JP4036626B2 - 超音波洗浄方法および超音波洗浄装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、浸漬超音波洗浄に関し、特に、真空下で行う浸漬超音波洗浄に関する。
【0002】
【従来の技術】
洗浄対象物を溶剤に浸漬した状態で溶剤に超音波を加えることにより対象物を洗浄する浸漬超音波洗浄は、金属、プラスチック加工部品等の洗浄に広く採用されてきた。環境保護のためにフロンが全廃されて以来、代替溶剤を用いる洗浄方法が種々提案されているが、中でもハロゲンを全く含まず乾燥も容易な炭化水素系の溶剤を用いた洗浄方法が注目されている。炭化水素系の溶剤を用いる場合も浸漬超音波洗浄は有用であり、大気圧下で行うことのほか、真空下で行うことも提案されている。
【0003】
大気圧下で浸漬超音波洗浄を行う場合、洗浄対象物であるワークが表面に袋穴や溝等の微細構造を有すると、溶媒が入り込まなくなって、部分的に十分な洗浄ができないことがある。また、ワークの表面が平滑であっても、ワーク同士が接触していると、そこに溶媒が入り込まなくなって、やはり洗浄が不十分になることがある。
【0004】
浸漬超音波洗浄はキャビテーション作用を利用したものであるが、液体にキャビテーションを発生させるためには、液体中の音圧を一定の閾値以上にする必要があることが知られている(最新洗浄技術総覧、第3章、第3節、193−196頁)。ここで、空気が飽和した液体に比べて脱気した液体の方が閾値が高く、したがって、真空度を増すほど脱気の度合いが高まって、閾値も高くなる。
【0005】
また、溶剤の閾値が高いほど、キャビテーションが発生したときにはその作用が強くなって、洗浄力も高くなる。これが、真空下で浸漬超音波洗浄を行う主な理由である。
【0006】
従来の浸漬超音波洗浄方法における洗浄処理の工程と洗浄槽内の圧力の関係を図5に示す。まず、洗浄槽に溶剤を入れ、これにワークを浸す。このときの洗浄槽内の圧力は大気圧すなわち約十万Pa(760torr)である。次いで、洗浄槽から空気を排出して、洗浄槽内を所定の真空度、例えば数千Pa(数十torr)とする。そして、この真空度を保った状態で溶剤に超音波を加えてワークを洗浄する。所定時間の洗浄後、超音波を止め、洗浄槽内を大気圧に戻して、ワークを洗浄槽から取り出す。これで洗浄が終了する。
【0007】
このように、真空下で浸漬超音波洗浄を行うと、常圧下で行うときよりも洗浄力が高まり、ワーク表面の微細構造の汚れやワーク同士が接触している部分の汚れを、より良好に除去することができる。また、洗浄時間も短縮される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、真空にすることにより、溶剤の閾値が高くなりすぎて、装置に備えた超音波発生器の発する超音波の強度を超えることもある。その場合、キャビテーションは発生せず、真空による溶媒の浸透と振動だけによる洗浄となってしまい、真空下で超音波洗浄を行うことによる本来の洗浄力は得られない。また、発振強度の低い超音波発生器を備えた洗浄装置の場合は、溶剤の脱気の度合いが低い状態つまり真空度の低い状態でしかキャビテーションを発生させることができなくなり、発生したキャビテーションの作用が弱く、高い洗浄力は得られない。
【0009】
真空下での超音波洗浄では、キャビテーション発生のための閾値が溶剤に実際に加える超音波の音圧よりも僅かに低くなるように、真空度を設定するのが理想的である。しかし、その理想的な真空度は超音波発生器の能力や溶剤の種類によって変動するため、常に確実に理想的な真空度とすることは難しい。
【0010】
内部を真空にする洗浄槽には、当然、耐圧性が要求される。ここで、洗浄槽を真空度の高い状態に長時間耐え得るようにしようとすると、装置のコスト増を招き、また、構造や大きさに制約が生じて、一度に洗浄できるワークの量が限られてしまう。
【0011】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、高い洗浄力を確実に発揮し、しかも洗浄槽への圧力付加が軽減される超音波洗浄方法および超音波洗浄装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明では、洗浄槽内で洗浄の対象物を溶剤に浸し、溶剤に超音波を加えることにより対象物を洗浄する超音波洗浄方法において、洗浄槽を真空にした状態で溶剤に超音波を加える真空洗浄工程と、洗浄槽を大気圧にした状態で溶剤に超音波を加える常圧洗浄工程と、を含む超音波洗浄方法であって、真空度が異なる少なくとも2段階の真空洗浄工程と、常圧洗浄工程と、を真空度の高い順に行う。
【0013】
この方法では、浸漬超音波洗浄を真空下と常圧下で行う。最初の真空洗浄工程では、溶剤が脱気されてキャビテーション発生のための閾値が高くなり、高い洗浄力が得られる。次の常圧洗浄工程では洗浄槽内は大気圧に戻されるが、洗浄槽への空気の導入を静かに行うことにより、溶剤をある程度脱気した状態に保つことが可能である。したがって、常圧洗浄工程でも高い洗浄力が得られる。また、真空洗浄工程を洗浄槽の真空度を2段階以上に設定して行うため、真空洗浄工程の途中でキャビテーション発生のための閾値を変えることが可能である。これにより、溶剤に加える超音波の音圧を一定にする場合でも、閾値がその音圧よりも低くなり易く、キャビテーションを発生させて高い洗浄力を得ることが容易になる。また、洗浄槽内を高い真空度に保つ時間が短くなって、洗浄槽に必要な耐圧性を低減することができる。
【0014】
ここで、真空洗浄工程と常圧洗浄工程とを1サイクルとして、複数サイクルを行うようにしてもよい。対象物をより良好に洗浄することが可能になる。
【0015】
その場合、真空洗浄工程での洗浄槽の真空度をサイクルごとに変化させるとよい。このようにすると、真空洗浄工程でキャビテーションを発生させて高い洗浄力を得ることがより確実にできるようになる。また、対象物の洗浄の進行の程度に応じて各サイクルの洗浄力を変えることができ、洗浄槽の真空度を必要以上に高めるという無駄も避けられる。
【0016】
溶剤としては炭化水素系のものを使用するとよい。高い洗浄力の確保と環境の保護を両立させることが可能になる。
【0017】
上記目的を達成するために、本発明ではまた、超音波洗浄装置は、対象物を出し入れするための開閉可能な蓋を有する洗浄槽と、洗浄槽内に超音波を発生させる超音波発生器と、洗浄槽を真空にする真空ポンプと、洗浄槽に大気を導き入れるバルブとを備え、上記のいずれかの超音波洗浄方法によって対象物を洗浄するものとする。
【0018】
真空洗浄工程から常圧洗浄工程に移行する際にはバルブを介して空気を洗浄槽内に導入することが可能であり、洗浄槽の蓋は、洗浄開始前に対象物を洗浄槽に入れるときと洗浄終了後に対象物を洗浄槽から取り出すとき以外、開く必要がない。したがって、工程の移行を能率よく行うことができる。また、バルブの開き具合によって洗浄槽に導入する空気の量を調節することが可能であり、真空洗浄工程における洗浄槽の真空度の設定も容易である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態の超音波洗浄装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の超音波洗浄装置1の構成を図1に模式的に示す。超音波洗浄装置1は、開閉可能な蓋12を有する洗浄槽11、超音波振動子13、超音波発振器14、ポンプ15、加温タンク16、濾過器17、真空ポンプ18、セパレータ19、2つの空気バルブ20、21、および圧力計22を備えている。
【0020】
洗浄槽11は溶剤Sおよび洗浄対象物であるワークWを収容する。洗浄槽11と蓋12の接触部にはパッキングが設けられており、蓋12を閉じることより洗浄槽11は密閉される。超音波振動子13は洗浄槽11内の下部に配設されており、洗浄槽11に収容された溶剤Sに超音波を加える。超音波発振器14は、所定周波数の信号を超音波振動子13に与えて振動させ、超音波振動子13に超音波を発生させる。
【0021】
ポンプ15はパイプを介して洗浄槽11の下部に接続されており、自己と洗浄槽11の間で溶剤Sを循環させる。加温タンク16と濾過器17は、洗浄槽11とポンプ15を接続するパイプの途中、つまり、溶剤Sの循環路上に配置されている。加温タンク16はヒータ16aを有しており、溶剤Sを加温する。濾過器17は内部にフィルタ17aを有しており、溶剤Sに含まれる異物を除去する。
【0022】
真空ポンプ18は水封式であり、パイプを介して洗浄槽11の上部に接続されている。真空ポンプ18は洗浄槽11の空気を吸引して外部に排出し、洗浄槽11を真空にする。セパレータ19は真空ポンプ18を水封するためのもので、これにより、真空ポンプ18によって得られる真空度は数千Pa(数十torr)となる。
【0023】
バルブ20は洗浄槽11と真空ポンプ18を接続するパイプの途中に設けられており、洗浄槽11からの空気の排出路を開閉する。バルブ21は、洗浄槽11の上部に空気の導入路として設けられたパイプに設けられており、導入路を開閉する。圧力計22は、洗浄槽11と真空ポンプ18を接続するパイプのうち、洗浄槽11とバルブ20の間の部位に取り付けられており、洗浄槽11内の気圧を検出する。
【0024】
超音波洗浄装置1では、溶剤Sを洗浄槽11に入れて溶剤SにワークWを浸し、超音波振動子13から溶剤Sに超音波を加えて溶剤Sにキャビテーションを発生させることにより、ワークWの洗浄を行う。ワークWを洗浄している間ポンプ15によって溶剤Sを循環させることにより、ワークWから分離し溶剤Sに含まれるようになった汚れは異物として濾過器17によって除去され、溶剤Sの清浄度は略一定に保たれる。また、加熱タンク16において循環する溶剤Sを加熱することにより、洗浄槽11内の溶剤の温度を略一定にすることもできる。
【0025】
このような構成の超音波洗浄装置1では、洗浄時の洗浄槽11内(溶剤Sの上の空間)の真空度を、真空ポンプ18の能力の範囲内で任意に設定することができる。洗浄槽11内を真空にして洗浄を行うときには蓋12、バルブ20、21を閉じておき、常圧で洗浄を行うときは、バルブ21を開け、蓋12、バルブ20を閉じておく。なお、溶剤Sは、ワークWや汚れの種類に応じて選択すればよいが、金属、プラスチック加工部品等を洗浄するときは炭化水素系の溶剤を用いるとよい。
【0026】
超音波洗浄装置1で実施する本発明の洗浄方法について説明する。本発明では、洗浄槽11を真空にした状態で溶剤Sに超音波を加える真空洗浄工程と、洗浄槽11を大気圧にした状態で溶剤Sに超音波を加える常圧洗浄工程とを続けて行う。また、真空洗浄工程では、洗浄槽11の真空度を2段階以上にして、各段階の真空度で溶剤Sに超音波を加える。真空洗浄工程の開始から常圧洗浄工程の終了まで、洗浄槽11の蓋12は閉じたままにしておき、真空度の調節は、バルブ21の開閉と真空ポンプ18の駆動によって行う。
【0027】
洗浄処理の工程と洗浄槽11内の圧力の関係を示す図2を参照して、洗浄処理の流れを説明する。これは真空洗浄工程での真空度を2段階とする場合の例である。なお、洗浄に先立ち、洗浄槽11に清浄な溶剤Sを入れておき、全体が浸るようにワークWを溶剤S中に入れて、蓋12を閉じておく。また、ポンプ15による溶剤Sの循環を開始しておき、洗浄槽11内の溶剤Sが所定の温度に保たれるように、加熱タンク16による溶剤Sの加熱も開始しておく。真空ポンプ18も駆動して、いつでも減圧可能なようにしておく。
【0028】
まず、バルブ21を閉じたままバルブ20を開いて、洗浄槽11から排気する(減圧工程)。圧力計22によって検出される洗浄槽11内の圧力が数千Pa(数十torr)に定めた第1の所定値PAになった時点で、バルブ20を閉じる。次いで、超音波振動子13より溶剤Sに超音波を加えて、ワークWを洗浄する(真空洗浄工程A)。
【0029】
所定時間経過後、溶剤Sに超音波を加えることを休止し、バルブ21を少し開いて洗浄槽11に空気を徐々に導き入れる(加圧工程)。洗浄槽11内の圧力が数千Paないし数万Pa(数百torr)に定めた第2の所定値PBになった時点で、バルブ21を閉じる。そして、溶剤Sに超音波を加えることを再開し、ワークWを洗浄する(真空洗浄工程B)。
【0030】
所定時間経過後、溶剤Sに超音波を加えることを休止し、バルブ21を少し開いて真空槽11に空気を徐々に導き入れる(加圧工程)。洗浄槽11内の圧力が大気圧(約十万Pa)に戻った時点で、バルブ21を閉じる。そして、溶剤Sに超音波を加えることを再開し、ワークWを洗浄する(常圧洗浄工程)。所定時間経過後、溶剤Sに超音波を加えることを止めて洗浄を終了し、蓋12を開けてワークWを取り出す。取り出したワークWは、真空乾燥等の適当な方法で乾燥する。
【0031】
減圧工程で洗浄槽11内を真空にすることにより溶剤Sは高度に脱気され、その状態で真空洗浄工程が行われる。ここで、溶剤Sに生じるキャビテーションの作用が強くなるようにキャビテーション発生の閾値を高くするのが望ましく、そのためには洗浄槽11内の真空度はできるだけ高くするのがよい。しかし、その一方で、溶剤Sの脱気の度合いをあまりに高めると、キャビテーション発生の閾値が超音波振動子13から溶剤Sに加える超音波の音圧を超えるおそれがあり、洗浄槽11内の真空度を高くしすぎるとキャビテーションを発生させることができなくなる。したがって、真空洗浄工程における真空度を最適に設定するのは難しく、そのためには超音波振動子13の能力、溶剤の種類、温度等も考慮する必要がある。
【0032】
しかし、真空洗浄工程を2段階以上の真空度で行うことで、溶剤Sの脱気の度合いを変化させることが可能であり、これにより、ほぼ確実に溶剤Sにキャビテーションを発生させることができる。特に、洗浄槽11内の圧力を数万Paとする場合は、超音波振動子13として特に高出力のものを用いなくても、炭化水素系の溶剤に確実にキャビテーションを発生させることができる。
【0033】
図2に示した例では、仮に最初の真空洗浄工程Aでキャビテーションが発生しなかったとしても、次の真空洗浄工程Bにおいて確実にキャビテーションが発生する。また、真空洗浄工程Aでキャビテーションが発生すれば、その作用は強いから、より高い洗浄力が得られることになる。
【0034】
常圧洗浄工程は真空洗浄工程に続いて行われ、しかも、常圧に戻すための真空槽11への空気の導入は徐々になされて溶剤Sに乱れを生じさせないため、常圧洗浄工程でも溶剤Sの脱気度はある程度以上に保たれる。したがって、常圧洗浄工程においても、発生したキャビテーションの作用は強く、高い洗浄力が得られる。
【0035】
洗浄槽11は、最も高い真空度に耐え得るだけの耐圧性を有しなければならないが、洗浄中常に最も高い真空度とされるわけではないので、特殊な構造とする必要はない。したがって、洗浄槽11は比較的低コストとなり、また、大型化も容易である。洗浄槽11を大型化すると、一度に洗浄できるワークWの量が増して、洗浄効率が向上する。
【0036】
なお、図2に示した例では、最初の真空洗浄工程Aの真空度を高くし、これに続く真空洗浄工程Bの真空度を低下させているが、逆にしてもかまわない。ただし、最初の真空洗浄工程Aの真空度を高くする方が、制御が容易である。また、ここでは、工程と工程の間の期間は溶剤Sに超音波を加えるのを休止しているが、工程間の期間に超音波を加えるようにしてもかまわない。
【0037】
真空洗浄工程と常圧洗浄工程とを1サイクルとし、蓋12を開くことなく、複数サイクルを続けて行うようにしてもよい。ワークWを一層良好に洗浄することが可能になる。この例を図3に示す。これは、各サイクルの真空洗浄工程の真空度を、図2の例と同様に、2段階に設定するとともに、最初のサイクルの真空洗浄工程A、Bと次のサイクルの真空洗浄工程C、Dの真空度を異ならせたときのものである。
【0038】
真空洗浄工程の2段階以上の真空度をサイクル間で同じに設定してもよい。しかし、図3に示した例のように、真空洗浄工程での真空度をサイクル間で相違させるようにすると、溶剤Sを種類の異なるものに替えるときでも、確実にキャビテーションを発生させて高い洗浄力を得ることができる。また、ワークWの洗浄の進行の程度に応じて各サイクルの洗浄力を変えることも可能になって、洗浄槽の真空度を必要以上に高めるという無駄を避けることもできる。さらに、洗浄槽11に最高の圧力が加わる時間を短くすることも可能になる。
【0039】
真空洗浄工程および常圧洗浄工程の時間は任意に定めることができる。例えば、溶剤Sとして炭化水素系のものを用いて、金属製やプラスチック製のワークWを洗浄する場合、真空洗浄工程と常圧洗浄工程をそれぞれ2分行えば、従来よりも短い時間でより良好な洗浄結果を得ることが可能である。真空洗浄工程の全時間の各真空度の工程への配分も任意に定めてよい。例えば、図2のように真空洗浄工程の真空度を2段階として、真空洗浄工程A、Bの時間の和を2分とする場合、真空洗浄工程A、Bをそれぞれ1分とすることもできるし、真空洗浄工程Aを30秒、真空洗浄工程Bを1分30秒とすることもできる。
【0040】
真空洗浄工程に続いて常圧洗浄工程を行うことの有用性を確認するために、次の試験を行った。ワークWとしては、M5×L50のキャップボルトを平ワッシャ20枚に通し、ワッシャを2つのナットで両側から挟んで締め付けたものを用いた。ワークWは、個々の構成部品を、脱脂洗浄した後JIS1種1号品の油に一定時間浸し、次いで一定時間油切りを行って、上記のように組み合わせることにより調製した。
【0041】
溶剤SとしてはHC−250を用い、溶剤Sの温度は35℃とした。また、超音波振動子13が発する超音波の周波数は40kHzとした。真空洗浄工程での洗浄槽11内の圧力は9330Pa(70torr)とし、真空洗浄工程の時間は1分、常圧洗浄工程の時間は4分とした。試験における工程と洗浄槽11内の真空度の関係を図4に示す。洗浄後、ワークWを乾燥し、フーリエ変換赤外(FT−IR)分光光度計によって、ワークWに残存している油の量を測定して、洗浄による除去率を算出した。
【0042】
比較のために、同一条件で調製したワークWを従来の2通りの洗浄方法で洗浄して、同様に除去率を算出した。比較例1では、洗浄槽11を真空にすることなく、したがって、溶剤Sを脱気することなく、常圧で5分間洗浄した。比較例2では、洗浄槽11内の圧力を9330Paとし、5分間洗浄した。溶剤Sの種類、温度、溶剤Sに加える超音波等の他の条件は、上記の試験例と同じ設定である。
【0043】
結果をまとめて表に示す。
【0044】
比較例1と比較例2より明らかなように、真空洗浄では、脱気を行わない常圧洗浄に比べて、はるかに高い清浄力が得られる。また、比較例2と試験例より判るように、真空洗浄に続いて常圧洗浄を行うと、一層高い洗浄力が得られる。しかも、試験例での真空洗浄工程の時間は1分のみであり、試験例の洗浄力は、主として、溶剤Sから脱気した状態での常圧洗浄工程で発揮されたことが判る。この試験例では真空洗浄工程の真空度を1段階のみとしているが、真空洗浄工程の真空度を2段階以上とすると、各真空度ごとに固有の洗浄力が定まり、しかもそれらの洗浄力は常圧洗浄工程での洗浄力以上であるから、さらに高い洗浄力が得られることになる。
【0045】
なお、本実施形態で示した装置構成や真空度等の具体的な値は例にすぎず、他の構成や値とすることも可能である。特に、真空洗浄工程における真空度およびその段階数ならびに各工程の時間は、使用する溶剤Sに応じて設定するのが好ましい。
【0046】
【発明の効果】
洗浄槽を真空にした状態で溶剤に超音波を加える真空洗浄工程と、洗浄槽を大気圧にした状態で溶剤に超音波を加える常圧洗浄工程と、を含む超音波洗浄方法であって、真空度が異なる少なくとも2段階の真空洗浄工程と、常圧洗浄工程と、を真空度の高い順に行うようにした本発明の超音波洗浄方法では、真空洗浄工程だけでなくこれに続く常圧洗浄工程も溶剤を脱気した状態で洗浄を行うことができるため、高い洗浄力が得られる。また、真空洗浄工程を洗浄槽の真空度を2段階以上に設定して行うから、真空洗浄工程の途中でキャビテーション発生のための閾値を変えることが可能であり、溶剤に加える超音波の音圧を一定にする場合でも、キャビテーションを発生させて高い洗浄力を得ることが容易になる。
【0047】
しかも、洗浄槽内を高い真空度に保つ時間を短くすることが可能であり、洗浄槽にあまり高度な耐圧性が必要でなくなる。したがって、低コストで実施することが可能であり、また、洗浄槽を大きくして一度に洗浄できる対象物の量を増すことも容易になる。
【0048】
真空洗浄工程と常圧洗浄工程とを1サイクルとして、複数サイクルを行うようにすると、対象物をより良好に洗浄することができる。
【0049】
その際、真空洗浄工程での洗浄槽の真空度をサイクルごとに変化させるようにすると、キャビテーションを発生させて高い洗浄力を得ることがより確実にできるようになる上、対象物の洗浄の進行の程度に応じて各サイクルの洗浄力を変えることができて、洗浄槽の真空度を必要以上に高めるという無駄も避けられる。
【0050】
炭化水素系の溶剤を使用すると、高い洗浄力の確保と環境の保護を両立させることができる。
【0051】
対象物を出し入れするための開閉可能な蓋を有する洗浄槽と、洗浄槽内に超音波を発生させる超音波発生器と、洗浄槽を真空にする真空ポンプと、洗浄槽に大気を導き入れるバルブとを備え、上記のいずれかの超音波洗浄方法によって対象物を洗浄するようにした本発明の超音波洗浄装置では、対象物を良好にかつ能率よく洗浄することが可能である。また、洗浄槽にあまり高度な耐圧性が必要でないから、低コストで実現することができ、洗浄槽を大型化して一度に多量の対象物を洗浄することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態の超音波洗浄装置の構成を模式的に示す図。
【図2】 上記超音波洗浄装置での洗浄処理の工程と洗浄槽の真空度の関係の例を示す図。
【図3】 上記超音波洗浄装置での洗浄処理の工程と洗浄槽の真空度の関係の他の例を示す図。
【図4】 上記超音波洗浄装置で試験に採用した洗浄処理の工程と洗浄槽の真空度の関係を示す図。
【図5】 従来の洗浄処理の工程と洗浄槽の真空度の関係の例を示す図。
【符号の説明】
1 超音波洗浄装置
11 洗浄槽
12 蓋
13 超音波振動子
14 超音波発振器
15 ポンプ
16 加温タンク
16a ヒータ
17 濾過器
17a フィルタ
18 真空ポンプ
19 セパレータ
20 バルブ
21 バルブ
22 圧力計
S 溶剤
W ワーク
Claims (4)
- 洗浄槽内で洗浄の対象物を溶剤に浸し、溶剤に超音波を加えることにより対象物を洗浄する超音波洗浄方法において、
洗浄槽を真空にした状態で溶剤に超音波を加える真空洗浄工程と、洗浄槽を大気圧にした状態で溶剤に超音波を加える常圧洗浄工程と、を含む超音波洗浄方法であって、
真空度が異なる少なくとも2段階の真空洗浄工程と、常圧洗浄工程と、を真空度の高い順に行い、且つ、真空洗浄工程と常圧洗浄工程とを1サイクルとして、複数サイクルを行うとともに、真空洗浄工程での洗浄槽の真空度をサイクルごとに変化させることを特徴とする超音波洗浄方法。 - 洗浄槽内で洗浄の対象物を溶剤に浸し、溶剤に超音波を加えることにより対象物を洗浄する超音波洗浄方法において、
洗浄槽を真空にした状態で溶剤に超音波を加える真空洗浄工程と、洗浄槽を大気圧にした状態で溶剤に超音波を加える常圧洗浄工程を、この順に行うとともに、真空洗浄工程での洗浄槽の真空度を少なくとも2段階に設定し、且つ、真空洗浄工程と常圧洗浄工程とを1サイクルとして、複数サイクルを行うとともに、真空洗浄工程での洗浄槽の真空度をサイクルごとに変化させることを特徴とする超音波洗浄方法。 - 炭化水素系の溶剤を使用することを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の超音波洗浄方法。
- 対象物を出し入れするための開閉可能な蓋を有する洗浄槽と、洗浄槽内に超音波を発生させる超音波発生器と、洗浄槽を真空にする真空ポンプと、洗浄槽に大気を導き入れるバルブとを備え、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の超音波洗浄方法によって対象物を洗浄することを特徴とする超音波洗浄装置。
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- 2001-09-27 JP JP2001295312A patent/JP4036626B2/ja not_active Expired - Lifetime
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