JP4033378B2 - 履帯のリンクとピンとの固定構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、建設機械のような車両における走行用履帯のリンクとピンとの固定構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ブルドーザや油圧ショベルのような建設機械において使用されている履帯は、無端環状のリンクチェーンに、接地用のシュー(履板)を取り付けることによって構成されている。リンクチェーンは、複数のリンクをピンによって相互に連結した構造のものである。このリンクの連結構造を、図8に示している。同図のようにリンクチェーンは、左右一対のリンク31、32を所定個数だけ長手方向に配置すると共に、相前後するリンク31、32の前部と後部とをピン33とブッシュ34とによって連結している。さらに具体的には、ピン33をブッシュ34に挿入し、前方に位置するリンク31a、32aの後部孔41a、42a内に上記ブッシュ34を圧入する一方、後方に位置するリンク31b、32bの前部孔41b、42b内に上記ピン33を圧入しているのである。そして上記ピン33とブッシュ34とが回転可能であることから、前後のリンク31a、31bは屈曲可能に関節的に連結されることになる。なお図8において、35は潤滑油封入孔であり、この潤滑油により上記ピン33とブッシュ34との間が潤滑されるようになっている。
【0003】
上記のような履帯においては、その使用中に、上記ピン33に対してスラスト方向に大きな力が作用する。従って上記のようなリンクチェーンにおいては、リンク31、32とピン33との抜止め機構が設けられている(例えば、アメリカ特許第4618190号公報)。このリンクとピンとの固定構造によれば、上記リンクのピン挿入孔の開口部周辺には、環状の凹陥部が形成され、また上記ピンの端部近傍位置には、軸方向内方に滑らかに陥没した凹溝が周設されている。そして、上記リンクの凹陥部とピンの凹溝とによって、上記ピン挿入孔の開口部周縁とピンの外端部との間に、環状の開口を有する空間部を形成している。そして、この空間部内に金属材料からなるピン抜止用の環状のリテイナを押し込み、このリテイナを空間部の形状に沿うように塑性変形させることによって空間部内にリテイナを充填し、これによって上記ピンの反開口部側への抜け出し相対移動を規制している。
【0004】
ところで、上記リンクとピンとの固定構造において、上記リンクとピンとの間にガタつきが生じないようにするためには、上記リテイナを環状の空間部内に沿うように塑性変形させて充填させ、確実に密着させる必要がある。しかしながらこのためには、複雑な機械加工及び製品に高い寸法精度が必要になると共に、上記リンクの凹陥部とピンの凹溝との位置合せを正確に行う必要があり、設備費や製造コストが上昇するという問題がある。
【0005】
上記問題を解決するために、例えば、特願平11−182264号では、抜止めリング36を用いたリンクとピンの固定構造が提案されている。これは、図9に示すように、リンク31、32のピン挿入孔41b、42bの開口部周辺と上記ピン33の両端部との間に、環状の空間45を形成し、この空間45に抜止めリング36を配置して上記ピン33の反開口部側への抜け出し相対移動を規制するようにしたものである。この場合、上記ピン挿入孔41bの開口部周辺には、ピン挿入孔41bから、外方に向けて次第に拡径していく内径テーパ面43を設けている。そして、上記ピン33には、上記内径テーパ面43と相対向するように外径テーパ面44を設けている。この外径テーパ面44の軸心に対する傾斜角度は、内径テーパ面7の傾斜角度よりもやや小さくなっており、両テーパ面43、44は外方に向けてハ字状に拡開した状態となっている。抜止めリング36は、断面が円形で、その一部を切除した環状の弾性金属材料から成るもので、弾性的に拡径、縮径し得るようになされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記履帯のリンクとピンとの固定構造においては、リンク31のピン挿入孔41bの開口周辺とピン33の外端部とがそれぞれテーパ面43、44であると共に、抜止めリング36の断面が円形であることに起因して以下のような問題があった。まず第1には、組立作業に多くのコストを要していたということである。すなわち、抜止めリング36は断面円形のものであるため、その周面と上記各テーパ面43、44との接触面積は充分なものではなく、抜止めリング36の弾性復元力だけでは、充分な初期摩擦力が得られない。そのため組立段階において、抜止めリング36を内方へと押し込む作業が必要になるのである。そしてこのように、抜止めリング36を押し込む作業に際しては、押し込み作業用の専用治具が必要になるし、また押し込み力に見合うプレス装置が必要となり、この結果、組立作業に多くのコストを要することになる。
【0007】
また第2には、組立後の状態において、所望の摩擦力を得ようとすると、上記内径テーパ面43と外径テーパ面44とに高い加工精度が必要になるということである。すなわち、両テーパ面43、44の開き角度が過大であると、抜止めリング36は摩擦力によっては止定されずに移動してしまい、その機能を発揮し得ない。例えば、図9に示す状態において、両テーパ面43、44の開き角度θは、約20°以下の範囲に制限しなければならないことを確認している。このように各部品に高い加工精度が必要になる結果、その製造コストも上昇せざるを得ないことになる。
【0008】
この発明は上記従来の欠点を解決するためになされたものであって、その目的は、組立作業を簡単な作業で低コストに行え、しかも高い加工精度を必要とせず、低コストに製造可能な履帯のリンクとピンとの固定構造を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段及び効果】
そこで請求項1のリンクとピンとの固定構造は、車両の走行用履帯のリンクとピンとの固定構造であって、リンク2におけるピン挿入孔5の開口周縁と、上記ピン挿入孔5に挿入するピン1の外端部との間に、環状の空間15を形成し、この空間15に抜止めリング3を配置して上記ピン1の反開口部側への抜け出し相対移動を規制するようにした履帯のリンクとピンとの固定構造において、上記リンク2のピン挿入孔5の開口周縁と上記ピン1の外端部とのいずれか一方には、軸方向内方に向けて次第に縮径するテーパ状の受圧面8を、またその他方には押圧部7をそれぞれ形成し、また上記抜止めリング3には、上記抜け出し方向への相対移動が生じて上記押圧部7から力が作用したときに上記受圧面8に押圧接触する摩擦面9を形成していることを特徴としている。なお、上記押圧部7としては、第1実施形態〜第3実施形態のように、エッジ部として構成される場合もあるし、また第4実施形態のように、テーパ状の受圧面として構成される場合もある。この場合、抜止めリング3において、押圧部7の接触する部分(被押圧面)は、第4実施形態のように、摩擦面として構成される。
【0010】
上記請求項1の履帯のリンクとピンとの固定構造においては、次のような作用が生じる。まず、ピン1が反開口部側へと抜け出し方向に相対移動すると、リンク2の押圧部7が、抜止めリング3の被押圧面10に当接し、抜止めリング3の摩擦面9が、テーパ状の受圧面8に押圧接触する。そしてこの状態で、抜止めリング3に対しては、抜け出し方向への力が作用するが、この力F1は、受圧面8に垂直な力成分F2と、受圧面8に沿う力成分F3とに分かれる。そして、上記受圧面8に垂直な力成分F2によって生じる摩擦力が、上記受圧面8に沿う力成分F3よりも大きくなるように、つまり、軸方向内方へと傾斜している上記受圧面8の傾斜角度αを、上記関係μ・F2>F3(μは摩擦係数)を満たす角度になるように設定して、ピン1の反開口部側への抜け出し相対移動を規制している。
【0011】
上記請求項1の履帯のリンクとピンとの固定構造においては、抜止めリング3は、その摩擦面9を介して受圧面8と接触する。そのため、抜止めリング3と受圧面8との接触面積は従来よりも大となり、抜止めリング3の弾性復元力だけでも、充分な初期摩擦力が得られる。そのため組立段階において、抜止めリング3を内方へと押し込む作業が不要になる。この結果、抜止めリング3を押し込むための専用治具やプレス装置が不要となり、この結果、組立作業に要するコストを低減できることになる。
【0012】
また、軸方向内方へと傾斜している上記受圧面8の傾斜角度αは、上記関係μ・F2>F3を満たす角度以上にしておけばよいので、従来のように、テーパ面の角度に高い加工精度が必要になるということはなく、そのためその製造コストを低減することが可能である。
【0013】
さらに、請求項1の履帯のリンクとピンとの固定構造は、上記抜止めリング3は、上記押圧部7の接触する被押圧面10と上記摩擦面9とを有し、上記被押圧面10と上記摩擦面9とは、外方ほどその間隔が広くなるように形成されていることを特徴としている。
【0014】
請求項1の履帯のリンクとピンとの固定構造によれば、抜止めリング3の摩擦面9と被押圧面10とを外方ほどその間隔が広くなるように配置しているので、加工誤差、組立誤差等によって、押圧部7と受圧面8との間の係合寸法が変動した場合でも、抜止めリング3の摩擦面9と被押圧面10とは種々の寸法で係合可能であるので、両者の係合可能範囲が拡大する。この結果、リンク2側の押圧部7やピン1側の受圧面8の形状、寸法の許容誤差を従来よりもさらに大きくできることになる。
【0015】
請求項2の履帯のリンクとピンとの固定構造は、上記押圧部7はエッジ状に形成されていることを特徴としている。
【0016】
上記請求項2の履帯のリンクとピンとの固定構造によれば、上記リンク2のピン挿入孔5の開口周縁と上記ピン1の外端部とのいずれか一方を、エッジ状の押圧部7としたことによって、リンク2側の押圧部7やピン1側の受圧面8の形状、寸法の許容誤差を、両方をテーパ状の受圧面とする場合よりもさらに大きくすることができる。
【0017】
請求項3の履帯のリンクとピンとの固定構造は、車両の走行用履帯のリンクとピンとの固定構造であって、リンク2におけるピン挿入孔5の開口周縁と、上記ピン挿入孔5に挿入するピン1の外端部との間に、環状の空間15を形成し、この空間15に抜止めリング3を配置して上記ピン1の反開口部側への抜け出し相対移動を規制するようにした履帯のリンクとピンとの固定構造において、上記ピン1の外端部には、軸方向内方に向けて次第に縮径するテーパ状の受圧面8を、また上記リンク2のピン挿入孔5の開口周縁にはエッジ状の押圧部7と、この押圧部7の外側の位置に押圧部7から外方に向けてテーパ状のガイド面11とをそれぞれ形成し、さらに、上記受圧面8の軸心に対する傾斜角度は、上記ガイド面11の傾斜角度よりも小さく、上記抜止めリング3が、上記押圧部7と受圧面8とにそれぞれ押圧接触するように構成していることを特徴としている。
【0018】
上記請求項3の履帯のリンクとピンとの固定構造においては、次のような作用が生じる。まず組立段階において、上記空間15に抜止めリング3を配置し、その内方へと抜止めリング3を押し込むと、上記エッジ状の押圧部7が抜止めリング3に押圧接触すると共に、この抜止めリング3がテーパ状の受圧面8に押圧接触する。このとき、上記抜止めリング3の接触部分近傍は、上記押圧によって弾性変形され、抜止めリング3の受圧面8側に、この受圧面8に接触する面、すなわち摩擦面9が生じることになる。従って、この状態において、上記ピン1が反開口部側へと抜け出し方向に相対移動しようとすると、上記抜止めリング3に対しては、抜け出し方向への力F1が作用するが、この力F1は、受圧面8に垂直な力成分F2と、受圧面8に沿う力成分F3とに分けることができる。これより、上記受圧面8に垂直な力成分F2によって生じる摩擦力が、上記受圧面8に沿う力成分F3よりも大きくなるように、つまり、軸方向内方へと傾斜している上記受圧面8の傾斜角度αを、上記関係μ・F2>F3(μは摩擦係数)を満たす角度になるように設定して、ピン1の反開口部側への抜け出し相対移動を規制している。
【0019】
上記請求項3の履帯のリンクとピンとの固定構造においては、抜止めリング3は、上記組立てによって生じた摩擦面9が受圧面8と接触するため、抜止めリング3と受圧面8との接触面積は従来よりも大となり、これによって充分な初期摩擦力を得ることができる。また、上記リンク2のピン挿入孔5の開口周縁と上記ピン1の外端部とのいずれか一方を、エッジ状の押圧部7としたことによって、上記抜止めリング3はポイントで押圧されることになるため、その両方がテーパ状に形成されている場合よりも、すなわち面で押圧される場合よりも、小さな押圧力で容易に上記組立作業を行うことが可能となる。この結果、組立時における作業効率が向上する。
【0020】
また、軸方向内方へと傾斜している上記受圧面8の傾斜角度αは、上記関係μ・F2>F3を満たす角度以上にしておけばよいので、従来のように、テーパ面の角度に高い加工精度が必要になるということはなく、そのためその製造コストを低減することが可能である。さらに、上記リンク2側かピン側のいずれか一方は、エッジ状の押圧部7であるため、両方をテーパ状の受圧面とする場合よりも、リンク2側やピン1側の形状、寸法の許容誤差をさらに大きくすることができる。
【0021】
請求項4の履帯のリンクとピンとの固定構造は、上記抜止めリング3の断面が円形であることを特徴としている。
【0022】
上記請求項4の履帯のリンクとピンとの固定構造によれば、抜止めリング3を断面円形にしているので、その製造が容易になり、低コストに実施可能となる。
【0023】
【発明の実施の形態】
次にこの発明の履帯のリンクとピンとの固定構造の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。まず抜止め機構そのものは、従来例として、図8及び図9に示したものと全く同様なものであって、ピン1と、リンク2と、抜止めリング3とによって構成されている。そのため、以下においては特徴的な部分を中心に説明する。
【0024】
まず、図1に示すように、上記ピン1には、その端部近傍位置に概略断面三角状の凹溝4が周設されている。また上記リンク2には、上記ピン1の圧入されるピン挿入孔5が形成され、このピン挿入孔5の開口部周辺には環状の凹陥部6が形成されている。上記ピン1の凹溝4と上記ピン挿入孔5の凹陥部6とによって、上記ピン挿入孔5の開口周縁と上記ピン1の外端部との間に、軸方向内方へと凹入すると共に、環状の開口を有する環状嵌着空間15を形成している。また上記凹陥部6におけるピン挿入孔5の開口端部は、押圧部7となる部分であるが、その機能については後述する。そして、上記ピン1の凹溝4は、上記押圧部7と相対向するように外径テーパ面8を有している。この外径テーパ面8は、軸方向内方に向けて次第に縮径する形状のもので、後述するように、受圧面として機能する部分である。抜止めリング3は、一部を切除した環状の弾性金属材料から成るもので、弾性的に拡径、縮径し得るようになされている。また、この抜止めリング3の断面形状は概略正方形で、その角部が、内径部(図において下側)と外径部(図において上側)とに位置するように配置されている。
【0025】
そして、上記履帯のリンクとピントの固定構造においては、リンク2のピン挿入孔5内にピン1を圧入すると共に、上記抜止めリング3を拡径した状態で上記ピン1の凹溝4内に配置し、これに作用している拡径力を解除して、抜止めリング3を弾性的に縮径させれば、組立作業は完了する。この状態において、抜止めリング3は、その内径側が上記外径テーパ面8に接触し、また、外径側の内側側面が上記押圧部7に接触している。なお、以下においては、抜止めリング3において外径テーパ面8に接触する面(内径側の外側側面)を摩擦面9と称し、また押圧部7に接触する面(外径側の内側側面)を被押圧面10と称する。
【0026】
そしてこのような組立状態において、リンク2がピン1の外側へと抜け出そうとすると、以下のような機能によって、その抜け出し移動が規制される。まず、リンク2が、図1において右側へと抜け出そうとすると(ピン1が反開口部側へと抜け出し方向に相対移動すると)、リンク2の押圧部7が、抜止めリング3の被押圧面10に当接し、図2に示すように、抜止めリング3が外側へと捩じれて、抜止めリング3の摩擦面9が、外径テーパ面、すなわち受圧面8に接触する。そしてこの状態で、抜止めリング3に対しては、抜け出し方向(図中右側)への力が作用するが、この力F1は、受圧面8に垂直な力成分F2と、受圧面8に沿う力成分F3とに分けることができる。そして、上記受圧面8に垂直な力成分F2によって生じる摩擦力が、上記受圧面8に沿う力成分F3よりも大きいと、ピン1の反開口部側への抜け出し相対移動が規制される。従って、軸方向内方へと傾斜している上記受圧面8の傾斜角度αを、上記関係μ・F2>F3(μは摩擦係数)を満たす角度になるように設定しているのである。
【0027】
上記した履帯のリンクとピンとの固定構造においては、抜止めリング3は、その摩擦面9を介して受圧面8と接触する。そのため、抜止めリング3と受圧面8との接触面積は従来よりも大となり、抜止めリング3の弾性復元力だけでも、充分な初期摩擦力が得られる。そのため組立段階において、抜止めリング3を内方へと押し込む作業が不要になる。この結果、抜止めリング3を押し込むための専用治具やプレス装置が不要となり、この結果、組立作業に要するコストを低減できることになる。さらに、押圧部7、受圧面8の形状及び抜止めリング3の材質の選定により、修理等のために上記ピン1とリンク2とを分解しても、上記抜止めリング3は組立時において弾性変形されているだけであるため、上記抜止めリング3を再利用することが可能である。
【0028】
また、軸方向内方へと傾斜している上記受圧面8の傾斜角度αは、上記関係μ・F2>F3を満たす角度以上にしておけばよいので、従来のように、テーパ面の角度に高い加工精度が必要になるということはなく、そのためその製造コストを低減することが可能である。さらに、上記リンク2側をエッジ状の押圧部7とすることによって、両方をテーパ状の受圧面とする場合よりも、リンク2側の押圧部7やピン1側の受圧面8の形状、寸法の許容誤差をさらに大きくすることができる。
【0029】
また、従来のリンクとピンとの固定構造においては、リンク2側にもテーパ面44を形成する必要があった。しかし、リンク2はその外形が非円形のものであるので、このようにリンク2側に環状のテーパ面44を形成する加工作業は容易なものではなかった。これに対して、上記実施の形態においては、リンク2側には、押圧部7を形成すればよく、テーパ面を形成する必要がないので、その加工作業を容易化できるとの利点も生じる。
【0030】
図3には、第2実施形態を示している。これは、図1と同様に断面正方形の抜止めリング3を用いたもので、この場合には、リンク2側の押圧部7近傍の形状を変更している。すなわち、押圧部7の外側の位置に、軸方向内方ほど径小となるように軸心に対して傾斜するテーパ状のガイド面11を形成している。このようにガイド面11を形成しているのは、抜止めリング3の組み付け作業に際して、抜止めリング3の被押圧面10を確実に押圧部7に接触させ、組み付け作業を容易化するためである。この実施形態においても、上記第1実施形態と同様の作用、効果が得られる。
【0031】
図4には、第3実施形態を示している。これは抜止めリング3の断面形状を変更したもので、この場合には、図1や図2のように断面正方形(摩擦面9と被押圧面10とが平行)ではなく、摩擦面9と被押圧面10とが共に外方に向けてテーパ状に拡開し、しかも両者の間隔が外方ほど広がるような形状となされている。なお、抜止めリング3の断面形状を、図において左右対称としているのは、ピン1の反対側の端部においても使用可能とするためである。
【0032】
この第3実施形態の履帯のリンクとピンとの固定構造においても上記と同様な作用、効果が得られる。また、それに加えて、リンク2側の押圧部7やピン1側の受圧面8の形状、寸法の許容誤差を上記実施の形態よりもさらに大きくできるという利点がある。すなわち、抜止めリング3の摩擦面9と被押圧面10とを外方に向けてテーパ状に拡開するように配置しているので、図5A、図5Bに示しているように、抜止めリング3は空間15の開口部側においても(図5A)、また奥部側においても(図5B)、押圧部7と受圧面8との間に係合可能となり、ピン1の抜け出し方向への相対移動を規制することが可能となる。つまり、加工誤差、組立誤差等によって、押圧部7と受圧面8との間の係合寸法が変動した場合でも、抜止めリング3の摩擦面9と被押圧面10との間の係合寸法は一定ではなく、種々の寸法で係合可能であるので、両者の係合可能範囲が拡大するということである。
【0033】
図6には、第4実施形態を示している。これは、上記図4及び図5と同様な断面形状の抜止めリング3を用いる一方、リンク2側の押圧部7を、軸方向内方に向けて次第に縮径するテーパ状の受圧面として構成したものである。すなわち、この場合、ピン挿入孔5の開口周縁にも受圧面7が、またピン1の外端部にも受圧面8が形成され、両受圧面7、8の間隔が外方に向けて次第に広くなるように構成されているのである。この実施形態においては、抜止めリング3の被押圧面10が摩擦面として機能し、両摩擦面9、10が上記両受圧面7、8に接触する。このような構造によれば、上記作用、効果に加えて、抜止めリング3の接触面積がさらに増大することから、ピン1の抜け出し方向への相対移動を一段と確実に規制することが可能となる。なお、この場合にも抜止めリング3の断面形状を、図において左右対称としているが、これはピン1の反対側の端部においても使用可能とするためである。
【0034】
図7A、図7Bには、第5実施形態を示している。これは、上記抜止めリング3の断面形状を概略円形として構成したものである。以下図7A、図7Bに基づいて詳細に説明する。まず、図7Aにおいて、上記ピン1には、その端部近傍位置に概略断面三角状の凹溝4が周設されている。また上記リンク2には、上記ピン1の圧入されるピン挿入孔5が形成され、このピン挿入孔5の開口部周辺には環状の凹陥部6が形成されている。上記ピン1の凹溝4と上記ピン挿入孔5の凹陥部6とによって、上記ピン挿入孔5の開口周縁と上記ピン1の外端部との間に、軸方向内方へと凹入すると共に、環状の開口を有する環状嵌着空間15を形成している。また上記凹陥部6におけるピン挿入孔5の開口端部には、エッジ状の押圧部7が形成されており、さらにその外側の位置には、上記押圧部7から外方に向けて次第に拡径するように軸心に対して傾斜するテーパ状のガイド面11が形成されている。そして、上記ピン1の凹溝4は、上記押圧部7と相対向するように外径テーパ面8を有している。この外径テーパ面8は、軸方向外方に向けて次第に拡径する形状のもので、後述するように、受圧面として機能する部分である。このとき、上記外径テーパ面(以下、受圧面8と称す)の軸心に対する傾斜角度は、上記ガイド面11の傾斜角度よりも小さくなるように形成されている。一方、上記抜止めリング3は、一部を切除した環状の弾性金属材料から成るもので、弾性的に拡径、縮径し得るようになされている。また、この抜止めリング3の断面形状は概略円形で、上記空間15内において、上記押圧部7と受圧面8とに押圧接触するように配置されている。
【0035】
上記履帯のリンクとピンとの固定構造においては、リンク2のピン挿入孔5内にピン1を圧入すると共に、上記抜止めリング3を拡径した状態で上記ピン1の凹溝4内に配置し、これに作用している拡径力を解除して、抜止めリング3を弾性的に縮径させる。そして、上記抜止めリング3を空間15の内方へと押し込むことによって組立作業が完了する。この図7Bに示す状態において、抜止めリング3は、その外径側が上記エッジ状の押圧部7に押圧接触され、また、その内径側が上記テーパ状の受圧面8に押圧接触されている。このとき、上記抜止めリング3の接触部分近傍は上記押圧によって弾性変形され、抜止めリング3の受圧面8側に、この受圧面8に接触する面、すなわち摩擦面9が生じることになる。
【0036】
そしてこのような組立状態において、リンク2がピン1の外側へと抜け出そうとすると、以下のような機能によって、その抜け出し移動が規制される。すなわち、上記リンク2側の押圧部7が抜止めリング3に押圧接触すると共に、抜止めリング3の摩擦面9がピン1側の受圧面8に押圧接触した状態において、リンク2が図7における右側へと抜け出そうとすると(ピン1が反開口部側へと抜け出し方向に相対移動すると)、抜止めリング3に対しては、抜け出し方向(図中右側)への力が作用するが、この力F1は、受圧面8に垂直な力成分F2と、受圧面8に沿う力成分F3とに分けることができる。そして、上記受圧面8に垂直な力成分F2によって生じる摩擦力が、上記受圧面8に沿う力成分F3よりも大きいと、ピン1の反開口部側への抜け出し相対移動が規制される。従って、この実施形態においては、軸方向内方へと傾斜している上記受圧面8の傾斜角度αを、上記関係μ・F2>F3(μは摩擦係数)を満たす角度になるように設定している。
【0037】
上記した履帯のリンクとピンとの固定構造においては、抜止めリング3は、上記組立てによって生じた摩擦面9が受圧面8と接触するため、抜止めリング3と受圧面8との接触面積は従来よりも大となり、これによって充分な初期摩擦力を得ることができる。また、上記抜止めリング3はポイントで押圧されることになるため、その両方がテーパ状に形成されている場合よりも、すなわち面で押圧される場合よりも、小さな押圧力で容易に上記組立作業を行うことが可能となる。この結果、組立時における作業効率が向上する。さらに、押圧部7、受圧面8の形状及び抜止めリング3の材質の選定により、修理等のために上記ピン1とリンク2とを分解しても、上記抜止めリング3は組立時において弾性変形されているだけであるため、上記抜止めリング3を再利用することが可能である。
【0038】
また、軸方向内方へと傾斜している上記受圧面8の傾斜角度αは、上記関係μ・F2>F3を満たす角度にしておけばよいので、従来のように、テーパ面の角度に高い加工精度が必要になるということはなく、そのためその製造コストを低減することが可能である。さらに、この実施形態におけるリンク2側は、エッジ状の押圧部7であるため、両方をテーパ状の受圧面とする場合よりも、リンク2側の押圧部7やピン1側の受圧面8の形状、寸法の許容誤差をさらに大きくすることができる。
【0039】
さらに、従来のリンクとピンとの固定構造においては、リンク2側にもテーパ面44を形成する必要があった。しかし、リンク2はその外形が非円形のものであるので、このようにリンク2側に環状のテーパ面44を形成する加工作業は容易なものではなかった。これに対して、上記実施の形態においては、リンク2側にはエッジ状の押圧部7を形成すればよく、テーパ面を形成する必要がないので、その加工作業を容易化できるとの利点も生じる。
【0040】
以上にこの発明の履帯のリンクとピンとの固定構造の具体的な実施の形態について説明したが、この発明の履帯のリンクとピンとの固定構造は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変更して実施することが可能である。例えば、上記においては、ピン1側に受圧面9を、リンク2側に押圧部7を設けているが、これとは逆に、ピン1側に押圧部7を、リンク2側に受圧面9を設けてもよい。また、抜止めリング2の断面形状にしても、上記ように左右対称とすれば、ピン1のいずれの端部にも利用可能となるので好ましいが、場合によっては左右非対称のものを用いてもよい。もつとも図1や図3又は図7のように、断面正方形又は断面円形にすれば、その製造が容易になり、低コストに実施可能となるとの利点が生じる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の履帯のリンクとピンとの固定構造の実施形態の要部拡大断面図である。
【図2】上記実施形態における作動状態を示す要部拡大断面図である。
【図3】第2実施形態の要部拡大断面図である。
【図4】第3実施形態の要部拡大断面図である。
【図5A】第3実施形態の組み付け状態を説明するための要部拡大断面図である。
【図5B】第3実施形態の他の組み付け状態を説明するための要部拡大断面図である。
【図6】第4実施形態の要部拡大断面図である。
【図7A】第5実施形態の組み付け前の状態の要部拡大断面図である。
【図7B】第5実施形態の組み付け後の状態の要部拡大断面図である。
【図8】従来の履帯リンクチェーンにおける履帯のリンクとピンとの固定構造の一例を示す断面図である。
【図9】上記従来例の要部の拡大断面図である。
【符号の説明】
1・・ピン、2・・リンク、3・・抜止めリング、5・・ピン挿入孔、7・・押圧面、8・・受圧面、9・・摩擦面、10・・被押圧面11・・ガイド面
Claims (4)
- 車両の走行用履帯のリンクとピンとの固定構造であって、リンク(2)におけるピン挿入孔(5)の開口周縁と、上記ピン挿入孔(5)に挿入するピン(1)の外端部との間に、環状の空間(15)を形成し、この空間(15)に抜止めリング(3)を配置して上記ピン(1)の反開口部側への抜け出し相対移動を規制するようにした履帯のリンクとピンとの固定構造において、上記リンク(2)のピン挿入孔(5)の開口周縁と上記ピン(1)の外端部とのいずれか一方には、軸方向内方に向けて次第に縮径するテーパ状の受圧面(8)を、またその他方には押圧部(7)をそれぞれ形成し、また上記抜止めリング(3)は、上記抜け出し方向への相対移動が生じて上記押圧部(7)から力が作用したときに上記受圧面(8)に押圧接触する摩擦面(9)と、上記押圧部(7)の接触する被押圧面(10)とを有し、上記被押圧面(10)と上記摩擦面(9)とは、外方ほどその間隔が広くなるように形成されていることを特徴とする履帯のリンクとピンとの固定構造。
- 上記押圧部(7)はエッジ状に形成されていることを特徴とする請求項1の履帯のリンクとピンとの固定構造。
- 車両の走行用履帯のリンクとピンとの固定構造であって、リンク(2)におけるピン挿入孔(5)の開口周縁と、上記ピン挿入孔(5)に挿入するピン(1)の外端部との間に、環状の空間(15)を形成し、この空間(15)に抜止めリング(3)を配置して上記ピン(1)の反開口部側への抜け出し相対移動を規制するようにした履帯のリンクとピンとの固定構造において、上記ピン(1)の外端部には、軸方向内方に向けて次第に縮径するテーパ状の受圧面(8)を、また上記リンク(2)のピン挿入孔(5)の開口周縁にはエッジ状の押圧部(7)と、この押圧部(7)の外側の位置に押圧部(7)から外方に向けてテーパ状のガイド面(11)とをそれぞれ形成し、さらに、上記受圧面(8)の軸心に対する傾斜角度は、上記ガイド面(11)の傾斜角度よりも小さく、上記抜止めリング(3)が、上記押圧部(7)と受圧面(8)とにそれぞれ押圧接触するように構成していることを特徴とする履帯のリンクとピンとの固定構造。
- 上記抜止めリング(3)の断面が円形であることを特徴とする請求項3の履帯のリンクとピンとの固定構造。
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