の液体成分を濾過することにより得られた脱液体部材を乾燥させた後、ポリマー樹脂を焼失させて上記アルミニウム合金粉末及びセラミック粒子を焼結することで予備成形体5を製造するようにしたので、予備成形体5の通気性を向上させつつその強度を高めることができ、この予備成形体5に対してアルミニウム鋳造を行なう際に低圧で溶湯25を含浸させることができる。よって、アルミニウム鋳造装置24の金型26,27等の費用を低減化して複合アルミニウム系金属部品Aのコストを低く抑えることができる。
【0031】
【実施例】
次に、具体的に実施した実施例について説明する。先ず、上記実施形態と同様にして、複合化用予備成形体を作製した。このとき、アルミニウム合金粉末には平均粒径が45μmである上記JIS規格におけるAC8Aの水アトマイズ粉を、またセラミック粒子には平均粒径が0.3μmであるTiO2 粒子を、さらにポリマー樹脂には平均粒径が30μmであるメタクリル酸メチル(比重1.1)をそれぞれ使用した。このアルミニウム合金粉末、TiO2 粒子及びメタクリル酸メチルの電子顕微鏡写真を図6、図7及び図8にそれぞれ示す。この各顕微鏡写真の倍率はそれぞれ2000倍、20000倍及び1100倍である。また、各混合物のスラリー内の分散性を向上させるために、上記メタクリル酸メチルと同種の水溶性ポリマー樹脂を添加した。そして、脱液体部材の乾燥は120℃で2時間とし、その後の焼結工程におけるメタクリル酸メチルの焼失は300℃で2〜3時間とし、本焼結は820℃で1時間とした。尚、アルミニウム合金粉末、TiO2 粒子及びメタクリル酸メチルの予備成形体全体に対する体積率は、それぞれ8.5%、6.5%及び25%となるようにした。
【0032】
上記予備成形体内部の組織状態を図9〜図11に示す。尚、倍率は、それぞれ2000倍、3000倍及び10000倍である。図9において、中央部の丸く黒い部分がメタクリル酸メチルが焼失して空洞となっている部分であり、その周囲には、TiO2 粒子同士がリング状に焼結されている。また、図10において、上部にはメタクリル酸メチルが焼失した部分が存在し、左右側部及び下部には表面にTiO2 粒子が付着したアルミニウム合金粉末が存在する。そして、中央部には、アルミニウム合金粉末及びTiO2 粒子が反応することでそれらを強固に結合する物質が生じていることが判る。図11は、この物質をさらに拡大して示す。
【0033】
次に、上記予備成形体に対して、上記実施形態と同様にして、気体加圧によるアルミニウム鋳造を行うことにより予備成形体をアルミニウム系金属と複合化して複合アルミニウム系金属部品を得た。但し、この複合化は、図12に示すように、予備成形体5を、金型26で構成されたアルミニウム鋳造装置24内の底面上にその底面全体を占めるように置いて行った(尚、図12において、図5と同じ部分は同じ符号を付している)。このとき使用した母材のアルミニウム系金属は、アルミニウム合金粉末と同じAC8Aであり、溶湯温度1043K、金型温度383K、予備成形体の予熱温度973K、加圧力3MPa の条件下で鋳造を行った。
【0034】
この複合アルミニウム系金属部品の複合化された部分(複合材)の組織状態(倍率100倍)を図13に示す。この図において、黒い部分はTiO2 粒子であり、白い部分はAC8Aの溶湯である。この白い部分のうち円状になっている箇所は、メタクリル酸メチルが焼失した部分に溶湯が侵入した箇所であり、その他の箇所は、アルミニウム合金粉末が溶けて溶湯と入れ替わった箇所である。
【0035】
さらに、複合化後、複合アルミニウム系金属部品に対してT6熱処理を行った。すなわち、783Kの温度下で約4時間保持した後、水冷し、443Kの温度下で約10時間保持し、その後、空冷した。
【0036】
上記複合材のビッカース硬さ(加重10Kgf)を、T6熱処理の前後でそれぞれ調べた。また、比較のためにAC8Aの熱処理前後の硬さを調べた。この結果、熱処理前の鋳放し材でAC8AがHv85〜90であるのに対し、上記複合材はHv110と向上し、低圧でも複合化が行われてTiO2 粒子で強化されていることが判る。また、熱処理後のT6材では、AC8AがHv145と向上し、複合材も同様にHv160と向上し、T6熱処理の効果が得られていることが判る。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によると、アルミニウム系金属母材に複合化材料が複合化された複合アルミニウム系金属部品の製造方法として、上記複合アルミニウム系金属部品を形成するための複合化用予備成形体を製造する予備成形体製造工程と、この予備成形体製造工程で製造された複合化用予備成形体にアルミニウム系金属の溶湯を注入し、上記溶湯と複合化用予備成形体とを複合化する複合化工程とを備え、上記予備成形体製造工程において、アルミニウム合金粉末と、酸化物系セラミック粒子を含有してなる複合化材料と、ポリマー樹脂と、液体とを混合してスラリーを調製し、そのスラリー中の液体成分を除去することにより得られた脱液体部材を乾燥させた後、ポリマー樹脂を焼失させかつ上記アルミニウム合金粉末及びセラミック粒子を焼結するようにしたことにより、予備成形体の通気性を向上させつつその強度を高めることができ、この予備成形体に対して低圧でアルミニウム鋳造を行なって複合アルミニウム系金属部品のコストの低減化を図ることができる。また、セラミック粒子の複合化材料で部品の一部が複合化された複合アルミニウム系金属部品を容易に製造することができる。
【0038】
請求項2の発明によると、複合化工程終了後に、溶体化処理後に時効させる熱処理を施すようにしたことにより、容易に溶体化処理の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係る複合アルミニウム系金属部品を示す断面図である。
【図2】 複合化用予備成形体を製造するためにスラリー調製を行っている状態を示す容器の断面図である。
【図3】 スラリー中の液体成分を除去している状態を示す濾過装置の断面図である。
【図4】 スラリー中の液体成分を除去することにより得られた脱液体部材を圧縮している状態を示す図3相当図である。
【図5】 複合化用予備成形体に対して気体加圧によりアルミニウム鋳造を行ってその予備成形体とアルミニウム系金属とを複合化している状態を示すアルミニウム鋳造装置の断面図である。
【図6】 アルミニウム合金粉末を示す電子顕微鏡写真である。
【図7】 TiO2 粒子を示す電子顕微鏡写真である。
【図8】 メタクリル酸メチルを示す電子顕微鏡写真である。
【図9】 予備成形体内部の組織状態を示す電子顕微鏡写真である。
【図10】 予備成形体内部の組織状態を示す電子顕微鏡写真である。
【図11】 アルミニウム合金粉末及びTiO2 粒子が反応することで生じた物質を示す電子顕微鏡写真である。
【図12】 実施例において予備成形体とアルミニウム系金属とを複合化している状態を示す図5相当図である。
【図13】 複合アルミニウム系金属部品の複合化された部分の組織状態を示す光学顕微鏡写真である。
【符号の説明】
A 複合アルミニウム系金属部品
5 複合化用予備成形体
13 スラリー
14 濾過装置
21 脱液体部材
24 アルミニウム鋳造装置
Claims (2)
- アルミニウム系金属母材に複合化材料が複合化された複合アルミニウム系金属部品の製造方法であって、
上記複合アルミニウム系金属部品を形成するための複合化用予備成形体を製造する予備成形体製造工程と、
上記予備成形体製造工程で製造された複合化用予備成形体にアルミニウム系金属の溶湯を注入し、上記溶湯と複合化用予備成形体とを複合化する複合化工程とを備え、
上記予備成形体製造工程は、
アルミニウム合金粉末と、酸化物系セラミック粒子を含有してなる複合化材料と、ポリマー樹脂と、液体とを混合してスラリーを調製するスラリー調製工程と、
上記スラリー中の液体成分を除去することにより得られた脱液体部材を乾燥させた後、ポリマー樹脂を焼失させかつ上記アルミニウム合金粉末及びセラミック粒子を焼結する焼結工程と
を備えたことを特徴とする複合アルミニウム系金属部品の製造方法。 - 請求項1記載の複合アルミニウム系金属部品の製造方法において、
複合化工程終了後に、溶体化処理後に時効させる熱処理を施すことを特徴とする複合アルミニウム系金属部品の製造方法。
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| JP06211697A JP4016444B2 (ja) | 1997-02-28 | 1997-02-28 | 複合アルミニウム系金属部品の製造方法 |
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| JPH10245645A JPH10245645A (ja) | 1998-09-14 |
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- 1997-02-28 JP JP06211697A patent/JP4016444B2/ja not_active Expired - Fee Related
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