JP4036062B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両に搭載され電動モータを用いて操舵をアシストする電動パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用のパワーステアリング装置としては、油圧式のものが普及しているが、きめの細かい操舵アシスト制御を実施するには、電動式のものの方が有利であり、近年、電動パワーステアリング装置に関する技術が開発されている。
このような電動パワーステアリング装置を用いた操舵アシスト制御により、車両に加わる横風等の外乱がドライバの操舵操作に影響しないようにする、いわゆる外乱抑制性能を高めることができるようにするものも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この技術では、操舵反力(操舵アシスト力に対応する)の制御においては、操舵角に基づく操舵反力の舵角成分T1(=操舵角にゲインをかけたもの)と、操舵角速度に基づくダンピング成分T2(=操舵角速度にゲインをかけたもの)と、車両のヨーレイトに基づく第1の車体挙動抑制成分T3(=ヨーレイトにゲインをかけたもの)と、車両の横Gに基づく第2の車体挙動抑制成分T4(=横Gにゲインをかけたもの)と、転舵反力に基づく路面成分T5(=転舵反力にゲインをかけたもの)とを算出し、次式のように、これら操舵反力の成分T1,T2,T3,T4,T5を加算して目標操舵反力Tsを決定し、反力モータ(操舵アシスト用電動モータに対応する)の出力トルク、すなわち操向ハンドルの操舵反力をこの目標操舵反力Tsに帰還制御する。
Ts=T1+T3+T4+T5+T2
【0004】
【特許文献1】
特開平5−105100号公報(項目0003,0021,図3,図5)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のような従来の技術(特許文献1参照)では、外乱の影響と、車両の走行性を考慮した道路構造やドライバの意図した操舵による車両挙動と、を完全には分離できない。
つまり、車両の横方向運動に作用する外乱は、路面の横勾配によって重力加速度成分及び旋回時に生じる遠心力と、それ以外の要因(例えば、横風や轍路など)によって生じる外乱とがあり、前者(重力加速度成分等)は、一般にカーブ路をスムーズに走行するために必要なものであるが、それ以外の後者の横外乱(横風や轍路等の横外乱、以下「横力外乱」又は「横風外乱」という)は、ドライバの操舵操作を妨げる不要なものであるため、できるだけ操舵に対するこの影響を排除したい。
【0006】
しかし、従来の技術では、これらの前者と後者とを分離できず、カーブ路をスムーズに走行するために必要な重力加速度成分をも外乱として除去してしまう。特に、走行中の車両に加わる横方向の外力は、車両挙動や姿勢に大きく影響し、ひいては操舵安定性の低下,ドライバの運転負担増加,車線維持性の悪化等をもたらしてしまう。このとき、横方向外力のうち、車両の走行性を考慮した横傾斜に対しては外乱として除去することなく、他の横方向外乱、即ち、横風や轍路など「横力外乱」についてのみ操舵への影響を排除したい。
【0007】
本発明は、上述の課題に鑑み創案されたもので、横力外乱とカーブ路をスムーズに走行するために必要な重力加速度成分等とを分離して把握できるようにして、カーブ路のスムーズな走行性能を確保しながら、操舵への横力外乱の影響を抑制して、アクティブ・セーフティを向上させることができるようにした、電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1記載の本発明の電動パワーステアリング装置では、車両に搭載され電動モータを用いて操舵をアシストする際に、車速検出手段により該車両の車速Vを検出し、操舵トルク検出手段により該車両に加えられる操舵トルクThを検出して、制御手段により該車速検出手段及び該操舵トルク検出手段からの検出情報V,Thに基づいて該電動モータを制御する。
【0009】
このとき、さらに、操舵角検出手段により該車両の操舵角δを検出し、ヨーレイト検出手段により該車両のヨーレイトγを検出し、横加速度検出手段により該車両の横加速度Gyを検出して、推定手段により該車両の操舵−車両系モデルに基づいて、該操舵角検出手段,該ヨーレイト検出手段,該横加速度検出手段,該車速検出手段によりそれぞれ検出された該車両の操舵角δとヨーレイトγと横加速度Gyと車速Vとから、該車両の横方向外乱のうち、横勾配外乱φrbと他の横方向外乱φcwとを分離して推定する。そして、該制御手段では、該推定手段による推定結果から、補正手段によって該車両の横方向外乱のうちから該横勾配外乱を除去した横方向外乱φcwを抑制するように該電動モータに発生させる該操舵アシストトルクを補正して、この補正した該操舵アシストトルクが得られるように該電動モータを制御する。
【0010】
さらに、該車両の操舵角速度ωを検出する操舵角速度検出手段をさらにそなえ、該推定手段は、該車両のヨーレイトγ及び横速度vをさらに推定するように構成され、該補正手段は、該操舵角速度検出手段と該操舵角検出手段と該車速検出手段とによりそれぞれ検出された操舵角δと舵角速度ωと車速Vと、該推定手段により推定されたヨーレイトγと横速度vとから第1補正トルクを算出し、該推定手段により推定された横勾配外乱φrbと他の横方向外乱φcwとから第2補正トルクを算出して、該第1補正トルクと第2補正トルクとに基づいて該操舵アシストトルクを補正することが好ましい(請求項2)。
この場合、該補正手段は、操舵角δ,舵角速度ω,ヨーレイトγ,横速度vのそれぞれに、車速Vに応じてそれぞれ設定されるゲインを乗算して該第1補正トルクを算出するとともに、横勾配外乱φ rb ,他の横方向外乱φ cw のそれぞれに、車速Vに応じてそれぞれ設定されるゲインを乗算して該第2補正トルクを算出して、該第1補正トルクと第2補正トルクとに基づいて該操舵アシストトルクを補正することも好ましい(請求項3)。
該横勾配外乱φ rb_e について設定されるゲインK Φ _cw は、微小値又は0に設定されることが好ましい(請求項4)。
【0011】
また、該推定手段は、該操舵角検出手段と該ヨーレイト検出手段と該横加速度検出手段と該車速検出手段とによりそれぞれ検出された操舵角δとヨーレイトγと横加速度Gyと車速Vとの各状態量から、状態量である該車両の横勾配外乱φrbと他の横方向外乱φcwとを推定するオブザーバをそなえていることも好ましい(請求項5)。
【0012】
この場合、該オブザーバでは、次式(A)の状態方程式を用いて、該操舵角δ f_s ,該ヨーレイトγ s ,該横加速度G y_s ,該車速Vの各状態量を入力量として、横速度推定値v e とヨーレイト推定値γ e と横方向外乱推定値φ cw_e と横勾配外乱推定値φ rb_e との各状態量推定値をそれぞれ推定する(根拠:0024−0026)
ことが好ましい(請求項6)。
【数2】
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面により、本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図9は本発明の一実施形態としての電動パワーステアリング装置について示すもので、これらの図に基づいて説明する。
本実施形態にかかる電動パワーステアリング装置は、図1に示すように、操舵アクチュエータとして電動モータ(ここでは、DCモータ)11をそなえ、車両の操舵操作状態や車両の状態を検出してこれらの検出結果からECU(電子制御ユニット)30により目標とする操舵アシスト量を設定し、この目標操舵アシスト量が得られるようにDCモータ11を制御するようになっている。
【0014】
DCモータ11は、例えば図3に示すように、ステアリングホイール1,ステアリングシャフト2,ラックアンドピニオン3,タイロッド4,操舵輪(前輪)5L、5R等からなる操舵系(ここでは、ラックアンドピニオン3)に付設されている。もちろん、本装置は、ピニオンタイプの電動パワステだけでなく、油圧パワステに小型モータを追加する場合やラックアシストタイプの電動パワステにも適用することができる。
【0015】
また、操舵操作状態及び車両状態を検出する手段としては、操舵角速度(前輪舵角速度)ωf _ sを検出する操舵速度検出手段(前輪舵角速度検出手段)としてのハンドル角速度センサ21と、操舵角度(前輪舵角)δf _ sを検出する操舵角検出手段(前輪舵角検出手段)としてのハンドル角センサ22と、車両のヨーレイトγsを検出するヨーレイト検出手段としてのヨーレイトセンサ(ヨー角速度センサ)23と、車両の横加速度Gy _ sを検出する横加速度検出手段としての横加速度センサ24と、車速Vを検出する車速検出手段25と、ドライバがステアリングホイール(ハンドル)を通じて加える操舵トルク(入力操舵トルク)Th _ sを検出する操舵トルク検出手段(操舵トルクセンサ)26とがそなえられる。
【0016】
ECU30には、その機能要素として、基本操舵アシスト量(基本アシストトルク)Tm _ baseを算出する基本操舵アシスト量演算部(電動パワステ制御演算部)31と、車両に加わる横方向外乱等を推定する推定手段としてのオブザーバ32と、操舵系に加わる外乱成分に応じた操舵アシスト補正量(アシストトルク補正量)を算出して、これに応じて操舵アシスト量(外乱抑制制御量)を補正する補正手段(外乱抑制補正手段)33とが設けられている。
【0017】
電動パワステ制御演算部31では、操舵トルク検出手段26で検出された入力操舵トルクTh _ sと車速検出手段25で検出された車速Vとに基づいて基本操舵アシスト量(基本アシストトルク)Tm _baseを算出する。
オブザーバ32では、前輪舵角検出手段22,ヨーレイト検出手段23,横加速度検出手段24,車速検出手段25でそれぞれ検出された前輪舵角δf _ s,ヨーレイトγs,横加速度Gy _ s,車速Vに基づいて、車両に加わる横方向外乱等[具体的には、横力外乱推定値(横風外乱推定値)φcw _ e,横勾配外乱推定値φrb _ e,横速度推定値ve,ヨーレイト推定値re]を推定する。
【0018】
補正手段33には、補正用操舵アシスト量(補正アシストトルク)Tm _addを算出する操舵アシスト補正量演算部(外乱抑制制御演算部)34と,を加算する基本アシストトルクTm _baseに補正アシストトルクTm _addを加算する加算部35とがそなえられる。
操舵アシスト補正量演算部34は、オブザーバ32で推定された横力外乱推定値(横風外乱推定値)φcw _ e,横勾配外乱推定値φrb _ e,横速度推定値ve,ヨーレイト推定値γeと、前輪舵角速度検出手段21で検出された前輪舵角速度ωf _ sと、前輪舵角速度検出手段21で検出された前輪舵角δf _ sと、車速検出手段25で検出された車速Vとに基づいて、操舵系に加わる外乱成分に応じた補正アシストトルクTm _addを算出する。
【0019】
つまり、操舵アシスト補正量演算部34では、前輪舵角速度ωf _ sにゲインKωを掛けて前輪舵角速度対応補正量(=Kωωf _ s)を、前輪舵角δf _ sにゲインKδを掛けて前輪舵角対応補正量(=Kδδf _ s)を、横速度推定値veにゲインKvを掛けて横速度対応補正量(=Kvve)を、ヨーレイト推定値γeにゲインKrを掛けてヨーレイト対応補正量(=Krγe)を、それぞれ算出し、これらの補正量の加算値Tm _ fb(=Kωωf _ s+Kδδf _ s+Kvve+Krγe)により基本アシストトルクTm _baseをフィードバック補正する。
【0020】
また、横力外乱推定値φcw_eにゲインKΦ _cwを掛けて横力外乱対応補正量Tm_cw(=KΦ _cwφcw_e)を算出し、この補正量により基本アシストトルクTm_baseをフィードフォワード補正する。なお、図1中に示すように、横勾配外乱推定値φrb_eにゲインKΦ_rb(=微小値)を掛けて横勾配外乱対応補正量Tm_rb(=KΦ _rbφrb_e)を算出し、この補正量によっても基本アシストトルクTm_baseをフィードフォワード補正するように記載しているが、横勾配外乱対応補正量T m_rb は微小値ゲインK Φ _rb により微小値となっており、これによるフィードフォワード補正は無視できる程度のものとしている。しかし、基本的には、横力外乱推定値φcw_eにのみに応じて(即ち、横勾配外乱推定値φ rb_e のゲインK Φ _rb を0とする)、横方向外乱の影響が解消されるように、基本アシストトルクTm_ baseをフィードフォワード補正することがより好ましい。
【0021】
したがって、オブザーバ32の推定によって分離された横勾配外乱と横力外乱(横風外乱)のうち、横力外乱の影響のみを抑制するように制御系が構成されている。
つまり、図4に示すように、一般に、カーブ路における道路の横勾配はカーブを曲がることによって生じる遠心力を打ち消してカーブでの旋回走行を容易にするために設けられている。また、直線路における横勾配は、2〜3%程度の小さい値であるが排水のために設けられている。オブザーバ32では、横方向外乱のうちこのような横勾配外乱については外乱抑制対象から除外して、その他の横方向外乱(横力外乱又は横風外乱)の影響のみを抑制するように制御系を構成しているのである。
【0022】
オブザーバ32による推定についてさらに説明すると、DCモータ11に関する各変数の関係は、図2に示すように制御ブロックにモデル化することができる。
なお、図1及び図2における各パラメータについては以下の表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
図2に示す関係から、オブザーバの状態方程式として次式(A)が導出される。
【0025】
【数3】
【0026】
上式(A)において、ゲインa11,a12,a21,a22,b1,b2はいずれも車速に応じて決定し、ゲインl11,l12,l21,l22,l31,l32,l41,l42はいずれもモータの周波数特性を考慮して数式演算により適正値を設定することができる。
したがって、オブザーバ32では、前輪舵角δf _ s,ヨーレイトγs,横加速度Gy _ s,車速Vの各状態量を入力量として、横速度推定値veとヨーレイト推定値γeと横力外乱推定値φcw _ eと横勾配外乱推定値φrb _ eとの各状態量を推定することができる。
【0027】
図5に示すように、実際の操舵系は機械的な系とDCモータの系とで構成される。また、慣性系は、ステアリングホイール,DCモータ,タイヤから成り、弾性系はトーションバーとタイヤから成る。ここで、キングピン回りに微分方程式をたてると次式(1)〜(3)のようになる。
【0028】
【数4】
【0029】
ここで、δfは前輪実舵角、αはハンドル角(コラム軸回り)、Tsは路面からのセルフアライニンクトルク、TmはDCモータの付加トルク、Thはドライバトルク(トルクセンサ値)である。なお、系のパラメータIs,Cs,Nt,Nm,Ktをについては前記の表1に記載する。
ここで、前輪実舵角δfは、センサ値であるThとαとから算出可能である。
【0030】
前式(2)を変形すると、次式(4)となる。
【0031】
【数5】
【0032】
さらに、ここでは、図6に示すような二輪モデルを車両モデルとする。前輪実舵角δfをシステム入力として定義すると、かかるモデルの車両系の運動方程式を次式のように記述できる。
【0033】
【数6】
【0034】
ここで、vは車両の横速度,γは車両のヨーレイト,φは横方向外乱要素である。系のパラメータIs,Cs,Nt,Nm,Ktは前記表1に記載する。
車両の横運動とヨー運動を表す微分方程式を示す上記の式(5),(6)は、一般によく知られているものである。
横方向外乱φは、前述のように、横勾配外乱φrbとその他の横方向外乱(横力外乱又は横風外乱)φcwとから成る(下式参照)。
【0035】
【数7】
【0036】
これらの横力外乱φcw,横勾配外乱φrbは式(5)に外部入力として与えられるが、直接計測することはできない。そこで、これらの横方向外乱の対策として、図7に示すように、オブザーバで外乱を推定し、コントローラ(ECU30内の制御指令系)ではフィードフォワードループによって外乱の影響を近似的に打ち消す制御手法をとった。計測される出力信号である横加速度センサ値は、次式に示すように車両の状態量と横勾配外乱φrbとで表現されるが、横力外乱φcwは含まれない。なお、コントローラ30では横外乱以外の外乱については、車両の各状態量をフィードバックして外乱の影響を抑制している。
【0037】
【数8】
【0038】
上記の式(8)は、2つの横方向外乱φrb,φcwを分離可能であることを示しており、式(5)〜(8)を整理すると、次の状態方程式が得られる。
【0039】
【数9】
【0040】
ここで、未知の状態量vと横方向外乱φcw,φrbを同時に推定するオブザーバを設計するために、次式に示すように2つの横方向外乱φcw,φrbを状態量として拡張したモデルを定義する。
【0041】
【数10】
【0042】
上式(11),(12)はv,γ,φcw,φrbの係数行列A,C(下式)にかかる階級(rank[C CA ・・・CAn−1]T)が状態数(状態量の種類)nを満たすので、可観測であり、未知の状態量vと未知の外乱φcw,φrbをオブザーバによって推定することができる。ここで、v,γ,φcw,φrbは推定結果であり、以下のLは推定ゲイン行列である。
【0043】
【数11】
【0044】
このようなオブザーバのブロック図を模式的に示すと、図8のようになる。
4次の微分方程式を制御対象モデルとして適用すると、この4次モデルは、操舵系モデルの2つの状態変数である前輪実舵角δfと前輪実舵角速度δf´および車両系の2つの状態変数である横速度vとヨーレイトγとで構成される。ここで、横方向外乱φcw,φrbは外部入力として制御対象に与えられる。なお、前式(1)におけるドライバトルクはゼロと仮定する(Th=0)。
【0045】
【数12】
【0046】
そして、本制御システムは、状態フィードバックループと外乱抑制フィードフォワードループとから構成する。状態フィードバックループは、十分な系の応答性と安定性を確保する。外乱抑制フィードフォワードループは、横風外乱の定常状態における影響を抑制する。式(14)における制御入力は、次式により定める。
【0047】
【数13】
【0048】
ここで,[Kω,Kδ,Kv,Kγ]は状態フィードバックゲインである。状態フィードバックループは,主に系を安定化させることを目的とする。前輪実舵角速度δfは、モータの付加電圧と電流から計算することができる。前輪実舵角δfは前式(4)から得られる。
v,φcw,φrbは前記のように、外乱オブザーバから推定される。一方、外乱抑制フィードフォワードループは、横力外乱φcwの影響を低減することを目的し、具体的には横力外乱φcwによって生じるヨーレイトの定常値をゼロにするようにフィードフォワードゲインを定める。このフィードフォワードゲインkffを定める際,式(14)においてφrb=0と仮定する。
【0049】
以上の仮定から次の状態方程式が得られる。
【0050】
【数14】
【0051】
定常状態(dx/dt=0)において式(18)は次式のように変形される。
【0052】
【数15】
【0053】
ここで、δfss,vss,γssは,φcwに対するδf,v,γの定常値である。従って、この方程式を直接解く次式が得られる。
【0054】
【数16】
【0055】
式(17)におけるγssを考慮すると式(17)は、次式のように変形される。
【0056】
【数17】
【0057】
従って、フィードフォワードゲインKff(=KΦ _ cw)は次式から得られる。
【0058】
【数18】
【0059】
本発明の一実施形態としての電動パワーステアリング装置は、上述のように構成されているので、操舵アシスト補正手段(操舵アシスト補正量演算部34及び演算部35)33により、前輪舵角速度対応補正量(=Kωωf _ s)、前輪舵角対応補正量(=Kδδf _ s)、横速度対応補正量(=Kvve)、ヨーレイト対応補正量(=Krre)の加算値Tm _ fb(=Kωωf _ s+Kδδf _ s+Kvve+Krre)により基本アシストトルクTm _baseをフィードバック補正するとともに、横力外乱対応補正量Tm _ cw(=KΦ _ cwφcw _ e)により基本アシストトルクTm _baseをフィードフォワード補正するので、横方向外乱のうちから横勾配外乱を除去した横力外乱(横風外乱等)φcwを抑制するように電動モータを制御して操舵アシストトルクを与えるので、カーブ路のスムーズな走行性能を確保しながら、操舵への横力外乱(横風外乱等)の影響を抑制して、アクティブ・セーフティを向上させることができるようになる。
【0060】
なお、図9は本装置にかかるシミュレーション結果を示すグラフであり、本ロバスト制御あり(フィードバック制御+フィードフォワード制御あり)、制御なし、フィードバック制御のみ、の3つを比較して示している。この図より、横力外乱φcwと横勾配外乱φrbが分離して推定されていることが分かる。また、φcw,φrbに対するヨーレイトの応答から制御系のロバスト性を確認することができる。フィードバックループは車両挙動を安定化させ、フィードフォワードループが横風外乱の影響だけを低減させることが分かる。
【0061】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
例えば、各ゲインKω,Kδ,Kv,Kr,KΦ _ cwについては、系の安定性や操舵フィーリングを向上させることができるように、車速に応じて適宜設定することが重要である。
【0062】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の電動パワーステアリング装置によれば、車両の横方向外乱のうち、横勾配外乱と他の横方向外乱(横風外乱等)とを分離して推定して、横方向外乱のうちから横勾配外乱を除去した横方向外乱(横風外乱等)を抑制するように電動モータを制御して操舵アシストトルクを与えるので、カーブ路のスムーズな走行性能を確保しながら、操舵への横風外乱の影響を抑制して、アクティブ・セーフティを向上させることができるようになる。
【0063】
さらに、該車両の操舵角速度を検出する操舵角速度検出手段を設け、推定手段で車両のヨーレイト及び横速度を推定するように構成し、補正手段で、操舵角速度検出手段と操舵角検出手段と車速検出手段とによりそれぞれ検出された操舵角と舵角速度と車速と、推定手段により推定されたヨーレイトと横速度とから第1補正トルクを算出し、推定手段により推定された横勾配外乱と他の横方向外乱とから第2補正トルクを算出して、該第1補正トルクと第2補正トルクとに基づいて操舵アシストトルクを補正すれば、操舵アシストを適切に行なうことができる(請求項2)。
【0064】
また、推定手段では、オブザーバによって、操舵角検出手段とヨーレイト検出手段と横加速度検出手段と車速検出手段とによりそれぞれ検出された操舵角とヨーレイトと横加速度と車速との各状態量から、状態量である横勾配外乱と他の横方向外乱とを推定することで、確実に横勾配外乱と他の横方向外乱とを分離して推定することができる(請求項3)。
【0065】
さらに、補正手段が、操舵角,舵角速度,ヨーレイト,横速度のそれぞれに、車速に応じてそれぞれ設定されるゲインを乗算して該第1補正トルクを算出するとともに、横勾配外乱,他の横方向外乱のそれぞれに、車速に応じてそれぞれ設定されるゲインを乗算して該第2補正トルクを算出して、該第1補正トルクと第2補正トルクとに基づいて該操舵アシストトルクを補正することにより、操舵アシストをより適切に行なうことができる(請求項4)。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態としての電動パワーステアリング装置の機能構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態としての電動パワーステアリング装置にかかるモータ制御系の状態量を推定するオブザーバのブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態としての電動パワーステアリング装置を説明する模式図である。
【図4】走行する車両への横方向外乱を説明する図であり、(a)は走行する車両の模式的平面図、(b)は走行する車両の模式的後面図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかる操舵系モデルを示す模式図である。
【図6】本発明の一実施形態にかかる車両系モデルを示す模式図である。
【図7】本発明の一実施形態にかかるステアリング制御を説明するブロック図である。
【図8】本発明の一実施形態にかかるステアリング制御を説明するオブザーバのブロック図である。
【図9】本発明の一実施形態にかかるステアリング制御のシミュレーション結果を説明するグラフであり、(a)は車両のヨーレイトrについて示し、(b)は車両への横風外乱φcwについて示し、(c)は車両への横勾配外乱φrbについて示す。
【符号の説明】
11 DCモータ
21 前輪舵角速度検出手段(操舵角速度検出手段)
22 前輪舵角検出手段(操舵角検出手段)
23 ヨーレイト検出手段
24 横加速度検出手段
25 車速検出手段
26 操舵トルク検出手段
30 制御手段としての電子制御ユニット(ECU)
31 基本制御量設定部(電動パワステ制御演算部)
32 推定手段(オブザーバ)
33 補正手段(外乱抑制補正手段)
34 操舵アシスト補正量演算部(外乱抑制制御演算部)
35 演算部
Claims (6)
- 車両に搭載され電動モータと、該車両の車速を検出する車速検出手段と、該車両に加えられる操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、該車速検出手段及び該操舵トルク検出手段からの検出情報に基づいて該電動モータを制御する制御手段とをそなえ、該電動モータを用いて操舵アシストトルクを発生する電動パワーステアリング装置であって、
該車両の操舵角を検出する操舵角検出手段と、
該車両のヨーレイトを検出するヨーレイト検出手段と、
該車両の横加速度を検出する横加速度検出手段と、
該車両の操舵−車両系モデルに基づいて、該操舵角検出手段,該ヨーレイト検出手段,該横加速度検出手段,該車速検出手段によりそれぞれ検出された該車両の操舵角とヨーレイトと横加速度と車速とから、該車両の横方向外乱のうち、横勾配外乱と他の横方向外乱とを分離して推定する推定手段とをそなえ、
該制御手段には、該推定手段による推定結果から、該車両の横方向外乱のうちから該横勾配外乱を除去した横方向外乱を抑制するように該電動モータに発生させる該操舵アシストトルクを補正する補正手段をそなえ
ている
ことを特徴とする、電動パワーステアリング装置。 - 該車両の操舵角速度を検出する操舵角速度検出手段をさらにそなえ、
該推定手段は、該車両の該横方向外乱に関するヨーレイト及び横速度をさらに推定するように構成され、
該補正手段は、該操舵角検出手段と該操舵角速度検出手段と該車速検出手段とによりそれぞれ検出された操舵角と舵角速度と車速と、該推定手段により推定されたヨーレイトと横速度とから第1補正トルクを算出し、該推定手段により推定された該横勾配外乱と該他の横方向外乱とから第2補正トルクを算出して、該第1補正トルクと第2補正トルクとに基づいて該操舵アシストトルクを補正する
ことを特徴とする、請求項1記載の電動パワーステアリング装置。 - 該補正手段は、操舵角,舵角速度,ヨーレイト,横速度のそれぞれに、車速に応じてそれぞれ設定されるゲイを乗算して該第1補正トルクを算出するとともに、該横勾配外乱及び該他の横方向外乱のそれぞれに、車速に応じてそれぞれ設定されるゲインを乗算して該第2補正トルクを算出して、該第1補正トルクと第2補正トルクとに基づいて該操舵アシストトルクを補正する
ことを特徴とする、請求項2記載の電動パワーステアリング装置。 - 該横勾配外乱について設定されるゲインは、微小値又は0に設定されることを特徴とする、請求項3記載の電動パワーステアリング装置。
- 該推定手段は、該操舵角検出手段と該ヨーレイト検出手段と該横加速度検出手段と該車速検出手段とによりそれぞれ検出された操舵角とヨーレイトと横加速度と車速との各状態量から、状態量である該車両の横勾配外乱と他の横方向外乱とを推定するオブザーバをそなえている
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
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