JP4028089B2 - かご形回転子鉄心の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、かご形回転子鉄心の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に誘導電動機のかご形回転子は、回転子鉄心1の溝にアルミニウムをダイキャストにより鋳込んで二次導体2と回転子鉄心1両端に短絡環3を形成すると共に、回転子鉄心1の軸孔6に回転軸を嵌合させて形成される(図6参照)。前記回転子鉄心1の二次導体2の一例に、図2に示すような頭部が三角形で凸形状のものがある。この二次導体2の総断面積(導体2総数を加算したもの)と短絡環3(ドーナツ形状)の断面積(鉄心1端面に接する面積)の比が1:2.8〜1:3.5と大きい為に、鋳造された溶融金属(アルミニウム)の凝固速度は前記断面積比の逆数以上の冷却速度となっている。すると、短絡環3との境界となる二次導体2の境界部5では、既に凝固完了状態の二次導体2より遅れて短絡環3側の凝固が開始される。その時、境界部5では引張の残留応力(約1.8〜2.0Kg/mm2 )が加わった状態(図7(a)参照)で二次導体2が形成されることとなる。
【0003】
一方、二次導体2の断面積は電動機の電気特性から決定されるもので、前記境界部5での二次導体2と短絡環3の放射方向の長さ比は約1:2(図6参照)である。この二次導体2が短絡環3より放射方向長さが50%短い状態の境界部5に、電動機が運転されると運転時に発生する熱応力と遠心力の合計応力が加わる(図7(b)参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このように境界部5には、引張残留応力と熱応力及び遠心力の合計応力が繰返し応力として加わる。すると、図7(b)で示す短絡環3の内周側根元X(境界部5の内周側)ではこれらの応力により亀裂の発生する恐れがあり、二次導体2と短絡環3が分離する現象(二次導体2が切れる)が発生し電動機特性を低下させる要因となる。この為に、鋳造時の残留応力を電動機運転時の負荷応力以下に抑える必要性が出てくる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みて成されたもので、鋳造時の残留応力を現象又は内在した状態でも二次導体の切れる現象が発生しない、かご形回転子鉄心の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明におけるかご形回転子鉄心の製造方法は、請求項1では、円周方向に複数個の溝を有する電気鉄板を規定枚数積層して回転子鉄心を形成し、この回転子鉄心を予熱された金型内に挿入し該回転子鉄心を予熱して溶融金属との温度比を1.75〜1.8とした状態で溶融金属を溝に鋳込んで二次導体と短絡環を形成し、回転子鉄心及び短絡環温度が200℃以下となるまで冷却保持した後に金型内から形成されたかご形回転子鉄心を取出すかご形回転子鉄心の製造方法である。金型外しの鉄心温度と二次導体温度が約200℃以下となるまで冷却保持することで、境界部18にかかる応力を緩和することができる。
【0009】
請求項2では、前記電気鉄板を第1電気鉄板と第2電気鉄板で形成し、第1電気鉄板の溝と同数配置で且つ断面積が約1.5倍の溝を有する第2電気鉄板を規定枚数積層された第1電気鉄板の両端に規定枚数積層した回転子鉄心を予熱された金型内に挿入し、溶融金属を前記2種類の溝に鋳込んで第1,2導体と短絡環を形成するかご形回転子鉄心の製造方法である。この製法により段差部及び境界部の残留応力を除去する。
【0010】
請求項3では、形成されたかご形回転子鉄心を、再度、昇温速度20〜30℃/Hrで熱処理温度を200〜300℃で3〜6時間保持して炉冷する製造方法である。この歪取焼鈍により更に段差部及び境界部の残留応力を除去し得る。
【0011】
請求項4では、前記第1電気鉄板と第2電気鉄板を積層して回転子鉄心を形成後に、第1電気鉄板と第2電気鉄板との円弧段差部に半径3〜10mmの円弧を第2電気鉄板の溝側から加工して形成し、溶融金属を前記2種類の溝に鋳込んで形成する製造方法である。この製法で第1導体と第2導体との段差部に円弧段差部を形成させ、円弧段差部に集中する応力を分散緩和させる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下本発明の一実施例を図面を参照して説明する。図1は、かご形回転子鉄心の短絡環周辺の要部を示す断面図で、図2は図1のII方向断面図である。図3,4は回転子鉄心の電気抜板を夫々示す正面図である。
【0013】
図において、回転子鉄心は2種類の電気鉄板である第1電気鉄板(以下、第1鉄板)11, 第2電気鉄板(以下、第2鉄板)11aで形成され、第1鉄板11を複数枚積層して規定厚l1 とし、この第1鉄板11積層両端に第2鉄板11aを複数枚積層して規定厚l2 として、回転子鉄心は規定厚Lとなる。この第2鉄板11aの規定厚l2 は、回転子鉄心の規定厚Lの5〜10%(電動機特性を考慮して)に設定してある。前記第1鉄板11は、溝16形状が図3に示すように頭部16aが三角形で凸形状のものを円周方向に所定個数穿孔されている。次に第2鉄板11aは、第1鉄板11の溝16と同数穿孔され同溝16より断面積が約1.5倍大きい略茄子形状の溝17を図4に示すように穿孔されている。溝17の頭部17aは半径5〜10mmの円弧R1 状に形成され、前記溝16の頭部16aとは略外径である。
【0014】
この回転子鉄心を図示しない金型内に挿入して約400℃まで予熱し、約700〜720℃の溶融純アルミニウムを夫々の溝16,17にダイキャストにより鋳込み、金型外しの鉄心温度と二次導体温度が約200℃以下となるまで冷却保持する。この鋳込みにより溝16で第1導体である二次導体12を、溝17で第2導体である二次導体12aを夫々形成すると共に、二次導体12aに連通して回転子鉄心両端に短絡環13を有する図1に示すような、かご形回転子鉄心15を形成する。この時、かご形回転子鉄心15端面での二次導体12aの放射方向長さ(溝17高さ)と短絡環13の放射方向長さ(以下境界部18長さという)比は0.75〜1.0(図1では略1.0で表示)に形成されている。尚、二次導体12と二次導体12aとの段差部12c及び境界部18の残留応力を除去する歪取焼鈍として、再度かご形回転子鉄心15を昇温温度約20〜30℃/Hr,熱処理温度約200〜355℃で3〜6時間保持し炉冷してもよい。
【0015】
このように形成された境界部の作用効果を述べる。
境界部18長さ比を0.75〜1.0にしたことにより二次導体12aと短絡環13での段差がなくなる若しくは小さくなり、しかも二次導体12aの断面積は茄子形状で二次導体12の多角形に比べ角がないので角部への応力集中問題がない上に断面積は約1.5倍大きくなっており、短絡環13の内径側での二次導体12a強度が増加する。即ち、図9で示す100℃における修正グッドマン線図での破線で示す応力計算値が、従来のa点から境界部18長さ比が0.75の場合はb点へ、境界部18長さ比が1.0の場合はc点へと夫々移動して低下する。この結果、境界部18での残留応力が低下する。尚、図9でAは疲労試験のS−N曲線の1.0*10における疲労限度を示し、Bは100℃での引張強度である。また、図8は100℃における応力−歪み線図である。
【0016】
又、溝17の頭部17aは半径5〜10mmの円弧R1 状になっているので、形成された二次導体12aの頭部も円弧状になっている。この為、従来の頭部は三角形であつたので頂点に応力が集中し、この頂点で亀裂の発生する恐れがあったが、本実施例は三角形から円弧状になることで応力が分散されて頭部頂点での強度が高くなり亀裂発生の恐れがなくなった。更に、金型外しの鉄心温度と二次導体温度が約200℃以下となるまで冷却保持することで、境界部18にかかる応力を緩和することができる。しかも、二次導体12aと二次導体12の段差部12cは回転子鉄心内にあるので、回転による短絡環13の遠心力を鉄心によって保護される。
【0017】
これらの相乗効果で、電動機が運転された時に従来の境界部5で発生していた応力が緩和され、境界部5の内径側の段差部Xや外径側頭部で亀裂発生の恐れがあったが、本実施例の境界部18ではなくなった。そして、段差部12c及び境界部18の残留応力を除去する歪取焼鈍を実施すると、この効果は更に向上する。
【0018】
(第2実施例)
第2実施例を図5を参照して説明する。第1実施例と異なるのは、二次導体12aと二次導体12の段差部12cを円弧段差部24に形成したことである。これは、積層された電気抜板11両端に電気抜板11aを複数枚積層した後に、図1に示す段差部12cを溝17から研磨加工により半径3〜10mmの円弧R2 を設け、二次導体12aと二次導体12間の段差部12cに円弧段差部24を形成する。これは、電動機運転による発生する短絡環13及び二次導体12a,二次導体12の熱応力によって軸方向には伸縮作用が働き、この伸縮作用と短絡環13の遠心力が段差部12cに一点集中するのを円弧段差部24で分散支持することで緩和される。この結果、二次導体12aと二次導体12間の段差部12cでの切断発生の可能性を更になくすることができる。
【0019】
(第3実施例)
第3実施例を図10を参照して説明する。第1実施例と異なるのは、回転子鉄心の溝へ鋳込む溶融した純アルミニウムに、成分構成がAl−10%Ti−Bの合金を、溶解重量に対して0.2〜1.0重量%まで0.2%ピッチで添加し、形成される二次導体の電気伝導率を57IACS%以上を狙うと共に二次導体強度の向上にある。電気伝導率及び強度調査は二次導体12aと略同形状の試料を製作して比較試験した。その結果を図10に示した。
【0020】
電気伝導率は添加した0.2〜1.0重量%の全試料が57IACS%以上となり目的を達成した。又、Al−10%Ti−B合金の添加で結晶組織を微細化することができて引張り強度は若干バラツキはあるものの8〜13%向上し、伸びは略同等のものが形成されている。この結果から、Al−10%Ti−B合金を添加した材料を強度が向上した二次導体材料として使用可能で、段差部12c及び境界部18の耐残留応力を改善できる。
【0021】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、回転子鉄心端面での二次導体と短絡環の境界部が強度補強され、この境界部での亀裂発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を示すかご形回転子鉄心の要部断面図、
【図2】図1のII方向断面図、
【図3】溝形状を示す第1電気鉄板の平面図、
【図4】溝形状を示す第2電気鉄板の平面図、
【図5】第2実施例を示す図1相当図、
【図6】従来のかご形回転子鉄心の断面図、
【図7】二次導体と短絡環にかかる応力の説明図、
【図8】応力−歪み線図、
【図9】修正グッドマン線図、
【図10】アルミ材料にAl−10%Ti−B添加による強度比較図。
【符号の説明】
11…第1電気鉄板(第1鉄板)、 11a…第2電気鉄板(第2鉄板)、
12…第1導体(二次導体)、 12a…第2導体(二次導体)、
12c…段差部、 13…短絡環、
15…かご形回転子鉄心、 16,17…溝、
16a,17a…頭部、 5,18…境界部、
24…円弧段差部、 R1 ,R2 …円弧。
Claims (5)
- 円周方向に複数個の溝を有する電気鉄板を規定枚数積層して回転子鉄心を形成し、この回転子鉄心を予熱された金型内に挿入し該回転子鉄心を予熱して溶融金属との温度比を1.75〜1.8とした状態で溶融金属を溝に鋳込んで二次導体と短絡環を形成し、回転子鉄心及び短絡環温度が200℃以下となるまで冷却保持した後に金型内から形成されたかご形回転子鉄心を取出すことを特徴とするかご形回転子鉄心の製造方法。
- 前記電気鉄板を第1電気鉄板と第2電気鉄板で形成し、第1電気鉄板の溝と同数配置で且つ断面積が約1.5倍の溝を有する第2電気鉄板を規定枚数積層された第1電気鉄板の両端に規定枚数積層した回転子鉄心を予熱された金型内に挿入し、溶融金属を前記2種類の溝に鋳込んで第1,2導体と短絡環を形成する請求項1記載のかご形回転子鉄心の製造方法。
- 形成されたかご形回転子鉄心を、再度、昇温速度20〜30℃/Hrとし熱処理温度200〜300℃で3〜6時間保持して炉冷する請求項1または2記載のかご形回転子鉄心の製造方法。
- 前記第1電気鉄板と第2電気鉄板を積層して回転子鉄心を形成後に、第1電気鉄板と第2電気鉄板との境界段差部に半径3〜10mmの円弧を第2電気鉄板の溝側から加工して形成し、溶融金属を前記2種類の溝に鋳込んで形成する請求項1乃至3のいずれか記載のかご形回転子鉄心の製造方法。
- 前記溶融金属を純アルミニウムとし、この純アルミニウムに成分構成がAl− 10 %Ti−Bの合金を溶解重量に対して0.2〜1.0重量%まで0.2%ピッチで添加し製造する請求項1乃至4のいずれか記載のかご形回転子鉄心の製造方法。
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