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JP4032282B2 - 固体高分子電解質膜型燃料電池 - Google Patents
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JP4032282B2 - 固体高分子電解質膜型燃料電池 - Google Patents

固体高分子電解質膜型燃料電池 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は固体高分子電解質膜型燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体高分子電解質膜型燃料電池は、電解質として固体高分子電解質膜を用いた燃料電池である。この固体高分子電解質膜はイオン交換膜を含み、必要に応じてイオン交換膜の強度を補強する補強膜を含むことができる。そしてこの固体高分子電解質膜の両面にはアノード触媒層(水素電極)とカソード触媒層(酸素電極)が配置されている。通常この固体高分子電解質膜とアノード触媒層とカソード触媒層とを熱圧着して一体化して膜電極接合体を構成している。
【0003】
発電中の固体高分子電解質膜型燃料電池の膜電極接合体の内部において以下の現象が生じている。アノード触媒層に供給された水素(H2)は電子(e)を放出して、プロトン(H+)となって固体高分子電解質膜に導入される。そして固体高分子電解質膜内部に浸透したプロトンは水分子と共に固体高分子電解質膜の内部をカソード触媒層の方向に移動する。
【0004】
アノード触媒層において水素から放出された電子は外部回路に流出する。この外部回路に流出した電子は外部回路を通って、カソード触媒層に達する。そしてアノード触媒層から移動してきたプロトンは、ここで外部回路を通過した電子を受け取り、カソード触媒層に供給された酸素(O2)と反応して、水(H2O)を生成する。
【0005】
なおここで図1にセルの構造を示す。理解を容易にするために膜電極接合体10とその両側に配置されたアノードセパレータ30及びカソードセパレータ20は分離して描いてある。
【0006】
通常図1に示すように、アノード触媒層13の側に配置されたアノードセパレータ30のアノード触媒層13側の面には、アノード触媒層13に供給される水素が流れる水素流路31として用いられる凹状の溝が設けられている。またカソード触媒層12の側に配置されたカソードセパレータ20のカソード触媒層12側の面には、カソード触媒層12に供給される酸素が流れる酸素流路21として用いられる凹状の溝が設けられている。このように水素流路31及び酸素流路21から、アノード触媒層13及びカソード触媒層12にそれぞれ水素及び酸素がガスの状態で供給される。
【0007】
またカソード触媒層12とカソードセパレータ20との間には酸素ガスを拡散する拡散層(図示しない)が、そしてアノード触媒層13とアノードセパレータ30との間には酸素ガスを拡散する拡散層(図示しない)を配設することができる。
【0008】
なおここで示した例では、アノードセパレータ30の水素流路31が設けられた面とは反対の面に冷却水が通る凹状の溝からなる冷却水路32が設けられている。同様にカソードセパレータ20の酸素流路21が設けられた面とは反対の面に冷却水が通る凹状の溝からなる冷却水路22が設けられている。
【0009】
このようにアノード触媒層13にはアノードセパレータ30に備えられた水素流路31から水素ガスが供給される。この場合上述したように通常水素ガスはアノード触媒層13で反応して電子を放出してプロトンとなって固体高分子電解質膜を通過するか或いは反応せずに系外に排出されるが、プロトンとならずに水素ガスのままアノード触媒層13及び固体高分子電解質膜11を通過するとカソード触媒層12に至るということが生じうる。また同様に酸素ガスについても通常はカソード触媒層12においてプロトンと反応して水分子を生成するか或いは系外に排出されるが、やはり酸素ガスのままカソード触媒層12及び固体高分子電解質膜11を通過してアノード触媒層13に至るということが生じる。このように酸素ガス或いは水素ガスが反応することなく、反対の触媒層(電極)にまで至る現象をガスのクロスオーバー現象という。
【0010】
このようなクロスオーバー現象は、燃料電池の性能を低下する原因となる現象である。そこで従来からこのクスオーバー現象を阻止する手法が提案されてきた。
【0011】
例えば、特開平8−298128号公報には、アノード側イオン交換膜とカソード側イオン交換膜とその間に形成されたイオン交換膜(以下「中間層イオン交換膜」という)というようにイオン交換膜を3層構造として、中間層イオン交換膜に水素ガスと酸素ガスから水を生成する反応を促進する触媒を含有させるという手法が提案されている。この中間層イオン交換膜に、水素ガスと酸素ガスから水を生成する反応を促進させる触媒を含有させることによって、水素ガス及び酸素ガスがそのまま反対側の電極に至るのではなく、この中間層イオン交換膜において水とすることができ、クロスオーバー現象を阻止することができるとされている。
【0012】
また特開平7−90111号公報には、「パーフルオロカーボンスルホン酸、ポリサルフォン、パーフルオロカルボン酸、スチレン−シビニルベンゼンスルフォン酸のカチオン交換樹脂及びスチレン−ブタジエン系アニオン交換樹脂の群から選ばれた高分子固体電解質に、白金、金、パラジウム、ロジウム、イリジウム及びルテニウムの中から選ばれた金属触媒の少なくとも一つ以上を前記高分子固体電解質の重量に対して0.01〜80重量%含有して成る」高分子固体電解質組成物が提案されている。この特開平7−90111号公報で提案された手法も、また固体高分子電解質膜において水を生成することでクロスオーバーを阻止しようとする手法である。
【0013】
このようにクロスオーバー現象を阻止する手法として、固体高分子電解質膜の内部においてアノード触媒層やカソード触媒層をそのまま通過してきた酸素ガスと水素ガスとから水分子を生成する手法が提案されてきた。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の手法は、固体高分子電解質膜を透過しようとする酸素ガス及び水素ガスから触媒を利用して水分子の生成を促進する手法である。従ってイオン交換膜に含まれる触媒によって水分子として生成されなかった酸素ガス及び水素ガスは酸素ガス及び水素ガスはそのまま反対側にまで移動してしまう。しかし固体高分子電解質膜内部を移動している酸素ガスや水素ガスの全てを触媒の作用によって水に生成するということは困難である。そこで触媒を用いる手法以外の手法の開発が求められていた。
【0015】
そこで本発明の目的とするところは、クロスオーバー阻止効果に優れた固体高分子電解質膜型燃料電池を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段、作用及び効果】
本発明者は、固体高分子電解質膜型燃料電池に用いられるセルの構造を検討した結果、固体高分子電解質膜が概ね30〜200μm程度の膜厚しか有していないということ、また固体高分子電解質膜の両側に配置されたカソード触媒層やアノード触媒層に供給される酸素ガスや水素ガスには圧力が加えられているということにクロスオーバー現象が生ずる原因があると考えた。
【0017】
特に酸素ガスや水素ガスがそれぞれ流れる酸素流路や水素流路の水素導入口辺りでは酸素ガスや水素ガスのガス圧力が高くなっており、酸素流路や水素流路の排出口辺りでは逆に酸素ガスや水素ガスのガス圧力が低くなっている。従って水素ガスが水路流路に導入される部位ではアノード触媒層及び固体高分子電解質膜にかかる水素ガスの圧力が高くなっており、アノード触媒層で反応しなかった水素ガスがそのまま固体高分子電解質膜に浸透するということが生じやすくなっている。
【0018】
この場合において、水素流路に水素ガスが導入される導入口に対応している固体高分子電解質膜の部位が同時に酸素流路から酸素ガスが排出される排出口に対応しているということが生ずる。図1に示すように、酸素流路と水素流路とは異なる平面上に位置するので平行になるように設定する必要がなく、ねじれた位置関係になるように設定することができる。通常はこのようなねじれの位置関係に酸素流路と水素流路は設定されている。また平行な位置関係に設定したとしても、酸素流路及び水素流路中を流れる酸素ガス及び水素ガスとが流れる向きが反対であればこのようなことが生ずる。
【0019】
この部位においてはアノード触媒層の側では水素ガスの圧力が強く、カソード触媒層の側では酸素ガスが圧力が弱くなっている。従ってこの部位ではそれだけアノード触媒層で反応しなかった水素ガスがそのまま固体高分子電解質膜を透過するということがより生じやすくなっていると考えられる。
【0020】
例えば発明者が観察した固体高分子電解質膜型燃料電池においては、水素流路の水素導入口では水素のガス圧が0.15MPa、その排出口では水素のガス圧が0.1MPaであり、酸素流路の導入口では酸素のガス圧が0.2MPaであり、その排出口では酸素のガス圧が0.1MPaであった。この例では、固体高分子電解質膜における水素流路の水素導入口に対応する部位であり同時に酸素流路の排出口に対応する部位では水素のガス圧と酸素のガス圧とでは0.05MPaの圧力差が生じていることになる。従ってアノード触媒層で反応しなかった水素ガスがそのまま固体高分子電解質膜を透過しやすくなっていると考えられる。
【0021】
そこで本発明者は、鋭意研究の結果、上記課題を解決する固体高分子電解質膜型燃料電池を発明した。
【0022】
上記課題を解決する第1の発明は、イオン交換膜を含む固体高分子電解質膜と固体高分子電解質膜の両側に対向して配設されたアノード触媒層とカソード触媒層とを含む膜電極接合体と、膜電極接合体の両側に対向して配設され水素が流れる水素流路を備えるアノードセパレータと酸素が流れる酸素流路を備えるカソードセパレータとを有する固体高分子電解質膜型燃料電池において、固体高分子電解質膜は、水素流路の水素を導入する水素導入口に対応している部位の膜厚が、水素導入口に対応していない部位の膜厚よりも漸次厚くされているとともに、固体高分子電解質膜の膜厚は、水素流路に沿って水素導入口に対応している部位に向かって漸次厚くされていることを特徴とする固体高分子電解質膜型燃料電池である。
【0023】
水素流路は通常凹状の溝で形成されている。そしてこの水素流路においては水素が導入される水素導入口で水素のガス圧が最も高くなっている。従ってこの水素導入口に対応しているアノード触媒層及び固体高分子電解質膜の部位はこの高いガス圧の水素によって圧せられている。従ってこの水素ガスのガス圧の高さによって、アノード触媒層で反応しなかった水素ガスがそのままイオン交換膜を含む固体高分子電解質膜を透過するということが生じ易くなっている。そこで第1の発明の固体高分子電解質膜型燃料電池は、固体高分子電解質膜においてこの水素導入口に対応している部位の膜厚を厚くすることで、水素ガスがそのまま反対側即ちカソード触媒層側に移動することを阻止している。
【0024】
このように第1の発明の固体高分子電解質膜型燃料電池はクロスオーバー現象を阻止する効果を有する。また水素のガス圧が高い水素導入口に対応する固体高分子電解質膜の部位の膜厚を厚くし、他の部位の膜厚はそれよりも薄くしているので、固体高分子電解質膜の抵抗値が増大することを防ぐことができる。
【0025】
またこの場合において、固体高分子電解質膜は水素導入口に対応している部位であって同時に酸素流路の酸素を排出する酸素排出口に対応している部位の膜厚が他の部位の膜厚よりも漸次厚くされていることが好ましい。
【0026】
即ち上述したように、この部位ではアノード触媒層及び固体高分子電解質膜に加えられる水素ガスの圧力は高く、反対にカソード触媒層及び固体高分子電解質膜に加えられる酸素ガスの圧力は低い。そのためにアノード触媒層で反応しなかった水素ガスが固体高分子電解質膜をそのまま透過するということがより生じ易くなっている。そこでこの部位の膜厚を他の部位の膜厚よりも更に漸次厚くすることで、水素ガスがそのまま反対側に移動することを阻止している。
【0028】
固体高分子電解質膜には、アノード触媒層からカソード触媒層へプロトンを移動させるためにイオン交換膜が用いられるが、上述したように、このイオン交換膜を補強するためにイオン交換膜の膜面に接して補強膜が設けられている。
【0029】
上記課題を解決する第2の発明は、イオン交換膜を含む固体高分子電解質膜と固体高分子電解質膜の両側に対向して配設されたアノード触媒層とカソード触媒層とを含む膜電極接合体と、膜電極接合体の両側に対向して配設され水素が流れる水素流路を備えるアノードセパレータと酸素が流れる酸素流路を備えるカソードセパレータとを有する固体高分子電解質膜型燃料電池において、固体高分子電解質膜は、水素流路の水素を導入する水素導入口に対応している部位の密度が、水素導入口に対応していない部位の密度よりも漸次大きくされていることを特徴とする固体高分子電解質膜型燃料電池である。
【0030】
第1の発明の固体高分子電解質膜型燃料電池が、水素流路の水素導入口に対応する部位の固体高分子電解質膜の膜厚を他の部位の膜厚よりも漸次厚くすることで、水素ガスがそのままカソード触媒層側に移動することを阻止しているのに対して、第2の発明の固体高分子電解質膜型燃料電池は、水素流路の水素導入口に対応する部位の固体高分子電解質膜の密度を他の部位の密度よりも大きくすることで、水素ガスがそのままカソード触媒層側に移動することを阻止している。
【0031】
このように第2の発明の固体高分子電解質膜型燃料電池はクロスオーバー現象を阻止する効果を有する。また水素のガス圧が高い水素導入口に対応する固体高分子電解質膜の部位の密度を大きくし、他の部位の密度はそれよりも小さくしているので、固体高分子電解質膜の抵抗値が増大することを防ぐことができる。
【0032】
またこの場合において、固体高分子電解質膜は水素導入口に対応している部位であって同時に酸素流路の酸素を排出する酸素排出口に対応している部位の密度が他の部位の密度よりも漸次大きくされていることが好ましい。
【0034】
固体高分子電解質膜には、アノード触媒層からカソード触媒層へプロトンを移動させるためにイオン交換膜が用いられるが、上述したように、このイオン交換膜を補強するためにイオン交換膜の膜面に接して補強膜が設けられている。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下の本発明の固体高分子電解質膜型燃料電池の実施の形態について説明する。
【0036】
(第1の発明の実施の形態)
▲1▼構成等
第1の発明の固体高分子電解質膜型燃料電池は、イオン交換膜を含む固体高分子電解質膜と固体高分子電解質膜の両側に対向して配設されたアノード触媒層とカソード触媒層とを含む膜電極接合体と、膜電極接合体の両側に対向して配設され水素が流れる水素流路を備えるアノードセパレータと酸素が流れる酸素流路を備えるカソードセパレータとを有する固体高分子電解質膜型燃料電池において、固体高分子電解質膜は、水素流路の水素を導入する水素導入口に対応している部位の膜厚が他の部位の膜厚よりも漸次厚くされていることを特徴とする。
【0037】
従って第1の発明の固体高分子電解質膜型燃料電池の構成については、固体高分子電解質膜は水素流路の水素を導入する水素導入口に対応している部位の膜厚が他の部位の膜厚よりも漸次厚くされているということを実現する構成にすれば、他の要素、部材等については基本的には通常の固体高分子電解質膜型燃料電池の構成で実施することが可能である。従って特許請求の範囲に記載した発明の範囲内でここで示す実施の形態を変形した形態も可能である。
【0038】
即ち図1に示すように、第1の発明の固体高分子電解質膜型燃料電池においては、膜電極接合体10の両側に対向してアノードセパレータ30とカソードセパレータ20とを配設することができる。そして膜電極接合体10は、イオン交換膜を含む固体高分子電解質膜11と固体高分子電解質膜の両側に対向して配設されたアノード触媒層13とカソード触媒層12とを含んでいる。
【0039】
アノードセパレータ30には水素流路31が設けられており、水素ガスが流れるように構成されている。そしてこの水素流路31を流れる水素がアノード触媒層13に拡散して到達するように、このアノードセパレータ30とアノード触媒層13との間に拡散層(図示しない)を設けることができる。このアノードセパレータ30の水素流路31が設けられている面の反対側の面には冷却水が流れる冷却水路32を設けることができる。
【0040】
またカソードセパレータ20には酸素流路21が設けられ、酸素ガスが流れるように構成されている。そしてこの酸素流路21を流れる酸素がカソード触媒層12に拡散して到達するように、やはり通常はこのカソードセパレータ20とカソード触媒層12との間に拡散層(図示しない)を設けることができる。このカソードセパレータ20の酸素流路21が設けられている面の反対側の面には冷却水が流れる冷却水路22を設けることができる。
【0041】
そしてこのようなカソードセパレータ20とアノードセパレータ30と膜電極接合体10を含んで構成されたセルを複数個積層して、各セルを電気的に接続することで固体高分子電解質膜型燃料電池のスタックを構成することができる。
【0042】
膜電極接合体10は、固体高分子電解質膜11とこの固体高分子電解質膜11の両側に配置されるカソード触媒層12とアノード触媒層13とで構成されることができる。アノード触媒層13とカソード触媒層12は公知の材料を用いて構成することができる。例えばアノード触媒層13は、カーボン粉末に白金触媒を担持し、フッ素系樹脂例えばパーフルオロエチレンスルホン酸を混合した材料を用いて構成することができる。またカソード触媒層12も、同様な材料を用いて構成することができる。このアノード触媒層13は概ね4〜20μmとすることができる。またカソード触媒層12は概ね2〜10μmとすることができる。
【0043】
そしてこのアノード触媒層13とカソード触媒層12との間に挟まれている固体高分子電解質膜11はイオン交換膜を含み、必要に応じてこのイオン交換膜を補強する補強膜を有することができる。イオン交換膜は、パーフルオロエチレンスルホン酸を用いて構成することができ、補強膜は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を用いて構成することができる。この場合イオン交換膜は、1つとすることもできるし、また2つ以上とすることができる。また補強膜は必要に応じて用いられるが、イオン交換膜の個数を考慮して用いることができる。例えばイオン交換膜を3つ積層した場合には、補強膜を2つ用いて、2つのイオン交換膜の間に1つずつ積層することができる。
【0044】
固体高分子電解質膜は、水素流路の水素を導入する水素導入口に対応している部位の膜厚を他の部位の膜厚よりも漸次厚くなるように構成する。この場合において、水素導入口に対応している部位であって同時に酸素流路の酸素を排出する酸素排出口に対応している部位の膜厚を他の部位の膜厚よりも更に漸次厚く構成することが好ましい。
【0045】
この場合固体高分子電解質膜の膜厚は最も厚い部位で概ね50μmとし、最も薄い部位で概ね30μmとすることができる。
【0046】
この場合において、固体高分子電解質膜がイオン交換膜及び補強膜からなる場合について、水素導入口に対応している部位の膜厚を他の部位の膜厚よりも漸次厚くしたり、水素導入口に対応している部位であって同時に酸素排出口に対応している部位の膜厚を他の部位の膜厚よりも更に漸次厚くしたりできる。
【0047】
なおイオン交換膜の膜厚は、最も厚い部位で概ね20μmとし、最も薄い部位で概ね5μmとすることができる。また補強膜の膜については最も厚い部位で概ね7.5μmとし、最も薄い部位で概ね5μmとすることができる。
【0048】
なおイオン交換膜及び補強膜からなり膜厚を漸次厚くした固体高分子電解質膜は、以下のように製造することができる。原料樹脂を熱溶融させ、延伸法にて膜状に成形する。その際に延伸力を制御することで、所望の厚さを得ることができる。
【0049】
このように固体高分子電解質膜の膜厚を漸次厚くした場合には、カソードセパレータのカソード触媒層に面している側の形状やアノードセパレータのアノード触媒層に面している側の形状を調整したり、カソードセパレータとカソード触媒層との間の拡散層の厚さやアノードセパレータとアノード触媒層との間の拡散層の厚さを調整することでセルを構成することができる。
【0050】
なおカソードセパレータ及びアノードセパレータは、上述した形状を調整する点を除けば、通常用いる材料で通常の形状に構成することができる。例えば気密性のあるカーボン板や、JIS G 4311 SUS304(耐熱鋼棒)等を用いた耐食性のある金属板を用いて、カソード触媒層やアノード触媒層が存在する側の面に凹状の溝を設けて酸素が流れる酸素流路や水素が流れる水素流路を構成し、その反対面にも凹状の溝を設けて冷却水の冷却水路を構成することができる。
【0051】
また拡散層としては、カーボンクロス、カーボンフェルト等の公知の材料を用いて構成することができ、概ね100〜300μmの厚さとすることができる。
【0052】
このように水素導入口に対応している部位の膜厚を他の部位の膜厚よりも漸次厚くしたり、更に水素導入口に対応している部位であって同時に酸素排出口に対応している部位の膜厚を他の部位の膜厚よりも更に漸次厚くしたりすることで、水素ガスがアノード触媒層からカソード触媒層へそのまま移動するというクロスオーバー現象を阻止することができる。
【0053】
またこのように水素ガスの圧力の高い水素導入口に対応する固体高分子電解質膜の部位の膜厚を厚くし、他の部位の膜厚は漸次薄くすることで、固体高分子電解質膜の抵抗値の増大を防止することができる。
【0054】
▲2▼実施例1
ここで固体高分子電解質膜内部のイオン交換膜及び補強膜を漸次厚くした実施例1を図2に示す。図2は水素ガスが流れる水素流路の水素導入口近傍におけるセルの断面図である。なおここでは固体高分子電解質膜、カソード触媒層及びアノード触媒層とからなるセルを示し、セル以外の部材、要素等については省略する。
【0055】
実施例1では、固体高分子電解質膜60の両側にアノード触媒層70とカソード触媒層50が配置されている。固体高分子電解質膜60は、第1イオン交換膜61、第1補強膜62、第2イオン交換膜63、第2補強膜64及び第3イオン交換膜65とから構成されている。
【0056】
アノード触媒層70はカーボン、白金、フッ素系樹脂を用いて形成されており、厚さは概ね10μmである。カソード触媒層50も同様な材料を用いて形成されており、厚さは概ね5μmである。
【0057】
これに対して、固体高分子電解質膜60は、図2中において、右から左に向けて膜厚が厚くなっている。実施例1の固体高分子電解質膜60の膜厚は、図2の右端から左端に向かって概ね30μmから50μmと厚くなっている。その内訳は第1イオン交換膜61の膜厚が概ね5μmから7.5μm、第1補強膜62の膜厚が概ね5μmから7.5μm、第2イオン交換膜63の膜厚が概ね10μmから20μm、第2補強膜64の膜厚が概ね5μmから7.5μm及び第3イオン交換膜65の膜厚が概ね5μmから7.5μmと厚くなっている。
【0058】
なおこの実施例1ではイオン交換膜61、63、65の材料としてパーフルオロエチレンスルホン酸を用い、補強膜の材料としてPTFEを用いることができる。
【0059】
このようにイオン交換膜61、63、65及び補強膜62、64の厚さを水素流路の水素導入口に対応する部位において最も厚くなるようにして固体高分子電解質膜の膜厚を漸次厚くすることができる。
【0067】
(第2の発明の実施の形態)
▲1▼構成等
第2の発明の固体高分子電解質膜型燃料電池は、イオン交換膜を含む固体高分子電解質膜と固体高分子電解質膜の両側に対向して配設されたアノード触媒層とカソード触媒層とを含む膜電極接合体と、膜電極接合体の両側に対向して配設され水素が流れる水素流路を備えるアノードセパレータと酸素が流れる酸素流路を備えるカソードセパレータとを有する固体高分子電解質膜型燃料電池において、固体高分子電解質膜は、水素流路の水素を導入する水素導入口に対応している部位の密度が他の部位の密度よりも漸次厚くされていることを特徴とする。
【0068】
この第2の発明の固体高分子電解質膜型燃料電池の構成については、固体高分子電解質膜の密度が、水素流路の水素を導入する水素導入口に対応している部位の方が他の部位よりも漸次大きくなるように構成されていることを除けば、第1の発明の実施の形態の構成と基本的には同一である。従ってここでは第1の発明の実施の形態と異なっている部分を中心に説明する。
【0069】
固体高分子電解質膜は、アノード触媒層とカソード触媒層との間に挟まれており、この固体高分子電解質膜はイオン交換膜を含み、必要に応じてこのイオン交換膜を補強する補強膜を有することができる。
【0070】
イオン交換膜はパーフルオロエチレンスルホン酸を用いて構成することができ、補強膜はPTFEを用いて構成することができる。この場合イオン交換膜は、1つとすることもできるし、また2つ以上とすることができる。また補強膜は必要に応じて用いられるが、イオン交換膜の個数を考慮して用いることができる。例えばイオン交換膜を3つ積層した場合には、補強膜を2つ用いて、2つのイオン交換膜の間に1つずつ積層することができる。
【0071】
このイオン交換膜は概ね5〜20μmとすることができ、補強膜は概ね5〜15μmとすることができる。第1の発明の固体高分子電解質膜型燃料電池の場合と異なり、イオン交換膜、補強膜は均一の膜厚で構成することが可能である。
【0072】
固体高分子電解質膜は、水素流路の水素を導入する水素導入口に対応している部位の密度が他の部位の密度よりも漸次大きくなるように構成する。この場合において、水素導入口に対応している部位であって同時に酸素流路の酸素を排出する酸素排出口に対応している部位の密度を他の部位の密度よりも更に漸次大きくなるように構成することが好ましい。
【0073】
この場合において、固体高分子電解質膜がイオン交換膜及び補強膜からなる場合について、水素導入口に対応している部位の密度を他の部位の密度よりも漸次大きくしたり、水素導入口に対応している部位であって同時に酸素排出口に対応している部位の密度を他の部位の密度よりも更に漸次大きくしたりできる。
【0074】
なおイオン交換膜の密度は、最も密度が大きい部位で概ね3g/cm3とし、最も密度が小さい部位で概ね1.5g/cm3とすることができる。また補強膜の密度については最も密度が大きい部位で概ね3g/cm3とし、最も薄い部位で概ね1.5g/cm3とすることができる。
【0075】
このようにイオン交換膜及び補強膜からなる固体高分子電解質膜の密度を漸次大きくする場合において、イオン交換膜及び補強膜からなる固体高分子電解質膜の膜厚を厚くする必要はなく、均一とすることができる。但しこのようにイオン交換膜及び補強膜からなる固体高分子電解質膜の密度を大きくする場合に、同時にこれらの膜厚が厚くなってもかまわない。
【0076】
なおイオン交換膜及び補強膜からなり密度を漸次大きくした固体高分子電解質膜は以下のような方法で製造することができる。即ち膜厚を漸次大きくした状態の固体高分子電解質膜をセパレータに組み込み、そのセルをスタックすることで、膜厚の厚かった部位の密度を大きくすることができる。
【0077】
なお本実施の形態においては、固体高分子電解質膜の膜厚は基本的に均一であるので、カソードセパレータのカソード触媒層に面している側の形状やアノードセパレータのアノード触媒層に面している側の形状を調整したり、カソードセパレータとカソード触媒層との間の拡散層の厚さやアノードセパレータとアノード触媒層との間の拡散層の厚さを調整するというようなことは必要ない。
【0078】
このように固体高分子電解質膜において、水素導入口に対応している部位の密度を他の部位の密度よりも漸次大きくしたり、更に水素導入口に対応している部位であって同時に酸素排出口に対応している部位の密度を他の部位の密度よりも更に漸次厚くしたりすることで、水素ガスがアノード触媒層からカソード触媒層へそのまま移動するというクロスオーバー現象を阻止することができる。
【0079】
またこのように水素ガスの圧力の高い水素導入口に対応する固体高分子電解質膜の部位の密度を大きくし、他の部位の密度は漸次小さくすることで、固体高分子電解質膜の抵抗値の増大を防止することができる。
【0080】
〈2〉実施例
ここで固体高分子電解質膜内部のイオン交換膜及び補強膜を密度を漸次大きくした実施例を図に示す。図は水素ガスが流れる水素流路の水素導入口近傍におけるセルの断面図である。なおここでは固体高分子電解質膜、カソード触媒層及びアノード触媒層とからなるセルを示し、セル以外の部材、要素等については省略する。なお図中の符号については実施例1と同種の要素について図2と同一の符号を用いた。
【0081】
実施例では、固体高分子電解質膜60の両側にアノード触媒層70とカソード触媒層50が配置されている。固体高分子電解質膜60は、第1イオン交換膜61、第1補強膜62、第2イオン交換膜63、第2補強膜64及び第3イオン交換膜65とから構成されている。
【0082】
アノード触媒層70はカーボン、白金、フッ素系樹脂を用いて形成されており、厚さは概ね10μmである。カソード触媒層50も同様な材料を用いて形成されており、厚さは概ね5μmである。第1イオン交換膜61の膜厚は概ね5μm、第1補強膜62の膜厚は概ね5μm、第2イオン交換膜63の膜厚は概ね10μm、第2補強膜64の膜厚は概ね5μm及び第3イオン交換膜65の膜厚は概ね5μmである。
【0083】
この場合に図の右端から左端に向かって、第1イオン交換膜61の密度は 1.5g/cmから3g/cmと、第1補強膜62の密度は1.5g/cmから3g/cmと、第2イオン交換膜63の密度は1.5g/cmから3g/cmと、第2補強膜64の密度は1.5g/cmから3g/cmと、第3イオン交換膜65の密度は1.5g/cmから3g/cmと漸次大きくなっている
なおこの実施例ではイオン交換膜61、63、65の材料としてパープルオロエチレンスルホン酸を用い、補強膜の材料としてPTFEを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 固体高分子電解質膜型燃料電池のセルの構成を示した図である。
【図2】 実施例1のアノード触媒層、固体高分子電解質膜及びカソード触媒層を示した図である。
【図】 実施例のアノード触媒層、固体高分子電解質膜及びカソード触媒層を示した図である。
【符号の説明】
10:膜電極接合体
11:固体高分子電解質膜
12:カソード触媒層 13:アノード触媒層
20:カソードセパレータ
21:酸素流路 22:冷却水路
30:アノードセパレータ
31:水素流路 32:冷却水路
50:カソード触媒層
60:固体高分子電解質膜
61:第1イオン交換膜 62:第1補強膜
63:第2イオン交換膜 64:第2補強膜
65:第3イオン交換膜
70:アノード触媒層

Claims (4)

  1. イオン交換膜を含む固体高分子電解質膜と該固体高分子電解質膜の両側に対向して配設されたアノード触媒層とカソード触媒層とを含む膜電極接合体と、該膜電極接合体の両側に対向して配設され水素が流れる水素流路を備えるアノードセパレータと酸素が流れる酸素流路を備えるカソードセパレータとを有する固体高分子電解質膜型燃料電池において、
    前記固体高分子電解質膜は、前記水素流路の水素を導入する水素導入口に対応している部位の膜厚が、該水素導入口に対応していない部位の膜厚よりも漸次厚くされているとともに、前記固体高分子電解質膜の膜厚は、前記水素流路に沿って前記水素導入口に対応している部位に向かって漸次厚くされていることを特徴とする固体高分子電解質膜型燃料電池。
  2. 前記固体高分子電解質膜は、前記水素導入口に対応している部位であって同時に前記酸素流路の酸素を排出する酸素排出口に対応している部位の膜厚が他の部位の膜厚よりも更に漸次厚くされている請求項1記載の固体高分子電解質膜型燃料電池。
  3. イオン交換膜を含む固体高分子電解質膜と該固体高分子電解質膜の両側に対向して配設されたアノード触媒層とカソード触媒層とを含む膜電極接合体と、該膜電極接合体の両側に対向して配設され水素が流れる水素流路を備えるアノードセパレータと酸素が流れる酸素流路を備えるカソードセパレータとを有する固体高分子電解質膜型燃料電池において、
    前記固体高分子電解質膜は、前記水素流路の水素を導入する水素導入口に対応している部位の密度が、該水素導入口に対応していない部位の密度よりも漸次大きくされていることを特徴とする固体高分子電解質膜型燃料電池。
  4. 前記固体高分子電解質膜は、前記水素導入口に対応している部位であって、同時に前記酸素流路の酸素を排出する酸素排出口に対応している部位の密度が他の部位の密度よりも更に漸次大きくされている請求項記載の固体高分子電解質膜型燃料電池。
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