JP4017864B2 - メタクリル酸製造用触媒の製造方法、および、メタクリル酸の製造方法 - Google Patents
メタクリル酸製造用触媒の製造方法、および、メタクリル酸の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、メタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化してメタクリル酸を製造する際に使用する触媒(以下、メタクリル酸製造用触媒という。)の製造方法、および、この方法で製造された触媒を用いたメタクリル酸の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
触媒成分元素を含む2種類以上の混合溶液を混合してメタクリル酸製造用触媒を製造する方法としては、例えば、特開平4−182450号公報、特開平5−31368号公報、特開平7−185354号公報、特開平8−157414号公報、特開平8−196908号公報等に記載されている方法が挙げられる。このうち、特開平5−31368号公報には、モリブデン、バナジウム、リンおよびアンチモン等の第4成分Xを含む均一溶液と、アンモニア水と、セシウム等のその他の触媒成分元素を含む均一溶液とを混合し、この混合溶液を乾燥することによってメタクリル酸製造用触媒を製造する方法が開示されている。これにより、第4成分X(特に、アンチモン)の溶解性が向上し、触媒性能の再現性、安定性に優れ、長寿命の触媒が得られるとしている。
【0003】
また、特開平9−290162号公報には、全ての触媒原料を水に溶解あるいは懸濁させた溶液について、アンモニウム根の含有量をモリブデン12原子に対し17〜100モルの範囲、かつ、そのpHを6.5〜13の範囲とする酸化触媒の製造方法が開示されている。pHの調整は、硝酸またはアンモニア水等の添加により行われている。
【0004】
しかしながら、このような従来の触媒原料の混合方法やpH調整方法を用いて製造された触媒は、特に寿命の面で工業触媒としては必ずしも十分でなく、さらなる触媒性能の向上が望まれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、メタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化してメタクリル酸を製造する際に用いられる、寿命の長い触媒の製造方法、および、この方法で製造された触媒を用いたメタクリル酸の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、以下の本発明により解決できる。
[1]メタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化してメタクリル酸を製造する際に用いられる、下記式(1)で表される組成を有する触媒の製造方法であって、
(i) 少なくともモリブデン、リンおよびバナジウムを含み、Z元素を含まない溶液またはスラリー(A液)を調製する工程と、
(ii) アンモニウムを含み、Z元素を含まない溶液またはスラリー(B液)を調製する工程と、
(iii) Z元素を含む溶液またはスラリーを調製する工程と、
(iv) A液とZ元素を含む溶液またはスラリー(CI液)とを混合して、A−CI混合液を調製する工程と、
(v) A−CI混合液とB液とを混合して、A−CI−B混合液を調製する工程と、
(vi) A−CI−B混合液とZ元素を含む溶液またはスラリー(CII液)とを混合して、触媒前駆体を含む溶液またはスラリーを調製する工程と、
(vii) この触媒前駆体を含む溶液またはスラリーを乾燥・焼成する工程と
を含むことを特徴とするメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
【0007】
PaMobVcCudXeYfZgOh (1)
(式(1)および明細書中、P、Mo、V、CuおよびOは、それぞれリン、モリブデン、バナジウム、銅および酸素を示し、Xはアンチモン、ビスマス、砒素、ゲルマニウム、ジルコニウム、テルル、銀、セレン、ケイ素、タングステンおよびホウ素からなる群より選ばれた少なくとも1種類の元素を示し、Yは鉄、亜鉛、クロム、マグネシウム、タンタル、コバルト、マンガン、バリウム、ガリウム、セリウムおよびランタンからなる群より選ばれた少なくとも1種類の元素を示し、Zはカリウム、ルビジウムおよびセシウムからなる群より選ばれた少なくとも1種類の元素を示す。a、b、c、d、e、f、gおよびhは各元素の原子比率を表し、b=12のときa=0.5〜3、c=0.01〜3、d=0.01〜2、e=0〜3、f=0〜3、g=0.01〜3であり、hは前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素の原子比率である。)
[2]CI液中に含まれるZ元素の量とCII液中に含まれるZ元素の量の比が、5:95〜95:5(モル比)であることを特徴とする前記[1]のメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
[3]CI液およびCII液が、Z元素以外の製造される触媒に含まれる元素(酸素を除く)の単体あるいは化合物、および、アンモニウム含有化合物を含まないことを特徴とする前記[1]または[2]のメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
[4]B液が、製造される触媒に含まれる元素(酸素を除く)の単体あるいは化合物を含まないことを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかのメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
[5]A液はアンモニウムを含まないか、または、A液中に含まれるアンモニウムの量が、A液中に含まれるモリブデン原子12モルに対して1.5モル以下であり、
B液中に含まれるアンモニウムの量が、A液中に含まれるモリブデン原子12モルに対して6〜17モルであることを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれかのメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
[6]前記[1]〜[5]のいずれかの方法によりメタクリル酸製造用触媒を製造し、得られたメタクリル酸製造用触媒の存在下で、メタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化するメタクリル酸の製造方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の前記式(1)で表される組成を有する、メタクロレインを気相接触酸化してメタクリル酸を製造するための触媒の製造方法は、前述の通り、
(i) 少なくともモリブデン、リンおよびバナジウムを含み、Z元素を含まない溶液またはスラリー(A液)を調製する工程と、
(ii) アンモニウムを含み、Z元素を含まない溶液またはスラリー(B液)を調製する工程と、
(iii) Z元素を含む溶液またはスラリーを調製する工程と、
(iv) A液とZ元素を含む溶液またはスラリー(CI液)とを混合して、A−CI混合液を調製する工程と、
(v) A−CI混合液とB液とを混合して、A−CI−B混合液を調製する工程と、
(vi) A−CI−B混合液とZ元素を含む溶液またはスラリー(CII液)とを混合して、触媒前駆体を含む溶液またはスラリーを調製する工程と、
(vii) この触媒前駆体を含む溶液またはスラリーを乾燥・焼成する工程と
を含むものである。CI液とCII液とは同じ組成の溶液であっても、異なる組成の溶液であってもよい。また、CI液中に含まれるZ元素の量とCII液中に含まれるZ元素の量の比は、5:95〜95:5(モル比)が好ましい。
【0009】
なお、ここでいう「アンモニウム」とは、NH4 +だけでなくNH3をも含み、「アンモニウム含有化合物」とは、アンモニウムを含む化合物を意味する。
【0010】
本発明においては、少なくともモリブデン、リンおよびバナジウムを含み、Z元素を含まない溶液またはスラリー(A液)とZ元素を含む溶液またはスラリー(CI液)とを混合し、次にアンモニウムを含み、Z元素を含まない溶液またはスラリー(B液)を混合し、最後に再度Z元素を含む溶液またはスラリー(CII液)を混合することが重要である。このような混合順序で製造される本発明のメタクリル酸製造用触媒は、優れた触媒性能を有し、特に触媒寿命の点で優れている。
【0011】
また、発明において、A液中に含まれるアンモニウムの量は、A液中に含まれるモリブデン原子12モルに対して1.5モル以下(0モルも含む)が好ましく、1モル以下(0モルも含む)がより好ましい。また、B液中に含まれるアンモニウムの量は、A液中に含まれるモリブデン原子12モルに対して6〜17モルが好ましく、7〜15モルがより好ましい。A液およびB液中のアンモニウムの量をこのような範囲にすることで、さらに長寿命の触媒が得られる。ここで、A液およびB液中のアンモニウムの量とは、溶液中にアンモニア(NH3)またはアンモニウムイオン(NH4 +)の形で含まれている量のみならず、液中の化合物に含まれるNH3基およびNH4 +基の量も含まれる。
【0012】
本発明の製造方法により得られる触媒の性能、特に触媒寿命が向上するメカニズムについては明らかではないが、触媒原料の混合順序、さらにはA液およびB液中のアンモニウムの量を特定量に制御することにより、安定性の高い結晶構造が形成されるためと推定される。
【0013】
なお、本発明において、A液、B液、CI液、CII液、A−CI混合液、A−CI−B混合液の状態は、触媒原料が液中に含まれていれば特に制限はなく、触媒原料が完全に溶媒に溶解した溶液であっても、一部または全量が溶媒に懸濁したスラリーであってもよい。
【0014】
以下、本発明のメタクリル酸製造用触媒の製造方法について、さらに詳しく説明する。
【0015】
<A液の調製>
A液は、少なくともモリブデン、リンおよびバナジウムの化合物(触媒原料)を溶媒に溶解あるいは懸濁させて調製する。A液は、モリブデン、リンおよびバナジウムの他に、Z元素以外の製造される触媒に含まれる元素(酸素を除く)の化合物を含んでいてもよい。
【0016】
A液は、常温で攪拌して調製してもよいが、加熱攪拌して調製することが好ましい。加熱温度は、80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましい。また、加熱温度は、150℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましい。加熱温度をこのような範囲にすることで、活性の高い触媒が得られる。加熱時間は、0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。加熱時間をこのような範囲にすることで、触媒原料同士の反応を十分に進行させることができる。また、加熱時間は、24時間以下が好ましく、12時間以下がより好ましい。
【0017】
用いる触媒原料としては、各元素の酸化物、硝酸塩、炭酸塩、アンモニウム塩等を適宜選択して使用することができる。例えば、モリブデンの原料としては、三酸化モリブデン、モリブデン酸等のアンモニウムを含まない化合物が好ましいが、パラモリブデン酸アンモニウム、ジモリブデン酸アンモニウム、テトラモリブデン酸アンモニウム等の各種モリブデン酸アンモニウムも少量であれば使用できる。リンの原料としては、正リン酸、五酸化リン、リン酸アンモニウム等が使用できる。バナジウムの原料としては、五酸化バナジウム、メタバナジン酸アンモニウム等が使用できる。また、モリブデン、リンおよびバナジウムの原料として、リンモリブデン酸、モリブドバナドリン酸、リンモリブデン酸アンモニウム等のヘテロポリ酸を使用することもできる。触媒成分の原料は、各元素に対して1種を用いても、2種以上を併用してもよい。
【0018】
A液の溶媒としては、水を用いることが好ましい。
【0019】
A液中の溶媒の量は特に限定されないが、通常、A液中に含まれるモリブデン化合物と溶媒の含有比(質量比)は1:0.1〜1:100であることが好ましい。
【0020】
A液中に含まれるアンモニウムの量は、A液中に含まれるモリブデン原子12モルに対して1.5モル以下(0モルも含む)が好ましい。A液中に含まれるアンモニウムの量を1.5モル以下にすることにより、さらに長寿命の触媒が得られる。さらに、A液中に含まれるアンモニウムの量は、A液中に含まれるモリブデン原子12モルに対して1モル以下(0モルも含む)が好ましい。A液中に含まれるアンモニウムの量を1モル以下にすることにより、メタクリル酸の収率が高い触媒が得られる。
【0021】
A液中に含まれるアンモニウムの量は、アンモニウムを含む触媒原料の使用量により調節することができる。
【0022】
<B液の調製>
B液は、アンモニウム含有化合物を溶媒に溶解あるいは懸濁させて調製する。B液は、アンモニウム含有化合物の他に、触媒原料となる、Z元素およびモリブデン以外の製造される触媒に含まれる元素(酸素を除く)の化合物も全量でなければ含んでいてもかまわないが、これらを含まないことが好ましい。
【0023】
用いるアンモニウム含有化合物としては特に限定されず、例えば、アンモニア(アンモニア水)、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、硝酸アンモニウム等が挙げられる。アンモニウム含有化合物は1種を用いても、2種以上を併用してもよい。
【0024】
B液の溶媒としては、水を用いることが好ましい。
【0025】
B液中に含まれるアンモニウムの量は、A液中に含まれるモリブデン原子12モルに対して6モル以上が好ましく、7モル以上がより好ましい。また、B液中に含まれるアンモニウムの量は、A液中に含まれるモリブデン原子12モルに対して17モル以下が好ましく、15モル以下がより好ましい。B液中に含まれるアンモニウムの量をこのような範囲にすることにより、さらに長寿命の触媒が得られる。
【0026】
B液中の溶媒の量は特に限定されないが、通常、B液中に含まれるアンモニウム含有化合物と溶媒の含有比(質量比)は1:0.1〜1:100であることが好ましい。なお、溶媒を用いずにアンモニウム含有化合物をそのままA−CI混合液に添加することもできる。
【0027】
なお、B液は、通常、常温で攪拌して調製すればよいが、必要に応じて80℃程度まで加熱して調製してもかまわない。
【0028】
<Z元素を含む溶液またはスラリーの調製>
Z元素を含む溶液またはスラリーは、少なくともZ元素の化合物(触媒原料)を溶媒に溶解あるいは懸濁させて調製する。ここで、Z元素とは、カリウム、ルビジウム、および、セシウムからなる群より選ばれた少なくとも1種類の元素である。Z元素を含む溶液またはスラリーは、Z元素の化合物の他に、触媒原料となる、製造される触媒に含まれる元素(酸素を除く)の化合物も全量でなければ含んでいてもかまわないが、これらを含まないことが好ましい。また、Z元素を含む溶液またはスラリーは、アンモニウム含有化合物を含まないことが好ましい。
【0029】
本発明においては、Z元素がセシウムの場合、特に優れた効果が得られる。
【0030】
用いるZ元素の触媒原料としては、各元素の硝酸塩、炭酸塩、水酸化物等を適宜選択して使用することができる。例えば、セシウムの原料としては、硝酸セシウム、炭酸セシウム、水酸化セシウム等が使用できる。触媒成分の原料は、各元素に対して1種を用いても、2種以上を併用してもよい。
【0031】
Z元素を含む溶液またはスラリーの溶媒としては、水を用いることが好ましい。
【0032】
Z元素を含む溶液またはスラリー中の溶媒の量は特に限定されないが、通常、Z元素を含む溶液またはスラリー中に含まれる全ての触媒原料と溶媒の含有比(質量比)は、ともに、1:0.1〜1:100であることが好ましい。なお、溶媒を用いずにZ元素を含む化合物をそのままA液あるいはA−CI−B混合液に添加することもできる。
【0033】
なお、Z元素を含む溶液またはスラリーは、通常、常温で攪拌して調製すればよいが、必要に応じて80℃程度まで加熱して調製してもかまわない。
【0034】
本発明においては、Z元素を含む溶液またはスラリーをCI液およびCII液として2回に分けて混合するが、調製した1つのZ元素を含む溶液またはスラリーをCI液とCII液とに分けてもよく、また、CI液とCII液とを個別に調製してもよい。CI液とCII液とを個別に調製する場合、CI液とCII液とは同じ触媒原料を用いて調製してもよいし、異なる触媒原料を用いて調製してもよい。また、CI液中に含まれるZ元素と溶媒の含有比とCII液中に含まれるZ元素と溶媒の含有比とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0035】
CI液中に含まれるZ元素の量とCII液中に含まれるZ元素の量の比(モル比)は、5:95〜95:5が好ましく、10:90〜90:10がより好ましく、20:80〜80:20が特に好ましい。
【0036】
<A−CI混合液の調製>
次いで、上記のようにして調製したA液とZ元素を含む溶液またはスラリー(CI液)とを混合し、A−CI混合液を調製する。
【0037】
A液とCI液の混合方法は特に限定されず、例えば、A液が入った容器にCI液を加える方法、CI液が入った容器にA液を加える方法、容器にA液とCI液とを同時に流し込む方法等の任意の方法が利用できる。混合は、通常、攪拌しながら行う。
【0038】
A−CI混合液は、常温で調製してもよいが、加熱して調製してもよい。混合時のA液とCI液の温度、A−CI混合液の調製温度は、それぞれ80℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましい。このような範囲の液温でA−CI混合液を調製することにより、活性の高い触媒が得られる。また、加熱時間は特に限定されず、適宜決めればよい。
【0039】
また、A−CI混合液に、さらに、Z元素以外の製造される触媒に含まれる元素(酸素を除く)の化合物(触媒原料)を混合してもよい。このように追加する触媒原料としては、前記式(1)で示される触媒組成に含まれる元素の触媒原料であればいずれでもよい。
【0040】
これらの触媒原料は、A−CI混合液にそのまま加えてもよいし、溶液や懸濁液の状態で加えてもよい。溶液や懸濁液の溶媒としては、水を用いることが好ましい。溶液や懸濁液の溶媒の量は特に制限されず、適宜決めればよい。
【0041】
<A−CI−B混合液の調製>
次いで、上記のようにして調製したA−CI混合液とB液とを混合し、A−CI−B混合液を調製する。
【0042】
A−CI混合液とB液の混合方法は特に限定されず、例えば、A−CI混合液が入った容器にB液を加える方法、B液が入った容器にA−CI混合液を加える方法、容器にA−CI混合液とB液とを同時に流し込む方法等の任意の方法が利用できる。混合は、通常、攪拌しながら行う。
【0043】
A−CI−B混合液は、常温で調製してもよいが、加熱して調製してもよい。混合時のA−CI混合液とB液の温度、A−CI−B混合液の調製温度は特に限定されないが、100℃以下が好ましい。また、加熱時間は特に限定されず、適宜決めればよい。
【0044】
また、A−CI−B混合液に、さらに、Z元素以外の製造される触媒に含まれる元素(酸素を除く)の化合物(触媒原料)を混合してもよい。
【0045】
<A−CI−B混合液とCII液の混合>
次いで、上記のようにして調製したA−CI−B混合液とZ元素を含む溶液またはスラリー(CII液)とを混合し、触媒前駆体を含む溶液またはスラリーを調製する。
【0046】
A−CI−B混合液とCII液の混合方法は特に限定されず、例えば、A−CI−B混合液が入った容器にCII液を加える方法、CII液が入った容器にA−CI−B混合液を加える方法、容器にA−CI−B混合液とCII液とを同時に流し込む方法等の任意の方法が利用できる。混合は、通常、攪拌しながら行う。
【0047】
触媒前駆体を含む溶液またはスラリーは、常温で調製してもよいが、加熱して調製してもよい。混合時のA−CI−B混合液とCII液の温度、触媒前駆体を含む溶液またはスラリーの調製温度は、それぞれ80℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましい。このような範囲の液温でA−CI混合液を調製することにより、活性の高い触媒が得られる。また、加熱時間は特に限定されず、適宜決めればよい。
【0048】
また、このとき、A−CI−B混合液とCII液の混合液に、さらに、Z元素以外の製造される触媒に含まれる元素(酸素を除く)の化合物(触媒原料)を混合してもよい。このように追加する触媒原料としては、前記式(1)で示される触媒組成に含まれる元素の触媒原料であればいずれでもよい。
【0049】
これらの触媒原料は、混合液にそのまま加えてもよいし、溶液や懸濁液の状態で加えてもよい。溶液や懸濁液の溶媒としては、水を用いることが好ましい。溶液や懸濁液の溶媒の量は特に制限されず、適宜決めればよい。
【0050】
<乾燥および焼成>
次いで、このようにして得られた全ての触媒原料を含む溶液またはスラリーを乾燥し、触媒前駆体の乾燥物を得る。
【0051】
乾燥方法としては種々の方法を用いることが可能であり、例えば、蒸発乾固法、噴霧乾燥法、ドラム乾燥法、気流乾燥法等を用いることができる。乾燥に使用する乾燥機の機種や乾燥時の温度、時間等は特に限定されず、乾燥条件を適宜変えることによって目的に応じた触媒前駆体の乾燥物を得ることができる。
【0052】
このようにして得られた触媒前駆体の乾燥物は、必要により粉砕した後、成形せずにそのまま次の焼成を行ってもよいが、通常は成形品を焼成する。
【0053】
成形方法は特に限定されず、公知の乾式および湿式の種々の成形法が適用できるが、シリカ等の担体などを含めずに成形することが好ましい。具体的な成形方法としては、例えば、打錠成形、プレス成形、押出成形、造粒成形等が挙げられる。成形品の形状についても特に限定されず、例えば、円柱状、リング状、球状等の所望の形状を選択することができる。
【0054】
なお、成形に際しては、公知の添加剤、例えば、グラファイト、タルク等を少量添加してもよい。
【0055】
そして、このようにして得られた触媒前駆体の乾燥物またはその成形品を焼成し、メタクリル酸製造用触媒を得る。
【0056】
焼成方法や焼成条件は特に限定されず、公知の処理方法および条件を適用することができる。焼成の最適条件は、用いる触媒原料、触媒組成、調製法等によって異なるが、通常、空気等の酸素含有ガス流通下または不活性ガス流通下で、200〜500℃、好ましくは300〜450℃で、0.5時間以上、好ましくは1〜40時間で行う。ここで、不活性ガスとは、触媒の反応活性を低下させないような気体のことをいい、具体的には、窒素、炭酸ガス、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。
【0057】
<メタクリル酸の製造方法>
次に、本発明のメタクリル酸の製造方法について説明する。本発明のメタクリル酸の製造方法は、上記のようにして得られる本発明の触媒の存在下でメタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化してメタクリル酸を製造するものである。
【0058】
反応は、通常、固定床で行う。また、触媒層は1層でも2層以上でもよく、担体に担持させたものであっても、その他の添加成分を混合したものであってもよい。
【0059】
上記のような本発明の触媒を用いてメタクリル酸を製造する際には、メタクロレインと分子状酸素とを含む原料ガスを触媒と接触させる。
【0060】
原料ガス中のメタクロレイン濃度は広い範囲で変えることができるが、通常、1〜20容量%が適当であり、3〜10容量%がより好ましい。
【0061】
分子状酸素源としては空気を用いることが経済的であるが、必要ならば純酸素で富化した空気等も用いることができる。原料ガス中の分子状酸素濃度は、通常、メタクロレイン1モルに対して0.4〜4モルが適当であり、0.5〜3モルがより好ましい。
【0062】
原料ガスは、メタクロレインおよび分子状酸素源を、窒素、炭酸ガス等の不活性ガスで希釈したものであってもよい。
【0063】
また、原料ガスには水蒸気を加えてもよい。水の存在下で反応を行うと、より高収率でメタクリル酸が得られる。原料ガス中の水蒸気の濃度は、0.1〜50容量%が好ましく、1〜40容量%がより好ましい。
【0064】
また、原料ガス中には、低級飽和アルデヒド等の不純物を少量含んでいてもよいが、その量はできるだけ少ないことが好ましい。
【0065】
メタクリル酸製造反応の反応圧力は、常圧から数気圧まで用いられる。反応温度は、通常、230〜450℃の範囲で選ぶことができるが、250〜400℃がより好ましい。
【0066】
原料ガスの流量は特に限定されないが、通常、接触時間は1.5〜15秒が好ましく、2〜5秒がより好ましい。
【0067】
【実施例】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0068】
実施例および比較例中の「部」は質量部を意味する。触媒の組成は触媒成分の原料仕込み量から求めた。反応原料ガスおよび生成物の分析はガスクロマトグラフィーを用いて行った。また、溶液中に含まれるアンモニウムの量は、キェールダール法で測定した。
【0069】
なお、メタクロレインの反応率、生成したメタクリル酸の選択率、メタクリル酸の単流収率は以下のように定義される。
【0070】
メタクロレイン(MAL)の反応率(%)=(B/A)×100
メタクリル酸(MAA)の選択率(%)=(C/B)×100
メタクリル酸(MAA)の単流収率(%)=(C/A)×100
ここで、Aは供給したメタクロレインのモル数、Bは反応したメタクロレインのモル数、Cは生成したメタクリル酸のモル数である。
【0071】
[実施例1]
(A液の調製)
純水400部に三酸化モリブデン100部、85質量%リン酸6.66部および五酸化バナジウム3.42部を加え、還流下で5時間攪拌してA液を調製した。A液中に含まれるアンモニウムの量は、A液中に含まれるモリブデン原子12モルに対して0モルであった。
【0072】
(B液の調製)
29質量%アンモニア水34.00部をB液とした。B液中に含まれるアンモニウムの量は、A液中に含まれるモリブデン原子12モルに対して10モルであった。
【0073】
(Z元素を含む溶液またはスラリーの調製)
硝酸セシウム11.85部のうち、80%である9.48部を純水40部に溶解してCI液を調製した。一方、残りの20%である硝酸セシウム2.37部を純水10部に溶解してCII液を調製した。
【0074】
(触媒前駆体を含むスラリーの調製、乾燥・焼成)
A液を50℃まで冷却した後、攪拌しながらA液にCI液を滴下し、さらに10分間攪拌してA−CI混合液を調製した。次いで、攪拌しながらこのA−CI混合液にB液を混合してA−CI−B混合液を調製し、さらにCII液を滴下して10分間攪拌した。なお、このとき液温は50℃に保った。
【0075】
このようにして得られたABC混合液を液温50℃で攪拌しながら硝酸第二銅2.10部、硝酸第二鉄2.34部および硝酸セリウム2.51部を加えて触媒前駆体を含むスラリーを得た。
【0076】
この触媒前駆体を含むスラリーを101℃まで加熱し、攪拌しながら蒸発乾固した。そして、得られた固形物を130℃で16時間乾燥し、乾燥物を加圧成形した後、空気流通下、375℃にて10時間焼成して触媒を得た。得られた触媒の組成は、
P1.0Mo12V0.65Cu0.15Fe0.1Ce0.1Cs1.05
であった。
【0077】
(メタクリル酸の合成反応)
この触媒を反応管に充填し、メタクロレイン5%、酸素10%、水蒸気30%、窒素55%(容量%)の混合ガスを、常圧下、反応温度290℃、接触時間3.6秒で通じて連続反応テストを行った。その結果を表1に示す。
【0078】
[実施例2]
実施例1において、硝酸セシウム11.85部のうち、60%である7.11部を純水30部に溶解してCI液を調製し、残りの40%である4.74部を純水20部に溶解してCII液を調製した以外は、実施例1と同様にして触媒を得、連続反応テストを行った。その結果を表1に示す。
【0079】
[実施例3]
実施例1において、硝酸セシウム11.85部のうち、30%である3.56部を純水15部に溶解してCI液を調製し、残りの70%である8.30部を純水35部に溶解してCII液を調製した以外は、実施例1と同様にして触媒を得、連続反応テストを行った。その結果を表1に示す。
【0080】
[実施例4]
実施例1において、29質量%アンモニア水23.80部をB液とした以外は、実施例1と同様にして触媒を得、連続反応テストを行った。その結果を表1に示す。なお、B液中に含まれるアンモニウムの量は、A液中に含まれるモリブデン原子12モルに対して7モルであった。
【0081】
[実施例5]
実施例1において、29質量%アンモニア水51.00部をB液とした以外は、実施例1と同様にして触媒を得、連続反応テストを行った。その結果を表1に示す。なお、B液中に含まれるアンモニウムの量は、A液中に含まれるモリブデン原子12モルに対して15モルであった。
【0082】
[比較例1]
実施例1において、硝酸セシウム11.85部を純水50部に溶解してCII液を調製し、CI液を用いなかった以外は、つまり、C液を分けずにA液とB液の混合液に混合した以外は、実施例1と同様にして触媒を得、連続反応テストを行った。その結果を表1に示す。
【0083】
[比較例2]
実施例1において、硝酸セシウム11.85部を純水50部に溶解してCI液を調製し、CII液を用いなかった以外は、つまり、C液を分けずにA液に滴下し、A液とC液の混合液にB液を混合した以外は、実施例1と同様にして触媒を得、連続反応テストを行った。その結果を表1に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
本発明の方法により製造した実施例1〜5の触媒は、2000時間経過後もメタクリル酸収率がほとんど変わらず、C液をCI液とCII液とに分けて混合せずに製造した比較例1、2の触媒と比べて長寿命であった。
【0086】
【発明の効果】
本発明によれば、メタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化してメタクリル酸を製造する際に用いられる、寿命の長いメタクリル酸製造用触媒が得られる。
Claims (6)
- メタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化してメタクリル酸を製造する際に用いられる、下記式(1)で表される組成を有する触媒の製造方法であって、
(i) 少なくともモリブデン、リンおよびバナジウムを含み、Z元素を含まない溶液またはスラリー(A液)を調製する工程と、
(ii) アンモニウムを含み、Z元素を含まない溶液またはスラリー(B液)を調製する工程と、
(iii) Z元素を含む溶液またはスラリーを調製する工程と、
(iv) A液とZ元素を含む溶液またはスラリー(CI液)とを混合して、A−CI混合液を調製する工程と、
(v) A−CI混合液とB液とを混合して、A−CI−B混合液を調製する工程と、
(vi) A−CI−B混合液とZ元素を含む溶液またはスラリー(CII液)とを混合して、触媒前駆体を含む溶液またはスラリーを調製する工程と、
(vii) この触媒前駆体を含む溶液またはスラリーを乾燥・焼成する工程と
を含むことを特徴とするメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
PaMobVcCudXeYfZgOh (1)
(式(1)および明細書中、P、Mo、V、CuおよびOは、それぞれリン、モリブデン、バナジウム、銅および酸素を示し、Xはアンチモン、ビスマス、砒素、ゲルマニウム、ジルコニウム、テルル、銀、セレン、ケイ素、タングステンおよびホウ素からなる群より選ばれた少なくとも1種類の元素を示し、Yは鉄、亜鉛、クロム、マグネシウム、タンタル、コバルト、マンガン、バリウム、ガリウム、セリウムおよびランタンからなる群より選ばれた少なくとも1種類の元素を示し、Zはカリウム、ルビジウムおよびセシウムからなる群より選ばれた少なくとも1種類の元素を示す。a、b、c、d、e、f、gおよびhは各元素の原子比率を表し、b=12のときa=0.5〜3、c=0.01〜3、d=0.01〜2、e=0〜3、f=0〜3、g=0.01〜3であり、hは前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素の原子比率である。) - CI液中に含まれるZ元素の量とCII液中に含まれるZ元素の量の比が、5:95〜95:5(モル比)であることを特徴とする請求項1に記載のメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
- CI液およびCII液が、Z元素以外の製造される触媒に含まれる元素(酸素を除く)の単体あるいは化合物、および、アンモニウム含有化合物を含まないことを特徴とする請求項1または2に記載のメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
- B液が、製造される触媒に含まれる元素(酸素を除く)の単体あるいは化合物を含まないことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
- A液はアンモニウムを含まないか、または、A液中に含まれるアンモニウムの量が、A液中に含まれるモリブデン原子12モルに対して1.5モル以下であり、
B液中に含まれるアンモニウムの量が、A液中に含まれるモリブデン原子12モルに対して6〜17モルであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のメタクリル酸製造用触媒の製造方法。 - 請求項1〜5のいずれかに記載の方法によりメタクリル酸製造用触媒を製造し、得られたメタクリル酸製造用触媒の存在下で、メタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化するメタクリル酸の製造方法。
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