JP4017966B2 - キャンディダ・ユティリス酵母由来の制御配列 - Google Patents
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Description
【発明の背景】
発明の分野
本発明は、キャンディダ・ユティリスに関する再現性のある形質転換系に関し、より具体的には、組換えDNAによる酵母キャンディダ・ユティリスの形質転換、およびその結果得られた新規な形質転換体における異種遺伝子の発現に関する。また、本発明は、形質転換において選択マーカー遺伝子として利用可能な新規DNA配列、異種遺伝子の発現のためのプロモーター、およびターミネーターとして利用可能な新規DNA配列にも関する。さらに、本発明は、酵母染色体への異種遺伝子の効率的な組み込み法にも関する。
【0002】
また、さらに本発明はキャンディダ・ユティリスにおいて自律複製機能を有し、形質転換効率を上げる機能を持つDNA断片、およびそれを利用した、選択マーカー遺伝子を含まないDNA断片を染色体に組み込む方法、ならびにプロモーター活性を有するDNA配列の取得法にも関する。
【0003】
背景技術
遺伝子組換え技術の発展は、微生物を利用して有用な蛋白質を大量に製造することを可能にしてきた。このための宿主として大腸菌や枯草菌などの原核生物の系は簡便であり、特に大腸菌は最も頻繁に利用される宿主である。しかし、大腸菌で生産される蛋白質は不溶性となることが多く、また分泌させても糖鎖付加を受けないなどの制約から、多様なニーズを十分に満足するものではない。また、生産された有用蛋白質を医薬品として用いる場合には、大腸菌の生産する発熱性毒性因子の除去が問題となる。
【0004】
これら原核生物の系に対して、真核生物である酵母を組換えDNAによる有用蛋白質生産の宿主として使用することは以下の点で魅力的である。まず、酵母のうちサッカロマイセス属酵母は古くから酒類など発酵性食品の生産に利用されてきており、またキャンディダ・ユティリス酵母は食飼料用に生産されていることから、これらの酵母については安全性が高いことが知られている。さらに、酵母は一般に細菌よりも高い細胞密度で培養することができ、かつ連続培養も可能である。また、酵母は蛋白質を培地中に分泌し、分泌された蛋白質は糖鎖による修飾を受ける。このため、酵母による蛋白質の生産は、このような修飾が生物活性に重要である場合に価値がある。
【0005】
酵母のうち、今日まで最も良く研究されて遺伝学的知見が蓄積している酵母にはサッカロマイセス属酵母があり、この酵母は種々の物質生産の宿主として検討がなされている。また、近年、サッカロマイセス属酵母以外の酵母としてピキア属酵母、ハンセヌラ属酵母、クルイベロマイセス属酵母、キャンディダ属酵母などいくつかの種について、それらを形質転換する手法が開発され、有用物質生産の宿主として検討されている。このうち、キャンディダ属酵母は、特に、炭素資化域が広いなど、サッカロミセス属酵母にない特性を有し実用上有利である。このことから、キャンディダ属酵母は組換えDNAによる有用物質の生産にとってその利用が期待される。
【0006】
キャンディダ属酵母のなかでもキャンディダ・ユティリス(Candida utilis)は、キシロースを始めとするペントースに対する優れた資化性を示す。また、サッカロマイセス酵母と異なり、好気的条件下での培養でエタノールを生成せず、それによる増殖阻害も受けないことから、高密度での連続培養による効率的な菌体製造が可能である。従って、かつて蛋白質源として注目され、ペントースを多く含む広葉樹の糖化液や亜硫酸パルプ廃液を糖源とした菌体の工業生産が実施されたことがある。また、この酵母はアメリカFDA(Food and Drug Administration)により、サッカロマイセス・セレビシエ、サッカロマイセス・フラジリスとともに、食品添加物として安全に使用できる酵母として認められている。実際にキャンディダ・ユティリスは現在でもドイツを始めとしてアメリカや台湾、ブラジルなど世界各国で生産され、食飼料として使用されており、安全性についてはすでに確認されているといえる。
【0007】
以上のような微生物蛋白質としての利用以外にも、キャンディダ・ユティリスは、ペントースやキシロースの発酵株、エチルアセテート、L−グルタミン、グルタチオン、インベルターゼ等の生産株として広く産業界で利用されてきた。
【0008】
しかしながら、今日までこのように有用なキャンディダ・ユティリスの形質転換に成功し、それを証明した報告はない。これは、キャンディダ・ユティリスが2倍体以上の倍数体であり、従来のニトロソグアニジンやエチルメタンスルホン酸などの変異源を用いた突然変異誘起処理によって適当な栄養要求性などの選択符号が付加された変異株の取得が著しく困難であったことによる、と考えられる。このことは、過去においてキャンディダ・ユティリスのADE1やLEU2など、他の酵母で形質転換の選択マーカーとして頻繁に使用される遺伝子が取得されながら(西矢ら、特開平4−66089号公報、小林ら、特公平1−42673号公報)、対応する遺伝子に変異をもつキャンディダ・ユティリス宿主株が得られたという報告が現在までなかったことからも推察することができる。すなわち、キャンディダ・ユティリスには、栄養要求性株を宿主としてその栄養要求性を相補する遺伝子を導入し形質転換体を直接選択するという、従来より各種酵母における形質転換系の開発に用いられてきた手法の適用ができなかったのである。
【0009】
さらに、キャンディダ・ユティリスは、その倍数性が高く、胞子形成しないため遺伝学的特性が未だ十分に明らかにされていない。そのため、形質転換条件、さらにはベクター系が満たすべき条件も不明であり、その宿主/ベクター系の確立も極めて困難なものであることが予想される。
【0010】
なお、キャンディダ・ユティリスに関する薬剤耐性マーカーを用いた予備的な形質転換の検討例は、ホーらにより紹介されている(HO, N.W.Y. et. al.Biotechnology and Bioengineering Symp. No.14, 295-301,1984 ) 。しかしながら、この報告においては、形質転換実験の条件、形質転換体であると主張する薬剤耐性株についてその証明に不可欠なサザン解析などのデータが開示されておらず、不十分な報告である。
【0011】
このことから、依然として、キャンディダ・ユティリスに関する再現性ある形質転換系、さらにそれを利用した有用物質の生産技術の確立が望まれているといえる。
【0012】
【発明の概要】
本発明者らは、今般、キャンディダ・ユティリス酵母から再現性よく形質転換体を取得することに成功し、形質転換体における異種遺伝子の発現について種々の知見を得た。本発明はこれらの知見に基づくものである。
【0013】
従って、本発明は、キャンディダ・ユティリスの再現性のある形質転換系の提供をその目的としている。
【0014】
また本発明は、キャンディダ・ユティリス形質転換系で利用可能な、選択マーカーとなる遺伝子、プラスミドが染色体への組み込まれる際のターゲット配列となる遺伝子、異種遺伝子の発現に必要なプロモーター、ターミネーターなど新規DNA配列の提供をその目的としている。
【0015】
さらに本発明は、キャンディダ・ユティリスにおける異種遺伝子の発現を可能にするベクター系の提供をその目的としている。
【0016】
また本発明は、異種遺伝子を染色体に複数コピーでかつ安定に組み込ませることのできる宿主/ベクター系の提供をその目的としている。
【0017】
さらにまた本発明は、キャンディダ・ユティリスにおける異種遺伝子の発現法の提供をその目的としている。
【0018】
また、さらに本発明はキャンディダ・ユティリスで自律複製機能を有し、形質転換効率を上げる機能を持つDNA断片、およびそれを含むプラスミドベクター、その利用による選択マーカー遺伝子を含まないDNA断片を染色体に組み込む方法、ならびにプロモーター活性を有するDNA配列の取得法、それにより得られたプロモーター活性を有する新規DNA配列の提供をその目的としている。
【0019】
本発明による新規DNA配列群は、キャンディダ・ユティリスのリボソーム構成蛋白質L41をコードする遺伝子、ならびにそのプロモーターおよびターミネーター配列;シクロヘキシミド耐性型L41遺伝子;ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)遺伝子のプロモーターおよびターミネーター配列;グリセロアルデヒド−3−リン酸- デヒドロゲナーゼ(GAP)遺伝子のプロモーターおよびターミネーター配列;原形質膜プロトンATPase(PMA)遺伝子のプロモーターおよびターミネーター配列;URA3遺伝子、ならびにそのプロモーターおよびターミネーター配列;二種類の自律複製能を有するDNA断片;プロモーター活性を有するDNA断片の配列;そして、キャンディダ・ユティリスのリボソームRNAをコードするrRNA遺伝子である。
【0020】
本発明によるキャンディダ・ユティリスの形質転換系で利用可能なベクターは、キャンディダ・ユティリスの染色体DNAと相同な配列と、選択マーカー遺伝子とを含んでなり、相同組換えによって異種遺伝子をキャンディダ・ユティリスの染色体DNAに組み込むことができるもの、あるいは、キャンディダ・ユティリスで自律複製機能を有するDNA配列と、選択マーカー遺伝子とを含んでなり、高い頻度でキャンディダ・ユティリスを形質転換できるもの、である。
【0021】
また、本発明によるキャンディダ・ユティリスの形質転換系で利用可能なベクターは、選択マーカー遺伝子を含まず、キャンディダ・ユティリスの染色体DNAと相同な配列を含んでなり、相同組換えによって異種遺伝子をキャンディダ・ユティリスの染色体DNAに組み込むことができるもの、である。このプラスミドは、この自律複製機能を有するDNA配列と、選択マーカー遺伝子とを含んでなるプラスミドと同時に形質転換に用いることができる。
【0022】
さらにまた、本発明によるキャンディダ・ユティリスの形質転換系で利用可能な選択マーカー遺伝子は、キャンディダ・ユティリスで機能し得る薬剤耐性マーカー、好ましくはシクロヘキシミド耐性型L41遺伝子、G418耐性を付与する遺伝子、またはハイグロマイシンB耐性を付与する遺伝子である。
【0023】
さらに、本発明によるキャンディダ・ユティリスにおける異種遺伝子の発現法は、異種遺伝子を含む前記本発明によるベクターでキャンディダ・ユティリスを形質転換し、得られた形質転換体を培養し、該培養物から異種遺伝子の発現産物を単離、精製することを含んでなるものである。
【0024】
そして、本発明によるキャンディダ・ユティリスの形質転換系とは、これらの本発明による新規DNA群、ベクター系などの機能的組み合わせによって得られるものである。
【0025】
【発明の具体的説明】
キャンディダ・ユティリス酵母
本発明による形質転換系が適用されるキャンディダ・ユティリスの具体的菌株としては、例えばATCC9256(IFO 0626)、ATCC9226(IFO 1086)、ATCC9950(IFO 0988)、IFO 0396、IFO 0619、IFO 0639、KP−2059P株などが挙げられる。
【0026】
なお、キャンディダ・ユティリスは株によってその染色体泳動パターンが異なり、染色体の長さの多型性を示すことが報告されている(Stoltenburg et. al. Curr. Genet. 22 441-446(1992) )。従って、本発明による形質転換系はその多型性に起因して適用が制限されることが予想された。しかし、後記する実施例において使用した3株についてはそれぞれ染色体多型が認められたものの、いずれについても形質転換体が得られ、また異種遺伝子の発現も確認できた。このことから、本発明による形質転換系がキャンディダ・ユティリス全般について適用可能であることは、当業者にとって容易に推測できるものと考える。
【0027】
形質転換系
一般に生物の形質転換系を開発するためには、(a)形質転換体を選別するための選択マーカー遺伝子および形質転換体の選択方法、(b)プラスミドDNAが宿主細胞内で核外遺伝子として存在するために必要な自律複製能を有するDNA配列(ARS)、またはプラスミドを効率的に染色体に組み込ませるために必要な適当な染色体DNA相同配列(すなわち、プラスミドDNAの組み込みターゲットの確立)、さらに、(c)宿主細胞を細胞外DNAを取り込み可能な状態にする処理方法、の3つの要素が必要となり、これら3つの要素がそろって形質転換体を取得することが可能となる。したがって、遺伝学的な情報がほとんど得られていないキャンディダ・ユティリスの形質転換系の確立にあたっては、これらすべての要素について検討し、開発することが必要不可欠であった。
【0028】
(a)選択マーカー遺伝子および形質転換体の選択
形質転換体を選別するための選択マーカー遺伝子としては、変異処理により栄養要求性となった宿主株が利用できる場合、その栄養要求性を相補する遺伝子を選択マーカー遺伝子として用いることができる。この場合、培地から当該栄養素を除いた最少培地で形質転換体を直接選択することが可能である。しかし、キャンディダ・ユティリスの場合には、前記したように、適当な栄養要求性などの選択符号が付加された変異株の取得が著しく困難であり、栄養要求性の相補遺伝子を選択マーカーとした形質転換システムの開発が不可能であった。
【0029】
発明者らは、キャンディダ・ユティリスが、抗生物質G418やハイグロマイシンB、シクロヘキシミドなどに感受性であり、培地中にそれらの薬剤を添加することによって菌の生育を抑えることが可能であることを見出した。そこで、形質転換体選択マーカー遺伝子として、それらの薬剤に耐性を与える遺伝子を利用することを試みることとした。
【0030】
ここでG418耐性遺伝子(アミノグリコシドホスフォトランスフェラーゼ遺伝子)やハイグロマイシンB耐性遺伝子(ハイグロマイシンBホスフォトランスフェラーゼ遺伝子)などの、他の生物由来の遺伝子を利用する場合、遺伝子の発現を確実にするためにキャンディダ・ユティリスで機能する転写のプロモーターおよびターミネーター配列を利用するのが好ましい。
【0031】
キャンディダ・アルビカンスなどの一部のキャンディダ属酵母においては、一部コドンの翻訳のされ方が他の生物とは異なっていることも報告されており(Ohama et. al. Nucleic Acids Res. 21 4039 - 4045 1993)、異種遺伝子を選択マーカー遺伝子とする場合には、それが宿主内で機能を持つ蛋白質に翻訳されるという保証はない。一方で、シクロヘキシミドに対する感受性はリボソーム蛋白質であるL41蛋白質の56番目残基により決定されるという興味深い事実が報告されている(Kawai et. al. J Bacteriol. 174 254-262 (1992) )。
【0032】
そこで本発明者らは、シクロヘキシミドに感受性であるキャンディダ・ユティリスのL41蛋白質の遺伝子を取得し、それを部位特異的変異法によりシクロヘキシミド耐性型に変換して選択マーカー遺伝子とし、それを利用した。ここで、この遺伝子は宿主由来であるため、発現のプロモーターおよびターミネーター配列はその遺伝子自身の配列をそのまま用いることとした。よって本態様は、遺伝子の確実な発現が期待できる点で極めて有利である。
【0033】
従って、本発明によるキャンディダ・ユティリスの形質転換系において用いられる選択マーカーとしての薬剤耐性遺伝子マーカーは、好ましくはシクロヘキシミド耐性型L41遺伝子である。L41遺伝子、ならびにプロモーターおよびターミネーター配列を含んだDNA断片の塩基配列は図13(配列番号:5)に示される通りであり、さらにその塩基配列から推定されるアミノ酸配列は図14(配列番号:6)に示される通りである。また、シクロヘキシミド耐性型L41遺伝子は、図13に示される配列の1644番目のヌクレオチドCがAに変換されたものであり、その結果、図14に示される配列の56番目のアミノ酸はProがGlnに置換される。
【0034】
また、本発明による形質転換系における他の好ましい薬剤耐性遺伝子マーカーとして、抗生物質G418に対する耐性を付与するアミノグリコシドホスフォトランスフェラーゼ(APT)遺伝子もまた使用できる。アミノグリコシドホスフォトランスフェラーゼ遺伝子にはトランスポゾンTn903とトランスポゾンTn5由来の2種類が知られており、いずれの遺伝子も本発明において使用可能である。また、抗生物質ハイグロマイシンBに対する耐性を付与する大腸菌由来のハイグロマイシンBホスフォトランスフェラーゼ遺伝子もまた本発明による形質転換系において使用できる。このG418耐性遺伝子やハイグロマイシンB耐性遺伝子など異種遺伝子の場合は、遺伝子発現のためにキャンディダ・ユティリスで機能する転写のプロモーターおよびターミネーター配列をそれぞれ異種遺伝子の5´上流と3´下流とに組み込むのが好ましい。
【0035】
この転写のプロモーターおよびターミネーター配列としては、キャンディダ・ユティリスの遺伝子由来であるのがより好ましく、例えば、後記するキャンディダ・ユティリスのホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)遺伝子のプロモーターおよびターミネーター配列;グリセロアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAP)遺伝子のプロモーターおよびターミネーター配列;および原形質膜プロトンATPase(PMA)遺伝子のプロモーターおよびターミネーター配列などが利用出来る。また、後述するプロモータークローニング用ベクターにより取得されるプロモーター活性を有するDNA配列なども利用できる。
【0036】
また、上記系において利用可能な他のプロモーターおよびターミネーター配列の例としては、サッカロマイセス酵母で公知のADH、ENO、GAL、SUCなどの遺伝子のキャンディダ・ユティリスにおける相同遺伝子のプロモーターおよびターミネーター配列などを挙げることができる。
【0037】
さらに、形質転換体の選択マーカーとして利用可能な細菌由来の薬剤耐性遺伝子としては、前記したG418耐性遺伝子およびハイグロマイシンBホスフォトランスフェラーゼ遺伝子のほかに、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子(クロラムフェニコール耐性)(Hadfield, C. et.al. Gene, 45, 149-158(1986))、ブラストサイジンデアミナーゼ(ブラストサイジン耐性)(Izumi, M. et. al. Exp. Cell Res., 197, 229-233 (1991) )、フレオマイシン耐性遺伝子(Wenzel, T.J.et. al. Yeast, 8, 667-668 (1992) )などの抗生物質耐性遺伝子が挙げられる。この他に、ディハイドロフォレートレダクターゼ遺伝子(メトトレキセート耐性) (Miyajima, A. et. al. Mol. Cell Biol. 4, 407-414 (1984))や、酵母由来の優性遺伝子スルホメツロンメチル耐性遺伝子(Casey, G.P. et. al. J. Inst. Brew. 94, 93-97 (1988))、CUP1遺伝子(銅耐性)(Henderson,R.C.A. et. al. Current Genet. 9, 133-138 (1985))、CYH2遺伝子(シクロヘキシミド耐性)(Delgado, M. et.al. EBC congress, 23, 281-288 (1991))など、公知の薬剤耐性遺伝子も利用できる。このうちマーカー遺伝子が細菌やトランスポゾンの遺伝子など異種生物由来である場合には、上記したようなキャンディダ・ユティリス内で機能するプロモーター、およびターミネーター配列を利用するのが好ましい。
【0038】
(b)プラスミドDNAの組み込みターゲットの確立
シクロヘキシミド耐性型L41遺伝子をはじめとする利用可能な選択マーカーが前記のように本発明によって確立されたことから、これらの配列に限らずキャンディダ・ユティリス染色体由来の種々の配列がターゲット配列としての利用可能であることが期待される。
【0039】
本発明の好ましい態様によれば、プラスミドを染色体に組み込ませるために必要な適当な染色体DNA断片として、リボソームRNAをコードする遺伝子であるrRNA遺伝子(rDNA)、URA3遺伝子、L41遺伝子、およびPGK遺伝子を好ましく使用することができることが見出された。
【0040】
rRNA遺伝子については、サッカロマイセス・セレビシエにおいてrDNAが染色体上にタンデムに100コピー以上存在し、その反復単位のなかに自律複製配列(ARS)が存在することが報告されている(Saffer &Miller, JR. Molec. Cell. Biol. 6, 1148-1157, (1986) )。また、このrDNA領域をプラスミド組み込みの ターゲットとすることにより、組み込みの形質転換頻度を高くできることが報告されている(Lopes, et. al. Gene 79, 199-206 (1989) )。
【0041】
本発明者らは、キャンディダ・ユティリスにおいてもrDNAが染色体上に反復して存在することを見出した。これにより、サッカロマイセス・セレビシエ同様、キャンディダ・ユティリスのrDNA配列は、高頻度組み込みのためのターゲット配列としての利用が可能であることが示唆され、事実、キャンディダ・ユティリスの形質転換系において組換えターゲットとして有利に利用することができた。
【0042】
興味あることに、rRNA遺伝子、URA3遺伝子、L41遺伝子、およびPGK遺伝子などのキャンディダ・ユティリス染色体をターゲットとし、後記する本発明によるベクター系を用いて、キャンディダ・ユディリス酵母を形質転換すると、DNA断片が染色体上に組み込まれ、酵母に安定に保持されることが観察された。従って、このターゲットとベクター系との組み合わせにより、異種遺伝子が自律複製を続ける染色体外プラスミドとして保持される場合の外来遺伝子の不安定性の問題を排除することができる。
【0043】
本発明において、形質転換体により組み込まれたDNA断片の存在様態を詳しく解析した結果、DNA断片のキャンディダ・ユティリス染色体への組み込みは主に相同組換えによって起きることが明らかとなった。これは、宿主染色体ターゲット配列に対するホモロジーを有するDNA配列を含むDNA分子であれば、それを任意の染色体ターゲットに組み込むことが可能であることを意味する。
【0044】
具体的には、ターゲット配列に対するホモロジーを有するDNA配列を、その相同DNA配列内の適当な制限酵素サイトで分解して直鎖状としたプラスミドDNAをベクターとして使用し、あるDNA断片をキャンディダ・ユティリス染色体のターゲット配列上に組み込むことができる。この場合、選択マーカーをシクロヘキシミド耐性型L41遺伝子にすることにより、後述するように複数のプラスミド分子が同時に組み込まれた形質転換体が効率的に選択される。
【0045】
また、染色体ターゲット配列に対するホモロジーを有するDNA配列の内部に選択マーカー遺伝子を含んだ形態の線状DNA断片を用いることも可能である。
【0046】
本発明による本態様の形質転換において、プラスミドは、染色体上の相同な遺伝子と置き換わる形で挿入される。このため、挿入されたDNA断片の前後には、ターゲット配列の反復配列が形成されず、よって、組み込まれたDNAのより高い安定性が期待される。
【0047】
ここで、URA3遺伝子、L41遺伝子、PGK遺伝子などは、他の多くの遺伝子と同様に1細胞あたり2コピーしか存在しない遺伝子であるが、DNA断片組み込みのターゲットとして用いることが可能であることが本発明によって示された。また、一般に酵母のrRNA遺伝子は18S、5.8S、25S、5Sの各rRNA遺伝子を含む反復DNA単位が1倍体あたり100コピー以上存在する(Schweizer, E. et. al. J. Mol. Biol. 40, 261-277 (1969))。そこで、このrDNAを組換えのターゲット配列としての利用には、他の遺伝子配列を利用した場合と比較して、(1)形質転換頻度が上昇することが期待される、(2)組み込みによるターゲット配列の変化は無視できる、などの利点がある。発明者らは、キャンディダユティリスにおいてもrRNA遺伝子が、約13.5kbのDNA配列を反復単位としてタンデムに反復して存在していること、を明らかにするとともに(詳細後記)、rDNA配列を組換えのターゲット配列とすることで、細胞あたり2コピー存在するL41遺伝子をターゲットとするよりも形質転換頻度が10倍から50倍程度高くなることを明らかにした。また、rDNA座に組み込まれたDNA断片の安定性も高く、rDNA配列は優れた組み込みターゲットであることが明らかとなった。
【0048】
本発明においてDNA断片組み込みのターゲット配列としてrDNA配列を用いたことは、このように形質転換頻度を高める効果をもたらし、酵母の処理条件を検討してそのなかから適切な形質転換条件を発見するうえで重要な役割を果たした。しかし、興味あることに、rDNAの領域によっては形質転換のターゲットとして用いた場合に形質転換頻度が著しく低くなることが明らかにされ、rDNA断片であればどこでも効率的なプラスミドの組み込みターゲットとして利用できるものではないことが示唆された。
【0049】
さらに本発明の好ましい態様によれば、シクロヘキシミド耐性型L41遺伝子を選択マーカーとすることにより、プラスミドが複数個組み込まれた形質転換体を効率的に取得できる。この理由は次のように考えられる。すなわち、シクロヘキシミド耐性型L41遺伝子を含むDNA断片が複数コピー組み込まれた場合にのみ、内在性のシクロヘキシミド感受性型L41蛋白質が耐性型のものに置き換えられ、シクロヘキシミドによる機能阻害を受けないリボソーム分子の割合が増える。これによって、形質転換体がシクロヘキシミドを含む培地で生育できることとなると考えられる。この場合の組み込みのターゲット部位としてはURA3遺伝子座、L41遺伝子座などのキャンディダ・ユティリス染色体由来のDNA配列であれば基本的にいずれの配列も利用できる。また、興味深いことに、このうち特にrRNA遺伝子座をその組み込みのターゲット配列とすることによって、他遺伝子座をターゲット配列とした場合に比較してDNA断片がより多く組み込まれる傾向があることが示された。
【0050】
(c)形質転換方法
形質転換方法、すなわち宿主細胞を細胞外DNAを取り込み可能な状態にする処理方法としては、プロトプラスト法、酢酸リチウム法、電気パルス法、およびそれらの改変法などの、サッカロマイセス・セレビシエの形質転換に従来用いられている方法の利用が考えられる。このうちプロトプラスト法は広く使用されている形質転換法であるが、操作がやや煩雑であり、薬剤耐性で形質転換体を選択する際には、非形質転換体であるバックグランドコロニーの出現がしばしば問題となる。
【0051】
そこで本発明者らは、酢酸リチウム法ならびに電気パルス法を用いて、先に述べたシクロヘキシミド耐性L41遺伝子とrDNA断片を組み合わせたプラスミドによって、キャンディダ・ユティリスの形質転換を試み、再現性良く形質転換体を得ることのできる条件を見出した。
【0052】
キャンディダ・ユティリスの形質転換は、電気パルス法によるのが好ましい。菌体を対数増殖期にまで増殖させた後、洗浄して1Mソルビトールに懸濁する。電気パルスの条件は、タイムコンスタント値(電圧が最大値の約37%にまで減衰するまでの時間)が約10から20ミリ秒であり、パルス後の生菌率が約10−40%となる条件であれば良い。例えば、本発明の好ましい態様によれば、電気容量が25μF、抵抗値が600〜1000オーム、電圧が3.75〜5KV/cmの条件で、上記のタイムコンスタント値と生菌率が得られ、1μgDNAあたり約500〜1400個の形質転換体が得られることが示された。
【0053】
また、電気パルスを加えた後、菌液に1Mソルビトールを含むYPD培地を加え30℃で振盪培養することが好ましく、培養せずに菌を直接シクロヘキシミドを含む選択プレートに塗布するとコロニーが得られない場合があることが見出だされた。また、培養時間は4〜6時間程度が適当であり、その後は形質転換体の増殖が無視できなくなる。このほか、DNAと菌体を接触する際にサーモンスパームDNAなどのキャリアDNAを添加することやポリエチレングリコールを添加することなどによって形質転換頻度を高めることも本発明による形質転換系にあっても好ましい。
【0054】
また、酢酸リチウム法(Ito et al. J. Bacteriol. 153, 163-168 1983)はその簡便さから広くサッカロミセス属酵母の形質転換に用いられており、さまざまな改良法が報告されている。これらの方法を用いてもキャンディダ・ユティリスの形質転換が可能であることが確認された。特に、エタノールを添加するリチウム法変法(Soni et. al. Current Genet. 1993 24, 455-459)によってキャンディダ・ユティリスの形質転換が好ましく可能である。また、集菌時の菌体密度、リチウムの濃度、ポリエチレングリコールの種類と濃度、キャリアDNAの種類、形態、量など異なる条件を試みることにより、酢酸リチウム法によるキャンディダユティリスの形質転換の至適条件を決定して、形質転換頻度を高めることが可能である。上記した本発明による(a)選択マーカー遺伝子および(b)組み込みターゲットが確定されたことから、これらは当業者にとり容易であると考える。
【0055】
なお、形質転換条件を見出す過程で、サッカロマイセス・セレビシエで機能するキャンディダ・ユティリス由来ARS配列8種類と、同じくサッカロマイセス・セレビシエで機能するG418耐性遺伝子発現ユニットとを組み合わせたプラスミドを用いて形質転換を試みたが、形質転換体は取得できなかった。この結果はホーらによるキャンディダユティリスの形質転換の報告(HO, N.W.Y.et. al. 前掲)の再現性を疑わせるものであるといえる。
【0056】
発現ベクター系および異種遺伝子の発現
本発明によれば、キャンディダ・ユティリスの形質転換に使用される発現ベクター系が提供される。
【0057】
本発明によるベクターの一つの態様は、キャンディダ・ユティリス染色体DNAと相同な配列(以下、「相同DNA配列」ということがある)を含み、この部分において相同組換えを起こすことにより、プラスミドDNAを染色体に組み込むことを可能にし、かつ形質転換体の選別を可能とする選択マーカー遺伝子を含んでなる、プラスミドDNAである。
【0058】
ここで、相同DNA配列とは好ましくはrRNA遺伝子、URA3遺伝子、L41遺伝子、PGK遺伝子、GAP遺伝子、PMA遺伝子などが挙げられ、それらはキャンディダ・ユティリス染色体DNA由来のものであることが好ましい。用いる配列に依存して染色体上の任意の位置に異種遺伝子を組み込むことが可能である。このプラスミドは、プラスミド分子内の相同DNA配列内の適当な制限酵素サイトでの分解によりプラスミドDNAを直鎖状として使用される。その結果、プラスミドDNA断片はキャンディダ・ユディリス染色体に相同組換えにより組み込まれる。
【0059】
さらに本発明の好ましい態様によれば、このプラスミドDNA中で、マーカー遺伝子および異種遺伝子を含むDNA配列は、その両端において前記相同DNA配列に挟まれてなる。この態様では、このプラスミドDNAを相同DNA配列において制限酵素切断し、相同DNA配列をその両端に有するマーカー遺伝子および異種遺伝子を含むDNA断片を得る。こうして得たDNA断片も、また、相同組換えによりキャンディダ・ユディリス染色体DNAに相同組換えにより組み込まれ得るものである。
【0060】
なお、本明細書において、「DNA断片(または配列)が、キャンディダ・ユディリス染色体に相同組換えにより組み込まれる」とは、DNA断片がキャンディダ・ユディリス染色体に組み込まれる限りにおいて、その組み込みの態様は限定されないが、少なくとも次の二つの態様を含む意味に用いることとする。すなわち、(1)キャンディダ・ユディリス染色体のDNA配列と、DNA断片の両端にある相同DNA配列部分とが相同組換えを生じ、開裂部分にDNA断片が”挿入”されて染色体DNAに組み込まれる態様、および(2)キャンディダ・ユディリス染色体のDNA配列と、DNA断片の両端にある相同DNA配列との相同組換えによって、プラスミドDNA断片がキャンディダ・ユディリス染色体の一部と”置換”されて染色体DNAに組み込まれる態様のいずれも少なくとも意味するものとする。(2)の態様においては、挿入されたDNA断片の前後に、ターゲット配列の反復配列が形成されないため、組み込まれたDNA断片が安定に染色体に存在することが期待される。
【0061】
また、選択マーカー遺伝子としては前記した薬剤耐性マーカーを利用するのが好ましく、より好ましい薬剤耐性マーカーとしては、シクロヘキシミド耐性を付与する遺伝子、例えばシクロヘキシミド耐性型L41遺伝子;抗生物質G418耐性を付与する遺伝子、例えばバクテリアトランスポゾンTn903由来のAPT遺伝子;抗生物質ハイグロマイシンB耐性遺伝子などが挙げられる。これら選択マーカー遺伝子が微生物由来である場合は、それらの発現を確かなものとするためにキャンディダ・ユティリスで機能するプロモーターに連結することが好ましい。
【0062】
また、本発明のもう一つの態様によるベクターは、キャンディダ・ユティリス染色体DNAと相同な配列(相同DNA配列)を含み、この部分において相同組換えを起こすことにより、プラスミドDNAを染色体に組み込むことを可能とするものであり、一方で形質転換体選択のための選択マーカー遺伝子を持たないプラスミドDNAである。このプラスミドは、プラスミド分子中の相同DNA配列内の適当な制限酵素サイトでの分解により直鎖状とし使用される。
【0063】
また、この態様のプラスミドにおいても、このプラスミドDNAは、異種遺伝子を含むDNA配列が、その両端において前記相同DNA配列に挟まれてなるよう構成されてよい。そして、このプラスミドDNAを相同DNA配列において制限酵素切断することによって、相同DNA配列をその両端に有するDNA断片が得られる。こうして得られたDNA断片も相同組換えによりキャンディダ・ユディリス染色体DNAに相同組換えにより組み込まれうるものである。
【0064】
これら直鎖状とされたDNA断片は、上記した選択マーカー遺伝子を含んでなるプラスミドDNAの場合と同様に、キャンディダ・ユディリス染色体に相同組換えにより組み込まれる。本態様のプラスミドにおいても、上記(2)の態様による組み込みにすることで、組み込まれたDNA断片が安定に染色体に存在することが期待される。
【0065】
ここで、相同DNA配列とは好ましくはrRNA遺伝子、URA3遺伝子、L41遺伝子、PGK遺伝子、GAP遺伝子、PMA遺伝子などが挙げられる。それらはキャンディダ・ユティリス染色体DNA由来のものであることが好ましい。また、用いる配列に依存して染色体上の任意の位置に外来DNA断片を組み込むことが可能である。
【0066】
このベクターは、後述する自律複製配列を含むDNA配列と選択マーカー遺伝子とを持つプラスミドと同時に形質転換に用いられる。すなわち、自律複製能を有するプラスミドが導入されたことにより選択される形質転換体のなかから、さらに選択マーカー遺伝子を持たないDNA断片が染色体上に組み込まれた株を二次的に選択することが可能である。選択された株に存在するプラスミドは、その後非選択条件下で菌を培養することによって脱落させることが可能であり、結果として、挿入DNA断片だけを染色体上に保持する株を取得することができる。この手法を用いることにより、例えば異種遺伝子のみを保持し、微生物由来の薬剤耐性遺伝子のように余分な配列を含まない株を育種することが可能になる。
【0067】
またさらに、この自律複製配列を含むDNA配列と選択マーカー遺伝子とを持つプラスミド自体も、キャンディダ・ユティリス酵母形質転換用のベクターとして利用可能である。このプラスミドは非選択条件下で菌を培養することによって脱落しやすい特徴をもつが、安定性を高めるDNA断片が後述するように取得でき、このDNA断片と組み合わせてベクターとして利用することが可能である。
【0068】
これら本発明によるベクターに異種遺伝子を連結して、異種遺伝子を保持したベクターとすることができる。このベクターによってキャンディダ・ユティリスを形質転換すると、それらの異種遺伝子をキャンディダ・ユティリス染色体に安定に組み込むことが可能である。こうして得られた形質転換体を適当な培地中で培養し、該培養物から異種遺伝子の発現産物を、その発現産物に適した方法で単離、精製することによって、異種遺伝子をキャンディダ・ユティリスで発現させることができる。すなわち、キャンディダ・ユティリスにおける異種遺伝子の発現法が提供される。ここで、異種遺伝子とは通常は宿主のキャンディダユティリス染色体上に本来存在しない遺伝子またはその一部のDNAを意味するものとする。
【0069】
異種遺伝子は、好ましくは、その異種遺伝子の発現を独立して制御する調節領域と組み合わせるか、または、形質転換の過程で破壊された遺伝子自身の調節領域の影響下にその異種遺伝子を発現させる。そのような配列はキャンディダ・ユティリスで機能する必要があり、その好ましい具体例としては後記する本発明によるPGK遺伝子、GAP遺伝子、およびPMA遺伝子のプロモーター配列およびターミネーター配列、さらには後述するプロモータークローニング用ベクターにより取得されるプロモーター活性を有するDNA配列が挙げられる。
【0070】
後記する実施例から明らかなように、本発明により、ホスホグリセリン酸キナーゼ遺伝子のプロモーター配列およびターミネーター配列を用いて、グルコアミラーゼ遺伝子、アミノグリコシドホスフォトランスフェラーゼ遺伝子、β−ガラクトシダーゼ遺伝子、ハイグロマイシンBホスフォトランスフェラーゼ遺伝子などの異種遺伝子の発現に成功した。また、さらにグリセロアルデヒド- 3- リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーターおよびターミネーター配列、ならびに原形質膜プロトンATPase遺伝子のプロモーターおよびターミネーター配列を用いて、アミノグリコシドホスフォトランスフェラーゼ遺伝子の発現にも成功した。これらの異種タンパク質のうち、グルコアミラーゼは分泌蛋白質であり、アミノグリコシドホスフォトランスフェラーゼやβ−ガラクトシダーゼは菌体内酵素である。このことは、本発明によるキャンディダ・ユティリスでの異種蛋白質の生産は、それが菌体内あるいは分泌蛋白質いずれであっても可能であることを意味する。さらに、グルコアミラーゼについてはその高レベルの分泌発現が認められ、キャンディダ・ユティリスが異種蛋白質の高生産のための優れた宿主となりうることが明らかにされたといえる。
【0071】
さらにキャンディダ・マルトーサ、アルビカンスなど一部のキャンディダ属酵母においては、一部コドンの翻訳のされ方が他の生物とは異なっていることも報告されている(Ohama et. al. Nucleic Acids Res. 21 4039 - 4045(1993)) 。キャンディダ・マルトーサを宿主として得られた大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子の発現産物が活性を示さないことは、そのためであるとされている。後記実施例から明らかなように、キャンディダ・ユティリスで産生された、大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子産物はその活性を保持していた。このことは、キャンディダ・ユティリスが正常なコドン認識をすることを示しており、これはキャンディダ・ユティリスが異種ポリペプチド生産において好ましい宿主であることを示している。
【0072】
また、キャンディダ・ユティリスで異種遺伝子を発現することによってキャンディダ・ユティリスの性質を改変することができる。従って、本発明によれば、新たなキャンディダ・ユティリス株の作出法が提供される。例えばその発酵特性を改良し、工業的有用性を増大することが可能である。特にグルコアミラーゼ遺伝子を発現するキャンディダユティリス株は、澱粉資化性が付与されることにより利用可能な炭素源スペクトルが拡大されたといえる。
【0073】
さらに、本発明によるベクターは、キャンディダ・ユティリス以外の細胞の形質転換に利用することも可能である。キャンディダ・ユティリス以外の細胞を宿主とする場合、形質転換の実施に際して適当なDNA断片を選択するのが好ましい。そのようなDNA断片としては、大腸菌の場合、例えばpBluescript やpUC19のような細菌のプラスミドDNAが挙げられる。また、サッカロマイセス属酵母の場合、例えばYEp13、YCp50(Methods in Enzymology, 194, p195-230, Academic Press(1991)) などの酵母−大腸菌シャトルベクターが挙げられる。
【0074】
キャンディダ・ユティリス酵母内で自律複製能を有するDNA配列のクローニング法
さらに本発明によれば、キャンディダ・ユティリス酵母内で自律複製能を持つDNA配列をクローン化する手法が提供される。使用するDNAはいかなる生物種由来のものであってもよいが、キャンディダ・ユティリス由来であるのが好ましい。また、このためのベクターとしては、薬剤耐性マーカー遺伝子を含むものが利用でき、好ましくはキャンディダユティリスで機能するプロモーターとターミネーターとにより発現するG418耐性遺伝子であるAPT遺伝子を含むベクターを用いることができる。具体的には、PGK遺伝子プロモーターで発現するAPT遺伝子を有するプラスミドをベクターとして用いて、キャンディダ・ユティリス酵母染色体DNAライブラリーを作製し、このライブラリーDNAでキャンディダ・ユティリスを形質転換する。そして、例えばG418耐性で選択される形質転換体酵母から全DNAを抽出して、大腸菌を形質転換することにより、形質転換酵母体で、染色体外因子として存在していたプラスミドDNAを回収することができる。このプラスミドDNAに挿入されたキャンディダ・ユティリス由来の染色体DNA断片から、自律複製配列(ARS)としての機能配列を分離することができる。
【0075】
驚くべきことに、薬剤耐性マーカーとしてシクロヘキシミド耐性型L41遺伝子を含むプラスミドをベクターとした場合は、自律複製能を持つDNA配列をクローン化することはできなかった。すなわち、このプラスミドを用いてキャンディダ・ユティリス酵母染色体DNAライブラリーを作製し、このライブラリーDNAでキャンディダ・ユティリスを形質転換しても、シクロヘキシミド耐性の形質転換体は得られなかった。これは、キャンディダ・ユティリスのARSの特徴として、それを含むプラスミドの細胞あたりのコピー数が低く、形質転換体を選択するために数コピー必要なシクロヘキシミド耐性型L41遺伝子と組み合わせても形質転換体を選択できないことを示唆している。これは後に、取得したARSとシクロヘキシミド耐性型L41遺伝子とを含むプラスミドによってキャンディダ・ユティリスの形質転換を行っても、形質転換体が得られなかったことからも確認された。後記する実施例に示されるように、分離したARSを含むDNA配列の性質を詳しく解析することにより、ARSを有するプラスミドはキャンディダ・ユティリス酵母内で1細胞あたり約1コピーしか存在しないことが明らかにされた。この他に、分離したARSの特徴として、それを含むプラスミドが不安定であることがあげられる。非選択条件下で約2.5〜3.5世代培養することにより、プラスミドを保持する菌の割合は全体の20〜30%にまで低下していた。
【0076】
キャンディダ・ユティリス酵母内でプロモーター活性を有するDNA配列の分離法
前記の自律複製能を有するDNA配列の利用により、キャンディダ・ユティリスにおいて転写のプロモーター活性を有するDNA配列のクローン化法が提供される。このためのベクターとしては、自律複製能を有するDNA配列の他に、転写のためのプロモーター配列を持たない薬剤耐性マーカー遺伝子を含むものであれば用いることができ、好ましくはG418耐性遺伝子であるAPT遺伝子を含むものを用いることができる。また、使用するDNAはいかなる生物種由来であってもよいが、キャンディダ・ユティリス由来であるのが好ましい。また、ライブラリー作成のためにDNAは制限酵素やDNAアーゼなどの酵素処理あるいは超音波などの機械的剪断により低分子化する必要があるが、好ましくは、4塩基認識でかつ平滑末端を生じる3種類の制限酵素AluI、HaeIII、RsaIを組み合わせて染色体DNAの部分分解に使用する。これにより、より多くの染色体領域がライブラリーにクローン化されるからである。
【0077】
より具体的には、プロモーター配列を含まないAPT遺伝子の5’側に、前記の制限酵素により部分分解した約0. 8〜1. 8kbのDNA断片を連結してキャンディダ・ユティリス酵母染色体DNAライブラリーを通常法によって作製する。そして、このライブラリーDNAでキャンディダ・ユティリスを形質転換する。プロモーター活性を有するDNA配列がAPT遺伝子の直前にクローン化されたプラスミドにより形質転換された酵母はG418耐性となる。よって、G418耐性を示す形質転換体から全DNAを抽出して、大腸菌を形質転換することにより、プロモーター活性を有するDNA配列を効率的に分離することができる。この際、プレートに含まれるG418濃度を高くする、またはプレート上で比較的大きなコロニーを形成する株を選択することによって、より転写活性の高いプロモーター配列を分離することが可能である。本発明によるこの方法は、前述したようにキャンディダ・ユティリスにおけるARSを含むプラスミドのコピー数は細胞あたり1コピー程度であるため、活性の高いプロモーター配列を分離するのに好都合であるといえる。
【0078】
キャンディダ・ユティリスのその他機能遺伝子の分離法
また、前述の本発明によるキャンディダ・ユティリス酵母内でプロモーター活性をするDNAを分離する方法は、同時に、ARSを含んだプラスミドの安定性を高める機能を有するDNA配列の分離法を提供する。キャンディダ・ユティリスにおけるARSを含むプラスミドの存在様式のひとつの特徴として、その安定性が低く、非選択条件下で約3〜4世代培養することにより、プラスミドを保持する菌体の割合が全体の20〜30%にまで低下する。このため、選択薬剤を含むプレート上においては、薬剤耐性遺伝子を持つARSプラスミドを保持する株は、薬剤耐性遺伝子が染色体上に組み込まれた株と比較して、細胞あたりのコピー数が同じであってもやや小さいコロニーを形成する。本発明においては、活性の高いプロモーター配列を分離するために比較的大きなコロニーを形成する株を選択したために、後記する実施例で示すように分離されたプロモーター活性を有するDNA配列のなかには、同時に、プラスミドの安定性を改善し、より安定にする機能を持つDNA配列も取得することができた。またさらに、当業者にとり、この形質転換系を利用することによって、このほかセントロメア配列など種々の機能を有するDNA配列の取得が可能であることは容易に想到可能と考える。
【0079】
薬剤耐性マーカー遺伝子を含まない形質転換体の作出法
前述の本発明による自律複製能を有するDNA配列の利用により、更に、薬剤耐性マーカー遺伝子を含まない形質転換体の作出法が提供される。具体的には、薬剤耐性マーカー遺伝子を含まない形質転換体は、以下の手順により取得可能である。始めに前記の形質転換体選択のための選択マーカー遺伝子を持たず、染色体DNAと相同な配列(相同DNA配列)を含むプラスミドDNAを、この相同DNA配列内の適当な制限酵素サイトで分解することにより直鎖状とする。これにより、この直鎖状プラスミドDNAはキャンディダ・ユティリス染色体の相同DNA配列上に組み込まれる得るものとなる。その後、この直鎖状プラスミドDNAを、ARSを含むDNA配列と選択マーカー遺伝子とを持つプラスミドと同時に酵母の形質転換に用いる。次にARSを含むプラスミドが導入されたことにより選択される形質転換体のなかから、同時に形質転換に用いたDNA断片が染色体上に組み込まれた株を、DNA断片に含まれる異種遺伝子などの発現をみるか、またはPCR、サザン解析などでDNA断片の組み込みを確認することなどして、二次的に選択する。さらに選択された株に存在する自律複製能プラスミドは、非選択条件下で菌を培養することによって容易に脱落させることが可能である。これにより、選択マーカー遺伝子を保持せず、挿入DNA断片だけを染色体上に保持する株を取得することが可能である。
【0080】
キャンディダ・ユティリス染色体の部位特異的変異法
本発明の別の態様によれば、キャンディダ・ユティリス染色体の部位特異的変異法が提供される。この方法は、選択マーカー遺伝子をターゲット遺伝子に挿入して機能を失わせた遺伝子分断カセットを、染色体のターゲット遺伝子の置換体として使用することに基づく。このカセットは、その両端に染色体ターゲット遺伝子に相同で組換え可能なDNA配列(相同DNA配列)を含み、かつそれらの間に少なくとも1つの選択マーカー遺伝子を含んでなる、線状DNA構造をなすものである。このうち挿入可能なDNA断片は、それが染色体上に存在するときと同じ方向であることが重要である。このカセットを用いて酵母を形質転換することにより、このマーカー遺伝子とその両側に存在する挿入可能なDNA配列とが宿主に取り込まれる。この形質転換の結果として、組み込み部位のターゲット遺伝子が破壊され、新規な形質を有する酵母株が得られる。選択マーカー遺伝子は好ましくは薬剤耐性遺伝子であり、遺伝子が破壊された形質転換体は薬剤耐性により選択できる。遺伝子修飾のターゲットになりうる遺伝子は、キャンディダ・ユティリス染色体由来の遺伝子であるのが好ましい。具体的にはURA3、ADE1、ADE2、HIS4遺伝子などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0081】
例えば、キャンディダ・ユティリスURA3遺伝子を、シクロヘキシミド耐性L41遺伝子などの選択マーカー遺伝子により分断して、機能を持たない遺伝子とした後、形質転換に用いる。得られたシクロヘキシミド耐性の形質転換体は、染色体上のURA3遺伝子2個のうち1個が破壊されている。続いてG418耐性遺伝子など他の選択マーカー遺伝子により分断されたURA3遺伝子断片を用いて、1個のURA3遺伝子が破壊された前記株を形質転換することにより、URA3遺伝子が2個とも破壊された株を得ることができる。ura3変異株はウラシル生合成経路中間体の毒性類似体である5−フルオロオロチン酸(5−FOA)に耐性となることが知られている。よって、2個のうち1個のURA3遺伝子が破壊された株を遺伝子置換することで得られた、URA3遺伝子が2個とも機能を失ったura3変異株を、5−FOA耐性株として取得することも可能である。これによって得られるura3変異株を宿主として用いることにより、URA3遺伝子を選択マーカー遺伝子とした、薬剤耐性遺伝子マーカーによらない形質転換体取得も可能になる。さらにこうして得られる栄養要求性変異株は化学的突然変異法により作製された株のように、その他の遺伝子座に生じうる二次突然変異の影響を受ける可能性がきわめて低いという利点を有する。
【0082】
L41遺伝子
本発明によれば、キャンディダ・ユティリスのリボソーム構成蛋白質L41、ならびに、それをコードする遺伝子、そのプロモーター、およびターミネーター配列が提供される。
【0083】
本発明によるキャンディダ・ユティリスの蛋白質L41は、具体的には図14に記載のアミノ酸配列(配列番号:6)を有するものである。従って、本発明によるL41遺伝子は、図14に記載のアミノ酸配列をコードするものである。さらに、この遺伝子と、そのプロモーター、およびターミネーター配列とを含んでなる塩基配列の具体例は、図13(配列番号:5)に示される塩基配列である。
【0084】
また、さらに本発明によれば、部位特異的変異作製法により、56番目のアミノ酸残基がプロリンからグルタミンに変換されたシクロヘキシミド耐性型L41蛋白質をコードする変異型L41遺伝子が提供される。このシクロヘキシミド耐性型L41遺伝子は、前記したように、キャンディダ・ユティリスの形質転換の選択マーカー遺伝子として有用であるほか、他の酵母、たとえばサッカロマイセス属酵母の形質転換マーカー遺伝子としても使用できる。また、さらにこの遺伝子のプロモーター、ターミネーター配列は異種遺伝子の発現にも使用可能であるのは言うまでもない。
【0085】
PGK遺伝子
本発明によれば、また、PGK遺伝子のプロモーター配列、およびターミネーター配列が提供される。
【0086】
プロモーター配列の好ましい具体例としては、図3に記載の塩基配列(配列番号:2)の内、少なくとも946番〜1346番までの配列を有する配列、およびプロモーター活性を保持するその部分配列が挙げられる。
【0087】
また、ターミネーター配列の好ましい具体例としては、図2に記載の塩基配列(配列番号:1)、およびターミネーター活性を保持するその部分配列が挙げられる。
【0088】
このプロモーター配列とターミネーター配列とを適当なプラスミドベクターに接続することにより、キャンディダ・ユティリスで利用可能な発現ベクターを得ることができる。このためのプラスミドベクターとしてはpBluescript 、pUC19など公知の大腸菌プラスミド、または、シクロヘキシミド耐性型L41遺伝子などの選択マーカー遺伝子と、さらに必要に応じて染色体ターゲット遺伝子に相同で組換え可能なDNA配列とを含む酵母−大腸菌シャトルプラスミドが利用できる。また、他の宿主細胞、特にサッカロマイセス属酵母、においても、プロモーター、またはターミネーターとして利用することも可能であることは当業者に明らかであると考える。
【0089】
PGK遺伝子は解糖系酵素の遺伝子であり、その他の解糖系酵素の遺伝子と共にキャンディダ・ユティリスで大量に発現していることから、強力なプロモーターであることが期待される。後記する実施例では、作製した発現ベクターを用いて異種遺伝子であるグルコアミラーゼ遺伝子、アミノグリコシドホスフォトランスフェラーゼ遺伝子、βガラクトシダーゼ遺伝子などの発現に、このプロモーターが有利に利用できることが明らかにされている。
【0090】
また、本発明によるPGK遺伝子プロモーター配列とターミネーター配列とに連結した遺伝子の発現量が減少しなければ、それらの一部を欠損させることによって、発現ベクターを小型化することも可能であることは当業者に自明の事項であろう。
【0091】
GAP遺伝子
本発明によれば、GAP遺伝子のプロモーター配列およびターミネーター配列が提供される。
【0092】
プロモーター配列の好ましい具体例としては、図30に記載の塩基配列(配列番号:7)、およびプロモーター活性を保持するその部分配列が挙げられる。
【0093】
また、ターミネーター配列の好ましい具体例としては、図31に記載の塩基配列(配列番号:8)、およびターミネーター活性を保持するその部分配列が挙げられる。
【0094】
このプロモーター配列とターミネーター配列とを適当なプラスミドベクターに接続することにより、キャンディダ・ユティリスで利用可能な発現ベクターを得ることができる。このためのプラスミドベクターとしてはpBluescript 、pUC19など公知の大腸菌プラスミド、または、シクロヘキシミド耐性型L41遺伝子などの選択マーカー遺伝子と、さらに必要に応じて染色体ターゲット遺伝子に相同で組換え可能なDNA配列とを含む酵母−大腸菌シャトルプラスミドが利用できる。また、他の宿主細胞、特にサッカロマイセス属酵母、においても、プロモーター、またはターミネーターとして利用することも可能であることは当業者に明らかであると考える。
【0095】
GAP遺伝子は解糖系酵素の遺伝子であり、その他の解糖系酵素の遺伝子と共にキャンディダ・ユティリスで大量に発現していることから、強力なプロモーターを有することが期待される。後記する実施例では、作製した発現ベクターを用いて異種遺伝子であるアミノグリコシドホスフォトランスフェラーゼ遺伝子の発現に、このプロモーターが有利に利用できることが明らかにされている。
【0096】
また、本発明によるGAP遺伝子プロモーター配列とターミネーター配列とに連結した遺伝子の発現量が減少しなければ、それらの一部を欠損させることによって、発現ベクターを小型化することも可能であることは当業者に自明の事項であろう。
【0097】
PMA遺伝子
本発明によれば、PMA遺伝子のプロモーター配列、およびターミネーター配列が提供される。
【0098】
プロモーター配列の好ましい具体例としては、図34に記載の塩基配列(配列番号:9)、およびプロモーター活性を保持するその部分配列が挙げられる。
【0099】
また、ターミネーター配列の好ましい具体例としては、図35に記載の塩基配列(配列番号:10)、およびターミネーター活性を保持するその部分配列が挙げられる。
【0100】
このプロモーター配列とターミネーター配列とを適当なプラスミドベクターに接続することにより、キャンディダ・ユティリスで利用可能な発現ベクターを得ることができる。このためのプラスミドベクターとしてはpBluescript 、pUC19など公知の大腸菌プラスミド、または、シクロヘキシミド耐性型L41遺伝子などの選択マーカー遺伝子と、さらに必要に応じて染色体ターゲット遺伝子に相同で組換え可能なDNA配列とを含む酵母ー大腸菌シャトルプラスミドが利用できる。また、他の宿主細胞、特にサッカロマイセス属酵母、においても、プロモーター、またはターミネーターとして利用することも可能であることは当業者に明らかであると考える。
【0101】
PMA遺伝子は原形質膜酵素の遺伝子であり、サッカロマイセス酵母においては原形質膜タンパク質の約10%を占めている主要タンパク質であることが知られている。従って、このPMA遺伝子は、強力なプロモーターを有していることが期待される。後記する実施例では、作製した発現ベクターを用いて異種遺伝子であるアミノグリコシドホスフォトランスフェラーゼ遺伝子の発現に、このプロモーターが有利に利用できることが明らかにされている。
【0102】
また、本発明によるPMA遺伝子プロモーター配列とターミネーター配列とに連結した遺伝子の発現量が減少しなければ、それらの一部を欠損させることによって、発現ベクターを小型化することも可能であることは当業者に自明の事項であろう。
【0103】
プロモーター活性を有するDNA配列
本発明によれば、プロモーター活性を有するDNA配列が提供される。このDNA配列は、自律複製能を有するDNA配列と、転写のためのプロモーター配列を持たない薬剤耐性マーカー遺伝子とを含んでなるベクターを利用して分離される。プロモーター活性を有するDNA配列の好ましい具体例としては、図48に記載の塩基配列(配列番号:13)、およびプロモーター活性を保持するその部分配列が挙げられる。また、後記する実施例で詳述するように、このベクターを利用して、図48に記載の塩基配列が明らかにされたプロモーター活性を有するDNA配列以外に、8種類のDNA配列が取得された。この転写のためのプロモーター配列を持たない薬剤耐性遺伝子を例えばハイグロマイシンB耐性遺伝子など他の遺伝子に置き換えることによっても同様に、プロモーター活性を有するDNA配列を分離できる。また、さらに形質転換体を選択するプレートに含まれる糖の種類や、その他の培地組成など選択条件を変更することにより、ある特異的な条件下で転写活性が誘導されるプロモーターを取得することが可能である。これらのことは、本明細書の開示を参照すれば、当業者に容易に理解される事項であろう。
【0104】
このプロモーター配列を適当なターミネーター配列とともに適当なプラスミドベクターに接続することによりキャンディダ・ユティリスで利用可能な発現ベクターを得ることができる。このためのプラスミドベクターとしてはpBluescript 、pUC19など公知の大腸菌プラスミド、または、シクロヘキシミド耐性型L41遺伝子などの選択マーカー遺伝子と、さらに必要に応じて染色体ターゲット遺伝子に相同で組換え可能なDNA配列とを含む酵母−大腸菌シャトルプラスミドが利用できる。また、他の宿主細胞、特にサッカロマイセス属酵母、においても、プロモーターとして利用することも可能であることは当業者に明らかであると考える。
【0105】
後記する実施例では、作製した発現ベクターを用いて異種遺伝子であるアミノグリコシドホスフォトランスフェラーゼ遺伝子の発現に、このプロモーターが有利に利用できることが明らかにされている。
【0106】
また、本発明によるプロモーター配列に連結した遺伝子の発現量が減少しなければ、それらの一部を欠損させることによって、発現ベクターを小型化することも可能であることは当業者に自明の事項であろう。
【0107】
rRNA遺伝子
本発明によれば、さらに、キャンディダユティリスのrRNA遺伝子を含んでなる、約13.5kbのDNA断片、およびその断片が反復されてなるDNA配列が提供される。
【0108】
この約13.5kbの断片は、図6(b)に示される制限酵素地図で表されるものである。このDNA配列のうち18S、5.8S、25S rRNA遺伝子の位置は図6(b)に示される通りであった。
【0109】
このrRNA遺伝子の一部の領域をDNA断片の染色体組み込みのためのターゲット配列として用いることにより、効率的で多コピーの組み込みが達成される。この約13.5kbのDNA断片を4個の断片に分けてプラスミドを構築し、それぞれ、形質転換に用いたところ、興味あることに、組み込みターゲット配列として使用する領域によって、得られる形質転換頻度に差が認められた。すなわち、図20の18S rRNA遺伝子の3´側一部と5.85rRNA遺伝子、さらに25S rRNA遺伝子の5´側一部を含む3.5kbのEcoRI断片を含むプラスミドpCLRE4、または25S rRNA遺伝子の3´側一部を含む3kbのEcoRI断片を含むプラスミドpCLRE6と18S rRNA遺伝子の5´側一部を含む4.7kbのEcoRI断片を含むプラスミドpCLE7では、高頻度で形質転換体が得られたが、一方、18S rRNA遺伝子を含む2.4kbEcoRI断片を含むプラスミドpCLRE5では得られる形質転換頻度が低かった。
【0110】
URA3遺伝子
本発明によれば、さらにまた、サッカロミセス・セレビシエ酵母のura3変異を相補する、キャンディダ・ユティリスのURA3遺伝子が提供される。この遺伝子は、前記したように、DNA断片の組み込みターゲットとして用いられるほか、染色体URA3遺伝子の遺伝子破壊によるura3変異株の作出に使用できる。これによって得られるura3変異株を宿主として用いることにより、URA3遺伝子を選択マーカー遺伝子とした薬剤耐性遺伝子マーカーによらない形質転換体の取得も可能になる。また、さらにこの遺伝子のプロモーターおよびターミネーター配列は、異種遺伝子の発現にも使用可能であるのは言うまでもない。
【0111】
具体的なURA3遺伝子は、図10および図11に示されるアミノ酸配列(配列番号:4)をコードするものである。好ましいURA3遺伝子は図9に示される塩基配列(配列番号:3)を有するもの、またはサッカロミセス・セレビシエ酵母のura3変異を相補する機能を保持するその部分配列を有するものである。
【0112】
自律複製能を有するDNA配列(ARS)
本発明によれば、自律複製機能を有するDNA配列であって、キャンディダ・ユティリス内で、当該DNA配列を含むベクターを、染色体外要素としてのプラスミドとして保持させ、宿主の形質転換頻度を上昇させることができるDNA配列が提供される。このDNA断片としてはどのような生物由来でも良いが、好ましくはキャンディダ・ユティリス由来である。ARSの好ましい具体例としては、図41および図42に記載の塩基配列(配列番号:11)、あるいは図43および図44に記載の塩基配列(配列番号12)、および自律複製機能を有するその部分配列が挙げられる。後記する実施例から明らかなように、短縮化したDNA断片を含むプラスミドによっても、頻度は低下するものの、キャンディダ・ユティリス酵母を形質転換することができる。
【0113】
このARSと、適当な選択マーカー遺伝子とを使用することにより、キャンディダ・ユティリス内においてプラスミドとして存在し得るベクターが提供される。さらに、このベクターを利用することにより、プロモーター活性を有するDNA配列や、その他の機能を有するDNA配列を分離することが可能である。また、キャンディダ・ユティリス染色体DNAと相同な配列(相同DNA配列)を含み、かつ特に形質転換体を選択するための選択マーカー遺伝子を持たないプラスミドDNAとともに、ARSと適当な選択マーカー遺伝子とを含むプラスミドを形質転換に用いることにより、選択マーカー遺伝子を含まず、異種遺伝子を含むDNA断片のみを染色体上に保持する形質転換酵母の作出が可能である。
【0114】
【実施例】
本発明を以下の実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0115】
なお、各種遺伝子の制限酵素地図における制限酵素サイトについては以下の略号で示してある。
【0116】
Aa;AatII、Af;AflII 、Al;AflIII 、Ap;ApaI、B;BamHI、Bg;BglII、C;ClaI、E;EcoRI、RV;EcoRV、H; HindIII 、Hp;HpaI、K;KpnI、P;PstI、Pv;PvuII、S;SalI、Se;SpeI、Sm;SmaI、Sc;SacI、ScII; SacII、Sp;SphI、X;XbaI、およびXh;XhoIである。
【0117】
また、以下に記載する実施例において共通に使用される方法は以下のとおりである。
【0118】
1)ExoIII ヌクレアーゼ及びマングビーンヌクレアーゼを用いた欠失変異処理とDNA配列の決定
プラスミド10μgを適当な制限酵素消化した後、フェノール/クロロホルムで抽出し、エタノール沈殿によりDNAを回収した。DNAを100μlのExoIII 緩衝液(50mM Tris−HCl pH8.0,100mM NaCl,5mM MgCl2 ,10mM 2−メルカプトエタノール) に溶解し、180ユニットのExoIII ヌクレアーゼを加え、37℃で保温した。1分ごとに10μlをサンプリングし、2サンプル分ずつまとめて、20μlのMBバッファー(40mM Na−Acetate, 100mM NaCl,2mM ZnCl2 ,10%グリセロール pH4.5)の入った氷冷したチューブに移した。得られた5本のチューブを65℃10分間保温して酵素を失活させた後、5ユニットのマングビーンヌクレアーゼを加えて、37℃で30分間反応した。反応後、アガロースゲル電気泳動により欠失の程度が異なる5種類のDNA断片を回収した。回収したDNAはクレノウ酵素で末端を平滑化し、16℃で一晩ライゲーション反応した後、大腸菌を形質転換した。
【0119】
得られた種々のプラスミドの挿入断片について、アプライドバイオシステムズ(株)の蛍光プライマーサイクルシークエンスキットを用いてシークエンス反応を行い、自動DNAシークエンサーを用いてDNA配列を決定した。
【0120】
2)ハイブリダイゼーション
DNAはアガロースゲル電気泳動後、ハイボンドN+フィルター(Amersham)に、添付のプロトコールにしたがってアルカリトランスファーして、サザンハイブリダイゼーション用のフィルターを作製した。
【0121】
DNAが固定化されたフィルターは、ハイブリダイゼーション溶液(6xSSC,5xDenhardt Solution,0.2% SDS,20μg/ml Salmon sperm DNA)中で65℃、2時間プレハイブリダイゼーションを行った。次にMegaprime DNA labelling systems (Amersham)と[α−32P]dCTP(110TBq/mmol)とを用いて標識化したプローブDNAを、ハイブリダイゼーション溶液に加え、65℃で16時間ハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーション後、フィルターは1xSSC,0.1%SDS中で、65℃、2時間洗浄した後、オートラジオグラフィーに供してシグナルを検出した。
【0122】
3)培地組成
酵母を培養するためのYPD培地の組成は1%酵母エキス、2%バクトペプトン、2%グルコースであり、プレートの場合は寒天を2%になるように加えた。SD培地の組成は、0.67%アミノ酸不含イーストニトロジェンベース、2%グルコースであり、使用した酵母の栄養要求性に応じて、アミノ酸を添加した。プレートの場合は寒天を2%になるように加えた。
【0123】
4)酵素処理
制限酵素反応、クレノウ酵素処理、T4DNAリガーゼ反応など、種々の酵素による反応は、メーカーの推奨する反応条件、あるいはMolecular Cloning 2nd edition Sambrook et al. Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989) に記載の方法に従って行った。
【0124】
実施例1:キャンディダユティリス染色体DNAの調製
キャンディダ・ユティリス(Candida utilis)の染色体DNA抽出は、以下に示す方法で行った。30mlのYPD培地に、キャンディダ・ユティリスATCC9950株を植菌し、30℃で定常期初期になるまで培養した。遠心分離により菌体を集めて滅菌水で洗浄した後、再度遠心分離により集菌した。菌体は3mlのザイモリアーゼバッファー(0.9Mソルビトール、0.1M EDTA、50mM DTT、pH7.5)に懸濁した後、25mg/mlのザイモリアーゼ100Tを含む0.9Mソルビトールを200μlを加え、37℃で振とう保温した。顕微鏡下でプロトプラスト化を確認した後、遠心分離してプロトプラスト化した菌を回収した。3mlの溶菌バッファー(50mM Tris−HCl、50mM EDTA、pH8.0)を加え、穏やかに、かつ十分に懸濁してから0.3mlの10%SDSを混合し、65℃で一夜保温した。続いて1mlの5M酢酸カリウム液を加え、氷上で1時間放置した。その後遠心分離により凝集物を除き、4mlの冷却したエタノールを加え、遠心分離してDNA等を沈殿させた。沈殿は50%のエタノールで洗浄し、乾燥した後、3mlのRNase Aバッファー(10mM Tris−HCl、1mM EDTA、50μg/ml RNase A、pH7.5)に溶解して、37℃で30分保温した。最後に3mlの2−プロパノールを加え、遠心分離して上清を除いた後、沈殿を50%の2−プロパノールで洗浄し、乾燥させた。この沈殿を0.5mlのTEバッファーに溶解したものをキャンディダ・ユティリス染色体DNA試料とした。
【0125】
実施例2:ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)遺伝子のクローニング
キャンディダ・ユティリス染色体DNAを制限酵素Sau3AIで部分消化した後、0.8M NaCl、20mM Tris−HCl、10mM EDTA(pH8.0)を含む10−50%ショ糖密度勾配に重層して、120,000 x g、14時間の遠心分離によりDNA断片を分画した。このうち10〜20kbの染色体DNA断片と、BamHI消化した後脱リン酸化したλファージベクターDASHTMII(Stratagene Cloning Systems)とを、T4DNAリガーゼにより一晩連結した。続いてGigapackII Gold Packaging Extract(Stratagene Cloning Systems) を用いてインビトロパッケージングし、キャンディダユティリス染色体DNAライブラリーを構築した。
【0126】
キャンディダ・ユティリスのPGK遺伝子のクローニングは、他生物の既知のPGK遺伝子をプローブとしたハイブリダイゼーション法を用いて行った。すなわち、Molecular Cloning 2nd edition Sambrook et. al. p2.108-121,Cold Spring Harbor Laboratory (1989) に記載された方法に従い、上記のDNAライブラリーの約20,000プラークのファージDNAを吸着させたフィルターを作製した。次に、サッカロマイセス・セレビシエのPGK遺伝子を保持するプラスミドpST2(Yamano et. al. Journal of Biotechnology.32, 165-171(1994)) からPGK遺伝子を含むDNA断片を、2kbのClaI断片として切り出した。この断片を32P標識して、これをプローブとしてハイブリダイゼーションを行った。その結果4つの陽性プラークが分離できた。更にこれらプラークから調製したファージDNAについてさまざまな制限酵素で消化後、同じプローブを用いてサザン解析を行った。その結果、プローブにハイブリダイズした2.6kb EcoRI断片と2.5kb SalI断片を単離した。
【0127】
実施例3:PGK遺伝子を含むDNA断片の塩基配列決定と、構造遺伝子及び制御領域の特定
単離した2.6kb EcoRI断片を、プラスミドベクターBluescriptIISK+ のEcoRIサイトに組み込み、ベクターに対する挿入断片の方向性が互いに逆向きのプラスミドpPGKE1、pPGKE2を作製した。また、2.5kbSalI断片を同様にベクターBluescriptIISK+ のSalIサイトに組み込み、ベクターに対する挿入断片の方向性が互いに逆向きのプラスミドpPGKS1、pPGKS2を作製した(図1)。
【0128】
このうち、プラスミドpPGKE1、pPGKE2の2種のプラスミドについて、HindIII 、KpnI、SalIなどの制限酵素サイトでの欠失変異体の作製や、ExoIII ヌクレアーゼ及びマングビーンヌクレアーゼを用いて欠失変異体を作製することにより、種々の欠失変異をもつプラスミドを作製し、2530bpからなるEcoRI断片の配列を決定した。
【0129】
予想される構造遺伝子領域の解析を行ったところ、1248bpからなるオープンリーディングフレームが存在し、そこから推定される遺伝子産物のアミノ酸配列についてサッカロマイセス・セレビシエのPGK遺伝子に対するホモロジーを調べた。両配列は互いに86.8%のホモロジーを示したことから、単離した遺伝子がキャンディダ・ユティリスのPGK遺伝子であると断定した。
【0130】
またこのEcoRI断片には、遺伝子制御領域については、開始コドンATGの上流401bp、終止コドンTAAの下流880bpが含まれていた。このうち、転写のターミネーターを含むと推測される終止コドンTAAの直後からEcoRIサイトまでの880bpの配列は図2に示される通りであった。またさらに、プラスミドpPGKS1、pPGKS2についても、ExoIII ヌクレアーゼ及びマングビーンヌクレアーゼを用いた欠失変異体作製により種々の欠失変異をもつプラスミドを作製し、HindIII サイトからEcoRIサイトまでの塩基配列を決定した(図1)。転写のプロモーターを含むと推測されるHindIII サイトから開始コドンATGの直前までの1346bpの配列は図3に示される通りであった。
【0131】
実施例4:PGK遺伝子プロモーターとターミネーターとを使った発現ベクターの構築
キャンディダ・ユティリス内で異種遺伝子を発現させるためには、キャンディダ・ユティリス内で機能する遺伝子発現因子、転写プロモーター及びターミネーターが必要となる。そこで、キャンディダ・ユティリスのPGK遺伝子プロモーターと、ターミネーターとの間に、マルチクローニングサイトを持つ発現ベクタープラスミドを作製した。
【0132】
まず、Polymerase Chain Reaction (PCR)によリ、プロモーターとターミネーターとを含む断片をそれぞれ取得した(図1)。
【0133】
プロモーターとしては、プラスミドpPGKS1を鋳型として、開始コドンの2.3kb上流に位置するSalIサイトから開始コドンATG直前までの断片を取得した。プライマーとして、
5'-GGTCGACATATCGTGGTAAGCGCCTTGTCA-3' (配列番号:14)
5'-TTCTAGACTTTATCCGCCAGTATGTTAGTC-3' (配列番号:15)
を用い、3’下流側開始コドン直前にXbaI部位をもつ様にデザインして合成した。
【0134】
次に、ターミネーターとしては、プラスミドpPGKE1を鋳型として、終止コドン直後から880bp下流のEcoRIサイトまでの断片を取得した。プライマーとして、
5'-GGGTACCTAACTGCAAGCTACTTTGTAATTAAC-3' (配列番号:16)
5'-GGAATTCAACATGAATGACACGACGAAGGT-3' (配列番号:17)
を用い、5’上流側終止コドン直後にKpnIサイトをもつ様にデザインし合成した。
【0135】
PCRプロセスは、PfuDNAポリメラーゼ(Stratagene Cloning Systems)を使い、添付のバッファーを使用して、30サイクル行った。
【0136】
PCR合成したプロモーター及びターミネーター断片は、それぞれSalIとXbaI、またはKpnIとEcoRIで消化した。その断片を、pUC19のSalI−XbaIサイトとKpnI−EcoRIサイトとに順に組み込み、プラスミドpPGKPT1を構築した(図4)。続いて、ターミネーター下流末端のEcoRIサイトをクレノウ酵素処理により平滑化した後、NotIリンカー(5'AGCGGCCGCT3´:配列番号:18)を連結してから、PstI消化により約0.9kbのPstI−NotI断片を切り出した。この断片を、プラスミドpPGKS1から切り出した1.2kbHindIII −PstI断片と共に、pBluescriptSK-のHindIII サイトとNotIサイトとの間に挿入して、プラスミドpPGKPT2を構築した。さらに、pPGKPT2をBglII消化して、クレノウ酵素処理、そして再環状化することにより、ターミネーター断片中のBglIIサイトを除去して、プラスミドpPGKPT3を構築した。続いてpPGKPT3のHindIII サイトをクレノウ酵素処理により平滑化した後、NotIリンカー(5'AGCGGCCGCT3':配列番号:18)を連結して、プラスミドpPGKPT4を構築した。また、プラスミドpPGKPT4をKpnIで部分消化して、プロモーター上流のKpnIサイトを欠失させて、プラスミドpPGKPT5を構築した(図4)。
【0137】
実施例5:rRNA遺伝子の単離
実施例2に記載の庶糖密度勾配遠心分離によって得られた、キャンディダ・ユティリスATCC9950のゲノムDNAのSau3AI部分消化断片のうち、5〜10kbの分画のDNA断片400ngと、BamHI消化した後脱リン酸化したベクタープラスミドpBR322、200ngとを、T4DNAリガーゼにより一晩連結した。このDNA溶液を用いて大腸菌DH5を形質転換して、キャンディダ・ユティリス染色体DNAライブラリーを完成した。
【0138】
このうち約10,000コロニーについて、 Molecular Cloning 2nd edition Sambrook et. al. p12.21-23, Cold Spring Harbor Laboratory (1989)に従ってフィルターを作製し、サッカロミセス・セレビシエの18S rRNA遺伝子を含む1.8kbのHindIII −EcoRI断片を32P標識し、これをプローブとしてスクリーニングを行った。このプローブとして用いたrDNA断片は、サッカロマイセス・セレビシエS288C[α,suc2,mal,gal2,CUP1]より作製した染色体DNAライブラリーから、5.8S rRNA遺伝子の5´末端の4〜32番目の塩基に対応するオリゴマーを32P標識したものをプローブとして取得したものである(曽根ら、特公平6−14865号公報)。
【0139】
その結果、200個以上のポジティブクローンが得られた。このうち7個のクローンpCR1、pCR4、pCR5、pCR6、pCR7、pCR8、およびpCR9についてプラスミドの制限酵素地図を作製し、整列させ比較したところ、両端の制限酵素地図が一致した(図5)。このことから、キャンディダ・ユティリスのrRNA遺伝子を含む領域が、約13kbからなる繰り返し構造をとっていることが明らかとなった。
【0140】
これらのプラスミドより、EcoRIまたはXbaI消化により切り出される断片をpBluescriptSK-にサブクローン化して、プラスミドpCRE1、pCRE2、pCRE3、pCRX1、pCRX2、pCRX3、およびpCRX4を構築した(図6(a))。さらに、これらのプラスミドをさまざまな制限酵素により消化した後、再環状化することにより、各種の欠失プラスミドを構築した。これらプラスミドの挿入断片について図6に矢印で示した領域について塩基配列を決定したところ、18S、5.8S、および25S rRNA遺伝子に高いホモロジーを示す領域が認められ、これによって3つのrRNA遺伝子の存在位置、転写方向などが明らかとなった(図6(b))。
【0141】
実施例6:オルチジン−5´−フォスフェート デカルボキシラーゼ遺伝子 (URA3遺伝子)の単離
実施例2に記載の庶糖密度勾配遠心分離によって得られた、キャンディダ・ユティリスATCC9950のゲノムDNAのSau3AI部分消化断片の内、5〜10kbの分画のDNA断片100ngと、BamHI消化した後脱リン酸化したベクタープラスミドYEp13(Methods in Enzymol. 194, 195-230, 1991)100ngとを、T4DNAリガーゼにより一晩連結した。このDNA溶液を用いて大腸菌DH5を形質転換して、染色体DNAライブラリーを作製した。形質転換体よりプラスミド混合物を抽出後、得られたDNAでura3−株であるサッカロマイセス・セレビシエYPH500(αhis3,trp1,leu2,ade2,lys2,ura3)(Stratagene Cloning Systems)を形質転換し、最少培地で生育するウラシル非要求性の形質転換株を選択した。サッカロマイセス・セレビシエ株の形質転換はMethods in Yeast Genetics - A laboratory Course Manual - Rose M.D et al.P122-123Cold Spring Harbor Laboratory Press NY (1990) 記載のリチウム法に従った。
【0142】
この方法により10μgのDNAから、5株のUra+ 株が得られた。これら形質転換株より、Methods in Yeast Genetics - A laboratory Course Manual - Rose M.D et al. P130 Cold Spring Harbor Laboratory Press NY (1990)記載の方法に従いプラスミドDNAを調製した。これで大腸菌を形質転換してプラスミドDNAを回収した。これらのプラスミドDNAのうち、YEp13のBamHI部位に6.1kbのインサートを含むプラスミドpCURA3−3と、8.1kbのインサートを含むpCURA3−5とについて、制限酵素地図を作製した。その地図は図7に示される通りである。
【0143】
実施例7:URA3遺伝子領域の特定化と塩基配列の決定
URA3遺伝子領域を特定化するために、プラスミドpCURA3−3とpCURA3−5に共通する領域を含む5kbのEcoRI断片を、プラスミドpCURA3−5より切り出し、プラスミドpRS314(Stratagene Cloning Systems) のEcoRI部位に連結して、プラスミドpURAE1を作製した(図7)。このプラスミドでYPH500株をリチウム法により形質転換したところ、高頻度でURA+ の形質転換体が得られた。これより、この5kbのEcoRI断片中にURA3遺伝子が存在し、1コピーでサッカロマイセス・セレビシエのura3- 変異を相補することが明らかにされた。
【0144】
次に、プラスミドpURAE1をXhoI、またはPstI消化して、再びT4リガーゼ反応により再環状化することにより、プラスミドpURAE1ΔXho、およびpURAE1ΔPstを得た。
【0145】
さらにプラスミドpURAE1より切り出された3.5kbのEcoRI−ClaI断片、および2.3kbのHindIII 断片を、それぞれプラスミドpRS314のEcoRI−ClaI間、およびHindIII 部位に挿入して、プラスミドpURAEC1、およびpURAH1を作製した(図7)。
【0146】
以上、5種類のプラスミドを用いてYPH500株をリチウム法により形質転換し、ura3- 変異の相補能を調べることにより、これらの断片がURA3遺伝子を含むかどうかを調べた。その結果は、図7に示される通りであった。これより、URA3遺伝子をEcoRI−HindIII 間の2.3kbに限定することができた。
【0147】
さらにURA3遺伝子を含む2.3kbのHindIII 断片を、プラスミドpBluescript SK- のHindIII 部位に連結して、プラスミドpURAH2を作製した。つぎに挿入断片の両側からExoIII ヌクレアーゼおよびマングビーンヌクレアーゼを用いた欠失変異作製法により、種々の欠失変異をもつプラスミドを作製し、塩基配列を決定した。そのシークエンスストラテジーと塩基配列の解析から明らかにされた制限酵素地図は、図8に示される通りであった。また、得られた2330bpからなるDNA配列は図9に、また推定される267アミノ酸残基からなるポリペプチドのアミノ酸配列は図10および図11に示される通りである。
【0148】
推定されたポリペプチドのアミノ酸配列を他の酵母のURA3蛋白質と比較したところ、サッカロマイセス・セレビシエとでは73.4%、クルイベロマイセス・ラクティスとでは76.3%、キャンディダ・アルビカンスでは75.1%と、高い相同性を示した。
【0149】
実施例8:L41遺伝子のクローニングとL41遺伝子を含むDNA断片の塩基配列決定
実施例5で作製したライブラリーの約30,000コロニーについて、Molecular Cloning 2nd edition p12.21-23,Cold Spring Harbor Laboratory (1989) に従ってフィルターを作製し、32P標識したキャンディダ・マルトーサのL41遺伝子RIM−Cを含む、1.1kbのXbaI−Sau3AI断片(KAWAI et. al. J Bacteriol. 174, 254-262 (1992))をプローブとしてスクリーニングを行った。
【0150】
その結果、5個のポジティブクローンが得られ、このうち3個のクローンpCL41−1、pCL41−2、およびpCL41−5について制限酵素地図を作製し、それを比較したところ、これらのクローンが4kbのEcoRI断片を共有することが示された(図12)。さらにこれらプラスミドDNAのサザンハイブリダイゼーション解析により、キャンディダ・マルトーサのL41遺伝子に相同性を示す領域が、この4kbのEcoRI断片内の1.4kbClaI−PstI断片内にあることが示された。
【0151】
そこで4kbのEcoRI断片を、pBluescript SK- のEcoRIサイトに挿入し、挿入断片が互いに逆向きのプラスミドpCLE1、およびpCLE2を作製した。この2種のプラスミドについてEcoRI断片内にサイトをもつHindIII 、XhoI、ClaIなどによる欠失変異体の作製や、ExoIII ヌクレアーゼおよびマングビーンヌクレアーゼを用いた欠失変異体の作製により、種々の欠失変異をもつプラスミドを作製し、BamHIサイトからSacIサイトまでの2086bpからなるDNA配列を決定した(図13)。
【0152】
この配列を解析すると、サザン解析によりL41造遺伝子が存在すると推定された領域に367bpのイントロンで分断された318bpからなるオープンリーディングフレームが存在した(図12および図14)。イントロンと推定された領域の5´と3´端および3´端近傍にはイントロンに共通する配列GTATGT--TACTAAC--AG が認められた。また、その位置も報告されている他の酵母由来の6種類のL41遺伝子(KAWAI et. al. J Bacteriol. 174, 254-262 (1992)、POZO et. al. Eur. J. Biochem. 213, 849-857 (1993) )と同様、開始コドンの直後に存在していた。キャンディダ・ユティリスL41ポリペプチドの推定されるアミノ酸配列を他のいくつかのL41蛋白質と比較したところ、サッカロマイセス・セレビシエL41aとの間では93.4%、キャンディダ・トロピカリスL41との間では89.6%、キャンディダ・マルトーサのL41との間では85.8%と、高い相同性を示した。
【0153】
実施例9 部位特異的変異法によるシクロヘキシミド耐性型L41遺伝子の作製
シクロヘキシミド耐性を示す酵母のL41蛋白質の56番目のアミノ酸はグルタミンであり、一方、シクロヘキシミド感受性酵母のL41蛋白質においてはこの位置のアミノ酸はプロリンである。そしてこのアミノ酸残基がそのL41蛋白質をもつ酵母のシクロヘキシミドに対する感受性を決定していると報告されている(KAWAI et. al. J Bacteriol. 174 254-262 (1992) )。ここで、シクロヘキシミド感受性であるキャンディダ・ユティリスのL41蛋白質の56番目のアミノ酸はシクロヘキシミド感受性のサッカロマイセスセレビシエと同様にプロリンであった。そこで、部位特異的突然変異導入によりL41遺伝子の56番目のプロリンをコードするコドンをグルタミンコドンに変更することによって、この遺伝子がコードするL41蛋白質をシクロヘキシミド耐性型へと変換し、形質転換の選択マーカーとして利用した。
【0154】
まず、プラスミドpCLE1から得られる2.1kbのBamHI−SacI断片をpUC18のBamHI−SacIサイト間に挿入して、プラスミドpCLBS1を作製した(図15)。
【0155】
また、プラスミドpCLE1をAflII消化し、クレノウ酵素処理により平滑化した後、さらにXhoI消化することによって得られる0.6kbの断片を、pBluescript SK- のSmaIとXhoI間に挿入して、pCLAX1を作製した。このプラスミドにおいては、0.6kb断片の平滑化されたAflII末端とベクターのSmaI末端とのライゲーションにより、AflII切断部位が再生される。ヘルパーファージを用いてpCLXA1から一本鎖DNAを調製し、合成した変異用オリゴヌクレオチド5'TTG TGG AAA ACT TGC TTG GTT TGA3' を用いて、Sculptorインビトロミュータジェネシスキット(Amersham)により、変異プラスミドを作製した。得られた候補プラスミドについて0.6kb挿入断片の全塩基配列を決定し、56番目のプロリンをコードするコドンCCA がグルタミンのコドンCAA に変異され、その他の配列に変異のないプラスミドpCLAX20を得た。pCLAX20から0.6kbの挿入断片をClaI−AflII断片として切り出し、これと、プラスミドpCLBS1をClaIとAflIIと消化して得られる4.4kbの断片とライゲーションして、変異型L41遺伝子を含むプラスミドpCLBS10を構築した。
【0156】
また、プラスミドpCLBS10をBamHIとSphIとで消化して、T4DNAポリメラーゼ処理により平滑末端とした後、NotIリンカー(5'AGCGGCCGCT3')を挿入して、プラスミドpCLBS12を構築した(図15)。
【0157】
次に、作成した変異型L41遺伝子が酵母にシクロヘキシミド耐性を付与するかどうかを調べた。YEp型ベクターであるYEp13K(Sone et. al. Appl. Environ. Microbiol. 54, 38-42 (1988))のBamHI−SacIサイト間に、プラスミドpCLBS10から得られる2.1kbの変異型L41遺伝子を含むBamHI−SacI断片を挿入して、プラスミドpYECL10を作製した。一方、コントロールとしてpCLBS1から得られる2.1kbの野生型L41遺伝子を含むBamHI−SacI断片をYEp13Kにクローン化したプラスミドpYECL1を作製した。
【0158】
これらのプラスミドを用いてサッカロミセス酵母YPH500株をMethods in Yeast Genetics - A laboratory Course Manual - Rose M.D et al. P122-123 Cold Spring Harbor Laboratory Press NY (1990) 記載の酢酸リチウム法に従って形質転換した。形質転換体として、ロイシン非要求性になった株を選択した。これらの形質転換体についてシクロヘキシミドを含むYPDプレートでの生育を調べたところ、pYECL10を保持する株は、50および100μg/mlのシクロヘキシミドを含むYPDプレートで増殖することが示された。一方、pYECL1を保持する株は同濃度のシクロヘキシミドを含むプレート上ではまったく増殖しなかった。これによって、作成した変異型L41遺伝子がシクロヘキシミド感受性酵母に耐性を付与することが示された。
【0159】
実施例10:形質転換用プラスミドの構築とキャンディダユティリス形質転換条件の決定
始めにサッカロマイセス・セレビシエで機能することが既に明らかにされているG418耐性遺伝子(アミノグリコシドフォスフォトランスフェラーゼ(APT)遺伝子)の発現カセットを含むプラスミドを用いて、キャンディダ・ユティリスATCC9950株の形質転換を試みた。この発現カセットは、Yamanoらの記載した1.0kbのグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーター領域、0.4kbのホスホグリセレートキナーゼ遺伝子のターミネーター領域 (Yamano et al. J. Biotechnol. 32, 165-171(1994))の間に、プラスミドpUC4K (Pharmacia)からXhoI−PstI断片として切り出される、1.1kbG418耐性遺伝子を平滑末端化して連結して作製したものである。このプラスミドとしては、(1) 上記発現カセットをYEp型ベクターYEp13K(Sone et.al. Appl. Env. Microbiol., 54, 38-42 (1998) )連結したプラスミド、および(2) 上記発現カセットをプラスミドpBluescript SK- に連結したプラスミドpGPDAPH1のBamHIサイトに実施例2に記載のキャンディダ・ユティリスATCC9950株のSan3AI部分消化染色体DNA断片(5−10kb)を挿入したDNAライブラリー、さらに(3) サッカロマイセス・セレビシエで機能するARS配列を含むpGPDAPH1プラスミドの8種類を用いた。(3) のプラスミドは、(2) のライブラリーでサッカロマイセス・セレビシエYPH500を形質転換して得られた酵母コロニーから単離したプラスミドである。これらのプラスミドあるいはライブラリーDNAを用いて抵抗値、電圧をさまざまに組み合わせた電気パルス法、あるいは酢酸リチウム法によりキャンディダ・ユティリスATCC9950株の形質転換を試みた。しかしなから、G418耐性を示すコロニーは得られなかった。
【0160】
次に、実施例9記載のプラスミドpCLBS10(図15)のEcoRIサイトとXbaIサイトに、実施例5で示したプラスミドpCRE2、pCRE3、pCRX1、およびpCRX2(図6)からそれぞれEcoRIまたはXbaIにより切り出される4種類のrDNA断片を挿入して、プラスミドpCLRE2、pCLRE3、pCLRX1、およびpCLRX2を構築した(図16)。
【0161】
これらシクロヘキシミド耐性遺伝子を選択マーカーとするプラスミド4種類、およびプラスミドpCLBS10のBamHI部位に、キャンディダ・ユティリスATCC9950株の染色体DNAのSau3AI部分消化DNA断片(5−10kb)を挿入して作製したライブラリーDNAを用いて、抵抗値、電圧をさまざまに組み合わせた電気パルス法、あるいは酢酸リチウム法により、キャンディダ・ユティリスATCC9950株の形質転換を試みた。しかしながら、これらのプラスミドを閉環状のまま用いた場合は形質転換体は得られなかった。この形質転換実験において、弱いシクロヘキシミド耐性、またはG418耐性を示す偽耐性コロニーの出現が観察された。この偽耐性コロニーとは、低濃度のG418やシクロヘキシミドなど抗生物質を添加したプレートで形質転換体を選択する場合にしばしば観察される、選択マーカーの薬剤耐性遺伝子の存在によらず自発的に耐性を獲得するコロニーである。
【0162】
この実験のなかで、シクロヘキシミドを形質転換体の選択に用いる場合、YPDプレートのシクロヘキシミド濃度を40μg/mlとすること、そしてプレートのインキュベーション温度を30℃ではなく28℃とすることで、偽耐性コロニーの出現を抑えられることがわかった。そこで、プラスミドDNAの染色体への組み込みを促進するために、プラスミドpCLRE2、pCLRX1、およびpCLRX2について、DNAのrRNA遺伝子領域内の制限酵素サイトのそれぞれBglII、EcoRV、BglIIでプラスミドを消化してから、形質転換実験に用いた。その結果、BglII消化したプラスミドpCLRE2およびpCLRX2について、電気容量を25μFとし、抵抗値を600オーム、電圧を5KV/cmとすることにより、シクロヘキシミド耐性株を得ることができた。これらの耐性株は、プラスミドDNAを添加しないコントロール実験でまれに得られる微小な偽耐性株に比べて明らかにサイズが大きく、また実施例12に示すサザン解析により形質転換体であることが明らかにされた。
【0163】
次に形質転換の最適条件を見いだすために、BglII消化したプラスミドpCLRE2を用いて、電気容量を25μFに固定し、抵抗値、電圧をさまざまに組み合わせて電気パルスの最適条件を検討した。結果は図17に示される通りであった。図には、パルス後の生菌率と、得られたシクロヘキシミド耐性株数とが示されている。
【0164】
この結果から、電気容量が25μFで抵抗値が600、800、または1000オーム、電圧が3.75、または5KV/cmの条件で、1μgDNAあたり約500−1400個という高い頻度で形質転換体が得られることが分かった。これらの条件下でのパルス後の生菌率は約10−40%であった。また、抵抗値が200、または400オームでも生菌率が40%以下になる条件はあるが、高い形質転換頻度は得られなかった。抵抗値が200、または400オームではタイムコンスタント (電圧が最大値の約37%にまで減衰するまでの時間)が10ミリ秒以下であり、600、800、または1000オームで、パルス後の生菌率が約10−40%となる条件では、タイムコンスタントが約10から20ミリ秒であった。以上のことから、パルス後の生菌率が約10−40%となり、かつタイムコンスタントが10ミリ秒以上である電気パルスを菌に与えることが高い形質転換頻度を得るために重要であることが示唆された。
【0165】
また、電気パルスを加えた後、菌液に1Mソルビトールを含むYPD培地を加え、30℃で振盪培養することが好ましく、培養せずに菌を直接シクロヘキシミドを含む選択プレートに塗布するとコロニーが得られなかった。
【0166】
また、生菌数と形質転換体数の変化を経時的に調べてそれらの増加率を比較することにより、最適培養時間を決定した。
【0167】
その結果、培養時間が6時間までは形質転換体の増加が生菌数の増加率を上回るが、それ以後は生菌数と形質転換体数が同じ割合で増加することが明らかにされ、培養時間は6時間が最適であることが示された。
【0168】
キャンディダ・ユティリスATCC9950株の電気パルスによる標準的な形質転換法は実施例11に示される通りである。
【0169】
実施例11:電気パルスによるキャンディダ・ユティリス株の形質転換法
YPDプレート上のコロニーを、5mlのYPD液体培地で、30℃、約8時間振盪培養した後、200mlのYPD液体培地にOD600 =0.0024になるよう植菌して30℃振盪培養する。約16時間後、対数増殖期(OD600 =2.5)にまで菌体が増殖した後、1400 x gで5分間の遠心分離により集菌する。菌体は100mlの氷冷した滅菌水で1回、続いて40mlの氷冷した滅菌水で1回洗浄した後、氷冷した1Mソルビトール40mlで1回洗浄する。菌体を10mlの1Mソルビトールに懸濁した後、滅菌ポリプロピレンチューブに移し、再度1100 x gで5分間の遠心分離により集菌する。上清を除いた後、最終菌体液量が2.5mlになるよう氷冷した1Mソルビトールに懸濁する。
【0170】
電気パルスによる形質転換実験はバイオラッド社のジーンパルサーを用いて行なう。50μlの菌液と5μlのDNA試料とを混合した後、0.2cmのディスポーザブルキュベットに入れ、適当な条件の電気パルスを加える。パルス後、1mlの氷冷した1Mソルビトールを含むYPD培地を加え、滅菌ポリプロピレンチューブに移した後、30℃で約6時間振盪培養する。培養後、菌液を40μg/mlのシクロヘキシミドを含むYPD選択培地に塗布した後、プレートを28℃で3−4日保温して、形質転換体コロニーを得る。
【0171】
実施例12:サザン解析による形質転換体におけるプラスミドの検出
実施例10で得られたシクロヘキシミド耐性株のうち7個についてサザン解析を行い、これらのクローンがプラスミドDNAを保持するかどうかを調べた。染色体DNAの調製は、Methods in Yeast Genetics - A laboratory Course Manual - Rose M.D et al. P131-132 Cold Spring Harbor Laboratory Press NYに記載の方法に従った。調製したDNAはEcoRVあるいはSalIにより消化し、32P標識したL41遺伝子を含む1.8kbのBamHI−HindIII 断片(図12)をプローブとしてハイブリダイゼーションを行った(図18)。
【0172】
この結果、EcoRV消化により、内在性のL41遺伝子に由来する5kbのバンドのほかに、20kb以上のバンドが検出された。EcoRVはrRNA遺伝子座を切断するが、プラスミドpCLRE2はEcoRVで切断されないことから、プラスミドが染色体に組み込まれたことにより、この20kb以上のバンドが検出されたものと考えられた。また、キャンディダ・ユティリス1細胞あたりのL41遺伝子のコピー数が2であることは実施例15のサザン解析により示されているので、デンシトメーターによるスキャニングの結果から組み込まれたプラスミドDNAのコピー数は、およそ、6コピー(レーン7)から15コピー(レーン2)であることが示された。
【0173】
一方、SalIはプラスミドpCLRE2を1箇所消化するが、染色体DNAをSalI消化した場合、内在性のL41遺伝子に由来する7.5kbのバンドのほかにプラスミドpCLRE2の長さに相当する8.5kbのバンドが検出された。これは、プラスミドが染色体に複数個タンデムに組み込まれたことにより、SalI消化によってとなりあうプラスミドから生じたものであると考えられた。
【0174】
このほか10個以上のシクロヘキシミド耐性株についてサザン解析を行なったところ、すべてのクローンでプラスミドDNAの存在が確認され、実施例10の形質転換実験で得られたシクロヘキシミド耐性株が形質転換体であることが証明された。
【0175】
実施例13:その他のキャンディダ・ユティリス株の形質転換
キャンディダ・ユティリスは株によってその染色体泳動パターンが異なり、染色体の長さの多型性を示すことが報告されている(Stoltenburg et. al. Curr. Genet. 22 441-446(1992)) 。よって、株による遺伝的性質や、それによる形質転換頻度の違いも予想されることから、ATCC9950株以外にも、ATCC9226株、ATCC9256株について実施例11に示した電気パルス法による形質転換を試みた。
【0176】
パルス条件は電気容量を25μF、抵抗値を1000オームとし、電圧を2.5−6.25KV/cmとして行った。プラスミドDNAはBglII消化したpCLRE2を2μg用いた。
【0177】
その結果は表1に示される通りであった。株によって頻度の差は認められたもののいずれの株でもシクロヘキシミド耐性コロニーが得られた。
【0178】
そこで、得られたATCC9226株、ならびにATCC9256株由来のシクロヘキシミド耐性株それぞれ4株づつ計8株、および対照としてATCC9950株由来のシクロヘキシミド耐性株2株について、染色体DNAを調製してBglII消化した後、32P標識したL41遺伝子を含む1.8kbのBamHI−HindIII 断片(図12)をプローブとして、サザン解析を行った。
【0179】
結果は図19に示される通りであった。いずれの株においても染色体上のL41遺伝子に由来する5.4kbのバンドの他に、プラスミドDNA由来のバンドが認められた。これより、これら耐性株がプラスミドDNAを保持する形質転換体であることが示された。
【0180】
また、ATCC9226株とATCC9256株由来の形質転換体については、クローンによってプラスミドDNAサイズと同じ8.4kbのバンド以外に高分子側にバンドが認められた(レーン2−4、および7)。これは、プラスミド上のrDNA配列が組み込みターゲットである染色体上のrDNA配列と異なる場合、染色体に組み込まれたプラスミドDNA分子末端のBglII部位が欠失することがあることを示している。
【0181】
キャンディダ・ユティリス1細胞あたりのL41遺伝子のコピー数が2であることは実施例15のサザン解析により示されているので、5.4kbのバンドが2コピーのL41遺伝子に対応するものとして、バンドの強さの比較から組み込まれたプラスミドのコピー数を求めた。バンドの濃さはイメージングアナライザーBAS2000(FUJI FILM )を用いて測定した。
【0182】
その結果、プラスミドpCLRE2のコピー数は、ATCC9256株では7コピー(レーン1)から25コピー(レーン3)であり、ATCC9226株では3コピー(レーン5)から11コピー(レーン6)であった。一方、ATCC9950株ではそれぞれ11コピー(レーン9、および10)と計算された。
【0183】
以上の結果は、ATCC9950株以外のATCC9226株、およびATCC9256株についても、シクロヘキシミド耐性L41遺伝子を用いて形質転換体が取得可能であることを示し、プラスミドは複数個同時に染色体に組み込まれたことが示された。
【0184】
実施例14:酢酸リチウム法、およびその変法によるキャンディダ・ユティリスの形質転換
酢酸リチウム法(Ito et al. J. Bacteriol. 153, 163-168 (1983))はその簡便さから広くサッカロミセス属酵母の形質転換に用いられている。そこで、BglII消化により直鎖状にしたプラスミドpCLRE2を用いて、キャンディダ・ユティリスATCC9950株を酢酸リチウム法、およびエタノールまたはDMSOを添加する酢酸リチウム法変法(Soni et. al. Current Genet.1993 24, 455-459) に従って形質転換することを試みた。酢酸リチウム法変法ではエタノールはヒートショック開始10分後に終濃度10%になるように菌液に添加し、さらに10分間保温した。また、DMSOはポリエチレングリコール液と同時に終濃度10%になるように菌液に添加した。処理した菌体はYPD溶液に懸濁して、30℃4時間の振盪培養を行なってからシクロヘキシミドを含む選択プレートに塗布し、28℃で6日間保温した。
【0185】
その結果、エタノールDNAを添加するリチウム法変法によりプラスミドDNA 2μgDNAについてシクロヘキシミド耐性株が5個得られた。このうち2つのクローンについて染色体DNAを調製して実施例13記載の方法でサザン解析を行ったところ、プラスミド由来のバンドが検出され、これらが形質転換体であることが示された。この結果から、形質転換頻度は電気パルス法に比較してかなり低いが、酢酸リチウムによって処理されたキャンディダユティリスもDNAを取り込むことが可能であることが示された。
【0186】
本実験ではSoniらの報告にしたがって実験を行なったが、さらに処理条件を検討することにより形質転換頻度を高めることも可能である。
【0187】
実施例15:異なるrRNA遺伝子領域をターゲットとした形質転換
1)プラスミドの構築
実施例9に記載のプラスミドpCLBS12(図15)のEcoRIサイトに、pCRE2(図6)から得られる3.5kbのEcoRI断片を挿入することによりpCLRE4を、pCRE3(図6)から得られる2.4kbのEcoRI断片を挿入することによりpCLRE5をそれぞれ構築した。
【0188】
また、7.5kbのrDNAを含むEcoRI断片がクローン化されたpCRE1(図6)から切り出される3kbのEcoRI−XbaI断片と、4.5kbのEcoRI−XbaI断片とを、pBluescript SK- のEcoRIとXbaI間に連結した後、それぞれのプラスミドのXbaIサイトをEcoRIリンカー(5'CCAAGCTTGG3')の挿入によりEcoRIサイトに変換して、プラスミドpCRE6とpCRE7とを構築した。これらのプラスミドpCRE6とpCRE7とからそれそれ切り出した3kbと4.5kbのEcoRI断片をプラスミドpCLBS12のEcoRIサイトに挿入することにより、プラスミドpCLRE6とpCLRE7を構築した。
【0189】
構築したプラスミドpCLRE4、pCLRE5、pCLRE6、およびpCLRE7の構造は図20に示される通りである。
【0190】
2)形質転換
作製したプラスミドpCLRE4、pCLRE5、pCLRE6、およびpCLRE7は制限酵素で消化して直鎖状DNAとした後、各1μgのDNAを用いて実施例11に示した電気パルス法によりATCC9950株を形質転換した。パルス条件は、電気容量を25μF、電圧を5KV/cm、抵抗値を800オームとし、パルス後の培養時間は18時間とした。プラスミドの消化に用いた制限酵素はrRNA遺伝子断片内にその切断サイトがある酵素で、pCLRE4はBglII、pCLRE5はBamHIまたはXbaI、pCLRE6はBamHI、そしてpCLRE7はApaI、またはEcoRVでそれぞれ消化した。プラスミドpCLRE4についてはL41遺伝子内のClaIサイトにおいても消化して、組み込みのターゲット遺伝子の違いによる形質転換頻度の差を比較した。
実験は2回行った。その結果は、表2に示される通りであった。
【0191】
プラスミドpCLRE4、pCLRE6、およびpCLRE7のrRNA遺伝子断片内で消化した場合はいずれも1μgDNAあたり数百個と、高い形質転換頻度を示した。一方、プラスミドpCLRE5は、BamHI、またはXbaIどちらで消化した場合も、他のプラスミドを用いた場合に比較して形質転換頻度は非常に低かった。この結果は、rRNA遺伝子領域でも形質転換のターゲットとして用いる断片により、形質転換頻度が大きく異なることを示している。
【0192】
また、プラスミドpCLRE4について、L41遺伝子内のClaIサイトで消化した場合、その形質転換頻度はrRNA遺伝子内のBglIIサイトで消化した場合に比較して、約10分の1から50分の1程度であった。また、以下に記載したサザン解析により、プラスミド分子はClaIサイトで消化した場合にはL41遺伝子座に、BglIIサイトで消化した場合にはrRNA遺伝子座に、それぞれ組み込まれたことが示された。
【0193】
以上より、染色体でのコピー数が多いrRNA遺伝子をターゲット配列として用いることによって、高い形質転換頻度が得られることが明らかとなった。
【0194】
3)サザン解析
BglIIまたはClaI消化したpCLRE4、XbaI消化したpCLRE5、BamHI消化したpCLRE6、そしてApaI消化したpCLRE7を用いて得られたシクロヘキシミド耐性株それぞれ4株ずつについて、染色体DNAを調製した。調製したDNAはBglII、またはBglIIおよびNotIにより消化し、32P標識したL41遺伝子を含む1.8kbのBamHI−HindIII 断片(図12)をプローブとして、サザン解析を行った(図21)。
【0195】
プラスミドpCLRE4が組み込まれた株では、BglII消化によって、内在性のL41遺伝子に由来する5.4kbのバンドのほかに、プラスミドDNA分子内BglIIサイトでの切断によりプラスミドDNAと同じサイズの8.4kbのバンドが認められた(図21 (1)、レーン1−8)。また、ClaI消化したプラスミドが組み込まれた株の場合は、これら2つのバンドの他に、7.4kbと6.4kbのバンドが認められた(レーン1−4)。これら2つのバンドは、染色体上のL41遺伝子のうち1個がプラスミドの挿入により分断されたことにより、組み込まれたプラスミド分子の両末端に位置するプラスミド分子内のBglIIサイトとL41遺伝子領域内のBglIIサイトとから生ずるものであることから、プラスミド分子が相同組換えによりL41遺伝子座に組み込まれたことが示された。このことから、プラスミド分子は、ClaIサイトで切断された場合にはL41遺伝子座に、BglIIサイトで切断された場合にはrRNA遺伝子座に、それぞれ組み込まれたことが示された。これにより、切断サイトを変更することでプラスミドの組み込み場所をコントロールすることが可能であることが示された。また、レーン1−4では5.4kb、7.4kb、および6.4kbのバンドの濃さがほぼ同じであったことから、染色体にはL41遺伝子が2コピー存在することが明らかにされた。
【0196】
プラスミドpCLRE5、pCLRE6、およびpCLRE7が組み込まれた株では、BglII+NotI消化により、内在性のL41遺伝子に由来する5.4kbのバンドのほかに、染色体に組み込まれたプラスミド由来のいくつかのバンドが認められた(図21(2))。このうちサイズが各プラスミドと同一であるバンド、すなわちpCLRE5では7.3kb(レーン1−4)、pCLRE6では8.0kb(レーン5−8)、そしてpCLRE7では9.4kbのバンド(レーン9−12)は、プラスミドが染色体にタンデムに組み込まれることにより、プラスミド内に1箇所サイトがあるNotI消化によって隣り合うプラスミドから生じたバンドである。また、それ以外にもpCLRE5では7kb(レーン1−4)、pCLRE6では6.9kb(レーン5−8)、そしてpCLRE7では11kb (レーン9−12)のバンドが認められた。これらのサイズはプラスミドDNAがrRNA遺伝子座に相同組換えにより組み込まれた場合にBglII+NotI消化によりrRNA遺伝子座内のBglIIサイトとプラスミドDNA内のNotIサイトとから得られる断片の長さに一致する。これより、プラスミドDNAが切断された部位で相同組換えにより染色体に組み込まれたことが示された。
【0197】
図21(1)のレーン1−4の5.4kbのバンドが1コピーのL41遺伝子、レーン5−8および図21 (2)のレーン1−12の5.4kbバンドが2コピーのL41遺伝子に対応するものとして、各バンドの濃さの比較から組み込まれたプラスミドのコピー数を求めた。バンドの濃さはイメージングアナライザーBAS2000(FUJI FILM )を用いて測定した。
【0198】
その結果、プラスミドpCLRE4は、L41遺伝子座には3コピー(レーン4)から5コピー(レーン1、および3)、rRNA遺伝子座には2コピー(レーン8)から8コピー(レーン5)挿入されたことが示された。この結果から、プラスミドDNAがrRNA遺伝子座に組み込まれた場合、組み込まれたプラスミド分子のコピー数が高い株が選択される傾向が認められた。これは、実施例12においてプラスミドpCLRE2がrRNA遺伝子座に組み込まれた株ではプラスミドDNAのコピー数がおよそ6コピーから15コピーであるが、実施例16のURA3遺伝子座へ組み込まれたプラスミドDNAの場合はコピー数がおよそ3コピーから4コピーであったことからも示唆される。
【0199】
また、プラスミドpCLRE5、pCLRE6、およびpCLRE7についてはそれぞれ3コピー(図21 (2)、レーン4)から5コピー(レーン2)、3コピー(レーン8)から6コピー(レーン5、および6)、3コピー(レーン12)から5コピー(レーン9)組み込まれたことが示された。
【0200】
実施例16:URA3遺伝子座へのプラスミドの組み込み
プラスミドpCLBS12(図15)のEcoRIサイトに、URA3遺伝子を含む5kbのEcoRI断片(図7)を挿入して、プラスミドpCLURA1を構築した。このプラスミドをURA3遺伝子座内のPstIサイトで切断し、このプラスミドを用いて実施例11記載の電気パルス法によりATCC9950株の形質転換を試みた。パルス条件は電気容量を25μF、抵抗値を800オーム、電圧を5KV/cmとして行った。これにより1μgDNAあたりシクロヘキシミド耐性コロニーが40個得られた。
【0201】
得られたシクロヘキシミド耐性株4株について染色体DNAを調製した。調製したDNAはBglII、またはSalI+NotIにより消化し、サザン解析に供した。BglII消化したDNAについてはL41遺伝子を含む1.8kbのBamHI−HindIII 断片(図12)を、SalI+NotI消化したDNAについてはURA3遺伝子を含む2.3kbのHindIII −EcoRI断片(図8)を、それぞれ32P標識してプローブとした。
【0202】
その結果は、図22に示される通りであった。
【0203】
SalI+NotI消化したDNAについてURA3遺伝子をプローブとした場合、親株のATCC9950株では内在性URA3遺伝子由来の13Kbのバンドが認められた(図22(1)、レーン1)。一方、耐性株ではこの13kbのバンドのほかに、タンデムに複数個組み込まれたプラスミドからNotI消化により生じる10kbのバンドと、染色体上のURA3遺伝子のうち1個がプラスミドの挿入により分断されて生じる8.4kbと14kbの2本のバンドが検出された(レーン2−5)。これら2本のバンドは、組み込まれたプラスミド分子の両末端に位置するプラスミド分子内のNotIサイトとURA3遺伝子領域内のSalIサイトとから生ずるものであることから、プラスミド分子が相同組換えによりURA3遺伝子座に組み込まれたことが示された。
【0204】
また、形質転換体では内在性URA3遺伝子由来の13kbのバンドと染色体に組み込まれたプラスミド分子の両末端のプラスミド由来の8.4kbと14kbのバンドの濃さがほぼ一致することから、URA3遺伝子もL41遺伝子同様、細胞あたり2コピー存在し、形質転換体ではそのうち1コピーがプラスミドDNAの挿入により分断されたことが示された。また、これらの4本のバンド(14kb、13kb、10kb、および8.4kb)の濃さの比較から、組み込まれたプラスミドのコピー数は3コピー(レーン3、および5)から4コピー(レーン2、および4)であることが示された。
【0205】
また、BglII消化したDNAについてL41遺伝子をプローブとした場合、親株のATCC9950株では内在性のL41遺伝子に由来する5.4kbのバンドが認められたが(図22(2)、レーン1)、耐性株ではこのバンドのほかにプラスミドDNAと同じサイズの10kbのバンドが認められた(レーン2−5)。
【0206】
実施例17:キャンディダ・ユティリスでの異種遺伝子(グルコアミラーゼ遺伝子)の発現
(1)グルコアミラーゼ遺伝子(STA1遺伝子)発現用プラスミドの構築
STA1遺伝子発現用プラスミドを図23に示されるように構築した。
【0207】
まず、STA1遺伝子をサッカロマイセス・ディアスタティカス5106−9A(a leu2,arg4,STA1)(Yamashita and Fukui Agric.Biol.Chem. 47,2689-2692)の染色体DNAライブラリーよりクローニングした。これは、以下に示した操作により行った。
【0208】
5106−9A菌体から染色体DNAを調製してSau3AIにより部分消化した後、アガロースゲル電気泳動により約20−30kbのDNA断片を調製した。このDNA断片と、BamHI消化した後脱リン酸化したλファージベクターEMBL3(Stratagene Cloning Systems)とを、T4リガーゼにより連結した。それを、GigapackII Gold Packaging Extract (StratageneCloning Systems )を用いて、インビトロパッケージングし、染色体DNAの遺伝子DNAライブラリーを構築した。
【0209】
発表済みのSTA1遺伝子の塩基配列(Yamashita et. al. J Bacteriol. 161, 567-573 1985)に基づいて合成した2種類のオリゴヌクレオチド5'ACCACTATTACCACTACGGTTTGCTCTACA3'(配列番号:19)、および5'GACACATCTCTGAGCAGCATGACTTGGTTG3'(配列番号20)をT4キナーゼにより32P末端標識したものをプローブとして用いて、この染色体DNAライブラリー約20,000プラークをスクリーニングした。この結果、2種のプローブどちらにもポジティブシグナルを与えるクローン1個を得た。
【0210】
このSTA1遺伝子を含むファージクローンより、STA1遺伝子を含む4kbのBglII−HpaI断片をpUC19のBamHIとHincII間にクローン化して、プラスミドpUSTA1(図23)を構築した。
【0211】
続いて、pUSTA1をSTA1遺伝子の開始コドンATG の5bp下流に存在するStuIサイトで切断した後、XbaIサイトおよび開始コドンを含む合成アダプター(配列番号:21):5'-CTAGATGGTAGG-3' 3'-TACCATCC-5' を付加した。その後、さらにSalIで部分消化することにより、STA1遺伝子を2.7kbのXbaI−SalI断片として得た。
【0212】
次に、pUC12をPstIとHindIII で消化した後、T4DNAポリメラーゼで処理し、BglIIリンカーを付加して構築したプラスミドpUC12BglIIの、XbaIとSalIと間にSTA1遺伝子を含む2.7kbのXbaI−SalI断片を挿入して、プラスミドpUSTA2を構築した。
【0213】
このpUSTA2から2.7kbのXbaI−BglII断片を切り出し、これを、発現ベクターpPGKPT4のXbaIとBamHIサイト間に挿入して、プラスミドpGKSTA1を構築した。
【0214】
さらにpGKSTA1からPGK遺伝子プロモーターと、STA1遺伝子と、さらにPGK遺伝子ターミネーターとを含む4.9kbのNotI断片を切り出し、この断片を、プラスミドpCLBS12のNotIサイトに挿入してプラスミドpCLSTA1を、プラスミドpCLRE4のNotIサイトに挿入してプラスミドpCLRSTA1を、それぞれ構築した。
【0215】
(2)キャンディダ・ユティリスの形質転換とグルコアミラーゼ発現
BglII消化したプラスミドpCLRSTA1を用いて、ATCC9950株、ATCC9226株、およびATCC9256株の形質転換を、実施例11記載の電気パルス法で行った。パルス条件は電気容量を25μF、抵抗値を1000オーム、電圧を3.75KV/cm、または6.25KV/cmとして行った。
【0216】
株によって頻度の差は認められたもののいずれの株でもシクロヘキシミド耐性コロニーが得られた。
【0217】
このうちそれぞれ2株ずつについて基質であるスターチが入ったプレート(3% Soluble starch (Katayama)、2% polypeptone 、1% Yeast extract、3.3×10-3% Bromocresol purple、2% Bacto agar)上でグルコアミラーゼ活性を調べた。その結果、3種の株由来の形質転換体すべてについて分泌されたグルコアミラーゼによるハローが観察され、遺伝子の発現が確認された。また、AflII消化したプラスミドpCLSTA1を用いてATCC9950株を形質転換した。この形質転換体について、L41遺伝子座に組み込まれたグルコアミラーゼ遺伝子の発現も調べたところ、同様にハローの形成が確認された。
【0218】
さらにこれら形質転換体のグルコアミラーゼ活性を測定した。このため、菌体をYPD液体培地で一晩培養して、その上清を粗酵素液とした。反応は、400μlの粗酵素液と、0.5%の可溶性でんぷん、100mM酢酸ナトリウム(pH5.0)を含む500μlの反応液で、50℃、20分間行った。反応後100℃、5分間の熱処理で酵素を失活した後、遊離したグルコース濃度を市販のキット(グルコースB-テスト(和光純薬))を用いて測定した。
【0219】
グルコアミラーゼ活性は当反応条件下で遊離するグルコースの量が100μgである時、その活性を1ユニットとし表した。培養上清1mlあたりの活性値は表3に示される通りであった。
【0220】
この結果から、調べたキャンディダユティリスATCC9950株、ATCC9226株、およびATCC9256株において、サッカロマイセス・ディアスタティカス由来の異種蛋白質であるグルコアミラーゼの分泌シグナル配列が認識され、グルコアミラーゼが培地中に分泌されることが明らかにされた。
【0221】
さらに、BglII消化したプラスミドpCLSTA1、またはAflII消化したプラスミドpCLSTA1で形質転換したATCC9950株をそれぞれ2株ずつ40μg/mlのシクロヘキシミドと5%グルコースを含むYPD液体培地で30℃4日間培養した。その後、それらの菌体培養液10μlを4−20%SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動に供し、培養液中の蛋白質を分析した(図24)。ゲルはクマシーブリリアントブルーにより染色した。また、対照としてBglII消化したプラスミドpCLRE2で形質転換した株の培養液を分析した(レーン1)。その結果、いずれの培養液においてもグルコアミラーゼに相当する約100kDaの蛋白質が認められ、蛋白量は、染色されたバンドの濃さから約2〜5μgに相当すると判断された。このことから、グルコアミラーゼ遺伝子が高いレベルで発現し、培養液中に分泌されたことが示された。以上の結果から、分泌蛋白質生産用の好適な宿主/ベクター系としてキャンディダ・ユティリスが使用できることが明らかとなった。
【0222】
実施例18:キャンディダユティリスでの異種遺伝子(lacZ遺伝子)の発現
(1)lacZ遺伝子発現用プラスミドの構築
lacZ遺伝子発現用プラスミドを図25に示されるように構築した。
【0223】
まず、プラスミドpMC1871(Pharmacia )より、βガラクトシダーゼをコードするlacZ遺伝子を3.1kbのBamHI断片として切り出した。この断片を、プラスミドYEp13K( Sone et. al. Appl. Environ. Microbiol. 54, 38-42 (1988))のBglIIサイトに連結し、遺伝子の5'側にHindIII サイトのあるプラスミドpZ4を選択した。
【0224】
このプラスミドから開始コドンATG を有するlacZ遺伝子を、3.1kbのHindIII −XhoI 断片として切り出した。この断片を、pBluescript SK- のHindIII とXhoIサイト間に連結して、プラスミドpLACZ1を構築した。
【0225】
このプラスミドをHindIII +XbaI消化し、クレノウ処理した後、再環状化してプラスミドpLACZ2を構築した。
【0226】
さらに、このプラスミドからlacZ遺伝子を3.1kbのXbaI−KpnI断片として切り出し、これをプラスミドpPGKPT5(図4)のXbaIとKpnI間に連結して、プラスミドpGKLAC1を構築した。
【0227】
さらにpGKLAC1からPGK遺伝子プロモーターと、lacZ遺伝子と、さらにPGK遺伝子ターミネーターとを含む5.4kbのNotI断片を切り出し、これをプラスミドpCLBS12のNotIサイトに挿入して、プラスミドpCLLAC1を、またプラスミドpCLRE4のNotIサイトに挿入してプラスミドpCLRLAC1を、それぞれ構築した。
【0228】
(2)キャンディダ・ユティリスの形質転換とβガラクトシダーゼ活性確認
BglII消化したプラスミドpCLRLAC1、またはAflII消化したプラスミドpCLLAC1を用いて実施例11記載の電気パルス法によりATCC9950株を形質転換した。形質転換されたATCC9950株,それぞれ2株を、5mlのYPD液体培地で6時間、対数増殖期(OD600 が約2から3)まで培養した。βガラクトシダーゼ活性はMethods in Yeast Genetics - A laboratory Course Manual - Rose M.D et al. P155-159 Cold Spring Harbor Laboratory Press NY (1990) に記載の方法に従って測定した。すなわち、集菌した菌体を1mlのZバッファーに懸濁した後、クロロホルム液を3滴、0.1%SDSを2滴加えて、10秒ボルテックスした。28℃で5分間インキュベートした後、0.2mlのONPG液を加え、さらに10分間インキュベートした。その後、0.5mlのNa2 CO3 液を添加して反応を停止した。OD420 を測定した後、計算式に従ってβガラクトシダーゼ活性を求めた。βガラクトシダーゼ活性は28℃で1分あたり1nmolのオルトニトロフェノールを生成する活性を1ユニットとした。得られた菌体1OD600 当たりの活性値は表4に示される通りであった。
【0229】
その結果、プラスミドpCLRLAC1およびプラスミドpCLLAC1のいずれで形質転換されたATCC9950株もそれぞれ活性を示し、大腸菌由来のlacZ遺伝子がキャンディダユティリスで発現して、活性のあるβガラクトシダーゼが生産されることが示された。キャンディダ・マルトーサやアルビカンスなど一部のキャンディダ属酵母では、ロイシンコドンのCUG がセリンに翻訳されるため(Ohama et. al. Nucleic Acids Res. 21 4039 - 4045 1993)、大腸菌由来lacZ遺伝子が、活性をもつβガラクトシダーゼに翻訳されないことが知られている(Sugiyama et.al. Yeast 11, 43-52 (1995))。本実施例では、キャンディダ・ユティリスで活性のある大腸菌βガラクトシダーゼが生産されることが明らかにされ、また実施例17で示したようにグルコアミラーゼが高生産されることからも、キャンディダ・ユティリスが異種遺伝子発現用の宿主として使用できることが示されたと考える。
【0230】
実施例19:キャンディダ・ユティリスでの異種遺伝子(APT遺伝子)の発現
(1)APT遺伝子発現用プラスミドの構築
APT遺伝子発現用プラスミドを図26に示されるように構築した。
【0231】
まず、トランスポゾンTn903由来のアミノグリコシドフォスフォトランスフェラーゼ(APT遺伝子) を含むプラスミドpUC4K(Pharmacia )から1.1kbのXhoI−PstI断片を切り出し、これをpUC19のSalIとPstI間に挿入して、プラスミドpAPH1を構築した。
【0232】
続いてpAPH1をPstI消化した後、T4DNAポリメラーゼにより平滑末端とし、BglIIリンカー(5'CAGATCTG3')を挿入して、プラスミドpAPH2を構築した。
【0233】
さらに、pAPH2よりAPT遺伝子を1.1kbのXbaI−BglII断片として切り出し、これを発現ベクターpPGKPT4(図4)のXbaIとBamHIサイト間に挿入して、プラスミドpGKAPH1を構築した。
【0234】
さらにpGKAPH1からPGK遺伝子プロモーターと、APT遺伝子、そしてPGK遺伝子ターミネーターとを含む3.3kbのNotI断片を切り出し、これをプラスミドpCLBS12のNotIサイトに挿入して、プラスミドpCLAPH1を、またプラスミドpCLRE4のNotIサイトに挿入してプラスミドpCLRAPH1を、それぞれ構築した。
【0235】
(2)キャンディダ・ユティリスの形質転換とG418耐性の確認
BglII消化したプラスミドpCLRAPH1を用いて、ATCC9950株、ATCC9226株、およびATCC9256株の形質転換を試みた。形質転換は実施例11記載の電気パルス法で行った。パルス条件は電気容量を25μF、抵抗値を1000オーム、電圧を3.75KV/cm、または6.25KV/cmとして行った。
【0236】
その結果、株によって頻度の差は認められたもののいずれの株でもシクロヘキシミド耐性コロニーが得られた。このうちそれぞれ2株ずつについて、異なる濃度のG418を含むYPDプレート上で菌の増殖を調べた。その結果、3種のキャンディダ・ユティリス株すべてについて形質転換体の増殖が確認され、これらの形質転換体においてAPT遺伝子が発現したことが確認された。
【0237】
また、AflII消化したプラスミドpCLAPH1を用いてATCC9950株を形質転換し、L41遺伝子座に組み込まれた遺伝子の発現についても調べた。その結果、同様に形質転換体の増殖が確認され、L41遺伝子座に組み込まれたAPT遺伝子についてもその発現が確認された。
【0238】
(3)組み込まれたプラスミドの安定性
BglII消化されたプラスミドpCLRAPH1、またはAflII消化されたプラスミドpCLAPH1で形質転換されたATCC9950株、それぞれ2株ずつについて、組み込まれたプラスミドDNAの安定性を次のように調べた。まず、形質転換体を40μg/mlのシクロヘキシミドを含む5mlのYPD液体培地で定常期まで培養し、このときの世代数を0とした。次に、このうち5μlを5mlのYPD液体培地に植菌して定常期まで培養し、このときの世代数を10と計算した。この操作を繰り返して20世代まで菌を培養した。プラスミド保持率は、菌液を希釈後、YPDプレートと40μg/mlのシクロヘキシミドを含むYPDプレートとにそれぞれ塗布して、30℃で2日培養後、生じたコロニー数を調べた。
結果は表5に示される通りであった。
【0239】
この結果から、rRNA遺伝子座、L41遺伝子座に挿入されたDNA断片は安定であることが確認された。
【0240】
実施例20:G418耐性を選択マーカーとしたキャンディダ・ユティリス形質転換体の取得
プラスミドpCLRAPH1は、形質転換体選択マーカーとしてシクロヘキシミド耐性を付与する変異型L41遺伝子と、G418耐性を付与するAPT遺伝子を含んでいる。実施例19に記載した実験によりAPT遺伝子がPGK遺伝子プロモーターにより発現することが確認されたので、形質転換体のG418耐性による直接選択を試みた。
【0241】
まず、プラスミドpCLRAPH1をBglIIにより消化し、直鎖状にした。これを用いて、実施例11記載の電気パルス法によって、ATCC9950株を形質転換した。パルス条件は電気容量を25μF、抵抗値を1000オーム、または800オーム、電圧を5KV/cmとして行った。菌体は1Mソルビトールを含むYPD培地で6時間培養した後、40μg/mlのシクロヘキシミドを含むYPDプレートと、150μg/mlのG418を含むYPDプレートとにそれぞれ塗布した。
結果は表6に示される通りであった。
【0242】
この結果より、G418耐性で選択されるコロニーの数がシクロヘキシミド耐性コロニー数に比較して10倍程度多いことが分かる。
【0243】
G418耐性で選択した4個のコロニーと、シクロヘキシミド耐性で選択した4個のコロニーとについて、染色体DNAを調製した。調製したDNAはBglII+NotIにより消化した後、32P標識したL41遺伝子を含む1.8kbのBamHI−HindIII 断片(図12)をプローブとして、サザン解析を行った(図27)。その結果、内在性L41遺伝子に由来する5.4kbのバンドのほかに、プラスミドに由来する4.4kbのバンドが認められた。イメージングアナライザーBAS2000(FUJI FILM )を用いてバンドの強度を測定し、プラスミド由来のバンドと内在性L41遺伝子(2コピー/細胞)のバンドの比較から、組み込まれたプラスミドのコピー数を求めた。その結果、シクロヘキシミド耐性で選択された株ではプラスミドが4(レーン2)から7コピー(レーン5)存在することが示された。一方、G418耐性で選択した株では4株ともコピー数が1 (レーン6−9)であると計算された。この結果より、変異型L41遺伝子を選択マーカーとして形質転換体を選択することによって形質転換の頻度は低くなるものの、プラスミドが複数個組み込まれた株を容易に取得できることが示された。
【0244】
また、pGKAPH1をNotI消化して、二つの断片に分けた。すなわち、PGK遺伝子プロモーター、APT遺伝子、およびPGK遺伝子ターミネーターを含む断片と、ベクター断片とに分けた。その後、これらをATCC9950株の形質転換に用いた。パルス条件は電気容量を25μF、抵抗値を1000オーム、電圧を5KV/cmとして行った。200μg/mlのG418を含むYPDプレートで形質転換体を選択したところ、1μgDNAあたり156個の形質転換体が得られた。この結果は、キャンディダ.ユティリス酵母においては、BglII消化により直鎖状にしたプラスミドpCLRAPH1による遺伝子挿入型の形質転換に加え、遺伝子置換型の形質転換も起きることを示す。また、その形質転換頻度も比較的高く、遺伝子置換型の形質転換も効率良く起きることが明らかにされた。
【0245】
実施例21:PGK遺伝子プロモーターの短縮化と最小機能領域の同定
実施例17−20で使用したPGK遺伝子プロモーターを短縮化し、プロモーターの最小機能領域の同定を試みた。
【0246】
実施例19記載のプラスミドpGKAPH1のPGK遺伝子プロモーター断片内部に存在する制限酵素サイトを利用して、長さの異なるPGK遺伝子プロモーターとAPT遺伝子、さらにPGK遺伝子ターミネーターとを含む断片を5種類取得した。すなわちpGKAPH1をNotI、SacI、EcoRI+SacI、またはPstI+SacI消化して4種類の断片を得た。また、pGKAPH1をSphI消化してからT4 DNA polymerase処理によって平滑末端とし、さらにBamHIリンカー(5´CCGGATCCGG3´:配列番号:22)を付加した後、BamHIとNotI消化することにより、さらに1種類の断片を得た。
【0247】
また、実施例5記載のプラスミドpCRE2をHindIII 消化して得られる0.7kbと5.8kbの断片のうち、5.8kbの断片をライゲーションにより再環状化して、プラスミドpCRE8を構築した(図28)。このプラスミドpCRE8をNotI、BamHI+NotI、SacI、EcoRI+SacI、またはPstI+SacI消化したのち、それぞれと上記の各種断片をライゲーションして、プラスミドpCRAPH2、pCRAPH3、pCRAPH4、pCRAPH5、およびpCRAPH6を構築した(図28)。それぞれのプラスミドに含まれるPGK遺伝子プロモーター断片の長さは、pCRAPH2では1.35kb、pCRAPH3では0.83kb、pCRAPH4では0.46kb、pCRAPH5では0.40kb、そしてpCRAPH6では0.16kbであった。
【0248】
構築したプラスミドpCRAPH2、3、4、5、および6をBglII消化により直鎖状にした後、ATCC9950株の形質転換に使用した。形質転換は実施例11記載の電気パルス法で行った。パルス条件は電気容量を25μF、抵抗値を1000オーム、電圧を5KV/cmとして行った。
【0249】
形質転換体の選択は200μg/mlのG418を含むYPDプレートで行った。その結果、プラスミドpCRAPH2、pCRAPH3、pCRAPH4、およびpCRAPH5を用いた場合、それぞれ1μgDNAあたり300個程度の形質転換体が得られたが、一方プラスミドpCRAPH6では形質転換体が得られなかった。この結果は、PGK遺伝子の開始コドンATGの直前から、5’上流169bpのPstIサイトまでを含む断片は転写のプロモーターとしての機能を有しておらず、一方、401bp上流のEcoRIサイトまでを含む断片、およびさらに長い領域を含む断片は転写のプロモーターとして機能することを示している。これより、図3に示されるPGK遺伝子のプロモーターを含む1346bpの配列のうち、946番目のEcoRIサイトからATG直前の1346番目塩基までの401bpの配列にプロモーターの機能を示すために必要な配列が含まれることが明らかにされた。
【0250】
実施例22:グリセロアルデヒド-3- リン酸デヒドロゲナーゼ(GAP)遺伝子のクローニングとGAP遺伝子を含むDNA断片の塩基配列決定
キャンディダ・ユティリスのグリセロアルデヒド-3- リン酸デヒドロゲナーゼ(GAP)遺伝子のクローニングは、遺伝子ライブラリーとして実施例2で構築したキャンディダ・ユティリス染色体DNAライブラリーを用い、他生物の既知のGAP遺伝子をプローブとしたハイブリダイゼーション法を用いて行った。Molecular Cloning 2nd edition p2.95-121,Cold Spring HarborLaboratory (1989) に記載された方法に従い、上記の遺伝子ライブラリーの約20,000プラークのファージDNAを吸着させたフィルターを作製した。次に、サッカロマイセス・セレビシエのGAP遺伝子を含む2.1 kbのHindIII 断片を保持するpUC18プラスミド(Yamano et al. Journal of Biotechnology 32, 165- 171 (1994))から、GAP遺伝子の大部分を占めるDNA断片として約1 kbのAsuII- AflII断片を切り出した。この断片を32P標識して、これをプローブとしてハイブリダイゼーションを行った。その結果3 つの陽性プラークが分離できた。更にこれらプラークの1 つのファージDNAについてサブクローニングを行い、このファージDNAに含まれていた6.5 kbEcoRI断片を単離し、プラスミドベクターpBluescriptIISK+のEcoRIサイトに組込み、プラスミドpGAP1および2を構築した(図29)。
【0251】
制限酵素HindIII 、ClaI、SmaI、あるいはSpeIを単独もしくは複数使用して、単離した6.5 kbEcoRI断片を消化し、生じた断片に対してサッカロマイセス・セレビシエのGAP遺伝子をプローブとしたサザンハイブリダイゼーションを行った。その結果、3.8kb HindIII −SpeI断片に強くハイブリダイズした。そこで、3.8kb HindIII −SpeI断片をプラスミドベクターpBluescriptIISK+及びpBluescriptIIKS+のHindIII サイトとSpeIサイトとの間にそれぞれ組み込み、プラスミドpGAPH1、pGAPH2を作製した。これらプラスミドについて、HindIII 、ClaI、SmaI等の制限酵素サイトでの欠失変異体の作製や、エキソヌクレアーゼIII 及びマングビーンヌクレアーゼを用いた連続した欠失変異体を作製することにより、種々の欠失変異をもつプラスミドを作製し、3749bpからなるHindIII −SpeI 断片の配列を決定した(図29)。
【0252】
予想される構造遺伝子領域の解析を行ったところ、1005bpからなるオープンリーディングフレームが存在し、そこから推定される遺伝子産物のアミノ酸配列についてサッカロマイセス・セレビシエのGAP遺伝子産物に対するホモロジーを調べた。両配列は互いに79.6%ホモロジーを示したことから、単離した遺伝子がキャンディダ・ユティリスのGAP遺伝子であると断定した。また制御領域については、開始コドンの上流975bp、終止コドンの下流1769bpが含まれていた。このうち、転写のプロモーターを含むと推測されるHindIII サイトから開始コドンATGの直前までの975bpの配列は図30に、転写のターミネーターを含むと推測される終止コドンTAAの直後からAflIII サイトまでの802bpの配列は図31に示される通りであった。
【0253】
実施例23:GAP遺伝子のプロモーターとターミネーターとを使った発現ベクターの構築
キャンディダ・ユティリスのGAP遺伝子制御領域からプロモーターとターミネーターを含むDNA断片をそれぞれPCR 法を用いて取得した(図29)。
【0254】
プロモーターとしては、プラスミドpGAP1を鋳型として、開始コドンの上流975bpに位置するHindIII サイトから開始コドンATG直前までの断片を取得した。プライマーとして、
5'-CCAAGCTTACAGCGAGCACTCAAATCTGCCC-3' (配列番号:23)
5'-CCTCTAGATATGTTGTTTGTAAGTGTGTTTTGTATC-3' (配列番号:24)
の2つを用い、3’下流側開始コドン直前にXbaI部位をもつ様にデザインして合成した。
【0255】
次に、ターミネーターとして、プラスミドpGAP1を鋳型として、終止コドン直後からSpeIサイトまでの断片を取得した。プライマーとしては、
5'-GGGATCCATTGTATGACTTTTATTTATGGG-3' (配列番号:25)
5'-GGACTAGTGAGATGACTCTAGGCATCTTCT-3' (配列番号:26)
を用い、5’側終止コドン直後にはBamHIサイトをもつ様にデザインし合成した。
【0256】
PCRプロセスは、PfuDNAポリメラーゼ (STRATAGENE)を使って30サイクルで行った。PCR合成したプロモーター断片をHindIII とXbaIとで消化し、pUC19ベクターのHindIII サイトとXbaIサイトとの間に組み込み、プラスミドpUGproを構築した(図32)。一方、ターミネーター断片は、終止コドンの約0.8kb下流のAflIII サイトで消化し、クレノウ酵素でDNA末端の平滑化を行った後、BamHIで消化した。得られた0.8kbのDNA断片をpUC19ベクターのBamHIサイトとSmaIサイトの間に組み込み、プラスミドpUGterを構築した(図32)。
【0257】
プラスミドpUGterのGAPターミネーターの下流末端のEcoRIサイトをクレノウ酵素処理により平滑化した後、NotIリンカー(5'AGCGGCCGCT3´:配列番号:18)を連結して、プラスミドpUGterNを構築した。次に、プラスミドpUGproから0.95kbのG APプロモーター断片をHindIII とXbaIとで切り出し、プラスミドpUGterNのHindIII サイトとXbaIサイトとの間に挿入して、発現プラスミドpGAPPT1を構築した。さらに、プロモーターの上流末端のHindIII サイトをクレノウ酵素処理により平滑化し、NotIリンカー(5'AGCGGCCGCT3´:配列番号:18)を連結して、プラスミドpGAPPT2を構築した(図32)。
【0258】
さらに構築した発現プラスミドpGAPPT2が実際にキャンディダ・ユティリス内で機能するか否かを確認するために、プラスミドpGAPPT2のXbaIサイトとBamHIサイトの間に実施例19記載のプラスミドpAPH2からXbaIとBglIIによって切り出される1.1kbのAPT遺伝子断片を組み込み、プラスミドpGAPAPH1を構築した(図32)。
【0259】
構築したプラスミドpGAPAPH1をNotIで消化した後、ATCC9950株の形質転換に使用した。形質転換は電気パルス法で、パルス条件を電気容量を25μF、抵抗値を1000オーム、電圧を5KV/cmとして行った。
【0260】
形質転換体の選択は200μg/mlのG418を含むYPDプレートで行い、0.1μgのDNAを使用して約40個程度の形質転換体が得られた。これにより、GAP遺伝子のプロモーター、ターミネーターが機能することが確認された。
【0261】
実施例24:原形質膜プロトンATPase(PMA)遺伝子のクローニングとPMA遺伝子を含むDNA断片の塩基配列決定
キャンディダ・ユティリスの原形質膜プロトンATPase(PMA)遺伝子のクローニングは、PGK遺伝子やPMA遺伝子の場合と同様に、実施例2で構築したキャンディダ・ユティリス染色体DNAライブラリーを用い、他生物の既知のPMA遺伝子の一部分をプローブとしたハイブリダイゼーション法を用いて行った。Molecular Cloning 2nd edition p2.95-121,ColdSpring Harbor Laboratory (1989) に記載された方法に従い、上記した遺伝子ライブラリーの約20.000プラークのファージDNAを吸着させたフィルターを作製した。次に、サッカロマイセス・セレビシエのPMA1遺伝子の塩基配列(Serrano et al. Nature 319, 689-693 (1986) )をもとに合成した2つのプライマー:
5'-ATGACTGATACATCATCCTCTTCATC-3' (配列番号:27)
5'-TAACGACAGCTGGCAAACCGACTGGGAC-3' (配列番号:28)
を用い、サッカロマイセス・セレビシエAH22株(ATCC 38626)の染色体DNAを鋳型として、PCR法でPMA1構造遺伝子の5’末端+1から+1027(開始コドンATGのAを+1とする)に対応する約1kbの領域を増幅した。染色体DNAはMethods in Yeast Genetics - A laboratory Course Manual - Rose M.D et al. P126-127 Cold Spring Harbor Laboratory Press NY (1990) 記載の方法に従って調製した。取得した断片は32P標識して、プローブとしてハイブリダイゼーションを行った。その結果、得られた4つの陽性プラークのうち1つのファージDNAについてインサートDNAをXbaI消化して、10kb、4kb、2.8kb、2.6kbの4つのXbaI断片を単離した。
【0262】
単離した4つの断片に対し、スクーリーニングに用いたサッカロマイセス・セレビシエのPMA1遺伝子の約1kb断片をプローブとしてサザンハイブリダイゼーションを行ったところ、2.6kbのXbaI断片にハイブリダイズした。そこで、この断片をプラスミドベクターpBluescriptIISK+のXbaIサイトに組み込み、インサートの方向性が互いに逆のプラスミドpPMAF1、pPMAF2を作製した(図33)。
【0263】
これらプラスミドについて、BamHI、ClaI、EcoRI等の制限酵素サイトでの欠失変異体の作製や、エキソヌクレアーゼIII 及びマングビーンヌクレアーゼを用いた欠失変異体を作製することにより、種々の欠失変異をもつプラスミドを作製し、両末端から約1kbずつの塩基配列を決定した(図33)。予想される構造遺伝子領域の解析を行ったところ、図33中左側のXbaIサイトからEcoRVサイトを含む約1kb内に、サッカロマイセス・セレビシエのPMA1構造遺伝子の5’末端領域と約50%のホモロジーを示す352bpのオープンリーディングフレームが存在した。もう一方側のXbaIサイトからBamHIサイトを含む約0.8kb内には、サッカロマイセス・セレビシエのPMA1遺伝子の+1292番目から+2046番目までの範囲 (開始コドンATGのAを+1とする)と約70%のホモロジーを示す754bpのオープンリーディングフレームが存在することが分かった。この結果から、単離した遺伝子がキャンディダ・ユティリスのPMA遺伝子であると判断した。また、この2.6kbのXbaI断片には、開始コドンATGの上流599bpが含まれていた。転写のプロモーターを含むと推測されるこの599bpの配列は図34に示される通りであった。
【0264】
転写のターミネーターについては、同じファージDNAからXbaIで切り出される他の3つの断片(10kb、4kb、および2.8kb)をサブクローニングし、それぞれ両末端側から塩基配列決定を行い、サッカロマイセス・セレビシエのPMA1遺伝子の3’側領域とのホモロジーを調べた。その結果、2.8kbのXbaI断片の片側に上記のPMA1遺伝子の3’末端側と高いホモロジーを示す領域が存在することが示された。このXbaI断片をプラスミドベクターpBluescriptIISK+のXbaIサイトに組み込み、インサートの方向性が互いに逆のプラスミドpPMAL1およびpPMAL2を作製した(図33)。これらプラスミドについて、KpnI消化による欠失変異体の作製や、エキソヌクレアーゼIII 及びマングビーンヌクレアーゼを用いた欠失変異体を作製することにより、種々の欠失変異をもつプラスミドを作製し、XbaIサイトからKpnIサイトまでの1.9kbの塩基配列を決定した(図33)。この塩基配列には、サッカロマイセス・セレビシエのPMA1遺伝子の+2041番目から+2757番目までの範囲(開始コドンATGのAを+1とする)と約82%のホモロジーを示す717bpのオープンリーディングフレームと、終止コドンTAAの3’下流1188bpが含まれていた。転写のターミネーターを含むと推測される終止コドンTAA直後からKpnIサイトまでの1188bpの配列は図35に示される通りであった。
【0265】
実施例25:PMA遺伝子のプロモーターとターミネーターとを使った発現ベクターの構築
先ず、キャンディダ・ユティリスのPMA遺伝子制御領域からプロモーターまたはターミネーターを含むDNA断片をそれぞれPCR法を用いて取得した(図33)。
【0266】
プロモーターとして、プラスミドpPMAF1を鋳型として、XbaIサイト下流20bpの位置から開始コドンATG直前までの断片を取得した。プライマーとして、
5'-GGCGGCCGCAATTAACCCTCACTAAAGGGAACGA-3' (配列番号:29)
5'-TTCTAGACTATATCAATGGTTAGTATCACGTG-3' (配列番号:30)
の2つを用い、5’上流側末端にはNotIサイト、3’下流側開始コドン直前にXbaIサイトをもつ様にデザインして合成した。
【0267】
ターミネーターとして、プラスミドpPMAL1を鋳型として、終止コドンTAA直後から終止コドン403bp下流までの断片を取得した。プライマーとして、
5'-CCGGTACCTAAGCCGCTAATACCCC-3' (配列番号:31)
5'-GGGCGGCCGCACTCGCTGATCGAAA-3' (配列番号:32)
を用い、5’上流側終止コドン直後にはKpnIサイト、3’下流側末端にはNotIサイトをもつ様にデザインし合成した。
【0268】
PCRプロセスは、PfuDNAポリメラーゼ(STRATAGENE)を使って30サイクルで行った。PCR合成したプロモーター断片をNotIとXbaIとで消化し、pBluescriptIISK+ベクターのNotIサイトとXbaIサイトの間に組み込み、プラスミドpBMproを構築した。一方、ターミネーター断片を、pBluescriptIISK+のKpnIサイトとNotIサイトとの間に組み込み、プラスミドpBMterを構築した。プラスミドpBMterから得られる0.4kbのKpnI−NotI断片を、pUC19のEcoRIサイトをクレノウ酵素処理により平滑化し、NotIリンカー(5'AGCGGCCGCT3´:配列番号:18)を連結して構築したプラスミドpUC19NのKpnIサイトとNotIサイトとの間に組み込み、プラスミドpUMterを構築した(図36)。
【0269】
次に、プラスミドpUMterからXbaIとNotIとの消化で得られる0.4kbのターミネーター断片と、プラスミドpBMproからNotIとXbaIの消化で得られる0.65kbのプロモーター断片とを、実施例4で構築したプラスミドpPGKPT5をNotI消化して得られる2.9kbの断片に組み込み、プラスミドpMAPH1を構築した(図36)。
【0270】
さらに構築した発現プラスミドpMAPH1が実際にキャンディダ・ユティリス内で機能するか否かを確認するために、プラスミpMAPH1のXbaIサイトとBamHIサイトとの間に実施例19記載のプラスミドpAPH2からXbaIとBglIIによって切り出される1.1kbのAPT遺伝子断片を組み込み、プラスミドpMAAPH1を構築した(図36)。
【0271】
構築したプラスミドpMAAPH1をNotI消化した後、ATCC9950株の形質転換に使用した。形質転換は電気パルス法で、パルス条件を電気容量を25μF、抵抗値を1000オーム、電圧を5KV/cmとして行った。
【0272】
形質転換体の選択は200μg/mlのG418を含むYPDプレートで行い、0.1μgのDNAを用いて約40個程度の形質転換体が得られた。これにより、PMA遺伝子のプロモーターおよびターミネーターが機能するものであることが確認された。
【0273】
実施例26:自律複製機能を有する配列(ARS)を含むDNA断片のクローン化
実施例19で構築したプラスミドpGKAPH1から、PGK遺伝子プロモーターと、APT遺伝子と、そしてPGK遺伝子ターミネーターとを含む3.3kbのNotI断片を切り出し、これをプラスミドpBluescriptIISK−(Stratagene)のNotIサイトに挿入して、プラスミドpGKAPH2を構築した(図37)。BamHI消化して脱リン酸化したプラスミドpGKAPH2、200ngと、実施例2で得られたキャンディダ・ユティリスATCC9950の3−7kbのゲノムDNAのSau3AI部分消化断片200ngとを、T4DNAリガーゼにより連結した。このDNA溶液を用いて大腸菌DH5を形質転換して、得られた約30000個の形質転換体よりプラスミドDNA混合物を抽出して染色体DNAライブラリーを作製した。このライブラリーから調製したDNAを用い、実施例11記載の電気パルス法により、ATCC9950株の形質転換を試みた。パルス条件は電気容量を25μFとし、抵抗値は800オームまたは1000オーム、電圧は3.75KV/cmまたは5KV/cmとして計4通りとし、それぞれDNAを3μg使用して行った。これによりG418耐性を示すコロニーが計7株得られた。これら耐性株を400μg/mlのG418を含むYPD培地で培養し、菌体より全DNAを調製し、大腸菌DH5を形質転換した。酵母染色体DNAの調製は、Methods in Yeast Genetics - A laboratory Course Manual - Rose M.D et al. P131-132 Cold Spring Harbor Laboratory Press NYに記載の方法に従った。大腸菌から回収された7種類のプラスミドDNA(pCARS1、pCARS4、pCARS5、pCARS6、pCARS7、pCARS8、およびpCARS10)はいずれも5−7kbのインサートを含むことが各種制限酵素消化により明らかにされ、また、これらプラスミドDNAを用いてATCC9950株の形質転換を電気パルス法により試みたところ、いずれのプラスミドDNAについてもG418耐性の形質転換体が得られた。このことから、これらプラスミド中に自律複製機能を有するDNA配列がクローン化されていることが確認された。各種制限酵素消化による解析により、これらのプラスミドのうちpCARS7とpCARS8とが同一のインサートを含むプラスミドであることが明らかにされた。これらの結果より、キャンディダ・ユティリス酵母内で自律複製機能を有するDNA断片が6種類クローニングされたことが明らかにされた。
【0274】
また、実施例9記載のプラスミドpCLBS10(図15)をベクターとしてキャンディダ・ユティリス酵母染色体DNAライブラリーを作製し、プラスミドpGKAPH2ライオブラリーと同時に形質転換を行った。しかしながら、シクロヘキシミド耐性の形質転換体は全く得られなかった。この結果から、キャンディダ・ユティリスのARSの特徴として、それを含むプラスミドの細胞あたりのコピー数が低く、形質転換体を選択するために数コピー必要なシクロヘキシミド耐性型L41遺伝子と組み合わせた場合形質転換体を選択できないことが示唆された。
【0275】
実施例27:自律複製機能を有する配列(ARS)を含むDNA断片の短縮化
実施例26でクローニングされた自律複製機能を有するDNA断片を含むプラスミド7種類のうち、高頻度でキャンディダ・ユティリス酵母を形質転換することができたプラスミド3種類(pCARS5、pCARS6、およびpCARS7)について、さらに詳しい解析を行った。
【0276】
まず、これら3種のプラスミドによる酵母形質転換頻度を実施例19で作成した染色体組み込み型プラスミドpCLRAPH1をBglII消化したDNAをコントロールとして調べた。パルス条件は電気容量を25μF、抵抗値を1000オーム、電圧を5KV/cmとし、DNAを0.1μg用いてATCC9950株の形質転換を行った。電気パルス後の培養は4時間行った。その結果は表7に示される通りであった。
【0277】
表7 各種ARSプラスミドの形質転換頻度
プラスミド コロニー数
pCARS5 16450
pCARS6 9500
pCARS7 4700
pCLRAPH1 400
注1)1μgプラスミドDNAあたりの形質転換体数
注2)pCLRAPH1はBgIII で分解して用いた
この結果より、ARSを含んだプラスミドを用いることにより、rDNAをターゲットとしたDNAの組込みよりさらに10倍から40倍程度高い形質転換頻度が得られることが示された。
【0278】
また、これらプラスミドpCARS5、pCARS6、およびpCARS7をNotI消化し、T4DNAリガーゼにより再び環状化することにより、PGK遺伝子プロモーター、APT遺伝子、およびPGK遺伝子ターミネーターを含む3.3kbのNotI断片を除去したプラスミドpCARS50、pCARS60、およびpCARS70を構築した。新たに得られた3種類のプラスミドについて種々の制限酵素消化によりインサートの長さを調べたところ、インサートの長さがいずれも約5−6kbであったため、自律複製機能を有する領域をさらに限定することとした。そのためにpCARS50、pCARS60、およびpCARS70それぞれをSau3AIで部分消化し、1−3.5kbのサイズの断片を回収して、BamHI消化後、脱リン酸化したプラスミドpGKAPH2とT4DNAリガーゼにより連結した。これらの3種類のDNA溶液を用いて大腸菌DH5を形質転換して、それぞれ得られた2,500−6,000個の形質転換体よりプラスミドDNA混合物を抽出して、DNAライブラリーを作製した。これらDNA5μgずつを用いて実施例11記載の電気パルス法により再びATCC9950株の形質転換を行い、G418耐性形質転換体を得た。
【0279】
得られたG418耐性のコロニーはさまざまな大きさからなっていたが、3種類のライブラリーについて比較的大きなコロニーを形成した株それぞれ5株を200μg/mlのG418を含むYPD培地で培養した。得られた菌体より全DNAを調製し、大腸菌DH5を形質転換した。一部のG418耐性株については大腸菌形質転換体が得られなかった。また、これら回収されたプラスミドを用いて実施例11記載の電気パルス法により再びATCC9950株の形質転換を行ったところ、それらのうち一部は、元のプラスミドドpCARS5、pCARS6、およびpCARS7と比較して形質転換頻度が大幅に低かったため除外した。最終的にpCARS50、pCARS60、pCARS70いずれについても短縮化されたDNA断片を含み、かつ形質転換頻度が親プラスミドと同程度であるプラスミドが1種類ずつ得られた。そしてpCARS50由来のプラスミドをpCARS5−2と、pCARS60由来のプラスミドをpCARS6−2と、そしてpCARS70由来のプラスミドをpCAR7−2と、それぞれ命名した。得られた6種類のプラスミド中の、自律複製機能を有する配列を含む染色体DNA断片の制限酵素地図は図38に示される通りであった。
【0280】
これらのプラスミドのうち染色体DNA断片の短縮化された3種類のプラスミドpCARS5−2、pCARS6−2、およびpCAR7−2について、さらに挿入DNA断片を短縮化したプラスミドを構築し、形質転換頻度を調べた(実施例28)。しかし、この過程で構築した一部のプラスミドについて部分塩基配列を決定したところ、図38においてpCARS5のBglIIサイトより左側の領域約700bpが、pCARS6−2のEcoRIサイトより左側の領域約700bpと90%以上の相同性を示した。この結果から、pCARS5とpCARS6の挿入DNA断片は互いに制限酵素地図は一致しないものの、それぞれ相同染色体または反復配列から由来することが推察されたため、以後の解析はpCARS6とpCARS7挿入DNA断片とについて行うこととした。また、pCARS6に含まれるARS活性を持つ配列をCUARS1と、pCARS7に含まれるARS活性を持つ配列をCUARS2と、それぞれ命名した。
【0281】
実施例28:pCARS6、pCARS7挿入DNA断片の短縮化と形質転換頻度とプラスミド安定性
(1)pCARS6挿入DNA断片の短縮化と形質転換頻度
プラスミドpCARS6−2にクローン化されたSau3AI部分消化DNA断片は約1.9kbであった。よって、自律複製能を有する領域をさらに限定するために、pCARS6−2のインサート断片の一部を含む3種類のプラスミドを構築した。これらのプラスミドは以下のように構築した。
【0282】
pCARS6−2からAPT遺伝子発現カセットを含む3.3kbのNotI断片を除去して、pCARS6−20を構築した。pCARS6−20をAflIIとXbaIとで消化した後、クレノウ酵素で末端を平滑化してT4DNAリガーゼにより再環状化してプラスミドpCARS6−210を構築した。このプラスミドに、実施例19で構築したプラスミドpGKAPH1のプロモーター断片内のEcoRIサイトをクレノウ酵素処理により平滑化し、その後NotIリンカー(5'AGCGGCCGCT3':配列番号:18)を連結して構築したプラスミドpGKAPH3から切り出される短縮化されたPGK遺伝子プロモーターによるAPT遺伝子発現カセットを含む2.3kbのNotI断片を連結することによって、pCARS6−21を構築した。また、pCARS6−20とpCARS6−21をそれぞれHindIII 消化してT4DNAリガーゼにより再環状化した後、同様にPGK遺伝子プロモーターによるAPT遺伝子発現カセットを含む2.3kbのNotI断片を連結することによって、pCARS6−22およびpCARS6−23を構築した。これら5種類のプラスミドに含まれる挿入DNA断片の制限酵素地図は図39に示される通りであった。
【0283】
次に構築した各プラスミドを用いて、実施例11記載の電気パルス法により、ATCC9950株の形質転換実験を行なった。パルス条件は電気容量を25μF、抵抗値を1000オーム、電圧を5KV/cmとし、DNAは1μg用いて行った。電気パルス後の培養は4時間行った。その結果は表8に示される通りであった。
【0284】
また、各プラスミドの酵母内安定性を次のように調べた。得られたG418耐性のコロニーを4mlのYPD培地に植菌し、30℃で8時間振とう培養した。
その後、YPDプレートと、G418を含むYPDプレートとに菌をそれぞれ塗布して、2日後生じたコロニー数を比較することにより、プラスミドの保持率を求めた。結果は表8に示される通りであった。この間、菌は2.5−3.5回分裂したことが培養液の吸光度を調べることにより示された。この結果から、pCARS6−2の挿入DNA断片を左右両側よりそれぞれ短縮化したプラスミドpCARS6−21およびpCARS6−22のうち、pCARS6−21の安定性はpCARS6−2と同程度であったが、どちらも形質転換頻度が大きく低下することが示された。また、挿入DNA断片を0.6kbpまで短くしたCARS6−23では形質転換頻度はさらに低下し、pCARS6の50分の1以下に低下することが示された。これらの結果から、pCARS6に含まれるCUARS1は、pCARS6−2の約1.9kb長さのDNA断片より短縮化することが困難であることが示唆された。
【0285】
(2)pCARS7挿入DNA断片の短縮化と形質転換頻度
プラスミドpCARS7−2にクローン化されたSau3AI部分消化DNA断片は約3.5kbであった。よって、自律複製能を有する領域をさらに限定するために、pCARS7−2のインサート断片の一部を含む5種類のプラスミドを構築した。これらのプラスミドは以下のように構築した。
【0286】
pCARS7−2から、APT遺伝子発現カセットを含む3.3kbのNotI断片を除去したプラスミドpCARS7−20を構築した。このpCARS7−20をXbaI消化後、T4DNAリガーゼにより再環状化し、その後2.3kbのAPT遺伝子発現カセットを含むNotI断片を連結することによりpCARS7−4を構築した。
【0287】
また、pCARS7−20より、約1.8kbのEcoRV−HindIII 断片、約1.3kbのXbaI−HindIII 断片、および約1.8kbのHindIII −BglII断片を切り出し、それぞれ、EcoRVおよびHindIII 、XbaIおよびHindIII 、ならびにHindIII およびBamHIで消化したpBluescriptIISK−(Stratagene)に連結した。その後、短縮化されたPGK遺伝子プロモーターによるAPT遺伝子発現カセットを含む2.3kbのNotI断片を連結することによりpCARS7−6、pCARS7−7、およびpCARS7−8を構築した。これら6種類のプラスミドに含まれる挿入DNA断片の制限酵素地図は図40に示される通りであった。
【0288】
構築した各プラスミドを用いて、実施例11記載の電気パルス法により、ATCC9950株の形質転換実験を行なった。パルス条件は電気容量を25μF、抵抗値を1000オーム、電圧を5KV/cmとし、DNAを1μg用いて行った。電気パルス後の培養は4時間行った。その結果を表9に示した。
【0289】
また、各プラスミドの酵母内安定性を次のように調べた。得られたG418耐性のコロニーを4mlのYPD培地に植菌し、30℃で8時間振とう培養した。その後、YPDプレートと、G418を含むYPDプレートとに菌をそれぞれ塗布して、2日後生じたコロニー数を比較することにより、プラスミドの保持率を求めた(表9)。この間、菌は2.5−3.5回分裂したことが培養液の吸光度変化を調べることにより示された。これらの結果から、pCARS7−2またはpCARS7−6による形質転換頻度は、pCARS7のそれと比較して、それぞれ約70%、および約30%程度に低下した。しかし、安定性はそれほど悪化していないことが示された。さらにDNA断片を短くしたpCARS7−7については、pCARS7−6の2分の1程度の形質転換頻度を示したものの、生じたコロニーは微小であり、また、安定性も悪かった(表9)。一方、pCARS7−8については頻度が悪く、pCARS7−4については全く形質転換体が得られなかった。これらの結果から、pCARS7に含まれるCUARS2については、形質転換頻度はやや低下するものの、pCARS7−6の1.8kbにまで短縮化できることが示された。
【0290】
これら2つのARSの短縮化に関する結果は、キャンディダ・ユティリス酵母のARSが自律複製能を示すには約2kb程度のかなり長い領域が必要であることを意味している。これはサッカロマイセス酵母のARSが約200bpで機能する事実(Newlon, C.R and Theis,J. Current Opinion in Genetics and Development1993 3, 752-758 )と異なっており、興味深い特徴であるといえる。
【0291】
実施例29:pCARS6−2およびpCARS7−6の自律複製機能を有する配列を含むDNA断片の塩基配列決定とサザン解析
(1)自律複製機能を有する配列を含むDNA断片の塩基配列決定
pCARS6およびpCARS7中の、ARS、CUARS1、およびCUARS2を含むDNA断片について、それぞれの塩基配列を決定した。CUARS1を含むDNAとしてはpCARS6−2の挿入DNA断片について、CUARS2を含むDNAとしてはpCARS7−6の挿入DNA断片について、それぞれ挿入DNA断片の両側からExoIII ヌクレアーゼおよびマングビーンヌクレアーゼを用いた欠失変異作製法により、種々の欠失変異をもつプラスミドを作製して塩基配列を決定した。決定したpCARS6−2の挿入DNA断片の塩基配列は図41と42とに、pCARS7−2の挿入DNA断片の塩基配列は図43と44とに示される通りであった。このうちpCARS6−2の挿入DNA断片は1921bpからなりA+ Tの全塩基に対する割合は69.5%であり、pCARS7−2の挿入DNA断片は1788bpからなりA+ Tの全塩基に対する割合は70.8%であり、いずれのDNAも非常にA+ Tの割合が高いことが示された。
【0292】
コンピューターによる解析により、ARSに認められる11bpの共通配列(T/A)TTTA(C/T) (A/G)TTT(T/A)(Newlon, C.R and Theis,J. Current Opinion in Genetics and Development1993 3, 752-758 )と比べると、一塩基ずつ異なる配列が、pCARS6−2では9個分散して存在していること、また、pCARS7−6では13個存在し、そのうち5個が互いに重なり合いながら存在していることが示された(図41〜図44)。
【0293】
(2)サザン解析によるコピー数算定
キャンディダ・ユティリス酵母細胞内において、ARSを含むプラスミドが何コピー存在するかを調べるために、pCARS6およびpCARS7で形質転換したキャンディダ・ユティリス酵母から調製したDNAについてサザン解析を行った(図45−1)。また、コピー数算定のための内部標準としてPGK遺伝子を用いることとしたので、PGK遺伝子コピー数算定のためのサザン解析も行った(図45−2)。
【0294】
PGK遺伝子コピー数算定のためのサザン解析は、実施例18記載のプラスミド、pCLLAC1をPGKプロモーター内のSphIサイトで消化した後、このプラスミドで形質転換したATCC9950株、2株と、対照として親株とからそれぞれ調製したDNAについて行った。SalI+ NotI消化したDNAについて実施例4記載のpGKPT4から切り出されるPGKプロモーターを含む0.4kbのEcoRI- XbaI断片をプローブとした場合、親株のATCC9950株では内在性PGK遺伝子由来の3.2kbのバンドが認められた(図45- 2、レーン1)。一方、PGKプロモーター内のSphIサイトで消化したpCLLAC1を組み込んだ株ではこの3.2kbのバンドのほかに、タンデムに複数個組み込まれたプラスミドからNotI消化により生じる5.4kbのバンドと、染色体上のPGK遺伝子のうち1個がプラスミドの挿入により分断されて生じる6.4kbおよび2.1kbの2本のバンドが検出された(レーン2、3)。これら6.4kbおよび2.1kbの2本のバンドは、組み込まれたプラスミド分子の両末端に位置するプラスミド分子内のNotIサイトとPGK遺伝子領域内のSalIサイトとから生ずるものであることから、プラスミド分子が相同組換えによりPGK遺伝子座に組み込まれたことが示された。
【0295】
イメージングアナライザーBAS2000(FUJIFILM)を用いて各バンドの強度を測定したところ、形質転換体では内在性PGK遺伝子由来の3.2kbのバンドと、染色体に組み込まれたプラスミド分子の両末端のプラスミド由来の6.4kbおよび2.1kbのバンドの濃さがほぼ一致することから、PGK遺伝子は細胞あたり2コピー存在し、形質転換体ではそのうち1コピーがプラスミドDNAの挿入により分断されたことが示された。また、プラスミドのタンデム組み込みによる5.4kbのバンドと6.4kbと2.1kbのバンドの濃さの比較から、組み込まれたプラスミドのコピー数は約4コピーであることが示された。
【0296】
pCARS6およびpCARS7で形質転換したATCC9950株DNAをEcoRV+ NotI消化し、実施例4記載のpGKPT4から切り出されるPGKターミネーターを含む0.9kbXbaI- NotI断片をプローブとしてサザン解析を行った。その結果は図45−1に示される通りであった。親株のATCC9950株では内在性PGK遺伝子由来の約7kbのバンドが認められた(図45−1、レーン3)形質転換体においては約7kbのバンドの他にプラスミド由来の3.3kbのバンドが認められた。7kbと3.3kbのバンドの濃さの比較から、PGK遺伝子由来のバンドを2コピーとすると、pCARS6のコピー数は1(レーン1)、pCARS7のコピー数は0.4(レーン2)と計算された。pCARS7のコピー数が1以下となったのは、菌培養時のプラスミド分子の脱落によるものと考えられる。この結果から、CUARSを含むプラスミドは細胞あたり、1コピー程度存在すると考えられた。
【0297】
(3) 染色体上でのARSの存在様式
HindIII 消化したATCC9950株、9226株、9256株、KP−2059P株、およびサッカロマイセス・セレビシエS288C株の各種染色体DNAに対して、サザン解析を行った。プローブとして、CUARS1としてpCARS6- 22の1.3kb挿入DNA断片をXbaIとHindIII により切り出した断片(図39)を、CUARS2としてpCARS7−6の1.8kbEcoRV- HindIII 断片(図40)を、それぞれ用いてハイブリダイゼーションを行った(図46)。CUARS1については、pCARS6の制限酵素地図から予想される2kbの主要なバンド以外にpCARS5の制限酵素地図から予想されるHindIII 断片の長さに一致する1.6kbのバンドが認められた(図46−1)。一方、CUARS2についてはpCARS7の制限酵素地図から予想される2.5kbの主要なバンド以外にホモロジーの高いDNA配列がキャンディダ・ユティリス酵母染色体上に10コピー程度存在すると共に、サッカロマイセス酵母にも多数存在することが示された(図46−2)。この結果から、CUARS2は広く保存された配列である可能性が示唆された。また、洗浄条件を厳しくすることにより(0.1xSSC 65℃)主要なバンド以外のシグナルはほとんど認められなくなった(図46−2)。
【0298】
また、これらのARSが染色体DNA由来であるかどうかを調べるために、パルスフィールドゲル電気泳動法で分離したキャンディダ・ユティリス染色体DNAに対してサザン解析を行った。ATCC9950株のDNAは7本に分れたが、CUARS1は大きいほうから6番目の染色体に、CUARS2は3番目の染色体にそれぞれ位置することが明らかにされ、クローン化したARSは染色体由来であることが明らかにされた。また、pCARS5の挿入DNA断片についてはCUARS1と同様に6番目の染色体に位置することが示された。実施例27記載のシークエンス解析からも示唆されたように、これらpCARS5とpCARS6にクローン化されたARSは相同染色体由来である可能性を支持する結果となった。
【0299】
実施例30:ARSを利用したプロモーター活性を有するDNA断片のクローニング
(1)プロモーター検索ベクターの構築
実施例28で構築したプラスミドpCARS6−20より、自律複製能を有する配列を含むDNAを1.9kbのSacI−SmaI断片として切り出した。この断片をEcoRIサイトをクレノウ酵素処理により平滑化した後、さらにSacI消化したプラスミドpAPH1(実施例19)と連結してプラスミドpPCV1を構築した。続いてpPCV1をBamHI消化してクレノウ酵素処理により平滑化した後、HpaIリンカー(5'GTTAAC3')を挿入して、プラスミドpPCV2を構築した(図47)。
【0300】
(2)ライブラリーの構築とプロモーター活性を有するDNA断片のクローニング
キャンディダ・ユティリスATCC9950の染色体DNAを制限酵素RsaI、HaeIII 、および
AluIにより、同時に部分消化した。その後、DNA断片を1%のアガロースゲルで電気泳動することにより分画し、0.9−1.8kbの長さの断片を回収した。この部分消化DNA断片と、HpaI消化して脱リン酸化したプラスミドpPCV2とを、T4DNAリガーゼにより連結した。このDNA溶液を用いて大腸菌DH5を形質転換して、得られた約100,000個の形質転換体よりプラスミドDNA混合物を抽出して染色体DNAライブラリーを作製した。このライブラリーから調製したDNAを用いて実施例11記載の電気パルス法によりATCC9950株の形質転換を試みた。パルス条件は電気容量を25μF、抵抗値は1000オーム、電圧は5KV/cmとし、DNAは1回のパルスあたり20−25μgを使用して行った。形質転換体の選択は200μg/mlのG418を含むYPDプレートで行い、形質転換実験を繰り返すことにより、280μgのDNAを使用して合計380個の形質転換体を取得した。これらの形質転換体のうち比較的大きなコロニーを形成した84株について、1mg/mlのG418を含むYPDプレートでの増殖を調べた。このうち、増殖の良かった株12株を1mg/mlのG418を含むYPD培地で培養し、菌体より全DNAを調製し、大腸菌DH5を形質転換した。
【0301】
大腸菌から回収された12種類のプラスミドDNA、すなわちpPCV1、3、9、14、19、33、51、55、57、62、64、および78は、いずれも0.9−1.8kbの挿入DNA断片を含むことが制限酵素消化により明らかにされた。次に、プロモーター活性を有する配列を含むDNA断片をXbaI消化により切り出し、pBluescriptIISK−(Stratagene)に連結して得られたプラスミドについて、それらの挿入DNA断片の両側から一部塩基配列を決定した。その結果、pPCV33およびpPCV78、ならびにpPCV14、pPCV51、およびpPCV55が、それぞれ同一のDNA断片を含むことが明らかとなった。よって、最終的に9種類のプロモーター活性を有するDNA断片がクローン化されたことが示された。
【0302】
また、これら9種類のプラスミドpPCV1、3、9、14、19、33、57、62、および64を用いてATCC9950株の形質転換を電気パルス法により試みたところ、いずれのプラスミドDNAについても1μgDNAあたり6,000から10,000個のG418耐性コロニーが得られた。さらに、これら9種類のプラスミドと、対照として用いたpCARS6−2とにより得られた10種類のG418耐性株2株ずつの計20クローンについて、5mlのYPD液体培地で一晩培養した後、YPDプレート上で単一コロニーにした。これら20クローンのおのおの10コロニーずつをG418を含むYPDプレート上での生育を調べることにより、プラスミドの保持率を調べた。その結果、pCARS6−2のプラスミド保持率は5%であったのに対し、その他すべてのプラスミドについて保持率が高まっていた。このうち特にプラスミドpPCV1、pPCV19、およびpPCV64については、プラスミド保持率が80−85%と高く、取得されたプロモーター活性を有する配列を含むDNA断片が、プラスミドの安定性を高める機能を有していることが示唆された。
【0303】
(3)プラスミドpPCVプロモーター活性を有するDNA断片の塩基配列決定
取得された9種類のプロモーター活性を有するDNA断片のうち、プラスミドpPCV19の挿入DNA断片について、挿入DNA断片の両側からExoIII ヌクレアーゼおよびマングビーンヌクレアーゼを用いた欠失変異作製法により、種々の欠失変異をもつプラスミドを作製して塩基配列を決定した。決定した1054bpからなるpPCV19の挿入DNA断片の塩基配列は図48に示される通りであった。
【0304】
実施例31:ハイグロマイシンB耐性遺伝子発現用プラスミドの構築とそれを利用した酵母の共形質転換体の選択
(1)ハイグロマイシンB耐性遺伝子発現用プラスミドの構築とその機能確認
ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ
(HPT)遺伝子は、プラスミドpBIB−HYG(Becker D. Nucl. Asids Res.18,203 (1990))を鋳型として、すでに明らかにされているHPT遺伝子の塩基配列情報(Gritz L. and Davis J. Gene 25, 179-188 (1983) )に基づき作成した2種類のプライマーを用いてPCRにより取得した。プライマーとして、
5'-GGTCTAGATATGAAAAAGCCTGAAC-3' (配列番号:33)
5'-GGAGATCTATTCCTTTGCCCTCGGA-3' (配列番号:34)
を用いて、5’側末端開始コドン直前にXbaIサイト、3’側末端終止コドン直後にBglIIサイトをもつ様にデザインして合成した。合成したHPT遺伝子断片はXbaIとBglIIとで消化後、実施例4記載の発現ベクターpPGKPT4(図4)のXbaIサイトとBamHIサイトと間に挿入して、プラスミドpGKHPT1を構築した(図49)。
【0305】
さらにpGKHPT1からPGK遺伝子プロモーターと、HPT遺伝子と、そしてPGK遺伝子ターミネーターとを含む3.3kbのNotI断片を切り出し、これを実施例30記載のプラスミドpPCV14のNotIサイトに挿入して、プラスミドpAHG1を構築した。
【0306】
構築したHPT遺伝子発現カセットが機能するかどうか確認するために、プラスミドpAHG1によりATCC9950株を実施例11記載の電気パルス法により形質転換した。G418耐性で選択した形質転換体は、200、400、および800μg/mlの濃度のハイグロマイシンBを含むYPD液体培地で増殖したが、対照として用いた野生株はいずれの培地でも増殖せず、ハイグロマイシンB耐性を示すことが明らかにされた。
【0307】
また、プラスミドpGKHPT1をNotI消化して、PGK遺伝子プロモーターと、HPT遺伝子と、そしてPGK遺伝子ターミネーターとを含む断片と、ベクター断片とに分けた後、ATCC9950株の形質転換に用いた。形質転換は実施例11記載の電気パルス法により行い、形質転換体の選択は800μg/mlのハイグロマイシンBを含むYPDプレートで行った。その結果、1μgDNAあたり168個のハイグロマイシンB耐性コロニーが得られた。これは対照として用いたNotI消化プラスミドpGKAPH1による形質転換頻度、1μgDNAあたり156個とほぼ同じであり、ハイグロマイシンB耐性遺伝子はG418耐性遺伝子同様、キャンディダ・ユティリス形質転換体の直接選択に用いることができることが示された。
【0308】
(2)酵母の共形質転換の実施
実施例30で取得したARSを含むプラスミドpPCV64の0.1μgと、NotI消化してPGK遺伝子プロモーターと、HPT遺伝子と、そしてPGK遺伝子ターミネーターとを含む断片とベクター断片とに分けたプラスミドpPGKHPT1の1μgまたは10μgとを混合して、ATCC9950株の実施例11記載の電気パルス法により形質転換に用いた。
【0309】
パルス条件は電気容量を25μF、抵抗値は600、800、または1000オーム、電圧は3.75KV/cmまたは5KV/cmとして、DNA混合物2種類に対してそれぞれ6通りのパルス条件で行った。形質転換体の選択は200μg/mlのG418を含むYPDプレートで行い、0.1μgのpPCV64DNA当たり、それぞれの条件で約2,000から7,000個の形質転換体を取得した。それぞれの条件で得られたG418耐性コロニー500から2000個を800μg/mlのハイグロマイシンBを含むYPDプレートにレプリカした。その結果、得られたG418耐性コロニーのうちハイグロマイシンB耐性を示すコロニーの割合はそれぞれのパルス条件で大きな差はなく、約1−2%であることが示された。つぎに、このG418耐性でかつハイグロマイシンB耐性を示した株についてYPD液体培地で一晩培養することによって、プラスミドとして存在するpPCV64が脱落してG418感受性となった株の取得を試みた。40株について調べたところ、このうち10株についてG418感受性でかつハイグロマイシンB耐性を示す株が得られた。これらの株においてはPGK遺伝子プロモーターと、HPT遺伝子と、そしてPGK遺伝子ターミネーターとを含む断片が染色体上に保持されていることが期待された。そこでこの10株より染色体DNAを調製した後、HPT遺伝子発現カセットが染色体上に相同組換えにより組み込まれたかどうかをPCRにより調べた。
【0310】
このためのプライマーとして、HPT遺伝子発現に用いたPGK遺伝子プロモーター断片の5’端外側の塩基配列をもとに合成した、
プライマー1;5'CAAGTTGATCCTTCTCCGGA3' (配列番号:35)及び、HPT遺伝子内部の配列をもとに合成した、
プライマー2;5'GAAACTTCTCGACAGACGTC3' (配列番号:36)及び、HPT遺伝子発現に用いたPGK遺伝子ターミネーター断片内の配列をもとに合成した
プライマー3;5'CATCGGGTAAGGTCTACATG3' (配列番号:37)の合計3種類のプライマーを使用した。
【0311】
PCRの条件は、95℃1分、55℃1分、72℃5分とし、30サイクル行った。その結果は図50に示される通りであった。図50(1)はプライマー1とプライマー3とを用いたPCR反応産物の電気泳動図である。この結果より、すべてのサンプルについて内在性のPGK遺伝子による2.7kbの増幅断片が認められたほか、No.3、5、7、9、および10の5つのサンプルについては2.6kbの断片が認められた。これは形質転換に用いたPGK遺伝子プロモーターと、HPT遺伝子と、そしてPGK遺伝子ターミネーターとを含む断片によって、内在性の2個のPGK遺伝子のうち1個が置き換えられたことにより生じたと考えられた。さらに、同じDNAサンプルについてプライマー1とプライマー2とを用いてPCRを行った結果は図50(2)に示される通りであった。その結果より、2.6kbの断片が認められた5個のサンプルについて1.4kbの増幅断片が認められ、これら5クローンに関しては相同組換えによって、内在性PGK遺伝子がHPT遺伝子に置き換えられたことが示された。
【0312】
本明細書に開示される発明は下記の通りである。
【0313】
(1) キャンディダ・ユティリスのリボソーム構成蛋白質L41をコードする遺伝子配列を含んでなる、DNA配列。
【0314】
(2) キャンディダ・ユティリスのリボソーム構成蛋白質L41が図14に記載のアミノ酸配列(配列番号:6)を有するものである、(1)記載のDNA配列。
【0315】
(3) プロモーター配列、およびターミネーター配列をさらに含んでなる、(1)または(2)記載のDNA配列。
【0316】
(4) 図13に記載の塩基配列(配列番号:5)を有する、(3)記載のDNA配列。
【0317】
(5) 図14に記載のアミノ酸配列(配列番号:6)の56番目のプロリンがグルタミンに置換されたアミノ酸配列を有する蛋白質であって、酵母にシクロヘキシミド耐性を付与するシクロヘキシミド耐性型L41蛋白質をコードする遺伝子配列を含んでなる、DNA配列。
【0318】
(6) (5)記載のDNA配列を含んでなる、プラスミド。
【0319】
(7) 図6(b)の制限酵素地図で表される、キャンディダ・ユティリスのrRNA遺伝子群を含んでなる、約13.5kbのDNA断片およびその部分DNA配列。
【0320】
(8) (7)記載の約13.5kbのDNA断片を反復して含んでなる、DNA配列。
【0321】
(9) (7)記載のDNA配列を含んでなる、プラスミド。
【0322】
(10) サッカロミセス・セレビシエ酵母のura3変異を相補する、キャンディダ・ユティリス由来のオルチジン−5´−フォスフェートデカルボキシラーゼ(URA3)蛋白質をコードする遺伝子配列を含んでなる、DNA配列。
【0323】
(11) キャンディダ・ユティリス由来のURA3蛋白質が図10および図11に記載のアミノ酸配列(配列番号:4)である、(10)記載のDNA配列。
【0324】
(12) 図9に記載の塩基配列(配列番号:3)、またはサッカロミセス・セレビシエ酵母のura3変異を相補する機能を保持するその部分配列を含んでなる、(11)記載のDNA配列。
【0325】
(13) (12)記載のDNA配列を含んでなる、プラスミド。
【0326】
(14) キャンディダ・ユティリスのホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)遺伝子プロモーター配列。
【0327】
(15) 図3に記載の塩基配列(配列番号:2)のうち少なくとも946番〜1346番までの配列を有する配列、またはPGK遺伝子プロモーター活性を有するその部分配列を含んでなる、(14)記載のPGK遺伝子プロモーター配列。
【0328】
(16) キャンディダ・ユティリスのPGK遺伝子ターミネーター配列。
【0329】
(17) 図2に記載の塩基配列(配列番号:1)、またはPGK遺伝子ターミネーター活性を有するその部分配列を含んでなる、(16)記載のPGK遺伝子ターミネーター配列。
【0330】
(18) (14)または(15)記載のPGK遺伝子プロモーター配列と、(16)または(17)記載のPGK遺伝子ターミネーター配列とを含んでなる、遺伝子発現ユニット。
【0331】
(19) (18)記載の遺伝子発現ユニットを含んでなる、プラスミド。
【0332】
(20) プラスミドpPGKPT3、pPGKPT4、またはpPGKPT5である、(19)記載のプラスミド。
【0333】
(21) (14)または(15)記載のPGK遺伝子プロモーター配列と、その配列の下流に連結されてなる異種遺伝子とを含んでなる、DNA配列。
【0334】
(22) (14)または(15)記載のPGK遺伝子プロモーター配列と、その配列の下流に連結されてなる異種遺伝子と、その異種遺伝子の下流に連結されてなる(16)または(17)記載のPGK遺伝子ターミネーター配列とを含んでなる、DNA配列。
【0335】
(23) キャンディダ・ユティリスのグリセロアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAP)遺伝子プロモーター配列。
【0336】
(24) 図30に記載の塩基配列(配列番号:7)、またはGAP遺伝子プロモーター活性を有するその部分配列を含んでなる、(23)記載のGAP遺伝子プロモーター配列。
【0337】
(25) キャンディダ・ユティリスのGAP遺伝子ターミネーター配列。
【0338】
(26) 図31に記載の塩基配列(配列番号:8)、またはGAP遺伝子ターミネーター活性を有するその部分配列を含んでなる、(25)記載のGAP遺伝子ターミネーター配列。
【0339】
(27) (23)または(24)記載のGAP遺伝子プロモーター配列と、(25)または(26)記載のGAP遺伝子ターミネーター配列とを含んでなる、遺伝子発現ユニット。
【0340】
(28) (27)記載の遺伝子発現ユニットを含んでなる、プラスミド。
【0341】
(29) プラスミドpGAPPT1またはpGAPPT2である、(26)記載のプラスミド。
【0342】
(30) (23)または(24)記載のGAP遺伝子プロモーター配列と、その配列の下流に連結されてなる異種遺伝子とを含んでなる、DNA配列。
【0343】
(31) (23)または(24)記載のGAP遺伝子プロモーター配列と、その配列の下流に連結されてなる異種遺伝子と、その異種遺伝子の下流に連結されてなる(25)または(26)記載のGAP遺伝子ターミネーター配列とを含んでなる、DNA配列。
【0344】
(32) キャンディダ・ユティリスの原形質膜プロトンATPase(PMA)遺伝子プロモーター配列。
【0345】
(33) 図34に記載の塩基(配列配列番号:9)、またはPMA遺伝子プロモーター活性を有するその部分配列を含んでなる、(32)記載のPMA遺伝子プロモーター配列。
【0346】
(34) キャンディダ・ユティリスのPMA遺伝子ターミネーター配列。
【0347】
(35) 図35に記載の塩基配列(配列番号:10)、またはPMA遺伝子ターミネーター活性を有するその部分配列を含んでなる、(34)記載のPMA遺伝子ターミネーター配列。
【0348】
(36) (32)または(33)記載のPMA遺伝子プロモーター配列と、(34)または(35)記載のPMA遺伝子ターミネーター配列とを含んでなる、遺伝子発現ユニット。
【0349】
(37) (36)記載の遺伝子発現ユニットを含んでなる、プラスミド。
【0350】
(38) プラスミドpMAPT1である、(37)記載のプラスミド。
【0351】
(39) (32)または(33)記載のPMA遺伝子プロモーター配列と、その配列の下流に連結されてなる異種遺伝子とを含んでなる、DNA配列。
【0352】
(40) (32)または(33)記載のPMA遺伝子プロモーター配列と、その配列の下流に連結されてなる異種遺伝子と、その異種遺伝子の下流に連結されてなる(34)または(35)記載のPMA遺伝子ターミネーター配列とを含んでなる、DNA配列。
【0353】
(41) (21)、(22)、(30)、(31)、(39)、(40)のいずれか一項記載のDNA配列で宿主細胞を形質転換し、該形質転換細胞を培養して異種遺伝子を発現させることを含んでなる、異種遺伝子の発現法。
【0354】
(42) 宿主細胞が酵母である、(41)記載の異種遺伝子の発現法。
【0355】
(43) 宿主細胞がキャンディダ・ユティリスである、(42)記載の異種遺伝子の発現法。
【0356】
(44) キャンディダ・ユティリスの染色体DNAと相同な配列(「相同DNA配列」)と、形質転換体選択のためのマーカー遺伝子と、そして場合によって異種遺伝子とを含んでなるベクターであって、前記相同DNA配列内において制限酵素切断され直鎖状とされて、相同組換えによって異種遺伝子をキャンディダ・ユティリスの染色体DNAに組み込むことができる、ベクター。
【0357】
(45) 前記マーカー遺伝子と、場合によって前記異種遺伝子とを含んだDNA配列が、その両端において前記相同DNA配列に挟まれてなり、該相同DNA配列において制限酵素切断され直鎖状とされて、相同組換えによって前記DNA配列をキャンディダ・ユティリスの染色体DNAに組み込むことができる、(44)記載のベクター。
【0358】
(46) 前記相同DNA配列が、(1)〜(5)いずれか一項記載のrRNA遺伝子配列またはその一部のDNA配列を含んでなるものである、(44)また(45)記載のベクター。
【0359】
(47) 前記相同DNA配列が、(7)〜(8)いずれか一項記載のURA3遺伝子配列またはその一部のDNA配列を含んでなるもの、である、(44)または(45)記載のベクター。
【0360】
(48) 前記相同DNA配列が、(10)〜(12)いずれか一項記載のL41遺伝子配列またはその一部のDNA配列を含んでなるものである、(44)または(45)記載のベクター。
【0361】
(49) 前記相同DNA配列が、PGK遺伝子配列を含んでなるものである、(44)または(45)記載のベクター。
【0362】
(50) 前記相同DNA配列が、GAP遺伝子配列を含んでなるものである、(44)または(45)記載のベクター。
【0363】
(51) 前記相同DNA配列が、PMA遺伝子配列を含んでなるものである、(44)または(45)記載のベクター。
【0364】
(52) マーカー遺伝子が薬剤耐性マーカー遺伝子である、(44)〜(51)いずれか一項に記載のベクター。
【0365】
(53) 薬剤耐性マーカー遺伝子がシクロヘキシミド耐性を付与する遺伝子である、(52)記載のベクター。
【0366】
(54) シクロヘキシミド耐性を付与する遺伝子がシクロヘキシミド耐性型L41遺伝子である、(53)記載のベクター。
【0367】
(55) シクロヘキシミド耐性型L41遺伝子として、(5)記載のDNA配列を含んでなる、(54)記載のベクター。
【0368】
(56) キャンディダ・ユティリスで機能するプロモーターで発現する薬剤耐性マーカー遺伝子を含んでなる、(52)記載のベクター。
【0369】
(57) 薬剤耐性マーカー遺伝子が抗生物質G418耐性を付与する遺伝子である、(56)記載のベクター。
【0370】
(58) 抗生物質G418耐性を付与する遺伝子が、バクテリアトランスポゾンTn903由来のアミノグリコシド−3’−ホスホトランスフェラーゼ(APT)遺伝子である、(57)記載のベクター。
【0371】
(59) 薬剤耐性マーカー遺伝子が抗生物質ハイグロマイシンB耐性を付与する遺伝子である、(56)記載のベクター。
【0372】
(60) 抗生物質ハイグロマイシンB耐性を付与する遺伝子が、大腸菌プラスミド由来のハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ(HPT)遺伝子である、(59)記載のベクター。
【0373】
(61) キャンディダ・ユティリスで機能するプロモーター配列と、該プロモーター配列により発現する異種遺伝子を含んでなり、場合によってさらにターミネーター配列を含んでなる、(44)〜(60)いずれか一項のベクター。
【0374】
(62) プロモーター配列またはターミネーター配列がキャンディダ・ユティリス由来のものである、(61)記載のベクター。
【0375】
(63) プロモーター配列が(14)、(15)、(23)、(24)、(32)、(33)いずれか一項に記載のプロモーター配列であり、ターミネーター配列が(16)、(17)、(25)、(26)、(34)、(35)いずれか一項に記載のターミネーター配列である、(62)記載のベクター。
【0376】
(64) (44)〜(63)いずれか一項に記載のベクターでキャンディダ・ユティリスを形質転換し、薬剤耐性となった形質転換体を選択することを含んでなる、キャンディダ・ユティリスの形質転換法。
【0377】
(65) (44)〜(63)いずれか一項記載のベクターのDNA配列がキャンディダ・ユティリスの染色体に保持される、(64)記載の形質転換法。
【0378】
(66) ベクターDNA配列がキャンディダ・ユティリスの染色体に多コピーで導入される、(65)記載の形質転換法。
【0379】
(67) マーカー遺伝子としてのシクロヘキシミド耐性型L41遺伝子を含んでなるベクターを用いる、(66)記載の形質転換法。
【0380】
(68) rRNA遺伝子配列を含んでなるベクターを用い、その結果高頻度で形質転換体が得られる、(67)記載の形質転換法。
【0381】
(69) ベクターのマーカー遺伝子がシクロヘキシミド耐性型L41遺伝子であるベクターを用いる(68)記載の形質転換法。
【0382】
(70) ベクターDNA配列が相同組換えによって染色体に導入される、(64)〜(69)いずれか一項記載の形質転換法。
【0383】
(71) ベクターDNA配列がURA3遺伝子座、L41遺伝子座、PGK遺伝子座、GAP遺伝子座、またはPMA遺伝子座に保持される(70)記載の形質転換法。
【0384】
(72) キャンディダ・ユティリスがATCC9256、ATCC9226、およびATCC9950からなる群から選択されるものである、(64)〜(71)いずれか一項記載の形質転換法。
【0385】
(73) 電気パルス法による、(64)〜(72)いずれか一項に記載の形質転換法。
【0386】
(74) 電気パルス条件が、菌生存率が10〜40%であり、タイムコンスタントが10〜20ミリ秒である、(73)記載の形質転換法。
【0387】
(75) 自律複製機能を有するDNA断片であって、キャンディダ・ユティリス内で、当該DNA断片を含むベクターを、染色体外要素であるプラスミドとして保持させ、宿主の形質転換頻度を増加させることができる、DNA断片。
【0388】
(76) 前記自律複製DNA断片が酵母由来である、(75)記載のDNA断片。
【0389】
(77) 前記酵母がキャンディダ・ユティリスである、(76)記載のDNA断片。
【0390】
(78) 前記自律複製DNA断片が図41および42に記載の塩基配列(配列番号:11)、または自律複製機能を有するその部分配列を含んでなる、DNA断片。
【0391】
(79) 前記自律複製DNA断片が図43および44に記載の塩基配列(配列番号:12)、または自律複製機能を有するその部分配列を含んでなる、DNA断片。
【0392】
(80) キャンディダ・ユティリスを形質転換でき、さらに(75)〜(79)いずれか一項に記載のDNA断片を含んでなり、キャンディダ・ユティリス内でプラスミドとして存在し得る、ベクター。
【0393】
(81) 選択マーカー遺伝子として(56)〜(60)いずれか一項に記載の薬剤耐性遺伝子を含んでなる、(80)記載のベクター。
【0394】
(82) キャンディダ・ユティリス酵母の形質転換法であって、(75)〜(79)いずれか一項に記載の自律複製能を有するDNA断片および選択マーカー遺伝子を含んでなるプラスミドと、キャンディダ・ユティリスの染色体DNAと相同なDNA配列(「相同DNA配列」)を両末端に有するDNA断片とでキャンディダ・ユティリス酵母を同時に形質転換し、該酵母のうち前記プラスミドによって形質転換された形質転換体を選択し、さらに相同なDNA配列を有する断片が染色体上に組み込まれた形質転換体を選択することからなる、形質転換法。
【0395】
(83) (82)で得られる形質転換体を、さらに非選択条件下で培養して前記プラスミドを脱落させることにより、外来DNA断片を含むが、選択マーカー遺伝子を含まない株を選択する方法。
【0396】
(84) 前記プラスミドが(81)記載のベクターである、(82)記載の形質転換法。
【0397】
(85) 相同DNA配列を両末端に有するDNA断片が異種遺伝子を含むものである、(82)の形質転換法。
【0398】
(86) 異種遺伝子を含むDNA配列と、キャンディダ・ユティリスの染色体DNAと相同な配列(「相同DNA配列」)とを含んでなり、かつマーカー遺伝子を含まないベクターであって、前記異種遺伝子を含むDNA配列がその両端において前記相同DNA配列に挟まれてなり、前記相同DNA配列において制限酵素切断され直鎖状とされて、相同組換えによって前記異種遺伝子を含むDNA配列をキャンディダ・ユティリスの染色体DNAに組み込むことができる、ベクター。
【0399】
(87) 相同DNA配列が、(1)〜(5)いずれか一項に記載のrRNA遺伝子配列、(7)〜(8)いずれか一項に記載のPMA遺伝子配列のURA3遺伝子配列、(10)〜(12)いずれか一項に記載のL41遺伝子配列、PGK遺伝子配列、GAP遺伝子配列、またはPMA遺伝子配列のうちいずれか、またはそれらの部分DNA配列から選択される、(86)記載のベクター。
【0400】
(88) 異種遺伝子を含むDNA配列で形質転換された、キャンディダ・ユティリス形質転換体。
【0401】
(89) 異種遺伝子を含むDNA配列が(44)〜(63)いずれか一項に記載のベクターである、(88)記載のキャンディダ・ユティリス形質転換体。
【0402】
(90) 異種遺伝子を含むDNA配列が(86)または(87)記載のベクターである、(88)記載のキャンディダ・ユティリス形質転換体。
【0403】
(91) 選択マーカー遺伝子を含まない、(90)記載のキャンディダ・ユティリス形質転換体。
【0404】
(92) キャンディダ・ユティリスがATCC9256、ATCC9226、およびATCC9950からなる群から選択されるものである、(88)〜(91)いずれか一項に記載のキャンディダ・ユティリス形質転換体。
【0405】
(93) 異種遺伝子によりコードされるペプチドの製造法であって、(88)〜(92)いずれか一項に記載のキャンディダ・ユティリス形質転換体を培養し、該培養物から異種遺伝子の発現産物を単離、精製することを含んでなる、方法。
【0406】
(94) 選択マーカー遺伝子として、転写のためのプロモーター配列を持たない薬剤耐性遺伝子を含んでなり、キャンディダ・ユティリス酵母内で、プラスミドとして存在しうる、(81)記載のプラスミド。
【0407】
(95) 薬剤耐性遺伝子がG418耐性を与えるバクテリアトランスポゾンTn903由来のAPT遺伝子である、(94)記載のプラスミド。
【0408】
(96) プラスミドpPCV2である、(95)記載のプラスミド。
【0409】
(97) (94)〜(96)いずれか一項に記載のプラスミドの薬剤耐性遺伝子の5’側にDNAの制限酵素部分分解断片をクローン化したDNAライブラリーによって、キャンディダ・ユティリスを形質転換し、当該薬剤耐性となる形質転換体を選択し、その形質転換体から回収されるプラスミドDNAからキャンディダ・ユティリス酵母内で機能する転写プロモーター活性を有するDNA断片を単離する、転写プロモーター活性を有するDNAの単離方法。
【0410】
(98) 制限酵素で部分分解されたDNAがキャンディダ・ユティリス酵母染色体DNAである、(97)記載の方法。
【0411】
(99) (97)または(98)記載の方法により単離され得る、キャンディダ・ユティリス酵母内で転写プロモーター活性を有するDNA断片。
【0412】
(100) DNA断片が制限酵素AluI、HaeIII 、またはRsaI、もしくはその組み合わせの制限酵素分解により染色体から切り出され、かつ0.8〜1.8kbの長さを有する、(99)記載のDNA断片。
【0413】
(101) 図48に記載の塩基配列(配列番号:13)、またはキャンディダ・ユティリス酵母内で転写プロモーター活性を有するその部分配列を含んでなる、DNA断片。
【0414】
(102) (99)〜(101)いずれか1つに記載のプロモーター配列と、その下流に連結されてなる異種遺伝子とを含んでなる、DNA配列。
【0415】
(103) (102)記載のDNA配列で宿主細胞を形質転換し、当該形質転換細胞を培養して異種遺伝子を発現させることを含んでなる、異種遺伝子の発現法。
【0416】
(104) 宿主細胞がキャンディダ・ユティリスである、(103)記載の異種遺伝子の発現法。
【0417】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)遺伝子を含むプラスミドの制限酵素地図とDNA塩基配列決定のストラテジー、およびPCRによるプロモーター、ターミネーター各断片の取得法を示す図である。
【図2】PGK遺伝子ターミネーターを含むDNA断片の塩基配列を表す図である。
【図3】PGK遺伝子プロモーターを含むDNA断片の塩基配列を表す図である。
【図4】PGK遺伝子プロモーター、およびターミネーターを利用した発現ベクタープラスミドの構築の説明図である。
【図5】リボソームDNAを含むプラスミドの制限酵素地図である。
【図6】リボソームDNAの構造と、DNA塩基配列決定のストラテジーおよびサブクローニングされたプラスミドの構造を表す図であって、図6(a)はプラスミドpCRE1、pCRE2、pCRE3、pCRX1、pCRX2、pCRX3、およびpCRX4プラスミドの構造を表し、図6(b)はキャンディダ・ユティリスのリボソームDNAを含んだ約13.5kbのDNAフラグメントの制限酵素地図である。
【図7】URA3遺伝子を含むプラスミドの制限酵素地図と、それらプラスミドのサッカロマイセス・セレビシエura3−変異の相補能を表す図である。
【図8】URA3遺伝子のDNA塩基配列決定のストラテジーと、制限酵素地図である。
【図9】URA3遺伝子を含むDNA断片の塩基配列を表す図である。
【図10】URA3遺伝子の塩基配列から推定されるアミノ酸配列およびそれをコードするDNAの塩基配列を表す図である。
【図11】URA3遺伝子の塩基配列から推定されるアミノ酸配列およびそれをコードするDNAの塩基配列であって、図10の続きの配列を表す図である。
【図12】L41遺伝子を含むプラスミドの制限酵素地図と、DNA塩基配列決定のストラテジーを示す図である。
【図13】L41遺伝子を含むDNA断片の塩基配列を表す図である。
【図14】L41遺伝子の塩基配列から推定されるアミノ酸配列およびそれをコードするDNAの塩基配列を表す図である。
【図15】プラスミドpCLBS10、およびpCLBS12の構築の説明図である。
【図16】プラスミドpCLRE2、pCLRE3、pCLRX1、およびpCLRX2の構築を表す図である。
【図17】さまざまな電気パルス条件でのATCC9950生菌率、および形質転換体数を調べた結果を表す図である。
【図18】プラスミドpCLRE2によって形質転換されたATCC9950株のDNAのサザンブロッティング解析の結果を表す電気泳動図である。
【図19】プラスミドpCLRE2によって形質転換されたATCC9226株、ATCC9256株、およびATCC9950株のDNAのサザンブロッティング解析の結果を表す電気泳動図である。
【図20】プラスミドpCLRE4、pCLRE5、pCLRE6、およびpCLRE7の構築を表す図である。
【図21】プラスミドpCLRE4、pCLRE5、pCLRE6、およびpCLRE7によって形質転換されたATCC9950株のDNAのサザンブロッティング解析の結果を表す電気泳動図である。
【図22】プラスミドpCLURA1によって形質転換されたATCC9950株のDNAのサザンブロッティング解析の結果を表す電気泳動図である。
【図23】プラスミドpCLSTA1、およびpCLRSTA1の構築の説明図である。
【図24】プラスミドpCLRSTA1により形質転換されたATCC9950株の培養上清をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で分析した結果を表わす電気泳動図である。
【図25】プラスミドpCLLAC1、およびpCLRLAC1の構築の説明図である。
【図26】プラスミドpCLAPH1、およびpCLRAPH1の構築の説明図である。
【図27】異なる薬剤耐性マーカー(CYHr:シクロヘキシミド耐性、G418r:G418耐性)により選択されたプラスミドpCLRAPH1によるATCC9950株形質転換体のDNAのサザンブロッティング解析の結果を表す電気泳動図である。
【図28】プラスミドpCRE8、pCRAPH2、pCRAPH3、pCRAPH4、pCRAPH5、およびpCRAPH6の構造を示した図である。
【図29】グリセロアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAP)遺伝子を含むプラスミドの制限酵素地図とDNA塩基配列決定のストラテジー、およびPCRによるプロモーター、ターミネーター各断片の取得法を示す図である。
【図30】GAP遺伝子プロモーターを含むDNA断片の塩基配列を表す図である。
【図31】GAP遺伝子ターミネーターを含むDNA断片の塩基配列を表す図である。
【図32】GAP遺伝子プロモーター、およびターミネーターを利用した発現ベクタープラスミドの構築の説明図である。
【図33】原形質膜プロトンATPase(PMA)遺伝子を含むプラスミドの制限酵素地図とDNA塩基配列決定のストラテジー、およびPCRによるプロモーター、ターミネーター各断片の取得法を示す図である。
【図34】PMA遺伝子プロモーターを含むDNA断片の塩基配列を表す図である。
【図35】PMA遺伝子ターミネーターを含むDNA断片の塩基配列を表す図である。
【図36】PMA遺伝子プロモーター、およびターミネーターを利用した発現ベクタープラスミドの構築の説明図である。
【図37】ARSを含むDNA断片のクローニングベクターpGKAPH2の構造を示す図である。
【図38】ARSを含むプラスミド6種類の挿入DNA断片の制限酵素地図を示した図である。
【図39】プラスミドpCARS6とその挿入DNA断片がサブクローン化された4種類のプラスミドの挿入DNA断片の制限酵素地図を示した図である。
【図40】プラスミドpCARS7とその挿入DNA断片がサブクローン化された5種類のプラスミドの挿入DNA断片の制限酵素地図を示した図である。
【図41】プラスミドpCARS6−2の挿入DNA断片の塩基配列を表す図である。
【図42】プラスミドpCARS6−2の挿入DNA断片の塩基配列を表す図であって、図41の続きの配列を表す図である。
【図43】プラスミドpCARS7−6の挿入DNA断片の塩基配列を表す図である。
【図44】プラスミドpCARS7−6の挿入DNA断片の塩基配列を表す図であって、図43の続きの配列を表す図である。
【図45】プラスミドpCARS6あるいはpCARS7によって形質転換されたATCC9950株のDNA(1)あるいはプラスミドpCLAC1によって形質転換されたATCC9950株のDNA(2)のサザンブロッティング解析の結果を表す電気泳動図である。
【図46】ATCC9950株、ATCC9226株、ATCC9256株、KP−2059P株、そしてS288C株のDNAについてCUARS1(1)、CUARS2{(2)および(3)}をプローブとしたサザンブロッティング解析の結果を表す電気泳動図である。
【図47】プロモータークローニングベクターpPCV2の構築の説明図である。
【図48】プラスミドpPCRV19のプロモーター活性を示すDNA断片の塩基配列を表す図である。
【図49】プラスミドpGKHPT1の構築の説明図である。
【図50】共形質転換法により形質転換されたATCC9950株DNAのPCR解析の結果を表す電気泳動図である。
Claims (6)
- 配列番号:7の塩基配列を含んでなる、キャンディダ・ユティリスのグリセロアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAP)遺伝子プロモーター。
- 請求項1記載のGAP遺伝子プロモーターと、配列番号:8の塩基配列を含んでなるキャンディダ・ユティリスのGAP遺伝子ターミネーターとを含んでなる、遺伝子発現ユニット。
- 請求項2記載の遺伝子発現ユニットを含んでなる、プラスミド。
- プラスミドpGAPPT1またはpGAPPT2である、請求項3記載のプラスミド。
- 請求項1記載のGAP遺伝子プロモーターと、その下流に連結されてなる異種遺伝子とを含んでなる、DNA。
- 請求項1記載のGAP遺伝子プロモーターと、その下流に連結されてなる異種遺伝子と、その異種遺伝子の下流に連結されてなる配列番号:8の塩基配列とを含んでなる、DNA。
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